(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140700
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/32 20180101AFI20241003BHJP
F24F 11/56 20180101ALI20241003BHJP
H02J 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F24F11/32
F24F11/56
H02J1/00 309C
H02J1/00 306L
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051993
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堂前 浩
(72)【発明者】
【氏名】植田 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】花田 卓弥
(72)【発明者】
【氏名】武内 敏文
(72)【発明者】
【氏名】開発 巳智子
(72)【発明者】
【氏名】島崎 数喜
(72)【発明者】
【氏名】友田 稔
【テーマコード(参考)】
3L260
5G165
【Fターム(参考)】
3L260AB03
3L260BA53
3L260CB77
3L260DA10
3L260FC31
5G165BB02
5G165DA02
5G165EA07
5G165GA01
5G165GA03
5G165GA04
5G165HA01
5G165HA16
5G165LA01
(57)【要約】
【課題】対象機器に予備系の電力を簡便に供給可能な空調システムを提供する。
【解決手段】通信線(W)と冷媒が流通する連絡配管(12)とにより互いに接続される室内ユニット(30)と室外ユニット(20)とを備え、通信線(W)に電圧を重畳することで電力供給を室内ユニット(30)と室外ユニット(20)との間で行う空調システムであって、通信線(W)を介して所定の装置(70)に接続される給電線(80)と、給電線(80)から所定の装置(70)への給電を制御する制御部(C4)を有し、制御部(C4)は、第1条件が成立すると前記通信線(W)から前記給電線(80)を介して前記所定の装置(70)に給電する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信線(W)と冷媒が流通する連絡配管(12)とにより互いに接続される室内ユニット(30)と室外ユニット(20)とを備え、前記通信線(W)に電圧を重畳することで電力供給を前記室内ユニット(30)と前記室外ユニット(20)との間で行う空調システムであって、
前記通信線(W)を介して所定の装置(70)に接続される給電線(80)と、
前記給電線(80)から前記所定の装置(70)への給電を制御する制御部(C4)とを有し、
前記制御部(C4)は、第1条件が成立すると前記通信線(W)から前記給電線(80)を介して前記所定の装置(70)に給電する
空調システム。
【請求項2】
前記所定の装置(70)は、前記室内ユニット(30)に給電する第1電源(E1)とは電源の系統が異なる第2電源(E2)から給電され、
前記第1条件は、前記第2電源(E2)の前記所定の装置(70)への給電が停止または給電電圧が所定値以下に低下したときに成立する
請求項1に記載の空調システム。
【請求項3】
前記通信線(W)から供給される電気を蓄えると共に、蓄えた電気を前記所定の装置(70)に供給する蓄電部(91)をさらに備える
請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項4】
前記制御部(C4)は、前記所定の装置(70)への給電、前記蓄電部(91)への給電、または、前記蓄電部(91)から前記所定の装置(70)への給電を制御する
請求項3に記載の空調システム。
【請求項5】
前記所定の装置(70)は、前記室内ユニット(30)が空調する対象空間(S)内に配置される通信端末(R)と通信する通信装置(70)である
請求項1または2に記載の空調システム。
【請求項6】
前記室内ユニット(30)は、第1対象空間(S1)を空調する第1室内ユニット(30A)と、第2対象空間(S2)を空調する第2室内ユニット(30B)とを有し、
前記通信装置(70)は、前記第1対象空間(S1)に配置される前記通信端末(R)と通信する第1アンテナ(71A)と、前記第2対象空間(S2)に配置される前記通信端末(R)と通信する第2アンテナ(71B)とを有する
請求項5に記載の空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、空調システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載の分電盤は、電気室から各負荷機器までの低圧ケーブルは1系統の敷設で2重系の電源配線を可能とする。これにより常用系および予備系に同時に瞬停が発生しても瞬停が回避される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、室外ユニットおよび室内ユニットを備える空気調和装置において、室外ユニットおよび室内ユニットはそれぞれ商用電源に接続される。例えば、室内ユニットと同じ空間に配置される所定の装置に接続される常用系の電源とは別に予備系の電源を接続する場合、室内ユニットの商用電源の電圧と所定の装置に接続される常用系の電源の電圧が異なる場合、室内ユニットの商用電源を所定の装置の予備系の電源に利用することができない。従って、予備系の電源を確保するためには別系統の電源線を敷設する必要があり、所定の装置に対して予備系の電力供給が複雑化する。
【0005】
本開示の目的は、対象機器に予備系の電力を簡便に供給可能な空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、
通信線(W)と冷媒が流通する連絡配管(12)とにより互いに接続される室内ユニット(30)と室外ユニット(20)とを備え、前記通信線(W)に電圧を重畳することで電力供給を前記室内ユニット(30)と前記室外ユニット(20)との間で行う空調システムであって、
前記通信線(W)を介して所定の装置(70)に接続される給電線(80)と、
前記給電線(80)から前記所定の装置(70)への給電を制御する制御部(C4)とを有し、
前記制御部(C4)は、第1条件が成立すると前記通信線(W)から前記給電線(80)を介して前記所定の装置(70)に給電する空調システムである。
【0007】
第1の態様では、通信線(W)を介して所定の装置(70)に給電できる。このことにより、所定の装置(70)専用の予備系の電源を設ける必要がないため、簡便に予備系統の電力を供給できる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、
前記所定の装置(70)は、前記室内ユニット(30)に給電する第1電源(E1)とは電源の系統が異なる第2電源(E2)から給電され、
前記第1条件は、前記第2電源(E2)の前記所定の装置(70)への給電が停止または給電電圧が所定値以下に低下したときに成立する。
【0009】
第2の態様では、所定の装置(70)は、第2電源(E2)から電力供給が途絶えたり供給電力が低下すると、通信線(W)から給電される。これにより、所定の装置(70)が電力供給不足に陥ることが抑制され、所定の装置(70)は安定して稼働できる。
【0010】
第3の態様は、第1または第2の態様において、
前記通信線(W)から供給される電力を蓄電すると共に、蓄電した電力を前記所定の装置(70)に供給する蓄電部(91)をさらに備える。
【0011】
第3の態様では、通信線(W)から供給される電力に加え蓄電部(91)から電力供給されることで、通信線(W)のみから供給される電力以上の電力を所定時間給電できる
第4の態様では、第3の態様において、
前記制御部(C4)は、前記所定の装置(70)への給電、前記蓄電部(91)への給電、または、前記蓄電部(91)から前記所定の装置(70)への給電を制御する。
【0012】
第4の態様では、室内ユニット(30)よりも所定の装置(70)に優先して給電できる。
【0013】
第5の態様では、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、
前記所定の装置(70)は、前記室内ユニット(30)が空調する対象空間(S)内に配置される通信端末(R)と通信する通信装置(70)である。
【0014】
第5の態様では、5G中継機などの通信装置(70)に対して、新たな予備系統の電源線を用いることなく給電できる。これにより、通信装置(70)に安定して電力を供給できる。
【0015】
第6の態様は、第5の態様において、
前記室内ユニット(30)は、第1対象空間(S1)を空調する第1室内ユニット(30A)と、第2対象空間(S2)を空調する第2室内ユニット(30B)とを有し、
前記通信装置(70)は、前記第1対象空間(S1)に配置される前記通信端末(R)と送受信する第1アンテナ(71A)と、前記第2対象空間(S2)に配置される前記通信端末(R)と送受信する第2アンテナ(71B)とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本実施形態の空調システムの構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、無線通信システムの構成を示す概略図である。
【
図3】
図3は、空調システムの各種の機器の関係を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、第1給電モードの動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、第2給電モードの動作を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第3給電モードの動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第4給電モードの動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。また、以下に説明する各実施形態、変形例、その他の例等の各構成は、本発明を実施可能な範囲において、組み合わせたり、一部を置換したりできる。
【0018】
(1)空調システムの構成
図1及び
図2に示すように、本実施形態の空調システム(10)は、1つの室外ユニット(20)と、複数の室内ユニット(30)とを備える。空調システム(10)は、例えばビル用マルチエアコンとして使用される。複数の室内ユニット(30)は、第1室内ユニット(30A)および第2室内ユニット(30B)を含む。第1室内ユニット(30A)は、第1室内空間(S1)に配置され、第2室内ユニット(30B)は第2室内空間(S2)に配置される。第1室内ユニット(30A)は、第1室内空間(S1)を空調する。第2室内ユニット(30B)は、第2室内空間(S2)を空調する。複数の室内ユニット(30)はいずれも同じ構成である。第1室内空間(S1)および第2室内空間(S2)はそれぞれ、対象空間(S)の一例である。
【0019】
空調システム(10)は、冷媒回路(11)を備え、冷凍サイクル運転を行う。具体的に室外ユニット(20)と複数の室内ユニット(30)とは、連絡配管(12)により接続される。連絡配管(12)はガス連絡管(13)と液連絡管(14)である。
【0020】
(1-1)室外ユニット
室外ユニット(20)は屋外に配置される。
図3に示すように、室外ユニット(20)は、圧縮機(21)、室外ファン(23)、室外膨張弁(25)、第1制御部(C1)および室外熱交換器(図示省略)を備える。室外熱交換器、室外膨張弁(25)および圧縮機(21)は、冷媒回路(11)の一部を構成する熱源回路に接続される。圧縮機(21)は、冷媒を圧縮し、吐出する。圧縮機(21)は、インバータ装置により運転周波数(回転数)が可変に構成される。室外ファン(23)は、室外熱交換器に室外の空気を搬送する。室外膨張弁(25)は、熱源回路を流れる冷媒を減圧する。室外熱交換器は、室外の空気と冷媒とを熱交換する。
【0021】
第1制御部(C1)は、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。第1制御部(C1)は室外ユニット(20)の各種の機器を制御する。
【0022】
図2および
図3に示すように、室外ユニット(20)は、商用電源に接続される。室外ユニット(20)に給電する商用電源を室外商用電源(E0)とする。室外商用電源(E0)は、動力系統の電源であり、例えば三相210Vである。室外ユニット(20)は、第1受電回路(26)、インバータ(21a)および第1ファンインバータ(23a)を有する。第1受電回路(26)は、室外商用電源(E0)から電力を受けて、室外ユニット(20)の内部の機器に電力を供給する。インバータ(21a)は、圧縮機(21)を駆動させるための電力を圧縮機に供給する。第1ファンインバータ(23a)は、室外ファン(23)を作動させるためのインバータである。
【0023】
(1-2)室内ユニット
室内ユニット(30)は、屋内に配置される。本実施形態の室内ユニット(30)は天井裏に配置される天井カセットタイプである。室内ユニット(30)は、ケーシング(37)およびパネル(38)を有する。ケーシング(37)は、天井に設けられた開口を介して天井裏の空間に固定される。パネル(38)は、室内ユニット(30)の吸込口および吹出口に連通する開口を有する。パネル(38)は概ね矩形に形成される。パネル(38)は、天井の開口を覆うようにケーシング(37)に取り付けられる。パネル(38)がケーシング(37)に取り付けられた状態において、パネル(38)の裏面の4隅には、後述するアンテナ(71A,71B)を設置するスペースが設けられている。パネル(38)の裏面は、天井裏の空間に面する面である。
【0024】
図3に示すように、室内ユニット(30)は、室内膨張弁(31)、室内ファン(33)、室内熱交換器(図示省略)、および第2制御部(C2)を有する。室内熱交換器および室内膨張弁(31)は、冷媒回路(11)の一部を構成する利用回路に接続される。室内熱交換器は、室内の空気と冷媒とを熱交換する。室内膨張弁(31)は、利用回路を流れる冷媒を減圧する。室内ファン(33)は、室内熱交換器に室内の空気を搬送する。
【0025】
第2制御部(C2)は、第1制御部(C1)と同様に、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。第2制御部(C2)は室内ユニット(30)の各種の機器を制御する。
【0026】
図2および
図3に示すように、室内ユニット(30)は、商用電源に接続される。室内ユニット(30)に給電する商用電源を室内商用電源(E1)とする。室内商用電源(E1)は、動力系統の電源であり、例えば三相210Vである。各室内ユニット(30)は、第2受電回路(34)および第2ファンインバータ(33a)を有する。第2受電回路(34)は、室内商用電源(E1)から電力を受けて、室内ユニット(30)の内部の機器に電力を供給する。室内商用電源(E1)および室外商用電源(E0)は、異なる電源系統である。室内商用電源(E1)は、第1電源(E1)の一例である。第2ファンインバータ(33a)は、室内ファンを作動させるインバータである。
【0027】
(1-3)通信線
空調システム(10)は、室外ユニット(20)と複数の室内ユニット(30)とを接続する通信線(W)を有する。通信線(W)は、室外ユニット(20)と各室内ユニット(30)との間、および複数の室内ユニット(30)間で通信させる。また、通信線(W)には、所定の電圧が重畳される。すなわち、空調システム(10)は、通信線(W)に電圧を重畳することで電力供給を室内ユニット(30)と室外ユニット(20)との間で行う。
【0028】
通信線(W)は、例えばPLC(Power Line Communication)である。通信線(W)から供給される電力は、各室内ユニット(30)の予備系統の電力として用いられる。具体的に、室内商用電源(E1)からの室内ユニット(30)へ給電に不具合が生じたとき、通信線(W)から室内ユニット(30)に給電できるように、第1制御部(C1)および第2制御部(C2)は互いに通信する。なお、本実施形態において「給電の制御」は、給電の開始および停止の他に、供給される電圧を制御する意味を含む場合がある。
【0029】
(2)無線通信システム
図2に示すように、本実施形態の空調システム(10)は、無線通信システム(9)を備えるビルなどの建物に用いられる。無線通信システム(9)は、1つの通信装置(70)と複数のアンテナ(71A,71B)とを有する。通信装置(70)は、所定の装置の一例である。通信装置(70)は、室内ユニット(30)が空調する室内空間(S)内に配置される通信端末(R)と通信する。通信端末(R)は、例えばスマートフォンやパソコンである。通信装置(70)は、例えば5G基地局である。通信装置(70)は、有線または無線によりサーバ(7)に接続される。サーバ(7)はインターネットに接続している。通信装置(70)は、所定の配線(L)により各アンテナ(71A,71B)に接続される。
【0030】
図2および
図3に示すように、通信装置(70)は、商用電源に接続される。通信装置(70)に給電する商用電源を機器用商用電源(E2)とする。機器用商用電源(E2)は、例えば電灯系統の電源であり、例えば単相105Vである。機器用商用電源(E2)は、第2電源(E2)の一例である。通信装置(70)は、第3受電回路(73)、所定の通信回路(72)、および第3制御部(C3)を備える。
【0031】
第3受電回路(73)は、機器用商用電源(E2)から電力を受けて通信装置(70)の内部の機器に電力を供給する。機器用商用電源(E2)は、室内商用電源(E1)と同じ空間または室内商用電源(E1)の近傍に配置される。室内商用電源(E1)と機器用商用電源(E2)との電源の系統は異なる。
【0032】
通信回路(72)は、通信端末(R)から受信した所定の情報をサーバに送信したり、サーバから受信した所定の情報を、アンテナ(71A,71B)を介して通信端末(R)に送信したりする。
【0033】
第3制御部(C3)は、通信装置(70)の各種の機器を制御する。第3制御部(C3)は、第1制御部(C1)と同様に、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。
【0034】
図2に示すように、アンテナ(71A,71B)は、各室内空間(S)に1つ以上配置される。アンテナ(71A,71B)は室内空間(S)の通信端末(R)に対して電波を送受信する。アンテナ(71A,71B)は、室内ユニット(30)に設けられる。本実施形態では、第1アンテナ(71A)は、第1室内ユニット(30A)に設けられる。第2アンテナ(71B)は第2室内ユニット(30B)に設けられる。第1アンテナ(71A)は、第1室内空間(S1)に配置される通信端末(R)と通信する。第2アンテナ(71B)は、第2室内空間(S2)に配置される通信端末と通信する。各アンテナ(71A,71B)は、室内ユニット(30)のパネル(38)に配置される。アンテナ(71A,71B)は、パネル(38)裏面の4隅のいずれかに配置される。
【0035】
(3)通信装置の常用系統から電力供給が停止したときの課題
本実施形態の通信装置(70)のように電力供給が常時必要な機器には、常用系統の電源線と予備系統の電源線とが接続される場合がある。なんらかの原因により常用系統の電源線からの機器への給電が途絶えても、予備系統の電源線に切り換えることで継続して機器へ給電できる。
【0036】
ここで、本実施形態の無線通信システム(9)のように室内ユニットが配置される天井裏等の空間に通信装置(70)を設ける場合において、通信装置用の予備系統の電源として室内ユニット(30)に給電する商用電源を利用することが考えられる。しかし、室内ユニット(30)の商用電源は動力系統の電源であるのに対し、通信装置(70)の商用電源は電灯系統であり、これらの商用電源の電圧は異なる。そのため、通信装置(70)の予備系統の電源として室内ユニット(30)の商用電源を用いることはできない。従って、通信装置(70)の予備系統の電源線を天井裏の空間に敷設する必要があり、このような電源線を設けるコストと手間がかかる。
【0037】
これに対して、本実施形態の空調システム(10)は給電機構(K)を備える。給電機構(K)は、室外ユニット(20)と室内ユニット(30)との間で通信する通信線(W)に電圧を重畳させていることを利用して、通信装置(70)に予備系統の電力を供給する。以下、給電機構(K)について具体的に説明する。
【0038】
(4)給電機構
図2および
図7に示すように給電機構(K)は、給電線(80)および給電ユニット(90)を備える。給電機構(K)は、天井裏の空間に配置される。
【0039】
(4-1)給電線
給電線(80)は、通信線(W)を介して通信装置(70)に接続される。給電線(80)は、通信線(W)から通信装置(70)に電力を供給する電源線である。具体的に、給電線(80)の一端は、通信線(W)に接続し、他端は通信装置(70)に接続される。別の言い方をすると、給電線(80)は通信線(W)の一部が分岐して通信装置(70)に接続される。
【0040】
(4-2)給電ユニット
給電ユニット(90)は、給電線(80)に接続される。給電ユニット(90)は、蓄電部(91)、給電制御部(C4)、所定の電気回路(92)を備える。
【0041】
蓄電部(91)は、通信線(W)から供給される電気を蓄えると共に、蓄えた電気を通信装置(70)に供給する。例えば、蓄電部(91)はリチウムイオン電池である。蓄電部(91)は、蓄電素子と所定の充電回路を備えてもよい。
【0042】
給電制御部(C4)は、給電ユニット(90)の各種の機器を制御する。給電制御部(C4)は、第1制御部(C1)と同様に、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。給電制御部(C4)は、給電線(80)を介して通信線(W)からの通信装置(70)への給電、蓄電部(91)への給電、および蓄電部(91)から通信装置(70)への給電を制御する。給電制御部(C4)は、制御部の一例である。給電制御部(C4)は、第1制御部(C1)および各第2制御部(C2)と相互に通信する。
【0043】
所定の電気回路(92)は、例えばDC/DC変換回路を含む。電気回路(92)は、通信線(W)から供給される電圧を所定の電圧に変換する。これにより、通信装置(70)に給電できる。
【0044】
(5)給電機構の動作
給電機構(K)は、第1給電モードないし第4給電モードを実行する。各給電モードについて以下説明する。
【0045】
(5-1)第1給電モード
第1給電モードは、通信線(W)から給電線(80)を介して通信装置(70)に給電するモードである。以下、
図4を参照しながら第1給電モードについて説明する。
【0046】
ステップS11では、給電制御部(C4)は、第1条件が成立したか否かを判定する。第1条件は、機器用商用電源(E2)から通信装置(70)への給電の停止である。具体的に、給電制御部(C4)は、機器用商用電源(E2)からの通信装置(70)へ給電の停止を示す第1信号を第3制御部(C3)から受信したとき(ステップS11のYES)、ステップS12が実行される。給電制御部(C4)が第1信号を受信しないとき(ステップS11のNO)、再度ステップS11が実行される。
【0047】
ステップS12では、給電制御部(C4)は、通信線(W)から給電線(80)を介して通信装置(70)へ給電を実行する。これにより、通信線(W)から給電線(80)を介して通信装置(70)へ給電が開始される。
【0048】
ステップS13では、給電制御部(C4)は、機器用商用電源(E2)からの通信装置(70)への電力供給が回復したか判定する。本実施形態では、通信装置(70)の第3制御部(C3)が、機器用商用電源(E2)からの電力供給が復旧した旨の第2信号を給電制御部(C4)に送信する。給電制御部(C4)が第2信号を受信したと判定した場合(ステップS13のYES)、ステップS14が実行される。給電制御部(C4)が第2信号を受信しないと判定した場合(ステップS13のNO)、再びステップS13が実行される。
【0049】
ステップS14では、給電制御部(C4)は、通信線(W)からの通信装置(70)への電力供給を停止する。
【0050】
ステップS15では、給電制御部(C4)は、通信線(W)からの通信装置(70)への電力供給が停止した旨を示す信号を第3制御部(C3)に送信する。この信号を受信した第3制御部(C3)は、機器用商用電源(E2)から通信装置(70)の給電を再開する。
【0051】
(5-2)第2給電モード
第2給電モードは、給電制御部(C4)の蓄電部(91)の電気を蓄えるモードである。
図5を参照しながら第2給電モードについて説明する。
【0052】
ステップS21では、給電制御部(C4)は、蓄電部(91)の蓄電残量が所定値以下であるか否か判定する。蓄電残量が所定値以下と判定された場合(ステップS21のYES)、ステップS22が実行される。蓄電残量が所定値以下でないと判定された場合(ステップS21のNO)、ステップS21が再び実行される。
【0053】
ステップS22では、給電制御部(C4)は、給電線(80)を介して蓄電部(91)へ給電を開始する。
【0054】
ステップS23では、給電制御部(C4)は、蓄電部(91)の蓄電量が蓄電許容量に達したか否かを判定する。蓄電許容量に達したと判定された場合(ステップS23のYES)、ステップS24が実行される。蓄電許容量に達していないと判定された場合(ステップS24のNO)、ステップS23が再び実行される。
【0055】
ステップS24では、給電制御部(C4)は、蓄電部(91)への給電を停止する。
【0056】
(5-3)第3給電モード
第3給電モードは、給電制御部(C4)が蓄電部(91)から通信装置(70)に給電するモードである。
図6を参照しながら第3給電モードについて説明する。
【0057】
ステップS31では、給電制御部(C4)は、第1条件が成立したか否かを判定する。第1条件が成立すると判定されたとき(ステップS31のYES)、ステップS32が実行される。第1条件が成立しないと判定されたとき、再度ステップS31が実行される。
【0058】
ステップS32では、給電制御部(C4)は、第3制御部(C3)から要求される第1電圧が所定値以上であるか否かを判定する。第1電圧が所定値以上であると判定された場合(ステップS32のYES)、ステップS33が実行される。第1電圧が所定値以上でないと判定された場合(ステップS32のNO)、ステップS35が実行される。
【0059】
ステップS33では、給電制御部(C4)は、通信線(W)から給電線(80)を介して通信装置(70)への給電を実行すると同時に、蓄電部(91)からの通信装置(70)への給電を実行する。これにより、通信装置(70)には、通信線(W)からの給電の電圧を上回る電圧が供給される。
【0060】
ステップS34では、給電制御部(C4)は、所定時間が経過したか否か判定する。所定時間が経過したと判定された場合(ステップS34のYES)、ステップS35が実行される。所定の時間が経過していないと判定された場合(ステップS35のNO)、ステップS34が再び実行される。
【0061】
ステップS35では、給電制御部(C4)は、蓄電部(91)から通信装置(70)への給電を停止し、通信線(W)からの通信装置(70)への給電を継続する。その後ステップS37が実行される。
【0062】
ステップS36では、給電制御部(C4)は、通信線(W)からの通信装置(70)の給電を実行する。
【0063】
ステップS37では、給電制御部(C4)は、機器用商用電源(E2)からの通信装置(70)への給電が復旧したか判定する。本実施形態では、通信装置(70)の第3制御部(C3)が機器用商用電源(E2)からの電力供給が復旧した旨の第2信号を給電制御部(C4)に送信する。給電制御部(C4)が第3制御部(C3)から第2信号を受信したと判定した場合(ステップS37のYES)、ステップS38が実行される。給電制御部(C4)が第3制御部(C3)から第1信号を受信しないと判定した場合(ステップS37のNO)、再びステップS37が実行される。
【0064】
ステップS38では、給電制御部(C4)は、通信線(W)からの通信装置(70)への電力供給を停止する。
【0065】
ステップS39では、給電制御部(C4)は、通信線(W)からの通信装置(70)への電力供給が停止した旨を示す信号を第3制御部(C3)に送信する。この信号を受信した第3制御部(C3)は、機器用商用電源(E2)からの通信装置(70)への給電を再開する。
【0066】
(5-4)第4給電モード
第4給電モードは、複数の室内ユニット(30)が通信線(W)から給電を受けている状態で、通信装置(70)が使用する電力が不足する場合に実行される。
図7を用いて、第4給電モードの一例について説明する。
【0067】
ステップS41では、給電制御部(C4)は、通信装置(70)の使用している電力が不足しているか判定する。具体的に、給電制御部(C4)は、第3制御部(C3)から通信装置(70)の電力不足量を示す第3信号を受信したか否かを判定する。給電制御部(C4)が第3信号を受信したと判定した場合(ステップS41のYES)、ステップS42が実行される。給電制御部(C4)が第3信号を受信していないと判定した場合(ステップS41のNO)、本制御はリターンする。
【0068】
ステップS42では、給電制御部(C4)は、第3信号に基づいて通信線(W)からの給電を停止させる室内ユニット(30)の台数を決定する。具体的に、室内ユニット(30)への電力を停止するとその分の電力を通信装置(70)へ供給できる。そのため、給電制御部(C4)は、通信装置(70)が不足している電力量に基づいて、給電を停止する室内ユニット(30)の台数を決定する。
【0069】
ステップS43では、給電制御部(C4)は、通信線(W)から給電を停止する室内ユニット(30)を特定する。例えば、給電制御部(C4)と各第2制御部(C2)との間で通信し、給電の優先順位の低い順に給電を停止させる室内ユニット(30)を決定する。
【0070】
ステップS44では、給電制御部(C4)は、ステップS43で決定された室内ユニット(30)の第2制御部(C2)に給電を停止する旨の信号を送信する。該信号を受信した第2制御部(C2)は自身の室内ユニット(30)への給電を停止させる。これにより、優先して通信装置(70)へ給電される電力を増大できる。
【0071】
(6)実施形態の特徴
(6-1)特徴1
本実施形態の空調システム(10)は、室内ユニット(30)と室外ユニット(20)との間とを接続する通信線(W)を有する。空調システム(10)は、通信線(W)に電圧を重畳することで電力供給を室内ユニット(30)と室外ユニット(20)との間で行う。空調システム(10)は、通信線(W)を介して通信装置(70)に接続される給電線(80)と、給電線(80)から通信装置(70)への給電を制御する給電制御部(C4)を備え、給電制御部(C4)は、第1条件が成立すると通信線(W)から給電線(80)を介して通信装置(70)に給電する。
【0072】
本実施形態によると、室外ユニット(20)と室内ユニット(30)とをつなぐ通信線(W)から通信装置(70)に給電できるため、該通信線(W)を通信装置(70)の予備系統の電源線として利用できる。
【0073】
(6-2)特徴2
本実施形態の空調システム(10)では、第1条件は、機器用商用電源(E2)(第2電源)による通信装置(70)への給電が停止したときに成立する。これにより、通信装置(70)は、機器用商用電源(E2)から電力供給が途絶えると通信線(W)から給電されるため、通信装置(70)が電力供給不足に陥ることが抑制され、通信装置(70)は安定して稼働できる。
【0074】
(6-3)特徴3
本実施形態の空調システム(10)では、通信線(W)から供給される電気を蓄えると共に、蓄えた電気を通信装置(70)に供給する蓄電部(91)をさらに備える。これにより、通信装置(70)は、通信線(W)からの給電に加え蓄電部(91)から給電されるため、通信装置(70)に通信線(W)から供給される電力以上の電力(電圧)を供給できる。このように、例えば通信装置(70)が瞬間的に使用する電力(電圧)が比較的大きくなっても、通信装置(70)に給電することができる。
【0075】
(6-4)特徴4
本実施形態の空調システム(10)では、給電制御部(C4)は、通信装置(70)への給電、蓄電部(91)への給電、および、蓄電部(91)から通信装置(70)へ給電を制御する。室内ユニット(30)よりも所定の装置(70)に優先して電力を供給できる。
【0076】
(7)その他の実施形態
上記実施形態は、以下のように構成されてもよい。
【0077】
第1条件は、機器用商用電源(E2)から通信装置(70)への給電電圧が所定値以下に低下したときに成立するとしてもよい。所定値は、
給電機構(K)が適用される装置は、通信装置に限られない。給電機構(K)が適用される装置は、室内ユニット(30)と同じ空間または室内ユニット(30)に近接して配置される装置であって、室内商用電源(E1)と異なる電圧であればよい。
【0078】
給電ユニット(90)には、通信線(W)からの通信信号を除去する回路を有していてもよい。通信線(W)からの通信信号は独立して通信装置(70)に送信されてもよい。
【0079】
給電制御部(C4)は、第1制御部(C1)、第2制御部(C2)または第3制御部(C3)との通信により、通信装置(70)と室内ユニット(30)とのどちらを優先して給電するか決定してもよい。
【0080】
給電制御部(C4)は、通信装置(70)からの電圧信号に基づいて、給電ユニット(90)から通信装置(70)へ供給される電圧を決定してもよい。
【0081】
給電制御部(C4)は、通信装置(70)の機器用商用電源(E2)からの給電状態を監視し、給電電圧が所定値を下回ったとき、給電ユニット(90)からの給電を開始してもよい。
【0082】
給電制御部(C4)は、通信線(W)を介して通信装置(70)へ給電が開始されたとき、第1制御部(C1)または第2制御部(C2)に対して、通信線(W)を介して室内ユニット(30)への給電を抑えるように指示をしてもよい。支持を受けた第1制御部(C1)または第2制御部(C2)は、室内ユニット(30)の通信線(W)を介した給電の電圧を低下させる。
【0083】
給電ユニット(90)から出力される電圧を決定するための切換部(図示省略)を有していてもよい。また、切換部は外部の装置から遠隔して操作されてもよい。
【0084】
第1制御部(C1)、各第2制御部(C2)、第3制御部(C3)、及び給電制御部(C4)は互いに所定の情報を送受信できるように構成されていてもよい。
【0085】
空調システム(10)は、集中制御装置(図示省略)を備えていてもよい。集中制御装置は、有線または無線により第1制御部(C1)または各第2制御部(C2)と通信可能に接続される。集中制御装置は、室外ユニット(20)または室内ユニット(30)の運転を制御する。集中制御装置は、第1制御部(C1)または各第2制御部(C2)を介して、または、第3制御部(C3)または給電制御部(C4)と直接通信することで、上記実施形態における通信線(W)からの通信装置(70)への給電を制御してもよい。集中制御装置は、ビル内に設けられる各種の機器の管理または運転を制御する集中管理装置に設けられてもよいし、BEMS(Building Energy Management System)に設けられてもよい。または、ビルから離れた場所にある所定の装置に設けられてもよい。
【0086】
空調システム(10)は、所定の警報装置(図示省略)を備えていてもよい。例えば、給電制御部(C4)が、給電ユニット(90)による通信装置(70)への給電や、蓄電部(91)への給電が正常に行われていないと判断したとき、給電制御部(C4)は、警報装置が発報するように制御する。これにより、ユーザは、通信装置(70)や蓄電部(91)への給電に不具合が生じていることを把握できる。
【0087】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。以上に述べた「第1」、「第2」、…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、本開示は、空調システムについて有用である。
【符号の説明】
【0089】
10 空調システム
12 連絡配管
20 室外ユニット
30 室内ユニット
30A 第1室内ユニット
30B 第2室内ユニット
70 通信装置(所定の装置)
71A 第1アンテナ
71B 第2アンテナ
80 給電線
91 蓄電部
C4 給電制御部(制御部)
E1 室内商用電源(第1電源)
E2 機器用商用電源(第2電源)
R 通信端末
S 対象空間(室内空間)
S1 第1対象空間(第1室内空間)
S2 第2対象空間(第2室内空間)
W 通信線