(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140670
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空調システム及びその制御方法
(51)【国際特許分類】
F24F 11/85 20180101AFI20241003BHJP
F24F 11/32 20180101ALI20241003BHJP
F24F 11/84 20180101ALI20241003BHJP
F24F 140/12 20180101ALN20241003BHJP
【FI】
F24F11/85
F24F11/32
F24F11/84
F24F140:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051935
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】柳内 伸介
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 裕樹
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AB06
3L260BA31
3L260BA54
3L260CB39
3L260DA10
3L260FB23
3L260FB26
(57)【要約】
【課題】バックアップ運転時にポンプの作動を容易に制御することが可能な空調システム及びその制御方法を提供することである。
【解決手段】熱源機10と、循環路60により熱源機10に接続された空調機20と、循環路60に設けられたポンプ30と、供給ヘッダー63と戻しヘッダー64の差圧を検出する差圧検出部40と、差圧検出部40が検出した差圧に基づいてポンプ30の作動を制御する制御部50とを有する熱源系統2を複数備えた空調システム1であって、隣接する熱源系統2の供給ヘッダー63、戻しヘッダー64を互いに接続する供給ヘッダー接続流路80と戻しヘッダー接続流路81とを有し、バックアップ運転時に、制御部50が、複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの熱源系統2のポンプ30の作動を制御する空調システム1及びその制御方法。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱搬送液体の温度を調整する熱源機と、供給ヘッダーが介在する供給側配管と戻しヘッダーが介在する戻し側配管とを有する循環路により前記熱源機に接続された少なくとも1つの空調機と、前記循環路に設けられて前記熱源機と前記空調機との間で前記熱搬送液体を循環させるポンプと、前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプの作動を制御する制御部とを有する熱源系統を複数備えた空調システムであって、
それぞれ隣接する前記熱源系統の前記供給ヘッダーを互いに接続する複数の供給ヘッダー接続流路と、
それぞれ隣接する前記熱源系統の前記戻しヘッダーを互いに接続する複数の戻しヘッダー接続流路と、を有し、
一部の前記熱源系統の前記ポンプの作動が停止したバックアップ運転時に、前記制御部が、複数の前記差圧検出部が検出した差圧のうち最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの前記熱源系統の前記ポンプの作動を制御することを特徴とする空調システム。
【請求項2】
それぞれの前記熱源系統における前記供給ヘッダーと前記戻しヘッダーとを接続する複数のバイパス流路と、
それぞれの前記バイパス流路に設けられた複数のバイパス用二方弁と、を有し、
前記制御部が、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプ及び前記バイパス用二方弁の作動を制御する、請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記戻し側配管の前記空調機と前記戻しヘッダーとの間の部分に設けられた定量弁を有する、請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
熱搬送液体の温度を調整する熱源機と、供給ヘッダーが介在する供給側配管と戻しヘッダーが介在する戻し側配管とを有する循環路により前記熱源機に接続された少なくとも1つの空調機と、前記循環路に設けられて前記熱源機と前記空調機との間で前記熱搬送液体を循環させるポンプと、前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプの作動を制御する制御部とを有する熱源系統を複数備えた空調システムの制御方法であって、
前記空調システムが、
それぞれ隣接する前記熱源系統の前記供給ヘッダーを互いに接続する複数の供給ヘッダー接続流路と、
それぞれ隣接する前記熱源系統の前記戻しヘッダーを互いに接続する複数の戻しヘッダー接続流路と、を有し、
それぞれの前記熱源系統の前記差圧検出部により前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出し、
一部の前記熱源系統の前記ポンプの作動が停止したバックアップ運転時に、複数の前記差圧検出部が検出した差圧のうち最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの前記熱源系統の前記ポンプの作動を制御することを特徴とする空調システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システム及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばオフィスビル、商業ビル、宿泊施設などの、比較的大規模な建築物に使用される空調システムとして、熱源機と、供給ヘッダーが介在する供給側配管と戻しヘッダーが介在する戻し側配管とを有する循環路により熱源機に接続された少なくとも1つの空調機と、循環路に設けられたポンプと、供給ヘッダーの圧力と戻しヘッダーの圧力との差圧を検出する差圧検出部と、差圧検出部が検出した差圧に基づいてポンプの作動を制御する制御部とを有し、熱源機で温度調整して生成した冷水、温水などの熱搬送液体を、ポンプにより供給ヘッダーを介して建築物内に設置された少なくとも1つの空調機に圧送するとともに、少なくとも1つの空調機において熱交換された熱搬送液体を、戻しヘッダーを介して熱源機に戻して循環させるようにした、所謂中央熱源方式のものが知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の中央熱源方式の空調システムとして、それぞれ熱源機と少なくとも1つの空調機とを含む複数の熱源系統を有し、隣接する熱源系統の供給ヘッダーを接続流路により互いに接続するとともに隣接する熱源系統の戻しヘッダーを接続流路により互いに接続した構成とすることで、より多数の空調機を一元的に制御するようにした構成のものが検討されている。
【0005】
上記のように複数の熱源系統を備えた構成の空調システムでは、故障や保守点検等により一部の熱源系統のポンプの作動が停止した際には、残りの熱源系統のポンプにより全ての熱源系統の空調機に熱搬送液体を循環させるバックアップ運転が行われる。
【0006】
しかし、従来の空調システムでは、複数の熱源系統が、それぞれ当該熱源系統における供給ヘッダーの圧力と戻しヘッダーの圧力との差圧に基づいてポンプの作動を制御する構成となっているので、一部の熱源系統のポンプの作動が停止すると、他の熱源系統における供給ヘッダーと戻しヘッダーとの差圧も影響を受けることになって、バックアップ運転時における稼働するポンプの作動制御が煩雑になる、という問題点があった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、バックアップ運転時にポンプの作動を容易に制御することが可能な空調システム及びその制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空調システムは、熱搬送液体の温度を調整する熱源機と、供給ヘッダーが介在する供給側配管と戻しヘッダーが介在する戻し側配管とを有する循環路により前記熱源機に接続された少なくとも1つの空調機と、前記循環路に設けられて前記熱源機と前記空調機との間で前記熱搬送液体を循環させるポンプと、前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプの作動を制御する制御部とを有する熱源系統を複数備えた空調システムであって、それぞれ隣接する前記熱源系統の前記供給ヘッダーを互いに接続する複数の供給ヘッダー接続流路と、それぞれ隣接する前記熱源系統の前記戻しヘッダーを互いに接続する複数の戻しヘッダー接続流路と、を有し、一部の前記熱源系統の前記ポンプの作動が停止したバックアップ運転時に、前記制御部が、複数の前記差圧検出部が検出した差圧のうち最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの前記熱源系統の前記ポンプの作動を制御することを特徴とする。
【0009】
本発明の空調システムは、上記構成において、それぞれの前記熱源系統における前記供給ヘッダーと前記戻しヘッダーとを接続する複数のバイパス流路と、それぞれの前記バイパス流路に設けられた複数のバイパス用二方弁と、を有し、前記制御部が、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプ及び前記バイパス用二方弁の作動を制御するのが好ましい。
【0010】
本発明の空調システムは、上記構成において、前記戻し側配管の前記空調機と前記戻しヘッダーとの間の部分に設けられた定量弁を有するのが好ましい。
【0011】
本発明の空調システムの制御方法は、熱搬送液体の温度を調整する熱源機と、供給ヘッダーが介在する供給側配管と戻しヘッダーが介在する戻し側配管とを有する循環路により前記熱源機に接続された少なくとも1つの空調機と、前記循環路に設けられて前記熱源機と前記空調機との間で前記熱搬送液体を循環させるポンプと、前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記差圧検出部が検出した差圧に基づいて前記ポンプの作動を制御する制御部とを有する熱源系統を複数備えた空調システムの制御方法であって、前記空調システムが、それぞれ隣接する前記熱源系統の前記供給ヘッダーを互いに接続する複数の供給ヘッダー接続流路と、それぞれ隣接する前記熱源系統の前記戻しヘッダーを互いに接続する複数の戻しヘッダー接続流路と、を有し、それぞれの前記熱源系統の前記差圧検出部により前記供給ヘッダーの圧力と前記戻しヘッダーの圧力との差圧を検出し、一部の前記熱源系統の前記ポンプの作動が停止したバックアップ運転時に、複数の前記差圧検出部が検出した差圧のうち最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの前記熱源系統の前記ポンプの作動を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、バックアップ運転時にポンプの作動を容易に制御することが可能な空調システム及びその制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空調システムの構成を示す図である。
【
図2】バックアップ運転時における設定値に対するポンプ及び二方弁の制御内容を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態に係る空調システム及びその制御方法について詳細に例示説明する。
【0015】
図1に示す本発明の一実施形態に係る空調システム1は、例えばオフィスビル、商業ビル、宿泊施設などの、比較的大規模な建築物に使用される、所謂中央熱源方式のものである。本発明の一実施形態に係る空調システムの制御方法は、例えば、
図1に示す空調システム1によって実施することができる。
【0016】
空調システム1は、複数の熱源系統2を有している。本実施形態では、4つの熱源系統2を有する場合を例示するが、空調システム1が有する熱源系統2の数は、建築物の大きさ、階層などに応じて種々変更可能である。それぞれの熱源系統2の基本的な構成は同一であるので、以下に、1つの熱源系統2の構成を例として説明する。
【0017】
それぞれの熱源系統2は、熱源機10、空調機20、ポンプ30、差圧検出部40及びそれぞれの熱源系統2で共用される制御部50を有している。
【0018】
熱源機10は、熱搬送液体の温度を調整するものである。本実施形態では、熱源機10は、建築物の屋上などの屋外に設置される冷却塔(不図示)に接続された吸収式冷温水機であり、熱搬送液体としての水の温度を調整して冷水ないし温水とすることができる。
【0019】
なお、熱源機10は、熱搬送液体の温度を調整することができるものであれば、種々の構成のものを用いることができる。また、熱搬送液体は水に限らず、他の液状の媒体であってもよい。
【0020】
空調機20は、熱搬送液体の熱を建築物の室内の空気の熱と熱交換して室内を冷房ないし暖房するものである。本実施形態では、空調機20は、熱交換器と送風機とを備えたファンコイルユニットであり、熱搬送液体の熱を建築物の室内の空気の熱と熱交換するとともに当該熱交換により冷却ないし加熱した空気を室内に向けて送風するように構成されている。
【0021】
それぞれの熱源系統2は、少なくとも1つの空調機20を備えていればよいが、本実施形態では、複数の空調機20を備えた構成となっている。この場合、複数の空調機20は、例えば、建築物の複数の室内毎に配置されてもよく、1つの室内に複数配置されてもよく、複数の室内毎に複数ずつ配置されてもよい。また、複数の空調機20は、複数の階層のそれぞれの室内に配置されてもよい。
【0022】
空調機20は、循環路60により熱源機10に接続されている。循環路60は、熱搬送液体が循環可能な管路である。循環路60は、熱源機10の熱搬送液体を排出する排出側と空調機20の熱搬送液体を導入する導入側とを接続する供給側配管61と、熱源機10の熱搬送液体を導入する導入側と空調機20の熱搬送液体を排出する排出側とを接続する戻し側配管62とを有している。
【0023】
供給側配管61には供給ヘッダー63が設けられている。供給ヘッダー63は供給側配管61の途中に介在しており、供給側配管61の供給ヘッダー63と熱源機10との間の部分は熱源機側部分61aとなっており、供給側配管61の供給ヘッダー63と空調機20との間の部分は空調機側部分61bとなっている。供給ヘッダー63は、熱源機側部分61aから空調機側部分61bに向けて熱搬送液体を流すことができる。
【0024】
戻し側配管62には戻しヘッダー64が設けられている。戻しヘッダー64は戻し側配管62の途中に介在しており、戻し側配管62の戻しヘッダー64と熱源機10との間の部分は熱源機側部分62aとなっており、戻し側配管62の戻しヘッダー64と空調機20との間の部分は空調機側部分62bとなっている。戻しヘッダー64は、空調機側部分62bから熱源機側部分62aに向けて熱搬送液体を流すことができる。
【0025】
なお、本実施形態では、空調機側部分62bは、複数の空調機20に対応して複数に分けて設けられているが、1本に纏めて設けられてもよい。
【0026】
循環路60(供給側配管61及び戻し側配管62)の供給ヘッダー63及び戻しヘッダー64よりも熱源機10の側は一次側となっており、循環路60(供給側配管61及び戻し側配管62)の供給ヘッダー63及び戻しヘッダー64よりも空調機20の側は二次側となっている。
【0027】
本実施形態では、供給ヘッダー63と戻しヘッダー64との間には、供給ヘッダー63と戻しヘッダー64とを接続するバイパス流路65が設けられている。より具体的には、バイパス流路65は、供給ヘッダー63の二次側と戻しヘッダー64と二次側とを接続しており、供給ヘッダー63の二次側から戻しヘッダー64の二次側に熱搬送液体を流すことができる。
【0028】
バイパス流路65には、バイパス用二方弁66が設けられている。バイパス用二方弁66は、バイパス流路65の流路の開度を、全閉から全開にまで調整することができる。
【0029】
循環路60は、熱源機側部分61a及び空調機側部分62bに、それぞれ定量弁67、68を設けた構成としてもよい。
【0030】
ポンプ30は、循環路60に設けられており、熱源機10と空調機20との間で熱搬送液体を循環させることができる。本実施形態では、ポンプ30は、インバータ制御により回転数すなわち吐出量が制御されるものであり、循環路60の一次側に設けられている。ポンプ30は、循環路60の内部の熱搬送液体を、熱源機10、供給ヘッダー63、空調機20、戻しヘッダー64、熱源機10の順に循環するように圧送することができる。
【0031】
なお、本実施形態では、ポンプ30を、戻し側配管62の一次側である空調機側部分62bに設けているが、供給側配管61の一次側である熱源機側部分62aに設けるようにしてもよい。また、本実施形態では、循環路60に2つのポンプ30を並列に設けた構成としているが、少なくとも1つのポンプ30が設けられていればよく、また、複数のポンプ30を設ける場合には、その配置は、3つ以上を並列とし、あるいは直列とするなど、種々変更可能である。さらに、ポンプ30は、インバータ制御により回転数すなわち吐出量が制御されるものに限らず、種々の構成のものであってよい。
【0032】
差圧検出部40は、供給ヘッダー63の圧力と戻しヘッダー64の圧力との差圧を検出することができる。本実施形態では、差圧検出部40は圧力センサであり、供給ヘッダー63の二次側の圧力と戻しヘッダー64の二次側の圧力との差圧を検出することができる。
【0033】
制御部50は、例えばCPU(中央演算処理装置)、メモリなどを備えたマイクロコンピューターであり、ダイレクトデジタルコントローラ51を介して、熱源機10、ポンプ30、差圧検出部40、バイパス用二方弁66に接続されている。
【0034】
制御部50は、差圧検出部40が検出した差圧に基づいてポンプ30の作動を制御する。本実施形態では、バイパス流路65とバイパス用二方弁66が設けられているので、制御部50は、差圧検出部40が検出した差圧に基づいてポンプ30及び前記バイパス用二方弁66の作動を制御する。
【0035】
より具体的には、制御部50は、通常の作動時においては、差圧検出部40により検出される供給ヘッダー63の圧力と戻しヘッダー64の圧力との差圧が一定値すなわち予め設定された設定値となるように、ポンプ30の作動を制御する。例えば、空調機20の負荷が比較的小さいために差圧検出部40により検出される供給ヘッダー63の圧力と戻しヘッダー64の圧力との差圧が設定値よりも大きくなった場合には、制御部50は、ポンプ30の仕事量ないし熱搬送液体の吐出量を低下させるとともにバイパス用二方弁66の開度を増加させて熱搬送液体を空調機20に送らずにバイパス流路65でバイパスさせるようにポンプ30とバイパス用二方弁66の作動を制御し、反対に空調機20の負荷が比較的大きいために差圧検出部40により検出される供給ヘッダー63の圧力と戻しヘッダー64の圧力との差圧が設定値よりも小さくなった場合には、制御部50は、ポンプ30の仕事量ないし熱搬送液体の吐出量を増加させるとともにバイパス用二方弁66の開度を低下させるようにポンプ30とバイパス用二方弁66の作動を制御する。
【0036】
本実施形態では、供給側配管61と戻し側配管62とに、それぞれ温度センサ70、71が設けられている。制御部50は、上記の制御に加えて、温度センサ70、71により検出された供給側配管61と戻し側配管62とにおける熱搬送液体の温度に基づいて、熱源機10の作動を制御する構成とされている。なお、制御部50は、上記の制御に加えて、温度センサ70、71により検出される熱搬送液体の温度と、図示しない流量センサにより検出される熱搬送液体の流量との積、すなわち熱搬送液体の熱量に基づいて、熱源機10の作動を制御する構成としてもよい。
【0037】
なお、制御部50は、複数の熱源系統2で共用されており、1つの制御部50により複数の熱源系統2のそれぞれのポンプ30及びバイパス用二方弁66の作動が制御される。
【0038】
空調機側部分61bには、それぞれの空調機20に対応して二方弁72が設けられている。二方弁72は空調機20の図示しない制御装置に接続され、当該制御装置により制御される。空調機20の負荷は、当該制御装置に対する使用者の入力により変更することができる。
【0039】
隣接する熱源系統2の供給ヘッダー63は互いに供給ヘッダー接続流路80により接続され、隣接する熱源系統2の戻しヘッダー64が互いに戻しヘッダー接続流路81により接続されている。これにより、複数の熱源系統2は、1つの空調システム1とされている。本実施形態では、供給ヘッダー接続流路80及び戻しヘッダー接続流路81には、それぞれ定量弁82、83が設けられている。
【0040】
上記構成を有する本実施形態の空調システム1は、故障や保守点検等により一部の熱源系統2のポンプ30の作動が停止した際には、残りの熱源系統2のポンプ30により全ての熱源系統2の空調機20に熱搬送液体を循環させるバックアップ運転を行うように構成されている。
【0041】
ここで、本実施形態の空調システム1では、一部の熱源系統2のポンプ30の作動が停止したバックアップ運転時には、制御部50は、複数の熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち、最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの熱源系統2のポンプ30すなわち全ての稼働中のポンプ30の作動を制御するように構成されている。すなわち、バックアップ運転時には、制御部50は、それぞれの熱源系統2のポンプ30を、当該熱源系統2において差圧検出部40が検出した差圧に基づいて個別に作動を制御するのではなく、複数の熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち、最小の差圧が予め設定した設定値となるように、全ての稼働中のポンプ30の作動を一律に制御するように構成されている。
【0042】
ここで、隣接する熱源系統2の供給ヘッダー63及び戻しヘッダー64を、互いに供給ヘッダー接続流路80ないし戻しヘッダー接続流路81により接続した構成では、それぞれの熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出する差圧は、供給ヘッダー接続流路80ないし戻しヘッダー接続流路81の圧力損失分の差異を生じることになる。
【0043】
これに対し、本実施形態の空調システム1では、上記のように、複数の熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち、最小の差圧が予め設定した設定値となるように全てのポンプ30の作動を制御することで、それぞれの熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出する差圧が供給ヘッダー接続流路80ないし戻しヘッダー接続流路81の圧力損失分の差異を生じても、ポンプ30の制御が自動的に追従することで、全ての熱源系統2の循環路60において必要な量の熱搬送液体を循環させることができる。
【0044】
このような構成により、一部の熱源系統2のポンプ30の作動が停止したバックアップ運転時において、残りの熱源系統2のポンプ30が制御部50によって自動的に最適に制御(変揚程制御)されることになる。したがって、本実施形態の空調システム1によれば、バックアップ運転時に、残りの熱源系統2の稼働する全てのポンプ30の作動を容易に制御することが可能となる。また、残りの熱源系統2の稼働する全てのポンプ30を最適に制御することができるので、空調システム1を省エネルギー化することもできる。
【0045】
本実施形態では、空調システム1は、バイパス流路65とバイパス用二方弁66を備えた構成となっているので、バックアップ運転時において、制御部50は、複数の熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち、最小の差圧が予め設定した設定値となるように、残りの熱源系統2の稼働する全てのポンプ30とバイパス用二方弁66との作動を制御する構成とすることもできる。この場合、例えば
図2に示すように、複数の熱源系統2に対応する複数の差圧検出部40が検出した差圧のうち、最小の差圧が設定値よりも小さい場合には、残りの熱源系統2の稼働する全てのポンプ30を、その回転数ないし吐出量を低下させるように制御し、当該最小の差圧が設定値よりも大きい場合には、残りの熱源系統2の稼働する全てのポンプ30を一定の最小の回転数ないし吐出量で作動させつつバイパス用二方弁66の開度を低下させるように制御することで、当該最小の差圧を設定値に維持するようにしてもよい。
【0046】
戻し側配管62の空調機側部分61bに、それぞれの空調機20に対応して定量弁73を設けた構成とすることもできる。
【0047】
定量弁73を設けて特定の空調機20に熱搬送液体が過度に流れることを防止することで、複数の熱源系統2の間で流量のバランスが崩れることを抑制して、バックアップ作動時における上記制御を、より確実かつ精度よく行うことができる。
【0048】
本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 空調システム
2 熱源系統
10 熱源機
20 空調機
30 ポンプ
40 差圧検出部
50 制御部
51 ダイレクトデジタルコントローラ
60 循環路
61 供給側配管
61a 熱源機側部分
61b 空調機側部分
62 戻し側配管
62a 熱源機側部分
62b 空調機側部分
63 供給ヘッダー
64 戻しヘッダー
65 バイパス流路
66 バイパス用二方弁
67 定量弁
68 定量弁
70 温度センサ
71 温度センサ
72 二方弁
73 定量弁
80 供給ヘッダー接続流路
81 戻しヘッダー接続流路
82 定量弁
83 定量弁