IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サカタインクス株式会社の特許一覧

特開2024-140644光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140644
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光硬化型インクジェット印刷用インク組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20241003BHJP
【FI】
C09D11/38
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051896
(22)【出願日】2023-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-07
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100131587
【弁理士】
【氏名又は名称】飯沼 和人
(72)【発明者】
【氏名】福家 和弘
(72)【発明者】
【氏名】小笠原 光紀
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 大悟
(72)【発明者】
【氏名】金城 潤
(72)【発明者】
【氏名】中島 興範
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AC01
4J039AD09
4J039BC20
4J039BC36
4J039BC50
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE22
4J039BE24
4J039BE27
4J039BE28
4J039EA05
4J039FA01
4J039FA02
4J039FA03
4J039FA04
4J039FA05
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】顔料及び顔料分散剤を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物において、その印刷層と被印刷基材との密着性を高めつつ、インク組成物中の顔料の分散安定性を高めて、保存安定性を改善すること。
【解決手段】顔料、顔料分散剤、光重合開始剤、及び光重合性化合物を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物であって:前記光重合性化合物が親水性単官能モノマー及びリン酸エステル(メタ)アクリレートを含有し;前記インク組成物全体に対し、前記リン酸エステル(メタ)アクリレートを0.2~4.0質量%含み;前記リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する前記親水性単官能モノマーの質量比が15~300であり;前記顔料分散剤を顔料100質量部に対して38~90質量部含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、顔料分散剤、光重合開始剤、及び光重合性化合物を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物であって、
前記光重合性化合物が親水性単官能モノマー及びリン酸エステル(メタ)アクリレートを含有し、
前記インク組成物全体に対し、前記リン酸エステル(メタ)アクリレートを0.2~4.0質量%含み、
前記リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する前記親水性単官能モノマーの質量比が15~300であり、
前記顔料分散剤を顔料100質量部に対して38~90質量部含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項2】
前記親水性単官能モノマーが、N-2置換(メタ)アクリルアミド又は水酸基含有モノマーの少なくとも1種を含有する、請求項1に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項3】
前記顔料分散剤が、塩基性基含有顔料分散剤を含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項4】
前記顔料分散剤が、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤及びアミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤を含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項5】
前記光重合性化合物が、アミン変性オリゴマーをさらに含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項6】
前記光重合性化合物が、前記リン酸エステル(メタ)アクリレート以外の多官能モノマーをさらに含有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【請求項7】
前記リン酸エステル(メタ)アクリレートは、3つの(メタ)アクリレート基を有する、請求項1又は2に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、様々な基材の印刷に使用されている。インクジェット印刷は、版が不要であることから小ロット生産において有利であるし、また、光硬化型(典型的には、紫外線硬化型)インク組成物は有機溶剤の含有量を低減できることから、VOC排出の削減が可能という環境対応の面でのメリットもある。
【0003】
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物による印刷は、被印刷基材にインク滴を着弾させ、インク滴ごとに光を照射して硬化させることで、硬化膜からなる印刷層が被印刷基材に形成される。このとき、被印刷基材の材質や、インク組成物の組成等によっては、当該硬化膜からなる印刷層と被印刷基材表面との密着性が十分に得られないことがある。
【0004】
これに対して、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物による印刷層と被印刷基材表面との密着性を高める手段として、インク組成物に、リン酸基を含む重合性化合物又は重合性リン酸エステル化合物を配合することが提案されている(特許文献1及び2)。特許文献1には、重合性化合物と着色剤としての染料を含有する活性エネルギー線硬化型インクジェットインク組成物に、リン酸基を含む重合性化合物を配合することが提案されている。また特許文献2には、重合性リン酸エステル化合物を含む重合性モノマーと光重合開始剤とを含むインクジェットインキ組成物において、光重合開始剤をアシルフォスフィン酸オキサイド系開始剤とすることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-328227号公報
【特許文献2】特開2012-162615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の通り、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に、リン酸基を含む重合性化合物又は重合性リン酸エステル化合物を配合することで、印刷層(つまり、硬化塗膜)と被印刷基材表面との密着性を高めることが提案されている。ところが、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に着色剤である顔料と、その顔料を分散させるための顔料分散剤とを配合し、かつリン酸基を含む重合性化合物又は重合性リン酸エステル化合物を配合すると、顔料の分散安定性が低下し、保存安定性が低下することが見出された。
【0007】
そこで本発明は、顔料及び顔料分散剤を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物において、その印刷層と被印刷基材との密着性を高めつつ、インク組成物中の顔料の分散安定性を高めて、保存安定性を改善することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下に示す光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
[1]顔料、顔料分散剤、光重合開始剤、及び光重合性化合物を含有する光硬化型インクジェット印刷用インク組成物であって:前記光重合性化合物が親水性単官能モノマー及びリン酸エステル(メタ)アクリレートを含有し;前記インク組成物全体に対し、前記リン酸エステル(メタ)アクリレートを0.2~4.0質量%含み;前記リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する前記親水性単官能モノマーの質量比が15~300であり;前記顔料分散剤を顔料100質量部に対して38~90質量部含む、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【0009】
また本発明は、好ましい態様として、以下に示す光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に関する。
[2]前記親水性単官能モノマーが、N-2置換(メタ)アクリルアミド又は水酸基含有モノマーの少なくとも1種を含有する、前記[1]に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
[3]前記顔料分散剤が、塩基性基含有顔料分散剤を含有する、前記[1]又は[2]に記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
[4]前記顔料分散剤が、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤及びアミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤を含有する、前記[1]~[3]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
[5]前記光重合性化合物が、アミン変性オリゴマーをさらに含有する、前記[1]~[4]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
[6]前記光重合性化合物が、前記リン酸エステル(メタ)アクリレート以外の多官能モノマーをさらに含有する、前記[1]~[5]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
[7]前記リン酸エステル(メタ)アクリレートは、3つの(メタ)アクリレート基を有する、前記[1]~[6]のいずれかに記載の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物によれば、インクジェット印刷によって被印刷基材に対して、密着性の高い着色印刷層を形成することができ、しかも、インク組成物の保存安定性が高いため、印刷における取り扱いが容易となる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[A.光硬化型インクジェット印刷用インク組成物の組成]
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物(以下において、単に「インク組成物」ともいう)は、1)顔料と、2)顔料分散剤と、3)光重合性化合物と、4)光重合開始剤と、5)任意の他の成分と、を含有し:3)光重合性化合物は、親水性単官能モノマーとリン酸エステル(メタ)アクリレートとを組み合わせて含み、更に他の任意の光重合性化合物を含有することができる。
【0012】
[A-1.顔料について]
インク組成物は、顔料を含有する。顔料は、インク組成物に着色力や隠蔽力等を付与するために添加される成分であり、例えば着色顔料、白色顔料、金属パウダー等が挙げられる。このような顔料としては、従来からインク組成物に使用されている、例えば下記の有機及び/又は無機顔料を特に制限なく挙げることができる。
【0013】
顔料の例には、染料レーキ顔料、アゾ系、ベンゾイミダゾロン系、フタロシアニン系、キナクリドン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジコ系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、ニトロ系、ニトロソ系、フラバンスロン系、キノフタロン系、ピランスロン系、インダンスロン系の有機顔料及び各種無機顔料等が挙げられる。
【0014】
これらの顔料の中でも、ジスアゾイエロー(ピグメントイエロー12、ピグメントイエロー13、ピグメントイエロー14、ピグメントイエロー17、ピグメントイエロー1)、ハンザイエロー、ピグメントイエロー150、ピグメントイエロー155等のイエロー顔料;ブリリアントカーミン6B、レーキレッドC、ウオッチングレッド、キナクリドン、ピグメントレッド122、ピグメントレッド254等のマゼンタ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アルカリブルー、ピグメントブルー15:4等のシアン顔料;酸化チタン(ピグメントホワイト6等)、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、鉄黒、酸化クロムグリーン、カーボンブラック(ピグメントブラック7等)、黒鉛等の有色顔料(白色、黒色等の無彩色の着色顔料も含める)、アルミニウムペースト、ブロンズパウダー等の金属パウダー等が好ましく例示される。
【0015】
インク組成物における顔料の含有量は、顔料の種類と目的とする着色の程度に応じて異なり、特に限定されないが、インク組成物の全体に対して、例えば2.0~30.0質量%程度でありうる。なお、着色されたインク組成物を調製する場合、補色として他の色の顔料や染料を併用したり、他の色のインク組成物を添加したりすることもできる。
【0016】
[A-2.顔料分散剤について]
インク組成物は、顔料を分散させるための顔料分散剤を含む。顔料分散剤は、高分子系の顔料分散剤であることが好ましく、また、塩基性基を含有する顔料分散剤であることが好ましい。塩基性基を含有する顔料分散剤の例には、塩基性基含有ポリエステル系顔料分散剤、塩基性基含有アクリル系顔料分散剤、塩基性基含有ウレタン系顔料分散剤、塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤等の高分子系顔料分散剤のほか、アニオン性界面活性剤等が含まれる。
【0017】
高分子系顔料分散剤は、特に限定されないが、ブロックまたはグラフト構造により少なくとも主鎖の末端に(片末端又は両末端に)、塩基性基からなる顔料親和部分を有する直鎖状の高分子でありうる。高分子系顔料分散剤は、塩基性基を1分子中に2~3000個含むことができ、数平均分子量が1000~1000000でありうる。
【0018】
また、顔料分散剤のアミン価は10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましく;一方、100mgKOH/g以下であることが好ましく、80mgKOH/g以下であることがより好ましく、70mgKOH/g以下であることが更に好ましい。アミン価とは、遊離塩基及び塩基の総量を示すもので、試料1gを中和するのに要する塩酸に対して当量の水酸化カリウムのmg数で表したものである。
【0019】
インク組成物は、アミン価の異なる2種以上の顔料分散剤を含有することが好ましい場合がある。つまり、一定未満のアミン価を有する顔料分散剤と、一定以上のアミン価を有する顔料分散剤と、を組み合わせると、インク組成物の顔料の分散安定性を高めることができる。好ましくは、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤と、アミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤とを組み合わせることができる。
【0020】
顔料分散剤、好ましくは塩基性基を含有する顔料分散剤の具体的態様としては、以下の(1)~(17)の態様が挙げられる。
【0021】
(1)ポリアミン化合物(例えば、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンポリイミン等のポリ(低級アルキレンアミン)等)のアミノ基および/またはイミノ基と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステル、ポリアミドおよびポリエステルアミドよりなる群から選択される少なくとも1種との反応生成物(特開2001-59906号公報参照);
(2)ポリ(低級)アルキレンイミン、メチルイミノビスプロピルアミン等の低分子アミノ化合物と、遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応生成物(特開昭54-37082号公報、特開平01-311177号公報参照);
(3)ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に、メトキシポリエチレングリコール等のアルコール類やカプロラクトンポリエステル等の水酸基を1個有するポリエステル類、2~3個のイソシアネート基反応性官能基を有する化合物、イソシアネート基反応性官能基と第3級アミノ基とを有する脂肪族または複素環式炭化水素化合物を順次反応させてなる反応生成物(特開平02-612号公報参照);
(4)アルコール性水酸基を有するアクリレートの重合物に、ポリイソシアネート化合物とアミノ基を有する炭化水素化合物とを反応させた化合物;
(5)低分子アミノ化合物にポリエーテル鎖を付加させてなる反応生成物;
(6)イソシアネート基を有する化合物にアミノ基を有する化合物を反応させてなる反応生成物(特開平04-210220号公報参照);
(7)ポリエポキシ化合物に遊離のカルボキシル基を有する線状ポリマーおよび2級アミノ基を1個有する有機アミン化合物を反応させた反応生成物(特開平09-87537号公報参照);
(8)片末端にアミノ基と反応し得る官能基を有するポリカーボネート化合物とポリアミン化合物との反応生成物(特開平09-194585号公報参照);
(9)メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート等のメタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルから選択される少なくとも1種と、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアミド、ビニルイミダゾール、ビニルピリジン、アミノ基とポリカプロラクトン骨格を有するモノマー等の塩基性基含有重合モノマーの少なくとも1種と、スチレン、スチレン誘導体、その他の重合性モノマーの少なくとも1種との共重合体(特開平01-164429号公報参照);
(10)塩基性基含有カルボジイミド系顔料分散剤(国際公開WO04/000950号公報参照);
(11)3級アミノ基、4級アンモニウム塩機等の塩基性基を有するブロックと官能基を有していないブロックからなるブロック共重合体(特開2005-55814号公報参照);
(12)ポリアリルアミンにポリカーボネート化合物をマイケル付加反応させて得られる顔料分散剤(特開平09-194585号公報参照);
(13)ポリブタジエン鎖と塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-257243号公報参照);
(14)分子内にアミド基を有する側鎖と、塩基性窒素含有基とをそれぞれ少なくとも1つ有するカルボジイミド系化合物(特開2006-176657号公報参照);
(15)エチレンオキサイド鎖とプロピレンオキサイド鎖を有する構成単位を有し、かつ四級化剤により四級化されたアミノ基を有するポリウレタン系化合物(特開2009-175613号公報参照);
(16)分子内にイソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物のイソシアネート基と、分子内に活性水素基を有し、かつ、カルバゾール環及び/又はアゾベンゼン骨格を有する化合物の活性水素基とを反応させて得られる化合物であって、該化合物の分子内の、イソシアヌレート環を有するイソシアネート化合物に由来するイソシアネート基と、イソシアネート基と活性水素基との反応により生じたウレタン結合及び尿素結合との合計に対するカルバゾール環とアゾベンゼン骨格の数が15~85%である化合物(特開2010-107965号公報参照);
(17)アミノ基を有するアクリレート重合物に、ポリエーテルまたは、ポリエステル側鎖を導入したグラフト共重合体等。
【0022】
顔料分散剤は、市場からも入手可能である。市場から入手可能な顔料分散剤の例には、ルーブリゾール社のSOLSPERSEシリーズ、ビックケミー社のDisperbykシリーズ及びBYKJETシリーズ、BASF社のEFKAシリーズ、味の素ファインテクノ社のアジスパーシリーズ等が含まれる。
【0023】
SOLSPERSEシリーズの例には、SOLSPERSE11200、SOLSPERSE13240、SOLSPERSE13650、SOLSPERSE13940、SOLSPERSE16000、SOLSPERSE17000、SOLSPERSE18000、SOLSPERSE20000、SOLSPERSE24000、SOLSPERSE24000SC、SOLSPERSE24000GR、SOLSPERSE2600、SOLSPERSE28000、SOLSPERSE31845、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE32500、SOLSPERSE32550、SOLSPERSE32600、SOLSPERSE33000、SOLSPERSE34750、SOLSPERSE35100、SOLSPERSE35200、SOLSPERSE37500、SOLSPERSE38500、SOLSPERSE39000、SOLSPERSE56000、SOLSPERSE71000、SOLSPERSE73000、SOLSPERSE74000等が含まれる。
【0024】
Disperbykシリーズの例には、Disperbyk-101、Disperbyk-108、Disperbyk-109、Disperbyk-112、Disperbyk-116、Disperbyk-130、Disperbyk-140、Disperbyk-142、Disperbyk-145、Disperbyk-161、Disperbyk-162、Disperbyk-163、Disperbyk-164、Disperbyk-166、Disperbyk-167、Disperbyk-168、Disperbyk-180、Disperbyk-182、Disperbyk-183、Disperbyk-185、Disperbyk-184、Disperbyk-2000、Disperbyk-2001、Disperbyk-2008、Disperbyk-2020、Disperbyk-2050、Disperbyk-2070、Disperbyk-2150、Disperbyk-2155等が含まれる。
【0025】
BYKJETシリーズの例には、BYKJET-9131、BYKJET-9132、BYKJET-9133、BYKJET-9142、BYKJET-9150、BYKJET-9151、BYKJET-9152、BYKJET-9170、BYKJET-9171、BYKJET-9175、BYKJET-9177等が含まれる。
【0026】
EFKAシリーズの例には、EFKA4008、EFKA4046、EFKA4047、EFKA4015、EFKA4020、EFKA4050、EFKA4055、EFKA4060、EFKA4080、EFKA4300、EFKA4330、EFKA4400、EFKA4401、EFKA4402、EFKA4403、EFKA4500、EFKA4510、EFKA4530、EFKA4800、EFKA PX4701、EFKA PX4703等が含まれる。
【0027】
アジスパーシリーズの例には、アジスパーPB-711、アジスパーPB-821、アジスパーPB-822等が含まれる。
【0028】
これらのうち、アミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤の例には、SOLSPERSE24000(41.6mgKOH/g)、SOLSPERSE33000(43mgKOH/g)、SOLSPERSE71000(75mgKOH/g)、SOLSPERSE73000(80mgKOH/g)、SOLSPERSE74000(81mgKOH/g)、Disperbyk-108(71mgKOH/g)、Disperbyk-180(94mgKOH/g)、Disperbyk-2008(66mgKOH/g)、Disperbyk-2155(48mgKOH/g)、EFKA4300(57mgKOH/g)、EFKA4401(48~52mgKOH/g)、EFKA PX4701(40mgKOH/g)、EFKA PX4703(56mgKOH/g)等が含まれる。
【0029】
また、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤の例には、SOLSPERSE32000(31.2mgKOH/g)、SOLSPERSE39000(26mgKOH/g)、SOLSPERSE56000(39mgKOH/g)、Disperbyk-163(10mgKOH/g)、Disperbyk-168(11mgKOH/g)、Disperbyk-2050(31mgKOH/g)、BYKJET-9151(17mgKOH/g)、BYKJET-9152(27mgKOH/g)、アジスパーPB-821(11.2mgKOH/g)、アジスパーPB-822(18.2mgKOH/g)等が含まれる。
【0030】
アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤と、アミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤とを組み合わせる場合には:アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤は、10mgKOH/g以上のアミン価を有することが好ましく、20mgKOH/g以上のアミン価を有することがより好ましく;アミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤は、100mgKOH/g以下のアミン価を有することが好ましく、80mgKOH/g以下のアミン価を有することがより好ましく、70mgKOH/g以下のアミン価を有することがより好ましい。また、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤と、アミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤との、アミン価の「差」は1mgKOH/g以上であればよい。
【0031】
インク組成物における顔料分散剤の含有量は、顔料が分散できるように調整されればよい。例えば、顔料100質量部に対して、顔料分散剤の含有量は38質量部以上であり、40質量部以上であることが好ましく、50質量部以上であることがより好ましく;90質量部以下であり、80質量部以下であることが好ましい。インク組成物全体に対する顔料分散剤の含有量は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.8質量%以上であることがより好ましく;4質量%以下であることが好ましく、3質量%以下であることがより好ましい。また、アミン価40mgKOH/g未満の顔料分散剤(α)とアミン価40mgKOH/g以上の顔料分散剤(β)とを組み合わせる場合に、αとβの含有質量比率も特に限定されないが、α:β=10:1~10:15の範囲にあることが好ましい。
【0032】
[A-3.光重合性化合物について]
インク組成物は光重合性化合物を含み、ここで光重合性化合物は、親水性単官能モノマーとリン酸エステル(メタ)アクリレートとを組み合わせて含み、かつ、他の任意の光重合性化合物を含んでいてもよい。他の任意の光重合性化合物として、オリゴマー(特に、アミン変性オリゴマー)、多官能モノマー(但し、リン酸エステル(メタ)アクリレートを除く)を含むことが好ましい場合がある。インク組成物全体に対する光重合性化合物の合計割合は、80質量%以上であることが好ましく、85質量%以上であることがより好ましい。
【0033】
[A-3a.親水性単官能モノマー]
親水性単官能モノマーは、1つのエチレン性不飽和基を有する単官能モノマーであって、かつ、水酸基(ヒドロキシ基)、アミド基、カルボキシル基(又はその塩)、スルホン酸基(又はその塩)、リン酸基(又はその塩)、エーテル基(グリコール基等)、アミノ基等の親水性基を有する単官能モノマーである。前記親水性単官能モノマーは、水酸基及び/又はアミド基を有する単官能モノマーであることが好ましい。
【0034】
水酸基を有する単官能モノマーの例には:2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;2-ヒドロキシエチルビニルエーテル(HEVE)、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、4-ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル(HBAGA)等が含まれる。
【0035】
アミド基を有する単官能モノマーは、(メタ)アクリルアミドであることが好ましく、更にアミド基(-C(=O)NH2)の窒素上の2つの水素が他の置換基で置換された(メタ)アクリルアミド(N-2置換(メタ)アクリルアミド)であることが好ましく、特に、N-2置換アクリルアミドが好ましい。N-2置換(メタ)アクリルアミドの例には:(メタ)アクリロイルモルフォリン、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド;ジ(2-ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、ジ(3-ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、ジ(4-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等のN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミド、及びこれらN-アルキロール(C1~5)(メタ)アクリルアミドの、エチレンオキシド又はプロピレンオキシドの1~3モル付加物等が含まれる。
【0036】
なお、アミド基を有する単官能モノマーは、1)(メタ) アクリルアミドであってもよく、2)アミド基(-C(=O)NH2)の窒素上の1つの水素が他の置換基で置換された、N-メチル(メタ) アクリルアミド、N-メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N-ブトキシメチル(メタ) アクリルアミド等であってもよく;3)Nビニルピロリドン(NVP)、N-ビニルホルムアミド等であってもよい。
【0037】
これらの親水性単官能モノマーは、一種を単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、アミド基を有する単官能モノマー(特に、N-2置換(メタ)アクリルアミド)と水酸基を有する単官能モノマーとを組み合わせて含むことが好ましい。
【0038】
インク組成物における親水性単官能モノマーの含有量は、顔料の分散安定性が維持できるように設定されることが好ましい。後述の通り、リン酸エステル(メタ)アクリレートは、顔料分散安定性を低下させる作用を有しうる成分であるところ、本発明のインク組成物において親水性単官能モノマーは、リン酸エステル(メタ)アクリレートによる顔料分散安定性の低下を防ぐ作用を有しうる。そのため、リン酸エステル(メタ)アクリレートとの相対含有量を適切に設定することが好ましい(詳細は、後述の[A-3b.]の欄において述べる)。
【0039】
インク組成物における親水性単官能モノマーの含有量は、インク組成物全体に対して、目安として15.0~75.0質量%の範囲にあることが好ましい。インク組成物の物性(粘度や表面張力等)を適切な範囲に調整しやすくするためである。また、光重合性化合物全体に対する、親水性単官能モノマーの含有量は、20.0~80.0質量%の範囲にあることが好ましい。
【0040】
[A-3b.リン酸エステル(メタ)アクリレート]
インク組成物は、光重合性化合物であるリン酸エステル(メタ)アクリレートを含有する。リン酸エステル(メタ)アクリレートとは、リン酸エステル基と(メタ)アクリロイル基とを分子内にあわせ持つ化合物である。すなわち、リン酸エステル(メタ)アクリレートとは、リン酸(P(=O)(OH)3)の3つの-OH基のうちの1、2又は3つに、「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」を導入した化合物であり、以下の式で示されうる。以下の式における置換基R(1a), R(2a), R(2b), R(3a), R(3b), R(3c)は、それぞれ独立して、「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」である。(メタ)アクリロイル基とは、メタアクリロイル基又はアクリロイル基を意味する。
【化1】
【0041】
上述の式における置換基R(1a), R(2a), R(2b), R(3a), R(3b), R(3c)は、それぞれ独立して(互いに同一又は異なる構造の官能基である)「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」を示すが、(メタ)アクリロイル基を含有する官能基の例には、以下の式で示される基が含まれる。以下の式において、Rは水素原子又はメチル基を示し、Rはアルキレン基(好ましくは、炭素数1~4のアルキレン基)、Rはアルキレン基(好ましくは炭素数1~10のアルキレン基)を示す。
【化2】
【0042】
リン酸エステル(メタ)アクリレートにおける「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」の好ましい例は、((メタ)アクリロイルオキシ)アルキル基であり;((メタ)アクリロイルオキシ)アルキル基の例には、(2-(メタ)アクリロイルオキシ)エチル基、(3-(メタ)アクリロイルオキシ)プロピル基等が含まれる。
【0043】
リン酸エステル(メタ)アクリレートの更なる具体例には、以下が含まれる。
【化3】
【0044】
【化4】
【0045】
【化5】
(l, m, nは、それぞれ独立して、1又は2を示す)
【0046】
リン酸エステル(メタ)アクリレートは、リン酸(P(=O)(OH)3)の3つの-OH基のうちの少なくとも一つが-OH基のままであってもよいが、3つの-OH基の全てに「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」を導入してもよい(リン酸の-OH基が残っていない)。3つの-OH基の全てに「(メタ)アクリロイル基を含有する官能基」を導入したリン酸エステル(メタ)アクリレートは、粘度が低いためインク組成物の物性を調整しやすいというメリットがある他、親水性単官能モノマーと組み合わせることで、インク組成物の硬化塗膜の基材密着性を十分に高めることができる。
【0047】
インク組成物におけるリン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量は、インク組成物全体に対して、0.2質量%以上であり、0.5質量%以上であることが好ましく;4.0質量%以下であり、3.0質量%以下であることが好ましい。インク組成物におけるリン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量を一定以上とすることで、インク組成物の硬化塗膜の基材密着性が高まる。一方、リン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量を一定以下とすることで、インク組成物の保存安定性、つまり、顔料の分散安定性を高めることができる。
【0048】
リン酸エステル(メタ)アクリレートは、顔料の分散安定性を低下させる作用、より具体的には顔料分散剤の機能を低下させる作用を有しうる。そのため、リン酸エステル(メタ)アクリレートを配合すると、インク組成物の顔料分散安定性を維持することが困難であることがあった。これに対して本発明のインク組成物は、一定以上の親水性単官能モノマーを配合することで、リン酸エステル(メタ)アクリレートを配合しても、顔料の分散安定性が高いインク組成物となる。
【0049】
そのため、インク組成物の顔料分散安定性を維持できるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートと親水性単官能モノマーとの含有比率が設定されることが好ましい。具体的には、リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する親水性単官能モノマーの含有量が、質量比で、15倍以上であり、20倍以上であることが好ましく、30倍以上であることがより好ましく;300倍以下であり、100倍以下であることが好ましく、70倍以下であることがより好ましい。
【0050】
親水性単官能モノマーの配合による、顔料分散安定性の維持メカニズムは特に限定されない。想定されるメカニズムとして、リン酸エステル(メタ)アクリレートは比較的極性の高い成分であるため、同様に極性の高い顔料分散体(その周辺の分散剤)付近に局在化し、互いの相互作用により、顔料の分散が破壊されて、インク組成物の安定性の低下を招く可能性があるところ;親水性単官能モノマーを加えることで、リン酸エステル(メタ)アクリレートの局在化が低減され、リン酸エステル(メタ)アクリレートと顔料分散体との相互作用が緩和されて、顔料の分散低下が抑制されると考えることができる。
【0051】
[A-3c.オリゴマー(アミン変性オリゴマー)]
インク組成物は光重合性化合物であるオリゴマーを含有してもよい。オリゴマーとは、分子内に有するエチレン性不飽和結合が重合して高分子量化する成分である。オリゴマーは、重合前に比較的高分子量の成分であるので、インク組成物に適度な粘性や弾性を付与することができる。また、オリゴマーは比較的極性が高く、硬化後のインク組成物に非吸収性媒体への接着性を付与することがある。オリゴマーのなかでもアミン変性オリゴマーは、インク組成物の光硬化性を高めることができるため、本発明のインク組成物は、アミン変性オリゴマーを含むことが好ましい場合がある。
【0052】
アミン変性オリゴマーとは、分子内に、1以上のアミノ基とともに、1以上の光重合性官能基を有するオリゴマーであり、2以上の光重合性官能基を有するオリゴマー(多官能アミン変性オリゴマー)であることが好ましい。ここで、光重合性官能基は(メタ)アクリロイル基であることが好ましく;好ましいアミン変性オリゴマーは、分子内に1以上のアミノ基とともに、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するアミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーである。
【0053】
アミン変性(メタ)アクリレートオリゴマーは、所望のモノマーを重合して合成して得てもよく、市販品であってもよい。市販品の例には、GENOMER5161、GENOMER5275(RAHN社);CN371、CN371NS、CN373、CN383、CN384、CN386、CN501、CN503、CN550、CN551(サートマー社);EBECRYL80、EBECRYL81、EBECRYL83、EBECRYL7100、EBECRYL84、EBECRYLP115(ダイセル・オルネクス社);LAROMER PO 83F、LAROMER PO 84F、Laromer LR8946、Laromer LR8956、Laromer LR8996、Laromer LR8894(BASF社);AgiSyn001、AgiSyn002、Agisyn003、Agisyn008(DSM Coating Resin社);Photomer4771、Photomer4775、Photomer4967、Photomer5096、Photomer5662、Photomer5930(コグニス社);DoublecureEPD、DoublecureOPD、Doublecure115、Doublecure225、Doublecure645、PolyQ222、PolyQ226、PolyQ224、PolyQ101(DoubleBondChemicals社);等が挙げられる。
【0054】
アミン変性オリゴマーの粘度は限定されないが、特に、25℃での粘度が2000mPa・s以下であると、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物全体の粘度を適切な範囲とするために好ましい。
【0055】
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物に含まれるアミン変性オリゴマーの含有量は、インク組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり;一方、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下である。
【0056】
[A-3d.多官能モノマー(リン酸エステル(メタ)アクリレート及びオリゴマーを除く)]
インク組成物は、光重合性化合物である多官能モノマーを含有してもよい。多官能モノマー(2以上のエチレン性不飽和結合を備えたモノマー)としては、例えば下記の多官能(メタ)アクリレート系化合物やビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物等を用いることができる。
【0057】
多官能(メタ)アクリレート系化合物は、2官能のジ(メタ)アクリレート系化合物、3官能のトリ(メタ)アクリレート系化合物、又はそれ以上の多官能(メタ)アクリレート系化合物であってもよい。
【0058】
ジ(メタ)アクリレート系化合物の例には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリルヒドロキシピバレートジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,14-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,16-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,2-ヘキサデカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジメチル-2,4-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2-ジエチル-1,3-プロパンジオ-ルジ(メタ)アクリレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールオクタンジ(メタ)アクリレート、2-エチル-1,3-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-メチル-1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメチロールジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFテトラエチレンオキサイド付加体ジカプロラクトネートジ(メタ)アクリレート等、グリセリン、ペンタエリスリトール、ジグリセリン、ジトリメチロールプロパン及びジペンタエリスリトール等の多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等が含まれる。
【0059】
トリ(メタ)アクリレート系化合物の例には、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリカプロラクトネートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールオクタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等;及びこれらの3EO(エチレンオキサイド)変性物、6EO変性物、9EO変性物(3EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、3EO変性トリメチロールヘキサントリ(メタ)アクリレート等)が含まれる。
【0060】
4官能以上の(メタ)アクリレート系化合物の例には、トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラカプロラクトネートテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールエタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールブタンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールヘキサンテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールオクタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールポリアルキレンオキサイドヘプタ(メタ)アクリレート等の4官能以上のモノマー;等を挙げることができる。
【0061】
ビニルエーテル基含有(メタ)アクリレート系化合物の例には、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1-ビニロキシメチルプロピル、(メタ)アクリル酸-2-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-3-メチル-3-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-1,1-ジメチル-2-ビニロキシエチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-1-メチル-2-ビニロキシプロピル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシブチル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸-5-ビニロキシペンチル、(メタ)アクリル酸-6-ビニロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸-4-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-3-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-2-ビニロキシメチルシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸-p-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-m-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-o-ビニロキシメチルフェニルメチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)プロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシ)イソプロピル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシエトキシイソプロポキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸-2-(ビニロキシイソプロポキシイソプロポキシ)エチル等が挙げられる。
【0062】
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における多官能モノマーの含有割合は、インク組成物全体に対して、10質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく;また、70質量%以下であることが好ましく、60質量%以下であることがより好ましい。また、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における多官能モノマーの含有割合は、光重合性化合物全体に対して、15質量%以上であることが好ましく、25質量%以上であることがより好ましく;また、80質量%以下であることが好ましく、70質量%以下であることがより好ましい。
【0063】
[A-4.光重合開始剤について]
本発明のインク組成物は、光重合開始剤を含む。光重合開始剤の例には、ベンゾインエーテル系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、α-ケトール系光重合開始剤、芳香族スルホニルクロリド系光重合開始剤、光活性オキシム系光重合開始剤、ベンゾイン系光重合開始剤、ベンジル系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、ケタール系光重合開始剤、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤等が挙げられる。これらの中でも、光に対する硬化性が良好である観点から、トリアジン系光重合開始剤、アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤が好ましい。これらの光重合開始剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができ、例えば、2種のアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤を組み合わせてもよい。
【0064】
光重合開始剤の具体例には、ビス(2,4,6-トリメチルべンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル (2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド、エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ベンゾフェノン、ジエチルチオキサントン、2-メチル-1-(4-メチルチオ)フェニル-2-モルフォリノプロパン-1-オン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド、1-クロロ-4-プロポキシチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス-2,6-ジメトキシベンゾイル-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2,2-ジメチル-2-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンジル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタン-1-オン等が挙げられる。
【0065】
インク組成物における光重合開始剤の量は、光硬化性樹脂組成物の所望の硬化速度に応じて設定されればよいが、目安として、1質量%以上であることが好ましく、より好ましくは3質量%以上であり;また、10質量%以下であることが好ましく、より好ましくは8質量%以下である。
【0066】
[A-5.任意の他の成分について]
本発明のインク組成物は、他の任意の成分を含んでいてもよく、他の任意の成分の例には、増感剤、重合禁止剤、レベリング剤等が含まれる。
【0067】
[A-5a.増感剤]
インク組成物は、硬化性を向上させる観点から増感剤を含有してもよい。増感剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0068】
増感剤の例には、9,10-ジブトキシアントラセン、9,10-ジエトキシアントラセン、9,10-ジプロポキシアントラセン、9,10-ビス(2-エチルヘキシルオキシ)アントラセン等のアントラセン系増感剤;2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサンテン-9-オン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン系増感剤等が挙げられる。前記増感剤の市販品としては、アントラセン系増感剤では、商品名「DBA」、「DEA」(川崎化成工業社)、チオキサントン系増感剤では、商品名「DETX」、「ITX」(Lambson社)等が挙げられる。
【0069】
インク組成物に増感剤を含有させる場合には、過剰添加を防止する観点から、光重合性化合物の合計(リン酸エステル(メタ)アクリレート、親水性単官能モノマー、アミン変性オリゴマー、その他重合性化合物を含む)を100質量部としたときに増感剤の含有量を5.0質量部以下とすることが好ましく、4.0質量部以下とすることがさらに好ましい。また、光重合性化合物の合計を100質量部としたときに、光重合開始剤と増感剤との合計含有量が2.0~15.0質量部とすることが好ましい。
【0070】
[A-5b.重合禁止剤]
インク組成物は、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤は、インク組成物の保存時において重合反応が生じることを防止することができ、インク組成物が増粘するのを抑制することができる。
【0071】
重合禁止剤としては、ブチルヒドロキシトルエン等のフェノール系化合物(キノン系化合物を含む)や、酢酸トコフェロール、ニトロソアミン系化合物、ベンゾトリアゾール、ヒンダードアミン等が含まれ;なかでも、キノン系化合物及びニトロソアミン系化合物をより好ましく例示することができる。
【0072】
光硬化型インクジェット印刷用インク組成物における重合禁止剤の含有割合は、重合禁止剤の種類によって適宜設定されるが、キノン系化合物の場合は、光重合性成分全体を100質量部としたときに0.1~1.0質量部程度である。
【0073】
[A-5c.界面活性剤(レベリング剤)]
インク組成物は、印刷に使用するインクジェット印刷装置のプリンターヘッドの形態に応じて、界面活性剤をレベリング剤として含むことができる。公知の界面活性剤を特に制限なく含有させることができ、界面活性剤の例には、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ベタイン界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエステル変性メチルアルキルポリシロキサン等のシリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、アセチレン系界面活性剤等が挙げられる。前記界面活性剤は単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0074】
シリコーン系界面活性剤としては、BYK-307、BYK-315N、BYK-331、BYK-333、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-345、BYK-377、BYK-378、BYK-3455、BYK-UV3500(ビックケミー社)等が挙げられる。
【0075】
フッ素系界面活性剤としては、F-410、F-444、F-553(DIC社)、FS-65、FS-34、FS-35、FS-31、FS-30(デュポン社)等が挙げられる。
【0076】
アセチレン系界面活性剤としては、ダイノール607、ダイノール609、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、オルフィンEXP.4300(日信化学工業社)、サーフィノール104E、サーフィノール104H、サーフィノール104A、サーフィノール104BC、サーフィノール104DPM、サーフィノール104PA、サーフィノール104PG-50、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465(EVONIK社)等が挙げられる。
【0077】
インク組成物における界面活性剤の含有割合は、インク組成物の表面張力を低下させ、インクジェットヘッドからの吐出安定性を高める観点から、インク組成物に対して、0.005質量%以上であることが好ましく、0.01質量%以上であることがより好ましく、そして、配合中に発生するインク組成物中の泡を抑制し、吐出安定性を高める観点から、1.5質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以下であることがより好ましい。
【0078】
界面活性剤をレベリング剤として含有させる場合において、インク組成物の25℃における表面張力が20.0~36.0mN/mとなるように、界面活性剤の含有量を調整することが好ましく、光硬化型インクジェット印刷用インク組成物中に0.1~1.5質量%であることがより好ましい。
【0079】
[B.インク組成物の物性及び用途]
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、インクジェット装置によって印刷可能であり、十分な光硬化性と被印刷基材への密着性があればよい。
【0080】
[B-1.粘度]
インク組成物の、25℃における粘度は、好ましくは5.0mPa・s以上、より好ましくは10.0mPa・s以上、さらに好ましくは15.0mPa・s以上であり;好ましくは100.0mPa・s以下、60.0mPa・s以下、より好ましくは46.0mPa・s以下、さらに好ましくは25.0mPa・s以下である。インク組成物の粘度は、主に光重合性化合物や光重合開始剤の組成によって調整可能であり、また、必要に応じて粘度調整剤等を配合して調整してもよい。なお、本願明細書に記載の粘度は、E型粘度計(RE100L型粘度計、東機産業社製)を用いて、25℃、10rpmの条件で測定した粘度である。粘度が5.0mPa・s未満又は100.0mPa・sを超えると、インクジェット印刷による吐出安定性が低下する場合がある。
【0081】
[B-2.表面張力]
インク組成物の25℃における表面張力は20.0~36.0mN/mであることが好ましい。インク組成物の表面張力は、必要に応じて界面活性剤(レベリング剤)を配合することで調整することができる。表面張力は、動的濡れ性試験機(例えば、商品名:WET-6000、レスカ社製)を使用して、温度25℃で測定することができる。
【0082】
[B-3.印刷方法]
本発明のインク組成物は、インクジェット印刷装置による印刷に用いることができる。使用可能なインクジェット印刷装置の方式は特に限定されず、ラインヘッド方式(シングルパス方式)であってもよいし、シリアルヘッド方式(マルチパス方式)であってもよい。また、コンティニュアスタイプのインクジェット印刷装置であってもよく、その場合には、さらに導電性付与剤を加えてインク組成物の電導度を調整することができる。
【0083】
インク組成物は、インクジェット印刷装置のプリンターヘッドに供給され、このプリンターヘッドからインク組成物を印刷対象の被印刷基材に吐出する。プリンターヘッドからのインク組成物の基材への吐出(画像の印字)は、塗膜の膜厚が、例えば1~60μmとなるように行えばよい。
【0084】
基材に着弾したインク組成物は、発光ダイオード(LED)や各種ランプや電極から照射される紫外線、電子線、可視光線に露光されて硬化する。環境面からは、発光ピーク波長が350~420nmの範囲の紫外線を発生する発光ダイオード(LED)を光源とすることが好ましい。
【0085】
[B-4.被印刷基材]
印刷対象となる被印刷基材も特に限定されず、従来公知の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物が適用可能な基材であれば特に限定されない。基材の例には、プラスチック、紙、カプセル、ジェル、金属箔、ガラス、木材、布等が挙げられる。本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物は、いずれの材質の基材を印刷対象としても、光重合開始剤のマイグレーションが生じにくいという効果を発現しうる。基材を構成するプラスチックとしては、例えば、ポリエステル系ポリマー(例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等)、セルロース系ポリマー(例えば、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース(TAC)等)、ポリカーボネート系ポリマー、ポリアクリル系ポリマー(例えば、ポリメチルメタクリレート等)、塩化ビニル系ポリマー、ポリオレフィン系ポリマー(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状又はノルボルネン構造を有するポリオレフィンポリマー、エチレン・プロピレン共重合体ポリマー等)、ポリアミド系ポリマー(例えば、ナイロン、芳香族ポリアミドポリマー等)、ポリスチレン系ポリマー(例えば、ポリスチレン、アクリロニトリル・スチレン共重合体ポリマー等)、ポリイミド系ポリマー、ポリスルホン系ポリマー、ポリエーテルスルホン系ポリマー、ポリエーテルケトン系ポリマー、ポリフェニルスルフィド系ポリマー、ポリビニルアルコール系ポリマー、ポリ塩化ビニリデン系ポリマー、ポリビニルブチラール系ポリマー、ポリアリレート系ポリマー、ポリオキシメチレン系ポリマー、及びポリエポキシ系ポリマー、これらのポリマーのブレンド物等からなる群より選ばれる1種以上等が挙げられる。
【実施例0086】
以下において、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、実施例の記載によって本発明の範囲を限定して解釈してはならない。表1及び2における各成分の組成処方の数値(百分率)は、質量%である。
【0087】
インク組成物の調製において用いた材料を以下に示す。
<顔料>
Pigment Yellow 155: 黄色顔料
Pigment Red 122: 赤色顔料
Pigment Red 254: 赤色顔料
Pigment Blue 15:4: 青色顔料
Pigment Black 7: 黒色顔料
【0088】
<顔料分散剤>
Solsperse 56000: アミン価39mgKOH/g(ルーブリゾール社)
Solsperse 39000: アミン価26mgKOH/g(ルーブリゾール社)
EFKA PX4701: アミン価40mgKOH/g(BASF社)
EFKA PX4703: アミン価56mgKOH/g(BASF社)
【0089】
<リン酸エステル(メタ)アクリレート>
SR9050: リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル, 単官能メタクリレート(サートマー社)
SR9051: リン酸トリス[2-(メタクリロイルオキシ)エチル], 三官能メタクリレート(サートマー社)
SR9053: リン酸トリス[2-(アクリロイルオキシ)エチル], 三官能アクリレート(サートマー社)
【0090】
<親水性単官能モノマー>
N,N-ジメチルアクリルアミド
アクリロイルモルフォリン
4-ヒドロキシブチルアクリレート
<アミン変性オリゴマー>
CN371: アミン変性アクリレートオリゴマー, アミン価136mgKOH/g, 官能基数2(サートマー社)
<その他の多官能モノマー>
ペンタエリスリトールトリアクリレート
1,6-ヘキサンジオールジアクリレート
ジプロピレングリコールジアクリレート
【0091】
<光重合開始剤>
TPO: ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド
TPO-L: エトキシ(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
Omnirad 819: ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド
<増感剤>
DETX: 2,4-ジエチルチオキサントン
<重合禁止剤>
UV-22: キノン系重合禁止剤(BASF社)
【0092】
<レベリング剤>
BYK-UV3500: シリコーン系表面調整剤(ビックケミー社)
【0093】
表1及び表2の組成処方に従って、各実施例及び比較例のインク組成物を作製した。具体的には、顔料と、顔料分散剤と、親水性単官能モノマーの一部と、を混合撹拌して顔料分散物を得た。得られた顔料分散物に、親水性単官能モノマーの残部と、リン酸エステル(メタ)アクリレートと、アミン変性オリゴマーと、その他の多官能モノマーと、光重合開始剤と、増感剤と、重合禁止剤と、レベリング剤と、を加えて攪拌混合して、インク組成物を得た。
【0094】
各実施例及び比較例で得られたインク組成物について、以下の項目について評価し、評価結果を表1及び2に示した。
<保存安定性>
各実施例及び比較例で得られた各インク組成物を密閉したガラス瓶に入れ、25℃および60℃の環境下で3週間静置した後、E型粘度計(25℃, 10rpm)を使用して粘度を測定した。以下の計算式により増粘率(%)を算出し、以下の評価基準にしたがって評価した。
((60℃ 3週間静置後の粘度値/25℃ 3週間静置後の粘度値)×100)-100
(評価基準)
○:増粘率は、10%未満であった。
△:増粘率は、10%以上、20%未満であった。
×:増粘率は、20%以上であった。
【0095】
<密着性>
市販のインクジェットプリンターでPVC(製品名:PVC80、リンテック社製)、及びコート紙(製品名:OKトップコート、王子製紙社製)の表面に、各実施例及び比較例で得られた各インク組成物を塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜をカッターナイフでクロスカットし、カットした部分にセロハンテープ(製品名:セロテープ(登録商標)、ニチバン社製)を貼り、これを引き剥がすことにより硬化塗膜の剥離具合を以下の評価基準にしたがって密着性を評価した。
(評価基準)
○:硬化塗膜の剥離率は、0%であった。
△:硬化塗膜の剥離率は、0%を超え、20%未満であった。
×:硬化塗膜の剥離率は、20%以上であった。
【0096】
<耐水性>
市販のインクジェットプリンターでPVC(製品名:PVC80、リンテック社製)に各実施例及び比較例で得られた各インク組成物を塗布し、紫外線を照射して硬化塗膜を得た。得られた塗膜に対し学振型堅牢度試験機(大栄科学精器製作所社製)を用いて、水を含んだ晒し布で荷重200g×10回擦った際の塗膜の取られ具合を目視で観察し、以下の評価基準にしたがって耐水性を評価した。
(評価基準)
○:塗膜の取られ及び傷がなかった。
△:塗膜の取られはなかったが、表面に傷があった。
×:塗膜の明らかな取られが見られた。
【0097】
【表1】
【0098】
【表2】
【0099】
表2の比較例1に示されるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートを含有しないインク組成物は、硬化塗膜の印刷基材への密着性が十分ではなかった。これに対して、表1及び2の各実施例に示されるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートを含有するインク組成物は、十分な密着性が得られている。
【0100】
表2の比較例2に示されるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する親水性単官能モノマーの合計含有量が12質量倍であると、インク組成物の保存安定性が十分ではない。また、表2の比較例5に示されるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する親水性単官能モノマーの合計含有量が317質量倍であると、得られた硬化塗膜の耐水性が十分ではない。これに対して、表1及び2の各実施例に示されるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する親水性単官能モノマーの合計含有量が17~282質量倍であると、インク組成物の保存安定性が改善され、かつ硬化塗膜の十分な耐水性が得られている。
【0101】
表2の比較例3に示されるように、インク組成物全体に対するリン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量が4.5質量%であると、インク組成物の保存安定性が十分ではない。これに対して、表1及び2の各実施例に示されるように、インク組成物全体に対するリン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量が0.2~4.0質量%の範囲であると、インク組成物の保存安定性が改善されている。表2の比較例2及び3、並びに各実施例の結果から、リン酸エステル(メタ)アクリレートは、インク組成物の保存安定性を低下させる傾向がみられるが、親水性単官能モノマーを一定量以上配合することで、保存安定性の低下を抑えていることがわかる。
【0102】
表2の比較例4に示されるように、顔料100質量部に対する顔料分散剤の含有量が35質量部であると、インク組成物の保存安定性が十分ではない。これに対して、表1及び2の各実施例に示されるように、顔料100質量部に対する顔料分散剤の含有量が38~85質量倍であると、インク組成物の保存安定性が改善されている。
【0103】
実施例1~6からわかるように、インク組成物に対するリン酸エステル(メタ)アクリレートの含有量が0.2~4.0質量%の範囲にあると、硬化塗膜の密着性が得られ、かつインク組成物の顔料分散安定性も維持できることがわかる。また、実施例5及び6等からわかるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートに対する親水性単官能モノマーとの含有比率(質量比)は、17~282質量倍の範囲で所望の効果が得られている。
【0104】
実施例2並びに実施例7及び8等からわかるように、リン酸エステル(メタ)アクリレートは、その種類によらず、(メタ)アクリレートの数が1つ(1価)であっても、3つ(3価)であっても、密着性の改善効果をインク組成物に付与することができ、かつ親水性単官能モノマーによって、顔料分散安定性を維持することができる。
【0105】
実施例1と実施例9の対比等からわかるように、光重合開始剤をTPOからTPO-Lに変更しても所望の効果が得られることがわかる。
【0106】
実施例10及び11からわかるように、1種類だけの顔料分散剤を含有するインク組成物も保存安定性は確保できるが、アミン価の異なる2種の顔料分散剤を組み合わせて含有する実施例1~9及び実施例12等のインク組成物の結果と比較すると、その安定性は低下する傾向がみられた。このように、アミン価の異なる顔料分散剤を組み合わせることでインク組成物の保存安定性を高めることができる。
【0107】
実施例1~12と、実施例13~15との対比からわかるように、顔料の種類によらず、所望の効果を得ることができることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0108】
本発明の光硬化型インクジェット印刷用インク組成物によれば、被印刷基材の種類によらず、被印刷基材との密着性の高い硬化塗膜(印刷層)を形成することができ、しかも、その保存安定性(顔料分散安定性を含む)が高いために印刷において扱いやすい。そのため、本発明によれば、種々のインクジェット印刷用インク組成物の特性を改善することができる。