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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140708
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】気液溶解ノズル
(51)【国際特許分類】
   B01F 21/00 20220101AFI20241003BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20241003BHJP
   B01F 23/2326 20220101ALI20241003BHJP
   B01F 23/2373 20220101ALI20241003BHJP
   B01F 35/52 20220101ALI20241003BHJP
   B01F 35/71 20220101ALI20241003BHJP
   B01F 35/75 20220101ALI20241003BHJP
   B05B 1/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01F21/00
B01F25/10
B01F23/2326
B01F23/2373
B01F35/52
B01F35/71
B01F35/75
B05B1/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052007
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】517205435
【氏名又は名称】穂栄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】手柴 一郎
(72)【発明者】
【氏名】田仲 康矢
(72)【発明者】
【氏名】宮田 雅文
(72)【発明者】
【氏名】中村 圭志
【テーマコード(参考)】
4F033
4G035
4G037
【Fターム(参考)】
4F033BA01
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033KA03
4F033LA09
4F033NA01
4G035AA01
4G035AB20
4G035AC44
4G035AE13
4G037AA01
4G037AA02
4G037AA11
4G037EA01
(57)【要約】
【課題】液体に対する気体の溶解効率を向上させることができる気液溶解ノズルを提供する。
【解決手段】気液溶解ノズル100は、外部から液体導入経路1を経由して導入する液体Rによって液体旋回流F1を発生させる第一旋回室10と、第一旋回室10内の液体旋回流F1を流入させ外部から気体導入経路50を経由して導入した気体Gと溶出気体Yを集積させ気体渦流F3と旋回水流F2を発生させる第二旋回室20と、第二旋回室20内の旋回水流F2と気体渦流F3を流入させて攪拌混合する気液混合室30と、気液混合室30内の微細気泡MB混じりの気液混合流体F4を気液溶解ノズル100の外部へ排出する排出口40と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から液体導入経路を経由して導入する液体によって液体旋回流を発生させる第一旋回室と、前記第一旋回室内の液体旋回流を流入させ外部から導入した気体と混合させて微細気泡混じりの気液旋回流を発生させる第二旋回室と、前記第二旋回室内の気液旋回流を流入させて乱流化する気液混合室と、前記気液混合室内の微細気泡混じりの気液混合流体を外部へ排出する排出口と、を備え、
前記第一旋回室が、両方の端部に隔壁を有する第一筒状体と、一方の前記隔壁を貫通して前記第一筒状体内に向かって挿入された筒状の液体導入経路と、前記液体導入経路の軸心と捩れの位置をなす方向に沿って前記液体導入経路の周壁に開設された液体流出孔と、を備え、
前記第二旋回室が、両方の端部に隔壁を有し、少なくとも一方の端部側が前記第一筒状体内に収容保持された第二筒状体と、前記第一筒状体内に位置する前記第二筒状体の周壁にその軸心と捩れの位置をなす方向に沿って開設された液体導入孔と、前記第二筒状体内に気体を流入させる気体導入経路と、前記第二筒状体の他方の端部の隔壁に開設された貫通孔と、を備え、
前記第二旋回室と前記気液混合室との間に、上流側が前記貫通孔を経由して前記第二旋回室と連通する主流路と、前記主流路の下流側から分岐して前記気液混合室と連通する複数の分流路とを有する分流部材を設けた気液溶解ノズル。
【請求項2】
複数の前記分流路を、前記分流部材の周方向に沿って等間隔に設けた請求項1記載の気液溶解ノズル。
【請求項3】
前記気液混合室の排出側の隔壁の中心に前記排出口を設けた請求項1または2記載の気液溶解ノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気やその他の気体を小動力ポンプで高濃度に溶解させる気液溶解ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
気液溶解ノズルについては、従来、様々な形状、構造、機能を有するものが提案されているが、本発明に関連するものとして、例えば、特許文献1に記載された気液混合ノズルがある。
【0003】
特許文献1に記載された気液混合ノズルは、外部から液体導入経路を経由して導入する液体によって液体旋回流を発生させる第一旋回室と、第一旋回室内の液体旋回流を流入させ外部から気体導入経路を経由して導入した気体と混合させて微細気泡混じりの気液旋回流を発生させる第二旋回室と、第二旋回室内の気液旋回流を流入させて乱流化する気液混合室と、気液混合室内の微細気泡混じりの気液混合流体を外部へ排出するため気液混合室の底板に開設された複数の排出孔と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-202375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された気液混合ノズルは、液体に対する気体の溶解効率が高く、ナノメートルあるいはマイクロメートルレベルを超える大粒径の気泡の発生を抑制することができる点において優れているが、液体に対する気体の溶解効率の向上は引き続き重要な課題である。
【0006】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、液体に対する気体の溶解効率を向上させることができる気液溶解ノズルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る気液溶解ノズルは、外部から液体導入経路を経由して導入する液体によって液体旋回流を発生させる第一旋回室と、前記第一旋回室内の液体旋回流を流入させ外部から導入した気体と混合させて微細気泡混じりの気液旋回流を発生させる第二旋回室と、前記第二旋回室内の気液旋回流を流入させて乱流化する気液混合室と、前記気液混合室内の微細気泡混じりの気液混合流体を外部へ排出する排出口と、を備え、
前記第一旋回室が、両方の端部に隔壁を有する第一筒状体と、一方の前記隔壁を貫通して前記第一筒状体内に向かって挿入された筒状の液体導入経路と、前記液体導入経路の軸心と捩れの位置をなす方向に沿って前記液体導入経路の周壁に開設された液体流出孔と、を備え、
前記第二旋回室が、両方の端部に隔壁を有し、少なくとも一方の端部側が前記第一筒状体内に収容保持された第二筒状体と、前記第一筒状体内に位置する前記第二筒状体の周壁にその軸心と捩れの位置をなす方向に沿って開設された液体導入孔と、前記第二筒状体内に気体を流入させる気体導入経路と、前記第二筒状体の他方の端部の隔壁に開設された貫通孔と、を備え、
前記第二旋回室と前記気液混合室との間に、上流側が前記貫通孔を経由して前記第二旋回室と連通する主流路と、前記主流路の下流側から分岐して前記気液混合室と連通する複数の分流路とを有する分流部材を設けたことを特徴とする。
【0008】
前記気液溶解ノズルにおいては、複数の前記分流路を、前記分流部材の周方向に沿って等間隔に設けることができる。
【0009】
前記気液溶解ノズルにおいては、前記気液混合室の排出側の隔壁の中心に前記排出口を設けることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、液体に対する気体の溶解効率を向上させることができる気液溶解ノズルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態である気液溶解ノズルを示す一部省略斜視図である。
図2図1に示す気液溶解ノズルの一部省略垂直断面図である。
図3図2中のA-A線における一部省略断面図である。
図4図2中のB-B線における一部省略断面図である。
図5図2中のC-C線における一部省略断面図である。
図6図2中のD-D線における一部省略断面図である。
図7図1に示す気液溶解ノズルの使用例を示す一部省略垂直断面図である。
図8図1に示す気液溶解ノズルを使用したオゾン水発生装置を示す概略構造図である。
図9図1に示す気液溶解ノズルを使用した泡沫分離装置を示す一部省略垂直断面図である。
図10図1に示す気液溶解ノズルを使用した水生生物飼育システムを示す概略構造図である。
図11図10中の矢線E方向から見た一部省略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図11に基づいて、本発明の実施形態である気液溶解ノズル100並びに気液溶解ノズル100の使用例について説明する。
【0013】
初めに、図1図6に基づいて気液溶解ノズル100について説明する。図1図2に示すように、本実施形態の気液溶解ノズル100は、外部から液体導入経路1を経由して導入する液体Rによって液体旋回流F1を発生させる第一旋回室10と、第一旋回室10内の液体旋回流F1を流入させ旋回水流F2を発生させ外部から気体導入経路50を経由して導入した気体Gと溶出気体Yを集積させて気体渦流F3を発生させる第二旋回室20と、第二旋回室20内の旋回水流F2と気体渦流F3を流入させて混合攪拌する気液混合室30と、気液混合室30内の微細気泡MB混じりの気液混合流体F4を気液溶解ノズル100の外部へ排出する排出口40と、を備えている。
【0014】
図2図3に示すように、第一旋回室10は、両方の端部に隔壁11a,11bを有する円筒状の第一筒状体11と、一方の隔壁11aを貫通して第一筒状体11内に向かって挿入された円筒状の液体導入経路1と、液体導入経路1の軸心1cと捩れの位置をなす方向に沿って液体導入経路1の周壁に開設された複数の液体流出孔2と、を備えている。第一筒状体11内に位置する液体導入経路1の先端部は後述する第二筒状体21の隔壁21aに接合されている。
【0015】
円管状の気体導入経路50は、液体導入経路1の筒状周壁を貫通し、軸心1cと同軸をなすように液体導入経路1内に配管され、第二筒状体21の隔壁21aを貫通して第二旋回室20内に連通している。図3に示すように、液体導入経路1の液体流出孔2は軸心1cの周りに60度間隔で6個開設しているが、個数及び配列間隔は限定されない。
【0016】
図2図4に示すように、第二旋回室20は、一方の端部に隔壁21aを有し、他方の端部側が隔壁11bで閉塞された状態で第一筒状体11内に収容保持された円筒状の第二筒状体21と、第一筒状体11内に位置する第二筒状体21の周壁にその軸心21cと捩れの位置をなす方向に沿って開設された複数の液体導入孔22と、第二筒状体21内に気体Gを流入させるため隔壁21aの中心を貫通して第二旋回室20内に連通する気体導入経路50と、第二筒状体21の他方の端部を閉塞する隔壁11bの中心部(軸心21cを含む位置)に開設された円形の貫通孔23と、を備えている。図4に示すように、第二筒状体21の複数の液体導入孔22は、軸心21cの周りに60度間隔で6個開設しているが、個数及び配列間隔は限定されない。
【0017】
図2に示すように、第二旋回室20と気液混合室30との間には分流部材24が配置されている。図2図5図6に示すように、分流部材24は、その上流側が隔壁11bの貫通孔23を経由して第二旋回室20と連通する主流路25と、主流路25の下流側から分岐して気液混合室30と連通する複数の分流路26とを有している。本実施形態においては、三個の分流路26を、分流部材24の周方向に沿って(軸心1cを中心にして)120度間隔に設けているが、これに限定するものではない。また、気液混合室30の排出側の隔壁41の中心に排出口40を設けている。
【0018】
図1図2に示すように、気液溶解ノズル100においては、一本の円筒部材5内に、気体導入経路50を収容した液体導入経路1の下流側、第二筒状体21並びに分流部材24などを配置することにより、第一旋回室10、第二旋回室20並びに気液混合室30を区画形成しているが、前述した構造は一例であり、これに限定するものではない。
【0019】
次に、図7に基づいて、図1に示す気液溶解ノズル100の使用例について説明する。図7に示すように、水槽60内に貯留された水Wの中に気液溶解ノズル100が浸漬され、気液溶解ノズル100の液体導入経路1とポンプPとが送水管62で接続されている。また、ポンプPから水槽60内の水Wの中に向かって吸水管61が配管されている。気液溶解ノズル100の気体導入経路50の上流側(気体送給側)は水面W1から突出して水槽60外に配設されている。
【0020】
図7に示すように、気液溶解ノズル100及びポンプPなどをセットした後、ポンプPを稼働させると、水槽60内の水Wが吸水管61及び送水管62を経由して、気液溶解ノズル100の液体導入経路1へ供給される。これと並行して、気液溶解ノズル100に対し、気体導入経路50を経由して空気が供給される。この場合、気体導入経路50を経由して供給される空気は、後述するように、第二旋回室20(図2参照)の内部に生じる減圧に基づく吸気圧によって自吸される。
【0021】
液体導入経路1を経由して気液溶解ノズル100に供給された水Wは、図2に示すように、第二旋回室20の隔壁21aに向かって流動した後、複数の液体流出孔2から第一旋回室10内へ流出する。図3に示すように、複数の液体流出孔2はそれぞれ軸心1cに対して捩れの位置をなす方向(本実施形態では、前記方向の一つである液体導入経路1の周壁の接線方向)に沿って開設されているので、複数の液体流出孔2から流出する水流により、第一旋回室10内には液体旋回流F1が形成される。
【0022】
第一旋回室10内に形成された液体旋回流F1は、図2図4に示すように、第二旋回室20の周囲を旋回しながら、複数の液体導入孔22を通過して第二旋回室20内へ流入する。図4に示すように、複数の液体導入孔22はそれぞれ軸心21cに対して捩れの位置をなす方向(本実施形態では、前記方向の一つである第二筒状体21の周壁の接線方向)に沿って開設されているので、複数の液体導入孔22から流入する水流によって第二旋回室20内に軸心21c周りの旋回水流F2が発生する。
【0023】
第二旋回室20内に形成される旋回水流F2は軸心21cの周りを高速回転するので、旋回水流F2の中心付近(軸心21cを含む領域)には減圧空洞部Xが発生する。気体導入経路50を経由して第二旋回室20内へ導入された気体と溶出気体Yが減圧空洞部X内へ流入し、気体渦流F3が生成される。
【0024】
旋回水流F2と気体渦流F3は隔壁11bに向かって流動し、隔壁11bの中心にある貫通孔23に流入し、分流部材24の主流路25を通過した後、三方向の分流路26に分流し、それぞれの分流路26の下流開口部26a(図6参照)から気液混合室30内へ流入する。この時、旋回水流F2と気体渦流F3は気液接触により気体の溶解が促進される。さらにその気体渦流F3は下流開口部26aから気液混合室30内へ流入する際、下流開口部26a付近で旋回速度差が発生し、強制的に切断され微細気泡となる。旋回水流F2と気体渦F3とが大量の微細気泡MBを含む気液混合流体F4の乱流となって気液混合室30内で混合攪拌され、気体の溶解がさらに促進される。
【0025】
気液混合室30内において撹拌混合された気液混合流体F4は、図2に示すように、気液混合室30の排出側の隔壁41の中心に開設された排出口40を通過して、水槽60内の水W中へ排出され、水槽60内の水Wの中へ拡散流動して行く。これにより、水W中に大量の気体を溶解させることができる。
【0026】
本実施形態の気液溶解ノズル100においては、第二旋回室20(図2参照)の内部に生じる減圧に基づく吸気圧により、空気は気体導入経路50を経由して第二旋回室20内へ自吸されるが、必要に応じてエアポンプ(図示せず)を用いて圧送することもできる。
【0027】
本実施形態の気液溶解ノズル100においては、第一旋回室10内に液体旋回流F1を発生させ、これを第二旋回室20内へ流入させることにより、高速で回転する旋回水流F2を形成するので、大きな負圧を発生させ大量の気体を導入させることができ、気体の溶解効率が向上する。第一旋回室10内で発生させた液体旋回流F1を第二旋回室20内へ導入する方式としたことにより、第二旋回室20内の気液旋回水流F2の旋回流速を高めることができるため、従来に比べて小型のポンプPでも大量の気体を自吸することができる。
【0028】
また、気液溶解ノズル100においては、旋回水流F2と気体渦流F3とが三方向の分流路26に分流し流れ為、気液の接触時間が長く取れること、さらに、三方向に分流し、気液混合室30内で多方向から衝突攪拌させるので気液溶解を促進することができる。このように、気液溶解ノズル100を使用することにより、液体(例えば、水)に対する気体(例えば、空気)の溶解効率を大幅に高めることができる。
【0029】
図7に示すように、気液溶解ノズル100を用いて処理した水槽60中の水Wには大量の空気が溶解しているため、この水Wを植物栽培用水として使用すると、植物の生育状態を大幅に向上させることができる。例えば、気液溶解ノズル100を用いて処理した水Wをトマトやイチゴの水耕栽培用水として使用したり、サツマイモ苗を水Wに一定時間浸漬して培地に植えたりしたところ、いずれの場合においても、苗の活着がよく収穫量を大幅に高めることができた。
【0030】
なお、図7においては、気液溶解ノズル100を用いて水槽60中の水Wに空気を溶解させる場合について説明しているが、気液溶解ノズル100の用途を限定するものではないので、気液溶解ノズル100は、水W以外の液体に対し、空気以外の様々な気体を溶解させる分野においても使用することができる。
【0031】
本実施形態に係る気液溶解ノズル100は、外部から液体導入経路1を経由して導入する液体Rの圧力が0.02MPa程度の低圧であっても、気液接触時間が長いこと、旋回水流F2と気体渦流F3を多方向から噴出させ攪拌混合することにより溶解効率の低いオゾンガスなども小動力のポンプで液体に溶解させることができるので、利用分野が大きく広がる。
【0032】
次に、図8に基づいて、図1に示す気液溶解ノズル100を使用したオゾン水製造装置200について説明する。図8に示すように、オゾン水製造装置200は、オゾンガス発生部70、オゾンガス溶解部75、気液溶解ノズル100並びにポンプP1などを備えている。
【0033】
オゾンガス発生部70は、入水管71a、取水管71b及び排気口71cなどが設けられた貯水タンク71と、貯水タンク71内の底部に配置された散気盤73と、散気盤73に接続された排オゾンガス戻り管79と、貯水タンク71内の上方に配置された電解オゾン発生器72と、を備えている。入水管71a、取水管71bには開閉弁V1,V2が設けられている。倒立漏斗形状をした貯水タンク71の頂上部分の排気口71cにはオゾンガス供給管78が接続され、オゾンガス供給管78の下流側は気液溶解ノズル100の気体導入経路50に接続されている。
【0034】
オゾンガス溶解部75は、入水管76a、水循環用管76b及び排気口76cなどが設けられた貯水タンク76と、貯水タンク76内において入水管76a及び水循環用管76b寄りの部分に立設された気泡分離板77と、を備えている。入水管76aには開閉弁V3が設けられ、水循環用管76bから分岐した取水管76dには開閉弁V4が設けられている。水循環用管76bの取水管76dより下流側にポンプP1が配置され、ポンプP1より下流側の水循環用管76bの下流部分は気液溶解ノズル100の液体導入経路1に接続されている。
【0035】
倒立漏斗形状をした貯水タンク76の頂上部分の排気口76cには排オゾンガス戻り管79が接続され、排オゾンガス戻り管79の下流側はオゾンガス発生部70の貯水タンク71の散気盤73に接続されている。
【0036】
次に、図8に基づいてオゾン水製造装置200の使い方、作用効果などについて説明する。初めに、入水管71aの開閉弁V1を開いて貯水タンク71内へ給水し、入水管76aの開閉弁V3を開いて貯水タンク76内へ給水する。貯水タンク71,76内にそれぞれ所定量の水を貯留した後、エアポンプ74、電解オゾン発生器72及びポンプP1を稼働させると、電解オゾン発生器72よりオゾンガスOGが生成される。
【0037】
電解オゾン発生器72で生成されたオゾンガスOGは貯水タンク71内の水面から上方へ放散され、気液溶解ノズル100に負圧により吸引され、排気口71cを経由してオゾンガス供給管78内へ流入する。オゾンガス供給管78内へ流入したオゾンガスOGは矢線方向に沿ってオゾンガス供給管78内を流動して行き、気体導入経路50を経由して気液溶解ノズル100内へ流入する。電解オゾン発生器72で生成されたオゾンガスOGの一部は貯水タンク71内の水に溶解するため、貯水タンク71内には電解オゾン水EOWが形成される。貯水タンク71内に形成された電解オゾン水EOWは開閉弁V2を開いて取水管71bから取り出すことができる。
【0038】
一方、オゾンガス溶解部75の貯水タンク76内の水は、ポンプP1及び取水管76dより上流側の水循環用管76bから吸い込まれ、ポンプP1内を通過し、ポンプP1より下流側の水循環用管76b内を流動し、液体導入経路1を経由して気液溶解ノズル100内へ流入する。
【0039】
このように、気液溶解ノズル100に対し、水循環用管76bを経由して水を供給するとともにオゾンガス供給管78を経由してオゾンガスOGを供給すると、気液溶解ノズル100内には図2に示すような現象が発生し、この結果、気液溶解ノズル100の気液混合室30(図2参照)内には大量のオゾンガスが溶解したオゾン水OWが生成される。このオゾン水OWは微細気泡状の未溶解オゾンガスOGを含んだ状態で気液溶解ノズル100の排出口40(図2参照)から排出され、気液溶解ノズル100の排出口40に連通接続された水循環用管76b内を流動して貯水タンク76内の底部寄りの部分に送り込まれる。
【0040】
貯水タンク76内に送り込まれたオゾン水OWは貯水タンク76内を上昇して行くが、気泡分離板77の上縁部77aを越流することによって微細気泡状の未溶解オゾンガスOGが除去され、貯水タンク76内において入水管76aの基端部及び水循環用管76bの基端部と気泡分離板77との対向領域(オゾン水集約領域76e)に流入する。オゾン水集約領域76eに流入したオゾン水OWは水循環用管76bを経由して気液溶解ノズル100に循環供給されるが、水循環用管76bから分岐した取水管76dの開閉弁V4を開いて取り出すことができる。
【0041】
貯水タンク76内に生成するオゾン水OWは、オゾンガス発生部70にて発生させたオゾンガスOGを、気液溶解ノズル100を使用して水に溶解して形成したものであり、金属コンタミなどを含んでいないため、人体、動植物、魚介類などに対する安全性に優れている。また、オゾンガスを生成させるための酸素ガスボンベや、高圧ポンプが不要となり小型の装置が提供できる。さらに、高濃度オゾンガスの漏洩の危険性も解消される。
【0042】
一方、貯水タンク76内へ流入したオゾン水OWに含まれている微細気泡状の未溶解オゾンガスOGは、貯水タンク76内のオゾン水OW中を上昇して行き、水面から上方へ放散され、排気口76cを経由して排オゾンガス戻り管79内へ流入し、排オゾンガス戻り管79内を流動して行き、オゾンガス発生部70の貯水タンク71内の散気盤73に流入する。貯水タンク71内に流入した未溶解オゾンガスOGの一部は電解オゾン水EOW中に溶解するが、残余の部分は電解オゾン水EOW中を上昇して行き電解オゾン発生器72をバブリングし、水面から放散される。この仕組みにより電解オゾン発生器72から発生したオゾンガスOGは貯水タンク71の水に溶解することなく、水面へ放散されオゾンガスOGとして、オゾンガス供給管78を経由して気液溶解ノズル100へ効率的に供給される。
【0043】
次に、図9に基づいて、図1に示す気液溶解ノズル100を使用した泡沫分離装置300について説明する。図9に示すように、泡沫分離装置300は、有底円筒形状の収容タンク80と、収容タンク80内の底部80b付近に立設された有底円筒形状の誘導部材81と、誘導部材81内の底部81bに配置された気液溶解ノズル100と、収容タンク80内の頂上部80a寄りの部分に配置された倒立漏斗形状の集合部材82と、集合部材82の上端開口部82aに接続された排出管83と、収容タンク80の底部80b寄りの部分に接続された排水管84と、を備えている。誘導部材81の外径、長さはそれぞれ収容タンク80の内径、長さより小である。
【0044】
気液溶解ノズル100の液体導入経路1は収容タンク80の底部80b及び誘導部材81の底部81bを貫通して配設されている。収容タンク80の底部80bから突出した液体導入経路1に給水管85が接続されている。収容タンク80の頂上部80aから突出する排出管83の下流側は収容タンク80の下方に向かって(重力方向に沿って)配管され、排出管83の下端開口部83bの下方に回収容器86が配置されている。
【0045】
図9に示すように、浮遊物や沈殿物などの異物S混じりの水Wを給水管85及び液体導入経路1を経由して気液溶解ノズル100に供給するとともに気体導入経路50を経由して空気を送り込むと、気液溶解ノズル100内において図2に示す現象が生じ、気液溶解ノズル100の排出口40から収容タンク80の80aに向かって微細気泡MBと異物Sが混じり合った水Wが放出され、誘導部材81の内部をその上縁部81aに向かって上昇していく。
【0046】
この過程において、異物Sの外周に多数の微細気泡MBが付着することにより異物Sへの浮力が増大するので、異物Sは優先的に上昇していき、収容タンク80内の水Wの表面に到達する。水Wの水面まで到達した異物Sは、後から水W中を上昇してきた他の異物Sによって押し上げら、集合部材82の下面に沿って移動していき、上端開口部82aから排出管83内へ流れ込む。排出管83内に流れ込んだ異物Sは排出管83の内部を下流に向かって流動して行った後、下端開口部83bから排出され、回収容器86内に回収される。
【0047】
一方、誘導部材81の内部を異物S及び微細気泡MBとともに上昇して行った水Wは誘導部材81の上縁部81aを越流するが、このとき異物Sは誘導部材81内に残留して異物Sから水Wが分離される。そして、誘導部材81の上縁部81aを越流した水Wが誘導部材81の外周面と収容タンク80の内周面との間の隙間を底部80bに向かって下降していき、排水管84を経由して所定の場所へ供給される。
【0048】
このように、泡沫分離装置300を使用することにより、浮遊物や沈殿物などの異物Sが混じり合った水Wから異物Sを分離して回収容器86に回収するとともに、異物Sが除去され清浄化された水Wを得ることができる。
【0049】
次に、図10図11に基づいて、図1に示す気液溶解ノズル100及び図9に示す泡沫分離装置300を使用した水生生物飼育システム400について説明する。なお、水生生物飼育システム400において、図1に示す気液溶解ノズル100及び図9に示す泡沫分離装置300と共通する部分については、図10図11において図1図9中に記載した符号と同符号を付して説明を省略する。
【0050】
図10に示すように、水生生物飼育システム400は、飼育水槽90と、取水器具91と、泡沫分離装置300と、循環ポンプP2,P3と、泡沫分離装置300と、気液溶解ノズル100と、複数の第一濾過槽94並びに第二濾過槽95と、複数の散水ノズル93と、排水管96と、電磁弁98と、濾過水送水管97並びに開閉弁V5などを備えている。第一濾過槽94内には第一濾材98が収容され、第二濾過槽95内には第二濾材99が収容されている。飼育用水BWが貯留された飼育水槽90においては水生生物(例えば、クルマエビ、バナメイエビなど)を飼育することができる。
【0051】
第一濾材98は砕石、軽石、ボラ土などが好適であり、第一濾過槽94内では散水ノズル93から散布される水W中に含まれるアンモニアが亜硝酸を経て硝酸に変わる反応が進行する。第二濾材99はタオル生地、木綿、脱脂綿などのセルロースを含む有機物質が好適であり、第二濾過槽95内では散水ノズル93から散布される水W中に含まれる硝酸が水(H2О)と窒素(N2)に分解する反応が進行する。
【0052】
ポンプP1は、飼育用水BWに浸漬された取水器具91から飼育用水BWを吸い込み、給水管85を経由して泡沫分離装置300の液体導入経路1に供給する。水生生物が飼育されている飼育水槽90の底部には水生生物の排泄物や残餌などの異物Sが沈殿しているが、図11中に示す倒立U字形状の排水管96において間欠的に生じるサイホン作用により濾過水送水管97の下端の下端開口部97aから濾過水CWが間欠的に勢い良く噴出するため、この噴出流の撹拌作用により異物Sは取水器具91に向かって押し流され、飼育用水BWとともに取水器具91から吸い込まれ、給水管85を経由して泡沫分離装置300の液体導入経路1に供給される。また、泡沫分離装置300に対し、気体導入経路50を経由して空気が供給される。
【0053】
泡沫分離装置300の構造、機能は図9に示す泡沫分離装置300と同様であるため、泡沫分離装置300に対し、給水管85を経由して異物S混じりの飼育用水BWを供給するとともに、気体導入経路50を経由して空気を供給すると、泡沫分離装置300の収容タンク80の内部において図9に示すような現象が生じ、異物S混じりの飼育用水BWが異物Sと水Wとに分離される。
【0054】
泡沫分離装置300の収容タンク80の内部で分離された異物Sは排出管83内を通って下端開口部83bから排出され、回収容器86内に回収される。収容タンク80の内部で異物Sが分離された水Wは給水管92を経由して複数の散水ノズル93へ供給され、それぞれの散水ノズル93から第一濾過槽94若しくは第二濾過槽95の上端開口部94a,95aに向かって散布される。
【0055】
一方、泡沫分離装置300の排水管84から排出された水Wの一部はポンプP2によって吸い込まれ、飼育水槽90内の飼育用水BW中に配置された気液溶解ノズル100の液体導入経路1に供給される。また、気体導入経路50を経由して気液溶解ノズル100に対して空気が供給される。
【0056】
図10中に示す気液溶解ノズル100は、図1に示す気液溶解ノズル100と同様の構造、機能を有しているので、ポンプP2から液体導入経路1を経由して水Wを供給することにより、気液溶解ノズル100の内部においては図2に示すような現象が生じ、飼育水槽90内の飼育用水BW中に向かって、大量の酸素が溶解した水Wを供給することができる。
【0057】
図11に示すように、第一濾過槽94の底部付近に倒立U字形状の排水管96が接続され、排水管96の頂上部分には電磁弁EVが取り付けられている。電磁弁EVは排水管96の内部と大気中との連通を閉じたり、開いたりする機能を有している。電磁弁EVを閉じると排水管96の内部は大気中から遮断されるので、散水ノズル93から散布され第一濾材98によって濾過され第一濾過槽94内に貯留した濾過水CWの水位が排水管96の頂上部分より高くなると排水管96内にサイホン現象が生じ、第一濾過槽94内に貯留されている濾過水CWは濾過水送水管97に向かって一挙に流出する。
【0058】
一方、電磁弁EVを開くと排水管96の内部は大気中と連通するので、散水ノズル93から散布され第一濾材98によって濾過され第一濾過槽94内に貯留した濾過水CWの水位が排水管96の頂上部分より高くなっても排水管96内にサイホン現象は生じず、第一濾過槽94内に貯留されている濾過水CWは排水管96の頂上部分を越流して濾過水送水管97に向かって連続的に流出する。なお、濾過水送水管97の下流側の飼育水槽90寄りの部分には開閉弁V5が配置されている。
【0059】
なお、図示していないが、第二濾過槽95も図11に示す第一濾過槽94と同様の構造、機能を有しているので、排水管96の頂上部分の電磁弁EVを閉じたり、開いたりすることによって、排水管96から濾過水送水管97に向かって間欠的に排水したり、連続的に排水したりの選択をすることができる。
【0060】
図10に示す水生生物飼育システム400において、ポンプP1,P2を稼働させ、気体導入経路50を経由して泡沫分離装置300に空気を供給すると、飼育水槽90内の飼育用水BWはポンプP1により給水管85を経由して泡沫分離装置300内に送り込まれ、飼育用水BWに含まれていた異物Sと水Wとに分離される。異物Sは排出管83内を流動して回収容器86内に回収され、水Wは給水管92を経由して複数の散水ノズル93へ供給され、それぞれの散水ノズル93から第一濾過槽94または第二濾過槽95の上端開口部94a,95aに向かって散布される。
【0061】
散水ノズル93から散布された水Wは第一濾過槽94内、第二濾過槽95内を通過することによって好気脱窒された後、排水管96並びに濾過水送水管97を経由して飼育水槽90内の底部に配置された下端開口部97aから飼育用水BWに向かって送水される。
【0062】
このとき、排出管96の頂上部分の電磁弁EVが閉じていると、第一濾材98(第二濾材99)によって濾過され第一濾過槽94内(第二濾過槽95内)に貯留された濾過水CWの水位が排水管96の頂上部分より高くなるたびに排水管96内にサイホン現象が生じ、第一濾過槽94内(第二濾過槽95内)に貯留されている処理水CWは濾過水送水管97に向かって一挙に流入するので、処理水CWは下端開口部97aから飼育用水BWに向かって勢いよく噴出する。
【0063】
このように、下端開口部97aから噴出する処理水CWにより飼育水槽90の底部に沈殿している水生生物の排泄物や残餌などの異物Sを取水器具91に向かって押し流し、取水器具91から吸い込んで除去し、最終的に回収容器86に回収することができるので、飼育水槽90の底部は常に清掃された状態に保たれ、優れた飼育環境を維持することができる。
【0064】
また、第一濾過槽94及び第二濾過槽95を通過することよって脱窒された濾過水CWが濾過水送水管97を経由して、常時、飼育水槽90に供給されるので、飼育用水BWは清浄に保たれ、水生生物の成長状態も良好となる。
【0065】
さらに、飼育水槽90内に配置された気液溶解ノズル100から大量の微細気泡混じりの水Wが噴出するので、飼育用水BW中の酸素濃度を所定値に維持することができ、水生生物の成長にも有効である。
【0066】
例えば、従来の底面に砂を敷き詰めた飼育水槽でクルマエビを飼育した場合、飼育数は底面積1m2当たり50尾が上限であったが、水生生物飼育システム400の場合、クルマエビが水中を泳ぎ回るので床面の砂は不要であり、飼育用水BWの1m3当たり300尾程度まで飼育することが可能となった。
【0067】
なお、図1図11に基づいて説明した気液溶解ノズル100の使用例は本発明に係る気液溶解ノズルの使用例(用途)の一部を示すものであり、本発明に係る気液溶解ノズルの使用例(用途)は前述した気液溶解ノズル100の使用例に限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る気液溶解ノズルは、液体中に気体を混合させたり、溶解させたりすることを必要とする農林業、水産養殖業、畜産業あるいは工業などの産業分野において広く利用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 液体導入経路
1c,21c 軸心
2 液体流出孔
5 円筒部材
10 第一旋回室
11 第一筒状体
11a,11b,21a,21b,41 隔壁
20 第二旋回室
21 第二筒状体
22 液体導入孔
23 貫通孔
24 分流部材
25 主流路
26 分流路
30 気液混合室
31 混合容器
40 排出口
41 底板
60 水槽
61 吸水管
62 送水管
70 オゾンガス発生部
71,76 貯水タンク
71a,76a 入水管
71b,76d 取水管
71c,76c 排気口
72 電解オゾン発生器
73 散気盤
75 オゾンガス溶解部
76b 水循環用管
76e オゾン水集約領域
77 気泡分離板
77a,81a 上縁部
78 オゾンガス供給管
79 排オゾンガス戻り管
80 収容タンク
80a 頂上部
80b,81b 底部
81 誘導部材
82 集合部材
82a 上端開口部
83 排出管
83b 下端開口部
84,96 排水管
85,92 給水管
86 回収容器
90 飼育水槽
91 取水器具
93 散水ノズル
94 第一濾過槽
94a,95a 上端開口部
95 第二濾過槽
96a 上流部
96b 下流部
97 濾過水送水管
97a 下端開口部
98 第一濾材
99 第二濾材
100 気液溶解ノズル
200 オゾン水製造装置
300 泡沫分離装置
400 水生生物飼育システム
aB 気泡
BW 飼育用水
CW 濾過水
EOW 電解オゾン水
EV 電磁弁
F1 液体旋回流
F2 旋回水流
F3 気体渦流
F4 気液混合流体
G 気体
MB 微細気泡
OG オゾンガス
OW オゾン水
P,P1,P2 ポンプ
R 液体
S 異物
V1,V2,V3,V4,V5 開閉弁
W 水
W1 水面
X 減圧空洞部
Y 溶出気体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11