(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140647
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】コンデンサ
(51)【国際特許分類】
H01G 9/042 20060101AFI20241003BHJP
H01G 9/045 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01G9/042 500
H01G9/045
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051899
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉孝
(72)【発明者】
【氏名】大野 航太朗
(72)【発明者】
【氏名】石本 仁
(57)【要約】
【課題】無機物層(導電層)と電極との間で剥離が生じにくいコンデンサを提供する。
【解決手段】開示されるコンデンサは、第1電極111と、第1電極111の表面に形成された誘電体層112と、誘電体層112上に配置された導電層120と、導電層120上に配置された第2電極131とを含む。導電層120は、第2電極131側の表層120aに、無機材料からなる針状構造を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサであって、
第1電極と、
前記第1電極の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層上に配置された導電層と、
前記導電層上に配置された第2電極とを含み、
前記導電層は、前記第2電極側の表層に、無機材料からなる針状構造を有する、コンデンサ。
【請求項2】
前記針状構造の一部は前記第2電極内に埋まっている、請求項1に記載のコンデンサ。
【請求項3】
前記針状構造の端部の針状部の断面画像におけるアスペクト比の平均値は、4.6~17.2の範囲にある、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項4】
前記針状構造の端部の針状部の少なくとも一部は湾曲している、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項5】
前記導電層は、金属酸化物を含む無機材料からなり、
前記針状構造は前記金属酸化物からなる、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項6】
前記金属酸化物は、ZnO、TiO2、酸化インジウムスズ、In2O3、SnO2、Ga2O3、MnO2、NiO2、CuInO2、CuCrO2、CuAlO2、およびCuScO2からなる群より選択される少なくとも1種を主成分とする導電性金属酸化物である、請求項5に記載のコンデンサ。
【請求項7】
前記導電性金属酸化物は酸素空孔を含む、請求項6に記載のコンデンサ。
【請求項8】
前記導電性金属酸化物は、導電性を向上させるための添加元素を含む、請求項6に記載のコンデンサ。
【請求項9】
前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極である、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項10】
前記第1電極は、アルミニウム箔またはタンタル焼結体である、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項11】
前記第1電極は、表層に多孔質部を有し、
前記誘電体層は、前記多孔質部の表面に形成されており、
前記多孔質部の空隙内には前記導電層の一部が配置されている、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【請求項12】
前記導電層は、前記誘電体層と接触している第1導電層と、前記第2電極と接触している第2導電層とを含み、
前記第2導電層は、前記針状構造を有し、且つ、前記第1導電層の組成とは異なる組成を有する、請求項1または2に記載のコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、様々なコンデンサが提案されている。特許文献1(特開2018-182106号公報)の請求項1には、「セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成され、略直方体形状を有する積層チップと、前記2端面に形成された外部電極と、を備え、前記外部電極は、下地層上にめっき層が形成された構造を有し、前記下地層の表面の少なくとも一部は、ボトムからピークまでの高さが0.4μm以上となる領域において、局部山頂の平均間隔が0.5μm以下となる領域を含むことを特徴とする積層セラミックコンデンサ」が記載されている。
【0003】
特許文献2(特開2020-35890号公報)の請求項1には、「弁金属からなる陽極体と、前記陽極体の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層の上に形成された半導体層と、前記半導体層の上に形成された陰極層と、を備え、前記半導体層は、p型無機半導体を用いて構成されている、固体電解コンデンサ」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-182106号公報
【特許文献2】特開2020-35890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されているように、2つの電極間に無機物層を配置したコンデンサが知られている。しかし、無機物層と電極との接触が不充分であると、無機物層と電極層との間で剥離が生じ、その結果、等価直列抵抗(ESR)が増大するなどの問題が生じる。このような状況において、本開示の目的の1つは、無機物層(導電層)と電極との間で剥離が生じにくいコンデンサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面は、コンデンサに関する。当該コンデンサは、第1電極と、前記第1電極の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に配置された導電層と、前記導電層上に配置された第2電極とを含み、前記導電層は、前記第2電極側の表層に、無機材料からなる針状構造を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、無機物層(導電層)と電極との間で剥離が生じにくいコンデンサが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る一例のコンデンサの構造を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、
図1に示したコンデンサの一部を模式的に示す断面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係る他の一例のコンデンサの構造を模式的に示す断面図である。
【
図4A】
図4Aは、実験1で作製した一例のコンデンサの酸化亜鉛層の表層の断面画像である。
【
図4B】
図4Bは、実験1で作製した他の一例のコンデンサの酸化亜鉛層の表層の断面画像である。
【
図4C】
図4Cは、実験1で作製した他の一例のコンデンサの酸化亜鉛層の表層の断面画像である。
【
図4D】
図4Dは、実験1で作製した他の一例のコンデンサの酸化亜鉛層の表層の断面画像である。
【
図5】
図5は、針状部のアスペクト比の測定結果の一例を示す断面画像である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下では、本開示に係る実施形態について例を挙げて説明するが、本開示は以下で説明する例に限定されない。以下の説明では、具体的な数値や材料を例示する場合があるが、本開示に係る発明を実施できる限り、他の数値や他の材料を適用してもよい。この明細書において、「数値A~数値B」という記載は、数値Aおよび数値Bを含み、「数値A以上で数値B以下」と読み替えることが可能である。以下の説明において、特定の物性や条件などに関する数値の下限と上限とを例示した場合、下限が上限以上とならない限り、例示した下限のいずれかと例示した上限のいずれかとを任意に組み合わせることができる。
【0010】
(コンデンサ)
本実施形態に係るコンデンサを、以下では、「コンデンサ(C)」と称する場合がある。コンデンサ(C)は、第1電極と、前記第1電極の表面に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に配置された導電層と、前記導電層上に配置された第2電極とを含む。前記導電層は、前記第2電極側の表層に、無機材料からなる針状構造を有する。
【0011】
検討の結果、本願発明者らは、表層に無機材料からなる針状構造を有する導電層を形成する方法を新たに見出した。表層に針状構造を有する導電層を用いることによって、針状構造を有する表層(無機物層)と第2電極との間で剥離が生じることを抑制できる。そのため、剥離によるESRの上昇などを抑制できる。
【0012】
導電層は、無機材料で形成できる。そのため、導電層を無機物層と読み替えることが可能である。コンデンサ(C)の導電層の好ましい一例は、有機材料(例えば導電性高分子)を含まない。導電層を無機材料で形成することによって、耐熱性が高いコンデンサ(C)が得られる。
【0013】
針状構造の一部は第2電極内に埋まっていてもよい。この構成によれば、アンカー効果によって、無機物層と第2電極とを強固に固定できる。
【0014】
針状構造の端部の針状部の断面画像におけるアスペクト比の平均値Asは、4.6~17.2の範囲(例えば5~16の範囲)にあってもよい。断面画像は、導電層の厚さ方向Dtに平行な断面の画像である。アスペクト比の平均値Asは、実施例で説明する方法で求められる。
【0015】
針状構造の端部の針状部の少なくとも一部は湾曲していてもよい。この構成によれば、針状構造によるアンカー効果が特に高くなる。針状部の少なくとも一部は、針状の結晶であってもよい。すなわち、針状構造は、針状結晶を含んでもよい。
【0016】
導電層は、金属酸化物を含む無機材料からなるものであってもよい。その場合、針状構造は当該金属酸化物からなるものであってもよい。無機材料からなる導電層を用いることによって、耐熱性が高いコンデンサが得られる。
【0017】
金属酸化物は、ZnO、TiO2、酸化インジウムスズ、In2O3、SnO2、Ga2O3、MnO2、NiO2、CuInO2、CuCrO2、CuAlO2、およびCuScO2からなる群より選択される少なくとも1種を主成分とする導電性金属酸化物であってもよく、当該少なくとも1種からなる導電性金属酸化物であってもよい。金属酸化物は、上記群より選択されるいずれか1種を主成分とする導電性金属酸化物であってもよく、当該1種からなる導電性金属酸化物であってもよい。例えば、金属酸化物は、ZnOを主成分とする導電性金属酸化物であってもよく、ZnOであってもよい。なお、ZnOは、半導体に分類されることがあるが、導電性を有するため、この明細書では導電性金属酸化物として扱う。金属酸化物に関して、主成分とは、含有率が50質量%以上であることを意味する。金属酸化物における主成分の含有率は、80~100質量%の範囲、90~100質量%の範囲、または95~100質量%の範囲にあってもよい。
【0018】
上記導電性金属酸化物は、酸素空孔を含んでもよい。酸素空孔を含むことによって、導電性金属酸化物の導電性を高めることが可能である。導電性金属酸化物が酸化亜鉛(ZnO)を主成分とする場合、ZnO1-x(0≦x≦0.25)で表される酸化亜鉛を主成分としてもよい。ここで、xは0より大きくてもよい。
【0019】
上記導電性金属酸化物は、導電性を向上させるための添加元素を含んでもよい。導電性金属酸化物がZnOを主成分とする場合、Al、Ga、B、およびInからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、その含有率が10原子%以下となるようにZnOに添加してもよい。
【0020】
導電性金属酸化物がGa2O3を主成分とする場合、TaおよびHfからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、その含有率が0.1原子%以下となるようにGa2O3に添加してもよい。導電性金属酸化物がTiO2を主成分とする場合、NbおよびTaからなる群より選択される少なくとも1種の元素を、その含有率が10原子%以下となるようにTiO2に添加してもよい。導電性金属酸化物がSnO2を主成分とする場合、Sbを、その含有率が12.5原子%以下となるようにSnO2に添加してもよい。導電性金属酸化物がCuCrO2を主成分とする場合、Mgを、その含有率が5原子%以下となるようにCuCrO2に添加してもよい。導電性金属酸化物がCuInO2を主成分とする場合、Caを、その含有率が3原子%以下となるようにCuInO2に添加してもよい。
【0021】
コンデンサ(C)において、第1電極は陽極であってもよく、第2電極は陰極であってもよい。コンデンサ(C)において、第1電極は、アルミニウム箔またはタンタル焼結体であってもよい。
【0022】
コンデンサ(C)において、第1電極は、表層に多孔質部を有してもよい。その場合、誘電体層は、多孔質部の表面に形成されており、多孔質部の空隙内には導電層の一部が配置されている。表層に多孔質部を有する第1電極は、エッチングされたアルミニウム箔であってもよいし、弁金属の焼結体(例えば、タンタル焼結体)であってもよい。
【0023】
導電層は、誘電体層と接する第1導電層と、第2電極と接する第2導電層とを含んでもよい。導電層は、第1導電層と第2導電層とによって構成されていてもよい。第2導電層は、表層に上述した針状構造を有する。第1導電層と第2導電層とは異なる組成を有してもよいし、同じ組成を有してもよい。第1導電層および第2導電層は、上述した導電性金属酸化物で構成されていてもよい。第1電極の表層に多孔質部が存在する場合、第1導電層の少なくとも一部は多孔質部の凹部内に形成されていてもよい。
【0024】
導電層の導電率は、1S/cm以上、または、10S/cm以上であってもよい。導電層の導電率は、10000S/cm以下、または1000S/cm以下であってもよい。導電層は、導電率が1S/cm以上である無機物層であってもよい。
【0025】
導電層の厚さは特に限定されない。導電層の厚さは、0.1μm~100μmの範囲(例えば、1μm~10μmの範囲)にあってもよい。
【0026】
(コンデンサの製造方法)
本実施形態に係る製造方法を、以下では、製造方法(M)と称する場合がある。製造方法(M)によれば、コンデンサ(C)を製造することができる。ただし、コンデンサ(C)は、製造方法(M)以外の方法で製造してもよい。コンデンサ(C)について説明した事項は製造方法(M)に適用できるため、重複する説明を省略する。製造方法(M)について説明した事項をコンデンサ(C)に適用してもよい。
【0027】
製造方法(M)は、第1電極と第1電極の表面に形成された誘電体層とを含むコンデンサの製造方法である。製造方法(M)は、工程(i)と工程(ii)とをこの順に含む。それらの工程について、以下に説明する。
【0028】
工程(i)は、第1電極の表面に形成された誘電体層上に導電層を形成する工程である。導電層は、コンデンサ(C)について説明した導電層である。工程(i)において、導電層の表層が無機材料からなる針状構造を有するように導電層を形成する。導電層のうち少なくとも表層は、液相成長法で形成できる。液相成長法によれば、結晶成長によって導電層(導電性を有する結晶層)を形成できる。このとき、液相成長法の条件を選択することによって、針状構造を有する表層を形成できる。
【0029】
表層が酸化亜鉛からなる場合、以下の条件で針状構造を有する酸化亜鉛層を形成できる。まず、液相成長(溶液成長)のための溶液を準備する。溶液の例には、硝酸亜鉛と他の添加剤とが溶解された水溶液などが含まれる。添加剤の例には、ヘキサメチレンテトラミン、アンモニア、クエン酸、硝酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸ガリウム、硝酸インジウム、などが含まれる。上述した添加元素をZnOに添加する場合には、添加元素を含む化合物を溶解させればよい。当該溶液のpHは、例えば、6~11の範囲にある。当該溶液における硝酸亜鉛の濃度は、例えば、0.01mol/L~2mol/Lの範囲にある。また、針状構造を有する表層を形成する場合、第1電極の温度を、例えば、65℃~75℃の範囲とする。溶液の温度は、例えば、75℃以下の温度とする。溶液の温度は、0~75℃の範囲(例えば10~50℃の範囲や、10~40℃の範囲)にあってもよい。
【0030】
第1電極の温度が高い(例えば85℃以上)と、針状構造ではなく、柱状構造が形成される。酸化亜鉛層を形成する場合、従来は、緻密な柱状構造が形成される条件が選択されてきた。一方、本願発明者らは、比較的低温で針状構造が形成されることを見出した。上述した導電層のうち少なくとも表層は、針状構造が形成される条件で形成される。なお、針状構造の端部の針状部のアスペクト比の平均値Asは、第1電極の温度、溶液のpH、溶液の濃度などを変化させることによって、変化させることが可能である。
【0031】
酸化亜鉛層を形成する前に、酸化亜鉛からなる下地層を予め形成しておいてもよい。例えば、気相法によって酸化亜鉛からなる下地層を形成してもよい。気相法の例には、原子層堆積法(ALD法)、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)などが含まれる。下地層を用いることによって、酸化亜鉛層を液相成長法によって形成しやすくなる。ALD法は、多孔質部の凹部内に層を形成しやすい点で好ましい。
【0032】
上述した導電性金属酸化物からなる導電層も、酸化亜鉛層と同様に液相成長法で形成できる。その場合は、形成される導電性金属酸化物に応じた溶液を選択すればよい。
【0033】
針状構造を有する表層以外の導電層の形成方法は限定されない。表層以外の導電層は、気相法または液相法によって形成してもよい。気相法の例には、上述した気相法が含まれる。液相成長法によって導電層全体を形成してもよく、上述した表層を形成する条件と同じ条件で導電層全体を形成してもよい。液相成長法によって導電層全体を形成する場合、上述したように、誘電体層上に下地層を予め形成しておいてもよい。あるいは、誘電体層上にALD法によってある程度の厚さを有する第1導電層を形成し、その後、液相成長法によって第2導電層を形成してもよい。いずれの場合でも、針状構造が形成される条件で、導電層の表層が形成される。なお、針状構造が形成される条件で導電層全体を形成する場合でも、誘電体層に近い導電層は、成長が進んで針状構造を有さない場合がある。
【0034】
導電層が第1導電層と第2導電層とを含む場合、第1導電層と第2導電層とは、同じ形成方法で形成してもよいし、異なる形成方法で形成してもよい。例えば、組成が異なる第1導電層と第2導電層とを、同じ形成方法で形成してもよい。あるいは、組成が同じ第1導電層と第2導電層とを、異なる形成方法で形成してもよい。
【0035】
工程(ii)は、導電層上に第2電極を形成する工程である。このとき、第2電極は、導電層の表層の針状構造上に形成される。その結果、導電層と第2電極とが強固に固定される。
【0036】
第2電極は、導電性を有する材料を用いて形成される。第2電極の材料は特に限定されず、コンデンサの電極として用いることができる材料であればよい。第2電極の形成方法は特に限定されないが、導電層と第2電極とが強固に接続される形成方法を用いることが好ましい。例えば、導電性粒子を含む導電性ペーストを塗布することによって第2電極を形成してもよい。あるいは、第2電極は、気相法やメッキ法などによって形成してもよい。
【0037】
第2電極は、導電層側から順に積層されたカーボン層と銀粒子層とを含んでもよい。その場合、まず、導電性カーボン粒子を含むカーボンペーストを塗布する。次に、銀粒子を含む銀ペーストを塗布する。その後、熱処理することによって、カーボン層と銀粒子層を形成する。このようにして、第2の電極が形成される。なお、必要に応じて、銀ペーストの塗布後だけでなく、銀ペーストの塗布前にも熱処理を行ってもよい。カーボンペーストおよび銀ペーストは限定されず、公知のカーボンペーストおよび銀ペーストを用いてもよい。
【0038】
以上の工程によって、第1電極、誘電体層、導電層、および第2電極を含むコンデンサ素子が形成される。工程(ii)の後は、必要に応じて、リードの接続や、外装体によるコンデンサ素子の収容などが行われる。このようにして、コンデンサ(C)が得られる。
【0039】
コンデンサ(C)の構成および構成部材の例について、以下に説明する。本開示に特徴的な部分以外の構成部材には、公知の構成部材を適用してもよい。
【0040】
(第1電極)
第1電極は、弁金属、弁金属を含む合金、および弁金属を含む化合物などを用いて形成できる。これらの材料は、一種を単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。弁金属としては、例えば、アルミニウム、タンタル、ニオブ、チタンが好ましく使用される。第1電極には、上記の材料の箔(例えばアルミニウム箔などの金属箔)を用いてもよい。
【0041】
表面に多孔質部を有する第1電極は、例えば、弁金属を含む金属箔の表面を粗面化することによって得られる。粗面化は、電解エッチング等によって行ってもよい。
【0042】
第1電極は、上記材料の粒子を焼結することによって形成してもよい。例えば、第1電極はタンタルの焼結体であってもよい。第1電極が焼結体である場合、その表面には多孔質部が存在する。第1電極が焼結体である場合、コンデンサ(C)は、一部が焼結体に埋め込まれた陽極ワイヤを含んでもよい。
【0043】
(誘電体層)
誘電体層は、誘電体として機能する絶縁性の層である。誘電体層は、第1電極(例えば金属箔)の表面の弁金属を、陽極酸化することによって形成してもよい。誘電体層は、第1電極の少なくとも一部を覆うように形成されていればよい。誘電体層は、通常、第1電極の表面に形成される。第1電極の表面に多孔質部が存在する場合、誘電体層は、第1電極の多孔質部の表面に形成される。
【0044】
典型的な誘電体層は、弁金属の酸化物を含む。第1電極は弁金属で形成されていてもよく、誘電体層は当該弁金属の酸化物で形成されていてもよい。例えば、第1の電極の材料としてタンタルを用いた場合、誘電体層は酸化タンタル層であってもよい。第1の電極の材料としてアルミニウムを用いた場合、誘電体層は酸化アルミニウム層であってもよい。ただし、誘電体層はこれらに限らず、誘電体層として機能するものであればよい。
【0045】
(第2電極)
第2電極は、導電性を有する層である。第2電極は、導電性カーボンや金属を用いて形成してもよい。具体的には、第2電極は、導電性カーボンの粒子を含むカーボンペーストや、金属粒子を含む金属ペーストを用いて形成してもよい。あるいは、第2電極は、金属のみからなる層(蒸着層や金属箔)を含んでもよい。導電性カーボンの例には、グラファイト、カーボンブラック、グラフェン片、カーボンナノチューブなどが含まれる。金属ペーストの例には、銀粒子を含む銀ペーストなどが含まれる。
【0046】
第2電極は、導電層上に形成された第1の層と、第1の層上に形成された第2の層とを含んでもよい。その場合、第1の層は、導電性カーボンを含むカーボン層であってもよく、第2の層は、金属ペーストで形成された層であってもよい。
【0047】
(リードおよび外装体)
コンデンサ(C)は、必要に応じて他の構成要素を含み、例えば、リードおよび外装体などを含んでもよい。リードおよび外装体に特に限定はなく、公知のリードおよび外装体を用いてもよい。
【0048】
(コンデンサ(C)の構造)
コンデンサ(C)は、コンデンサ素子を1つだけ含んでもよい。あるいは、コンデンサ(C)は、複数のコンデンサ素子を含んでもよい。例えば、コンデンサ素子(C)は、並列に接続された複数のコンデンサ素子を含んでもよい。複数のコンデンサ素子(C)は、通常、積層された状態で並列に接続され、外装体で覆われる。
【0049】
本開示に係る実施形態の例について、図面を参照して以下に具体的に説明する。以下で説明する例の構成要素には、上述した構成要素を適用できる。また、以下で説明する例は、上述した記載に基づいて変更できる。また、以下で説明する事項を、上記の実施形態に適用してもよい。また、以下で説明する実施形態において、本開示のコンデンサに必須ではない構成要素は省略してもよい。なお、以下の図は模式的なものであり、実際の構成とは異なる場合がある。
【0050】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係るコンデンサを模式的に示す断面図である。
図1に示すコンデンサ10は、コンデンサ素子100、第1リード端子21、第2リード端子22、金属ペースト層23、および外装体30を含む。
【0051】
コンデンサ素子100は、第1電極111、誘電体層112、導電層120、および第2電極131を含む。誘電体層112は、第1電極111の表面の少なくとも一部を覆うように形成されている。導電層120は、誘電体層112の少なくとも一部を覆うように形成されている。第2電極131は、導電層120の少なくとも一部を覆うように形成されている。導電層120は、上述した導電層である。
【0052】
第1リード端子21は、第1電極111に接続されている。第2リード端子22は、金属ペースト層23を介して第2電極131に接続されている。金属ペースト層23は、金属ペースト(銀ペースト)などで形成される。外装体30は、第1リード端子21の一部、第2リード端子22の一部、およびコンデンサ素子100を覆うように形成されている。第1リード端子21の一部および第2リード端子22の一部は外装体30から露出しており、端子として機能する。
【0053】
導電層120が存在する部分の一例の断面図を
図2に模式的に示す。
図2には、導電層120の厚さ方向Dtを示す。
図2の断面図は、導電層120の厚さ方向Dtに平行な断面の図である。
図2の一例の第1電極111は、表面に多孔質部111aを有する。実際の多孔質部111aは、より複雑な形状を有する場合があるが、
図2では、多孔質部111aを簡略化して記載している。導電層120の表層120aは、針状構造を有する。ただし、
図2では針状構造の図示を省略している。
【0054】
図1には、コンデンサ10に含まれるコンデンサ素子100が1つだけである場合を示した。しかし、コンデンサ10は、複数のコンデンサ素子100を含んでもよい。複数のコンデンサ素子100を含むコンデンサ10の一例の断面図を
図3に模式的に示す。なお、図を見やすくするために、
図3では、一部の部材の図示を省略する。
【0055】
図3のコンデンサ10は積層された複数のコンデンサ素子100を含む。複数のコンデンサ素子100は、並列に接続されている。
【0056】
(付記)
以上の記載によって、以下の技術が開示される。
(技術1)
コンデンサであって、
第1電極と、
前記第1電極の表面に形成された誘電体層と、
前記誘電体層上に配置された導電層と、
前記導電層上に配置された第2電極とを含み、
前記導電層は、前記第2電極側の表層に、無機材料からなる針状構造を有する、コンデンサ。
(技術2)
前記針状構造の一部は前記第2電極内に埋まっている、技術1に記載のコンデンサ。
(技術3)
前記針状構造の端部の針状部の断面画像におけるアスペクト比の平均値は、4.6~17.2の範囲にある、技術1または2に記載のコンデンサ。
(技術4)
前記針状構造の端部の針状部の少なくとも一部は湾曲している、技術1~3のいずれか1つに記載のコンデンサ。
(技術5)
前記導電層は、金属酸化物を含む無機材料からなり、
前記針状構造は前記金属酸化物からなる、技術1~4のいずれか1つに記載のコンデンサ。
(技術6)
前記金属酸化物は、ZnO、TiO2、酸化インジウムスズ、In2O3、SnO2、Ga2O3、MnO2、NiO2、CuInO2、CuCrO2、CuAlO2、およびCuScO2からなる群より選択される少なくとも1種を主成分とする導電性金属酸化物である、技術5に記載のコンデンサ。
(技術7)
前記導電性金属酸化物は酸素空孔を含む、技術6に記載のコンデンサ。
(技術8)
前記導電性金属酸化物は、導電性を向上させるための添加元素を含む、技術6に記載のコンデンサ。
(技術9)
前記第1電極は陽極であり、前記第2電極は陰極である、技術1~8のいずれか1つに記載のコンデンサ。
(技術10)
前記第1電極は、アルミニウム箔またはタンタル焼結体である、技術1~9のいずれか1つに記載のコンデンサ。
(技術11)
前記第1電極は、表層に多孔質部を有し、
前記誘電体層は、前記多孔質部の表面に形成されており、
前記多孔質部の空隙内には前記導電層の一部が配置されている、技術1~10のいずれか1つに記載のコンデンサ。
(技術12)
前記導電層は、前記誘電体層と接触している第1導電層と、前記第2電極と接触している第2導電層とを含み、
前記第2導電層は、前記針状構造を有し、且つ、前記第1導電層の組成とは異なる組成を有する、技術1~11のいずれか1つに記載のコンデンサ。
【実施例0057】
本開示に係るコンデンサ(C)について、実施例によって、より詳細に説明する。
【0058】
(実験1)
実験1では、異なる条件で導電層(ZnO層)を形成して評価した。まず、表面に誘電体層(酸化アルミニウム層)が形成されたアルミニウム箔を準備した。アルミニウム箔には、エッチングによって形成された多孔質部を表面に有するアルミニウム箔を用いた。酸化アルミニウム層は、アルミニウム箔を化成処理することによって形成した。
【0059】
次に、誘電体層上に、ALD法によって、酸化亜鉛からなる下地層を形成した。次に、下地層上に酸化亜鉛(ZnO)からなる導電層を形成した。具体的には、下地層が形成されたアルミニウム箔を所定の溶液中に浸漬し、6時間保持することによって、下地層上に酸化亜鉛層を形成した。
【0060】
溶液には、硝酸亜鉛・六水和物とヘキサメチレンテトラミンとを1:1(モル比)で溶解した水溶液を用いた。溶液中における硝酸亜鉛・六水和物の濃度は、0.05mol/Lとした。溶液のpHは6.5~7.5とした。溶液の温度は室温(約24℃)とした。酸化亜鉛の成長中は、アルミニウム箔の裏面(酸化亜鉛の成長面とは反対の面)にヒータを接触させて、アルミニウム箔の温度を一定の温度に加熱した。実験1では、アルミニウム箔の温度を変化させて、4種類の酸化亜鉛層を形成した。アルミニウム箔の温度を65℃としたときに形成された酸化亜鉛層の表層部の断面画像を
図4Aに示す。また、アルミニウム箔の温度を75℃、85℃、および95℃としたときに形成された酸化亜鉛層の表層部の断面画像を、
図4B~
図4Dに示す。なお、
図4A~
図4Dの断面画像は、導電層の厚さ方向Dtと平行な断面の画像である。換言すれば、
図4A~
図4Dの断面画像は、アルミニウム箔の表面に垂直な断面の画像である。
【0061】
図4A~
図4Dに示すように、アルミニウム箔の温度を65~75℃の範囲とした場合には、針状構造が形成された。一方、アルミニウム箔の温度を85または95℃の範囲とした場合には、針状構造は形成されず、柱状構造が形成された。
図4Aおよび
図4Bに示すように、形成された針状構造の端部の針状部は、一定の方向に配向している訳ではなく、様々な方向に延びている。また、針状構造の端部の針状部の少なくとも一部は湾曲していた。なお、アルミニウム箔の温度を50℃以下とした場合、酸化亜鉛の成長が進みにくくなり、針状構造が形成されなかった。
【0062】
図4Aに示す針状構造の端部の針状部の断面画像におけるアスペクト比の平均値Asを算出した。平均値Asは、以下の手順によって求めた。まず、断面画像において、針状構造の端部の針状部を任意に22箇所選択した。針状部は、針状構造の端部において枝分かれしていない部分を針状部とした。次に、選択したそれぞれの針状部の径Dと長さLとを断面画像から求めた。径Dは、針状部の任意の1箇所の径を測定することによって求めた。針状部が湾曲している場合、針状部の長さLは、湾曲部に沿った全長から求めた。次に、それぞれの針状部について、アスペクト比=長さL/径D、の式からアスペクト比を求めた。そして、得られた22個のアスペクト比を算術平均することによって、平均値Asを得た。
図5に、個々の針状部のアスペクト比を示す。
図5では、アスペクト比を求めた針状部を、棒状の図形で示している。以上のように、アスペクト比の平均値Asは、20箇所以上(例えば20箇所)の針状部を任意に選択して測定することによって求めることができる。
【0063】
図4Aに示した針状構造の端部の針状部のアスペクト比の平均値Asは、4.6であった。
図4Bに示した針状構造の端部の針状部のアスペクト比の平均値Asは、17.2であった。
【0064】
(実験2)
実験2では、異なる条件で形成された導電層(ZnO層)上に、第2電極を形成した。そして、導電層と第2電極との耐剥離性を評価した。
【0065】
まず、表面に誘電体層が形成されたアルミニウム箔を準備した。表面に誘電体層が形成されたアルミニウム箔には、実験1で用いたものと同じものを用いた。次に、実験1で説明した方法と同様の方法および条件で、誘電体層上に酸化亜鉛層(導電層)を形成した。このとき、実験1で説明したように、アルミニウム箔の温度を変えて複数種の酸化亜鉛層を形成した。次に、酸化亜鉛層上に、第2電極を形成した。第2電極には、2種類の電極を用いた。1つの第2電極は、導電層上にカーボン層と銀粒子層とをこの順に積層することによって形成された。他の第2電極は、銀粒子層のみによって形成された。このようにして、4種類のサンプルA1~A4を作製した。さらに、基材をアルミニウム箔からガラス基板に代えたことを除いてサンプルA1~A4の作製と同様の方法および条件で比較例のサンプルR1~R4を作製した。
【0066】
作製されたサンプルについて、酸化亜鉛層の表層の構造を観察した。さらに、作製されたサンプルについて、第2電極の剥離試験を行った。剥離試験は、テープ剥離試験と呼ばれる方法で行った。具体的には、第2電極の表面にテープを接着した後にテープ引きはがし、第2電極の剥離の有無を観察した。サンプルの作製条件と、剥離試験の評価結果とを表1に示す。
【0067】
【0068】
サンプルA1~A4は、本開示に係るコンデンサ(C)の構造を有する。比較例のサンプルR1~R4では、酸化亜鉛層の表層に針状構造が見られなかった。表1に示すように、サンプルA1~サンプルA4では、第2電極の構成にかかわらず、第2電極の剥離が生じなかった。