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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140659
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】排水装置
(51)【国際特許分類】
   E03C 1/28 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E03C1/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051915
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内川 篤
【テーマコード(参考)】
2D061
【Fターム(参考)】
2D061DD20
(57)【要約】
【課題】封水によって臭気を含む空気や害虫類の屋内側への逆流を防ぐ排水装置において、清掃などを目的として、封水に触れることなく、封水を除去することができる排水装置を提供する。
【解決手段】排水が流入する流入口1aと、前記流入口1aからの排水を溜めて流路上に満水状態を形成する封水部1bと、前記封水部1bから溢れた排水を排出する排出口1cと、を備える流路としての排水装置において、負圧を発生させることによって、前記封水部1bの排水を吸引して排出する封水除去手段を設ける。
また、前記封水除去手段に、湯水が流入する第2流入口と、前記第2流入口に湯水が流入することで負圧が発生し、前記封水部の排水を吸引する吸引口を有する排水取出部を備えて構成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が流入する流入口と、前記流入口からの排水を溜めて流路上に満水状態を形成する封水部と、
前記封水部から溢れた排水を排出する排出口と、を備える流路としての排水装置において、
負圧を発生させ、前記封水部の排水を吸引して排出する封水除去手段を設けたことを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記封水除去手段が、
湯水が流入する第2流入口と、
前記第2流入口に湯水が流入することで負圧が発生し、前記封水部の排水を吸引する吸引口とを有する排水取出部を備えることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
前記排水取出部は、
前記第2流入口に湯水が流入することで前記吸引口に負圧が生じるエジェクタ機構を有することを特徴とする請求項2に記載の排水装置。
【請求項4】
前記封水除去手段は、流路上に満水状態を形成する第2封水部を備え、
前記排水取出部の前記吸引口から前記封水部に接続される配管が、前記封水部の上縁よりも低い位置のみを通過して前記封水部に接続されることで、前記封水部の封水と前記第2封水部の封水が共有されることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の排水装置。
【請求項5】
前記封水除去手段は、流路上に満水状態を形成する第2封水部を備え、
前記排水取出部の前記吸引口から前記封水部に接続される配管が、前記封水部及び前記第2封水部の上縁よりも高い位置を通過して前記封水部に接続されることで、前記封水部の封水と前記第2封水部の封水がそれぞれ独立して構成されてなることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の排水装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水機器の排水を処理する排水装置に関するものであって、更に詳しくは、流路上に排水を溜めて満水部分を形成することで、臭気等を含んだ空気の屋内側への逆流を防止するトラップ機能を備えた排水装置に関し、流路上に溜められた封水を吸引し、一時的に封水を無くすことで清掃などを容易且つ効果的に行うことを可能とした排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洗面台や流し台、浴室などの排水機器には使用した排水を下水側に処理するため、配管部材を組み合わせた排水装置が備えられる。これら排水装置には、下水側から臭気が屋内側に逆流することを防止するため、排水トラップと呼ばれる臭気を含んだ空気が下水側から屋内側に通過を不可能にする部材を備えている。
【0003】
特許文献1に記載の排水トラップは、ワントラップと呼ばれる排水トラップであって、以下に記載するトラップ本体及びオワン部材から構成される。
トラップ本体は、有底円筒形状の部材であって、上方の開口は排水が流入する流入口を形成し、その底面から防臭筒部を立ち上げてなる。また、防臭筒部の下方には下水側の配管に接続される排出口を備えてなる。
オワン部材は、トラップ本体の内部に配置される有底円筒形状の部材であって、使用時には開口部分を下方に向けて伏せるようにし、防臭筒部を覆うようにして配置する。
特許文献1のオワン部材には、流入口の周囲に係止する係止部が備えられ、この係止部に係止することでオワン部材とトラップ本体の間には排水が通過可能な隙間が生じるように配置される。
【0004】
上記のような排水トラップが施工された流し台のシンクに、流し台の使用により湯水が生じると、湯水は排水として流入口からトラップ本体、トラップ本体の内側面とオワン部材の外側面の間、オワン部材の下方、防臭筒部の外側面とオワン部材の内側面の間、の順に通過し、最終的に防臭筒部の上縁を超えて排出口から配管を介し下水側に排出される。
【0005】
また、この排水の際にトラップ本体内には防臭筒部の上端にまで排水が溜まる。このため、上記したトラップ本体内の排水の流路の内、トラップ本体内側面とオワン部材の外側面の間、オワン部材の下方、防臭筒部の外側面とオワン部材の内側面の間の流路には常に排水が満水の状態となる。臭気を含んだ空気や害虫類は、この流路の満水状態の部分を通過することができないため、下水側から屋内側に臭気を含んだ空気や害虫類が逆流することを防止することができる。
このように、下水側から屋内側に臭気を含んだ空気や害虫類が逆流することを防止する機能を「トラップ機能」と呼ぶ。また、トラップ本体内に溜まった、流路を満水状態とする排水を「封水」、トラップ本体内の封水を溜める部分を「封水部」と呼ぶ。特許文献1の排水トラップの場合、トラップ本体の内部であって、封水が溜まる防臭筒部の上縁までが封水部である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実開昭49-14058号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
排水トラップ内を通過する排水は、通常は洗浄等に利用した後の汚れた湯水であり、油分や塵芥、毛髪等が混入しており、トラップ本体内部にはこれら油分や塵芥等の汚れが付着しやすい。このため、適当なタイミングでトラップ本体内部を洗浄することが望まれるが、スポンジ等に洗剤を塗布して清掃する場合、封水部には封水が溜まっており、この封水によって洗剤が希釈されて効果を失い、また汚れが付着した箇所が封水により視認できない、汚れた封水に手が触れることに不快感を生じる等、洗浄・清掃に際して封水は障害物となっていた。
また、封水は油分や塵芥が混入しているため雑菌が繁殖しやすく、これに由来するヌメリ等を生じやすい。これを回避するため、定期的に封水を清浄な湯水と交換し、雑菌が繁殖しにくい環境とすることが考えられるが、そのためには、一度封水部から封水を除去し、その後に清浄な湯水を補給する必要がある。
【0008】
このように、清掃や封水の交換等のため、一時的に封水部から封水を除去したいという要望がある。しかし排水機器に固定されおり、傾ける等の動作が不可能なトラップ本体の封水部から封水を除去させることは困難である。
【0009】
上記課題の解決のため、特許文献1に記載の排水トラップでは、防臭筒部をトラップ本体から着脱可能とし、トラップ本体からオワン部材を外した上で、防臭筒部を外すことで封水を排出口から排出可能な構造としている。
しかし、防臭筒部を外す作業を行うためには、汚れた封水に作業者が手を触れねばならず、作業者は不快感を生じる。
【0010】
本発明は上記事情に鑑み発明されたものであって、封水式の排水トラップを備えた排水装置において、洗浄や封水の交換等の為に封水部から封水を無くすことを可能とすると共に、その作業を容易且つ作業者が汚れた封水に手を触れることなく行える排水装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
第一の発明は、排水が流入する流入口と、
前記流入口からの排水を溜めて流路上に満水状態を形成する封水部と、
前記封水部から溢れた排水を排出する排出口と、を備える流路としての排水装置において、
負圧を発生させ、前記封水部の排水を吸引して排出する封水除去手段を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排水装置に負圧によって封水部の封水を除去する封水除去手段を備え、この封水除去手段により封水部内の封水を容易且つ作業者が汚れた封水に手を触れることなく除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第一の実施の形態の排水装置を示す、一部を切り欠きした参考図である。
図2図1の主要部材を示す参考図である。
図3】エジェクタ部材の断面図である。
図4】第二の実施の形態の排水装置を示す、一部を切り欠きした参考図である。
図5図4の主要部材を示す参考図である。
図6】第三の実施の形態の排水装置を示す、一部を切り欠きした参考図である。
図7】第四の実施の形態の排水装置を示す、一部を切り欠きした参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の第1の態様に係る排水装置は、
排水が流入する流入口と、前記流入口からの排水を溜めて流路上に満水状態を形成する封水部と、前記封水部から溢れた排水を排出する排出口と、を備える流路としての排水装置において、
負圧を発生させ、前記封水部の排水を吸引して排出する封水除去手段を設けたことを特徴とする排水装置である。
【0015】
本態様によれば、排水装置に負圧によって封水部の封水を除去する封水除去手段を備え、この封水除去手段により封水部内の封水を除去することができる。封水部から封水を除去することで、封水部の清掃や封水を清浄な湯水への交換などに利用することができる。
【0016】
本発明の第2の態様に係る排水装置は、第1の態様において、
前記封水除去手段が、湯水が流入する第2流入口と、前記第2流入口に湯水が流入することで負圧が発生し、前記封水部の排水を吸引する吸引口とを有する排水取出部を備えることを特徴とする排水装置である。
【0017】
本態様によれば、湯水の流入を利用して排水取出部に負圧を生じさせ、封水部の排水を吸引することができる。
【0018】
本発明の第3の態様に係る排水装置は、第2の態様において、
前記排水取出部は、前記第2流入口に湯水が流入することで前記吸引口に負圧が生じるエジェクタ機構を有することを特徴とする排水装置である。
【0019】
本態様によれば、封水除去手段の負圧を、エジェクタを利用したエジェクタ機構によって発生させることができる。
【0020】
本発明の第4の態様に係る排水装置は、第2の態様又は第3の態様において、
前記封水除去手段は、流路上に満水状態を形成する第2封水部を備え、
前記排水取出部の前記吸引口から前記封水部に接続される配管が、前記封水部の上縁よりも低い位置のみを通過して前記封水部に接続されることで、前記封水部の封水と前記第2封水部の封水が共有されることを特徴とする排水装置である。
【0021】
本態様によれば、第2封水部を設けることで、封水除去手段の湯水の使用によって生じた排水を下水側に排出しても、臭気を含む空気等が第2流入口を通じて屋内側に侵入することを防止することができる。
また、封水部の封水と第2封水部の封水を共有しているため、第2流入口へ負圧を発生しない程度の勢いで湯水を補うことで、封水部に封水となる湯水を供給することができる。
【0022】
本発明の第5の態様に係る排水装置は、第2の態様又は第3の態様において、
前記封水除去手段は、流路上に満水状態を形成する第2封水部を備え、
前記排水取出部の前記吸引口から前記封水部に接続される配管が、前記封水部及び前記第2封水部の上縁よりも高い位置を通過して前記封水部に接続されることで、前記封水部の封水と前記第2封水部の封水がそれぞれ独立して構成されてなることを特徴とする排水装置である。
【0023】
本態様によれば、第2封水部を設けることで、封水除去手段の湯水の使用によって生じた排水を下水側に排出しても、臭気を含む空気等が第2流入口を通じて屋内側に侵入することを防止することができる。
【0024】
以下に、本発明の第一の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
尚、以下で説明する実施の形態は、包括的な、又は具体的な例を示すものであって、数値や形状、素材、構成要素とその配置・位置、接続形態、手順等は一例であり、本発明を限定するものではない。また、以下の実施の形態における各構成の内、独立項に記載されていない構成は、必要に応じて適宜変更可能な構成である。
【0025】
第一の実施の形態の排水装置について、以下に記載する。
図1及び図2に図示した本実施の形態の排水装置は、排水機器としての流し台に施工される排水装置である。
【0026】
まず、流し台について説明する。
流し台は、以下に記載するカウンター部Cと、カウンター部Cを載置する図示しないキャビネット部より構成される。
カウンター部Cは、金属の板材からなり、上方が開口した箱体であるシンクSと、シンクS内に吐水を行う吐水栓Fを備えてなる。
シンクSの底面にはトラップ本体1が取り付けられる取付穴S1が設けられてなる。
キャビネット部は、上方が開口し、正面に扉が備えられた箱体であって、その内部に吐水栓Fに給水を行うための給水管WSを備えると共に、排水の処理を行う排水装置が施工される。尚、吐水栓F用の給水管WSは、図示しない上流部分で二つに分岐され、一方は吐水栓Fに接続されると共に、他方は後述する吸引配管7に接続される。
【0027】
第一の実施の形態の排水装置は、以下に記載する、トラップ本体1、防臭筒3、ゴミ籠4、目皿部材5、排水取出部となるエジェクタ部材6、吸引配管7、バキュームブレーカVBの各部材と、必要に応じて前述した各部材を接続する配管部材より構成されてなる。
【0028】
トラップ本体1は、有底円筒形状の部材であって、上方の開口は排水が流入する流入口1aを形成し、その周縁には側面方向に周縁に沿って突出したフランジ部1dを、フランジ部1dの下方であってトラップ本体1の外側面には雄ネジ部1eを、備えてなる。また、トラップ本体1の内側面の途中部分に、内周に沿って内側に突出した段部1fを備えてなる。
また、トラップ本体1の段部1fよりも下方となる位置の側面に、トラップ本体1内部の排水を排出する排出口1cを備えてなる。
また、トラップ本体1の底面に、封水部1b内部の排水を排出する吸出口1gを備えてなる。
また、トラップ本体1は、雄ネジ部1eに螺合する雌ネジ部2aを設けたナット部材2を備えてなる。
【0029】
防臭筒3は、円筒形状を成す部材であって、円筒の上端部分には外側面から外側方向に向かって延出された鍔部3aを備えてなる。鍔部3aは、トラップ本体1の段部1f上に着脱可能に係止され、水密的に接続される。
【0030】
ゴミ籠4は略半球状の部材であって、その側面に小孔Hを多数設けてなり、使用時には上縁部分をトラップ本体1の流入口1a周縁に係止して使用する。
【0031】
目皿部材5は、トラップ本体1の吸出口1gに取り付けられる部材であって、ゴミ籠4と同様に小孔Hが複数備えられて吸出口1g側に封水中の塵芥が流出することを防止する部材である。
目皿部材5の小孔Hの位置は吸出口1gの開口から離間し、且つ小孔Hの開口面積の合計は、吸出口1gの開口面積より大きいため、目皿部材5の小孔Hの位置では、エジェクタ部材6による吸引力は小さく、塵芥等が小孔Hに張り付いたままとなることは無い。
【0032】
排水取出部であるエジェクタ部材6は、図3に示したように、円筒形状を成す、金属製のエジェクタ本体6aと、このエジェクタ本体6aの一端に備えられた第2流入口6bと、他端に備えられた第2排出口6cと、側面に設けられた吸引口6dとを備えてなり、第2流入口6bからエジェクタ部材6を作動させるのに、圧力が作用し充分な勢いのある湯水(以下「充分な勢いのある湯水」と記載)を流入させると、吸引口6dに負圧を発生させる部材である。以下に、本実施の形態のエジェクタ部材6の構造と、その動作について記載する。
【0033】
エジェクタ部材6の構造について説明すると、円筒形状を成すエジェクタ本体6aは、その内部で第2流入口6bから第2排出口6cに向かう流路を形成している。
この第2流入口6bから第2排出口6cに向かう流路の途中部分に、吸引口6dに連通した吸引室6fが設けられている。
また、第2流入口6bからの流路は、下流側ほど内径を縮径することで先端を細くしたノズル部6eが形成されており、このノズル部6eの先端部分が吸引室6f内に開放される形で配置されている。
また、吸引室6fの、ノズル部6eの対向位置には、小径から大径に拡径する管体部分であるディフューザ部6gが形成されてなり、このディフューザ部6gの下流側端部が第2排出口6cとして構成されてなる。
【0034】
上記したエジェクタ部材6の第2流入口6bに、充分な勢いのある湯水が流入すると、図3の矢印で示した方向に、即ち第2流入口6bからノズル部6e先端に向かう方向に、湯水が噴射される。この時、第2流入口6bよりもノズル部6eのほうが縮径されていることで、ノズル部6eから噴射される湯水の流速は第2流入口6bの湯水の流速よりも速いものとなる。
ノズル部6eから噴射される湯水は、吸引室6fを通過して対向位置にあるディフューザ部6gに流入し、第2排出口6cから放出される。ディフューザ部6gは小径から大径に拡径する管体部分であるため、ノズル部6eから流入した湯水は、ディフューザ部6gを通過する際に、流入した状態よりも減速して第2排出口6cより排出される。
【0035】
上記のようにして第2流入口6bから第2排出口6cに湯水が通過する際に、ノズル部6eから吸引室6fを通過する湯水の水流は、吸引室6f内の気体や液体など流体を巻き込んでディフューザ部6gに流入する。このようにして、元々吸引室6f内に存在した流体の一部が、湯水の水流に巻き込まれて吸引室6fから流出する。このため、吸引室6fに連通している吸引口6dには引き込み、即ち吸引の負圧が生じ、吸引口6dに接続されている配管より流体が吸引される。吸引された流体は、エジェクタ部材6を通過する給水栓の湯水と混合されながら第2排出口6cより排出される。
【0036】
上記のような構造と動作により、エジェクタ部材6の第2流入口6bに充分な勢いのある湯水を流入することで、吸引口6dに負圧による吸引を生じさせ、吸引した流体を第2排出口6cより排出することができる。
【0037】
上記のように、流入側から流体を充分な勢いのある状態で流入させ、内部の小室を通過させることで、小室内の液体や気体を流体と共に排出し、小室に連通した配管などに負圧を発生させる機構を「エジェクタ機構」と呼ぶ。
本実施の形態のエジェクタ部材6はエジェクタ機構を有し、エジェクタ機構によって負圧を生じさせる部材である。
尚、上記したエジェクタ部材6の構造は一例であって、流入側である第2流入口6bから充分な勢いのある湯水を流入させ、第2排出口6cから排出することで、吸引口6dから流体の吸引を生じさせるエジェクタ機構を有するエジェクタ部材6であれば、必ずしも同様の構造でなくとも本発明を実施することができる。
【0038】
吸引配管7は、エジェクタ部材6の、第2流入口6b及び第2排出口6cに管体を接続して構成した配管であり、施工完了時にはトラップ本体1の近傍に固定された状態で配置される。
また、施工が完了した状態では、図1に示したように、エジェクタ部材6は、トラップ本体1の下端よりも低い位置、即ち封水部1bよりも低い位置に配置した状態で固定される。
また、エジェクタ部材6の第2流入口6bに接続された配管は、トラップ本体1の排出口1cよりも高い位置で、後述するバキュームブレーカVBに接続される。
また、エジェクタ部材6の第2排出口6cに接続された配管は、トラップ本体1の排出口1cよりも高い位置まで延出された上で、方向を反転し、トラップ本体1の排出口1cよりも低い位置でトラップ本体1の排出口1cから下水側に延出された配管に接続される。
【0039】
バキュームブレーカVBは、第一の実施の形態では図示しない逆流防止弁と吸気弁を内蔵した部材であって、逆流防止弁の弁体と吸気弁の弁体はヒンジによって接続されており、逆流防止弁と吸気弁の一方が閉弁する時、他方は開弁するように構成されている。
【0040】
バキュームブレーカVBの逆流防止弁の上流側は給水管WSに、下流側はエジェクタ部材6の第2流入口6b側の配管に、それぞれ接続されてなり、給水管WSから吸引配管7に湯水が圧力を持って勢いよく流入する際には逆流防止弁が開弁し、吸気弁が閉弁する。
【0041】
バキュームブレーカVBの吸気弁は配管の内部と外部を連通する開口に備えられた弁体であって、バキュームブレーカVB内に負圧が発生すると、吸気弁が開弁して配管の外部から内部に吸気を行い、バキュームブレーカVB内の負圧を解消する。また、吸気弁が開弁する際には逆流防止弁が閉弁し、給水管WS側に逆流などが生じないようにする。
【0042】
配管部材は、直線状の管体や屈曲させた管体、分岐箇所を設けた管体等からなり、排水装置の各部材を接続する配管を構成する。尚、本発明の各実施の形態の図示において、作図の簡略化のため、特に必要の無い場合、配管部材の接続箇所は適宜省略し、継ぎ目のない単純な形状の配管として図示している。
【0043】
上記した各部材は、以下のようにして、排水機器である流し台のシンクSに施工される。
尚、各部材の接続箇所は、必要に応じ、接着やパッキンを用いた接続等を行うことで、水密に接続される。
【0044】
まず、シンクSの取付穴S1にトラップ本体1を挿通し、トラップ本体1のフランジ部1dを、取付穴S1周縁に係止させる。
次に、ナット部材2をトラップ本体1の下方から挿通し、トラップ本体1の雄ネジ部1eとナット部材2の雌ネジ部2aを螺合させることで、フランジ部1dとナット部材2とで取付穴S1の周縁が挟持され、トラップ本体1がシンクSに固定される。
次に、トラップ本体1の排出口1cと、床下に備えられた下水側の配管とを配管部材を用いて接続する。この接続の際には、排出口1cよりも低い位置に分岐箇所を設けて構成する。
次に、吸出口1gに目皿部材5を取り付ける。
次に、防臭筒3の鍔部3aをトラップ本体1の段部1f上に着脱可能に係止させ、水密的に接続させる。
次に、ゴミ籠4を流入口1aに係止する。
【0045】
次に、エジェクタ部材6の第2流入口6b、第2排出口6c、吸引口6dにそれぞれ配管部材を接続した上で、エジェクタ部材6を、トラップ本体1の下端よりも低い位置に固定する。この時、エジェクタ本体6aの円筒部分は水平方向に沿うようにして固定する。
【0046】
次に、エジェクタ部材6の第2流入口6bに接続した配管部材を、トラップ本体1の封水部1bの上端を超えた位置まで延出し、固定した上で、バキュームブレーカVBに接続する。
次に、吐水栓Fに接続するための給水管WSを2つに分岐させ、一方を吐水栓Fに、他方をバキュームブレーカVBの上流側に接続する。バキュームブレーカVBに接続された給水管WSは、分岐箇所の下流側に備えられた図示しないハンドルへの操作により開栓から閉栓までを段階的に操作できる。
【0047】
次に、エジェクタ部材6の第2排出口6cに接続した配管部材を、トラップ本体1の封水部1bよりも高い位置まで延出して固定する。
更に、第2排出口6cに接続した配管部材の方向を180度反転し、トラップ本体1の排出口1cよりも低い位置でトラップ本体1の排出口1cからの配管に接続する。
【0048】
更に、トラップ本体1の吸出口1gとエジェクタ部材6の吸引口6dとを配管部材で接続する。この接続に際しては、接続に用いた配管部材が、封水部1bの上縁を超えないようにして接続する。
このようにして、本実施の形態の排水装置の施工が完了する。
【0049】
上記のように構成した排水配管において、流し台の使用によりシンクS内に湯水が生じると、湯水は排水として流入口1a内に流入し、ゴミ籠4の小孔H、トラップ本体1内部から、防臭筒3の筒部内を通過し、防臭筒3の下方とトラップ本体1の間、防臭筒3の筒部の外側面とトラップ本体1内側面の間、の順に通過し、排出口1cから配管を介し下水側に排出される。
排水中にある程度以上の大きさの塵芥が混入していた場合、塵芥はゴミ籠4に捕集されて下流側への流出が防止される。
【0050】
この排水の際に、図2に示したように、トラップ本体1内部であって、排出口1cの下端まで、即ち封水部1bの上縁まで排水が溜まり、封水を形成する。この封水によって、防臭筒3の円筒部分の内部から、排出口1cの下端の位置までの流路に満水状態が形成されて、下水側から屋内側に臭気を含んだ空気や害虫類が逆流することを防止するトラップ機能を生じさせることができる。
【0051】
また、トラップ本体1の吸出口1gとエジェクタ部材6の吸引口6dを配管部材で接続していることから、トラップ本体1の封水部1bから、目皿部材5の小孔H、吸出口1g、吸引口6dの順に吸引配管7側にも排水が流入する。トラップ本体1の吸出口1gとエジェクタ部材6の吸引口6dを配管部材で接続し、封水を共有していることから、吸引配管7には、トラップ本体1の封水部1bと同じ水位まで排水が溜まり、第2封水部8を形成する。第2封水部8では、封水部1bと同様に、吸引配管7の流路上に満水状態の部分が形成されてトラップ機能を生じさせることができる。
【0052】
上記のように構成した、第一の実施の形態の排水装置において、清掃などを目的としてトラップ本体1の封水部1bから封水を流出させる場合、給水管WSのハンドルに操作を行い、バキュームブレーカVBを介して給水管WSから加圧され、充分な勢いのある湯水を吸引配管7に流入させる。
【0053】
充分な勢いのある湯水が吸引配管7上のエジェクタ部材6の第2流入口6bに流入すると、段落0032乃至段落0037に記載したエジェクタ機構によって吸引口6dに負圧が発生し、吸引口6dに接続された吸出口1gよりトラップ本体1の封水を吸引する。吸引された封水は、湯水と混合されて第2排出口6cより排水として排出され、下水側の配管に排出される。尚、吸引配管7は、トラップ本体1の排出口1cよりも低い位置であって、上方から下方に向かう分岐箇所に接続されているため、吸引配管7より排出される排水は、トラップ本体1側に逆流することなく下水側に排出される。
【0054】
上記のようにして、吸引配管7に充分な勢いのある湯水が流入することで、トラップ本体1の封水部1bから封水を除去することができる。即ち、本実施の形態では、排水取出部であるエジェクタ部材6と、エジェクタ部材6に接続された吸引配管7、及び給水管WS等により、負圧を発生させ封水部1bの排水を吸引する封水除去手段が構成される。
この封水を除去する作業において、作業者が行う作業は、給水管WSを開栓するだけであるため、作業者は汚れた封水に手を触れることなく封水部1bから封水を除去することができる。
尚、トラップ本体1側の封水が尽きた状態では、封水に代わってトラップ本体1内の空気が吸引される。
【0055】
本実施の形態において、封水部1b内の封水の吸引を止める場合、給水管WSのハンドルに操作を行い、吸引配管7への充分な勢いのある湯水の流れを停止することで、吸引口6dでの負圧が停止し、封水部1b内の封水の吸引を停止させることができる。
但し、吸引が停止すると、吸引配管7内の湯水または排水が、エジェクタ部材6の吸引口6dからトラップ本体1の吸出口1gを介して封水部1b内に流入し、清掃等の作業の障害となる場合がある。このため、封水を除去した状態で封水部1b内に作業を行う場合は、作業の完了するまで、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ継続して流入する。
【0056】
また、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ流入している間は、吸引配管7から下水側に向かって、排水が空気を巻き込んで下水側に排出されているため、トラップ本体1側に対して下水側のほうが負圧となる。臭気を含んだ空気や害虫類は、負圧によって下流側に引き込まれ、又は排水の流れによって下流側に押し流されるため、トラップ本体1内に封水や防臭筒3の無い状態でも、臭気を含んだ空気や害虫類が屋内に逆流することを防止することができる。
【0057】
また、給水管WSのハンドルに操作を行い、吸引配管7への湯水の流入を停止すると、給水管WSが閉塞する一方で、吸引配管7内の湯水の流れは若干継続するため、給水管WSの閉塞箇所から吸引配管7内の水面までの間の空間は負圧となる。この時はバキュームブレーカVBの吸気弁が開弁し、排水装置の外部の空気を吸気して上記した空間部分での負圧を解消する。
また、吸気弁の開弁に連動して逆流防止弁が閉弁することによって負圧に由来する逆流によって給水管WS側が吸引配管7内の排水に汚染されることを防止する。
【0058】
吸引が停止すると、吸引配管7内の湯水又は排水が、吸引口6dから吸出口1gを介しトラップ本体1の封水部1b内に流入する。この吸引配管7内の湯水の封水部1bへの流入は、封水部1bと第2封水部8の水面が同じ高さになると終了する。この時、給水管WSのハンドルを、段階的に操作し、エジェクタ部材6の吸引が作動しない程度の勢いで吸引配管7に湯水を供給することで、封水部1b及び第2封水部8の水位が充分な水位となるまで封水を補充することができる。
【0059】
トラップ本体1の封水部1bを洗浄する場合、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ流入させ、吸引口6dの負圧により封水部1bから封水を除去した状態にて清掃することで、作業者は汚れた封水に手を触れることなく清掃を行うことができ、また洗剤などが封水によって希釈されることも無くなる。また、トラップ本体1内に付着した油脂による汚れなどにも、温水を直接掛けることで容易に溶かし、洗い流すことができる。
【0060】
封水部1b内の汚れた排水に由来する封水を交換する場合、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ流入させ、エジェクタ部材6の吸引を作動させ、吸引口6dの負圧によりトラップ本体1の封水部1bの封水を除去する。その後、給水管WSのハンドルを段階的に操作し、エジェクタ部材6の吸引が作動しない程度の勢いで吸引配管7に湯水を供給することで、封水部1bの封水を清浄な湯水に由来する封水と交換することができる。
または、トラップ本体1の封水部1bの封水を除去した後、給水管WSを閉塞し、シンクSの吐水栓Fから洗浄等に利用しない吐水をシンクS内に行うことで、封水部1bの封水を清浄な湯水に由来する封水と交換することができる。
【0061】
次に、本発明の第二の実施の形態について、図4及び図5を参照しつつ説明する。
尚、本発明の第二の実施の形態に用いる部材に関して、バキュームブレーカVBに代えて吸気弁AB及び電磁弁EBを用いること、トラップ本体1の吸出口1gの位置を変更したこと、吸出口1gの位置の変更に合わせて目皿部材5の形状を変更したこと以外は部材について特に変更はない。また、目皿部材5の変更は単に取り付け位置に合わせた形状変更に過ぎないため、部材の構成については、吸気弁AB、電磁弁EB、トラップ本体1のみ部材の説明を行い、他の部材の説明は省略する。
但し、吸引配管7を含む、各部材を接続する配管のレイアウトについては、段落0065乃至段落0070の施工の手順にて説明するように変更がある。
また、第二の実施の形態においても、エジェクタ部材6が排水取出部であることは第一の実施の形態と同じである。
【0062】
トラップ本体1は、有底円筒形状の部材であって、上方の開口は排水が流入する流入口1aを形成し、その周縁には側面方向に周縁に沿って突出したフランジ部1dを、フランジ部1dの下方であってトラップ本体1の外側面には雄ネジ部1eを、備えてなる。また、トラップ本体1の内側面の途中部分に、内周に沿って内側に突出した段部1fを備えてなる。
また、トラップ本体1の段部1fよりも下方となる位置の側面に、トラップ本体1内部の排水を排出する排出口1cを備えてなる。
また、トラップ本体1の側面であって、底面に掛かる位置に側面方向に向かって延出された吸出口1gを備えてなる。
また、トラップ本体1は、雄ネジ部1eに螺合する雌ネジ部2aを設けたナット部材2を備えてなる。
【0063】
吸気弁ABは、管体に接続される本管部分と、本管部分から延出された図示しない弁体を備えた吸気部分とからなり、本管部分内に負圧が生じると、吸気部分内の弁体が開弁して配管外の空気を吸気し、本管部分内が正圧又は外部と同じ気圧のときは閉塞状態を維持するように構成されている。
【0064】
電磁弁EBは電磁石を利用し、通電により瞬間的に開弁又は閉弁する部材であって、本実施の形態では、開弁することで吸引配管7に充分な勢いのある湯水が流入し、閉弁することで吸引配管7への湯水の流入が完全に停止する。
【0065】
上記した各部材は、以下のようにして、排水機器である流し台のシンクSに施工される。
尚、各部材の接続箇所は、必要に応じ、接着やパッキンを用いた接続等を行うことで、水密に接続される。
【0066】
まず、シンクSの取付穴S1にトラップ本体1を挿通し、トラップ本体1のフランジ部1dを、取付穴S1周縁に係止させる。
次に、ナット部材2をトラップ本体1の下方から挿通し、トラップ本体1の雄ネジ部1eとナット部材2の雌ネジ部2aを螺合させることで、フランジ部1dとナット部材2とで取付穴S1の周縁が挟持され、トラップ本体1がシンクSに固定される。また、この取り付けにより、トラップ本体1の上方の開口がシンクSの流入口1aとなる。
次に、トラップ本体1の排出口1cと、床下に備えられた下水側の配管とを配管用の管体を用いて接続する。この接続の際には、排出口1cよりも低い位置に、側面方向に向かって分岐箇所を設けて構成する。
次に、吸出口1gに目皿部材5を取り付ける。
次に、防臭筒3の鍔部3aをトラップ本体1の段部1f上に着脱可能に係止させ、水密的に接続させる。
次に、ゴミ籠4を流入口1aに係止する。
【0067】
次に、エジェクタ部材6の第2流入口6b、第2排出口6c、吸引口6dにそれぞれ配管部材を接続した上で、エジェクタ部材6を、トラップ本体1の側面近傍となる位置に、エジェクタ本体6aの円筒部分が縦方向に沿うようにして固定する。この時、吸引口6dが、トラップ本体1の封水部1bの上端よりも高い位置となるように固定する。
【0068】
次に、吐水栓Fに接続するための給水管WSを2つに分岐させ、一方を吐水栓Fに、他方を電磁弁EBの上流側に接続する。また、電磁弁EBの下流側に吸気弁ABに接続し、吸気弁ABの下流側を、エジェクタ部材6の第2流入口6bに接続した配管部材に接続する。
電磁弁EB、吸気弁ABは吸引口6dより高い位置に取り付けられ、吸引口6dはトラップ本体1の封水部1bよりも高い位置に配置されているため、必然的に電磁弁EB、吸気弁ABもトラップ本体1の封水部1bよりも高い位置に配置される。
【0069】
次に、エジェクタ部材6の第2排出口6cに接続した配管部材を、トラップ本体1の排出口1cからの配管部材の分岐箇所に接続する。この接続に関して、第一の実施の形態のように、トラップ本体1の封水部1bよりも高い位置まで配管を延出する必要はない。
【0070】
更に、トラップ本体1の吸出口1gとエジェクタ部材6の吸引口6dとを配管部材で接続する。この接続に際しては、エジェクタ部材6の吸引口6dが、封水部1bよりも高い位置にあるため、必然的に接続に用いた配管部材は封水部1bの上縁を超えた位置に延出した上で接続される。
このようにして、本実施の形態の排水装置の施工が完了する。
【0071】
次に、第二の実施の形態の排水装置について、その動作を説明する。上記のように構成した排水装置において、まず、電磁弁EBを開栓し、封水が溜まるのに充分な量の水流を流した後に電磁弁EBを閉栓し、吸引配管7内の第2封水部8に封水を形成させる。尚、吸気弁ABが開弁し、第2封水部8の上流側に空気を供給することで、第2封水部8の上流側の水面は、下水側の配管の接続箇所、即ちトラップ本体1の排出口1cからの配管部材の分岐箇所の位置まで降下する。
【0072】
次に、段落0049及び段落0050に記載した第一の実施の形態と同様に使用することで、図4に示したように、流し台の使用により生じたシンクS内の湯水を処理すると共に、封水部1bに封水を形成することができる。
【0073】
上記のように、トラップ本体1側においては封水部1bに封水が形成されることで、吸引配管7は第2封水部8に封水が形成されることで、下水側からの臭気を含んだ空気や害虫類が屋内側に逆流することを防止することができる。
但し、吸出口1gからの配管は、封水部1bの上縁よりも高い位置で吸引口6dに接続されているため、封水部1bと第2封水部8の封水の共有は生じることは無く、封水部1bと第2封水部8は封水を共有しない、互いに独立した封水部となる。
【0074】
第一の実施の形態では、封水部1bと第2封水部8の封水が共有されていたため、エジェクタ部材6の第2排出口6cに接続した配管を、トラップ本体1の封水部1bよりも高い位置まで延出しなければ、封水部1bの封水が第2封水部8から流出するという問題があったが、本第二の実施の形態では、封水部1bと第2封水部8が独立し、封水が共有されていないため、エジェクタ部材6の第2排出口6cに接続した配管を、トラップ本体1の封水部1bよりも高い位置まで延出しなくても、封水部1bの封水の流出が生じることが無い。
【0075】
上記のように構成した、第二の実施の形態の排水装置において、清掃などを目的としてトラップ本体1の封水部1bから封水を流出させる場合、電磁弁EBを操作し開弁することで、給水管WSから充分な勢いのある湯水が吸引配管7に流入する。これにより、第一の実施の形態の排水装置と同様にエジェクタ部材6が動作し、排水吸引部に生じた負圧によって封水部1bの封水が吸引配管7側に吸引される。吸引された封水は、湯水と混合されて第2排出口6cより排水として排出され、下水側の配管に排出される。尚、吸引配管7は、トラップ本体1の排出口1cよりも低い位置であって、上方から下方に向かう分岐箇所に接続されているため、吸引配管7より排出される排水は、トラップ本体1側に逆流することなく下水側に排出される。
【0076】
上記のようにして、吸引配管7に充分な勢いのある湯水が流入することで、トラップ本体1の封水部1bから封水を除去することができる。即ち、本実施の形態では、排水取出部であるエジェクタ部材6と、エジェクタ部材6に接続された吸引配管7、及び給水管WS等により、負圧を発生させ封水部1bの排水を吸引する封水除去手段が構成される。
この封水を除去する作業において、作業者が行う作業は、給水管WSを開栓するだけであるため、作業者は汚れた封水に手を触れることなく封水部1bから封水を除去することができる。
尚、トラップ本体1側の封水が尽きた状態では、封水に代わってトラップ本体1内の空気が吸引される。
【0077】
本実施の形態の排水装置では、電磁弁EBに操作を行い、吸引配管7への湯水の流れを停止することで、吸引口6dでの負圧が停止し、封水部1b内の封水の吸引を停止させることができる。
本実施の形態では、封水部1bの封水と第2封水部8の封水が独立しているため、封水の吸引を停止しても、第2封水部8の封水が封水部1bに流入することは無い。このため、封水を除去した状態で封水部1b内に作業を行うのにあたり、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ継続して流入する必要はない。
【0078】
但し、封水を除去した状態で封水部1b内に作業を行うと、トラップ機能が働かないため、作業中に臭気を含んだ空気や害虫類が屋内に逆流する恐れがある。
このため、臭気を含んだ空気や害虫類の、屋内への逆流を防止するために、作業中は充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ流入を継続すると好適である。
【0079】
また、電磁弁EBに操作を行い、吸引配管7への湯水の流入を停止すると、給水管WSが閉塞する一方で、吸引配管7内の湯水の流れは若干継続するため、電磁弁EBの閉塞箇所から吸引配管7内の水面までの間の空間は負圧となる。この時は吸気弁ABが開弁し、排水装置の外部の空気を吸気して上記した空間部分での負圧を解消する。
【0080】
電磁弁EBを閉塞することで封水部1bの封水の吸引を終了した状態では、封水部1bから封水が失われているため、吐水栓Fからの吐水を行って、封水部1bに封水を形成し、トラップ機能を再度生じさせる。尚、第2封水部8には給水管WSからの湯水及び封水部1bからの排水により封水が形成されているため、給水等の必要はない。
尚、この手順により、実質的に封水部1b内の汚れた封水を、吐水栓Fからの清浄な吐水に由来する清浄な封水と交換することができる。
【0081】
トラップ本体1の封水部1bの洗浄を行なう場合は、上記のように、充分な勢いのある湯水を吸引配管7へ流入させ、吸引口6dの負圧により封水部1bから封水の除去が完了した状態で清掃を行うことで、段落0059に記載した、第一の実施の形態と同様に清掃を行うことができ、同様の効果を得ることができる。
【0082】
本発明の実施の形態は以上であるが、本発明の配管構造は発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の設計変更を加えても良い。
例えば、図6に示した、第三の実施の形態の排水装置では、メンブレン弁と呼ばれる、常時閉塞し、流体が上流側から下流側に流れるときにのみ開弁する構成の逆流防止弁9を、トラップ本体1の排出口1c、及び吸引配管7上に備えてなる。
メンブレン弁は、ゴムなどの弾性素材からなる円筒の部材の一端の内面同士が当接して内部の流体の流路を閉弁するように構成されてなり、通常の状態又は下流側から逆流が生じた場合には閉塞を維持して下流側からの液体や気体など流体の逆流を防止し、上流から流体が通過する場合にのみ内面の当接部分が開弁して流体の通過を行う逆流防止弁9である。
【0083】
第一の実施の形態、第二の実施の形態では、第2排出口6cからの配管を、トラップ本体1の排出口1c又は封水部1bよりも低い位置で合流させることで、トラップ本体1側へ第2排出口6cからの排水が逆流することを防止しているが、第三の実施の形態のように、逆流防止弁9をトラップ本体1の排出口1cの配管に備えることで、第2排出口6cからの配管を、トラップ本体1の排出口1c、又は封水部1b以上の高さとなる位置で合流させる構成としても良い。
排出口1cに備えた逆流防止弁9によって、封水部1bを溢れた排水を排出口1cから排出することを可能とする一方で、第2排出口6cから排水が排出されても、排出口1cや封水部1bに逆流することを防止することができる。
【0084】
また、第一の実施の形態、第二の実施の形態では、吸引配管7に第2封水部8を備えることで、下水側の臭気や害虫類が屋内側に逆流することを防止しているが、第三の実施の形態のように、吸引配管7に逆流防止弁9を備えて下水側の臭気や害虫類が屋内側に逆流することを防止する構成としても良い。
このように構成することで、吸引配管7からの排水が下水側に排出されることを可能としつつ、吸引配管7に備えた逆流防止弁9によって、下水側の臭気を含む空気や害虫類が吸引配管7を介して屋内側に逆流することを防止することができる。
【0085】
また、第一の実施の形態、第二の実施の形態では、封水除去手段に負圧を発生させる構成としてエジェクタ機構を利用することで負圧を発生させる構成としているが、本発明は上記第一の実施の形態、第二の実施の形態に限定されるものではなく、例えば電動ポンプを用いて負圧を発生させ封水部1bの封水を吸引する構成や、給水管WSからの湯水の流入を利用して誘導サイホン現象を生じさせ、この誘導サイホン現象により負圧を発生させ封水部1bの封水を吸引する構成としても良い。
【0086】
また、第一の実施の形態、第二の実施の形態では、排水機器は流し台であり、排水装置は流し台のシンクSの排水を処理する排水装置であったが、本発明は上記第一の実施の形態、第二の実施の形態に限定されるものではなく、排水機器を浴室の防水パンとし、排水装置を浴室や浴槽の排水を処理する排水装置や、排水機器を洗面台とし、排水装置を洗面ボウルの排水を処理する排水装置としても良い。
【0087】
また、第一の実施の形態、第二の実施の形態では、排水装置の排水トラップは、防臭筒3を用いる構成の排水トラップであったが、例えば図7に示した第四の実施の形態の排水装置のように、防臭筒部1hとオワン部材1iを用いた排水トラップや、図示しないが管体をU字形状等に屈曲させることで、屈曲部分の流路に排水の満水状態、即ち封水部を形成する管トラップと呼ばれる排水トラップなど、封水を利用してトラップ機能を生じる排水トラップであれば、どの様な排水トラップを採用しても構わない。
【0088】
また、第一の実施の形態、第二の実施の形態では、封水除去手段の作動は、使用者の操作によって行われていたが、例えば吐水栓F等と組み合わせたプログラム動作により、毎日所定の時間に自動的に封水除去手段を作動させて汚れた封水を除去し、封水除去手段を停止させてからプログラム動作により吐水栓Fを開栓して、吐水栓Fからの吐水によって清浄な湯水を封水部1bに補給し、雑菌が繁殖しにくい封水部1bとする等、自動で作動する構成としても良い。
【符号の説明】
【0089】
1 トラップ本体 1a 流入口
1b 封水部 1c 排出口
1d フランジ部 1e 雄ネジ部
1f 段部 1g 吸出口
1h 防臭筒部 1i オワン部材
2 ナット部材 2a 雌ネジ部
3 防臭筒 3a 鍔部
4 ゴミ籠 5 目皿部材
6 エジェクタ部材 6a エジェクタ本体
6b 第2流入口 6c 第2排出口
6d 吸引口 6e ノズル部
6f 吸引室 6g ディフューザ部
7 吸引配管 8 第2封水部
9 逆流防止弁 AB 吸気弁
C カウンター部 EB 電磁弁
F 吐水栓 H 小孔
S シンク S1 取付穴
VB バキュームブレーカ W 封水水面
WS 給水管
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7