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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140669
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】流体圧システム
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16K31/06 305Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051934
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】カヤバ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】弘中 剛史
【テーマコード(参考)】
3H106
【Fターム(参考)】
3H106DA08
3H106DA23
3H106DB02
3H106DB12
3H106DB23
3H106DB32
3H106DC09
3H106DC18
3H106DD09
3H106EE19
3H106EE33
3H106GA01
3H106GB01
3H106GC07
3H106KK03
(57)【要約】
【課題】スプール弁の切り換えに伴い生じ得る急激な圧力変動を抑制する。
【解決手段】流体圧システム1は、スプール62の位置の切り換えに応じて入口ポートPiと第1出口ポートPo1とを連通または遮断するスプール弁である切換弁50を用いたシステムであって、スプール62の位置に応じて拡縮する第1背圧室B1に連通する第1圧抜き通路72と、第1絞り開度を変更可能な第1磁性エラストマ73と、を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプールの位置の切り換えに応じて入口ポートと出口ポートとを連通または遮断するスプール弁を用いた流体圧システムであって、
前記スプールの位置に応じて拡縮する背圧室に連通する圧抜き通路と、
前記圧抜き通路の開度を変更可能な可変絞りと、
を有することを特徴とする流体圧システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流体圧システムであって、
前記スプール弁は、前記スプールを駆動するソレノイドを有するソレノイドバルブであり、
前記圧抜き通路は、前記ソレノイド内を通じて前記背圧室と連通し、
前記可変絞りは、前記ソレノイド内に組み込まれ、前記ソレノイドのコイルへの通電により生じる磁場の強さに応じて変形する磁性エラストマである、
ことを特徴とする流体圧システム。
【請求項3】
請求項2に記載の流体圧システムであって、
前記コイルに供給される通電量を制御するコントローラをさらに有し、
前記コントローラは、前記通電量が所定値に達するまでは前記圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合となるように前記通電量の変更度合を小さくし、前記通電量が前記所定値を超えると前記圧抜き通路の開度の変化度合いが前記第1変化度合よりも大きい第2変化度合となるように前記通電量の変更度合を大きくする、
ことを特徴とする流体圧システム。
【請求項4】
請求項2に記載の流体圧システムであって、
前記磁性エラストマは、前記ソレノイドの通電量が比例的に増加したとき、前記通電量が所定値に達するまでは前記圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合となるように変形し、前記通電量が前記所定値を超えると前記圧抜き通路の開度の変化度合いが前記第1変化度合よりも大きい第2変化度合となるように変形する、
ことを特徴とする流体圧システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の流体圧システムであって、
前記スプールは、前記入口ポートと前記出口ポートとを連通または遮断するランド部と、前記ランド部の前記入口ポート側の第1端面から軸方向に沿って形成されたノッチとを有し、
前記入口ポートと前記出口ポートとが前記ノッチを通じて連通し、前記ランド部の前記第1端面が前記出口ポートに達するまでの間は、前記変化度合いが前記第1変化度合とされる、
ことを特徴とする流体圧システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体圧システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には自動変速機への作動油の供給状態を、第1オイルポンプのみから作動油を供給する供給状態と、第1オイルポンプ及び第2オイルポンプから作動油を供給する供給状態とに設定する技術が開示されている。第1オイルポンプは第1吐出管を通じて自動変速機へと作動油を吐出し、第2オイルポンプは第2吐出管を通じて作動油を吐出する。第2吐出管は第1アンロード弁と接続管とを介して第1吐出管に接続する。第1アンロード弁は、第2吐出管と接続管とを連通させる第1位置と、第2吐出管と第1アンロード通路とを連通させる第2位置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-70890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
スプール弁を用いた流体圧システムでは、スプール弁の切り換えに伴い急激な圧力変動が発生する虞がある。例えば特許文献1に記載の構成では、第1アンロード弁が第2位置から第1位置に瞬時に切り換えられた場合には、第1吐出管で作動油の流量が急増し、サージ圧が発生する虞がある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたもので、スプール弁の切り換えに伴い生じ得る急激な圧力変動を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はスプールの位置の切り換えに応じて入口ポートと出口ポートとを連通または遮断するスプール弁を用いた流体圧システムであって、スプールの位置に応じて拡縮する背圧室に連通する圧抜き通路と、圧抜き通路の開度を変更可能な可変絞りとを有することを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、入口ポートと出口ポートとを連通する方向へのスプール弁の切り換え時に、縮小する側の背圧室に連通する圧抜き通路の開度(流路断面積)を低下させることで、スプールの移動速度を抑制できる。結果、例えば作動流体を供給する出口ポートが急に大きく開き、流量が急増することを抑制できるので、切り換えに伴い生じ得るサージ圧を抑制できる。また、例えば出口ポートがドレンポートの場合でも、上記方向へのスプール弁の切り換え時に、縮小する側の背圧室に連通する圧抜き通路の開度を調整することで、切り換えに伴い低下する圧力に生じ得る急激な圧力変動を抑制できる。
【0008】
また本発明は、スプール弁はスプールを駆動するソレノイドを有するソレノイドバルブであり、圧抜き通路はソレノイド内を通じて背圧室と連通し、可変絞りはソレノイド内に組み込まれソレノイドのコイルへの通電により生じる磁場の強さに応じて変形する磁性エラストマであることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、ソレノイド内に組み込んだ磁性エラストマにより可変絞りを構成する。このため、スプールを駆動するためのコイルへの通電で生じる磁場を利用して、圧抜き通路の開度を調整することができる。また、可変絞りはソレノイド内に組み込まれるので、例えば流量制御弁としてのリニアソレノイドバルブを可変絞りに用いる場合と比べ、システムの小型化にも資する。
【0010】
また本発明は、コイルに供給される通電量を制御するコントローラをさらに有し、コントローラは、通電量が所定値に達するまでは圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合となるように通電量の変更度合を小さくし、通電量が所定値を超えると圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合よりも大きい第2変化度合となるように通電量の変更度合を大きくすることを特徴とする。
【0011】
この発明によれば、ソレノイドへの通電量の変更度合つまり傾きによって、切り換えの初期段階で開度の変化度合いが小さくなるようにすることで、切り換えに伴い生じ得る急激な圧力変動を抑制できる。また、その後絞りを緩めることで、切り換えの進行も促進できる。
【0012】
また本発明は、磁性エラストマはソレノイドの通電量が比例的に増加したとき、通電量が所定値に達するまでは圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合となるように変形し、通電量が所定値を超えると圧抜き通路の開度の変化度合いが第1変化度合よりも大きい第2変化度合となるように変形することを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、ソレノイドの磁場特性によって切り換えの初期段階で開度の変化度合いが小さくなるようにすることで、切り換えに伴い生じ得る急激な圧力変動を抑制できる。また、その後絞りを緩めることで、切り換えの進行も促進できる。
【0014】
また本発明は、スプールは入口ポートと出口ポートとを連通または遮断するランド部と、ランド部の入口ポート側の第1端面から軸方向に沿って形成されたノッチとを有し、入口ポートと出口ポートとがノッチを通じて連通し、ランド部の第1端面が出口ポートに達するまでの間は、変化度合いが第1変化度合とされることを特徴とする。
【0015】
この発明によれば、例えばノッチだけでは急激な圧力変動を十分に抑制できない場合であっても、可変絞りによりスプールの移動速度を低下させ、その分ノッチの作用を長く継続させることで、急激な圧力変動を抑制できる。また、可変絞りの適用によりノッチの数を削減可能な場合には、ノッチの数を減らすことで加工費の低減に資することもできる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、スプール弁の切り換えに伴い生じ得る急激な圧力変動を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る流体圧システムの概略構成図である。
図2】本発明の実施形態に係る切換弁を断面で示す図である。
図3】第1コイル非通電時の貫通孔を示す図である。
図4】第1コイル通電時の貫通孔を示す図である。
図5】第2コイル非通電時の連通部を示す図である。
図6】第2コイル通電時の連通部を示す図である。
図7図1に示すノッチの周辺部の拡大図である。
図8】本発明の実施形態に係る第1の制御をフローチャートで示す図である。
図9図8に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
図10】第1変形例に係る第2の制御をフローチャートで示す図である。
図11図10に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
図12】第2変形例に係る第3の制御をフローチャートで示す図である。
図13図12に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
図14】切換弁の一変形例を断面で示す図である。
図15】第3変形例に係る第4の制御をフローチャートで示す図である。
図16図15に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
図17】第4変形例に係る第5の制御をフローチャートで示す図である。
図18図17に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、流体圧システム1の概略構成図である。図2は、切換弁50を断面で示す図である。図2では切換弁50とともにコントローラ100やタンクTを併せて示す。流体圧システム1は、作動流体としての作動油を油圧機器30へ供給する。油圧機器30は供給された作動流体を利用する流体機器であり、流体機器では供給された作動流体を作動や制御のほか、冷却や潤滑に用いることができる。油圧機器30は例えば、油圧作動の弁、機構、部品又はこれらの組み合わせで構成される。作動流体は作動油に限らず、他の非圧縮性流体であってもよい。
【0020】
流体圧システム1は、駆動源40の出力により駆動され作動油を供給可能な第1オイルポンプ10と、第1オイルポンプ10とともに駆動源40の出力により駆動され作動油を供給可能な第2オイルポンプ11と、第2オイルポンプ11からの作動油の供給先を切り換え可能なスプール弁としての切換弁50と、駆動源40と切換弁50との作動を制御する制御部としてのコントローラ100と、を備える。駆動源40には例えばエンジンが適用される。
【0021】
第1オイルポンプ10は、駆動源40によって回転駆動されるベーンポンプであり、第1吸込通路12を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、第1吐出通路13を通じて作動油を吐出する。第1吐出通路13は、第1オイルポンプ10からの作動油の流れのみを許容する逆止弁15を介して供給通路14に接続される。供給通路14は第1吐出通路13とは反対側で油圧機器30に接続される。
【0022】
第2オイルポンプ11は、第1オイルポンプ10と同様に、駆動源40によって回転駆動されるベーンポンプであり、第2吸込通路16を通じてタンクTに貯留された作動油を吸引し、吐出通路としての第2吐出通路17を通じて作動油を吐出する。第2吐出通路17は、切換弁50を介して接続通路19及びドレン通路20に接続される。接続通路19は、第2オイルポンプ11からの作動油の流れのみを許容する逆止弁21を介して供給通路14に接続される。一端が切換弁50に接続されるドレン通路20の他端は、タンクTに接続される。ドレン通路20は、図2に示す切換弁50の第2出口通路66に接続される。図2に示すように、ドレン通路20はさらに、第1分岐通路20aに分岐して切換弁50の第1圧抜き通路72に接続されるとともに、第2分岐通路20bに分岐して切換弁50の第2圧抜き通路90に接続される。
【0023】
第1オイルポンプ10と第2オイルポンプ11とは、別々に構成される2つのベーンポンプであってもよいし、2つの吸込領域と2つの吐出領域とを有する平衡型ベーンポンプのように1つのベーンポンプで構成されるものであってもよい。また、第1オイルポンプ10の吐出流量と第2オイルポンプ11の吐出流量とは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0024】
切換弁50はスプール弁であり、電気的に駆動されるリニアソレノイドバルブとされる。切換弁50はスプール62(図2参照)の位置を変位させることによって、第2吐出通路17が接続される入口ポートPiを、接続通路19を介して供給通路14が接続される第1出口ポートPo1、及びドレン通路20が接続される第2出口ポートPo2の少なくとも一方のポートに連通させる。
【0025】
切換弁50は、接続通路19を通じて第2吐出通路17と供給通路14とを連通させる第1位置と、第2吐出通路17とドレン通路20とを連通させる第2位置と、の2つの位置を有する。切換弁50の位置はコントローラ100によって制御される。
【0026】
切換弁50の位置が第1位置に切り換えられると、第2吐出通路17と接続通路19とが連通し、第2吐出通路17とドレン通路20との連通が遮断された第1連通状態となる。第1連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は接続通路19及び供給通路14を通じて供給される。
【0027】
一方、切換弁50の位置が第2位置に切り換えられると、第2吐出通路17とドレン通路20とが連通し、第2吐出通路17と接続通路19との連通が遮断された第2連通状態となる。第2連通状態では、第2オイルポンプ11から吐出された作動油は、ドレン通路20を通じてタンクTへと排出される。
【0028】
なお、切換弁50の位置が第2位置にあるときには、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との両方がタンクTに連通した状態となり、第2オイルポンプ11の吸入側と吐出側との圧力差がほぼゼロとなる。したがって、第2オイルポンプ11は無負荷運転状態、すなわち、第2オイルポンプ11を駆動させる負荷が駆動源40に対してほとんどかからない状態となる。このため、流体圧システム1の効率を向上させるためには、第2オイルポンプ11から作動油の吐出が不要である場合には、第2オイルポンプ11を無負荷運転状態とすることが好ましい。
【0029】
流体圧システム1は圧力制御弁25をさらに備える。圧力制御弁25は、ドレン通路26を通じて供給通路14内の作動油を適宜排出するレギュレータであり、供給通路14内の圧力が予め設定された大きさとなるように作動する。つまり、第1オイルポンプ10及び第2オイルポンプ11から供給される作動油の圧力の大きさは、圧力制御弁25によって常に適切な大きさに制御される。圧力制御弁25には例えば、コントローラ100の制御のもと、パイロット圧制御弁により生成されるパイロット圧に応じて作動するレギュレータを用いることができる。
【0030】
次に、切換弁50についてさらに説明する。
【0031】
図2に示すように、切換弁50は本体部60を有する。本体部60は、有底筒状のバルブボディ61と、バルブボディ61内に摺動自在に設けられる弁体としてのスプール62と、バルブボディ61内に設けられスプール62を付勢する付勢部材としてのコイルばね63と、を備える。
【0032】
スプール62は、バルブボディ61に形成されたスプール収容孔61a内に摺動自在に挿入され、スプール収容孔61aの開口部61aa側に設けられる第1ランド部62aと、スプール収容孔61aの底部61ab側に設けられる第2ランド部62bと、第1ランド部62aと第2ランド部62bとの間に設けられる環状溝62cと、を有する。
【0033】
第1ランド部62aの端部には、後述するソレノイド80のシャフト84が接触する。第2ランド部62bには、コイルばね63の一部が収容されるばね収容凹部62baが形成される。
【0034】
バルブボディ61には、作動油が流れるバルブ通路としての入口通路64、第1出口通路65及び第2出口通路66が軸方向に並んで形成される。
【0035】
入口通路64は、スプール収容孔61aの内周面に開口する単一の入口ポートPiを有し、入口ポートPiを通じて環状溝62c内に連通する。入口通路64は第2吐出通路17(図1参照)と接続し、第2吐出通路17を通じて供給された作動油を環状溝62cに導く。
【0036】
第1出口通路65は、スプール収容孔61aの内周面に開口する単一の第1出口ポートPo1を有し、切換弁50が第1位置にあるとき、第1出口ポートPo1を通じて環状溝62c内に連通する。第1出口通路65は接続通路19(図1参照)と接続し、環状溝62c内の作動油を接続通路19へと導く。
【0037】
第2出口通路66は、スプール収容孔61aの内周面に開口する単一の第2出口ポートPo2を有し、切換弁50が第2位置にあるとき、第2出口ポートPo2を通じて環状溝62c内に連通する。第2出口通路66はドレン通路20と接続し、環状溝62c内の作動油をドレン通路20へと導く。従って換言すれば、第2出口ポートPo2はドレンポートといえ、第2出口通路66はドレン通路といえる。
【0038】
コイルばね63は、スプール収容孔61aの底部61abと第2ランド部62bとにより区画されスプール62の移動に応じて拡縮する第1背圧室B1に設けられる。コイルばね63は、第2ランド部62bのばね収容凹部62baと、スプール収容孔61aの底部61abに形成される凹部61abaとの間に圧縮状態で介装される。コイルばね63は、第1出口ポートPo1を閉じる方向(図2中右方向)にスプール62を付勢する。
【0039】
スプール62の第1ランド部62a側には、スプール収容孔61aの開口部61aaと第1ランド部62aとにより区画されスプール62の移動に応じて拡縮する第2背圧室B2が形成される。図2では最も拡大した状態の第2背圧室B2を二点破線で示す。図2に示す状態では、スプール62が開口部61aa側に移動した状態なっていることにより、第2背圧室B2の容積はほぼゼロとなっている。一方、図2に示す状態からスプール62が図2中左方向に移動すると、これに応じて第2背圧室B2が拡大する。
【0040】
バルブボディ61には、作動油の一部をバルブボディ61外に排出するドレン通路67が設けられる。ドレン通路67は、第1背圧室B1に開口する単一のドレンポートPdを有し、ドレンポートPdを通じて第1背圧室B1に連通する。ドレン通路67は、第1背圧室B1とバルブボディ61の外部のタンクTとを連通し、環状溝62c内から第1背圧室B1に浸入した作動油をタンクTへ排出する。結果、第1背圧室B1に浸入した作動油の圧力によってスプール62が押圧されることが防止される。よって、切換弁50の制御性の低下を防止することができる。
【0041】
切換弁50は、可変絞り装置70と、ソレノイド80と、をさらに備える。
【0042】
可変絞り装置70は、通路部材71と、第1圧抜き通路72と、第1磁性エラストマ73と、第1ヨーク74と、第1コイル75と、を有する。可変絞り装置70は、バルブボディ61に設けられる。可変絞り装置70は、ドレン通路67に連通する第1分岐通路20aに切換弁50とは別構成として設けられてもよい。
【0043】
通路部材71は円筒状の部材であり、磁性体により形成される。通路部材71内には第1圧抜き通路72が形成される。第1圧抜き通路72は、ドレン通路67に連なる単一の第1圧抜きポートPr1を有し、第1圧抜きポートPr1を通じてドレン通路67に連通する。第1圧抜き通路72は、ドレン通路67の通路断面積以上の通路断面積を有し、ドレン通路67とは反対側(図2中左側)で第1分岐通路20a及びドレン通路20を通じてタンクTに連通する。
【0044】
第1磁性エラストマ73は、第1圧抜き通路72に設けられる。第1磁性エラストマ73及び後述する第2磁性エラストマ91は、鉄粉やネオジム粉などの磁性材料が混合されたエラストマであり、弾性、粘性、磁性を有する。第1磁性エラストマ73は円筒状に形成され、外周面が通路部材71の内周面に弾性密着することで固定される。第1磁性エラストマ73は径方向中央に第1貫通孔73aを有し、第1貫通孔73aは第1圧抜き通路72の一部を形成する。
【0045】
第1ヨーク74は、第1コイル75を囲う筒状の磁性体によって形成される。第1ヨーク74は、バルブボディ61における底部61ab側の端面に当接して固定される。
【0046】
第1コイル75は、筒状の第1ボビン751に電線を巻付けることにより形成される。第1コイル75は、端子(図示省略)を通じて供給される電流が流れることによって磁力を発生する。第1ボビン751と第1コイル75とは、樹脂材(図示省略)によってモールド成形され、一体化される。
【0047】
可変絞り装置70では、第1コイル75への通電により生じる磁場MFが第1磁性エラストマ73に作用する結果、第1貫通孔73aの大きさは次のように変化する。
【0048】
図3は、第1コイル75非通電時の第1貫通孔73aを示す図であり、図4は、第1コイル75通電時の第1貫通孔73aを示す図である。第1コイル75通電時には、図4に破線で示すように磁場MFが発生する。第1磁性エラストマ73は、第1コイル75への通電により発生する磁場MFに配置される。第1貫通孔73aの大きさは磁場MFの強さに応じて変化し、磁場MFの強さが強いほど大きくなる。
【0049】
このため、第1コイル75通電時(図4)には第1コイル75非通電時(図3)と比べて第1貫通孔73aは大きくなる。このように、第1磁性エラストマ73は、磁場MFの強さに応じて第1貫通孔73aの大きさが変化することにより、第1圧抜き通路72の開度(流路断面積)を変更可能とされる。
【0050】
図2に戻り、ソレノイド80は、スプール62を軸方向に移動させるアクチュエータであり、電流が流れると磁力を発生する第2コイル81と、磁性体によって形成され第2コイル81を囲う筒状の第2ヨーク82と、第2コイル81の内側に設けられ第2コイル81が発生する磁力によって励磁されるステータコア83と、スプール62と共に軸方向に沿って移動可能なシャフト84と、シャフト84の外周に固定されるプランジャ85と、プランジャ85を摺動可能に支持するブッシュ86と、を有する。
【0051】
第2コイル81は、筒状の第2ボビン811に電線を巻付けることにより形成される。第2コイル81は、端子(図示省略)を通じて供給される電流が流れることによって磁力を発生する。第2ボビン811と第2コイル81とは、樹脂材(図示省略)によってモールド成形され、一体化される。
【0052】
第2ヨーク82は、バルブボディ61における開口部61aa側の端面に当接して固定される。バルブボディ61と当接する第2ヨーク82の端面には、ステータコア83が挿通するヨーク開口部82aが形成される。
【0053】
ステータコア83は、第2ボビン811の内側に設けられる円筒状部材である。ステータコア83は、第2ヨーク82のヨーク開口部82aを挿通する第1ステータコア831と、第1ステータコア831と隙間を空けて直列に配置される第2ステータコア832と、第1ステータコア831と第2ステータコア832との外周を連結する連結部材833と、から構成される。第1ステータコア831及び第2ステータコア832は磁性体によって形成され、連結部材833は非磁性体によって形成される。
【0054】
第1ステータコア831の内側には第1シャフト室87が形成され、第2ステータコア832の内側には第2シャフト室89が形成される。第1シャフト室87及び第2シャフト室89の間には、第1ステータコア831及び第2ステータコア832の内側に形成され、第1シャフト室87及び第2シャフト室89と連通するプランジャ室88が設けられる。シャフト84は、プランジャ室88を貫通した状態で第1シャフト室87から第2シャフト室89に亘って設けられる。
【0055】
第1シャフト室87及び第2シャフト室89の断面積は、シャフト84の断面積より大きく、プランジャ室88の断面積より小さい。第1シャフト室87は、プランジャ室88とは反対側(図2中左側)で第1ステータコア831の端面に開口する。第1シャフト室87は第2背圧室B2に連通し、環状溝62c内から第2背圧室B2に浸入した作動油は、第1シャフト室87に導かれる。
【0056】
シャフト84は、第1シャフト室87を貫通してスプール62の第1ランド部62aと接触する。これにより、シャフト84の移動に伴いスプール62が移動する。ソレノイド80は、第2コイル81への通電量に比例してスプール62の位置を変化させる磁場特性を有する。
【0057】
プランジャ室88には、プランジャ85が収容される。プランジャ85は、磁性体によって形成され、シャフト84に対してずれが生じないように、かしめ等の方法によりシャフト84に固定される。プランジャ85には、第2コイル81の磁力によって第1ステータコア831へ向かうように吸着力が作用する。
【0058】
ブッシュ86は、第2ステータコア832の内周に設けられる。ブッシュ86は、非磁性体によって形成され、ブッシュ86の内径は、プランジャ室88を形成する部分の第1ステータコア831及び第2ステータコア832の内径よりも僅かに小さく設定される。ブッシュ86を介してプランジャ85を摺動自在に支持することで、プランジャ85と第1ステータコア831及び第2ステータコア832との接触が防止される。
【0059】
プランジャ85の外周面には、第1ステータコア831側のプランジャ室88と、第2ステータコア832側のプランジャ室88とを連通し、軸方向に沿って延伸する連通溝85aが周方向に沿って複数形成される。従って、第1シャフト室87と第2シャフト室89とは複数の連通溝85aを介して常時連通した状態となっており、第1シャフト室87、プランジャ室88及び第2シャフト室89には、連通溝85aにより形成される通路を含む作動油の通路が形成される。なお、プランジャ85には連通溝85aに代えて、プランジャ85を軸方向に沿って貫通する貫通孔が設けられてもよい。
【0060】
第2ステータコア832にはさらに、第2圧抜き通路90が設けられる。第2圧抜き通路90は、第2シャフト室89に連なる単一の第2圧抜きポートPr2を有し、第2圧抜きポートPr2を通じて第2シャフト室89に連通することで、ソレノイド80内を通じて第2背圧室B2に連通する。第2圧抜き通路90は、第2シャフト室89とは反対側(図2中右側)では第2ステータコア832の端面で開口する。
【0061】
第2圧抜き通路90の通路断面積は、第2シャフト室89の断面積より大きく設定される。第2圧抜き通路90の通路断面積は、第1シャフト室87、プランジャ室88及び第2シャフト室89にシャフト84及びプランジャ85が介在することにより形成される作動流体の通路の最小通路断面積より大きい。
【0062】
ソレノイド80は、第2磁性エラストマ91をさらに有する。第2磁性エラストマ91は、第2圧抜き通路90に設けられる。第2磁性エラストマ91は中実の部材として形成され、第2ステータコア832の内周面に対向する側面に連通部91aを有する。連通部91aは、第2ステータコア832の内周面との間に隙間を形成することで、第2磁性エラストマ91の軸方向両側(図2中左右両側)の第2圧抜き通路90同士を連通する。連通部91aは、周方向に沿って複数設けることができ、第2圧抜き通路90の一部を形成する。連通部91aは、第2コイル81への通電により生じる磁場MFの強さに応じて次のように変形する。
【0063】
図5は、第2コイル81非通電時の連通部91aを示す図であり、図6は、第2コイル81通電時の連通部91aを示す図である。図5図6では、第2圧抜き通路90に設けられた状態の第2磁性エラストマ91を正面図で示す。図6では、磁場MFについては図示省略している。
【0064】
図5に示すように、第2磁性エラストマ91には複数(ここでは4つ)の連通部91aが、周方向に沿って均等に形成される。周方向に隣り合う連通部91aの間には密着部91bが形成され、密着部91bが第2圧抜き通路90を形成する部分の第2ステータコア832の内周面に弾性密着することで、第2磁性エラストマ91が固定される。連通部91aは、周方向両側の密着部91bに対して窪んだ凹形状に形成される。
【0065】
図6に示すように、第2コイル81への通電により生じる磁場MFが第2磁性エラストマ91に作用すると、第2磁性エラストマ91が径方向に拡大するように変形する。結果、連通部91aと第2ステータコア832の内周面との間に形成された部分の第2圧抜き通路90が、図5に示す第2コイル81非通電時と比べて絞られる。
【0066】
第1磁性エラストマ73及び第2磁性エラストマ91は可変絞りに相当する。以下では、第1磁性エラストマ73による第1圧抜き通路72の開度を第1絞り開度、第2磁性エラストマ91による第2圧抜き通路90の開度を第2絞り開度とも称す。
【0067】
次に、切換弁50の動作について説明する。
【0068】
第2コイル81に電流が流れない非通電状態においては、プランジャ85には吸着力が作用せず、スプール62は第2ランド部62bが第1出口ポートPo1を閉じる方向(図2中右方向)へコイルばね63の付勢力によって付勢される。結果、環状溝62cを介した入口通路64と第1出口通路65との連通が遮断され、第2オイルポンプ11から油圧機器30への作動油の供給が停止される。このように、切換弁50は、第2コイル81に通電しない状態においては、入口通路64と第1出口通路65との連通が遮断されるノーマルクローズ型である。以下では、このときのスプール62の位置を第1位置とも称す。
【0069】
第2コイル81に電流が流れて磁力が発生すると、プランジャ85が励磁され、第1ステータコア831へ向かう方向(図2中左方向)の吸着力がプランジャ85に作用する。結果、スプール62には、シャフト84を介してコイルばね63を圧縮する方向へ向かう力が作用する。
【0070】
スプール62は、シャフト84を介して作用する吸着力とコイルばね63による付勢力とが釣り合う位置まで移動する。第2コイル81への通電量が大きくなるほど、プランジャ85と第1ステータコア831との吸着力は大きくなる。よって、第2コイル81への通電量が大きくなるほど、スプール62はコイルばね63の付勢力に抗してコイルばね63を圧縮する方向へ移動する。
【0071】
第2コイル81への通電量を大きくしてコイルばね63の付勢力に抗してスプール62を移動させると、環状溝62cを介して入口通路64と第1出口通路65とが連通する。第2コイル81への通電量をさらに大きくすると、第1出口ポートPo1の開口面積が徐々に増大する。このため、入口通路64から環状溝62cを通じて第1出口通路65へ導かれる作動油の流量が増加する。
【0072】
第2コイル81への通電量をさらに大きくして第1ステータコア831へ向かうプランジャ85の移動量を増大させると、第2ランド部62bがスプール収容孔61aの底部61abの底面に当接する。この状態で、第1出口ポートPo1の開口面積は最大であり、入口通路64から第1出口通路65へ導かれる作動油の流量が最大となる。以下では、このときのスプール62の位置を第2位置とも称す。
【0073】
このように、切換弁50は、第2コイル81への通電量を制御して、スプール62を軸方向に移動させることにより、入口通路64から第1出口通路65へ導かれる作動油の流量を調整する。第2出口ポートPo2の開口面積は、第1出口ポートPo1の開口面積の増加に応じて減少し、第1出口ポートPo1の開口面積が最大の状態で完全に遮断される。
【0074】
コントローラ100は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ100は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ100は、少なくとも、本実施形態や変形例に係る制御を実行するために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、コントローラ100は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態における各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0075】
コントローラ100は、第1コイル75への通電量を制御することで、第1コイル75への通電により生じる磁場MFの強さを制御する。これにより、第1磁性エラストマ73の第1貫通孔73aの大きさが変化し、第1絞り開度が変更される。
【0076】
コントローラ100は、第2コイル81への通電量を制御することで、第2コイル81への通電により生じる磁場MFの強さを制御する。これにより、スプール62の位置が制御されるとともに、第2磁性エラストマ91の連通部91aの大きさが変化し、第2絞り開度が変更される。
【0077】
次に、第2ランド部62bに設けられるノッチNについて説明する。
【0078】
図7は、図1に示すノッチNの周辺部の拡大図である。図7に拡大して示すように、ノッチNは、第2ランド部62bの入口ポートPi側の端面である第1端面62bbから軸方向に沿って形成される。ノッチNは周方向に沿って複数設けられる。ノッチNは第1端面62bbから軸方向に沿って離れるほど、浅くなるように形成される。ノッチNにはその他の形状が適用されてもよい。
【0079】
入口ポートPiと第1出口ポートPo1とは、第1位置から第2位置へのスプール62の移動に応じて、まずノッチNを通じて連通し始める。このため、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合は、ノッチNの作用によって少しずつ大きくなる。結果、入口ポートPiから第1出口ポートPo1への作動油の流量増加が抑制されるので、切り換えに伴い生じ得るサージ圧が抑制される。
【0080】
一方、ノッチNが設けられている場合であっても、スプール62の移動速度によってはその後に第1出口ポートPo1が急に大きく開く結果、作動油の流量が急増する事態が発生し得る。また、切換弁50は例えばノッチNを有しない構成とすることもできるが、この場合はノッチNの作用が得られない分、サージ圧が発生し易くなることが懸念される。
【0081】
なお、同様のノッチは第1ランド部62aにも設けられ(図2参照)、第1ランド部62aに設けられたノッチは、第2位置から第1位置へのスプール62の移動(図2の右方向へのスプール62の移動)の際に機能する。この際には、第2出口ポートPo2が急に大きく開く結果、切換弁50の切り換えに伴い急激な圧力変動が生じ、ショックが発生し得る。
【0082】
このような事情に鑑み、コントローラ100は次に説明する第1の制御を行う。
【0083】
図8は、第1の制御をフローチャートで示す図である。図9は、図8に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。図8図9では、第2コイル81非通電時の第1位置から第2コイル81最大通電時の第2位置にスプール62を移動させる切換弁50の切り換え時について説明する。
【0084】
第1通電量I1は、第1コイル75への通電量(電流値)を示し、第2通電量I2は、第2コイル81への通電量を示す。傾きαは第1通電量I1の傾きを示し、傾きβは第2通電量I2の傾きを示す。傾きEは第1絞り開度又は第2絞り開度の傾き(ここでは、第1絞り開度の傾き)を示す。第1絞り開度や第2絞り開度は、大きい場合ほど絞りが緩いことを示す。破線で示すスプール62の位置は、第2通電量I2に応じたスプール62の仮想位置を示す。
【0085】
ステップS11では、第1コイル75への通電及び第2コイル81への通電が開始される。第2コイル81への通電開始により、切換弁50の切り換えが開始される。第1コイル75への通電では、第1変更度合である傾きα1で第1通電量I1が増加される。第2コイル81への通電では、傾きβ2で第2通電量I2が増加される(タイミングT11)。傾きα1はサージ圧を抑制する観点から予め設定される。傾きβ1は切換弁50の切り替え時間を考慮して予め設定される。
【0086】
結果、第1絞り開度は傾きα1に応じた傾きE1で最小開度から最大開度に向かって次第に大きくなる(タイミングT11)。最小開度は第1コイル75非通電時の開度である。最大開度は第1コイル75への通電量の設定により、十分大きな開度(例えば、絞りとして機能しなくなる開度以上の開度)に予め設定できる。
【0087】
傾きα1は例えば、スプール62の位置が第2位置になったときに(タイミングT14)、第1絞り開度が最大開度になる傾きαより小さな傾きに設定できる。これにより、切り換え期間全体に亘って、第1絞り開度を最小開度から最大開度に次第に増加させる場合と比べ、絞りをきつくすることができる。
【0088】
タイミングT11、タイミングT12間では、第1絞り開度に応じた絞りの作用により、スプール62の移動速度が抑制される。結果、スプール62の位置が破線で示す仮想位置よりも第1位置側で緩やかに変化する。そして、これに応じた度合で入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合が次第に大きくなる結果、切り換えに伴い生じ得るサージ圧が抑制される。スプール62の位置は、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合を指標し、第1位置から第2位置側へ向かうほど、連通度合は大きくなる。
【0089】
ステップS12では、第2通電量I2が所定値A2以上になったか否かが判定され、これによりスプール62が所定位置Pに到達したか否かが判定される。所定値A2は所定位置Pに対応する第2通電量I2とされる。所定位置Pは、入口ポートPiと第1出口ポートPo1とがノッチNを通じて連通し、第2ランド部62bの第1端面62bbが第1出口ポートPo1に達するスプール62の位置である。
【0090】
従って、スプール62が所定位置Pに達するまでの間は、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合がノッチNにより抑制される。このため、タイミングT11、タイミングT12間では、スプール62の移動速度の抑制と相俟ったノッチNの作用によっても、入口ポートPiから第1出口ポートPo1への作動油の流量が抑えられ、サージ圧の抑制が図られる。結果、ノッチNを設けただけではサージ圧の抑制が不十分な場合であっても、サージ圧を十分に抑制することが可能になる。
【0091】
なお、スプール62が所定位置Pに到達したか否かを判定するにあたっては、スプール62のストローク量を検出するストロークセンサを設け、ストロークセンサの検出値に基づき、スプール62が所定位置Pに到達したことをコントローラ100で検出してもよい。また、スプール62が第1位置から所定位置Pに到達する時間(タイミングT11,T12間の時間)を予めコントローラ100に記憶し、タイミングT11からの経過時間に基づき、スプール62が所定位置Pに到達したか否かを判定してもよい。ステップS12で否定判定であれば、処理はステップS12に戻る。ステップS12で肯定判定であれば、処理はステップS13に進む。
【0092】
ステップS13では、第1通電量I1の傾きαが、傾きα1から傾きα1よりも大きい傾きα2に変更される(タイミングT12)。傾きα2は切り換えの進行を促進する観点から予め設定される。これにより、タイミングT12以降はタイミングT12前の傾きE1と比べて大きい傾きE2で第1絞り開度が増加するので、切り換えの進行を促進できる。タイミングT12では、第1通電量I1は所定位置Pに対応する所定値A1になる。
【0093】
このように、コントローラ100は、第1通電量I1が所定値A1に達するまでは第1絞り開度の傾きE(変化度合い)が傾きE1(第1変化度合)となるように、傾きα1によって第1通電量I1の傾きα(変更度合)を小さくする。また、コントローラ100は、第1通電量I1が所定値A1を超えると第1絞り開度の傾きEが傾きE2(第2変化度合)となるように、傾きα2によって第1通電量I1の傾きαを大きくする。
【0094】
従って、第1磁性エラストマ73は、スプール62の位置(換言すれば、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合)に応じて第1絞り開度の傾きEを変更可能であり、スプール62の位置が所定度合としての所定位置Pに達するまでは傾きEを傾きE1とし、スプール62の位置が所定位置Pを超えると傾きEを傾きE1よりも大きい傾きE2とする。
【0095】
その後は、第1通電量I1は、最大値(最大開度に対応する値)に達した際にコントローラ100により当該最大値に維持される(タイミングT13)。また、第2通電量I2は、最大値(第2位置に対応する値)に達した際にコントローラ100により当該最大値に維持される(タイミングT14)。
【0096】
第2背圧室B2に対して設けられた第2磁性エラストマ91(図2参照)は、第2位置から第1位置への切り換え時に、スプール62の移動速度を調整するのに用いることができる。当該切り換え時には、コントローラ100は第2通電量I2を減少させるので、これに応じて第2磁性エラストマ91の絞り開度は大きくなる(図5図6参照)。結果、第2磁性エラストマ91が設けられていない場合と比べて切り換えの初期段階でスプール62の移動速度が抑制され、これにより切換弁50の切り換えに伴い急激に変動し得る圧力の調整が可能になり、ショックが低減される。
【0097】
上述した第1の制御の場合、図9に示すように、スプール62は第1絞り開度が最大開度になるタイミングT13で未だ移動中で、切り換えが完了するまでにはさらに時間を要する。このため、コントローラ100は、次の第1変形例で説明する第2の制御を行うように構成されてもよい。
【0098】
(第1変形例)
図10は、第2の制御をフローチャートで示す図である。図11は、図10に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。ステップS22は前述のステップS12と同じである。この例では、第1コイル75については、前述した第1の制御の場合と同様、ステップS21で傾きαが傾きα1に設定され、ステップS23で傾きαが傾きα2に変更される。
【0099】
第2コイル81については、ステップS21で傾きβが傾きβ1よりも小さい傾きβ2に設定される(タイミングT21)。また、ステップS22でスプール62が所定位置Pに到達すると、ステップS23で傾きβが傾きβ2から傾きβ2よりも大きい傾きβ3に変更される(タイミングT22)。
【0100】
傾きβ2は、サージ圧の抑制と切り換え時間とを考慮して予め設定できる。傾きβ3は例えば、スプール62の位置が所定位置Pになった際(タイミングT22)の第1通電量I1に基づき、第1通電量I1が最大値になったときに(タイミングT23)、スプール62が第2位置に到達するように設定できる。傾きβ3は、必ずしも第1絞り開度が最大開度になるタイミングT23でスプール62が第2位置に到達するように設定される必要はなく、例えば所望の切り換え時間を満たす範囲内で適宜設定されてもよい。傾きβ3はサージ圧の抑制を考慮して適切な大きさに設定できる。
【0101】
この例では、第1絞り開度が最大開度になるタイミングT23で、スプール62が第2位置に到達する。従って、第1の制御の場合と比べて切換弁50の切り換えを早期に完了させることができる。また、傾きβ1よりも小さい傾きβ2を適用することで、第1の制御の場合と比べてスプール62の移動速度をさらに抑制することもできる。
【0102】
コントローラ100は、切り換えの途中で傾きαや傾きβを変更するのではなく、次の第2変形例で説明する第3の制御を行うように構成されてもよい。
【0103】
(第2変形例)
図12は、第3の制御をフローチャートで示す図である。図13は、図12に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。ステップS32は前述のステップS22と同じである。この例では、ステップS31で第2コイル81への通電が開始され(タイミングT31)、切り換えが完了するまでの間、傾きβは傾きβ4のままで一定とされる。傾きβ4は切り換え時間を考慮して、例えば傾きβ1(図9参照)よりも大きく設定される。これにより、図8図9を用いて前述した第1の制御の場合と比べて、切り換えを早期に完了させることができる。
【0104】
この例では、第1コイル75への通電はステップS31で開始されずに、ステップS32でスプール62が所定位置Pに達すると、ステップS33で傾きα3で開始される(タイミングT32)。傾きα3は例えば、スプール62の位置が所定位置Pになった際(タイミングT32)の第2通電量I2に基づき、スプール62が第2位置に到達するときに(タイミングT33)、第1絞り開度が最大開度になるように設定できる。傾きα3は傾きβ4とともに、所望の切り換え時間を満たす範囲内で適宜設定されてもよい。傾きα3と傾きβ4とはサージ圧の抑制を考慮して適切な大きさに設定できる。
【0105】
タイミングT32からは、第1絞り開度は傾きα3に応じた傾きE3で最小開度から最大開度に向かって次第に大きくなる。タイミングT33では、スプール62が第2位置に到達するとともに、第1絞り開度が最大開度になる。従って、第1通電量I1の傾きα及び第2通電量I2の傾きβを切り換えの途中で変更せずに済み、制御の簡素化を図ることができる。
【0106】
この例ではタイミングT32よりも前では第1絞り開度を最小開度にする。このため、図10図11を用いて前述した第2の制御の場合と比べて、第1絞り開度による絞りの影響が大きい。結果、傾きβ4を傾きβ2より大きく設定しても、スプール62の移動速度を抑制できる。
【0107】
この場合、第1磁性エラストマ73は、スプール62の位置に応じて第1絞り開度の傾きEを変更可能であり、スプール62の位置が所定位置Pに達するまでは傾きEをゼロとし、スプール62の位置が所定位置Pを超えると傾きEをゼロよりも大きい傾きE3とする。
【0108】
切り換えの途中では、第1通電量I1の傾きαだけが変更されなくてもよく、第2通電量I2の傾きβだけが変更されなくてもよい。このような場合であっても、制御の簡素化が図られる。
【0109】
(第3変形例)
図14は、切換弁50の一変形例を断面で示す図である。この例では、切換弁50は第2コイル81通電時にシャフト84とともにスプール62を後退方向(図14中左方向)に駆動することで、第1出口ポートPo1を開くように構成される。このため、ソレノイド80は本体部60の第1背圧室B1側(図14中左側)に配置され、可変絞り装置70は本体部60の第2背圧室B2側(図14中右側)に配置される。以下では、図2を用いて前述した切換弁50と区別するために、当該一変形例に係る切換弁50を切換弁50Aとも称す。切換弁50が有する本体部60等の各構成についても同様である。
【0110】
本体部60Aは、図2を用いて前述した本体部60と以下の点で異なる。本体部60Aはコイルばね63を備えない。このため、バルブボディ61Aはスプール収容孔61aAの底部61abAに凹部61abaを備えず、スプール62Aは第2ランド部62bAにばね収容凹部62baを備えない。第2ランド部62bAの第1背圧室B1A側の端面には、ドレン通路67Aを挿通してシャフト84Aが連結され、ドレン通路67Aは単一のドレンポートPdAを通じて第1背圧室B1Aに連通する。第1背圧室B1Aは、スプール収容孔61aAの底部61abAと第2ランド部62bAとにより区画され、第1背圧室B1Aにはシャフト84Aの一部が介在する。
【0111】
ソレノイド80Aは、図2を用いて前述したソレノイド80と以下の点で異なる。ソレノイド80Aは、シャフト84Aをスプール62A側(図14中右側)に付勢するコイルばね92を備える。このため、スプール62Aとは反対側(図14中左側)のシャフト84Aの端部は鍔状に形成され、当該端部にコイルばね92が当接する。コイルばね92はスプリング室93に設けられる。スプリング室93には連通路94を介して第2圧抜き通路90が連通する。第2圧抜き通路90は第2圧抜きポートPr2を通じて連通路94と連通する。
【0112】
ソレノイド80Aでは、第2磁性エラストマ91Aが第1磁性エラストマ73と同様に形成される。このため、第2磁性エラストマ91Aは径方向中央に貫通孔91cを有する一方、連通部91a及び密着部91bを有しない。
【0113】
ステータコア83Aは、第1ステータコア831Aと、第2ステータコア832と、連結部材833と、磁性体からなる第3ステータコア834と、非磁性体からなる連結部材835とにより構成される。第1ステータコア831Aは、第2ステータコア832とは反対側(図14中左側)に設けられた第3ステータコア834とともにスプリング室93を形成し、第1ステータコア831Aと第3ステータコア834とは連結部材835により連結される。連通路94と第2圧抜き通路90とは、第3ステータコア834に形成される。第2コイル81Aと、第2ボビン811Aと、第2ヨーク82Aとは、ステータコア83Aの軸方向長に応じた軸方向長を有する。第2ヨーク82Aのヨーク開口部82aには、第2ステータコア832が挿通する。
【0114】
切換弁50Aでは、第2コイル81Aへの通電が行われると、第2コイル81Aの磁力によって、プランジャ85には、第1ステータコア831Aへ向かうように吸着力が作用する。このため、シャフト84Aはスプール62Aとは反対側(図14中左側)に向かってコイルばね92を圧縮しながら移動する。
【0115】
この際、スプール62Aはシャフト84Aとともに移動することで、第1背圧室B1Aを縮小するとともに、第1出口ポートPo1を徐々に開く。結果、第1背圧室B1Aの作動油は、第2圧抜き通路90等のソレノイド80A内の作動油の通路を通じてタンクTに排出される。
【0116】
このように、切換弁50Aでは、第2コイル81A非通電時の第1位置から第2コイル81A最大通電時の第2位置への切り換えの際に、第1背圧室B1が縮小し、第2磁性エラストマ91Aが可変絞りとして機能する。
【0117】
ソレノイド80Aにコイルばね92を設ける代わりに、例えばシャフト84Aを挿通させた状態でスプール62Aを付勢するコイルばねを第1背圧室B1Aに設けてもよい。これにより、コイルばね92等を設けずに済む分、ソレノイド80Aを簡素化でき、ソレノイド80Aの軸方向長を短縮できる。またこの場合は、第2磁性エラストマ91Aをソレノイド80Aの軸方向中央により近づけて配置することができる。
【0118】
この例では、コントローラ100は次に説明する第3の制御を行う。
【0119】
図15は、第4の制御をフローチャートで示す図である。図16は、図15に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。ステップS42は前述のステップS32と同じである。この例では、図10図11を用いて前述した第2の制御と同様、ステップS41で、第2コイル81Aへの通電が傾きβ2で開始され(タイミングT41)、ステップS43で傾きβ3に変更される(タイミングT42)。
【0120】
この例では、第1位置から第2位置へのスプール62Aの移動の際に、第1背圧室B1Aが縮小する。このため、第2磁性エラストマ91Aが絞りとして機能し、第1コイル75への通電は行われない(タイミングT41)。
【0121】
第2絞り開度は、タイミングT41から第2コイル81Aへの通電に伴い生じる磁場MFの強さに応じて変化する。タイミングT41からは、第2絞り開度は傾きβ2に応じた傾きE4で最小開度から最大開度に向かって次第に大きくなる。タイミングT42からは、第2絞り開度は傾きβ3に応じた傾きE5で次第に大きくなる。結果、タイミングT43では、スプール62が第2位置に到達するとともに、第2絞り開度が最大開度になる。この場合も、図8図9を用いて前述した第1の制御の場合と比べ、切り換えを早期に完了させることができる。
【0122】
この場合、第2磁性エラストマ91は、スプール62の位置に応じて第2絞り開度の傾きEを変更可能であり、スプール62の位置が所定位置Pに達するまでは傾きEを傾きE4とし、スプール62の位置が所定位置Pを超えると傾きEを傾きE4よりも大きい傾きE5とする。
【0123】
可変絞り装置70は、第2位置から第1位置への切り換え時にスプール62Aの移動速度を調整することで、切り換えに伴い急激に変動し得る圧力を調整するのに用いることができる。
【0124】
第2背圧室B2に対して設けられた第1磁性エラストマ73(図14参照)は、第2位置から第1位置への切り換え時に、スプール62の移動速度を調整するのに用いることができる。当該切り換え時には、コントローラ100は第1通電量I1を増加させることができ、これに応じて第1磁性エラストマ73の絞り開度が大きくなる。結果、第1磁性エラストマ73が設けられていない場合と比べて切り換えの初期段階でスプール62の移動速度が抑制され、これにより切換弁50Aの切り換えに伴い急激に変動し得る圧力の調整が可能になり、ショックが低減される。
【0125】
切換弁50Aの切り換えに伴い生じ得るサージ圧を抑制するにあたっては、次の第4変形例で説明するようにソレノイド80Aの磁場特性を変更してもよい。
【0126】
(第4変形例)
以下で説明するソレノイド80Bは、ソレノイド80Aの磁場特性を変更したソレノイド80である。以下では、切換弁50Aに対しソレノイド80Aではなくソレノイド80Bを設けた切換弁50を切換弁50Bと称す。
【0127】
ソレノイド80Bは、第2通電量I2が所定値A2に達するまでは第2絞り開度の傾きEが傾きE4となるように第2磁性エラストマ91Aを変形させ、第2通電量I2が所定値A2を超えると第2絞り開度の傾きEが傾きE5となるように第2磁性エラストマ91Aを変形させる磁場特性(図18参照)を有する。このようなソレノイド80Bの磁場特性は、ソレノイド80Aの磁路を変更することで得ることができる。
【0128】
この例では、コントローラ100は次に説明する第4の制御を行う。
【0129】
図17は、第5の制御をフローチャートで示す図である。図18は、図17に対応するタイミングチャートの一例を示す図である。ステップS51では、第2コイル81Aへの通電が傾きβ4で開始される(タイミングT51)。タイミングT51からは、第2絞り開度はソレノイド80Bの磁場特性に応じて傾きE4で次第に大きくなる。第1コイル75への通電は特に行われない(タイミングT51)。
【0130】
ステップS52では、第2通電量I2が、第2位置に対応する第2通電量I2である所定値A21以上か否かが判定され、これによりスプール62Aが第2位置に到達したか否かが判定される。つまり、この例ではスプール62Aが第2位置に到達する前に、第2通電量I2の傾きβは特に変更されず、切り換えが完了するまでの間、傾きβ4のままで一定とされる。従って、図8図9を用いて前述した第1の制御の場合と比べて、切り換えを早期に完了させることができる。
【0131】
第2通電量I2は、スプール62Aが所定位置Pに到達するタイミングT52で所定値A2に達する。タイミングT52では、ソレノイド80Bの磁場特性により、第2絞り開度の傾きEが傾きE4から傾きE5に変更される。スプール62Aが第2位置に到達すると、ステップS52で肯定判定され、ステップS53で第2通電量I2がそのまま所定値A21に維持される(タイミングT53)。
【0132】
切換弁50Bによれば、ソレノイド80Bの磁場特性を利用することで、切り換えの途中で第2通電量I2の傾きβを変更せずとも第2絞り開度を調整できるので、制御の容易化を図ることができる。
【0133】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0134】
流体圧システム1は、スプール62の位置の切り換えに応じて入口ポートPiと第1出口ポートPo1とを連通または遮断するスプール弁である切換弁50を用いたシステムであって、スプール62の位置に応じて拡縮する第1背圧室B1に連通する第1圧抜き通路72(図2の場合)又は第2圧抜き通路90(図14の場合)と、第1絞り開度又は第2絞り開度を変更可能な第1磁性エラストマ73又は第2磁性エラストマ91と、を有する。また、流体圧システム1は、スプール62の位置に応じて拡縮する第2背圧室B2に連通する第2圧抜き通路90(図2の場合)又は第1圧抜き通路72(図14の場合)と、第2絞り開度又は第1絞り開度を変更可能な第2磁性エラストマ91又は第1磁性エラストマ73と、を有する。
【0135】
この構成によれば、入口ポートPiと第1出口ポートPo1とを連通する方向への切換弁50の切り換え時に、第1背圧室B1に連通する圧抜き通路の開度としての第1絞り開度又は第2絞り開度を低下させることで、スプール62の移動速度を抑制できる。結果、例えば作動油を供給する第1出口ポートPo1が急に大きく開き、流量が急増することを抑制できるので、切り換えに伴い生じ得るサージ圧を抑制できる。また、入口ポートPiと第2出口ポートPo2とを連通する方向への切換弁50の切り換え時には、第2背圧室B2に連通する圧抜き通路の開度としての第2絞り開度又は第1絞り開度を調整することで、切り換えに伴い低下する圧力に生じ得る急激な圧力変動を抑制できる。なお、このような流体圧システム1は、切換弁50のみで構成することが可能である。
【0136】
切換弁50は、スプール62を駆動するソレノイド80を有するソレノイドバルブとされる。第2圧抜き通路90は、ソレノイド80内を通じて第2背圧室B2(図2の場合)又は第1背圧室B1(図14の場合)と連通する。第2磁性エラストマ91はソレノイド80内に組み込まれ、ソレノイド80の第2コイル81への通電により生じる磁場MFの強さに応じて変形する磁性エラストマである。
【0137】
この構成によれば、ソレノイド80内に組み込んだ第2磁性エラストマ91により可変絞りを構成するので、スプール62を駆動するための第2コイル81への通電で生じる磁場MFを利用して、第2絞り開度を調整することができる。また、後述するようにシステムの小型化にも資する。
【0138】
流体圧システム1は、第2コイル81に供給される通電量である第2通電量I2を制御するコントローラ100をさらに有する。コントローラ100は、第2通電量I2を変更することによって第2磁性エラストマ91を変形させる磁場MFの強さを制御可能であり、第2通電量I2が所定値A2に達するまでは(図14の場合)、傾きE(変化度合い)が傾きE4(第1変化度合)となるように第2通電量I2の傾きβ(変更度合)を傾きβ3よりも小さい傾きβ2にすることで小さくし、第2通電量I2が所定値A2を超えると傾きEが傾きE5(第2変化度合)となるように第2通電量I2の傾きβを傾きβ3にすることで大きくする。
【0139】
この構成によれば、第2通電量I2の傾きβによって、切り換えの初期段階で傾きEが小さくなるようにすることで、切り換えに伴い生じ得るサージ圧を抑制できる。また、その後絞りを緩めることで、切り換えの進行も促進できる。
【0140】
同様の制御は、図2に示す切換弁50において、スプール62が第2位置から第1位置に移動する際(スプール62が図2の右方向に移動する際)の切り換え時にも行うことができる。この場合、コントローラ100は、第2通電量I2を減少させ、第2通電量I2が例えば所定値A2相当の所定値(第1ランド部62aに形成されたノッチに応じて設定される所定値)に達するまでは、傾きEを絶対値で相対的に小さくし、第2通電量I2が所定値A2を越えると、傾きEを絶対値で相対的に大きくすることができる。これにより、切り換えに伴い生じ得る圧力変動を抑制でき、また、その後の切り換えの進行も促進できる。
【0141】
第2磁性エラストマ91は、ソレノイド80の通電量である第2通電量I2が比例的に増加したとき、第2通電量I2が所定値A2に達するまでは傾きEが傾きE4となるように変形し、第2通電量I2が所定値A2を超えると傾きEが傾きE5となるように変形する(図18参照)。
【0142】
この構成によれば、ソレノイド80の磁場特性によって切り換えの初期段階で傾きEが小さくなるようにすることで、切り換えに伴い生じ得るサージ圧を抑制できる。また、その後絞りを緩めることで、切り換えの進行も促進できる。
【0143】
スプール62は、入口ポートPiと第1出口ポートPo1とを連通または遮断する第2ランド部62bと、第2ランド部62bの入口ポートPi側の第1端面62bbから軸方向に沿って形成されたノッチNとを有する。入口ポートPiと第1出口ポートPo1とがノッチNを通じて連通し、第2ランド部62bの第1端面62bbが第1出口ポートPo1に達するまでの間は、傾きEは傾きE1(図2の場合)又は傾きE4(図14の場合)とされる。
【0144】
この構成によれば、ノッチNだけではサージ圧を十分に抑制できない場合であっても、第1磁性エラストマ73又は第2磁性エラストマ91によりスプール62の移動速度を低下させ、その分ノッチNの作用を長く継続させることで、サージ圧を抑制できる。また、第1磁性エラストマ73又は第2磁性エラストマ91の適用によりノッチNの数を削減可能な場合には、ノッチNの数を減らすことで加工費の低減に資することもできる。
【0145】
(その他の変形例)
切換弁50は、次のように構成されてもよい。
【0146】
例えば、図2に示す構成の切換弁50には、可変絞り装置70の代わりに流量制御弁としてのリニアソレノイドバルブが設けられてもよい。リニアソレノイドバルブは切換弁50とは別体で設けることができ、このように設けられたリニアソレノイドバルブも、切換弁50の切り換えに伴い第1背圧室B1が縮小する際に絞りとして機能させることができる。
【0147】
一方、ソレノイド80を備える切換弁50によれば、第2磁性エラストマ91がソレノイド80内に組み込まれるので、リニアソレノイドバルブを用いる場合と比べ、システムの小型化にも資する。
【0148】
第1磁性エラストマ73(図2の場合)又は第2磁性エラストマ91(図14の場合)は、スプール62の移動速度を低下させ、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合を緩やかに増加させることで、サージ圧を抑制できる。このため、ノッチNがなくてもサージ圧を十分抑制可能な場合には、ノッチNは特段設けられなくてもよい。
【0149】
切換弁50はノーマルオープン型であってもよい。例えば、図2図14に示す切換弁50は、第1出口ポートPo1を含む第1出口通路65と、第2出口ポートPo2を含む第2出口通路66とを逆に配置すれば、ノーマルオープン型になる。この場合、第2コイル81最大通電時に第1出口ポートPo1が遮蔽され、第2通電量I2を減少させると、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通度合が次第に大きくなる。この場合、切換弁50Aのソレノイド80A(図14の場合)には、第2磁性エラストマ91Aではなく、図2に示す第2磁性エラストマ91(連通部91aを備える第2磁性エラストマ91)を設けることができる。
【0150】
図2に示す切換弁50において、ソレノイド80に第2磁性エラストマ91を設けずに、可変絞り装置70と同様の可変絞り装置をさらに第2分岐通路20bに設けてもよい。同様の構成は、図14に示す切換弁50にも採用することができる。
【0151】
上記のようにしてソレノイド80に対して追加的に可変絞り装置を設ける場合、ソレノイド80を設けずに、パイロット圧に応じてスプール62の位置が変化するように切換弁50を構成してもよい。また、追加的に可変絞り装置を設けずに、リニアソレノイドバルブを設けてもよい。
【0152】
第1絞り開度や第2絞り開度の傾きEの変化は3段階以上であってもよく、所定値A1や所定値A2は、必ずしも所定位置Pに対応する第1通電量I1や第2通電量I2でなくてもよい。また、第1絞り開度や第2絞り開度は、所定時間(例えば単位時間)あたりの入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通状態及び遮断状態により規定されるような開度であってもよい。
【0153】
切換弁50は入口ポートPiと第1出口ポートPo1との2つのポートを備え、入口ポートPiと第1出口ポートPo1との連通、遮断を行う2ポートの切換弁であってもよい。
【0154】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0155】
1・・・流体圧システム、50,50A,50B・・・切換弁(スプール弁、ソレノイドバルブ)、62,62A・・・スプール、62b,62bA・・・第2ランド部、62bb・・・第1端面、70・・・可変絞り装置、72・・・第1圧抜き通路、73・・・第1磁性エラストマ(可変絞り)、80,80A,80B・・・ソレノイド、81、81A・・・第2コイル、90・・・第2圧抜き通路、91,91A・・・第2磁性エラストマ(可変絞り)、100・・・コントローラ、A1,A2,A21・・・所定値、B1・・・第1背圧室、B2・・・第2背圧室、E・・・傾き(変化度合い)、E1,E4・・・傾き(第1変化度合)、E2,E5・・・傾き(第2変化度合)、I1・・・第1通電量、I2・・・第2通電量、MF・・・磁場、N・・・ノッチ、P・・・所定位置(所定度合)、Pi・・・入口ポート、Po1・・・第1出口ポート、Po2・・・第2出口ポート、α,β・・・傾き(変更度合)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18