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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140664
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20241003BHJP
   B60R 3/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 Z
E02F9/08 Z
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051927
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本木 豪一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 和義
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA01
3D022AC10
3D022AD01
3D022AE09
3D022AE13
(57)【要約】
【課題】点検通路と地面との間、および点検通路と車体の上面との間を昇降装置を利用して移動する。
【解決手段】油圧ショベル1の上部旋回体3は、点検作業を行うときの足場となる点検通路14と、地面と点検通路14との間に配置された下げ位置および点検通路14の上方に配置された上げ位置とに変位する昇降装置19とを備えている。昇降装置19には、下げ位置用ステップ21と上げ位置用ステップ22とが個別に設けられている。昇降装置19を下げ位置としたときには、下げ位置用ステップ21を足場として点検通路14と地面との間を移動することができ、昇降装置19を上げ位置としたときには、上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14と外装カバー12の上面との間を移動することができる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
前記車体に設けられ、前記車体に対する点検作業を行うときの足場となる点検通路および前記点検通路よりも上方に配置された上面部と、
複数段のステップを有し、地面と前記点検通路との間に配置された下げ位置および前記点検通路の上方に配置された上げ位置とに変位する昇降装置とを備えてなる建設機械において、
前記昇降装置には、前記昇降装置が前記下げ位置にあるときに前記点検通路と地面との間を移動する際の足掛かりとなる下げ位置用ステップと、前記昇降装置が前記上げ位置にあるときに前記点検通路と前記車体の前記上面部との間を移動する際の足掛かりとなる上げ位置用ステップとが設けられていることを特徴とする建設機械。
【請求項2】
前記昇降装置は、互いに対向する一対の側板と、互いに一定の間隔をもって前記一対の側板間を連結する前記下げ位置用ステップおよび前記上げ位置用ステップと、前記一対の側板の長さ方向に沿って延在し、作業者が把持する手摺りとを含んで構成され、
前記手摺りは、前記昇降装置が前記下げ位置にある場合と前記上げ位置にある場合とで前記一対の側板に対する位置が変化することを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記昇降装置を前記上げ位置と前記下げ位置との間で変位させる駆動装置を備え、
前記車体には、前記駆動装置を起動して前記昇降装置を前記下げ位置と前記上げ位置とに変位させるため、前記点検通路よりも下側に配置された下起動スイッチと、前記点検通路よりも上側に配置された上起動スイッチとが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、油圧ショベル等の建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械を代表する油圧ショベルは、下部走行体と上部旋回体とを備えた自走可能な車体と、上部旋回体の前側に設けられた作業装置とを備えている。上部旋回体は、ベースとなる旋回フレームと、旋回フレーム上に搭載された原動機、油圧ポンプ、熱交換器等の搭載機器と、これら搭載機器を内部に収容する外装カバーと、旋回フレームの前部左側に配置されたキャブとを含んで構成されている。キャブ内には各種の操作機器が配置され、キャブ内に乗込んだオペレータが操作機器を操作することにより、下部走行体の走行動作、上部旋回体の旋回動作、作業装置の動作が制御される。
【0003】
大型の油圧ショベルには、通常、搭載機器に対する点検作業を行うときの足場となる点検通路が設けられている。この点検通路は、例えば上部旋回体の旋回フレームに取付けられ、車体の前後方向に延びている。オペレータ等の作業者は、点検通路を移動しつつ外装カバーの側面に設けられたドアを開閉し、あるいは外装カバーの上面に上って原動機カバーを開閉することにより、外装カバーの内部に配置された搭載機器に対する点検作業を行う。
【0004】
このため、点検通路を備えた油圧ショベルには、通常、作業者が地面と点検通路との間を移動するときの足場となる昇降装置が設けられている。昇降装置の一例として、地面と点検通路との間に垂直に配置される梯子状の昇降装置が知られている(特許文献1)。また、昇降装置の他の例として、点検通路に回動可能に連結された第1の梯子と、第1の梯子に回動可能に連結された第2の梯子とを有する折畳み式の昇降装置が知られている。この昇降装置は、第1の梯子と第2の梯子とが直線的に展開した状態で地面と点検通路との間に斜めに(階段状に)配置される構成となっている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-142240号公報
【特許文献2】特開2009-263876号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、特許文献1,2による昇降装置は、いずれも地面と点検通路との間に配置されるものである。このため、特許文献2には、点検通路(第1通路)とこの点検通路よりも上側に配置された他の点検通路(第2通路)との間に、昇降装置とは異なる他の昇降装置(階段)が設けられ、作業者は、他の昇降装置を足場として点検通路と他の点検通路との間を移動する構成となっている。このように、特許文献2の油圧ショベルに設けられた点検通路はサイズが大きく、昇降装置とは異なる場所に別の昇降装置を設けるだけの十分なスペースを有している。
【0007】
しかし、点検通路のサイズが小さい場合には、地面と点検通路との間に配置される昇降装置の他に、点検通路と外装カバーの上面との間を移動するための昇降装置を配置するだけのスペースを確保することができない。このため、サイズが小さい点検通路を備えた油圧ショベルでは、外装カバーの上面側から点検作業を行うことが困難であるという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、車体に設けられた点検通路と地面との間、および点検通路と車体の上面との間を昇降装置を利用して移動することができるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、自走可能な車体と、前記車体に設けられ、前記車体に対する点検作業を行うときの足場となる点検通路および前記点検通路よりも上方に配置された上面部と、複数段のステップを有し、地面と前記点検通路との間に配置された下げ位置と前記点検通路の上方に配置された上げ位置とに変位する昇降装置とを備えてなる建設機械において、前記昇降装置には、前記昇降装置が前記下げ位置にあるときに前記点検通路と地面との間を移動する際の足掛かりとなる下げ位置用ステップと、前記昇降装置が前記上げ位置にあるときに前記点検通路と前記車体の上面部との間を移動する際の足掛かりとなる上げ位置用ステップとが設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、昇降装置を上げ位置に変位させた状態で、上げ位置用ステップを足掛かりにすることにより、作業者は単一の昇降装置を利用して点検通路と車体の上面との間を移動することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態が適用された油圧ショベルを作業装置を省略して示す左側面図である。
図2】点検通路、昇降装置等を、昇降装置を上げ位置とした状態で示す斜視図である。
図3】点検通路、昇降装置等を、昇降装置を下げ位置とした状態で示す斜視図である。
図4】上げ位置にある昇降装置を、キャブの上側を省略した状態で示す正面図である。
図5】下げ位置にある昇降装置を、キャブの上側を省略した状態で示す正面図である。
図6】上げ位置に変位する直前の昇降装置を、キャブの上側を省略した状態で示す正面図である。
図7図3中の昇降装置、手摺り等を点検通路を省略して示す斜視図である。
図8図3中の支持基台、上げ位置固定機構、補助手摺り等を昇降装置の一部を省略して示す斜視図である。
図9図4中の昇降装置、手摺り、基端側手摺り支持部材、先端側手摺り支持部材を示す一部破断の拡大図である。
図10】基端側手摺り支持部材を図9中の矢示X-X方向からみた断面図である。
図11】基端側手摺り支持部材による手摺りの位置決めを解除した状態を示す図9と同様位置の拡大図である。
図12】上げ位置固定機構によって手摺りを保持した状態を示す斜視図である。
図13】上げ位置固定機構によって手摺りを保持する直前の状態を示す斜視図である。
図14】上げ位置固定機構の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態による建設機械を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図13を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施形態では、油圧ショベルの走行方向を前後方向とし、油圧ショベルの走行方向と直交する方向を左右方向として説明する。
【0013】
建設機械を代表するクローラ式の油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3とを備え、これら下部走行体2と上部旋回体3とにより車体が構成されている。上部旋回体3の前側には作業装置(図示せず)が設けられ、油圧ショベル1は、上部旋回体3を旋回させつつ作業装置を俯仰動させることにより、土砂の掘削作業等を行う。
【0014】
下部走行体2は、センタフレーム4と、センタフレーム4を挟んで左,右両側に配置された左,右のサイドフレーム5(左側のみ図示)とを有している。左,右のサイドフレーム5には、それぞれ遊動輪6と駆動輪7とが設けられ、遊動輪6と駆動輪7には履帯8が巻回されている。駆動輪7によって履帯8を駆動することにより、油圧ショベル1は不整地等を安定して走行することができる。
【0015】
上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム9を有している。旋回フレーム9は、下部走行体2のセンタフレーム4上に旋回装置を介して旋回可能に取付けられている。旋回フレーム9の前端側には作業装置(図示せず)が取付けられている。旋回フレーム9の後端側には、作業装置との重量バランスをとるカウンタウエイト10が設けられている。旋回フレーム9の前部左側には、運転室を形成するキャブ11が設けられている。また、旋回フレーム9には、カウンタウエイト10よりも前側に位置して原動機、油圧ポンプ、熱交換装置等の各種の搭載機器(いずれも図示せず)が搭載され、これら搭載機器は、旋回フレーム9上に設けられた外装カバー12の内部に収容されている。
【0016】
キャブ11は、旋回フレーム9から上方に立上るボックス状に形成され、キャブ11の内部には運転室が形成されている。キャブ11の左側面には乗降ドア11Aが設けられ、オペレータは、乗降ドア11Aを開閉してキャブ11に乗降する。キャブ11内には、オペレータが座る運転席、下部走行体2の走行動作を制御する走行レバー・ペダル装置、上部旋回体3の旋回動作、および作業装置の動作を制御する操作レバー装置(いずれも図示せず)が設けられている。ここで、旋回フレーム9の左側方には後述の点検通路14、および昇降装置19が設けられ、オペレータは、昇降装置19を利用して地面から点検通路14へと移動し、点検通路14を通ってキャブ11に乗降する。
【0017】
外装カバー12は、カウンタウエイト10とキャブ11との間に位置して旋回フレーム9上に設けられ、上部旋回体3の外殻を構成している。外装カバー12は、左側面カバー12Aと、右側面カバー(図示せず)と、上面カバー12Bと、原動機カバー12Cとを含んで構成されている。左側面カバー12Aは、旋回フレーム9に搭載された搭載機器を左側方から覆い、右側面カバーは搭載機器を右側方から覆っている。上面カバー12Bは搭載機器を上方から覆い、原動機カバー12Cは、上面カバー12Bよりも上方に突出した搭載機器の上側部位を覆っている。上面カバー12Bは、上部旋回体3の上面部(車体の上面部)を構成し、後述する点検通路14よりも上方に配置されている。
【0018】
左側面カバー12Aには開閉可能な点検ドア12Dが設けられ、オペレータ等の作業者は、点検通路14を足場として点検ドア12Dを開いた状態で、原動機、油圧ポンプ、熱交換器、バッテリ等の搭載機器、燃料フィルタ、燃料タンクのレベルゲージ等(いずれも図示せず)に対する点検作業を行う。原動機カバー12Cは、上面カバー12Bに形成された点検用の開口部(図示せず)を開閉可能に覆っている。作業者は、上面カバー12B上に上がって原動機カバー12Cを開いた状態で、搭載機器、作動油タンク13のレベルゲージ、エンジンの吸気フィルタ等に対する点検作業を行う。
【0019】
旋回フレーム9の左側には、キャブ11と外装カバー12との間に位置して作動油タンク13が設けられている。作動油タンク13は、油圧ショベル1に搭載された各種の油圧アクチュエータに供給される作動油を貯留する。作動油タンク13の上側は上面板13Aによって閉塞され、上面板13Aにはエアブリーザ13Bが設けられている。作動油タンク13の左側方は、側面板13Cによって覆われている。側面板13Cには、後述する上げ位置固定機構29が設けられている。作動油タンク13の上面板13Aは、外装カバー12の上面カバー12Bと共に上部旋回体3の上面部(車体の上面部)を構成し、後述する点検通路14よりも上方に配置されている。これら作動油タンク13の上面版13A、および外装カバー12の上面カバー12Bは、作業者が点検作業を行う足場を構成する。また、作動油タンク13の上面板13Aには、後述する補助手摺り34が設けられている。
【0020】
点検通路14は、車体の上面部である作動油タンク13の上面板13Aおよび外装カバー12の上面カバー12Bよりも下側に設けられている。すなわち、点検通路14は、車体において当該車体の上面部と地面との間に設けられ、車体に対する点検作業を行うときの足場となる。また、当該車体の上面部は、点検通路14よりも上方に設けられた搭載機器等に対する点検を行うためにオペレータが立つ可能性がある部分である。点検通路14は、旋回フレーム9の左側面9Aに設けられている。点検通路14は、旋回フレーム9に沿って上部旋回体3の前後方向に延びる板体により構成され、作業者の足場を形成している。即ち、作業者がキャブ11に乗降するとき、あるいは外装カバー12(左側面カバー12A)の点検ドア12Dを通じて搭載機器等に対する点検作業を行うときには、作業者は点検通路14を足場としてキャブ11あるいは所望の点検場所へと移動する。点検通路14のうち作動油タンク13に対応する位置には、旋回フレーム9の左側方に空間を形成する切欠き部14Aが設けられている。点検通路14の切欠き部14A内には、昇降装置19を支持する支持基台15が配置されている。
【0021】
支持基台15は、点検通路14の切欠き部14A内に位置して旋回フレーム9の左側面9Aに取付けられている。図5および図7に示すように、支持基台15は、固定部材16と、ベース部材17とを含んで構成されている。
【0022】
固定部材16は、下板16A、上板16B、右側板16Cおよび左側板16Dを有する角筒状に形成されている。下板16Aは、上板16Bよりも左右方向の長さ寸法が大きく設定され、下板16Aと上板16Bとは、上下方向に一定の間隔をもって対面した状態で右側板16Cに固定されている。右側板16Cは旋回フレーム9の左側面9Aに固定され、下板16Aと上板16Bとは、旋回フレーム9の左側面9Aから左側方に突出し、左側板16Dは、下板16Aの上面と上板16Bの突出端とに固定されている。
【0023】
ベース部材17は、固定部材16を介して旋回フレーム9の左側面9Aに取付けられている。ベース部材17は、L字型に屈曲した基板17Aと、コ字型の断面形状を有し基板17Aに固定された枠体17Bとを有している。基板17Aは、固定部材16の下板16Aと左側板16Dとに複数のボルトを用いて固定され、基板17Aと枠体17Bとの間には、断面四角形状の空間が形成されている。枠体17Bの上面と固定部材16の上板16Bとは、左右方向に隣接した同一平面を形成している。
【0024】
駆動装置18は、電動モータ等により構成され、ベース部材17を構成する基板17Aと枠体17Bとの間に形成された空間内に設けられている。ベース部材17の枠体17Bには、回転軸18Aの軸方向の両端側が支持され、枠体17Bから突出した回転軸18Aの両端には、後述する一対の側板20がそれぞれ固定されている。回転軸18Aは、駆動装置18によりベース部材17に対して回転駆動される。
【0025】
昇降装置19は、支持基台15を介して上部旋回体3の旋回フレーム9に取付けられている。昇降装置19は、地面と点検通路14との間に斜めに傾斜して配置された下げ位置(図3および図5の位置)と、点検通路14の上方に垂直に配置された上げ位置(図2および図4の位置)とに変位する。昇降装置19は、下げ位置に変位することにより、作業者が地面と点検通路14との間を移動するときの足場を形成し、上げ位置に変位することにより、作業者が点検通路14と外装カバー12の上面カバー12Bとの間を移動するときの足場を形成する。昇降装置19は、一対の側板20、下げ位置用ステップ21、上げ位置用ステップ22、一対の手摺り23等により構成されている。
【0026】
一対の側板20は、狭幅な長方形状をなす同一形状の2枚の板体により構成され、前後方向に一定の間隔をもって対向した状態で対をなしている。一対の側板20の長さ方向の一端(基端)には、それぞれ円板状の取付部20Aが形成されている。前側の側板20の取付部20Aは、回転軸18Aの前端に取付けられ、後側の側板20の取付部20Aは、回転軸18Aの後端に取付けられる。従って、駆動装置18によって回転軸18Aが回転することにより、一対の側板20の長さ方向の他端(先端)は、回転軸18Aを中心として上下方向に回動し、昇降装置19は上げ位置(図4の位置)と下げ位置(図5の位置)との間を移動(回動)する。一対の側板20の基端側には、取付部20Aに隣接してストッパ部20Bが形成されている。ストッパ部20Bは、昇降装置19が下げ位置に変位したときに、支持基台15を構成するベース部材17の基板17Aに当接することにより、昇降装置19を下げ位置に保持する。
【0027】
複数の下げ位置用ステップ21は、一対の側板20間に固定されている。これら複数の下げ位置用ステップ21は、長方形の平板により形成され、昇降装置19が下げ位置(図5の位置)に変位したときに作業者の足掛かりとなる。このため、複数の下げ位置用ステップ21は、昇降装置19が下げ位置となって地面と点検通路14との間で斜めに傾斜した状態で、側板20の幅方向の一端20Cと他端20Dとの間で地面に対して水平となるように固定され、側板20の長さ方向に一定の間隔をもって階段状に配置されている。
【0028】
複数の上げ位置用ステップ22は、下げ位置用ステップ21とは異なる位置で、一対の側板20間に固定されている。これら複数の上げ位置用ステップ22は、例えば断面L字型の鋼材(山形鋼)により形成され、昇降装置19が上げ位置(図4の位置)に変位したときに作業者の足掛かりとなる。このため、複数の上げ位置用ステップ22は、昇降装置19が上げ位置に変位した状態でその一面が点検通路14に対して水平となるように、一対の側板20の幅方向の他端20D側に寄せて配置され、側板20の長さ方向に一定の間隔をもって梯子状に配置されている。
【0029】
手摺り23は、後述する基端側手摺り支持部材24および先端側手摺り支持部材25を介して一対の側板20にそれぞれ設けられ、前後方向で対をなしている。手摺り23は、パイプ材等を用いて短尺部23A,23Bおよび長尺部23C,23Dを有する長方形の枠状に形成され、前後方向に一定の間隔を保った状態で側板20の長さ方向に延在している。昇降装置19の下げ位置用ステップ21または上げ位置用ステップ22を足場として移動する作業者は、手摺り23を把持することにより安定した姿勢を保持する。
【0030】
図9および図11に示すように、手摺り23の短尺部23Bには、凹陥部23Eとピン挿通穴23Fとが設けられている。凹陥部23Eは、短尺部23Bの一部を外周側から径方向内側に窪ませることにより形成され、後述する手摺り位置決め機構26の係合ピン27が係合する。ピン挿通穴23Fは、凹陥部23Eに隣接した位置に形成され、短尺部23Bを径方向に貫通している。ピン挿通穴23Fは、手摺り位置決め機構26のストッパピン28が挿通される。
【0031】
手摺り23は、基端側手摺り支持部材24および先端側手摺り支持部材25に支持された状態で、昇降装置19の一対の側板20に取付けられる。ここで、図4および図5に示すように、側板20の幅方向の一端20Cから手摺り23の長尺部23Cまでの距離を距離Lとすると、昇降装置19が図5の下げ位置にあるときの距離L1は、昇降装置19が図4の上げ位置にあるときの距離L2よりも大きく設定されている(L1>L2)。このように、手摺り23は、昇降装置19が下げ位置にある場合と上げ位置にある場合とで、一対の側板20に対する位置が変化する。昇降装置19が下げ位置にある場合には、手摺り23の長尺部23Cが、側板20の幅方向の一端20Cから大きく張出すことにより、階段状に連続する下げ位置用ステップ21を移動する作業者は、長尺部23Cを容易に把持することができる。昇降装置19が上げ位置となり、手摺り23の長尺部23Cが側板20の幅方向の一端20Cから距離L2だけ離れた状態(図4の状態)では、手摺り23の長尺部23Dは、点検通路14の左端部14Bよりも内側(作動油タンク13側)に引込んでいる。
【0032】
基端側手摺り支持部材24は、側板20の基端側(取付部20A側)の外側面20Eに設けられている。基端側手摺り支持部材24は、手摺り23の短尺部23Aを側板20に対して移動可能に支持している。図9および図10に示すように、基端側手摺り支持部材24は、複数のボルト24Aによって結合された2個のクランプ体24Bによって構成されている。2個のクランプ体24Bは同一形状をなし、平板状の基板部24Cと、基板部24Cに固定された半円形状の溝枠部24Dとにより構成されている。基板部24Cには、ボルト24Aが挿通されるボルト挿通穴24Eが形成され、溝枠部24Dの内周面の曲率半径は、手摺り23(短尺部23A)の外周面の曲率半径よりも若干大きく設定されている。一方のクランプ体24Bは、昇降装置19の側板20の外側面20Eに溶接等の手段を用いて固定され、側板20には、クランプ体24Bのボルト挿通穴24Eに対応する複数のボルト穴(雌ねじ穴)20Fが形成されている。
【0033】
基端側手摺り支持部材24は、2個のクランプ体24Bの溝枠部24Dを手摺り23の短尺部23Aに係合させた状態で、ボルト挿通穴24Eに挿通したボルト24Aを側板20のボルト穴20Fに螺合させる。これにより、手摺り23の短尺部23Aは、2個のクランプ体24Bによって径方向外側から挟み込まれた状態で基端側手摺り支持部材24に支持される。従って、手摺り23(短尺部23A)は、複数のボルト24Aを緩めることにより、基端側手摺り支持部材24に対して移動可能となり、複数のボルト24Aを締め込むことにより、基端側手摺り支持部材24に対して固定される。
【0034】
先端側手摺り支持部材25は、側板20の先端側の外側面20Eに設けられている。先端側手摺り支持部材25は、手摺り23の短尺部23Bを側板20に対して移動可能に支持している。先端側手摺り支持部材25は、直方体のブロックを2分割した2個の半割体25A,25Bによって構成され、側板20に固定された一方の半割体25Aに対し、他方の半割体25Bがボルト25Cを用いて結合されている。半割体25A,25Bには、それぞれ半円形状の断面形状を有する溝25Dが形成され、半割体25A,25Bを結合したときにそれぞれの溝25Dが組合わされることにより、先端側手摺り支持部材25には、手摺り23(短尺部23B)の外径よりも大きな穴を有する貫通穴が形成される。この貫通穴に短尺部23Bが挿通されることにより、手摺り23は、先端側手摺り支持部材25に移動可能に支持されている。
【0035】
手摺り位置決め機構26は、先端側手摺り支持部材25に設けられている。手摺り位置決め機構26は、昇降装置19を図4の上げ位置とするときに、この昇降装置19に対して手摺り23を位置決めする。図9および図11に示すように、手摺り位置決め機構26は、先端側手摺り支持部材25の半割体25Bに設けられた係合ピン27と、ストッパピン28とを含んで構成されている。
【0036】
ここで、半割体25Bには、先端側手摺り支持部材25の溝25Dと直交する方向に貫通するピン穴25Fと、ピン穴25Fと同心上に形成されたピン穴25Fよりも大径な有底穴からなるばね収容穴25Gとが形成されている。また、半割体25Bのうちばね収容穴25Gに隣接した位置には、溝25D側が開口した有底穴25Hが形成されている。半割体25Bのピン穴25Fには係合ピン27が挿通され、ばね収容穴25Gには後述の圧縮ばね27Bが収容され、有底穴25Hにはストッパピン28の先端が挿通される。
【0037】
一方、半割体25Aには、先端側手摺り支持部材25の溝25Dと直交する方向に貫通するピン挿通穴25Jと、ピン挿通穴25Jに隣接して半割体25Aの外側面に固定されたピンホルダ25Kとが設けられている。ピン挿通穴25Jは、溝25Dの径方向において半割体25Bの有底穴25Hと一致し、ストッパピン28が移動可能に挿通される。ピンホルダ25Kは、半割体25Aの外側面との間に収容空間25Lを形成し、この収容空間25Lには、ストッパピン28の屈曲部28Aが収容される。
【0038】
係合ピン27は、半割体25Bのピン穴25Fに軸方向に移動可能に挿通されている。係合ピン27の軸方向の中間部には、係合ピン27よりも大径な円板状のばね受け27Aが固定され、ばね受け27Aの外径寸法は、半割体25Bのばね収容穴25Gの内径寸法(穴径)よりも小さく設定されている。ばね収容穴25G内には、圧縮ばね27Bが配置されている。圧縮ばね27Bの一端は、ばね収容穴25Gの穴底に当接し、圧縮ばね27Bの他端は、係合ピン27のばね受け27Aに当接している。これにより、係合ピン27は、圧縮ばね27Bによって半割体25A側に突出する方向に付勢されている。
【0039】
ストッパピン28は、半割体25Aのピン挿通穴25Jおよび手摺り23(短尺部23B)のピン挿通穴23Fに、抜き差し可能に挿通される。ストッパピン28は、屈曲部28Aを有するL字型の棒材により構成されている。図9に示すように、ストッパピン28は、半割体25Aのピン挿通穴25J、手摺り23のピン挿通穴23F、半割体25Bの有底穴25Hに挿通された状態で、屈曲部28Aがピンホルダ25Kの収容空間25L内に収容される。
【0040】
図11に示すように、係合ピン27は、圧縮ばね27Bにより常に手摺り23(短尺部23B)の外周面に当接している。そして、先端側手摺り支持部材25が手摺り23の短尺部23Bに対して矢示A方向に移動すると、図9に示すように、係合ピン27は圧縮ばね27Bにより、手摺り23の短尺部23Bに設けられた凹陥部23Eに係合し、手摺り23に対する先端側手摺り支持部材25の移動が停止する。この状態で、ストッパピン28を、半割体25Aのピン挿通穴25J、手摺り23のピン挿通穴23F、半割体25Bの有底穴25Hに挿通し、屈曲部28Aをピンホルダ25Kの収容空間25L内に収容することにより、先端側手摺り支持部材25と手摺り23とが相互に位置決めされる。
【0041】
上げ位置固定機構29は、作動油タンク13の側面板13Cに設けられ、昇降装置19を上げ位置に固定する。図8に示すように、上げ位置固定機構29は、作動油タンク13の上端側(上面板13A側)に、前後方向に間隔をもって2個設けられている。上げ位置固定機構29の前後方向の間隔は、昇降装置19の一対の側板20に取付けられた手摺り23の間隔に対応している。図12および図13に示すように、上げ位置固定機構29は、作動油タンク13の側面板13Cに固定されたベース部材30と、ベース部材30に取付けられた2個のロック部材31と、ベース部材30とロック部材31との間に設けられた板ばね32とを含んで構成されている。ベース部材30は、作動油タンク13の側面板13Cに固定されている。ベース部材30の上下方向の両側には、側面板13Cから左側方に張出す張出し部30Aが設けられている。
【0042】
2個のロック部材31は同一形状を有し、それぞれベース部材30の張出し部30Aに回動可能に取付けられている。ロック部材31は、例えば直方体のブロックを用いて形成され、長さ方向の中央部にはU字型の凹陥部31Aが設けられている。ロック部材31は、長さ方向の一端側が軸33を介してベース部材(張出し部30A)に取付けられ、長さ方向の他端側がベース部材30から左側方に突出している。ロック部材31の他端(突出端)には、長さ方向に対して斜めに交差する傾斜面31Bが形成されている。2個のロック部材31は、凹陥部31Aが長穴状に連続するように対向して配置され、2個のロック部材31の傾斜面31Bは、長穴状に連続した凹陥部31Aに向けて徐々に間隔が狭まるテーパ状に形成されている。2個のロック部材31は、軸33を中心として水平方向に回動し、2個のロック部材31の他端側は、互いに当接する閉位置(図12の位置)と互いに離間する開位置(図13の位置)とに変位する。
【0043】
板ばね32は、2個のロック部材31とベース部材30との間に設けられている。板ばね32は長方形の板体からなり、ロック部材31の長さ方向の一端側の端面に当接することにより、2個のロック部材31を閉位置に向けて付勢している。昇降装置19が上げ位置に変位するときに、手摺り23の長尺部23Cがロック部材31の傾斜面31Bに当接すると、ロック部材31の突出端側は板ばね32のばね力に抗して押し広げられ、軸33を中心に閉位置から開位置へと回動する。これにより、手摺り23は、2個のロック部材31によって形成された長穴状に連続する凹陥部31A内に収容される。手摺り23が凹陥部31A内に収容された後には、2個のロック部材31は板ばね32によって閉位置へと復帰する。これにより、手摺り23の凹陥部31Aからの離脱が規制され、昇降装置19は、上げ位置固定機構29によって上げ位置に固定される。
【0044】
ここで、上げ位置固定機構29は、モータ等の動力源を用いて2個のロック部材31を閉位置から開位置に変位させる駆動源(図示せず)を備えている。この駆動源は、例えば旋回フレーム9の左側面9Aおよび作動油タンク13の側面板13Cに設けられた固定機構用スイッチ(図示せず)の一方を操作することにより起動される。従って、上げ位置に固定された昇降装置19を下げ位置へと変位させるときには、地面に立つ作業者が旋回フレーム9(左側面9A)に設けられた固定機構用スイッチを操作することにより、あるいは点検通路14に立つ作業者が作動油タンク13(側面板13C)に設けられた固定機構用スイッチを操作することにより、ロック部材31を閉位置から開位置に変位させることができる。
【0045】
2個の補助手摺り34は、それぞれ作動油タンク13の上面板13Aにブラケット35を介して固定され、前後方向で対をなしている。補助手摺り34は、パイプ材等を用いてP型の枠状に形成され、前後方向に一定の間隔を保った状態で作動油タンク13(上面板13A)から上方に突出している。上げ位置に固定された昇降装置19の上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14と作動油タンク13の上面板13Aとの間を移動する作業者は、手摺り23および補助手摺り34を把持することにより、安定した姿勢を保持する。
【0046】
図1に示すように、下起動スイッチ36は、点検通路14よりも下側に位置して旋回フレーム9の左側面9Aに設けられている。上起動スイッチ37は、点検通路14よりも上側に位置して作動油タンク13の側面板13Cに設けられている。下起動スイッチ36は、旋回フレーム9の左側面9Aのうち支持基台15に隣接した位置に配置され、地面に立つ作業者によって操作される。上起動スイッチ37は、作動油タンク13の側面板13Cのうち上げ位置固定機構29に隣接した位置に配置され、点検通路14に立つ作業者によって操作される。これら下起動スイッチ36および上起動スイッチ37は、駆動装置18を起動するために操作され、回転軸18Aを下げ方向または上げ方向に回転させる。回転軸18Aを下げ方向に回転させたときには、昇降装置19が上げ位置から下げ位置へと変位し、回転軸18Aを上げ方向に回転させたときには、昇降装置19が下げ位置から上げ位置へと変位する。
【0047】
本実施形態による油圧ショベル1は上述の如き構成を有するもので、次に、油圧ショベル1の搭載機器に対する点検作業について説明する。
【0048】
まず、油圧ショベル1が稼働する前段階では、昇降装置19は、上げ位置固定機構29によって図4の上げ位置に固定されている。このため、作業者は、旋回フレーム9の左側面9Aに設けられた固定機構用スイッチ(図示せず)を操作し、上げ位置固定機構29のロック部材31を、図12の閉位置から図13の開位置へと変位させる。これにより、昇降装置19の手摺り23が、ロック部材31の凹陥部31Aから離脱可能な状態となる。
【0049】
次に、作業者は下起動スイッチ36を操作して駆動装置18を起動し、回転軸18Aを下げ方向に回転させる。これにより、昇降装置19は、図4の上げ位置から図5の下げ位置に向けて回動変位し、一対の側板20のストッパ部20Bが、支持基台15を構成するベース部材17の基板17Aに当接することにより、下げ位置に保持される。下げ位置に保持された昇降装置19は、地面と点検通路14との間に斜めに傾斜し、複数の下げ位置用ステップ21は、地面に対して水平となって階段状に連続する。
【0050】
昇降装置19が下げ位置に変位した状態では、手摺り23の短尺部23Bは、手摺り位置決め機構26によって側板20の先端側手摺り支持部材25に対して位置決めされている。このため、作業者は、手摺り位置決め機構26のストッパピン28を、先端側手摺り支持部材25(半割体25B)の有底穴25H、手摺り23のピン挿通穴23F、先端側手摺り支持部材25(半割体25A)のピン挿通穴25Jから抜き取る(図11参照)。このようにして、手摺り23の短尺部23Bが、先端側手摺り支持部材25に対して移動可能となった状態で、作業者は、手摺り23の長尺部23Cを、側板20から離れる方向に移動させる。そして、手摺り23の長尺部23Cが、例えば側板20の幅方向の一端20Cから距離L1だけ離れた状態で、作業者は、側板20の基端側手摺り支持部材24のボルト24Aを締め込む。これにより、手摺り23の短尺部23Aが、基端側手摺り支持部材24に固定され、側板20に対して手摺り23を固定することができる。
【0051】
この状態で、作業者は、手摺り23の長尺部23Cを把持しつつ、下げ位置に保持された昇降装置19の下げ位置用ステップ21を足場として、地面から点検通路14へと移動する。点検通路14に移動した作業者は、点検通路14上を前後方向に移動し、例えば外装カバー12(左側面カバー12A)の点検ドア12Dを開閉することにより、外装カバー12内に配置された搭載機器に対する点検作業、あるいはキャブ11の乗降ドア11Aを開閉することによりキャブ11内に配置された器機類に対する点検作業を行う。
【0052】
次に、点検通路14から外装カバー12(上面カバー12B)の上面に移動するときには、下げ位置に保持されている昇降装置19を上げ位置に移動させる。この場合、点検通路14上に存在する作業者は、基端側手摺り支持部材24のボルト24Aを緩め、手摺り23の短尺部23Aを、基端側手摺り支持部材24に対して移動可能とする。その後、作業者は、作動油タンク13の側面板13Cに設けられた上起動スイッチ37を上げ方向に操作することにより、昇降装置19を、図5の下げ位置から図4の上げ位置に向けて回動変位させる。
【0053】
昇降装置19が上げ位置に向けて回動変位する途中において、図6に示すように、手摺り23の長尺部23Cは、上げ位置固定機構29を構成する2個のロック部材31の傾斜面31Bに当接する。これにより、手摺り23の移動のみが規制され、側板20は、先端側手摺り支持部材25と共に、手摺り23の短尺部23Bに対して図11中の矢示A方向に移動する。このとき、先端側手摺り支持部材25に設けられた手摺り位置決め機構26の係合ピン27は、圧縮ばね27Bに付勢されて手摺り23(短尺部23B)の外周面に常に当接している。このため、図9に示すように、係合ピン27が、短尺部23Bに設けられた凹陥部23Eに係合し、手摺り23は、再び昇降装置19と一体となって回動変位する。
【0054】
これにより、図13に示すように、手摺り23は、上げ位置固定機構29を構成するロック部材31の傾斜面31Bを押圧し、ロック部材31の突出端側が板ばね32のばね力に抗して押し広げられることにより、手摺り23は、2個のロック部材31によって形成された長穴状に連続する凹陥部31A内に収容される。手摺り23が凹陥部31A内に収容されると、2個のロック部材31は板ばね32によって閉位置へと復帰し、手摺り23の凹陥部31Aからの離脱が規制される。この状態で、昇降装置19は図4の上げ位置に固定され、複数の上げ位置用ステップ22は、点検通路14の上方に垂直に立ち上がり、複数の上げ位置用ステップ22は梯子状に連続する。
【0055】
このようにして、手摺り位置決め機構26の係合ピン27が、手摺り23の短尺部23Bに設けられた凹陥部23Eに係合した状態で、点検通路14に立つ作業者は、図9に示すように、ストッパピン28を、半割体25Aのピン挿通穴25J、手摺り23のピン挿通穴23F、半割体25Bの有底穴25Hに挿通し、屈曲部28Aをピンホルダ25Kの収容空間25L内に収容する。これにより、手摺り23の長尺部23Cは、側板20の幅方向の一端20Cから距離L2だけ離れた位置に位置決めされる(図4参照)。
【0056】
昇降装置19が、上げ位置固定機構29によって上げ位置に固定され、手摺り23が、手摺り位置決め機構26によって側板20に対して位置決めされると、作業者は、手摺り23の長尺部23Dおよび補助手摺り34を把持しつつ、昇降装置19の上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14から作動油タンク13の上面板13Aへと移動する。そして、作業者は、作動油タンク13の上面板13Aから外装カバー12の上面カバー12Bへと移動し、例えば原動機カバー12Cを開閉することにより、外装カバー12内に配置された搭載機器に対する点検作業を行う。
【0057】
このように、油圧ショベル1は、下げ位置から上げ位置に変位した昇降装置19を、上げ位置固定機構29によって上げ位置に固定することにより、作業者は、地面と点検通路14との間の移動、および点検通路14と外装カバー12の上面との間の移動を、単一の昇降装置19を利用して迅速に行うことができ、点検作業の作業性を高めることができる。しかも、昇降装置19には、下げ位置となったときに階段状に連続する下げ位置用ステップ21と、上げ位置となったときに梯子状に連続する上げ位置用ステップ22とが個別に設けられている。この結果、作業者は、下げ位置用ステップ21を足場として地面と点検通路14との間を円滑に移動することができ、上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14と外装カバー12の上面との間を円滑に移動することができる。
【0058】
外装カバー12(上面カバー12B)上での点検作業が終了すると、作業者は、補助手摺り34および手摺り23(長尺部23D)を把持しつつ、昇降装置19の上げ位置用ステップ22を足場として作動油タンク13から点検通路14に移動する。そして、油圧ショベル1を稼働させるときには、作業者は、点検通路14を通ってキャブ11に乗り込む。
【0059】
一方、点検作業を終了した作業者が点検通路14から地面に移動するときには、点検通路14に立つ作業者は、図11に示すように、手摺り位置決め機構26のストッパピン28を、手摺り23のピン挿通穴23Fおよび先端側手摺り支持部材25の半割体25Bに設けられたピン挿通穴25Jから抜き取る。次に、作業者は、作動油タンク13の側面板13Cに設けられた固定機構用スイッチ(図示せず)を操作し、上げ位置固定機構29のロック部材31を、図12の閉位置から図13の開位置へと変位させる。
【0060】
この状態で、作業者は、作動油タンク13の側面板13Cに設けられた上起動スイッチ37を操作して駆動装置18を起動し、昇降装置19を上げ位置から下げ位置へと回動変位させる。次に、作業者は、昇降装置19の回動変位の途中で上起動スイッチ37の操作をいったん停止し、昇降装置19を、上げ位置と下げ位置との中間位置で停止させる。そして、作業者は、手摺り23の長尺部23Cを、側板20の幅方向の一端20Cから距離L1だけ離れた位置まで移動させ、基端側手摺り支持部材24のボルト24Aを締め込む。これにより、手摺り23は、側板20の幅方向の一端20Cから距離L1だけ離れた位置に固定される。
【0061】
このようにして、昇降装置19の側板20に対して手摺り23を固定した状態で、作業者は、再び上起動スイッチ37を操作し、昇降装置19を中間位置から下げ位置へと回動変位させる。そして、側板20のストッパ部20Bが、支持基台15を構成するベース部材17の基板17Aに当接することにより、昇降装置19が下げ位置に保持される。これにより、作業者は、手摺り23の長尺部23Cを把持しつつ、複数の下げ位置用ステップ21を足場として点検通路14から地面へと移動することができる。
【0062】
そして、地面に移動した作業者は、基端側手摺り支持部材24のボルト24Aを緩め、手摺り23の短尺部23Aを、基端側手摺り支持部材24に対して移動可能とする。この状態で、作業者は、旋回フレーム9(左側面9A)に設けられた上起動スイッチ37を上げ方向に操作することにより、昇降装置19を、下げ位置から上げ位置に向けて回動変位させる。昇降装置19が上げ位置へと回動変位するときには、上述したように、手摺り23が上げ位置固定機構29のロック部材31に当接することにより、手摺り位置決め機構26の係合ピン27が短尺部23Bの凹陥部23Eに係合する。この状態で、昇降装置19と一体となって移動する手摺り23の長尺部23Cが、上げ位置固定機構29を構成するロック部材31の凹陥部31A内に収容され、昇降装置19を上げ位置に固定することができる。
【0063】
かくして、実施形態による油圧ショベル1は、下部走行体2と上部旋回体3とからなる自走可能な車体と、上部旋回体3に設けられ、点検作業を行うときの足場となる点検通路14および点検通路14よりも上方に配置された上面部と、複数段のステップを有し、地面と点検通路14との間に配置された下げ位置および点検通路14の上方に配置された上げ位置とに変位する昇降装置19とを備えている。そして、昇降装置19には、昇降装置19が下げ位置にあるときに点検通路14と地面との間を移動する際の足掛かりとなる下げ位置用ステップ21と、昇降装置19が上げ位置にあるときに点検通路14と上部旋回体3の上面部との間を移動する際の足掛かりとなる上げ位置用ステップ22とが設けられている。
【0064】
この構成によれば、昇降装置19を下げ位置としたときには、下げ位置用ステップ21を足場として点検通路14と地面との間を迅速に移動することができる。一方、昇降装置19を上げ位置固定機構29によって上げ位置に固定したときには、上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14と外装カバー12の上面との間を迅速に移動することができる。このように、旋回フレーム9の左側面9Aに設けられた点検通路14のサイズが小さい場合でも、作業者は、地面と点検通路14との間、および点検通路14と外装カバー12の上面との間を、単一の昇降装置19を利用して迅速に移動することができる。この結果、点検作業の作業性を高めることができる。
【0065】
しかも、昇降装置19には、下げ位置となったときに階段状に連続する下げ位置用ステップ21と、上げ位置となったときに梯子状に連続する上げ位置用ステップ22とが個別に設けられている。この結果、作業者は、下げ位置用ステップ21を足場として地面と点検通路14との間を円滑に移動することができ、上げ位置用ステップ22を足場として点検通路14と外装カバー12の上面との間を円滑に移動することができる。
【0066】
実施形態では、昇降装置19は、互いに対向する一対の側板20と、互いに一定の間隔をもって一対の側板20間を連結する下げ位置用ステップ21および上げ位置用ステップ22と、一対の側板20の長さ方向に沿って延在し、作業者が把持する手摺り23とを含んで構成され、手摺り23は、昇降装置19が下げ位置にある場合と上げ位置にある場合とで一対の側板20に対する位置が変化する。この構成によれば、例えば昇降装置19が下げ位置にある場合には、手摺り23の長尺部23Cを、側板20の幅方向の一端20Cから大きく張出させることにより、作業者は、手摺り23の長尺部23Cを把持しつつ、階段状に連続する下げ位置用ステップ21を安定した姿勢で移動することができる。
【0067】
実施形態では、昇降装置19を上げ位置と下げ位置との間で変位させる駆動装置18を備え、上部旋回体3には、駆動装置18を起動して昇降装置19を下げ位置と上げ位置とに変位させるため、点検通路14よりも下側に配置された下起動スイッチ36と、点検通路14よりも上側に配置された上起動スイッチ37とが設けられている。この構成によれば、地面に立つ作業者は、下起動スイッチ36を操作することにより、昇降装置19を下げ位置と上げ位置とに変位させることができ、点検通路14に立つ作業者は、上起動スイッチ37を操作することにより、昇降装置19を下げ位置と上げ位置とに変位させることができる。
【0068】
なお、実施形態では、作動油タンク13の側面板13Cに固定されたベース部材30と、ベース部材30に軸33を介して取付けられた2個のロック部材31と、ベース部材30とロック部材31との間に設けられた板ばね32とを有する上げ位置固定機構29を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば図14に示す上げ位置固定機構38のように、ばね鋼等を用いて形成された2個のクランプ部材39を、互いに対向した状態で作動油タンク13の側面板13Cに取り付け、このクランプ部材39によって手摺り23を把持する構成としてもよい。
【0069】
また、実施形態では、下起動スイッチ36を旋回フレーム9の左側面9Aに取り付け、上起動スイッチ37を作動油タンク13の側面板13Cに取り付けた場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば支持基台15等の点検通路14よりも下側となる部位に下起動スイッチを取り付け、外装カバー12の左側面カバー12A等の点検通路14よりも上側となる部位に上起動スイッチを取り付ける構成としてもよい。
【符号の説明】
【0070】
2 下部走行体(車体)
3 上部旋回体(車体)
14 点検通路
18 駆動装置
19 昇降装置
20 側板
21 下げ位置用ステップ
22 上げ位置用ステップ
23 手摺り
29,38 上げ位置固定機構
36 下起動スイッチ
37 上起動スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14