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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140638
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エアフロー装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 7/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E06B7/28 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051875
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390022666
【氏名又は名称】協立エアテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】重松 拓也
(72)【発明者】
【氏名】占部 寿雄
(72)【発明者】
【氏名】黒川 郁史
(57)【要約】
【課題】陰圧室などの陰圧状態を目視で容易に確認することができるエアフロー装置を提供する。
【解決手段】エアフロー装置1は、建物内の空間を区画する区画手段に形成された開口部に取り付けられ、区画手段により区画された2つの空間の圧力差を目視で確認可能なエアフロー装置1であって、枠体10と、枠体10内の上部に設けられた軸体11と、軸体11を介して枠体10内に回動可能に取り付けられた羽根12であり、2つの空間の圧力差が規定値以上に達するとエアフロー装置1の上流側から下流側に向かって開放する羽根12と、枠体10の上流側から下流側に向かって上り勾配に形成された導風部13であり、羽根12の先端の回転軌跡と一定の隙間を空けて設けられた導風部13と、軸体11および羽根12の基端部を覆う塞ぎ部15と、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の空間を区画する区画手段に形成された開口部に取り付けられ、前記区画手段により区画された2つの空間の圧力差を目視で確認可能なエアフロー装置であって、
枠体と、
前記枠体内の上部に設けられた軸体と、
前記軸体を介して前記枠体内に回動可能に取り付けられた羽根であり、前記2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると前記エアフロー装置の上流側から下流側に向かって開放する羽根と、
前記枠体の上流側から下流側に向かって上り勾配に形成された導風部であり、前記羽根の先端の回転軌跡と一定の隙間を空けて設けられた導風部と、
前記軸体および前記羽根の基端部を覆う塞ぎ部と、を備えたエアフロー装置。
【請求項2】
前記軸体は、前記枠体内の上部に水平に固定されており、
前記塞ぎ部は、前記枠体内の上部に、前記羽根の基端部を覆うように前記枠体内の上流側と下流側とにそれぞれ設けられた請求項1に記載のエアフロー装置。
【請求項3】
前記枠体内の上流側に設けられた前記塞ぎ部は、前記羽根の上流側を向く面の上部に当接することで、前記羽根が全閉する開度を決めるように設けられ、
前記枠体内の下流側に設けられた前記塞ぎ部は、前記羽根の下流側を向く面の上部に当接することで、前記羽根が全開する開度を決めるように設けられた請求項2に記載のエアフロー装置。
【請求項4】
前記導風部の上端側に、前記羽根が規定の開度分開放した場合に視認し得る表示部が設けられた請求項1に記載のエアフロー装置。
【請求項5】
前記表示部は、着色部分または/および文字部分を含む請求項4に記載のエアフロー装置。
【請求項6】
前記羽根は、薄肉状の樹脂またはプラスチックからなる請求項1に記載のエアフロー装置。
【請求項7】
前記開口部に設けられた嵌合穴を有するフレーム内に、前記エアフロー装置が取り付けられた際における前記嵌合穴と嵌合する突起が前記枠体の側面に設けられている請求項1~6に記載のエアフロー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の対象空間を区画する区画手段(建具、壁面など)に取り付けられ、対象空間の室圧を確認するためのエアフロー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば病院の陰圧感染隔離室など感染症対策が必要とされる部屋は、当該部屋からウイルスや細菌等が室外に流出しないよう、常に陰圧に保つことが求められており、数Paレベルの微差圧の管理が必要とされている。そのため、このような部屋が常に陰圧であることを容易に確認する技術が求められている。
【0003】
ここで、圧力差を利用したダンパーに関する発明として、特許文献1,2に記載のものが知られている。
特許文献1には、空気の流路を形成するダクトに介設されるケーシングと、空気の一定流方向のみに流路を開放すると共に空気流の逆流方向に対して流路を閉鎖する様にケーシング内に偏芯軸支された回転軸に固定された羽根体と、火災発生時に流路内を流れる煙、火焔等を感知して羽根体を強制的に動作させながら流路を閉鎖ロックさせるためケーシングに設けられた開閉ロック盤とを備えた防煙、防火兼用逆流防止ダンパーが記載されている。
【0004】
一方、特許文献2には、建物内の空間を区画する区画手段に形成された開口部に取り付けられ、予め設定された圧力差になると開放する機能を有する差圧ダンパーが記載されている。なお、この差圧ダンパーは、防火扉が壁内に収納されているときのダンパー装置の収納スペースの確保や、ダンパーの運搬性や搬入容易性などを考慮して、ダンパーをコンパクトにすることを目的としている(特許文献2の明細書の段落0008)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2805537号公報
【特許文献2】特許第6762859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1,2に記載のダンパーは、前述したように、災害発生時の空気の流路を確保するための防災製品に関するものである。そうすると、防災用である場合、法規上ダンパーは鋼板など不燃材料で構成されなければならず、重量物となってしまい、圧力差により開放する羽根自身も重量物となるため、微差圧の管理を必要とする場合には不向きである。また、特許文献1,2に記載のダンパーは、対象空間の陰圧状態の目視確認ができるものではない。
【0007】
よって、本発明は、陰圧室などの陰圧状態を目視で容易に確認することができ、数Pa程度の微差圧の管理を行うことができるエアフロー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るエアフロー装置は、
建物内の空間を区画する区画手段に形成された開口部に取り付けられ、前記区画手段により区画された2つの空間の圧力差を目視で確認可能なエアフロー装置であって、
枠体と、
前記枠体内の上部に設けられた軸体と、
前記軸体を介して前記枠体内に回動可能に取り付けられた羽根であり、前記2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると前記エアフロー装置の上流側から下流側に向かって開放する羽根と、
前記枠体の上流側から下流側に向かって上り勾配に形成された導風部であり、前記羽根の先端の回転軌跡と一定の隙間を空けて設けられた導風部と、
前記軸体および前記羽根の基端部を覆う塞ぎ部と、を備える。
【0009】
2つの空間の気圧は等圧になろうとするため、空気は気圧の高い空間から気圧の低い空間へ流れようとする。
そして、本発明に係るエアフロー装置は、建物内の空間を区画する区画手段に取り付けられ、斯かる構成により、区画手段により区画された2つの空間の圧力差がゼロである場合は、軸体に回動可能に取り付けられた羽根は開放しないが、2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると、羽根は開放する。また、導風部により、羽根が開放する際に、流れる空気は羽根先端の回転軌跡と一定の隙間を空けて導風部に沿って通流される。なお、羽根は、枠体内の上部に設けられた軸体に回動可能に取り付けられており、流れる空気(風圧)を受けて開放する。
【0010】
また、前記軸体は、前記枠体内の上部に水平に固定されており、
前記塞ぎ部は、前記枠体内の上部に、前記羽根の基端部を覆うように前記枠体内の上流側と下流側とにそれぞれ設けられた構成であることが好ましい。
【0011】
また、前記枠体内の上流側に設けられた前記塞ぎ部は、前記羽根の上流側を向く面の上部に当接することで、前記羽根が全閉する開度を決めるように設けられ、
前記枠体内の下流側に設けられた前記塞ぎ部は、前記羽根の下流側を向く面の上部に当接することで、前記羽根が全開する開度を決めるように設けられる構成であることが好ましい。
【0012】
また、前記導風部の上端側に、前記羽根が規定の開度分開放した場合に視認し得る表示部が設けられる構成であることが好ましい。
特に、前記表示部は、着色部分または/および文字部分を含む構成であることが好ましい。
【0013】
また、前記羽根は、薄肉状の樹脂またはプラスチックからなるものを用いることが好ましい。
【0014】
なお、前記エアフロー装置は、前記開口部に設けられた嵌合穴を有するフレーム内に、前記エアフロー装置が取り付けられた際における前記嵌合穴と嵌合する突起が前記枠体の側面に設けられている構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエアフロー装置は、斯かる構成により、区画手段により区画された2つの空間の圧力差がゼロである場合は、軸体に回動可能に取り付けられた羽根は開放しないが、2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると、羽根は開放するため、2つの空間で規定値以上の圧力差が発生していることを目視で容易に確認することができる。
また、導風部により、羽根が開放する際に、流れる空気は羽根先端の回転軌跡と一定の隙間を空けて導風部に沿って通流されるため、流れる空気の遊びが少なくなり、圧力損失が低減されて、効率的に羽根を開放させることができる。
なお、羽根は、枠体内の上部に設けられた軸体に回動可能に取り付けられており、流れる空気(風圧)を受けて開放するため、動力は不要である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明のエアフロー装置の実施形態を示す斜視図であり、(i)は正面・左側面・平面斜視図、(ii)は正面・左側面・底面斜視図である。
図2】本発明のエアフロー装置の実施形態を示す六面図であり、(i)は正面図、(ii)は背面図、(iii)は底面図、(iv)は平面図、(v)は左側面図、(vi)は右側面図である。
図3図2(i)のA-A断面図であり、(i)はエアフロー装置の羽根が閉鎖している状態、(ii)はエアフロー装置の羽根が開放している状態を示す図である。
図4】(i)は区画手段に形成された開口部に、エアフロー装置が取り付けられることを説明するための図である。(ii)は区画手段の開口部にエアフロー装置が取り付けられたことを説明するための図である。
図5】区画手段に形成された開口部に設けられたフレーム内に、エアフロー装置が取り付けられることを説明するための図である。
図6】フレーム内に取り付けられたエアフロー装置の動作を説明するための図である。
図7】エアフロー装置が、建物内の陰圧室の引戸に取り付けられた例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
【0018】
[エアフロー装置]
図1~3に示すように、エアフロー装置1は、枠体(ケーシング)10と、軸体11と、羽根12と、導風部13と、塞ぎ部15と、を備える。枠体10、および導風部13や塞ぎ部15は、樹脂(例えば、ABS樹脂)で構成される。
【0019】
[エアフロー装置の取り付けイメージ]
区画手段は、建具や壁面などであるが、図4に示すように、本実施形態において区画手段はドアハンドルKを備えた引戸Dである。
【0020】
なお、図4(i),(ii)において、破線枠で囲まれている箇所を拡大し、開口部Sに嵌合して取り付けられるエアフロー装置1のイメージ図として示している。
【0021】
図4に示すように、エアフロー装置1は、引戸Dに形成された開口部Sに取り付けられ、引戸Dにより区画された2つの空間(以下、単に「2つの空間」という)の圧力差を目視で確認可能なものである。
【0022】
なお、以下の説明において、エアフロー装置1の正面(図2(i)参照)を上流側という(図3(i),(ii)における塞ぎ部15a側)。一方、エアフロー装置1の背面(図2(ii)参照)を下流側という(図3(i),(ii)における塞ぎ部15b側)。
【0023】
[エアフロー装置の各構成]
枠体10は、その内部に軸体11や羽根12などが設けられるものであり、本実施形態において枠体10は正面から背面にかけて断面形状が正方形であるが(図2(i),(ii)参照)、長方形や円形、またはその他の形状であってもよい。
【0024】
軸体11は、枠体10内の上部に設けられており、詳細には、枠体10内の上部に水平に固定されている。
【0025】
羽根12は、軸体11を介して枠体10内に回動可能に取り付けられており、本実施形態では羽根12と軸体11は樹脂にて一体成形されている。2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると、図3(i),(ii)に示すように、羽根12は上流側から下流側に向かって開放する。
【0026】
なお、羽根12は、薄肉状の樹脂またはプラスチックからなるもの(例えば薄肉状のABS板)を用いることが好ましい。
【0027】
導風部13は、図3に示すように、上流側から下流側に向かって上り勾配に形成されている。また、導風部13は、羽根12の先端(羽根12の先端部12b)の回転軌跡と一定の隙間d(図3(i)参照)を空けて曲面となるように構成されている。
【0028】
塞ぎ部15は、図3に示すように、枠体10内の上部に、軸体11および羽根12の基端部12aを覆うように、上流側と下流側とにそれぞれ設けられている。
ここで、上流側に設けられた塞ぎ部15aは、羽根12の上流側を向く面の上部に当接することで、羽根12が全閉する開度を決めるように設けられている(図3(i)の破線枠参照)。一方、下流側に設けられた塞ぎ部15bは、羽根12の下流側を向く面の上部に当接することで、羽根12が全開する開度を決めるように設けられている(図3(ii)の破線枠参照)。
【0029】
また、塞ぎ部15a,15bは、下に凸の曲面となっている(図3(i),(ii)参照)。塞ぎ部15a,15bをこのような構成とすることで、エアフロー装置1内の流路抵抗を低減できると共に、流路断面積を確保することができる。特に下流側は、導風部13が上り勾配に形成されていることにより流路断面積が狭くなるため、塞ぎ部15bを、この導風部13の上り勾配となっている構成と対応する下に凸の曲面の構成とすることで、流路断面積を確保している。加えて、意匠性も向上させることができる。
【0030】
なお、導風部13の上端側(上端付近)には、羽根12が規定の開度分開放した場合に視認し得る表示部14が設けられている(図3(i),(ii)参照)。
特に、表示部14は、着色部分(図示せず)または/および文字部分(図示せず)を含む構成であることが好ましい。
【0031】
着色部分とは、例えば、エアフロー装置1の利用者が、羽根12が規定の開度分開放した場合に表示部14を視認し易いような目立つ色(赤、青、黄、または蛍光色)が着色された部分である。一方、文字部分とは、例えば、エアフロー装置1の利用者が、羽根12が規定の開度分開放した場合に表示部14を視認した際に、ある空間(例えば、陰圧室)がどうなっているか(例えば、陰圧になっていること)を直観的に把握することができるような文字が記載されている部分である。
【0032】
エアフロー装置1は、前述した構成により、2つの空間の圧力差がゼロである場合は、羽根12は開放しないが、2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると、廊下などからエアフロー装置1を通じて陰圧室に流入する空気(風圧)により羽根12は開放するため、2つの空間で規定値以上の圧力差が発生していることを目視で容易に確認することができる。
【0033】
なお、羽根12に薄肉状の樹脂板などを用いることで、羽根12を軽量化することができ、微圧域(~数Paの範囲)で確実に羽根12を回動させることができる。この圧力差は、羽根12の肉厚や羽根12と軸体11との位置関係を調整することで、例えば1Pa、1.5Pa、2Pa、2.5Pa、3Pa・・・・・・と、利用される環境に応じて適宜規定することができる。
【0034】
また、図3に示すように、軸体11は枠体10内の上部に水平に固定されており、塞ぎ部15は、枠体10内の上部に、羽根12の基端部12aを覆うように上流側と下流側とにそれぞれ設けられた構成となっている。そのため、塞ぎ部15により、枠体10内のうち塞ぎ部15より上部にある空間は風圧を受けない。よって、羽根12には、羽根12が開放しようとする方向とは逆方向の力がかからないため、羽根12の作動性を担保することができる。
【0035】
例えば、羽根12の基端部12aが受圧すると、羽根12の先端部12bが受圧して羽根12が開放しようとする方向とは逆方向にも力が働き、羽根12の作動性が担保されなくなるので、上記構成とすることで羽根12の作動性が損なわれることを防止することができる。
【0036】
さらに、上流側に設けられた塞ぎ部15aは、羽根12の上流側を向く面の上部に当接することで、羽根12が全閉する開度を決めるように設けられている(図3(i)参照)。
【0037】
例えば、2つの空間の圧力差の関係が逆になった場合(2つの空間を陰圧室および廊下とすると、通常廊下の気圧よりも低い陰圧室の気圧が、廊下の気圧よりも高くなった場合)、羽根12が全閉する開度を決めるものがないと、羽根12は通常とは逆の方向(陰圧室から廊下の方向)に開放するように動作してしまう。そうすると、「羽根が開放しているから2つの空間の圧力差が正しい関係で発生している」というような誤解が生じるおそれがある。
【0038】
そのため、このように上流側に設けられた塞ぎ部15aにより羽根12が全閉する開度を決めることで、2つの空間の圧力差の関係が逆になった場合、または2つの空間の圧力差がゼロである場合には羽根12が全閉し、2つの空間の圧力差が通常とは異なる(逆の)関係になっていること、または2つの空間の圧力差がゼロであることを確認することができる。
【0039】
一方、下流側に設けられた塞ぎ部15bは、羽根12の下流側を向く面の上部に当接することで、羽根12が全開する開度を決めるように設けられている(図3(ii)参照)。
【0040】
下流側に設けられた塞ぎ部15bにより羽根12が全開する開度が決められるため、羽根12の適切な回動範囲を設定することができる。つまり、下流側に設けられた塞ぎ部15bは、いわば羽根12が規定の開度以上開放しないようなストッパーとして機能する。そのため、開放状態においても羽根12が枠体10内から飛び出さないため、エアフロー装置1を壁面に設置した場合でも、人や物に羽根12が接触するおそれがない。また、エアフロー装置1を引戸に設置した場合は、引戸を開閉する際に羽根12が枠体10内から飛び出さないため、羽根12が壁と接触することはなく、エアフロー装置1が破損するおそれがない。
【0041】
なお、導風部13の上端側には、羽根12が規定の開度分開放した場合に視認し得る表示部14が設けられることで、羽根12が開放していることにより、例えばある空間(陰圧室)が陰圧になっていること確認することができるが、開放された時に見える導風部13の上端側に設けられた表示部14により、より容易に開放状態を目視確認することができる。
【0042】
具体的には、羽根12が開放していない状態(図3(i)参照)では、上流側から表示部14は見えないが、羽根12が開放する(図3(ii)参照)と、上流側から表示部14が見えるようになる。
【0043】
特に、表示部14は、着色部分(図示せず)または/および文字部分(図示せず)を含む構成とすることにより、表示部14が着色部分を含むことで、より容易に目視確認することができる。また、表示部14が文字部分を含むことで、直観的にある空間(例えば、陰圧室)がどうなっているか(例えば、陰圧になっていること)を把握することができる。
【0044】
[フレーム]
図4を用いて、区画手段である引戸Dの開口部Sにエアフロー装置1が取り付けられることを説明したが、より詳細には、エアフロー装置1は、引戸Dの開口部Sに設けられたフレームF内に取り付けられる。
【0045】
図5は、引戸Dに形成された開口部に設けられたフレーム内に、エアフロー装置が取り付けられることを説明するための図である。具体的には、図5(i)は、図4(i)のB-B概略断面図にフレームFが取り付けられる前の状態を示す図であり、図5(ii)は、図4(ii)のC-C概略断面図にフレームFが取り付けられた図である。
【0046】
図5に示すように、引戸Dには、施工業者などにより開口部Sが形成されて、そこに嵌合穴Hが設けられたフレームFが取り付けられている。フレームFは、その内部にエアフロー装置1を収容するもの(枠体10は、フレームFに嵌合するもの)であるため、内部がエアフロー装置1の枠体10と略同形状である。例えば、本実施形態において枠体10は正面から背面にかけて断面形状が正方形であるため、フレームFの内部の正面から背面にかけて断面形状も正方形となっている。
また、フレームFは、引戸Dの開口部Sに取り付けられ、本実施形態ではフレームFの開口は幅50mm×高さ50mmである。一方、エアフロー装置1の枠体10は幅49.5mm×高さ49.5mm×奥行36mmであり、フレームF内に収容できる寸法である。なお、羽根12は枠体10と同様にABS樹脂で、厚み0.3mmの板状に形成される。
【0047】
そして、フレームFは、正面および背面が開口しており、正面または背面からエアフロー装置1を挿入することができる。一方、フレームFの左右の側面には、それぞれ嵌合穴Hが設けられている。
【0048】
ここで、エアフロー装置1の枠体10の左右の側面には、図1,2に示すように、突起16が設けられている。このそれぞれの突起16が、フレームFにエアフロー装置を取り付けた際に嵌合穴Hと嵌合するため、エアフロー装置1をフレームF(開口部S)に挿入すると、エアフロー装置1はフレームF(開口部S)にしっかりと固定される。
【0049】
このように、エアフロー装置1は、フレームF内に、エアフロー装置1が取り付けられた際における嵌合穴Hと嵌合する突起16が枠体10の側面に設けられているため、エアフロー装置1は、突起16を、区画手段Dに形成された開口部Sに設けられたフレームFの嵌合穴Hに嵌合させることで、容易に設置可能である。
【0050】
つまり、予め開口部Sに取り付けられたフレームFの嵌合穴Hに、枠体10の突起16を嵌合させることで、工事や工具などは要らずに、容易に建具や壁面などにエアフロー装置1を取り付けることができる。かつ、突起16と嵌合穴Hの嵌合状態を解除する(エアフロー装置1の正面側または背面側から枠体10を手で押す)ことで、工事や工具などは要らずに、容易に建具や壁面などからエアフロー装置1を取り外すことができる。
【0051】
なお、前述したように、エアフロー装置1の羽根12は枠体10内から飛び出さないため、エアフロー装置1を壁面に設置した場合でも、人や物に羽根12が接触するおそれはない。また、エアフロー装置1を建具(引戸)に設置した場合でも、羽根12が壁面と接触するおそれがない。
【0052】
[エアフロー装置の動作]
図6は、フレーム内に取り付けられたエアフロー装置の動作を説明するための図である。
エアフロー装置1は、図6(i)に示す矢印方向に流れる空気により、2つの空間の圧力差が規定値以上に達すると、羽根12は開放する。そのため、羽根12が開放している場合は、2つの空間で規定値以上の圧力差が発生していることを目視で容易に確認することができる。
【0053】
一方、エアフロー装置1は、2つの空間の圧力差がゼロである場合、または図6(ii)に示す矢印方向に流れる空気により2つの空間の圧力差の関係が逆転する場合は、羽根12は全閉する。そのため、羽根12が全閉している場合は、2つの空間の圧力差がゼロであること、または2つの空間の圧力差が通常とは異なる(逆転した)関係になっていることを確認することができる。
【0054】
[設置例]
図7(i)は、エアフロー装置1が、病院や介護施設などの陰圧室の引戸Dに取り付けられた例を示す図であり、図7(ii)は、引戸Dにより区画された2つの空間(陰圧室、廊下)を側方から見た断面図である。さらに、図7(iii)は、図7(ii)と同様に上から見たイメージ図であり、複数の陰圧室(陰圧室1,2)の引戸D1,D2にそれぞれエアフロー装置1が取り付けられた例を示す図である。
ここで、エアフロー装置1は、廊下側を上流側とし、陰圧室1、2側を下流側として引戸Dに取り付けられている。
【0055】
陰圧室1、2は廊下よりも気圧が低くなるように、陰圧生成手段(例えば天井面に設けられる換気扇20などの送風機)をそれぞれ稼働させている。そのため、空気は、廊下から陰圧室1、2(図7(ii),(iii)に示す矢印方向)にそれぞれ流れる。そして、この2つの空間(廊下と陰圧室1,2)の圧力差が規定値以上に達すると、エアフロー装置1の羽根12は開放するため、羽根12が開放している場合は、廊下と陰圧室1、2との間で規定値以上の圧力差が発生していること、つまり、陰圧室1,2内の圧力が外部(廊下など)よりも規定値通りに低く調整されていることを、目視で容易に確認することができる。なお、エアフロー装置1の羽根12が全閉している場合は表示部14が見えないため、廊下と陰圧室1または2との圧力差がない状態を示すほか、陰圧生成手段の故障などの異常状態の早期発見が可能になる。
【0056】
以上のように説明したエアフロー装置1は本発明に係るエアフロー装置を例示するものであり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、本発明の構成は例示したものに限定されない。
例えば、枠体10に設けられる突起16の数や位置は、フレームFに設けられる嵌合穴Hの数や位置に応じて適宜設計変更可能である。また、枠体10の形状やサイズも、取り付けられる開口部Sの形状やサイズに合わせて、適宜設計変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るエアフロー装置は、建具や壁面などといった区画手段により区画された2つの空間で規定値以上の圧力差が発生していることを目視で容易に確認することができ、様々な場所や施設などで広く利用することができるため、産業上有用である。
【符号の説明】
【0058】
1 エアフロー装置
10 枠体
11 軸体
12 羽根
12a 羽根の基端部
12b 羽根の先端部
13 導風部
14 表示部
15 塞ぎ部
15a 上流側に設けられた塞ぎ部
15b 下流側に設けられた塞ぎ部
16 突起
20 換気扇
D,D1,D2 引戸
S 開口部
K ドアハンドル
F フレーム
H 嵌合穴
d 隙間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7