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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140698
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】医療用ポート部材
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/10 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61J1/10 335
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051991
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003111
【氏名又は名称】あいそう弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】舟戸 一輝
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA11
4C047CC04
4C047DD02
4C047DD03
4C047DD11
(57)【要約】
【課題】 ポート本体部の内壁面と中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部の内壁面が削れてしまうことを防止できる医療用ポート部材を提供する。
【解決手段】 医療用ポート部材10のポート本体部20は、弾性シール部材50により液密に閉塞される大径部22と、大径部22よりも内径が小さい小径部23と、大径部22から小径部23に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部24とを有する。弾性シール部材50は、上面部に、指標部(混注用中空針穿刺用凹部)53を備え、混注用中空針80を指標部53の中心からポート本体部20の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、混注用中空針80の外表面と、小径部23の管状内壁面25との間の距離dが1.5mm以上となるようになっている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる医療用ポート部材であって、
筒状のポート本体部と、前記ポート本体部の上部開口部を閉塞し、前記軟質バッグ内に医療用液体を添加するための混注用中空針の穿刺が可能な弾性シール部材とを備え、
前記ポート本体部は、前記弾性シール部材により液密に閉塞される大径部と、前記大径部よりも下方に設けられ、前記大径部よりも内径が小さい小径部と、前記大径部と前記小径部の間に設けられ、前記大径部から前記小径部に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部とを有し、
前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部を有し、前記混注用中空針を前記指標部の中心から前記ポート本体部の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、前記混注用中空針の外表面と、前記ポート本体部の長手軸に直交する方向における前記小径部の管状内壁面との間の距離が1.5mm以上となるようになっていることを特徴とする医療用ポート部材。
【請求項2】
前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる前記指標部としての混注用中空針穿刺用凹部と、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置する周縁部とを備える請求項1に記載の医療用ポート部材。
【請求項3】
前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置し、かつ、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上となっている請求項2に記載の医療用ポート部材。
【請求項4】
前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる前記指標部としての第2の混注用中空針穿刺用凹部を備え、前記弾性シール部材の前記周縁部は、前記第2の混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置しており、前記第2の混注用針刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の前記管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置し、かつ、前記第2の混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上となっている請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項5】
前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、排出用中空針を穿刺する際の指標となる排出用中空針穿刺用凹部を備え、前記弾性シール部材の前記周縁部は、前記排出用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置しており、前記排出用中空針穿刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の前記管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置している請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項6】
前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上かつ4.0mm以下となっている請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項7】
前記テーパ部の内面の前記大径部の中心軸に対する傾斜角度が6~8°となっている請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項8】
前記大径部、前記小径部、および前記テーパ部の前記ポート本体部の軸方向における長さが、前記小径部、前記大径部、前記テーパ部の順に小さくなっている請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項9】
前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間の距離が25mm~45mmである請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項10】
前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間を結ぶ仮想傾斜線と、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と間の角度は、5°以上である請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項11】
前記混注用中空針穿刺用凹部の中心と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間の距離が30mm~45mmである請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項12】
前記混注用中空針穿刺用凹部の中心と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間を結ぶ仮想傾斜線と、前記混注用中空針穿刺用凹部の中心から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と間の角度は、4°以上である請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【請求項13】
前記混注用中空針穿刺用凹部の中心軸と前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が2.0mm~5.0mmである請求項2または3に記載の医療用ポート部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる医療用ポート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、薬液が収納された医療用容器は、収納している薬液の排出や、容器内への医療用液体の添加(混注)等のためにポートを備えている。そのようなポートとして、例えば、特許文献1(特開2020-146510)には、軟質バッグに取り付けられるポートであって、中空針を刺通可能な封止栓と、封止栓が内部に配置される中空のポート本体とを備えるものが開示されている。また、特許文献2(特開2022-150064)には、薬液が収納された軟質バッグと一体または別体に形成された管状開口部を封止し、かつ穿刺部材(中空針等)の穿刺が可能な弾性変形性シール部材を備えるポートが開示されている。さらに、特許文献2には、弾性変形性シール部材の上面に、穿刺の指標と成る凹部を設けることも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-146510
【特許文献2】特開2022-150064
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなポートにおいては、例えば混注時において、中空針を不適切な位置(著しく中心から離間した位置等)に穿刺してしまったり、中空針をポートの軸方向に対して斜めに穿刺してしまったりした場合、中空針の刃先および刃面がポート内壁に接触してしまうことがあった。そして、混注時に、中空針とポート内壁との接触によりポート内壁が削れてしまい、軟質バッグ内の薬液に混入した削れ片が異物と認識されてしまうことで、その後の薬液の使用ができなくなるおそれがあった。
そこで、本発明の目的は、薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる医療用ポート部材であって、ポート本体部の内壁面と中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部の内壁面が削れてしまうことを防止できる医療用ポート部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる医療用ポート部材であって、
筒状のポート本体部と、前記ポート本体部の上部開口部を閉塞し、前記軟質バッグ内に医療用液体を添加するための混注用中空針の穿刺が可能な弾性シール部材とを備え、
前記ポート本体部は、前記弾性シール部材により液密に閉塞される大径部と、前記大径部よりも下方に設けられ、前記大径部よりも内径が小さい小径部と、前記大径部と前記小径部の間に設けられ、前記大径部から前記小径部に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部とを有し、
前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる空針を穿刺する際の指標となる指標部を有し、前記混注用中空針を前記指標部の中心から前記ポート本体部の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、前記混注用中空針の外表面と、前記ポート本体部の長手軸に直交する方向における前記小径部の管状内壁面との間の距離が1.5mm以上となるようになっていることを特徴とする医療用ポート部材。
【0006】
(2) 前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる前記指標部としての混注用中空針穿刺用凹部と、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置する周縁部とを備える上記(1)に記載の医療用ポート部材。
(3) 前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置し、かつ、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上となっている上記(2)に記載の医療用ポート部材。
(4) 前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、前記混注用中空針を穿刺する際の指標となる前記指標部としての第2の混注用中空針穿刺用凹部を備え、前記弾性シール部材の前記周縁部は、前記第2の混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置しており、前記第2の混注用針刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の前記管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置し、かつ、前記第2の混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上となっている上記(2)または(3)に記載の医療用ポート部材。
(5) 前記弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、排出用中空針を穿刺する際の指標となる排出用中空針穿刺用凹部を備え、前記弾性シール部材の前記周縁部は、前記排出用中空針穿刺用凹部の最外縁部の外側に位置しており、前記排出用中空針穿刺用凹部の最外縁部は、前記小径部の前記管状内壁面の垂直上方仮想面内に位置している上記(2)から(4)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(6) 前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、0.5mm以上かつ4.0mm以下となっている上記(2)から(5)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(7) 前記テーパ部の内面の前記大径部の中心軸に対する傾斜角度が6~8°となっている上記(2)から(6)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(8) 前記大径部、前記小径部、および前記テーパ部の前記ポート本体部の軸方向における長さが、前記小径部、前記大径部、前記テーパ部の順に小さくなっている上記(2)から(7)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(9) 前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間の距離が、25mm~45mmである上記(2)から(8)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(10) 前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間を結ぶ仮想傾斜線と、前記混注用中空針穿刺用凹部の最外縁部から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と間の角度は、5°以上である上記(2)から(9)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(11) 前記混注用中空針穿刺用凹部の中心と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間の距離が30mm~45mmである上記(2)から(10)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(12) 前記混注用中空針穿刺用凹部の中心と前記ポート本体部の前記テーパ部の下端間を結ぶ仮想傾斜線と、前記混注用中空針穿刺用凹部の中心から前記ポート本体部の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と間の角度は、4°以上である上記(2)から(11)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
(13) 前記混注用中空針穿刺用凹部の中心軸と前記ポート本体部の軸方向に直交する方向における前記小径部の前記管状内壁面との間の距離が、2.0mm~5.0mmである上記(2)から(12)のいずれかに記載の医療用ポート部材。
【0007】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
薬液が収納された軟質バッグと、前記軟質バッグに取り付けられたまたは前記軟質バッグと一体に形成された上記(1)から(13)に記載の医療用ポート部材とを備える医療用容器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の医療用ポート部材では、筒状のポート本体部は、弾性シール部材により液密に閉塞される大径部と、大径部よりも下方に設けられ、大径部よりも内径が小さい小径部と、大径部と小径部の間に設けられ、大径部から小径部に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部とを有し、弾性シール部材は、上面部の中心より周縁側となる位置に、混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部を有し、混注用中空針を指標部の中心からポート本体部の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、混注用中空針の外表面と、ポート本体部の長手軸に直交する方向における小径部の管状内壁面との間の距離が1.5mm以上となるようになっている。これにより、指標部に対して混注用中空針が穿刺された場合に、ポート本体部の内壁面(大径部、テーパ部、および小径部の内壁面を含む。特に、小径部の管状内壁面)と混注用中空針穿刺用凹部に穿刺された混注用中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部の内壁面が削れてしまうことを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の医療用ポート部材の実施例を示す斜視図である。
図2図2は、本発明の医療用ポート部材の実施例を示す正面図である。
図3図3は、本発明の医療用ポート部材の実施例を示す平面図である。
図4図4は、図2のA-A断面図である。
図5図5は、混注用中空針穿刺用凹部に混注用中空針を穿刺した状態の例を示す図4に対応する断面説明図である。
図6図6は、図3のB-B断面図である。
図7図7は、混注用中空針穿刺用凹部に混注用中空針を穿刺した状態の例を示す図4に対応する断面説明図である。
図8図8は、混注用中空針穿刺用凹部に混注用中空針を穿刺した状態の他の例を示す図4に対応する断面説明図である。
図9図9は、本発明の医療用ポート部材の好ましい態様の例を説明するための図4に対応する断面説明図である。
図10図10は、本発明の医療用ポート部材の好ましい態様の他の例を説明するための図4に対応する断面説明図である。
図11図11は、本発明の医療用容器の実施例を示す正面図である。
図12図12は、本発明の医療用ポート部材の他の実施例を示す断面図である。
図13図13は、本発明の医療用容器の他の実施例を示す正面図である。
図14図14は、図13のC-C断面拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の医療用ポート部材およびそれを備える医療用容器を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の医療用ポート部材10は、図1ないし図10に示すように、薬液が収納された軟質バッグに取り付けられる医療用ポート部材10であって、筒状のポート本体部20と、ポート本体部20の上部開口部を閉塞し、軟質バッグ内に医療用液体を添加するための混注用中空針の穿刺が可能な弾性シール部材50とを備える。ポート本体部20は、弾性シール部材50により液密に閉塞される大径部22と、大径部22よりも下方に設けられ、大径部22よりも内径が小さい小径部23と、大径部22と小径部23の間に設けられ、大径部22から小径部23に向かって徐々に内径が小さくなるテーパ部24とを有する。弾性シール部材50は、上面部(ここでは、シール部材本体51の上面部52)の中心より周縁側となる位置に、混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部(混注用中空針穿刺用凹部53)を有し、混注用中空針を指標部(混注用中空針穿刺用凹部53)の中心からポート本体部20の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、混注用中空針の外表面と、ポート本体部20の長手軸に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離dが1.5mm以上となるようになっている。
【0011】
また、本実施例の医療用ポート部材10では、弾性シール部材50は、上面部(ここでは、シール部材本体51の上面部52)の中心より周縁側となる位置に、混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部としての混注用中空針穿刺用凹部53と、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54の外側に位置する周縁部59とを備える。混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54は、小径部23の管状内壁面25の垂直上方仮想面k内(垂直上方仮想円k内)に位置し、かつ、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P1と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d1が、0.5mm以上となっている。
【0012】
本実施例では、図2および図4に示すように、ポート本体部20は、筒状のポート本体部材21と、ポート本体部材21のキャップ固着部(環状平坦部)26に固着されたキャップ30とを備える。本実施例では、医療用ポート部材10は、ポート本体部材21とキャップ30と弾性シール部材50とを備える。
【0013】
弾性シール部材50は、中空針(混注用中空針および排出用中空針)の穿刺が可能なものが用いられており、さらに、中空針の抜去後に刺通部がシールされるものとなっている。そのような弾性シール部材50は、弾性材料により形成されている。弾性シール部材50の形成材料としては、シリコーンゴム、イソプレンゴム、ブチルゴム、天然ゴム等の各種ゴム類、ポリウレタン、ポリアミドエラストマー、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエンブロック共重合体(SB)、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、水素添加スチレンブタジエンゴム(HSBR)等のスチレン系エラストマール等の各種樹脂材料を挙げることができる。
【0014】
本実施例では、弾性シール部材50は、図4に示すように、略円柱状のシール部材本体51と、シール部材本体51の側面を被包するように設けられた側部(環状側部)61と、シール部材本体51および側部(環状側部)61の中央部を連結する連結部(環状連結部)62とを備えている。弾性シール部材50は、連結部(環状連結部)62の上面において、側部(環状側部)61の上部とシール部材本体51の上部とにより形成された上部凹部(環状凹部)63を備えている。また、弾性シール部材50は、連結部(環状連結部)62の下面において、側部(環状側部)61の下部とシール部材本体51の下部とにより形成された下部凹部(環状凹部)64を備えている。
【0015】
シール部材本体51は、ほぼ円柱状に形成されており、図3に示すように、上面部52に、中空針(混注用中空針および排出用中空針)を穿刺する際の指標となる複数の穿刺用凹部53,55,57(混注用中空針穿刺用凹部53,55および排出用中空針穿刺用凹部57)を備えている。
【0016】
具体的には、弾性シール部材50(シール部材本体51)は、上面部52の中心より周縁側(外方)となる位置に、混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部としての混注用中空針穿刺用凹部53を備えている。なお、このような指標部としては、凹部であるものに限られず、単に指標となる表示(例えば、丸印)がされているだけでもよい。また、弾性シール部材50は、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54(混注用中空針穿刺用凹部53の底面外縁部であって、最も外側(弾性シール部材50の径方向外方)に位置する部分)の外側に位置する周縁部59を備える。言い換えれば、混注用中空針穿刺用凹部53は、弾性シール部材50(シール部材本体51)の外縁からある程度中心方向に離隔した位置に設けられている。周縁部59は、弾性シール部材50(シール部材本体51)の全周に亘って設けられている。
【0017】
本実施例では、弾性シール部材50は、上面部52の中心より周縁側(外方)となる位置に、混注用中空針を穿刺する際の指標となる指標部としての第2の混注用中空針穿刺用凹部55を備え、弾性シール部材50の周縁部59は、第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部56の外側に位置している。本実施例では、第2の混注用中空針穿刺用凹部55の形態(直径や深さ等)は、混注用中空針穿刺用凹部53と同等である。なお、このような指標部としては、凹部であるものに限られず、単に指標となる表示(例えば、丸印)がされているだけでもよい。
【0018】
さらに、本実施例では、弾性シール部材50は、上面部52の中心より周縁側(外方)となる位置に、排出用中空針を穿刺する際の指標となる排出用中空針穿刺用凹部57を備え、弾性シール部材50の周縁部59は、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58の外側に位置している。なお、本実施例では、図3から図6に示すように、排出用中空針穿刺用凹部57の直径(排出用中空針穿刺用凹部57の底面外縁部の直径)D2は、混注用中空針穿刺用凹部53(および第2の混注用中空針穿刺用凹部55)の直径(混注用中空針穿刺用凹部53の底面外縁部の直径)D1と略同等となっている。排出用中空針穿刺用凹部57の直径D2を、混注用中空針穿刺用凹部53(および第2の混注用中空針穿刺用凹部55)の直径D1よりも大きくしてもよい。このような排出用中空針を穿刺する際の指標となるものとしては、凹部であるものに限られず、単に指標となる表示(例えば、丸印)がされているだけでもよい。
【0019】
弾性シール部材50(シール部材本体51)の下面には、当該下面の周縁部に形成され、下方(先端)に向かって肉薄となるスカート状突出部65が設けられている。スカート状突出部65は、図4に示すように、ポート本体部20(後述するポート本体部材21の大径部22)内に侵入している。スカート状突出部65は、大径部22内に液密に侵入していることが好ましい。スカート状突出部65は、下方に向かって肉薄となるとともに、内径が拡径するものとなっている。スカート状突出部65の内面は、下方に向かって拡径する傾斜面(具体的には、下方に向かって拡径する湾曲傾斜面)となっている。
【0020】
ポート本体部20のポート本体部材21は、筒状の部材である。図4に示すように、ポート本体部20のポート本体部材21は、弾性シール部材50により液密に閉塞される大径部22と、大径部22よりも下方に設けられ、大径部22よりも内径が小さい小径部23と、大径部22と小径部23の間に設けられ、大径部22から小径部23に向かって(下方に向かって)徐々に内径が小さくなる(縮径する)テーパ部24とを有している。なお、本実施例のポート本体部20(ポート本体部材21)では、上方から下方に向かって内形(内径)が小さくなるように、大径部22、テーパ部24、小径部23の順に形成されており、各部が同軸的に(各部の中心軸が略一致するように)形成されている。また、ポート本体部材21の外形(外径)も、ポート本体部材21の上側部分に形成されたフランジ部27よりも下部において、上方から下方に向かって小さくなっている。
【0021】
なお、本明細書では、大径部22、テーパ部24、小径部23のそれぞれの内形(内径)は全長に亘って一定であると仮定して説明するが、実際は成形のための抜き勾配等が設定されていてもよい。その場合、以下に示す構成は、大径部22、テーパ部24、小径部23のそれぞれの少なくとも一部が満たしていれば足りるものである。
【0022】
本実施例では、弾性シール部材50の一部(スカート状突出部65)が、ポート本体部20(ポート本体部材21)の大径部22内に液密に侵入可能となっている。言い換えれば、ポート本体部20は、内部に弾性シール部材50の一部(スカート状突出部65)が液密に侵入可能な大径部22を有している。
【0023】
また、図4に示すように、ポート本体部20(ポート本体部材21)のテーパ部24の内面の大径部22の中心軸Pに対する傾斜角度(θ1)は6~8°となっていることが好ましい。
【0024】
また、図4に示すように、ポート本体部20(ポート本体部材21)の大径部22、小径部23、およびテーパ部24のポート本体部20の軸方向における長さ(それぞれ、L1、L2、およびL3)は、小径部23、大径部22、テーパ部24の順に小さく(L2>L1>L3)なっていることが好ましい。
【0025】
ポート本体部材21の形成材料としては、硬質の合成樹脂、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリエステル(PET)、ポリスチレン、ポリアミド、硬質ポリ塩化ビニル、ABS樹脂等の樹脂材料を挙げることができる。医療用ポート部材10の形成材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)が好ましい。
【0026】
ポート本体部20は、ポート本体部材21のキャップ固着部(環状平坦部)26に固着された熱可塑性樹脂製のキャップ(環状キャップ)30を備えている。キャップ(環状キャップ)30は、筒状本体部31と、筒状本体部31の下端側部より外方に突出する突出部(環状突出部)32と、突出部(環状突出部)32の下面より下方に突出する融着用突出部33とを備える。
【0027】
キャップ(環状キャップ)30は、図4に示すように、筒状本体部31および突出部(環状突出部)32の下面が、ポート本体部材21に設けられたフランジ部27の上面と向かい合い、かつ、融着用突出部33が溶融し、フランジ部27の上面部(キャップ固着部26)に固着(融着)している。このようなキャップ30(融着用突出部33)とポート本体部材21(フランジ部27のキャップ固着部26)との融着は、熱融着、振動融着、高周波融着、超音波融着等の方法により実施することができる。
【0028】
キャップ(環状キャップ)30は、所定長軸方向に延び、実質的に円筒状の筒状本体部31と、この筒状本体部31と同心的に配置され、かつ上部にて連結部34により連結された内筒部35と、筒状本体部31の下端外面より外方に突出する突出部(環状突出部)32とを備える。連結部34の上面には、波状に形成された突起部36が形成されており、本実施例では突起部36は全周に亘って(環状に)形成されている。
【0029】
突出部(環状突出部)32は、その外縁より若干内側となる位置より、下方に延びる融着用突出部33を備えている。なお、図4には、融着用突出部33は、フランジ部27のキャップ固着部26に固着(融着)した状態で示されているが、融着用突出部33は、本実施例では2つの環状リブとなっており、かつ、各環状リブは、下端に向かって内径、外径ともに縮径するものとなっている。さらに、本実施例では、融着用突出部33を構成する2つの環状リブのそれぞれの下端面は、環状平坦面となっている。
【0030】
キャップ(環状キャップ)30は、熱可塑性樹脂により形成されている。キャップ(環状キャップ)30の形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。また、本実施例のように、キャップ30(融着用突出部33)とポート本体部材21(フランジ部27のキャップ固着部26)とを溶融させて固着(融着)する場合、キャップ(環状キャップ)30は、ポート本体部材21の形成材料と相溶性の高いもの、特に好ましくは、ポート本体部材21の形成材料と同じもしくは同系統の樹脂を用いることが好ましい。
【0031】
本実施例の弾性シール部材50では、略円柱状のシール部材本体51の上部は、外径が、キャップ(環状キャップ)30の開口部の口径(内筒部35の内径)とほぼ同じものとなっている。そして、シール部材本体51の上部は、図4に示すように、キャップ(環状キャップ)30の開口部(内筒部35)内に侵入し、外部に露出されている。また、本実施例の弾性シール部材50では、図4に示すように、側部(環状側部)61の上部(環状上部)は、キャップ(環状キャップ)30の筒状本体部31の内面と内筒部35の外面の間に形成された環状凹部内に収納されている。
【0032】
さらに、弾性シール部材50の側部(環状側部)61の下部(環状下部)は、図4に示すように、キャップ(環状キャップ)30の筒状本体部31の内面と、ポート本体部材21のフランジ部27よりも上部に形成された小径先端部28の間に収納されている。また、図4に示すように、キャップ(環状キャップ)30の内筒部35の下端とポート本体部材21の小径先端部28の上端は向かい合っており、弾性シール部材50の連結部(環状連結部)62は、キャップ(環状キャップ)30の内筒部35とポート本体部材21の小径先端部28により挟圧されている。これにより、ポート本体部20の上部開口部(ポート本体部材21の大径部22の上部開口部)は、液密に封止されている。
【0033】
図3および図4に示すように、医療用ポート部材10においては、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54は、小径部23の管状内壁面25の垂直上方仮想面k(言い換えれば、垂直上方仮想円k)に位置し、かつ近接するものとなっている。言い換えれば、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54は、ポート本体部20の径方向において、小径部23の管状内壁面25よりも中心側(内方)に位置している。
【0034】
この実施例の医療用ポート部材10では、図3に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53のみならず、第2の混注用中空針穿刺用凹部55および排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部は、小径部23の管状内壁面25の垂直上方仮想面k(垂直上方仮想円k)に近接しかつその内側に位置するものとなっている。
【0035】
さらに、医療用ポート部材10においては、図5に示すように、混注用中空針80を指標部(混注用中空針穿刺用凹部53)の中心からポート本体部20の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、混注用中空針80の外表面と、ポート本体部20の長手軸に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離dが1.5mm以上となるようになっている。これにより、指標部(混注用中空針穿刺用凹部53)に対して混注用中空針80が穿刺された場合に、ポート本体部20の内壁面(大径部22、テーパ部24、および小径部23の内壁面を含む。特に、小径部23の管状内壁面25)と混注用中空針穿刺用凹部53に穿刺された混注用中空針80の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止できる。
【0036】
また、医療用ポート部材10においては、図5に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の中心軸P5とポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d0が2.0mm~5.0mmであることが好ましい。なお、このような距離d0は、より好ましくは、2.1mm~4.5mmであり、さらに好ましくは、2.1mm~4.0mmである。
【0037】
言い換えれば、混注用中空針80として外径が18G(直径約1.20~1.26mm、ここでは、1.20mmと仮定する)である中空針を用いた場合、図5に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の中心軸P5とポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d0を2.1mm以上とすれば、混注用中空針80を指標部(混注用中空針穿刺用凹部53)の中心からポート本体部20の長手軸と平行になるように穿刺した場合に、混注用中空針80の外表面と、ポート本体部20の長手軸に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離dを1.5mm以上とすることができる。
【0038】
また、医療用ポート部材10においては、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P1と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d1が、0.5mm以上となっている。これにより、図7に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53に対して、最外縁部54に混注用中空針80が穿刺された場合であっても、ポート本体部20の内壁面(大径部22、テーパ部24、および小径部23の内壁面を含む。特に、小径部23の管状内壁面25。)と混注用中空針穿刺用凹部53に穿刺された混注用中空針80の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止できる。なお、このような距離d1は、好ましくは、1.0mm以上であり、より好ましくは、1.5mm以上である。
【0039】
さらに、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P1と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d1は、0.5mm以上かつ4.0mm以下となっていることが好ましく、より好ましくは、0.5mm以上かつ3.5mm以下であり、さらに好ましくは、0.5mm以上かつ3.0mm以下である。これにより、上述したように、ポート本体部20の内壁面と混注用中空針穿刺用凹部53に穿刺された混注用中空針80の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止しつつ、医療用ポート部材10の径方向における小型化や、軟質バッグへの取付性の向上を図ることができる。
【0040】
また、本実施例では、上述した混注用中空針穿刺用凹部53と同様に、第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部56は、小径部23の管状内壁面25の垂直上方仮想面k内に位置し、かつ、第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離が、0.5mm以上となっている。これにより、第2の混注用中空針穿刺用凹部55に対して、最外縁部56に混注用中空針80が穿刺された場合であっても、ポート本体部20の内壁面(大径部22、テーパ部24、および小径部23の内壁面を含む。特に、小径部23の管状内壁面25。)と第2の混注用中空針穿刺用凹部55に穿刺された混注用中空針80の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止できる。なお、このような距離(第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離)は、好ましくは、1.0mm以上であり、より好ましくは、1.5mm以上である。
【0041】
さらに、上述した混注用中空針穿刺用凹部53と同様に、第2の混注用中空針穿刺用凹部55においても、第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部56からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離は、0.5mm以上かつ4.0mm以下となっていることが好ましく、より好ましくは、0.5mm以上かつ3.5mm以下であり、さらに好ましくは、0.5mm以上かつ3.0mm以下である。これにより、上述したように、ポート本体部20の内壁面と第2の混注用中空針穿刺用凹部55に穿刺された混注用中空針80の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止しつつ、医療用ポート部材10の径方向における小型化や、軟質バッグへの取付性の向上を図ることができる。
【0042】
また、医療用ポート部材10においては、図3および図6に示すように、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58は、小径部23の管状内壁面25の垂直上方仮想面k(垂直上方仮想円k)内に位置している。言い換えれば、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58は、ポート本体部20の径方向において、小径部23の管状内壁面25よりも中心側(内方)に位置している。
【0043】
また、上述した混注用中空針穿刺用凹部53および第2の混注用中空針穿刺用凹部55と同様に、排出用中空針穿刺用凹部57においても、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P2と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d2は、0.5mm以上であることが好ましい。これにより、排出用中空針穿刺用凹部57に対して、最外縁部58に排出用中空針が穿刺された場合であっても、ポート本体部20の内壁面(大径部22、テーパ部24、および小径部23の内壁面を含む。特に、小径部23の管状内壁面25。)と排出用中空針穿刺用凹部57に穿刺された排出用中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止できる。なお、このような距離d2は、好ましくは、1.0mm以上であり、より好ましくは、1.5mm以上である。
【0044】
さらに、上述した混注用中空針穿刺用凹部53および第2の混注用中空針穿刺用凹部55と同様に、排出用中空針穿刺用凹部57においても、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P2と、ポート本体部20の軸方向に直交する方向における小径部23の管状内壁面25との間の距離d2は、0.5mm以上かつ4.0mm以下となっていることが好ましく、より好ましくは、0.5mm以上かつ3.5mm以下であり、さらに好ましくは、0.5mm以上かつ3.0mm以下である。これにより、上述したように、ポート本体部20の内壁面と排出用中空針穿刺用凹部57に穿刺された排出用中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止しつつ、医療用ポート部材10の径方向における小型化や、軟質バッグへの取付性の向上を図ることができる。
【0045】
また、排出用中空針穿刺用凹部57の最外縁部58は、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54および第2の混注用中空針穿刺用凹部55の最外縁部よりも内方に位置している(図4に示すd1よりも、図6に示すd2の方が大きい)ことが好ましい。言い換えれば、排出用中空針穿刺用凹部57は、混注用中空針穿刺用凹部53および第2の混注用中空針穿刺用凹部55よりも中心寄りに設けられていることが好ましい。
【0046】
本実施例の医療用ポート部材10は、ポート本体部20が、大径部22、小径部23、テーパ部24とを備える。これにより、弾性シール部材50により液密に閉塞される大径部22の面積(断面積)、言い換えれば、弾性シール部材50において中空針(混注用中空針および排出用中空針)を穿刺可能な上面部52の面積(複数の穿刺用凹部を形成するための面積)を確保しつつ、小径部23において、軟質バッグへの取付性(熱融着による接着性)を向上することができる。
【0047】
また、本実施例の医療用ポート部材10は、小径部23の長さ(L2)よりも、大径部22およびテーパ部24の長さ(L1およびL3)が短くなっているため、医療用ポート部材10の全長を短くすることができる。その反面、穿刺された中空針の先端が軸方向において小径部23まで到達する可能性は上がるが、上述の構成を備えることにより、ポート本体部20の内壁面と穿刺用凹部53,55,57に穿刺された中空針の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことを防止することができる。
【0048】
また、本実施例の医療用ポート部材10は、ポート本体部20(ポート本体部材21)のテーパ部24の内面の大径部22の中心軸に対する傾斜角度(θ1)が6~8°となっている。これにより、図8に示すように、中空針(ここでは、混注用中空針80)が斜めに穿刺される等して、万が一、テーパ部24の内壁面と穿刺用凹部(混注用中空針穿刺用凹部53、第2の混注用中空針穿刺用凹部55、および排出用中空針穿刺用凹部57。ここでは混注用中空針穿刺用凹部53。)に穿刺された中空針の刃先および刃面とが接触した場合であっても、そのような接触によりテーパ部24の内壁面が削れてしまうことを防止することができる。
【0049】
また、本実施例の医療用ポート部材は、ポート本体部20(ポート本体部材21)の大径部22、小径部23、およびテーパ部24のポート本体部20の軸方向における長さ(それぞれ、L1、L2、およびL3)は、小径部23、大径部22、テーパ部24の順に小さく(L2>L1>L3)なっていることが好ましい。これにより、大径部22の面積(断面積)の確保、および小径部23における軟質バッグへの取付性の向上をしつつ、万が一、ポート本体部20の内壁面と穿刺用凹部(混注用中空針穿刺用凹部53、第2の混注用中空針穿刺用凹部55、および排出用中空針穿刺用凹部57)に穿刺された中空針(混注用中空針および排出用中空針)の刃先および刃面とが接触した場合に、削れてしまうおそれの大きいテーパ部24の内壁面を可及的に小さくすることができる。
【0050】
また、上述のように、大径部22、小径部23、およびテーパ部24の軸方向における長さ(それぞれ、L1、L2、およびL3)を、小径部23、大径部22、テーパ部24の順に小さく(L2>L1>L3)することと、ポート本体部20(ポート本体部材21)のテーパ部24の内面の大径部22の中心軸に対する傾斜角度(θ1)を6~8°とすることとを組み合わせることにより、上述の効果(中空針の刃先および刃面と接触した場合でも、テーパ部24の内壁面が削れてしまうことを防止する効果)をより有効に得ることができる。
【0051】
また、ポート本体部20の内壁面と穿刺用凹部(ここでは、混注用中空針穿刺用凹部53)に穿刺された中空針(混注用中空針80)の刃先および刃面との接触またはそのような接触によりポート本体部20の内壁面が削れてしまうことをより有効に防止するために、医療用ポート部材10は、以下のような構成を備えていることが好ましい。
【0052】
図9に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54とポート本体部20のテーパ部24の下端29間の距離d3が25mm~45mmであることが好ましく、より好ましくは、28mm~43mmであり、さらに好ましくは、31~40mmである。
【0053】
図9に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54とポート本体部20のテーパ部24の下端29間を結ぶ仮想傾斜線P3と、混注用中空針穿刺用凹部53の最外縁部54からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P1と間の角度θ2は、5°以上であることが好ましい。
【0054】
図10に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の中心とポート本体部20のテーパ部24の下端29間の距離d4が30mm~45mmであることが好ましく、より好ましくは、33mm~43mmであり、さらに好ましくは、36~40mmである。
【0055】
図10に示すように、混注用中空針穿刺用凹部53の中心とポート本体部20のテーパ部24の下端29間を結ぶ仮想傾斜線P4と、混注用中空針穿刺用凹部53の中心からポート本体部20の軸方向に平行に下方に延ばした仮想直線P5と間の角度θ3は、4°以上であることが好ましい。
【0056】
本発明の医療用容器1は、図11に示すように、薬液71が収納された軟質バッグ70と、軟質バッグ70に取り付けられたまたは軟質バッグと一体に形成された上述の医療用ポート部材10とを備える。本実施例では、医療用ポート部材10は、小径部23において、直接、軟質バッグ70に熱融着、超音波融着、高周波融着等によって液密に取り付けられている。
【0057】
軟質バッグ70は、軟質合成樹脂により形成されている。軟質バッグ70は、インフレーション成形法により筒状に成形されたものが好ましい。なお、軟質バッグ70は、例えば、ブロー成形法、共押出インフレーション法などの種々の方法により製造されたものでもよい。
【0058】
軟質バッグ70は、水蒸気バリヤー性を有することが好ましい。水蒸気バリヤー性の程度としては、水蒸気透過度が、50g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であることが好ましく、より好ましくは10g/m・24hrs・40℃・90%RH以下であり、さらに好ましくは1g/m・24hrs・40℃・90%RH以下である。この水蒸気透過度は、JISK7129(A法)に記載の方法により測定される。このように軟質バッグ70が水蒸気バリヤー性を有することにより、医療用容器1の内部からの水分の蒸散が防止できる。その結果、充填される薬液(医療用液体)71の減少、濃縮を防止することができる。また、医療用容器1の外部からの水蒸気の侵入も防止することができる。
【0059】
このような軟質バッグ70の形成材料としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)のようなポリオレフィン、ポリブタジエン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、塩化ビニル、オレフィン系エラストマー、スチレン系エラストマー等の各種熱可塑性エラストマーあるいはこれらを任意に組み合わせたもの(ブレンド樹脂、ポリマーアロイ、積層体等)が挙げられる。そして、使用する樹脂材料は、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)に耐えられる耐熱性、耐水性を有していることが好ましい。
【0060】
軟質バッグ70の形成材料として、ポリオレフィンを含むものであるのが好ましい。軟質バッグ70の形成材料として、特に好ましいものとして、ポリエチレンまたはポリプロピレンに、スチレン-ブタジエン共重合体やスチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン系熱可塑性エラストマーあるいはエチレン-プロピレン共重合体やエチレン-ブテン共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体等のオレフィン系熱可塑性エラストマーをブレンドし柔軟化した軟質樹脂を挙げることができる。この材料は、高強度で柔軟性に富み、耐熱性(特に滅菌時の耐熱性)、耐水性が高い他、加工性が特に優れ、製造コストの低減を図ることができる点で好ましい。
【0061】
また、軟質バッグ70は、前述したような材料よりなる単層構造のもの(単層体)であってもよいし、また種々の目的で、複数の層(特に異種材料の層)を重ねた多層積層体であってもよい。多層積層体の場合、複数の樹脂層を重ねたものであってもよいし、少なくとも1層の樹脂層に金属層を積層したものであってもよい。複数の樹脂層を重ねたものの場合、それぞれの樹脂の利点を併有することができ、例えば、軟質バッグ70の耐衝撃性を向上させたり、耐ブロッキング性を付与したりすることができる。また、金属層を有するものの場合、軟質バッグ70のガスバリヤー性等を向上させることができる。例えば、アルミ箔等のフィルムが積層された場合、ガスバリヤー性の向上とともに、遮光性を付与したりすることができる。また、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素等の酸化物からなる層を形成した場合、ガスバリヤー性の向上とともに、軟質バッグ70の透明性を維持することができ、内部の視認性を確保することができる。なお、軟質バッグ70が多層積層体である場合、その内表面部分を形成する材料が、前述した材料であるのが好ましい。
【0062】
軟質バッグ70を構成するシート材の厚さは、その層構成や用いる素材の特性(柔軟性、強度、水蒸気透過性、耐熱性等)等に応じて適宜決定され、特に限定されるものではないが、通常は、100~500μm程度であるのが好ましく、200~360μm程度であるのがより好ましい。
【0063】
本発明の医療用容器1に収納される薬液71としては、公知のものが使用される。当該薬液としては、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、薬剤含有液体などの薬液、注射用蒸留水などの薬剤溶解液が例示される。
【0064】
以下に、本発明の医療用ポート部材およびそれを備える医療用容器の別の実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明においては、上述した医療用ポート部材10およびそれを備える医療用容器1と略同様の構成については、対応する名称および符号を用い、それらを参照するものとする。
【0065】
図12に示す医療用ポート部材10aのように、ポート本体部20(ポート本体部材21)の大径部22は、弾性シール部材50aに覆われるようにして液密に閉塞されるものであってもよい。本実施例の弾性シール部材50aはスカート状突出部(65)を備えておらず、弾性シール部材50aはポート本体部20(ポート本体部材21)の大径部22内に侵入していない(弾性シール部材50aの変形(弾性変形)により若干侵入するものを除く)。
【0066】
図13および図14に示す医療用容器1bのように、軟質バッグ70bと医療用ポート部材10bのポート本体部材21b(ポート本体部20bを構成するポート本体部材21b)とを一体に形成することもできる。
【0067】
このようなポート本体部材21bが一体的に形成された軟質バッグ70b(軟質バッグ70bが一体的に形成されたポート本体部材21b)は、熱可塑性樹脂により形成することができる。このような軟質バッグ70bおよびポート本体部材21bの形成材料である熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリプロピレンとポリエチレンもしくはポリブテンの混合物)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、 ポリフッ化ビニリデンなど等が挙げられる。
【符号の説明】
【0068】
1 医療用容器
10 医療用ポート部材
20 ポート本体部
21 ポート本体部材
22 大径部
23 小径部
24 テーパ部
25 管状内壁面
30 キャップ
50 弾性シール部材
51 シール部材本体
52 上面部
53 混注用中空針穿刺用凹部
54 最外縁部
55 第2の混注用中空針穿刺用凹部
56 最外縁部
57 排出用中空針穿刺用凹部
58 最外縁部
59 周縁部
70 軟質バッグ
71 薬液
80 混注用中空針
図1
図2
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