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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140650
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】打撃装置
(51)【国際特許分類】
   B65D 88/66 20060101AFI20241003BHJP
   B06B 1/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B65D88/66 C
B65D88/66 D
B06B1/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051905
(22)【出願日】2023-03-28
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、2021年度水素利用等先導研究開発事業/炭化水素等を活用した二酸化炭素を排出しない水素製造技術開発、産業技術力強化法第17条第1項の規定の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000139735
【氏名又は名称】株式会社伊原工業
(74)【代理人】
【識別番号】100180057
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 昌樹
(72)【発明者】
【氏名】伊原 良碩
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛
【テーマコード(参考)】
3E170
5D107
【Fターム(参考)】
3E170AA15
3E170AA16
3E170AB11
3E170RA02
3E170VA13
3E170VA14
3E170WD07
5D107BB11
5D107DD04
5D107DD12
5D107EE01
(57)【要約】
【課題】 使用環境の温度や外部磁場等により性能が低下しにくく、メンテナンス性に優れた打撃装置を提供する。
【解決手段】 加圧用ガスをガス導入口15から導入して貯留するための蓄圧室28、および、該蓄圧室28と連絡孔14を通じて連絡するピストン収容室30を有するシリンダー5と、ピストン収容室30内を摺動可能に収容され、連絡孔14に嵌合する形状の嵌合部21を有するピストン9と、ピストン9を支承し、ピストン9の嵌合部21を連絡孔14に押しつける方向に付勢するピストン支持部材11とを備え、ピストン9の嵌合部21の周囲が凹面状に陥没23している、打撃装置1である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧用ガスをガス導入口から導入して貯留するための蓄圧室、および、該蓄圧室と連絡孔を通じて連絡するピストン収容室を有するシリンダーと、
ピストン収容室内を摺動可能に収容され、連絡孔に嵌合する形状の嵌合部を有するピストンと、
ピストンを支承し、ピストンの嵌合部を連絡孔に押しつける方向に付勢するピストン支持部材とを備え、
ピストンの嵌合部の周囲が凹面状に陥没している、打撃装置。
【請求項2】
ガス導入口がオリフィスを形成している請求項1に記載の打撃装置。
【請求項3】
ピストン支持部材が、インコネルX750またはインコネル718製のばねである請求項1に記載の打撃装置。
【請求項4】
ピストン支持部材が、第1端と第2端とを有するアーム、アームの第1端、第1端と第2端との間の位置または第2端に設けられ、ピストンの摺動方向に沿って嵌合部がある面とは反対側の面に当接するピストン当接部、シリンダーまたはシリンダーの外部において第2端、第1端または第1端と第2端との間の位置に設けられ、アームを回転可能に支持する支点、および、アームの第1端と第2端との間の位置、第2端または第1端に設けられた打撃部を含む部材であって、
ピストンの重力とピストンの嵌合部を連絡孔に押しつける力の反作用と部材の重力との和が、支点に働く上向きの力と釣り合っており、支点を基準点とした力のモーメントの和がゼロである請求項1に記載の打撃装置。
【請求項5】
ピストン支持部材が、カムである請求項4に記載の打撃装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の打撃装置の打撃部が当接可能な振動伝播部材と、該振動伝播部材を介して振動が伝播する構造体触媒とを備えた反応炉。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、打撃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炭化水素の直接分解反応等、高温環境下で固体が生成する反応炉においては、固体生成物が触媒表面に蓄積することがあり、炉内の反応物ガスの流通が悪くなったり、触媒活性を失ったり場合がある。これを防止するため、反応炉内にある触媒に付着した固体に適宜衝撃を加え、物理的または機械的に除去する手段についての必要性が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-111542号公報
【特許文献2】特公平6-30735号公報
【特許文献3】特開2006-272166号公報
【特許文献4】実開昭57-132836号公報
【特許文献5】実開昭53-132182号公報
【特許文献6】実開昭62-123880号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】秋屋「Nd2Fe14Bを上回る磁気特性を有するSm(Fe,Co)12の単相合成に成功」日本磁気学会、技術情報サービス、磁性材料147.02(URL: https://www.magnetics.jp/tech-info/147-02/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉粒体の貯蔵用ホッパーやサイロ、サイクロン等の外部側壁には、粉粒体同士の固着を防ぎ、破壊しまたは抑制し、流動を促進するため、空気圧式の打撃装置が設置されており、これを流用することが考えられる。
【0006】
従来の空気圧式の打撃装置においては、蓄力するときに蓄圧室における空気(圧力媒体)の気密性を維持(シール)する必要があり、大別して(1)シール材としてO-リング、傘型バルブ、ダイヤフラム等の弾性体を使用する方式(特許文献2,特許文献3,特許文献4,特許文献6)、(2)磁石等で密着性を高めシール性を向上させる方式(特許文献1、特許文献5)が提案されている。しかしながら、(1)の方式は、シール材として使用するゴム等の耐熱性がせいぜい300℃位であること、(2)の方式で使用する希土類磁石も温度上昇と共に磁力が下がり、実用的に使用できる温度は約300℃位であること(非特許文献1)から、いずれも高温環境下や外部磁場の影響下での使用には適さないものである。
【0007】
特に高温環境下で使用する場合、従来の空気圧式の打撃装置においてピストンの押圧力を高めるためにピストンの外周面に設けていたO-リングシールを廃止する一方、気密性を維持するため、シリンダーの内壁面とピストンの外周面とのクリアランスを少なくしなければいけないが、熱変形等を考慮した加工の制約で一定以上に隙間を小さくできない問題がある。
【0008】
上記現状に鑑み、本発明は、使用環境の温度や外部磁場等により性能が低下しにくく、メンテナンス性に優れた打撃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するためになされた本発明の1つの側面は、加圧用ガスをガス導入口から導入して貯留するための蓄圧室、および、該蓄圧室と連絡孔を通じて連絡するピストン収容室を有するシリンダーと、ピストン収容室内を摺動可能に収容され、連絡孔に嵌合する形状の嵌合部を有するピストンと、ピストンを支承し、ピストンの嵌合部を連絡孔に押しつける方向に付勢するピストン支持部材とを備え、ピストンの嵌合部の周囲が凹面状に陥没している、打撃装置である。斯かる構成であると、蓄圧室に導入された加圧用ガスが一定圧力以上になると、ピストン嵌合部で閉鎖していた連絡孔を経由してピストン室内に一気に漏れ出し、ピストンが加圧用ガスで急激に加速され打撃装置となる。また、連絡孔を経由して一気に噴出された加圧用ガスは、ピストン上面に形成されている凹面に沿ってシリンダー上方に流れる(本発明の技術的範囲を制限するものではないが、コアンダ効果が起きている可能性があると解される)ことで、ピストン室上部にガス溜めを形成し、クリアランスからのガス抜けを考慮してもピストンを押し下げる圧力が一定程度保たれる打撃装置となる。またO-リングシール等の交換が不要になるため、メンテナンス性も向上する。
【0010】
上記打撃装置は、ガス導入口がオリフィスを形成していることが好ましい。斯かる構成であると、打撃装置が作動し、連絡孔からガスが排出されるたびに、蓄圧室の圧力が急激に低下し、ピストン支持部材の復元力によりピストンの嵌合部が自動的に戻って連絡孔を閉塞する。連絡孔が閉塞された後、蓄圧室の圧力が徐々に上昇し、ピストン支持部材による嵌合部の押しつけ力に抗する圧力に達した時点で再度ガスが排出される。これを繰り返すので、ピストンを打撃のために定期的に昇降させることができる。したがって、打撃装置を一定間隔で作動させる場合、加圧用ガスの導入・排気の切替えのために電磁弁等を切替え動作させる頻度が減るか、場合によっては必要がなくなる。また加圧用ガスのオリフィスからの流入速度を調整することにより打撃装置の作動間隔が調整可能となる。
【0011】
上記打撃装置は、ピストン支持部材が、インコネルX750製またはインコネル718製のばねであることが好ましい。斯かる構成であると、耐熱温度を約300℃より高温まで上昇させることができ、高温の反応炉でも作動可能なものとなる。
【0012】
上記打撃装置は、ピストン支持部材が、第1端と第2端とを有するアーム、アームの第1端に設けられ、ピストンの摺動方向に沿って嵌合部がある面とは反対側の面に当接するピストン当接部、シリンダーまたはシリンダーの外部において第2端に設けられ、アームを回転可能に支持する支点、および、アームの第1端と第2端との間の位置に設けられた打撃部を含む部材(第2種てこ)であるか、ピストン支持部材が、第1端と第2端とを有するアーム、アームの第1端と第2端との間の位置に設けられ、ピストンの摺動方向に沿って嵌合部がある面とは反対側の面に当接するピストン当接部、シリンダーまたはシリンダーの外部において第1端に設けられ、アームを回転可能に支持する支点、および、アームの第2端に設けられた打撃部を含む部材(第3種てこ)であるか、ピストン支持部材が、第1端と第2端とを有するアーム、アームの第2端に設けられ、ピストンの摺動方向に沿って嵌合部がある面とは反対側の面に当接するピストン当接部、シリンダーまたはシリンダーの外部において第1端と第2端との間の位置に設けられ、アームを回転可能に支持する支点、および、アームの第1端に設けられた打撃部を含む部材(第1種てこ)であって、ピストンの重力とピストンの嵌合部を連絡孔に押しつける力の反作用と部材の重力との和が、支点に働く上向きの力と釣り合っており、支点を基準点とした力のモーメントの和がゼロであることが好ましい。斯かる構成であると、ピストン支持部材がピストンの嵌合部を連絡孔に押しつける力に抗する程度に蓄圧するまでピストン支持部材が動かず、てこの原理により、ピストン当接部の動きや力を打撃部においてより大きな動き、速い動き、または、大きな力として取り出すことができる。
【0013】
上記打撃装置は、上記ピストン支持部材が、カムであってもよい。斯かる構成であると、打撃部による打撃の方向は、ピストンの摺動方向とは異なる方向に転換でき、従来の空気圧式の打撃装置では実現できなかった横方向への揺動作用や横方向への打撃をもたらすことができる。
【0014】
上記目的を達成するためになされた本発明の他の側面は、上記打撃装置の打撃部が当接する振動伝播部材と、該振動伝播部材を介して振動が伝播する構造体触媒とを備えた反応炉である。斯かる構成であると、打撃部が振動伝播部材を打撃することで加えた衝撃エネルギーを構造体触媒に分散して伝播させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の打撃装置によれば、使用環境の温度や外部磁場等により影響を受けることなく、筐体内壁または筐体内部に収容された部材に物理的打撃を加えることが可能で、付着した粉体の流動や分離を促進することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の打撃装置の第1実施形態を表す(a)斜視図および(b)断面図。
図2】第1実施形態のシリンダーの(a)正面図および(b)断面図。
図3】第1実施形態のピストンの(a)正面図、(b)A-A断面図、(c)平面図、(d)長手方向軸を含むC-C断面図。
図4】第1実施形態でばねを収容して受け材を宛がった状態の(a)正面図、(b)底面図、(c)D-D断面図および(d)C-C断面図。
図5】本発明の打撃装置の第2実施形態を表す正面図。
図6】本発明の打撃装置の第3実施形態を表すシリンダーの長手方向中心軸およびカムの板面を含む断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本明細書で使用する「用語」について定義する。
本明細書において「加圧用ガス」は、状況、用途に応じて選択されるピストンを駆動するための圧力媒体としてのガスである。一般的には1種類の非分解性ガスまたは不活性ガスが選択されるが、反応炉で使用する場合は、反応ガスであることが都合がよい。酸素が入ってもよい場合は、空気を採用することもある。
本明細書においてピストンが「摺動可能」とは、シリンダーの長手方向中心軸に沿った方向に相対運動が可能であることを意味する。したがって、シリンダーとピストンとが実際に摺り動く必要はない。
本明細書においてアームが「回転可能」とは、アーム上の1点を中心として一定の角度範囲を掃引可能であることを意味する。したがって、時計回りまたは反時計回りの360度回転が可能でなくてもよい。
本明細書において「ピストン収容室内を摺動可能に収容され」という場合、ピストンはその全体がピストン収容室内に完全に入っていなくてもよく、一部が摺動に伴ってピストン収容室から一時的に出るまたは恒常的に出ているものであってもよい。
本明細書において「連絡孔」とは、数、形状または大きさについて限定されず、蓄圧室とピストン収容室との間にある加圧用ガスの流路一般を意味する。
本明細書において「第1端」「第2端」とは、アーム上における支点、力点、作用点の位置関係を明らかにすることを目的とする用語であり、アームの両端部の一定領域を代表する点である。例えば、第1種てこにおける「第1端」「第2端」は、力点、作用点と必ずしも一致するものではなく、アームの両端に質量が遍在する場合の各質点と必ずしも一致するものでもない。
【0018】
(第1実施形態-ばねを利用したピストン打撃装置)
図1に示すピストン打撃装置1は、下端開口2とフランジ3がついた上端開口4とを有し、内部空間を上端開口4に面する側および下端開口2に面する側に区分する仕切り6が形成されたシリンダー5、上端開口4を覆うようにフランジ3上に支持された上蓋7、シリンダー5の下端開口2に面する側を長手方向に沿って摺動可能に収容された、ばね収容孔8を有するピストン9、ピストン9のばね収容孔8に収容された耐熱ばね11、耐熱ばね11を支持する受け材13で構成されている。
【0019】
図2に示すシリンダー5は、フランジ3をシリンダー5の長手方向中心軸と平行な向きに貫通するねじ孔12a、および、下端開口2の周縁をシリンダー5の長手方向中心軸と平行な向きに一定深さの貫通孔12bを有し、仕切り6は、上端開口4に面する空間10aと下端開口2に面する空間10bとを相互に連絡する連絡孔14を有する。連絡孔14は、まずシリンダー5の長手方向中心軸と同軸上に所定の直径の貫通孔を形成したのち、下端開口2に面する空間10b側の開口部のみを皿もみ(すり鉢状に拡がった形状に加工)して形成している。本実施形態において皿もみによって形成された皿穴20の深さは、仕切り6の厚みTの0.26倍程度の深さに設定している。皿頭の開き角度θは、工具の都合上90度に設定したが、後述する嵌合部21が嵌まる際、小さい方がシール性を良くすることから、実用的には約60度~約90度に設定する。なお、空間10bを画する仕切り板6の面から下端開口2までの距離はLである。
【0020】
上蓋7は、フランジ3に面する主面17a上のシリンダー5のねじ孔12aに対応する位置にねじ切り16があり、主面中央部にガス導入口15を有する。ガス導入口15は、一定の径の貫通孔を形成したのち、上端開口4に面する主面17aとは反対側の主面17bから蓋厚の半分程度の深さまで貫通孔の開口径を2倍程度に拡げた後、さらに蓋厚の4分の1程度の深さまで皿もみ加工して形成している。
【0021】
ピストン9は、シリンダー5の下端開口2に面する空間10bにおいて、長手方向に沿って摺動可能に収容されている。ピストン9の径は、熱変形等を考慮しシリンダー5の内径に比べて僅かに小さめに形成することでクリアランスを確保する。本実施形態においてシリンダー5の内壁面22とピストン9の外周面24とのクリアランスは、0.1mmに設定している。
【0022】
図3に示すピストン9の上面は、シリンダー5の連絡孔14に嵌合する高さhの嵌合部21と、嵌合部21の周囲を取り囲む最大深さhの凹面状の陥没部23とで構成されている。
嵌合部21は、シリンダー5の連絡孔14における皿穴20に嵌合するように、テーパー角θが90度(勾配が45度)の円錐台形状を有する。テーパー角θは、工具の都合上90度に設定したが、上述する連絡孔14に嵌まる際、小さい方がシール性を良くすることから、実用的には約60度~約90度に設定する。
陥没部23は、ピストン9の長手方向中心軸を含む任意の断面に対して垂直な方向から視て、台形状の嵌合部21の両側において、同一半径の円弧を形成している。
+hは、ピストン9を押し下げるのに充分なガス溜まりをピストン9の上方に作る観点から、ピストン上面に形成されている凹面23に沿って、シリンダー5の内壁面22に向かってピストン収容室30の上方に流れるガス流、シリンダー5の内壁面22とピストン9の外周面24とのクリアランスから抜けるガス流、皿頭の開き角度θおよびピストン支持部材による嵌合部21の押しつけ圧力とのバランスを考慮して調整することができる。
【0023】
ピストン9の下面は、長手方向中心軸を含むピストン9の外径のほぼ半分の溝幅のばね収容溝26をピストン9全長Hの0.375倍程度の深さHまで形成している。さらに溝26の底面には、ばね収容溝26の溝幅より小径のばね収容孔8をピストン9全長Hの0.24倍程度の深さHまで形成している。ピストン9の下面において、ばね収容溝26を形成した残りの部分は、ばね収容溝26を両側から挟み込む脚部25となっており、長さはHに等しい。ここでの脚部25は、打撃部として機能する。
【0024】
受け材13は、図4(a)および図4(d)に示すように、ばね収容溝26の溝幅と同じ太さ、図4(b)および図4(c)に示すように、D-D断面視で、シリンダー5の外径と同一の長さを有する角棒上に、耐熱ばね11がピストン9によって過度に圧縮されるのを防止する凸部29がH+L+h―Hより低い高さで設けられている。凸部29に挟まれて低くなった部分の底面は、ばね座面31となっている。また、シリンダー5の一定深さの貫通孔12bに対応する位置において貫通する孔18を備えている。
【0025】
耐熱ばね11は、ばね収容孔8に収まる径を有する、インコネルX750製のばねである。代替的にインコネル718を採用してもよい。
【0026】
シリンダー5のフランジ3にある貫通孔12aには、上蓋7のねじ穴16に向かって取付ねじ27aを挿入・固定する。これにより、シリンダー5内壁、仕切り6および上蓋7に囲まれた空間10aが蓄圧室28となる。
シリンダー5の下端開口2には、脚部25を下端開口2側に向けてピストン9が挿入され、ピストン9のばね収容孔8には耐熱ばね11が挿入され、耐熱ばね11の下端には受け材13をばね座面31が接するように宛がい、受け材13には取付ねじ27bを一定深さの貫通孔12bの位置に合わせて挿入・固定する。これにより、シリンダー5の内壁、仕切り6、受け材13および下端開口2に囲まれた空間10bがピストン収容室30となる。
【0027】
以上の構成による作用効果を説明する。
打撃装置1を組み付けた状態で、耐熱ばね11は、受け材13によってばね収容孔8内に拘束された状態で収縮している。その反発力により、ピストン収容室30内でピストン9の嵌合部21を連絡孔14に押しつけている。この状態で加圧用ガスをガス導入口15から導入していくと、蓄圧室28内の圧力が増加していくとともに、連絡孔14でピストン9の嵌合部21を押し下げる方向の力が次第に強くなっていき、釣り合いに達する。ここでさらに加圧用ガスが導入されると、均衡が破れて押し下げる方向の力が上回り、嵌合部21が連絡孔14からわずかに下に動くと同時に、嵌合部21のテーパーに沿って加圧用ガスが勢いよく噴き出し、その流れは凹面を放射状に伝わり上向きに変わり、仕切り6にぶつかり、行き場を失った大部分がピストン9の上方に一時的に滞留する。このように上方に滞留したガス圧により、嵌合部21が連絡孔14から引き離された状態が一時的に保持され、蓄圧室28内の圧力が周囲圧力に近づくまで加圧用ガスが急激に流入し、瞬発力でピストン9は下に押し下げられ、脚部25が元の位置から下降し対象を打撃する。その間にも、ピストン9の上方に滞留した加圧用ガスの一部は、シリンダー5の内壁面22とピストン9の外周面24とのわずかなクリアランスを通って下端開口2から徐々に排出されるが、ガス導入口15からは引き続き流入し続けるため、押し下げられた状態がしばらく維持される。次に図示しない三方電磁弁が流路を切り換えると、蓄圧室28内の加圧用ガスはガス導入口15からも排出されるようになる。こうなると、蓄圧室28内の圧力も急激に弱まり、耐熱ばね11の反発力が上回るようになり、ピストン9を押し上げ、嵌合部21が連絡孔14にはまり込むと同時に脚部25が元の位置に戻る。以上を繰り返すことで、ピストン9が打撃と後退を繰り返す。
【0028】
(第2実施形態-ピストンの戻りに重力を利用したピストン打撃装置)
図5に示すピストン打撃装置41は、(1)ピストン支持部材として、ばねに代えて、直線的なアーム43の一端にピストン当接部44、打撃部45を形成し、シリンダー5の支持具53と一体的に固定された垂下板47上にアーム43を回転可能に支持する支点48を設けた、ノッカー部材46を使用し、その重心位置Wを、支点48から見てピストン当接部44の反対側に設けることにより、ピストン9を皿穴20に当接している点、(2)上蓋のガス導入口55の貫通孔の開口径を小さくしてオリフィス54にした点において、第1実施形態とは異なる。
【0029】
本実施形態においては、ピストン9の重力とピストン9の嵌合部21を連絡孔14に押しつける力の反作用とノッカー部材46の重力との和(ベクトル和)が、支点48に働く上向きの力と釣り合っており、支点48を基準点とした力のモーメント(ベクトル外積)の和がゼロとなるように構成している。
【0030】
以上の構成とすれば、ピストンの戻りを耐熱ばねで行わずに重力を利用して行うことにより、装置は大きくなるが装置の熱耐久性が増す。
またオリフィス54を備えていることで、打撃装置1が作動し、連絡孔からガスが排出されるたびに、蓄圧室の圧力が急激に低下し、ピストン支持部材の復元力によりピストンの嵌合部が自動的に戻って連絡孔を閉塞する。連絡孔が閉塞された後、蓄圧室の圧力が徐々に上昇し、ピストン支持部材による嵌合部の押しつけ力に抗する圧力に達した時点で再度ガスが排出される。これを繰り返すので、ピストンを打撃のために定期的に昇降させることができる。
【0031】
(第3実施形態-カムにて打撃力を水平方向に変換した打撃装置)
図6に示すピストン打撃装置61は、ピストン69が出入り可能な大きさの孔を有する第1円環板62、その主面63aにシリンダー5は水平に固定され、裏面63bには垂下板67が固定され、垂下板67には、支点68に対してピストン当接部64とは反対側に重心を移動するオモリ70を備えたカム66、第1円環板62から鎖71で吊り下げられた第2円環板72、第2円環板72上にはピストン69の下降時にカム66の打撃部65が当接する位置に直立した振動伝播棒73を備える。
【0032】
本実施形態は、(1)ピストン支持部材として、シリンダー5の支持具53と一体的に固定された垂下板47上にアーム43を回転可能に支持する支点48を設けた、ノッカー部材46を使用し、その重心位置を、支点48から見てピストン当接部44の反対側に設けることにより、ピストンの嵌合部51を皿穴50に当接している点、(2)上蓋のガス導入口55の貫通孔の開口径を小さくしてオリフィス54にした点において、第1実施形態とは異なる。
【0033】
本実施形態は、(3)ピストン支持部材が、アーム73から分岐した位置にオモリ70を含み、シリンダー69と一体的に固定されていない支点68をアーム73の回転中心とするカム66として構成されている点、(4)ピストン支持部材のアーム73が、打撃部65を備えた第1端からピストン当接部64を備えた第2端にかけて折れ曲がっている点、(5)打撃装置61の打撃部65が当接する振動伝播棒73を備えていて、水平方向に打撃力を与えている点で、第2実施形態とは異なる。
【0034】
以上の構成により、オモリ70の重力がピストン当接部64を介してピストン69に常時上方向の持ち上げ力を加え続ける一方、蓄圧室28から均衡が破れる圧力に達した加圧用ガスが適時に放出されるたびにピストン69を押し下げ、その力がピストン当接部64に回転力を加えるとともに、打撃部65にも回転力を与え、振動伝達棒74に横向きの力を与え、第2円環板72に吊り下げられた構造体を揺動する力となる。
【0035】
第1乃至第3実施形態の打撃装置は、高温環境下、とりわけ上記打撃装置の打撃部が当接する振動伝播部材と、該振動伝播部材に固定または吊り下げられた構造体触媒とを備えた反応炉において好適に使用することができる。
本明細書において「振動伝播部材」は、打突、揺動等の打撃部の動きに応じて振動を加えるべき対象に間接的に振動を伝播することが可能な部材を意味する。振動伝播部材は、打撃部が当接可能な位置に配置され、当接可能な形状を有していれば足り、水平板であってもよいし、第3実施形態の如く振動伝達棒74であってもよい。
本明細書において「構造体触媒」は、粒子、パイプ、棒、板、多孔体、フェルト、メッシュ、ファブリックまたはエキスパンドメタルから選択される構造体それ自体が触媒として機能する触媒、当該構造体を基材として触媒成分を含むスラリー中に含浸させて得られた触媒、または、溶射、めっき等によって露出した非担持触媒層(めっき層、溶射層)を形成した触媒である。
【0036】
一実施形態において、構造体触媒は、炭化水素直接分解用の構造体触媒であって、このときの加圧用ガスとしては炭化水素ガス、とりわけメタンガスを採用することができる。
【0037】
なお、本発明の実施の形態は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、また、上記実施形態に説明される構成のすべてが本発明の必須要件であるとは限らない。本発明は、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当該技術的範囲に属する限り種々の改変等の形態を採り得る。例えば、蓄圧室とピストン収容室とは、隣接している必要はなく、蓄圧室とピストン収容室との間、または、蓄圧室やピストン収容室とは別に空気が溜まるか、または、空気が流通する空間があってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の打撃装置は、高温反応炉内に収容された板状触媒等の部材や反応炉の筐体内壁等に物理的に付着した粉体の流動促進や分離促進のために高温環境下で好適に適用可能であることから、産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0039】
1、41、61 打撃装置
2 下端開口
3 フランジ
4 上端開口
5 シリンダー
6 仕切り
7 上蓋
8 ばね収容孔
9、69 ピストン
10a 上端開口に面する空間
10b 下端開口に面する空間
11 耐熱ばね
12a,12b 貫通孔
13 受け材
14 連絡孔
15 ガス導入口
16 ねじ穴
17a,17b 上蓋主面
18 貫通孔
20、50 皿穴
21、51 嵌合部
22 内壁面
23 陥没部
24 外周面
25 脚部
26 ばね収容溝
27a,27b 取付ねじ
28 蓄圧室
29 凸部
30 ピストン収容室
31 ばね座面
43 73 アーム
44 64 ピストン当接部
45、65 打撃部
46 ノッカー部材
47、67 垂下板
48、68 支点
53 支持具
54 オリフィス
56 ピストン下面
62 第1円環板
63a,63b 第1円環板の主面
66 カム
71 鎖
72 第2円環板
74 振動伝達棒

図1
図2
図3
図4
図5
図6