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特開2024-140686移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140686
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/42 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G05B19/42 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051972
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】宮越 喜浩
(72)【発明者】
【氏名】金田 基希
【テーマコード(参考)】
3C269
【Fターム(参考)】
3C269AB01
3C269BB08
3C269EF59
3C269JJ09
3C269JJ20
3C269MN16
3C269QB02
3C269SA14
3C269SA21
(57)【要約】
【課題】エッジ又は輪郭に限定することなく、ワーク表面のデータを工具の移動経路に反映させることができる移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】移動経路生成装置は、ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出する抽出部と、前記抽出部にて抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する取得部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出する抽出部と、
前記抽出部にて抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する取得部と
を備える移動経路生成装置。
【請求項2】
前記抽出部にて抽出した前記所定領域内の各点を複数の点群に区分する区分部と、
前記区分部にて区分した各点群の代表点のデータを抽出する代表点抽出部と
を備え、
前記取得部は前記各点群の代表点のデータに基づいて、前記教示点を取得する
請求項1に記載の移動経路生成装置。
【請求項3】
前記区分部は前記所定領域を複数の空間に分割し、各空間内の複数の点を前記点群にする
請求項2に記載の移動経路生成装置。
【請求項4】
前記区分部はクラスタリングによって前記所定領域内の各点を複数の点群に区分する
請求項2に記載の移動経路生成装置。
【請求項5】
前記代表点は前記点群の重心である
請求項2から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項6】
前記各点群の代表点のデータは第一座標系に基づく位置を含み、
前記撮像データは、前記第一座標系とは異なる第二座標系の指標を撮像した指標データを含み、
前記第一座標系に基づく位置を前記指標データに基づいて補正する補正部を備える
請求項2から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項7】
前記指標は前記第二座標系の原点を含み、
前記補正部は、
前記第一座標系の原点と前記第二座標系の原点とを一致させるオフセット処理部と、
前記第一座標系の各軸と前記第二座標系の各軸とを一致させる回転処理部と
を含む
請求項6に記載の移動経路生成装置。
【請求項8】
前記抽出部は前記ワークの色とは異なる色を付した領域内の各点のデータを抽出する
請求項1から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項9】
前記抽出部は
前記撮像データにおける各点の色情報の値が所定範囲内にあるか否か判定し、
前記色情報の値が所定範囲内にあると判定した点のデータを抽出する
請求項8に記載の移動経路生成装置。
【請求項10】
前記抽出部は前記ワークの色とは異なる第一色を付した第一領域内の各点のデータを抽出し、前記ワークの色及び前記第一色とは異なる第二色を付した第二領域内の各点のデータを抽出し、
前記取得部は、前記第一領域内の各点のデータに基づいて、前記工具の第一移動経路における教示点を取得し、前記第二領域内の各点のデータに基づいて、前記工具の第二移動経路における教示点を取得する
請求項1から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項11】
前記点群から算出した平面に垂直な法線上の第一ベクトルと、前記工具の軸に平行な第二ベクトルとの間の角度が直角になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する第一角度演算部を備える
請求項2から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項12】
前記所定領域は前記ワーク表面に沿って延び、
前記所定領域の長手方向に交差する幅方向に延びる第三ベクトルと、前記工具の軸に平行な第四ベクトルとが平行になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する第二角度演算部を備える
請求項1から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項13】
前記工具の切削方向及び前記工具の回転方向に基づき、前記移動経路における第一位置と第二位置との間における前記教示点の順序を決定する決定部を備える
請求項1から4のいずれか一つに記載の移動経路生成装置。
【請求項14】
ワークを撮像して撮像データを生成し、
前記ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、
抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する
移動経路生成方法。
【請求項15】
前記ワークを深度カメラによって撮像する
請求項14に記載の移動経路生成方法。
【請求項16】
前記ワークを距離センサ及びカメラを含む撮像部によって撮像する
請求項14に記載の移動経路生成方法。
【請求項17】
所定の座標系の指標を少なくとも二つ含むように前記ワークを第一撮像位置及び第二撮像位置を含む複数の位置から撮像し、
前記第一撮像位置から撮像した撮像データは第二撮像位置から撮像した撮像データと同一の指標データを少なくとも一つ含み、
前記第一撮像位置及び前記第二撮像位置から撮像した撮像データから抽出した各点のデータを任意の一つの指標データに基づいて補正する
請求項14から16のいずれか一つに記載の移動経路生成方法。
【請求項18】
工具の移動経路を生成する移動経路生成装置にて実行されるコンピュータプログラムであって、
前記移動経路生成装置に、
ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、
抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する
処理を実行させるコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、工具の移動経路を生成する移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ワークを撮像した撮像データから、例えばワークのエッジ又は輪郭に関するデータを抽出し、ワークに沿った3次元経路を生成し、ツールを3次元経路に沿って移動させるロボットシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5981143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ロボットシステムはエッジ又は輪郭に表われないワークの特徴を抽出しない。
【0005】
本開示は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、エッジ又は輪郭に限定することなく、ワーク表面のデータを工具の移動経路に反映させることができる移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出する抽出部と、前記抽出部にて抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する取得部とを備える。
【0007】
本開示においては、撮像データからワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する。
【0008】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記抽出部にて抽出した前記所定領域内の各点を複数の点群に区分する区分部と、前記区分部にて区分した各点群の代表点のデータを抽出する代表点抽出部とを備え、前記取得部は前記各点群の代表点のデータに基づいて、前記教示点を取得する。
【0009】
本開示においては、所定領域内の各点を複数の点群に区分し、各点群の代表点のデータを抽出し、各代表点のデータに基づいて、教示点を取得する。
【0010】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記区分部は前記所定領域を複数の空間に分割し、各空間内の複数の点を前記点群にする。
【0011】
本開示においては、所定領域を複数の空間に分割し、各空間内の複数の点を点群にする。
【0012】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記区分部はクラスタリングによって前記所定領域内の各点を複数の点群に区分する。
【0013】
本開示においては、クラスタリングによって所定領域内の各点を複数の点群に区分する。
【0014】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記代表点は前記点群の重心である。
【0015】
本開示においては、点群の重心を代表点にする。
【0016】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記各点群の代表点のデータは第一座標系に基づく位置を含み、前記撮像データは、前記第一座標系とは異なる第二座標系の指標を撮像した指標データを含み、前記第一座標系に基づく位置を前記指標データに基づいて補正する補正部を備える。
【0017】
本開示においては、代表点のデータは第一座標系に基づく位置を含み、撮像データは、第二座標系の指標を撮像した指標データを含み、第一座標系に基づく位置を指標データに基づいて補正する。
【0018】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記指標は前記第二座標系の原点を含み、前記補正部は、前記第一座標系の原点と前記第二座標系の原点とを一致させるオフセット処理部と、前記第一座標系の各軸と前記第二座標系の各軸とを一致させる回転処理部とを含む。
【0019】
本開示においては、指標は第二座標系の原点を含み、第一座標系に基づく位置を補正する場合、第一座標系の原点と第二座標系の原点とを一致させ、第一座標系の各軸と第二座標系の各軸とを一致させる。
【0020】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記抽出部は前記ワークの色とは異なる色を付した領域内の各点のデータを抽出する。
【0021】
本開示においては、ワークの色とは異なる色を付した領域内の各点のデータを抽出する。
【0022】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記抽出部は前記撮像データにおける各点の色情報の値が所定範囲内にあるか否か判定し、前記色情報の値が所定範囲内にあると判定した点のデータを抽出する。
【0023】
本開示においては、撮像データにおける各点の色情報の値が所定範囲内にあるか否か判定し、色情報の値が所定範囲内にあると判定した点のデータを抽出する。
【0024】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記抽出部は前記ワークの色とは異なる第一色を付した第一領域内の各点のデータを抽出し、前記ワークの色及び前記第一色とは異なる第二色を付した第二領域内の各点のデータを抽出し、前記取得部は、前記第一領域内の各点のデータに基づいて、前記工具の第一移動経路における教示点を取得し、前記第二領域内の各点のデータに基づいて、前記工具の第二移動経路における教示点を取得する。
【0025】
本開示においては、ワークの色とは異なる第一色を付した第一領域内の各点のデータを抽出し、ワークの色及び第一色とは異なる第二色を付した第二領域内の各点のデータを抽出し、第一領域内の各点のデータに基づいて、工具の第一移動経路における教示点を取得し、第二領域内の各点のデータに基づいて、工具の第二移動経路における教示点を取得する。
【0026】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記点群から算出した平面に垂直な法線上の第一ベクトルと、前記工具の軸に平行な第二ベクトルとの間の角度が直角になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する第一角度演算部を備える。
【0027】
本開示においては、点群から算出した平面に垂直な法線上の第一ベクトルと、工具の軸に平行な第二ベクトルとの間の角度が直角になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する。
【0028】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記所定領域は前記ワーク表面に沿って延び、前記所定領域の長手方向に交差する幅方向に延びる第三ベクトルと、前記工具の軸に平行な第四ベクトルとが平行になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する第二角度演算部を備える。
【0029】
本開示においては、所定領域はワーク表面に沿って延び、所定領域の長手方向に交差する幅方向に延びる第三ベクトルと、工具の軸に平行な第四ベクトルとが平行になるように、ワークを保持する保持部の角度を演算する。
【0030】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置は、前記工具の切削方向及び前記工具の回転方向に基づき、前記移動経路における第一位置と第二位置との間における前記教示点の順序を決定する決定部を備える。
【0031】
本開示においては、工具の切削方向及び工具の回転方向に基づき、移動経路における第一位置から第二位置までの間における教示点の順序を決定する。
【0032】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成方法は、ワークを撮像して撮像データを生成し、前記ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する。
【0033】
本開示においては、ワークを撮像して撮像データを生成し、撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する。
【0034】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成方法は、前記ワークを深度カメラによって撮像する。
【0035】
本開示においては、ワークを深度カメラによって撮像する。
【0036】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成方法は、前記ワークを距離センサ及びカメラを含む撮像部によって撮像する。
【0037】
本開示においては、ワークを距離センサ及びカメラ等によって撮像する。
【0038】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成方法は、所定の座標系の指標を少なくとも二つ含むように前記ワークを第一撮像位置及び第二撮像位置を含む複数の位置から撮像し、前記第一撮像位置から撮像した撮像データは第二撮像位置から撮像した撮像データと同一の指標データを少なくとも一つ含み、前記第一撮像位置及び前記第二撮像位置から撮像した撮像データから抽出した各点のデータを任意の一つの指標データに基づいて補正する。
【0039】
本開示においては、所定の座標系の指標を少なくとも二つ含むようにワークを第一撮像位置及び第二撮像位置を含む複数の位置から撮像し、第一撮像位置から撮像した撮像データは第二撮像位置から撮像した撮像テータと同一の指標を少なくとも一つ含み、第一撮像位置及び第二撮像位置から撮像した撮像データから抽出した各点のデータを任意の一つの指標データに基づいて補正する。
【0040】
本開示の一実施形態に係るコンピュータプログラムは、工具の移動経路を生成する移動経路生成装置にて実行されるコンピュータプログラムであって、前記移動経路生成装置に、ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、抽出した前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する処理を実行させる。
【0041】
本開示においては、移動経路生成装置に、ワークの撮像データにおけるワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する処理を実行させる。
【発明の効果】
【0042】
本開示の一実施形態に係る移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムにあっては、撮像データからワーク表面の所定領域内の各点のデータを抽出し、前記各点のデータに基づき、工具の移動経路における教示点を取得する。そのため、ワーク表面における所定領域全体のデータが教示点に反映される。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】実施の形態1に係る移動経路生成装置のブロック図である。
図2】マスターワークの撮像を説明する説明図である。
図3】着色領域から代表点を抽出する処理を説明する説明図である。
図4】第一ベクトルを説明する説明図である。
図5】重心のデータの補正処理を説明する説明図である。
図6】保持テーブルの角度の演算を説明する説明図である。
図7】移動経路生成装置による移動経路生成処理を説明するフローチャートである。
図8】実施の形態2に係る保持テーブルの角度の演算を説明する説明図である。
図9】実施の形態3に係るマスターワークの撮像を説明する説明図である。
図10】実施の形態4に係る工具の切削方向及び回転方向と、移動方向との関係を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(実施の形態1)
以下本発明を実施の形態1に係る移動経路生成装置、移動経路生成方法及びコンピュータを示す図面に基づいて説明する。図1は、移動経路生成装置1のブロック図である。移動経路生成装置1は、制御部2、主記憶部3及び補助記憶部4を備える。制御部2はプロセッサ又はロジック回路を含む。プロセッサとしては、例えばCPU、MPU又はGPU等が挙げられる。ロジック回路としては、例えばFPGA、ASIC又はCPLD等が挙げられる。
【0045】
主記憶部3は揮発性メモリ、例えばRAMを含む。補助記憶部4は不揮発性メモリ又はハードディスクを含む。不揮発性メモリとしては、例えばEEPROM、EPRPM又はフラッシュメモリ等が挙げられる。補助記憶部4は、移動経路生成処理を実行するためのコンピュータプログラム(プログラム製品)を記憶する。制御プログラムは補助記憶部4に予めインストールしてあってもよいし、記憶媒体6、例えば光ディスクに記憶した制御プログラムから補助記憶部4にインストールしてもよい。光ディスクとしては、例えばCD-ROM、DVD等が挙げられる。補助記憶部4は、後述の上限閾値Ra、Ga、Ba、及び下限閾値Rb、Gb、Bbを記憶する。
【0046】
移動経路生成装置1は撮像部5から撮像データを取得する。撮像データは画像データと、画像データを構成する各点の位置を示す位置データとを含む。撮像部5は少なくとも画像データ及び位置データを生成することができる装置であり、例えば深度カメラを備える。撮像部5は深度カメラに代えて、カメラ及び距離センサを備えてもよい。距離センサとしては、例えばLIDAR、ミリ波レーダ、光センサ又は超音波センサ等が挙げられる。移動経路生成装置1は撮像部5から有線または無線を介して直接撮像データを取得してもよいし、撮像部5から可搬型の記憶媒体、例えばUSBメモリまたはメモリカードに撮像データを移動させた後、移動経路生成装置1は記憶媒体から撮像データを取得してもよい。
【0047】
移動経路生成処理について説明する。図2は、マスターワーク11の撮像を説明する説明図である。マスターワーク11はバリが除去された状態のワークである。移動経路生成装置1はマスターワーク11に基づいて教示点を取得して工具7の移動経路を生成する。移動経路に基づいて工具7を移動させることによって、バリ取りが実行される。
【0048】
撮像部5はマスターワーク11を撮像する。マスターワーク11はテーブル10の上面に設置してある。テーブル10に指標10aが設けてある。指標10aは例えば平面視にて正方形の白黒パターンを有し、正方形の角の点は原点Oを構成する。指標10aは、例えばARマーカーまたは二次元バーコードを含む。マスターワーク11は、例えばマスターワーク11の角が原点Oに一致するように、テーブル10に設置される。指標10aは第二座標系の指標に対応する。第二座標系は、X、Y及びZ直交座標系を有する。
【0049】
マスターワーク11の表面には着色領域12が形成してある。着色領域12は、マスターワーク11自身の色とは異なる色を有する。例えば、マスターワーク11の自身の色は銀色であり、着色領域12には赤色が付いている。なおマスターワーク11の自身の色は銀色に限定されず、着色領域12には赤色以外の色が付いてもよい。例えば作業者がマーカペンまたはカラーテープによって、マスターワーク11の表面の少なくとも一部を着色し、着色領域12が形成される。なお、線を引いて囲った領域を、データを抽出する領域(所定領域)としてもよい。撮像部5は、指標10aと共にマスターワーク11を撮像する。
【0050】
図3は、着色領域12から代表点を抽出する処理を説明する説明図である。移動経路生成装置1は撮像部5から撮像データを取得する。撮像データは、図3Aに示すように、着色領域12の撮像データを含む。撮像データは複数の点によって構成される。各点は赤、緑及び青の色情報、即ちRGBデータを含む。RGBデータは例えば赤、緑及び青それぞれの階調によって表現される。
【0051】
制御部2は、撮像データから着色領域12の撮像データのみを抽出する。即ち、図3Bに示すように、着色領域12における各点13を抽出する。具体的には、以下のようにして制御部2は各点13を抽出する。制御部2は、第一条件、即ち撮像データを構成する各点のRGBデータ(R、G、B)のRが下限閾値Raを超過し、且つ、上限閾値Rb未満であることを満たすか否か判定する。また制御部2は、第二条件、即ち撮像データを構成する各点のRGBデータ(R、G、B)のGが下限閾値Gaを超過し、且つ、上限閾値Gb未満であることを満たすか否か判定する。また制御部2は、第三条件、即ち撮像データを構成する各点のRGBデータ(R、G、B)のBが下限閾値Baを超過し、且つ、上限閾値Bb未満であることを満たすか否か判定する。即ち、Ra<R<Rb且つGa<G<Gb且つBa<B<Bbであるか否か判定する。なおHSV系における色相の角度または彩度のパーセンテージなどを用いて、各点13を抽出してもよい。角度または彩度を用いた場合、撮像データの明るさに左右されずに抽出可能となる。図3Bに示すように、制御部2は第一条件、第二条件及び第三条件を全て満たした点を、着色領域12を構成する点13に決定し、抽出する。
【0052】
なお着色領域12に(R、G、B)で表される赤色が付いている場合であっても、撮像時の光量によっては、撮像部5は(R±α、G±β、B±γ)で表される色を検出することがある。そのため、上限閾値及び下限閾値を設定し、上限閾値及び下限閾値の間にある色を、着色領域12を構成する点13に決定する。
【0053】
また複数の領域から点13を抽出する場合、複数の領域それぞれに異なる色を付けて、色毎に点13を抽出する。例えば、三つの領域それぞれから点13を抽出する場合、三つの領域を赤、緑及び青にそれぞれ着色し、三つの着色領域12を作製する。例えば、まずは赤の着色領域12内から点13を抽出し、次に緑の着色領域12内から点13を抽出し、最後に青の着色領域12内から点13を抽出する。このように、色毎に順番に点13を抽出する。赤、緑及び青の着色領域12における一の着色領域12が第一領域に対応し、他の着色領域12は第二領域に対応する。なお各領域の色及び全領域の数は予め主記憶部3又は補助記憶部4に記憶してある。
【0054】
図3Cに示すように、制御部2は立方体の空間30を複数設定する。各点13はいずれかの空間30内に存在する。換言すれば、制御部2は着色領域12を複数の空間30に分割する。以下、一つの空間30に存在する全ての点13を点群とも称する。図3Dに示すように、制御部2は各空間30において、位置データに基づき、点群の重心14を演算する。重心14は、一つの空間30に一つのみ存在する。即ち、重心14は一つの空間30に含まれる全ての点13の代表点を構成する。
【0055】
図4は、第一ベクトル21を説明する説明図である。図4の鎖線は、一つの空間30に含まれる点13、即ち点群から算出した平面15を示す。制御部2は、平面15に垂直な法線の内、撮像部5に向かう法線を第一ベクトル21として求める。図4において、重心14から第一ベクトル21が出るように示されている。重心14は点群のかたよりによっては平面15上に存在しない可能性がある。しかし、第一ベクトル21はベクトル量、即ち方向及び大きさを示す物理量に表され、いずれの位置に対しても適用可能である。したがって、図4においては、重心14に第一ベクトル21を適用している。
【0056】
図5は、重心14のデータの補正処理を説明する説明図である。前述したように、撮像データは画像データを含む。図5には、画像データに基づく画像40が模式的に表れている。画像40は重心14及び指標10aの画像を含む。画像40は例えば四角形の枠を有し、枠におけるいずれかの角が原点O′を構成する。原点O′は第一座標系の原点である。第一座標系は、X′、Y′及びZ′直交座標系を有する。第一座標系は、例えば撮像部5において予め設定してある。画像40に含まれる各点のデータは、位置データとして、第一座標系の位置を含む。即ち、撮像データにおける重心14のデータは第一座標系の位置を含む。
【0057】
前述したように、指標10aは第二座標系の指標に対応する。第二座標系は、X、Y及びZ直交座標系を有する。第二座標系は、例えば工作機械におけるワークを保持する保持テーブル(図示略)の座標系に対応する。したがって、第一座標系の位置を第二座標系の位置に補正することによって、第一座標系の位置を保持テーブルの座標系に変換することができる。保持テーブルは保持部に対応する。
【0058】
制御部2は、重心14における第一座標系の位置に対して、補正処理を行う。補正処理はオフセット処理及び回転処理を含む。オフセット処理は、第二座標系の原点Oが第一座標系の原点O′に一致するように、第一座標系における点を平行移動させる処理である。例えば、第一座標系において、X′方向における第一座標系の原点O′と、第二座標系の原点Oとの位置の差分がΔaであり、Y′方向において、第一座標系の原点O′と、第二座標系の原点Oとの位置の差分がΔbであり、Z′方向において、第一座標系の原点O′と、第二座標系の原点Oとの位置の差分がΔcであり、重心14の第一座標系の位置が(a、b、c)である場合、制御部2は、第一座標系において、各重心14の位置(a、b、c)を、位置(a-Δa、b-Δb、c-Δc)に補正する。換言すれば、オフセット処理後の第一座標系における第二座標系の原点Oの位置は、位置(0、0、0)である。
【0059】
回転処理は、第一座標系の各軸と第二座標系の各軸とが一致するように、第一座標系における点を回転移動させる処理である。回転処理において、制御部2は、各重心14における第一座標系の位置を、回転行列によって、X′軸、Y′軸及びZ′軸それぞれの軸回りに回転させる。例えば、制御部2は、X′軸回りにおいて、Z軸方向及びZ′軸方向の単位ベクトルの間の角度がθcの場合、重心14をX′軸回りにθc回転させ、Y′軸回りにおいて、X軸方向及びX′軸方向の単位ベクトルの間の角度がθaの場合、重心14をY′軸回りにθc回転させ、Z′軸回りにおいて、Y軸方向及びY′軸方向の単位ベクトルの間の角度がθbの場合、重心14をZ′軸回りにθb回転させる。
【0060】
第一座標系における重心14の位置に対して、補正処理、即ちオフセット処理及び回転処理を実行することによって、重心14の位置は第二座標系の位置、即ち保持テーブルの座標系に変換することができる。
【0061】
図6は、保持テーブルの角度の演算を説明する説明図である。図6は、図4と同様な図面である。図6において、工具7の軸方向に平行な第二ベクトル22と、第二ベクトル22に直角な直角ベクトル26とが示されている。制御部2は、第一ベクトル21と、直角ベクトル26との間の角度θを演算する。角度θは、例えば保持テーブルのA軸又はC軸回りの角度である。例えばA軸はX軸に平行であり、C軸はZ軸に平行である。第二ベクトル22の方向は移動経路生成装置1の補助記憶部4に記憶してある。制御部2は、第一ベクトル21及び第二ベクトル22に基づいて、直角ベクトル26及び角度θを演算する。
【0062】
角度θがA軸回りの角度である場合、保持テーブルをA軸回りに角度θ移動させることによって、工具7の周面を重心14に接触させることができる。角度θがC軸回りの角度である場合、保持テーブルをC軸回りに角度θ移動させることによって、工具7の周面を重心14に接触させることができる。なお角度θはB軸回りの角度であってもよい。この場合、保持テーブルをB軸回りに角度θ移動させることによって、工具7の周面を重心14に接触させることができる。例えばB軸はY軸に平行である。工具7の周面に刃が形成されている場合、保持テーブルを角度θ移動させることによって、重心14の加工、例えばバリ取りを精度よく行うことができる。
【0063】
図7は、移動経路生成装置1による移動経路生成処理を説明するフローチャートである。移動経路生成装置1の制御部2は、撮像データを取得したか否か判定する(S1)。撮像データを取得していない場合(S1:NO)、制御部2はステップS1に処理を戻す。撮像データを取得している場合(S1:YES)、制御部2はマスターワーク11の着色領域12の各点13を抽出する(S2)。ステップS2を実行する制御部2は抽出部に対応する。制御部2は複数の立方体の空間30を複数設定する(S3)。即ち、制御部2は一つの空間30内の複数の点13を一つの点群にして、着色領域12内の各点13を複数の点群に区分する。ステップS3を実行する制御部2は区分部に対応する。制御部2は、各空間30における点群の重心14を演算する。即ち制御部2は各空間30の重心14を抽出する(S4)。ステップS4を実行する制御部2は代表点抽出部に対応する。
【0064】
制御部2は重心14の位置を補正する(S5)。ステップS5を実行する制御部2は補正部を構成する。制御部2は、補正処理、即ちオフセット処理及び回転処理を重心14の位置に対して実行し、第一座標系における重心14の位置を第二座標系、即ち保持テーブルの座標系の位置に変換する。補正後又は変換後の重心14は工具7の移動経路における教示点に対応する。
【0065】
制御部2は、例えばA軸又はC軸回りの角度θを演算する(S6)。制御部2は、補正後の重心14の位置、即ち第二座標系(保持テーブルの座標系)の位置と、角度θとを主記憶部3又は補助記憶部4に記憶する(S7)。即ち制御部2は教示点を取得する。ステップS7を実行する制御部2は取得部に対応する。制御部2は、全ての着色領域12を抽出したか判定する(S8)。例えば、制御部2は抽出が完了した着色領域12の色及び数を計測し、予め記憶した各領域の色及び全領域の数と比較して、全ての着色領域12を抽出したか判定する。
【0066】
全ての着色領域12を抽出していないと判定した場合(S8:NO)、制御部2はステップS2に処理を戻し、抽出が完了していない色の着色領域12の各点13を抽出する。例えば、赤、緑及び青に着色した三つの着色領域12がある場合、赤の着色領域12内から点13を抽出し、点13から重心14を取得し、重心14の位置を補正し、角度θを演算し、重心14の位置及び角度θを記憶する。補正した赤色の重心14は工具7の第一移動経路における教示点に対応する。次に緑の着色領域12内から点13を抽出し、点13から重心14を取得し、重心14の位置を補正し、角度θを演算し、重心14の位置及び角度θを記憶する。最後に青の着色領域12内から点13を抽出し、点13から重心14を取得し、重心14の位置を補正し、角度θを演算し、重心14の位置及び角度θを記憶する。補正した緑色又は青色の重心14は工具7の第二移動経路における教示点に対応する。全ての着色領域12を抽出したと判定した場合(S8:YES)、制御部2は処理を終了する。
【0067】
実施の形態1においては、着色領域12を複数の空間30に分割し、各空間30の点群の重心14を演算しているが、クラスタリングによって、着色領域12から複数の点群を抽出し、各点群の重心14を演算してもよい。例えば、着色領域12が正面領域及び上面領域を有している場合に、正面領域に対してクラスタリングを行うことによって、上下方向について、複数のグループに分けられることが考えられる。例えば、正面領域の各点13は上位置のグループ、中間位置のグループ及び下位置のグループに、各点が分けられることが考えられる。この場合、上位置のグループの全ての点13、即ち点群の重心14を演算する。中間位置のグループ及び下位置のグループについても重心14を演算する。また上面領域に対してクラスタリングを行うことによって、前後方向について、複数のグループに分けられることが考えられる。例えば、上面領域の各点13は前位置のグループ、中間位置のグループ及び後位置のグループに、各点が分けられることが考えられる。この場合、前位置のグループの全ての点13、即ち点群の重心14を演算する。中間位置のグループ及び後位置のグループについても重心14を演算する。
【0068】
実施の形態1に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムにあっては、撮像データからマスターワーク11の表面の着色領域12内の各点13のデータを抽出し、各点13のデータに基づき、工具7の移動経路における教示点を取得する。そのため、マスターワーク11の表面における着色領域12全体のデータが教示点に反映される。
【0069】
また着色領域12内の各点13を複数の点群(一つの空間30に存在する全ての点13)に区分し、各点群の代表点のデータを抽出し、各代表点のデータに基づいて、教示点を取得する。また着色領域12を複数の空間30に分割し、各空間30内の複数の点を点群にする。またクラスタリングによって着色領域12内の各点13を複数の点群に区分する。また点群の重心14を代表点にする。
【0070】
また代表点のデータは第一座標系に基づく位置を含み、撮像データは、第二座標系の指標10aを撮像した指標データを含み、第一座標系に基づく位置を指標データに基づいて補正する。また指標10aは第二座標系の原点を含み、第一座標系に基づく位置を補正する場合、第一座標系の原点O′と第二座標系の原点Oとを一致させるオフセット処理を実行し、第一座標系の各軸と第二座標系の各軸とを一致させる回転処理を実行する。
【0071】
またマスターワーク11の色とは異なる色を付した着色領域12内の各点13のデータを抽出する。また撮像データにおける各点の色情報の値R、G、Bが所定範囲内にあるか否か、即ち、Ra<R<Rb且つGa<G<Gb且つBa<B<Bbであるか否か判定し、色情報の値RGBが所定範囲内にあると判定した点のデータを抽出する。
【0072】
またマスターワーク11の色とは異なる第一色、例えば赤色を付した着色領域12内の各点13のデータを抽出し、マスターワーク11の色及び第一色とは異なる第二色、例えば緑色を付した着色領域12内の各点13のデータを抽出し、赤色を付した着色領域12内の各点13のデータに基づいて、工具7の第一移動経路における教示点を取得し、緑色を付した着色領域12内の各点13のデータに基づいて、工具7の第二移動経路における教示点を取得する。
【0073】
また一つの空間30に含まれる点13、即ち点群から算出した平面15に垂直な法線上の第一ベクトル21と、工具7の軸に平行な第二ベクトル22との間の角度が90度になるように、ワークを保持する保持部の角度θを演算する。
【0074】
(実施の形態2)
以下本発明を実施の形態2に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータを示す図面に基づいて説明する。実施の形態2に係る移動経路生成装置1の構成のうち、実施の形態1と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図8は、保持テーブルの角度の演算を説明する説明図である。図8において、帯状の着色領域12と、工具7の軸方向に平行な第四ベクトル24と、着色領域12の長手方向に交差する幅方向に延びる第三ベクトル23とが示されている。第三ベクトル23は、着色領域12の長手縁に直角である。制御部2は、第三ベクトル23と、第四ベクトル24との間の角度θsを演算する。角度θsは、例えば保持テーブルのA軸又はC軸回りの角度である。例えばA軸はX軸に平行であり、C軸はZ軸に平行である。制御部2は撮像データから着色領域12の長手縁を検出し、第三ベクトル23を演算して取得する。第四ベクトル24の方向は移動経路生成装置1の補助記憶部4に記憶してある。制御部2は、第三ベクトル23及び第四ベクトル24に基づいて、角度θsを演算する。
【0075】
角度θsがA軸回りの角度である場合、保持テーブルをA軸回りに角度θs移動させることによって、工具7を帯の長手方向に直線的に移動させるだけで、着色領域12全体に対してバリ取りを行うことができる。角度θsがC軸回りの角度である場合、保持テーブルをC軸回りに角度θs移動させることによって、工具7を帯の長手方向に直線的に移動させるだけで、着色領域12全体に対してバリ取りを行うことができる。なお角度θsはB軸回りの角度であってもよい。この場合、保持テーブルをB軸回りに角度θs移動させることによって、工具7を帯の長手方向に直線的に移動させるだけで、着色領域12全体に対してバリ取りを行うことができる。例えばB軸はY軸に平行である。工具7の周面に刃が形成されている場合、保持テーブルを角度θs移動させることによって、ワークの加工、例えばバリ取りを精度よく行うことができる。
【0076】
実施の形態2に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムにあっては、着色領域12はマスターワーク11の表面に沿って延び、着色領域12の長手方向に交差する幅方向に延びる第三ベクトル23と、工具7の軸に平行な第四ベクトル24とが平行になるように、マスターワーク11を保持する保持テーブルの角度を演算する。
【0077】
(実施の形態3)
以下本発明を実施の形態3に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータを示す図面に基づいて説明する。実施の形態3に係る移動経路生成装置1の構成のうち、実施の形態1同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図9は、マスターワーク11の撮像を説明する説明図である。テーブル10に複数(本実施例では三つ)の指標10a、10b、10cが設けてある。なお各指標10a、10b、10cのパターンは異なる。第一撮像位置5aは指標10a及び指標10bを含む位置から、マスターワーク11を撮像した位置を示し、第二撮像位置5bは指標10b及び指標10cを含む位置から、マスターワーク11を撮像した位置を示す。
【0078】
指標10a、10b又は指標10cの内少なくとも一つは第二座標系の指標に対応し、例えば工作機械におけるワークを保持する保持テーブルの座標系に対応する。第一撮像位置5aから撮像部5が撮像した撮像データは、指標10aを示す指標データと、指標10bを示す指標データとを含み、第二撮像位置5bから撮像した撮像データは、指標10bを示す指標データと、指標10cを示す指標データとを含む。即ち、第一撮像位置5aから撮像した撮像データは第二撮像位置5bから撮像した撮像データと同一の指標データを少なくとも一つ含む。
【0079】
撮像データの位置データは第一座標系の位置を示す。したがって、指標10a、指標10b又は指標10cを示す指標データを使用し、第一座標系の位置を第二座標系の位置に補正することによって、第一座標系の位置を保持テーブルの座標系に変換することができる。例えば指標10aが第二座標系に対応する場合、第一撮像位置5aの撮像データは、指標10aを示す指標データを使用して補正することができる。第二撮像位置5bの撮像データは、指標10aを示す指標データを含まないため直接第二座標系の位置に補正することはできない。そこで、一度、第一撮像位置5a及び第二撮像位置5bに含まれる指標10bを示す指標データを使用して第二撮像位置5bの第一座標系を第一撮像位置5aの第一座標系に補正する。その後、第一撮像位置5aの撮像データに含まれる指標10aを示す指標データを使用して第二座標系に補正することによって、他の撮像データを、指標10aを示す指標データを使用して補正したのと同じになる。
【0080】
実施の形態3に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータプログラムにあっては、第二座標系の指標10a、10b、10cを少なくとも二つ含むようにマスターワーク11を第一撮像位置5a及び第二撮像位置5bを含む複数の位置から撮像し、第一撮像位置5aから撮像した撮像データは第二撮像位置5bから撮像した撮像テータと同一の指標10a、10b、10cを少なくとも一つ含み、第一撮像位置5a及び第二撮像位置5bから撮像した撮像データから抽出した各点のデータを任意の一つの指標データに基づいて補正する。
【0081】
(実施の形態4)
以下本発明を実施の形態4に係る移動経路生成装置1、移動経路生成方法及びコンピュータを示す図面に基づいて説明する。実施の形態4の構成のうち、実施の形態1~3と同様な構成については同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。図10は、工具7の切削方向及び回転方向と、移動方向との関係を説明する説明図である。図10において、ワーク16と、工具7の第一移動方向51、工具7の第二移動方向52、工具7の第三移動方向53及び工具7の第四移動方向54が表われている。
【0082】
第一移動方向51及び第二移動方向52は、ワーク16の一面16a側にて、ワーク16の一面16aに平行な方向である。第一移動方向51及び第二移動方向52は互いに逆向きである。第三移動方向53及び第四移動方向54は、ワーク16の他面16b側にて、ワーク16の他面16bに平行な方向である。ワーク16の他面16bは一面16aの反対側である。第三移動方向53及び第四移動方向54は互いに逆向きである。
【0083】
工具7の回転方向は正転及び逆転を含む。図10において、正転は時計回りであり、逆転は反時計回りである。工具7の切削方向はアップカットと、ダウンカットとを含む。アップカットは、工具7の回転方向と移動方向とが同じになる切削方向である。ダウンカットは工具7の回転方向と移動方向とが逆になる切削方向である。ここで、アップカット及びダウンカットにおける工具7の回転方向とは、工具7とワーク16との接触位置にて工具7が回転する方向であって、第一移動方向51~第四移動方向54に沿う方向をいう。即ち、一面16a側にて正転する工具7の回転方向は、第二移動方向52と略同方向であり、他面16b側にて正転する工具7の回転方向は、第三移動方向53と略同方向である。一面16a側にて逆転する工具7の回転方向は、第一移動方向51と略同方向であり、他面16b側にて逆転する工具7の回転方向は、第四移動方向54と略同方向である。
【0084】
即ち、ワーク16の一面16a側にて、工具7が正転し、アップカットを行う場合、工具7の移動方向は第二移動方向52である。ワーク16の一面16a側にて、工具7が正転し、ダウンカットを行う場合、工具7の移動方向は第一移動方向51である。ワーク16の他面16b側にて、工具7が正転し、アップカットを行う場合、工具7の移動方向は第三移動方向53である。ワーク16の他面16b側にて、工具7が正転し、ダウンカットを行う場合、工具7の移動方向は第四移動方向54である。
【0085】
即ち、ワーク16の一面16a側にて、工具7が逆転し、アップカットを行う場合、工具7の移動方向は第一移動方向51である。ワーク16の一面16a側にて、工具7が逆転し、ダウンカットを行う場合、工具7の移動方向は第二移動方向52である。ワーク16の他面16b側にて、工具7が逆転し、アップカットを行う場合、工具7の移動方向は第四移動方向54である。ワーク16の他面16b側にて、工具7が逆転し、ダウンカットを行う場合、工具7の移動方向は第三移動方向53である。
【0086】
上述の如く、工具7の回転方向及び切削方向を指定することによって、工具7の移動方向は、第一移動方向51~第四移動方向54のいずれかに決定される。例えば、図10に示すように、一面16aにおける第一位置161と第二位置162との間に複数の教示点14a、14b、14cが並ぶ。教示点14aは第一位置161に最も近く、教示点14cは第二位置162に最も近く、教示点14bは二つの教示点14a及び14bの間に位置する。ワーク16の一面16a側にて、工具7の回転方向として正転が指定され、切削方向としてアップカットが指定された場合、工具7の移動方向は第二移動方向52に自動的に決定される。即ち、教示点14c、教示点14b及び教示点14aの順に工具7を移動させる。
【0087】
ワーク16の一面16a側にて、工具7の回転方向として正転が指定され、切削方向としてダウンカットを行う場合、工具7の移動方向は第一移動方向51に自動的に決定される。即ち、教示点14a、教示点14b及び教示点14cの順に工具7を移動させる。
【0088】
制御部2は、教示点14a~14cの取得後、工具7の回転方向及び切削方向を取得する。工具7の回転方向及び切削方向は、例えば作業者が移動経路生成装置1に入力してもよいし、制御プログラムに予め設定されてもよい。制御部2は、工具7の回転方向及び切削方向に基づき、移動経路における第一位置161と第二位置162との間における教示点14a~14cの順序を決定する。なお重心14は代表点の一例であり、点群の各軸座標(X、Y、Z)についてヒストグラムを作成して最頻値を代表点としてもよい。
【0089】
なおコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ上で、または1つのサイトに配置されるか、若しくは複数のサイトにわたって分散され、通信ネットワークによって相互接続された複数のコンピュータ上で実行されるように展開することができる。
【0090】
今回開示した実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲内での全ての変更及び特許請求の範囲と均等の範囲が含まれることが意図される。各実施形態に記載した事項は相互に組み合わせることが可能である。また、特許請求の範囲に記載した独立請求項及び従属請求項は、引用形式に関わらず全てのあらゆる組み合わせにおいて、相互に組み合わせることが可能である。さらに、特許請求の範囲には他の2以上のクレームを引用するクレームを記載する形式(マルチクレーム形式)を用いているが、これに限るものではない。マルチクレームを少なくとも一つ引用するマルチクレーム(マルチマルチクレーム)を記載する形式を用いて記載してもよい。
【符号の説明】
【0091】
1 移動経路生成装置
2 制御部
3 主記憶部
4 補助記憶部
5 撮像部
5a 第一撮像位置
5b 第二撮像位置
11 マスターワーク
7 工具
10 テーブル
10a、10b、10c 指標
12 着色領域(所定領域)
13 点
14 重心
14a~14c 教示点
21 第一ベクトル
22 第二ベクトル
23 第三ベクトル
24 第四ベクトル
30 空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10