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特開2024-140690塗料組成物、塗装物品および塗装物品の製造方法
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  • 特開-塗料組成物、塗装物品および塗装物品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140690
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】塗料組成物、塗装物品および塗装物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20241003BHJP
   C09D 5/29 20060101ALI20241003BHJP
   C09D 7/62 20180101ALI20241003BHJP
   C09D 7/41 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/29
C09D7/62
C09D7/41
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051982
(22)【出願日】2023-03-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-08-14
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】薮下 千聡
(72)【発明者】
【氏名】上原 多麻美
(72)【発明者】
【氏名】迫山 和哲
(72)【発明者】
【氏名】北川 さくら
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG001
4J038KA08
4J038KA12
4J038KA15
4J038KA20
4J038MA08
4J038MA10
4J038NA01
4J038PB07
(57)【要約】
【課題】ハイライト領域内において鮮やかさが大きく変化し、かつ、フェース領域では無彩色あるいはそれに近い色として観察される塗膜が得られる、塗料組成物を提供する。
【解決手段】塗膜形成樹脂および顔料を含む塗料組成物であって、前記塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、前記入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たし、かつ、前記入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45が、10以下である、塗料組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜形成樹脂および顔料を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、前記入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たし、かつ、
前記入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45が、10以下である、塗料組成物。
【請求項2】
前記彩度C -15が50以上である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記彩度C 15が10超40以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記反射光R-15の分光反射率に基づく明度L -15と、前記反射光R15の分光反射率に基づく明度L 15とが、
-15-L 15≧10
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の最大の分光反射率SR-15と、前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長における、前記反射光R15の分光反射率SR15とが、
SR-15-SR15≧20(%)
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長W-15と、前記反射光R15の分光反射率SR15が最大となる波長W15とが、
|W-15-W15|≧40(nm)
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記顔料は、光干渉性鱗片状顔料を含み、
前記光干渉性鱗片状顔料は、
第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する鱗片状の反射性基体と、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属フッ化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1層と、
クロム、アルミニウム、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム、ニオブ、銅および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第2層と、を備え、
少なくとも2つの前記第1層および前記第2層が、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれの上に、前記第1層を最内層として、交互に配置されている、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項8】
被塗物と、
前記被塗物上に設けられた、請求項1または2に記載の塗料組成物の硬化塗膜と、を備える塗装物品。
【請求項9】
被塗物上に、請求項1または2に記載の塗料組成物を塗装した後、硬化させることを含む、塗装物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、塗装物品および塗装物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好の多様化およびオリジナリティの追求により、自動車等の塗膜に要求される意匠は多岐にわたる。これに伴い、様々な塗料組成物が開発されている。例えば、特許文献1には、観察角度をフェイスアングルからグレイジングアングルへと変化させることにより連続的に色相が変化し、かつフェイスアングルにおいては無彩色で、グレイジングアングルにおいては有彩色となる塗膜が得られる塗料組成物が開示されている。特許文献2には、逆に、フェイスアングルにおいては有彩色でグレイジングアングルにおいては無彩色となる塗膜が得られる塗料組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-209167号公報
【特許文献2】特開2012-046676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1および2とは異なる意匠であって、ハイライト領域内において鮮やかさが大きく変化し、かつ、フェース領域では無彩色あるいはそれに近い色として観察される塗膜が得られる、塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は下記態様を提供する。
[1]
塗膜形成樹脂および顔料を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、前記入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たし、かつ、
前記入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45が、10以下である、塗料組成物。
[2]
前記彩度C -15が50以上である、上記[1]記載の塗料組成物。
[3]
前記彩度C 15が10超40以下である、上記[1]または[2]記載の塗料組成物。
[4]
前記反射光R-15の分光反射率に基づく明度L -15と、前記反射光R15の分光反射率に基づく明度L 15とが、
-15-L 15≧10
の関係を満たす、上記[1]または[2]記載の塗料組成物。
[5]
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の最大の分光反射率SR-15と、前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長における、前記反射光R15の分光反射率SR15とが、
SR-15-SR15≧20(%)
の関係を満たす、上記[1]または[2]記載の塗料組成物。
[6]
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長W-15と、前記反射光R15の分光反射率SR15が最大となる波長W15とが、
|W-15-W15|≧40(nm)
の関係を満たす、上記[1]または[2]記載の塗料組成物。
[7]
前記顔料は、光干渉性鱗片状顔料を含み、
前記光干渉性鱗片状顔料は、
第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する鱗片状の反射性基体と、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属フッ化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1層と、
クロム、アルミニウム、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム、ニオブ、銅および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第2層と、を備え、
少なくとも2つの前記第1層および前記第2層が、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれの上に、前記第1層を最内層として、交互に配置されている、上記[1]または[2]記載の塗料組成物。
[8]
被塗物と、
前記被塗物上に設けられた、上記[1]または[2]に記載の塗料組成物の硬化塗膜と、を備える塗装物品。
[9]
被塗物上に、上記[1]または[2]に記載の塗料組成物を塗装した後、硬化させることを含む、塗装物品の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明の塗料組成物によれば、ハイライト領域内において鮮やかさが大きく変化し、かつ、フェース領域では無彩色あるいはそれに近い色として観察される塗膜が得られる、塗料組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】反射光の角度を説明する図である。
図2】反射光R-15およびR15の分光反射率の変化の一例を、模式的に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[塗料組成物]
本開示に係る塗料組成物は、塗膜形成樹脂および顔料を含む。
本開示に係る塗料組成物の硬化塗膜は、ハイライト領域内において、有彩色であって、かつ鮮やかさが大きく変化する。すなわち、塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たす。
【0009】
「C -15>C 15>10」は、反射光R-15およびR15がいずれも、有彩色であり、かつ、反射光R-15の方が、反射光R15よりも彩度が高いことを示す。「C -15-C 15>20」は、反射光R-15と反射光R15との彩度の差が20より大きいことを示す。
【0010】
さらに、本開示に係る塗料組成物の硬化塗膜(以下、単に「硬化塗膜」と称する場合がある。)は、フェース領域では無彩色あるいはそれに近い色として観察される。すなわち、上記の入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45値が、10以下である。
【0011】
硬化塗膜は、その法線方向から見ると無彩色であるが、徐々に見る角度を小さくしていく、すなわち、塗膜の法線方向(この場合、正反射光に対して45度の方向)から、正反射光に対する角度が小さくなるように、角度を変えて観察すると、ある角度に到達したときに急に有彩色が沸き上がるという、今までにない意匠性を有する。
【0012】
ハイライト領域とは、45度の角度から入射した光の正反射光に対して、-25度以上25度未満の範囲をいう。シェード領域は、45度の角度から入射した光の正反射光に対して、75度以上の範囲をいう。フェース領域は、ハイライトとシェードとの間(正反射光に対して25度超75度未満)の範囲である。本開示では、ハイライト領域として、超ハイライト領域ともいえる、正反射光に対して-15度から15度の領域を観察する。本開示では、フェース領域として、硬化塗膜の法線方向に等しい、正反射光に対して45度の地点を観察する。
【0013】
(彩度C -15、C 15、C 45
彩度C -15は、硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の、分光反射率に基づくLh表色系における彩度である。C 15も同様に、硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の、分光反射率に基づくLh表色系における彩度である。C 45も同様に、硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の、分光反射率に基づくLh表色系における彩度である。
【0014】
彩度C -15は10より大きい。これにより、硬化塗膜が、ハイライト領域において有彩色として観察されることが担保される。彩度C -15は、鮮やかさの変化が大きくなり易い点で、大きい方が望ましい。彩度C -15は、50以上、55以上.60以上、65以上または70以上であってよい。彩度C -15は、100以下であり、98以下であってよく、95以下であってよい。
【0015】
彩度C 15は10より大きい。一方、上記と同様の観点から、彩度C 15は小さい方が望ましい。彩度C 15は、40以下であってよく、35以下であってよい。彩度C 15は、15以上または20以上であってよい。
【0016】
-15-C 15は、20超であり、25以上であってよく、30以上であってよく、35以上であってよい。C -15-C 15は、70以下であってよく、65以下であってよく、60以下であってよい。
【0017】
彩度C -15が60以上であり、かつ、彩度C 15が10超40以下であってよい。
【0018】
彩度C 45は10以下である。無彩色により近くなる点で、彩度C 45は小さい方が望ましい。彩度C 45は、9以下であってよく、8以下であってよく、5以下であってよい。
【0019】
(明度L -15、L 15
明度L -15は、反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における明度である。明度L 15も同様に、反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における明度である。
【0020】
明度L -15と明度L 15とは、
-15-L 15≧10
の関係を満たしてよい。この場合、硬化塗膜は、ハイライト領域内において、彩度とともに明度も変化し得る。これにより、意匠性がより向上する。
【0021】
-15-L 15は、15以上であってよく、20以上であってよい。L -15-L 15は、45以下であってよく、40以下であってよい。
【0022】
明度L -15は、明度の変化が大きくなり易い点で、大きい方が望ましい。明度L -15は、35以上であってよく、40以上であってよい。明度L 15が35以上であると、硬化塗膜が、ハイライト領域においてある程度の明るさを有することが担保されて、意匠性がより向上する。明度L -15は、80以下であってよく、75以下であってよい。
【0023】
明度L 15は、上記と同様の観点から、小さい方が望ましい。明度L 15は、50以下であってよく、45以下であってよい。明度L 15は、15以上であってよく、20以上であってよい。
【0024】
(分光反射率SR-15、SR15
分光反射率SR-15は、波長400nmから700nmの領域(可視光域)における、反射光R-15の最大の分光反射率(%)である。分光反射率SR15は、反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長における、反射光R15の分光反射率である。
【0025】
分光反射率SR-15と分光反射率SR15とは、
SR-15-SR15≧20(%)
の関係を満たしてよい。この場合もまた、硬化塗膜は、ハイライト領域内において、彩度とともに明度も変化し得る。
【0026】
SR-15-SR15は、30%以上であってよく、35%以上であってよい。SR-15-SR15は、130%以下であってよく、120%以下であってよい。
【0027】
SR-15は、例えば、50%以上であってよく、60%以上であってよく、65%以上であってよい。SR-15は、例えば、180%以下であってよく、170%以下であってよく、160以下であってよい。
【0028】
SR15は、例えば、10%以上であってよく、20%以上であってよく、25%以上であってよい。SR15は、例えば、80%以下であってよく、70%以下であってよく、60以下であってよい。
【0029】
(波長W-15、W15
波長W-15は、波長400nmから700nmにおいて、反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長Wである。波長W15も同様に、波長400nmから700nmにおいて、反射光R15の分光反射率SR15が最大となる波長Wである。
【0030】
波長W-15と波長W15とは、
|W-15値-W15値|≧40(nm)
の関係を満たしてよい。これは、反射光R-15の分光反射率のピーク波長と、反射光R15の分光反射率のピーク波長とが、大きく異なっていることを意味している。この場合、硬化塗膜は、ハイライト領域内において、色相自体も変化し得る。
【0031】
|W-15値-W15値|は、43nm以上であってよく、45nm以上であってよい。|W-15値-W15値|は、80nm以下であってよく、70nm以下であってよい。
【0032】
h表色系において、Lは明度を、Cは彩度を、hは色相角度を表わす。Lh表色系において、彩度Cの数値が増加するに従い被測定物質の鮮やかさが増し、小さくなるに従いくすみが増加する。Lh表色系において、明度Lの数値が増加するに従い被測定物質の明るさが増し、小さくなるに従い暗さが増す。
【0033】
h表色系は、CIELb表色系(CIE1976L色空間)に基づいて算出される。CIE1976L色空間は、JIS Z 8781-4に準拠して求めることができる。CIELb表色系は、国際照明委員会により定められており、Section 4.2 of CIE Publication 15.2 (1986) に記載されている。明度L 15および明度L 110は、例えば、マルチアングル測色器(例えば、商品名:BYK-mac i、BYK-Gardner社製)を用いて取得することができる。
【0034】
図1は、反射光の角度を説明する図である。複層塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45の正反射光は、Rで示されている。入射光I45の正反射光に対して-15度の角度で受ける反射光は、R-15で示されている。反射光R-15の分光反射率から、彩度C -15、明度L -15が計算される。入射光I45の正反射光Rに対して15度の角度で受ける反射光は、R15で示されている。入射光R15の分光反射率から、彩度C 15、明度L 15が計算される。入射光I45の正反射光に対して45度の角度で受ける反射光は、R45で示されている。反射光R45の分光反射率から、明度L 45が計算される。
【0035】
図2は、反射光R-15およびR15の分光反射率の変化の一例を、模式的に示したグラフである。グラフにおいて、横軸は波長を、縦軸は分光反射率を示す。グラフにおいて、反射光R15の分光反射率のピーク値(最大値)は、反射光R-15の分光反射率のピーク値(最大値)より小さく、またそのピーク位置は、反射光R-15のピーク位置よりも長波長側にシフトしている。
【0036】
グラフにおいて、反射光R-15のピーク波長は600nm超から700nmの間にあって、赤色を呈している。しかしながら、反射光R-15のピーク波長の位置はこれに限定されず、所望の波長域に設定される。各波長における分光反射率の大きさも、これに限定されない。図2のグラフに示される波長域において、各反射光のピークは1つのみであるが、2以上あってよい。
【0037】
(顔料)
塗料組成物は、顔料として光干渉性鱗片状顔料を含んでよい。これにより、ハイライト領域内での鮮やかさの変化が大きくなって、彩度C -15値と彩度C 15値とが上記の関係を容易に満たすことができる。
【0038】
≪光干渉性鱗片状顔料≫
光干渉性鱗片状顔料(以下、単に「光干渉性顔料」と称する場合がある。)は、第1の面および第1の面とは反対側の第2の面を有する鱗片状の反射性基体と、第1層と、第2層と、を備える。少なくとも2つの前記第1層および前記第2層が、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれの上に、第1層を最内層として、交互に配置されている。すなわち、光干渉性顔料は、鱗片状の反射性基体の両方の面それぞれ、少なくとも4つの層を有している。光干渉性顔料は、具体的には、第2層/第1層/第2層/第1層/反射性基体/第1層/第2層/第1層/第2層の構成を有している。反射性基体の両面には、それぞれ6以上の層が設けられていてよい。
【0039】
第1層は、二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属フッ化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。このような第1層は、典型的には透明であって屈折率が低い。そのため、光の透過性に大きな影響を与えることなく、光干渉性顔料の強度を高めたり、厚さを稼いだりすることができる。
【0040】
第2層は、クロム、アルミニウム、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム、ニオブ、銅および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む。このような第2層は、光の透過性を調整して、光の干渉を生じさせる。
【0041】
反射性の基体の両方の面にそれぞれ2以上の、低屈折率である第1層、および光の干渉を生じさせる第2層が交互に配置されていることにより、反射性基体の被覆膜厚が厚くなって、反射性基体で反射された光がこれらの層に吸収され易くなる。そのため、硬化塗膜のハイライト領域内での鮮やかさの変化が大きくなると考えられる。
【0042】
鱗片状とは、アスペクト比(顔料の平均長径/顔料の平均厚さ)が1.0超である形状をいう。鱗片状の顔料のアスペクト比は、例えば、20以上300以下である。鱗片状の顔料のアスペクト比は、30以上であってよい。鱗片状の顔料のアスペクト比は、200以下であってよい。
【0043】
光干渉性顔料の平均厚さは、光干渉性顔料を含む硬化塗膜の断面を透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察し、任意に選択した100個の光干渉性顔料の厚さを平均化することによって得られる。
【0044】
光干渉性顔料の平均厚さは、例えば、0.01μm以上1.2μm以下である。光干渉性顔料の平均厚さは、0.04μm以上であってよい。光干渉性顔料の平均厚さは、1.1μm以下であってよい。
【0045】
光干渉性顔料の平均長径は、平均粒子径D50と同義である。光干渉性顔料の平均粒子径D50は、例えば、10μm以上100μm以下であってよい。光干渉性顔料の平均粒子径D50の下限は、15μm、20μm、25μm、30μmであってよい。光干渉性顔料の平均粒子径D50の上限は、90μm、80μm、70μm、60μmであってよい。
【0046】
光干渉性顔料の平均粒子径D50は、形状解析レーザーマイクロスコープ(例えば、キーエンス社製、VK-X 250)を用いて、任意に選択した30個の光干渉性顔料の最大長さを測定し、これらの平均値として求めることができる。
【0047】
反射性基体は、400nmから700nmの波長域において、5%以上100%以下の分光反射率を有する。反射性基体は、金属、金属化合物、合金、非金属、またはこれらの組み合わせにより形成されてよい。なかでも、反射性基体は、金属、金属化合物、合金、またはこれらの組み合わせであってよい。金属および合金としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、白金、チタン、パラジウム、ニッケル、コバルト、ニオブ、クロム、スズ、およびこれらの合金、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。金属化合物としては、例えば、上記金属の炭化物、酸化物、窒化物、硫化物、およびこれらの組み合わせが挙げられる。なかでも、反射性基体はアルミニウムであってよい。
【0048】
反射性基体の厚さは、例えば、5nm以上1200nm以下であってよい。反射性基体の厚さの下限は、10nm、15nm、20nm、25nm、30nm、40nm、50nm、60nm、または70nmであってよい。反射性基体の厚さの上限は、1200nm、1100nm、1000nm、900nm、800nm、700nm、600nm、または500nmであってよい。
【0049】
第1層は、例えば、1.65未満の屈折率を有する。第1層は、特にフッ化マグネシウムを含んでいてよい。第1層の厚さは、所望の屈折率に応じて適宜設定される。第1層の厚さは、例えば、100nm以上1000nm以下であってよい。第1層の厚さは、500nm以下であってよく、300nm以下であってよく、250nm以下であってよい。
【0050】
第2層は、半透明であり得、不透明であり得る。第2層は、クロムまたはニッケルを含んでいてよく、特にクロムを含んでいてよい。上記金属は、合金、金属化合物、他の物質との混合物として、第2層に含まれていてよい。他の物質としては、例えば、炭素、グラファイト、シリコン、ゲルマニウム、セルメット、酸化第二鉄または他の金属酸化物、誘電体マトリックスが挙げられる。合金としては、例えば、インコネル(Ni-Cr-Fe)、ステンレス鋼、ハステロイ(Ni-Mo-Fe;Ni-Mo-Fe-Cr;Ni-Si-Cu)、各種チタン合金、コバルトニッケル合金が挙げられる。混合物としては、例えば、Ti/C、Ti/W、Ti/Nb、Ti/Siが挙げられる。金属化合物としては、例えば、ケイ化チタン(TiSi2)、ホウ化チタン(TiB2)が挙げられる。
【0051】
第2層の厚さは、所望の光干渉性に応じて適宜設定される。第2層の厚さは、例えば、1nm以上50nm以下であってよい。第2層の厚さは、5nm以上であってよい。第2層の厚さは、10nm以下であってよい。
【0052】
一態様において、光干渉性顔料は、Cr(第2層)/MgF(第1層)/Cr(第2層)/MgF(第1層)/Al(基体)/MgF(第1層)/Cr(第2層)/MgF(第1層)/Cr(第2層)の構成を有する。
【0053】
複数の第1層に含まれる成分は、それぞれ同じであってよく、異なっていてよい。複数の第1層の厚さは、それぞれ同じであってよく、異なっていてよい。複数の第2層に含まれる成分は、それぞれ同じであってよく、異なっていてよい。複数の第2層の厚さは、それぞれ同じであってよく、異なっていてよい。
【0054】
光干渉性顔料は、着色されていてよい。着色材料としては、光干渉性顔料の効果を妨げない限り、特に制限されることなく適宜選択可能である。
【0055】
光干渉性顔料として、市販品を使用してよい。光干渉性顔料として、例えば、VIAVI Solutions社のクロマフレア(商標)シリーズが使用できる。
【0056】
光干渉性顔料の含有量、すなわち、塗料組成物に含まれる樹脂の固形分に対する光干渉性顔料の質量割合(PWC)は、例えば、1質量%以上50質量%以下である。光干渉性顔料のPWCは、5質量%以上であってよく、8質量%以上であってよい。光干渉性顔料のPWCは、40質量%以下であってよく、35質量%以下であってよい。樹脂の固形分とは、後述する塗膜形成樹脂および硬化剤等の全樹脂成分の固形分である。
【0057】
≪他の顔料≫
塗料組成物は、光干渉性顔料以外の顔料を含んでいてよい。他の顔料としては、例えば、着色顔料、体質顔料、防錆顔料、上記の光干渉性顔料以外の光干渉性顔料、光輝性顔料が挙げられる。他の顔料の質量割合(PWC)は、本開示に係る塗料組成物の効果が損なわれない範囲であれば、特に限定されない。他の顔料の質量割合(PWC)は、15質量%以下であってよく、13質量%以下であってよく、10質量%以下であってよい。
【0058】
着色顔料は、無機物であってよく、有機物であってよい。着色顔料は、有彩色であってよく、無彩色であってよい。有機着色顔料としては、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料が挙げられる。無機着色顔料としては、例えば、黄鉛、黄色酸化鉄、ベンガラ、カーボンブラック、二酸化チタンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0059】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルクが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。
【0060】
他の光干渉性顔料および光輝性顔料としては、干渉マイカ、ホワイトマイカおよび着色マイカなどのマイカ顔料;グラファイト顔料;ガラスフレーク顔料;アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ、酸化アルミニウム、酸化クロム、これらを含む合金などの金属顔料が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。他の光干渉性顔料および光輝性顔料は、着色されていてもよい。
【0061】
(塗膜形成樹脂)
塗膜形成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、アクリル樹脂であってよい。
【0062】
水性の塗料組成物において、これらの樹脂は、エマルションとして含まれてよく、ディスパージョンとして含まれてよく、溶媒に溶解した状態で含まれていてよい。
【0063】
例えば、アクリル樹脂エマルションは、α,β-エチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって調製することができる。α,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマー、および水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーが挙げられる。モノマーは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタジエニル、(メタ)アクリル酸ジヒドロジシクロペンタジエニルが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルおよびメタアクリル酸エステルを表わす。
【0065】
酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、イソクロトン酸、α-ハイドロ-ω-((1-オキソ-2-プロペニル)オキシ)ポリ(オキシ(1-オキソ-1,6-ヘキサンジイル))、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、3-ビニルサリチル酸、3-ビニルアセチルサリチル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-ヒドロキシスチレン、2,4-ジヒドロキシ-4’-ビニルベンゾフェノンが挙げられる。
【0066】
水酸基を有するα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、アリルアルコール、メタリルアルコール、および、これらとε-カプロラクトンとの付加物が挙げられる。
【0067】
その他のα,β-エチレン性不飽和モノマーが併用されてよい。その他のα,β-エチレン性不飽和モノマーとしては、例えば、重合性アミド化合物、重合性芳香族化合物、重合性ニトリル、重合性アルキレンオキシド化合物、多官能ビニル化合物、重合性アミン化合物、α-オレフィン、ジエン、重合性カルボニル化合物、重合性アルコキシシリル化合物、重合性のその他の化合物が挙げられる。
【0068】
乳化重合の方法は、特に限定されない。例えば、水、または必要に応じてアルコール、エーテル(例えば、ジプロピレングリコールメチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテルなど)などのような有機溶媒を含む水性媒体中に乳化剤を溶解させ、加熱撹拌下、α,β-エチレン性不飽和モノマーおよび重合開始剤を滴下する。α,β-エチレン性不飽和モノマーは、乳化剤によって、予め乳化させておいてよい。
【0069】
重合開始剤および乳化剤は、当業者に通常使用されているものを用いることができる。必要に応じて、メルカプタン(例えば、ラウリルメルカプタン)およびα-メチルスチレンダイマーなどの連鎖移動剤を用いて分子量を調節してもよい。反応温度、反応時間などは、当業者に通常用いられる範囲で適宜選択することができる。得られたアクリル樹脂エマルションは、必要に応じて塩基で中和される。
【0070】
乳化重合により得られるアクリル樹脂(アクリル樹脂のエマルション)は、数平均分子量が3,000以上であってよい。アクリル樹脂は、水酸基価(固形分水酸基価)が20mgKOH/g以上180mgKOH/g以下であってよい。アクリル樹脂は、酸価(固形分酸価)が1mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であってよい。
【0071】
数平均分子量は、ポリスチレンを標準とするGPC法において決定される。酸価および水酸基価は、JISの規定に基づいて、調製に用いられるモノマー組成から算出される。
【0072】
アクリル樹脂ディスパージョンは、例えば、上記α,β-エチレン性不飽和モノマーを溶液重合し、塩基性化合物を用いて分散化することにより、調製することができる。
【0073】
水溶性のアクリル樹脂は、例えば、上記α,β-エチレン性不飽和モノマーを溶液重合し、塩基性化合物を用いて水溶化することにより調製することができる。
【0074】
溶剤系の塗料組成物に配合されるアクリル樹脂は、例えば、α,β-エチレン性不飽和モノマーを溶液重合することにより調製することができる。上記アクリル樹脂は、数平均分子量が例えば1,000以上20,000以下である。上記アクリル樹脂は、酸価(固形分酸価)が1mgKOH/g以上80mgKOH/g以下であってよい。上記アクリル樹脂は、水酸基価(固形分水酸基価)が101mgKOH/g以上200mgKOH/g以下であってよい。
【0075】
(硬化剤)
塗料組成物は、硬化剤を含んでいてよい。硬化剤は、塗膜形成樹脂と反応して、これとともに硬化塗膜を形成する。
【0076】
硬化剤としては、例えば、メラミン樹脂、ブロックイソシアネート化合物、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、金属イオンが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、メラミン樹脂およびブロックイソシアネート化合物の少なくとも1種を用いてよい。
【0077】
メラミン樹脂は、水溶性であってよく、非水溶性であってよい。メラミン樹脂は、メラミン核(トリアジン核)の周囲に、3個の窒素原子を介して水素原子または置換基(アルキルエーテル基、メチロール基など)が結合した構造を含む。メラミン樹脂は、一般的には、複数のメラミン核が互いに結合した多核体により構成される。メラミン樹脂は、1個のメラミン核からなる単核体であってもよい。
【0078】
市販のメラミン樹脂を用いてもよい。市販のメラミン樹脂としては、例えば、Allnex社製のサイメルシリーズ(商品名)、具体的には、サイメル202、サイメル204、サイメル211、サイメル232、サイメル235、サイメル236、サイメル238、サイメル250、サイメル251、サイメル254、サイメル266、サイメル267、サイメル272、サイメル285、サイメル301、サイメル303、サイメル325、サイメル327、サイメル350、サイメル370、サイメル701、サイメル703、サイメル1141;三井化学社製のユーバン(商品名)シリーズが挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いられる。
【0079】
ブロックイソシアネート化合物は、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどからなるポリイソシアネートに、活性水素を有するブロック剤を付加させることによって、調製することができる。
【0080】
硬化剤の含有量は、塗料組成物に含まれる樹脂固形分の10質量%以上80質量以下であってよい。硬化剤の上記含有量は、15質量%以上であってよい。硬化剤の上記含有量は、60質量%以下であってよい。
【0081】
(リン酸基含有有機化合物)
塗料組成物は、さらにリン酸基含有有機化合物を含んでいてよい。リン酸基含有化合物によって、光干渉性顔料の分散性が向上し易くなる。
【0082】
リン酸基含有化合物の含有量は、塗料組成物の全固形分の0.1質量%以上15質量%以下であってよい。リン酸基含有化合物の上記含有量は、1質量%以上であってよい。リン酸基含有化合物の上記含有量は、12質量%以下であってよい。
【0083】
リン酸基含有化合物は、リン酸基(-P(=O)(OR)(Rは、それぞれ独立して、水素または炭化水素基))を有する限り、特に限定されない。リン酸基含有化合物は、例えば、炭素数4~30のアルキル基を有するアルキルリン酸エステル、および、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基含有ポリマーの少なくとも一方である。
【0084】
〈アルキルリン酸エステル〉
アルキルリン酸エステルは、炭素数4~30のアルキル基を有する。アルキルリン酸エステルとしては、モノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、およびこれらの混合物が挙げられる。ジアルキルリン酸エステルにおいて、2つのアルキル基は同じであってよく、異なっていてよい。ジアルキルリン酸エステルは、好ましくは、同じ2つのアルキル基を有する。
【0085】
炭素数4~30のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基およびオクタコシル基が挙げられる。アルキル基は、直鎖状であってよく、分岐していてよい。
【0086】
アルキルリン酸エステルとしては、例えば、ブチルアシッドホスフェート(モノブチルリン酸エステルとジブチルリン酸エステルとの混合物)、2-エチルヘキシルアシッドホスフェート(モノ-2-エチルヘキシルリン酸エステルとジ-2-エチルヘキシルリン酸エステルとの混合物)、イソデシルアシッドホスフェート(モノイソデシルリン酸エステルとジイソデシルリン酸エステルとの混合物)、ジラウリルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート(モノラウリルリン酸エステルとジラウリルリン酸エステルとの混合物)、トリデシルアシッドホスフェート(モノトリデシルリン酸エステルとジトリデシルリン酸エステルとの混合物)、モノステアリルアシッドホスフェート、ジステアリルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート(モノステアリルリン酸エステルとジステアリルリン酸エステルとの混合物)、イソステアリルアシッドホスフェート(モノイソステアリルリン酸エステルとジイソステアリルリン酸エステルとの混合物)、オレイルアシッドホスフェート(モノオレイルリン酸エステルとジオレイルリン酸エステルとの混合物)、ベヘニルアシッドホスフェート(モノベヘニルリン酸エステルとジベヘニルリン酸エステルとの混合物)が挙げられる。
【0087】
〈リン酸基含有ポリマー〉
リン酸基含有ポリマーは、5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下のリン酸基価を有する。リン酸基含有ポリマーのリン酸基価は、10mgKOH/g以上であってよく、50mgKOH/g以上であってよい。リン酸基含有ポリマーのリン酸基価は、250mgKOH/g以下であってよく、150mgKOH/g以下であってよい。
【0088】
リン酸基価は、JIS K5601 2-1 酸価測定方法に基づいて算出される。具体的には、酸価は、製品の不揮発物1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数である。
【0089】
リン酸基含有ポリマーの数平均分子量は、例えば、1,000以上50,000以下である。リン酸基含有ポリマーの数平均分子量は、3,000以上であってよく、5,000以上であってよい。リン酸基含有ポリマーの数平均分子量は、30,000以下であってよく、20,000以下であってよい。
【0090】
リン酸基含有ポリマーとしては、例えば、リン酸基価が5mgKOH/g以上300mgKOH/g以下の、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。なかでも、リン酸基含有アクリル樹脂であってよい。リン酸基含有アクリル樹脂は、例えば、リン酸基含有α,β-エチレン性不飽和モノマーを重合する、あるいは、このモノマーとリン酸基を含有しない他のα,β-エチレン性不飽和モノマーとを共重合することによって得られる。特に、上記の光干渉性顔料とリン酸基含有アクリル樹脂とを併用することにより、ハイライト領域内における色の鮮やかさは、より変化し易くなる。
【0091】
(添加剤)
塗料組成物は、当業者において通常用いられる添加剤を含んでいてよい。添加剤としては、例えば、表面調整剤、粘性制御剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、消泡剤が挙げられる。
【0092】
[塗装物品]
本開示に係る塗装物品は、被塗物と、被塗物上に設けられた上記の硬化塗膜とを備える。上記の硬化塗膜を備える塗装物品は、ハイライト領域内において鮮やかさが大きく変化し、かつ、フェース領域では無彩色あるいはそれに近い色として観察される。そのため、硬化塗膜の法線方向から塗装物品を見ると無彩色であるが、徐々に見る角度を小さくしていくと、ある角度を超えたときに急に有彩色が沸き上がるという、今までにない意匠性を有する。
【0093】
・第1実施形態
第1実施形態において、塗装物品は、被塗物と、被塗物上に設けられた上記の硬化塗膜(以下、「ベース塗膜」と称する場合がある。)と、ベース塗膜上に設けられたクリヤー塗膜と、を備える。
【0094】
(被塗物)
被塗物の材質としては、例えば、金属、プラスチック、発泡体が挙げられる。なかでも、金属(特に、鋳物)であってよく、電着塗装可能な金属であってよい。このような金属としては、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛などおよびこれらの金属を含む合金が挙げられる。
【0095】
被塗物の形状は特に限定されず、平板状であってよく、立体的に成形されていてよい。被塗物として、具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バスなどの自動車車体およびその部品が挙げられる。
【0096】
金属製の被塗物は、リン酸系化成処理剤、ジルコニウム系化成処理剤などを用いた化成処理、および、電着塗装が施されていてよい。電着塗料組成物は、カチオン型であってよく、アニオン型であってよい。カチオン型の電着塗料組成物は、防食性に優れた塗膜を形成することができる。
【0097】
金属製の被塗物は、電着塗膜と、その上に設けられた中塗り塗膜とを備えていてよい。中塗り塗膜は、通常、複層塗膜の付着性および耐久性の向上を目的として設けられる。中塗り用の塗料組成物は、例えば、塗膜形成樹脂、硬化剤、着色顔料および体質顔料を含み得る。塗膜形成樹脂および硬化剤としては、本開示に係る塗料組成物に含まれるものと同様のものが挙げられる。
【0098】
(ベース塗膜)
ベース塗膜は、本開示に係る塗料組成物(以下、「ベース塗料組成物」と称する場合がある。)により形成される。ベース塗膜の厚さは、0.2μm以上50μm以下であってよい。ベース塗膜の厚さは、3μm以上であってよい。ベース塗膜の厚さは、40μm以下であってよく、30μm以下であってよく、20μm以下であってよい。
【0099】
(クリヤー塗膜)
クリヤー塗膜は、ベース塗膜を保護する。クリヤー塗膜の厚さは、例えば、10μm以上80μm以下であってよい。クリヤー塗膜の厚さは、20μm以上であってよい。クリヤー塗膜の厚さは、60μm以下であってよい。
【0100】
クリヤー塗膜は、クリヤー塗料組成物により形成される。クリヤー塗料組成物は、溶剤系であってよく、水性であってよく、粉体型であってよい。溶剤系クリヤー塗料組成物は、透明性あるいは耐酸エッチング性などの点から、塗膜形成樹脂としてアクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂と、硬化剤としてアミノ樹脂および/またはイソシアネートと、を含んでよい。溶剤系クリヤー塗料組成物は、また、カルボン酸および/またはエポキシ基を有する、アクリル樹脂および/またはポリエステル樹脂を含んでよい。
【0101】
クリヤー塗料組成物は、透明性および本開示に係る塗料組成物の効果を損なわない範囲で、上記の各種顔料を含み得る。クリヤー塗料組成物は、必要に応じて種々の添加剤を含み得る。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、消泡剤、表面調整剤、ピンホール防止剤が挙げられる。
【0102】
・第2実施形態
第2実施形態において、塗装物品は、被塗物と、被塗物上に設けられた他の硬化塗膜(以下、「第1ベース塗膜」と称する。)と、第1ベース塗膜上に設けられた、本開示に係る塗料組成物により形成された硬化塗膜(以下、「第2ベース塗膜」と称する。)と、第2ベース塗膜上に設けられたクリヤー塗膜と、を備える。被塗物およびクリヤー塗膜は、第1実施形態と同様である。第2ベース塗膜は、本開示に係る塗料組成物により形成され、第1実施形態のベース塗膜と同様である。第1ベース塗膜について、以下に説明する。
【0103】
(第1ベース塗膜)
第1ベース塗膜は、第1ベース塗料組成物により形成される。第1ベース塗料組成物は、第1塗膜形成樹脂と、上記の光干渉性顔料以外の顔料とを含み得る。
【0104】
第1塗膜形成樹脂としては、本開示に係る塗料組成物に用いられる塗膜形成樹脂と同様のものが挙げられる。両者は、同種であってよく、異種であってよい。顔料としては、上記の光干渉性顔料以外であれば特に制限なく使用できる。その他、第1ベース塗料組成物は、本開示に係る塗料組成物と同様の成分を含んでいてよい。
【0105】
第1ベース塗膜の厚さは、例えば、0.2μm以上20μm以下であってよい。第1ベース塗膜の厚さは、5μm以上であってよい。第1ベース塗膜の厚さは、15μm以下であってよく、10μm以下であってよい。
【0106】
[塗装物品の製造方法]
本開示に係る塗装物品の製造方法は、被塗物に、本開示に係る塗料組成物を塗装した後、硬化させることを含む。これにより、上記の塗装物品が得られる。
【0107】
クリヤー塗膜をさらに備える第1実施形態に係る塗装物品は、被塗物に、本開示に係る塗料組成物(ベース塗料組成物)およびクリヤー塗料組成物を順次塗装した後、両者を同時に硬化させることにより得られる。
【0108】
第1ベース塗膜およびクリヤー塗膜をさらに備える第2実施形態に係る塗装物品は、被塗物に、上記の第1ベース塗料組成物および本開示に係る塗料組成物(第2ベース塗料組成物)を順次塗装した後、両者を同時に硬化させ、次いで、クリヤー塗料組成物を塗装および硬化することにより得られる。
【0109】
第2実施形態に係る塗装物品は、また、上記の第1ベース塗料組成物、本開示に係る塗料組成物(以下、「第2ベース塗料組成物」と称する場合がある。)およびクリヤー塗料組成物を順次塗装した後、これらを同時に硬化させることにより得られてよい。
【0110】
第1ベース塗料組成物の塗装の後、本開示に係る塗料組成物(第2ベース塗料組成物)を塗装する前に、プレヒートを行ってもよい。本開示に係る塗料組成物の塗装の後、クリヤー塗料組成物を塗装する前に、プレヒートを行ってもよい。
【0111】
塗装方法としては、例えば、エアスプレー塗装、エアレススプレー塗装、静電スプレー塗装、エアー静電スプレー塗装による多ステージ塗装(好ましくは2ステージ塗装)、エアー静電スプレー塗装と回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装が挙げられる。
【0112】
各塗料組成物の硬化は、例えば、加熱温度80℃~180℃(好ましくは100℃~160℃)、加熱時間5分~60分(好ましくは10分~30分)の条件で行われる。
【実施例0113】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、質量基準による。
【0114】
[製造例1]アクリル樹脂エマルション(塗膜形成樹脂)の製造
反応容器に脱イオン水633部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら80℃に昇温した。次いで、スチレン(ST)75.65質量部、メチルメタクリレート(MMA)178.96質量部、n-ブチルアクリレート(BA)75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)64.45質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)105.00質量部、の1段目のモノマー混合物、アクアロンHS-10(ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステル、第一工業製薬社製)25.00部、アデカリアソープNE-20(α-[1-[(アリルオキシ)メチル]-2-(ノニルフェノキシ)エチル]-ω-ヒドロキシオキシエチレン、旭電化社製)25.00部、および脱イオン水400部からなるモノマー乳化物と、過硫酸アンモニウム1.2部、および脱イオン水500部からなる開始剤溶液とを1.5時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、1時間同温度で熟成を行った。
【0115】
さらに、80℃で、スチレン(ST)53.65質量部、メチルメタクリレート(MMA)178.96質量部、n-ブチルアクリレート(BA)75.94質量部、2-エチルヘキシルアクリレート(2-EHA)64.45質量部、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)105.00質量部、アクリル酸22質量部の2段目のモノマー混合物と、アクアロンHS-10 10部および脱イオン水250部からなるモノマーの乳化物と、過硫酸アンモニウム3.0部および脱イオン水500部からなる開始剤溶液とを1.5時間に渡り併行して、反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0116】
次いで、40℃まで冷却し、400メッシュフィルターで濾過した後、脱イオン水100部およびジメチルアミノエタノール1.6部を加えpH6.5に調整し、平均粒子径150nm、不揮発分35%、固形分酸価20mgKOH/g、水酸基価100mgKOH/gのアクリル樹脂エマルションを得た。
【0117】
[製造例2]リン酸基含有有機化合物の製造
攪拌機、温度調整器、冷却管を備えた1リットルの反応容器にエトキシプロパノール40部を仕込み、これにスチレン4部、n-ブチルアクリレート35.96部、エチルヘキシルメタアクリレート18.45部、2-ヒドロキシエチルメタクリレート13.92部、メタクリル酸7.67部、エトキシプロパノール20部に、ホスマーPP(ユニケミカル社製アシッドホスホオキシヘキサ(オキシプロピレン)モノメタクリレート)20部を溶解した溶液40部、およびアゾビスイソブチロニトリル1.7部からなるモノマー溶液121.7部を120℃で3時間滴下した後、1時間さらに攪拌を継続した。得られたリン酸基含有有機化合物は、酸価105mgKOH/g、うちリン酸基価55mgKOH/g、水酸基価60mgKOH/g、数平均分子量6000、不揮発分が63%であった。
【0118】
なお本明細書実施例において、数平均分子量の測定は、GPC装置として「HLC8220GPC」(商品名、東ソー(株)製)、カラムとして「Shodex KF-606M」、「Shodex KF-603」(いずれも昭和電工(株)製、商品名)の4本を用いて、移動相:テトラヒドロフラン、測定温度:40℃、流速:0.6cc/分、検出器:RIの条件で行なった。
【0119】
また本明細書実施例において、リン酸基含有有機化合物の酸価およびリン酸基価の算出は、JIS K5601 2-1の酸価の定義(試料(不揮発物)1g中の遊離酸を中和するのに要する、水酸化カリウム(KOH)のmg数)に基づいて計算を行って求めた。また水酸基価の算出は、JIS K0070の水酸基価の定義(試料1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数)に基づいて計算を行って求めた。
【0120】
[製造例3]水溶性アクリル樹脂の製造
反応容器にトリプロピレングリコールメチルエーテル23.89部およびプロピレングリコールメチルエーテル16.11部を加え、窒素気流中で混合撹拌しながら105℃に昇温した。次いで、メタクリル酸メチル13.1部、アクリル酸エチル68.4部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル11.6部およびメタクリル酸6.9部を含むモノマー混合物を作成し、そのモノマー混合物100部、トリプロピレングリコールメチルエーテル10.0部およびターシャルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート1部からなる開始剤溶液を3時間にわたり並行して反応容器に滴下した。滴下終了後、0.5時間同温度で熟成を行った。
【0121】
さらに、トリプロピレングリコールメチルエーテル5.0部およびターシャルブチルパーオキシ2-エチルヘキサノエート0.3部からなる開始剤溶液を0.5時間にわたり反応容器に滴下した。滴下終了後、2時間同温度で熟成を行った。
【0122】
脱溶剤装置により、減圧下(70torr)110℃で溶剤を16.1部留去した後、脱イオン水204部およびジメチルアミノエタノール7.1部を加えて水溶性アクリル樹脂溶液を得た。得られた水溶性アクリル樹脂溶液の不揮発分は30%であり、固形分酸価40mgKOH/g、水酸基価50mgKOH/g、粘度は140ポイズ(E型粘度計1rpm/25℃)であった。
【0123】
実施例および比較例で使用された顔料等の詳細を、表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
[実施例1]
(1)ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体1の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を34.5部、カーボンブラック(着色顔料)10.4部、顔料分散剤18.6部、イオン交換水36.0部、消泡剤0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体1を得た。
【0126】
(1-2)ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルション133.3部、ジメチルアミノエタノール9.0部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体1を13.5部、光干渉性顔料を樹脂固形分100質量部に対して10質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度24.5質量%の水性のベース塗料組成物を得た。
【0127】
(2)複層塗膜の形成
リン酸亜鉛処理した、厚み0.8mm、縦30cm、横40cmのダル鋼板に、カチオン電着塗料組成物である「パワートップU-50)」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製)を、乾燥膜厚が20μmとなるように電着塗装し、160℃で30分間焼き付けた。得られた塗板に、中塗り塗料組成物「OP-30P ミドルグレー」(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製、ポリエステル・メラミン系塗料、25秒(No.4フォードカップを使用し、20℃で測定)に予め希釈)を、アネスト岩田製エアスプレーガンW-101-132Gを用いて乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、140℃で30分間焼き付け硬化させた。このようにして、電着塗膜と中塗り塗膜とを有する被塗物を得た。
【0128】
被塗物に、上記の水性ベース塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚15μmになるようにエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
【0129】
装板を室温まで放冷した後、クリヤー塗料組成物(マックフロー-O-1810(日本ペイント・オートモーティブコーティングス社製溶剤型クリヤー塗料))を、乾燥膜厚35μmとなるようにエアスプレー塗装し、7分間セッティングした。ついで、塗装板を乾燥機で140℃、30分間焼き付けを行って、ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0130】
[実施例2]
着色顔料分散体1を配合しなかったこと以外は、実施例1と同様の手順により水性ベース塗料組成物および塗装物品を得た。
【0131】
[比較例1]
(1)ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体2の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を76.8部、ペリレンレッド(着色顔料)11.7部、アンカーレッド(着色顔料)12.5部、カーボンブラック(着色顔料)3.0部、酸化チタン(着色顔料)16.0部、顔料分散剤22.7部、イオン交換水59.0部、消泡剤0.6部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体2を得た。
【0132】
(1-2)ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルション143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)を35.6部、着色顔料分散体2を89.4部、他の光干渉性顔料1を樹脂固形分100質量部に対して1.4質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度24.5質量%である水性ベース塗料組成物を調製した。
【0133】
(2)複層塗膜の形成
上記調製で得られた水性ベース塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0134】
[比較例2]
(1)ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体3の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を59.8部、ペリレンレッド(着色顔料)11.7部、カーボンブラック(着色顔料)6.3部、顔料分散剤25.3部、イオン交換水56.8部、消泡剤0.8部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体3を得た。
【0135】
(1-2)ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルション143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体3を56.1部、他の光干渉性顔料2を樹脂固形分100質量部に対して6.2質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度24.5質量%である水性ベース塗料組成物を調製した。
【0136】
(2)複層塗膜の形成
上記調製で得られた水性ベース塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0137】
[比較例3]
(1)ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体4の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を74.1部、ペリレンレッド(着色顔料)3.1部、アンカーレッド(着色顔料)13.1部、カーボンブラック(着色顔料)10.4部、酸化チタン(着色顔料)2.8部、顔料分散剤24.1部、イオン交換水56.3部、消泡剤0.6部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体4を得た。
【0138】
(1-2)ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルション143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体4を16.7部、他の光干渉性顔料3を樹脂固形分100質量部に対して6.6質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度24.5質量%である水性ベース塗料組成物を調製した。
【0139】
(2)複層塗膜の形成
上記調製で得られた水性ベース塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0140】
[比較例4]
(1)ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体5の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を34.5部、カーボンブラック(着色顔料)10.4部、顔料分散剤18.6部、イオン交換水36.0部、消泡剤0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体5を得た
【0141】
(1-2)ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを133.3部、ジメチルアミノエタノール9.0部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体5を43.2部、他の光干渉性顔料3を樹脂固形分100質量部に対して0.8質量部、他の光干渉性顔料4を樹脂固形分100質量部に対して3.1質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物 5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度24.5質量%である水性ベース塗料組成物を調製した。
【0142】
(2)複層塗膜の形成
上記調製で得られた水性ベース塗料組成物を用いて、実施例1と同様の手順により複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0143】
[実施例3]
(1)第1ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体6の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を78.3部、ペリレンレッド(着色顔料)11.5部、カーボンブラック(着色顔料)10.4部、ホスターパームバイオレット(着色顔料)2.0部、シャニンブルー(着色顔料)1.4部、顔料分散剤であるDISPEX ULTRA PA 4550を34.3部、イオン交換水81.3部、消泡剤であるBYK-011 1.1部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体6を得た。
【0144】
(1-2)第1ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを122.1部、ジメチルアミノエタノール2.0部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体6を102.0部、光干渉性ではない光輝性顔料を含むペースト(有効成分60%)を樹脂固形分100質量部に対して2.1部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度19.9質量%である第1ベース塗料組成物を調製した。
【0145】
(2)第2ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、光干渉性顔料を樹脂固形分100質量部に対して30質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度11.0質量%である水性の第2ベース塗料組成物を調製した。
【0146】
(3)複層塗膜の形成
実施例1と同様にして、電着塗膜と中塗り塗膜とを有する被塗物を得た。
【0147】
被塗物に、上記で調製した第1ベース塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚8μmになるようにエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
【0148】
続いて、上記で調製した水性の第2ベース塗料組成物を、室温23℃、湿度68%の条件下で乾燥膜厚4μmになるように、ウェットオンウェットでエアスプレー塗装した。4分間のセッティングを行った後、80℃で5分間のプレヒートを行った。
【0149】
装板を室温まで放冷した後、実施例1と同様にして、クリヤー塗料組成物をエアスプレー塗装し、第1ベース塗膜、第2ベース塗膜およびクリヤー塗膜からなる複層塗膜を有する塗装物品を得た。
【0150】
[実施例4]
下記で調製した水性第2ベース塗料組成物を用いたこと以外は、実施例3と同様の手順で、複層塗膜を形成した。
【0151】
(2)第2ベース塗料組成物の調製
(2-1)着色顔料分散体7の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を38.9部、ペリレンレッド(着色顔料)11.7部、顔料分散剤14.0部、イオン交換水34.9部、消泡剤0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体7を得た。
【0152】
(2-2)第2ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体7を8.5部、光干渉性顔料を樹脂固形分100質量部に対して29.5質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度11.0質量%である水性の第2ベース塗料組成物を調製した。
【0153】
[比較例5]
(1)第1ベース塗料組成物の調製
(1-1)着色顔料分散体8の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を72.6部、ペリレンレッド(着色顔料)11.5部、カーボンブラック(着色顔料)10.4部、顔料分散剤32.3部、イオン交換水70.2部、消泡剤1.0部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体8を得た。
【0154】
(1-2)第1ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを122.1部、ジメチルアミノエタノール2.0部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体8を95.8部、光干渉性ではない光輝性顔料を含むペースト(有効成分60%)を樹脂固形分100質量部に対して2.1部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度19.9質量%である第1ベース塗料組成物を調製した。
【0155】
(2)第2ベース塗料組成物の調製
(2-1)着色顔料分散体9の調製
製造例3で得た水溶性アクリル樹脂溶液を94.2部、ペリレンレッド(着色顔料)10.1部、アンカーレッド(着色顔料)24.4部、カーボンブラック(着色顔料)1.9部、顔料分散剤18.0部、イオン交換水55.9部、消泡剤0.5部をディスパーなどの撹拌機で混合した。次いで、体積充填率70%で0.05mmのジルコニアビーズを媒体として充填した分散機にて分散して、着色顔料分散体9を得た。
【0156】
(2-2)第2ベース塗料組成物の調製
製造例1のアクリル樹脂エマルションを143.3部、ジメチルアミノエタノール1.4部、サイメル370N(硬化剤、固形分87%)35.6部、着色顔料分散体9を37.2部、他の光干渉性顔料2を樹脂固形分100質量部に対して15質量部、製造例2のリン酸基含有有機化合物を5部、ラウリルアシッドフォスフェート0.4部、ブチルセロソルブ50部、ノイゲンEA-207D(界面活性剤、固形分55%)5.5部、リノール酸3部を均一分散した。ジメチルアミノエタノールを添加してpHを8.1に調整した後、脱イオン水で希釈して、樹脂固形分濃度11.0質量%である水性の第2ベース塗料組成物を調製した。
【0157】
(3)複層塗膜の形成
上記の第1,第2ベース塗料組成物を用いたこと以外は、実施例3と同様の手順で、複層塗膜を形成した。
【0158】
[評価]
実施例および比較例で得られた複層塗膜を用いて下記評価を行った。評価結果を下記表に示す。
(1)分光反射率、明度および彩度
BYK-Gardner社製の分光測色計「BYK-mac i」を用いて、クリヤー塗膜側から塗装物品に対して45度の角度から入射した光I45を、正反射光に対して-15度、15度および45度の角度で受光したときの分光反射率、Lh表色系における彩度および明度を取得した。異なる5つの試料の平均値を、彩度C -15,C 15,C 45、明度L -15,L 15とした。
【0159】
(2)塗膜外観
実施例および比較例で得られた複層塗膜を、入射角45°受光角-15°付近から眺め、その後に受光角が上がるように複層塗膜を動かして目視観察し、下記基準に基づき評価した。
【0160】
評価基準
A:受光角-15°付近では鮮やかさが感じられる一方で、受光角を上げるに従い彩度が感じられなくなり、彩度の変化がはっきりと認識される
B:受光角-15°付近ではある程度鮮やかさが感じられる一方で、受光角を上げるに従い、彩度の低下がある程度認識される
C:受光角-15°から受光角を上げても彩度の変化は認識されない
【0161】
【表2】
【0162】
【表3】
【0163】
実施例の塗膜は、いずれも、ハイライト領域内において鮮やかさが大きく変化し、フェース領域ではほぼ無彩色として認識された。
比較例1、5の塗膜は、受光角-15°から受光角を上げていくとハイライト領域内である程度の彩度の変化が認識されたものの変化に乏しく、また、フェース領域で無彩色とは認識されなかった。
比較例2~4の塗膜は、ハイライト領域内では彩度の変化がほぼ認識されなかった。
【0164】
本開示は以下の態様を含む。
[1]
塗膜形成樹脂および顔料を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、前記入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たし、かつ、
前記入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45が、10以下である、塗料組成物。
[2]
前記彩度C -15が50以上である、上記[1]の塗料組成物。
[3]
前記彩度C 15が10超40以下である、上記[1]または[2]の塗料組成物。
[4]
前記反射光R-15の分光反射率に基づく明度L -15と、前記反射光R15の分光反射率に基づく明度L 15とが、
-15-L 15≧10
の関係を満たす、上記[1]~[3]いずれかの塗料組成物。
[5]
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の最大の分光反射率SR-15と、前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長における、前記反射光R15の分光反射率SR15とが、
SR-15-SR15≧20(%)
の関係を満たす、上記[1]~[4]いずれかの塗料組成物。
[6]
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長W-15と、前記反射光R15の分光反射率SR15が最大となる波長W15とが、
|W-15-W15|≧40(nm)
の関係を満たす、上記[1]~[5]いずれかの塗料組成物。
[7]
前記顔料は、光干渉性鱗片状顔料を含み、
前記光干渉性鱗片状顔料は、
第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する鱗片状の反射性基体と、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属フッ化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1層と、
クロム、アルミニウム、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム、ニオブ、銅および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第2層と、を備え、
少なくとも2つの前記第1層および前記第2層が、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれの上に、前記第1層を最内層として、交互に配置されている、上記[1]~[6]いずれかの塗料組成物。
[8]
被塗物と、
前記被塗物上に設けられた、上記[1]~[7]いずれかの塗料組成物の硬化塗膜と、を備える塗装物品。
[9]
被塗物上に、上記[1]~[7]いずれかの塗料組成物を塗装した後、硬化させることを含む、塗装物品の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の塗装物品は、特に自動車車体の外板として適している。
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2024-06-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜形成樹脂および顔料を含む塗料組成物であって、
前記塗料組成物の硬化塗膜の表面に対して45度の角度から入射した入射光I45を、正反射光に対して-15度の角度で受けた反射光R-15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C -15と、前記入射光I45を、正反射光に対して15度の角度で受けた反射光R15の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 15とが、
-15>C 15>10、および
-15-C 15>20
の関係を満たし、かつ、
前記入射光I45を、正反射光に対して45度の角度で受けた反射光R45の分光反射率に基づくLh表色系における彩度C 45が、10以下であり、
前記顔料は、光干渉性鱗片状顔料を含み、
前記光干渉性鱗片状顔料は、
第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する鱗片状の反射性基体と、
二酸化ケイ素、酸化アルミニウムおよび金属フッ化物よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第1層と、
クロム、アルミニウム、銀、ニッケル、パラジウム、白金、チタン、バナジウム、コバルト、鉄、スズ、タングステン、モリブデン、ロジウム、ニオブ、銅および金よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、第2層と、を備え、
少なくとも2つの前記第1層および前記第2層が、前記第1の面および前記第2の面のそれぞれの上に、前記第1層を最内層として、交互に配置されている、塗料組成物。
【請求項2】
前記彩度C -15が50以上である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記彩度C 15が10超40以下である、請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記反射光R-15の分光反射率に基づく明度L -15と、前記反射光R15の分光反射率に基づく明度L 15とが、
-15-L 15≧10
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項5】
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の最大の分光反射率SR-15と、前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長における、前記反射光R15の分光反射率SR15とが、
SR-15-SR15≧20(%)
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項6】
波長400nmから700nmの領域において、
前記反射光R-15の分光反射率SR-15が最大となる波長W-15と、前記反射光R15の分光反射率SR15が最大となる波長W15とが、
|W-15-W15|≧40(nm)
の関係を満たす、請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項7】
被塗物と、
前記被塗物上に設けられた、請求項1または2に記載の塗料組成物の硬化塗膜と、を備える塗装物品。
【請求項8】
被塗物上に、請求項1または2に記載の塗料組成物を塗装した後、硬化させることを含む、塗装物品の製造方法。