(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014071
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】車両用制御装置及び車両用制御方法
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20240125BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20240125BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20240125BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20240125BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
B62D101:00
B62D119:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116642
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】藤田 祐志
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一
(72)【発明者】
【氏名】長嶋 雄吾
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】岩名 毅
(72)【発明者】
【氏名】富澤 弘貴
(72)【発明者】
【氏名】林 豊大
(72)【発明者】
【氏名】田邊 隼希
(72)【発明者】
【氏名】中島 信頼
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232DA15
3D232DA23
3D232DA63
3D232DC09
3D232DC33
3D232DC34
3D232DD02
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3D333CC06
3D333CC14
3D333CC15
3D333CC18
3D333CE47
(57)【要約】
【課題】運転者に対して不安を与え難くすることができる車両用制御装置及び車両用制御方法を提供する。
【解決手段】操舵制御装置のCPUは、電源システムが起動された後の起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移するように構成される。起動時状態のとき、操舵制御装置のCPUは、準備処理の実行の開始から実行中の準備処理を強制的に終了させることを示す第1又は第2強制終了条件が成立するか否かを判断するステップ105又はステップ106の処理と、第1又は第2強制終了条件が成立する場合に実行中の準備処理を強制的に終了させるステップ108又はステップ110と、準備処理の強制的な終了を運転者に報知するためのステップ109又はステップ111と、を実行するように構成されている。また、車両制御装置のCPUは、ステップ109又はステップ111の処理に基づいて、報知装置の動作を制御する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の操舵装置を制御する車両用制御装置であって、
前記操舵装置は、操作部材を有する操舵ユニットと転舵輪を転舵させるように構成される転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有し、
前記車両用制御装置は、車両の電源システムが起動された後の起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移するように構成される制御部を有し、
前記起動時状態は、前記操作部材を自動的に動作させるように制御することによって、前記通常制御状態へ状態遷移させるのに必要な準備処理を実行することができる状態であり、
前記通常制御状態は、前記操作部材への運転者の操作に応じて前記転舵輪を転舵させるための通常処理を実行することができる状態であり、
前記起動時状態のとき、前記制御部は、
前記準備処理の実行の開始から実行中の前記準備処理を強制的に終了させることを示す強制終了条件が成立するか否かを判断する強制終了条件判断処理と、
前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させる強制終了処理と、
前記準備処理の強制的な終了を運転者に報知するための報知処理と、を実行するように構成されている車両用制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記操舵装置の制御を主に実行する操舵制御部と前記操舵装置以外の制御を主に実行する車両制御部とを含む請求項1に記載の車両用制御装置。
【請求項3】
前記車両は、前記操舵装置とは独立して設けられる報知装置を含み、
前記報知装置は、前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させることの運転者への報知を実行するように構成されており、
前記操舵制御部は、
前記強制終了条件判断処理と、
前記強制終了処理と、
前記報知処理のうちの一部の処理と、を実行するように構成されており、
前記車両制御部は、前記報知処理のうちの前記一部の処理以外の残りの処理を実行するように構成されており、
前記一部の処理は、運転者に報知する内容を示す報知内容を指示する報知内容指示処理を含み、
前記残りの処理は、前記報知内容指示処理が指示する前記報知内容に応じた報知をするように前記報知装置を制御する報知制御処理を含む請求項2に記載の車両用制御装置。
【請求項4】
前記起動時状態のとき、前記制御部は、前記強制終了条件が成立する原因を判断する終了原因判断処理を実行することを含み、
前記報知内容指示処理は、前記強制終了条件が成立する原因に基づいて、互いに異なる前記報知内容を指示する処理であり、
前記報知内容は、前記強制終了条件が成立する原因に応じて、運転者のその後の行動を促すことができる内容を含む請求項3に記載の車両用制御装置。
【請求項5】
前記操作部材は、左右方向に回転可能なステアリングホイールであり、
前記準備処理は、補正処理と同期処理とを含み、
前記補正処理は、前記ステアリングホイールを自動的に回転させることによって、前記ステアリングホイールの回転位置を規定するための基準位置を演算する処理を含み、
前記同期処理は、前記ステアリングホイールを自動的に回転させることによって、前記ステアリングホイールの回転位置と前記転舵輪の転舵位置との位置関係が対応するように同期させる処理を含み、
前記強制終了条件は、前記補正処理と前記同期処理とで互いに異なる条件を含む請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の車両用制御装置。
【請求項6】
車両の操舵装置を制御する車両用制御方法であって、
前記操舵装置は、操作部材を有する操舵ユニットと転舵輪を転舵させるように構成される転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有し、
前記車両用制御方法は、車両の電源システムが起動された後の起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移することを含み、
前記起動時状態は、前記操作部材を自動的に動作させるように制御することによって、前記通常制御状態へ状態遷移させるのに必要な準備処理を実行することができる状態であり、
前記通常制御状態は、前記操作部材への運転者の操作に応じて前記転舵輪を転舵させるための通常処理を実行することができる状態であり、
前記起動時状態のときには、
前記準備処理の実行の開始から実行中の前記準備処理を強制的に終了させることを示す強制終了条件が成立するか否かを判断する強制終了条件判断処理と、
前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させる強制終了処理と、
前記準備処理の強制的な終了を運転者に報知するための報知処理と、を実行することを含む車両用制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用制御装置及び車両用制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、車両に搭載されるステアバイワイヤ式の操舵装置が記載されている。ステアバイワイヤ式の操舵装置は、車両のステアリングホイールと車両の転舵輪との間の動力伝達路を分離した構造を有している。車両は、こうしたステアリングバイワイヤ式の操舵装置を制御するための反力制御部と転舵制御部とを含んでいる。
【0003】
上記反力制御部は、ステアリングホイールの回転位置を自動調節する調節処理を実行するように構成されている。上記反力制御部は、調節処理の実行中、ステアリングホイールの自動回転が阻害される場合、その阻害された状態が解除されたときの運転者の違和感を軽減するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記調節処理は、車両が走行する際の操舵装置等の制御を可能にするための処理である。例えば、上記反力制御部が調節処理の実行中、すなわちステアリングホイールの自動回転が阻害されることによって、調節処理を完了することができずにいると、車両が走行する際の操舵装置等の制御が可能になるまでの期間が長引くことが考えられる。車両が走行する際の操舵装置等の制御が可能になるまでの期間が長引くことは、その理由を把握できない運転者に対して不安を与える原因となる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用制御装置は、車両の操舵装置を制御する。前記操舵装置は、操作部材を有する操舵ユニットと転舵輪を転舵させるように構成される転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する。前記車両用制御装置は、車両の電源システムが起動された後の起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移するように構成される制御部を有し、前記起動時状態は、前記操作部材を自動的に動作させるように制御することによって、前記通常制御状態へ状態遷移させるのに必要な準備処理を実行することができる状態であり、前記通常制御状態は、前記操作部材への運転者の操作に応じて前記転舵輪を転舵させるための通常処理を実行することができる状態であり、前記起動時状態のとき、前記制御部は、前記準備処理の実行の開始から実行中の前記準備処理を強制的に終了させることを示す強制終了条件が成立するか否かを判断する強制終了条件判断処理と、前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させる強制終了処理と、前記準備処理の強制的な終了を運転者に報知するための報知処理と、を実行するように構成されている。
【0007】
また、上記課題を解決し得る車両用制御方法は、車両の操舵装置を制御する方法である。前記操舵装置は、操作部材を有する操舵ユニットと転舵輪を転舵させるように構成される転舵ユニットとの間の動力伝達路が分離した構造を有する。前記車両用制御方法は、車両の電源システムが起動された後の起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移することを含み、前記起動時状態は、前記操作部材を自動的に動作させるように制御することによって、前記通常制御状態へ状態遷移させるのに必要な準備処理を実行することができる状態であり、前記通常制御状態は、前記操作部材への運転者の操作に応じて前記転舵輪を転舵させるための通常処理を実行することができる状態であり、前記起動時状態のときには、前記準備処理の実行の開始から実行中の前記準備処理を強制的に終了させることを示す強制終了条件が成立するか否かを判断する強制終了条件判断処理と、前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させる強制終了処理と、前記準備処理の強制的な終了を運転者に報知するための報知処理と、を実行することを含む。
【0008】
上記構成及び上記方法によれば、制御部は、準備処理の実行中であっても強制終了条件が成立する場合、実行中の準備処理を強制的に終了させることができる。制御部は、準備処理を強制的に終了させる場合、その旨を運転者に報知する報知処理を実行する。例えば、実行中の準備処理が強制的に終了される場合、操舵装置についての通常処理が可能になるまでの期間が長引くことになる。この場合、操舵装置についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている理由が、実行中の準備処理の強制的な終了に起因することを運転者に把握させることができる。したがって、操舵装置についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている場合でも運転者に対して不安を与え難くすることができる。
【0009】
上記車両用制御装置において、前記制御部は、前記操舵装置の制御を主に実行する操舵制御部と前記操舵装置以外の制御を主に実行する車両制御部とを含むことが好ましい。
上記構成によれば、準備処理に関わって実行される、強制終了条件判断処理、強制終了処理、及び報知処理を、操舵制御部又は車両制御部の機能として振り分けることができる。したがって、操舵制御部又は車両制御部の機能を適切に振り分けることができる。
【0010】
例えば、前記車両は、前記操舵装置とは独立して設けられる報知装置を含み、前記報知装置は、前記強制終了条件が成立する場合に実行中の前記準備処理を強制的に終了させることの運転者への報知を実行するように構成されている場合、前記操舵制御部は、前記強制終了条件判断処理と、前記強制終了処理と、前記報知処理のうちの一部の処理と、を実行するように構成されており、前記車両制御部は、前記報知処理のうちの前記一部の処理以外の残りの処理を実行するように構成されており、前記一部の処理は、運転者に報知する内容を示す報知内容を指示する報知内容指示処理を含み、前記残りの処理は、前記報知内容指示処理が指示する前記報知内容に応じた報知をするように前記報知装置を制御する報知制御処理を含むようにして具体化することができる。
【0011】
上記車両用制御装置において、前記起動時状態のとき、前記制御部は、前記強制終了条件が成立する原因を判断する終了原因判断処理を実行することを含み、前記報知内容指示処理は、前記強制終了条件が成立する原因に基づいて、互いに異なる前記報知内容を指示する処理であり、前記報知内容は、前記強制終了条件が成立する原因に応じて、運転者のその後の行動を促すことができる内容を含むことが好ましい。
【0012】
上記構成によれば、準備処理が強制的に終了される場合にその原因を運転者に把握させることができる。この場合、運転者は、原因に応じた対処を講ずることができる。これは、操舵装置についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている場合でも運転者に対する不安を解消するのに効果的である。
【0013】
上記車両用制御装置において、前記操作部材は、左右方向に回転可能なステアリングホイールであり、前記準備処理は、補正処理と同期処理とを含み、前記補正処理は、前記ステアリングホイールを自動的に回転させることによって、前記ステアリングホイールの回転位置を規定するための基準位置を演算する処理を含み、前記同期処理は、前記ステアリングホイールを自動的に回転させることによって、前記ステアリングホイールの回転位置と前記転舵輪の転舵位置との位置関係が対応するように同期させる処理を含み、前記強制終了条件は、前記補正処理と前記同期処理とで互いに異なる条件を含むことが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、補正処理と同期処理とを準備処理が含んでいる場合、それぞれの処理の強制終了条件を互いに異ならせることができる。これにより、強制終了条件の適正化を図ることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転者に対して不安を与え難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】ステアバイワイヤ式の操舵装置の構成を示す図である。
【
図2】
図1の操舵制御装置が実行する処理を示すブロック図である。
【
図3】
図1の操舵制御装置が起動時状態のときに実行する処理の手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図3の舵角中点補正処理のうち操舵側での処理手順を示すフローチャートである。
【
図5】
図3の舵角中点補正処理のうち転舵側での処理手順を示すフローチャートである。
【
図6】(a)~(f)は
図3の操舵側での舵角中点補正処理中のステアリングホイールの動作を示す図である、(g)は仮操舵角θsiと操舵目標角θs*の変化を示す図である。
【
図7】
図3の舵角同期処理の手順を示すフローチャートである。
【
図8】(a),(b)は、
図3の舵角同期処理中のステアリングホイールの動作を示す図である。
【
図9】(a)~(c)は、
図3の舵角同期処理中のステアリングホイールの動作を示す図である。
【
図10】(a),(b)は、
図3の舵角同期処理中のステアリングホイールの動作を示す図である。
【
図11】(a)~(d)は、起動時状態のときにおける運転者への報知に関する状態の変化態様を示す図である。
【
図12】(a)~(d)は、運転者への報知に関する報知内容を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を説明する。
図1に示すように、操舵制御装置1は、操舵装置2を制御対象とする車両用制御装置の一例である。操舵装置2は、ステアバイワイヤ式の車両用の操舵装置として構成されている。操舵装置2は、操舵ユニット4と、転舵ユニット6とを備えている。操舵ユニット4は、操作部材である車両のステアリングホイール3を介して運転者により操舵される。転舵ユニット6は、運転者により操舵ユニット4に入力される操舵に応じて車両の左右の転舵輪5を転舵させる。本実施形態の操舵装置2は、例えば、操舵ユニット4と、転舵ユニット6との間の動力伝達路が機械的に常時分離した構造を有している。後述の操舵アクチュエータ12と、後述の転舵アクチュエータ31との間の動力伝達路は、機械的に常時分離した構造とされている。
【0018】
操舵ユニット4は、ステアリング軸11と、操舵アクチュエータ12とを備えている。ステアリング軸11は、ステアリングホイール3に連結されている。ステアリング軸11におけるステアリングホイール3に連結された側と反対側の端部11aは、ストッパ機構11bを有している。ストッパ機構11bは、ステアリング軸11の回転範囲を規定する。これにより、ステアリング軸11と一体回転するステアリングホイール3の回転範囲は、ストッパ機構11bによって規定される。例えば、ステアリングホイール3は、右方の回転限界位置3aと左方の回転限界位置3bとの間を回転範囲として回転可能である。操舵アクチュエータ12は、駆動源である操舵側モータ13と、操舵側減速機構14とを有している。操舵側モータ13は、ステアリング軸11を介してステアリングホイール3に対して操舵に抗する力である操舵反力を付与する反力モータである。操舵側モータ13は、例えば、ウォームアンドホイールからなる操舵側減速機構14を介してステアリング軸11に連結されている。本実施形態の操舵側モータ13には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0019】
転舵ユニット6は、ピニオン軸21と、転舵軸としてのラック軸22と、ラックハウジング23とを備えている。ピニオン軸21とラック軸22とは、所定の交差角をもって連結されている。ピニオン軸21に形成されたピニオン歯21aとラック軸22に形成されたラック歯22aとを噛み合わせることによりラックアンドピニオン機構24が構成されている。つまり、ピニオン軸21は、転舵輪5の転舵位置である転舵角θiに換算可能な回転軸に相当する。ラックハウジング23は、ラックアンドピニオン機構24を収容している。ピニオン軸21のラック軸22と連結される側と反対側の一端は、ラックハウジング23から突出している。ラック軸22の両端は、ラックハウジング23の軸方向の両端から突出している。また、ラック軸22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド25を介してタイロッド26が連結されている。タイロッド26の先端は、それぞれ左右の転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
【0020】
転舵ユニット6は、転舵アクチュエータ31を備えている。転舵アクチュエータ31は、駆動源である転舵側モータ32と、伝達機構33と、変換機構34とを備えている。転舵側モータ32は、伝達機構33及び変換機構34を介してラック軸22に対して転舵輪5を転舵させる転舵力を付与する。転舵側モータ32は、例えば、ベルト伝達機構からなる伝達機構33を介して変換機構34に対して回転を伝達する。伝達機構33は、例えば、ボールねじ機構からなる変換機構34を介して転舵側モータ32の回転をラック軸22の往復動に変換する。本実施形態の転舵側モータ32には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0021】
このように構成された操舵装置2では、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵アクチュエータ31からラック軸22にモータトルクが転舵力として付与されることで、転舵輪5の転舵角θiが変更される。このとき、操舵アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力がステアリングホイール3に付与される。これにより、操舵装置2では、操舵アクチュエータ12から付与されるモータトルクである操舵反力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。
【0022】
なお、ピニオン軸21を設ける理由は、ピニオン軸21と共にラック軸22をラックハウジング23の内部に支持するためである。操舵装置2に設けられる図示しない支持機構によって、ラック軸22は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオン軸21へ向けて押圧される。これにより、ラック軸22はラックハウジング23の内部に支持される。ただし、ピニオン軸21を使用せずにラック軸22をラックハウジング23に支持する他の支持機構を設けてもよい。
【0023】
<操舵装置の電気的構成>
図1に示すように、操舵側モータ13及び転舵側モータ32は、操舵制御装置1に接続されている。操舵制御装置1は、操舵側モータ13及び転舵側モータ32の作動を制御する。
【0024】
操舵制御装置1には、各種のセンサの検出結果が入力される。操舵制御装置1には、各種のセンサが接続されている。各種のセンサには、例えば、トルクセンサ41、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、車速センサ44、ピニオン絶対角センサ45が含まれる。
【0025】
トルクセンサ41は、運転者のステアリング操舵によりステアリング軸11に付与されたトルクを示す値である操舵トルクThを検出する。操舵側回転角センサ42は、操舵側モータ13の回転軸の角度である回転角θaを360°の範囲内で検出する。転舵側回転角センサ43は、転舵側モータ32の回転軸の角度である回転角θbを360°の範囲内で検出する。車速センサ44は、車両の走行速度である車速Vを検出する。ピニオン絶対角センサ45は、ピニオン軸21の回転軸の角度の実測値であるピニオン絶対回転角θabpを360°を超える範囲で検出する。
【0026】
具体的には、トルクセンサ41は、ステアリング軸11における操舵側減速機構14よりもステアリングホイール3側の部分に設けられている。トルクセンサ41は、ステアリング軸11の途中に設けられたトーションバー41aの捩れに基づいて操舵トルクThを検出する。なお、操舵トルクThは、例えば、右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。
【0027】
操舵側回転角センサ42は、操舵側モータ13に設けられている。操舵側モータ13の回転角θaは、操舵角θsの演算に使用される。操舵側モータ13と、ステアリング軸11とは、操舵側減速機構14を介して連動する。このため、操舵側モータ13の回転角θaと、ステアリング軸11の回転角との間には相関がある。また、操舵側モータ13の回転角θaと、ステアリングホイール3の回転位置を示す回転角である操舵角θsとの間には相関がある。したがって、操舵側モータ13の回転角θaに基づき操舵角θsを演算することができる。なお、回転角θaは、例えば、右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。
【0028】
転舵側回転角センサ43は、転舵側モータ32に設けられている。転舵側モータ32の回転角θbは、ピニオン角θpの演算に使用される。転舵側モータ32と、ピニオン軸21とは、伝達機構33、変換機構34、及びラックアンドピニオン機構24を介して連動する。このため、転舵側モータ32の回転角θbと、ピニオン軸21の回転角度であるピニオン角θpとの間には相関がある。したがって、転舵側モータ32の回転角θbに基づきピニオン角θpを求めることができる。また、ピニオン軸21は、ラック軸22に噛合されている。このため、ピニオン角θpとラック軸22の移動量との間にも相関関係がある。ピニオン角θpは、転舵輪5の転舵状態を示す角度情報であって、転舵輪5の転舵位置である転舵角θiを反映する値である。なお、回転角θbは、例えば、右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。
【0029】
ピニオン絶対角センサ45は、ピニオン軸21に設けられている。ピニオン軸21のピニオン絶対回転角θabpは、ピニオン角θpの演算に使用される。なお、ピニオン絶対回転角θabpは、例えば、右方向に操舵した場合に正の値、左方向に操舵した場合に負の値として検出する。本実施形態において、ピニオン絶対角センサ45は、ピニオン角θpの実測値を検出するセンサの一例である。
【0030】
操舵制御装置1には、電源システム46が接続されている。電源システム46は、バッテリ47を有している。バッテリ47は、車両に搭載された二次電池であり、操舵側モータ13及び転舵側モータ32が動作するべく供給される電力の電力源になる。また、バッテリ47は、操舵制御装置1が動作するべく供給される電力の電力源になる。
【0031】
操舵制御装置1とバッテリ47との間には、イグニッションスイッチ等の車両の起動スイッチ48(
図1中「SW」)が設けられている。起動スイッチ48は、操舵制御装置1とバッテリ47との間を接続する2つの給電線L1,L2のうちの給電線L1から分岐している給電線L2の途中に設けられている。起動スイッチ48は、エンジン等の車両の走行用駆動源を作動させて車両の動作が可能になるように各種の機能を起動する際に操作される。起動スイッチ48の操作を通じて給電線L2の導通がオンオフされる。本実施形態において、操舵装置2の動作の状態は、車両の動作の状態と関連付けられている。なお、給電線L1については基本的に導通が常時オンとされているが、操舵装置2の動作の状態に応じて給電線L1の導通が操舵装置2の機能として間接的にオンオフされる。操舵装置2の動作の状態は、バッテリ47の電力の供給の状態である給電線L1,L2の導通のオンオフと関連付けられている。
【0032】
操舵制御装置1には、CAN等の車載ネットワーク8を介して車両制御装置7が接続されている。車両制御装置7は、操舵装置2が搭載される車両に操舵制御装置1とは別に設けられている外部の車両用制御装置の一例である。車両制御装置7は、車載される報知装置9の動作を制御する。報知装置9は、情報を運転者の視覚に訴えて報知する表示装置、情報を運転者の聴覚に訴えて報知する警報装置、あるいは情報を運転者に対して体感的に報知する体感発生装置を含んでいてもよい。表示装置は、HUD(Head Up Display)、メーターパネル、ナビゲーションシステムのディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)を含む。警報装置は、スピーカあるいはブザーを含む。体感発生装置は、シートなどの運転者に接触する車両装備品を振動させる振動装置を含む。車両制御装置7は、報知装置9に対する報知制御信号SNを生成する。なお、車両制御装置7は、車両の走行に係る駆動系を制御する装置や車両の制動に係るブレーキ系を制御する装置等を含む。
【0033】
<操舵制御装置の機能>
操舵制御装置1は、中央処理装置(以下「CPU」という。)49aやメモリ49bを備えている。操舵制御装置1は、メモリ49bに記憶されたプログラムを所定の演算周期毎にCPU49aが実行することにより、各種の処理を実行する。CPU49a及びメモリ49bは、処理回路であるマイクロコンピュータを構成する。メモリ49bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)のようなコンピュータ可読媒体を含む。ただし、各種処理がソフトウェアによって実現されることは一例である。操舵制御装置1が有する処理回路は、少なくとも一部の処理をロジック回路などのハードウェア回路によって実現するように構成されてもよい。
【0034】
なお、車両制御装置7は、中央処理装置(以下「CPU」という。)7aやメモリ7bを備えている。車両制御装置7は、メモリ7bに記憶されたプログラムを所定の演算周期毎にCPU7aが実行することにより、各種の処理を実行する。CPU7a及びメモリ7bは、CPU49a及びメモリ49bと同様、処理回路であるマイクロコンピュータを構成する。メモリ7bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)のようなコンピュータ可読媒体を含む。ただし、各種処理がソフトウェアによって実現されることは一例である。車両制御装置7が有する処理回路は、少なくとも一部の処理をロジック回路などのハードウェア回路によって実現するように構成されてもよい。
【0035】
図2に、操舵制御装置1によって実行される処理の一部を示す。
図2に示す処理は、メモリ49bに記憶されたプログラムをCPU49aが実行することで実現される処理の一部を、実現される処理の種類毎に記載したものである。本実施形態において、CPU49aは、操舵制御部の一例である。また、CPU7aは、車両制御部の一例である。つまり、CPU49aとCPU7aとは、一例として制御部を構成する。
【0036】
操舵制御装置1は、操舵側モータ13に対する給電を制御する。操舵制御装置1は、操舵側電流センサ55を有している。操舵側電流センサ55は、操舵側制御部50と、操舵側モータ13の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる操舵側モータ13の各相の電流値から得られる操舵側実電流値Iaを検出する。操舵側電流センサ55は、操舵側モータ13に対応して設けられる図示しないインバータにおいて、スイッチング素子のそれぞれのソース側に接続されたシャント抵抗の電圧降下を電流として取得する。なお、
図2では、説明の便宜上、各相の接続線及び各相の電流センサをそれぞれ1つにまとめて図示している。
【0037】
また、操舵制御装置1は、転舵側モータ32に対する給電を制御する。操舵制御装置1は、転舵側電流センサ65を有している。転舵側電流センサ65は、転舵側制御部60と、転舵側モータ32の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる転舵側モータ32の各相の電流値から得られる転舵側実電流値Ibを検出する。転舵側電流センサ65は、転舵側モータ32に対応して設けられる図示しないインバータにおいて、スイッチング素子のそれぞれのソース側に接続されたシャント抵抗の電圧降下を電流として取得する。なお、
図2では、説明の便宜上、各相の接続線及び各相の電流センサをそれぞれ1つにまとめて図示している。
【0038】
図2に示すように、操舵制御装置1は、操舵角演算部51と、目標反力トルク演算部52と、操舵側準備処理部53と、操舵側通電制御部54とを有している。また、操舵制御装置1は、ピニオン角演算部61と、ピニオン角フィードバック制御部(図中「ピニオン角F/B制御部」)62と、転舵側準備処理部63と、転舵側通電制御部64とを有している。
【0039】
操舵角演算部51には、回転角θa及び設定操舵角θs0が入力される。操舵角演算部51は、設定操舵角θs0に基づき得られる回転角θaを、記憶部51aに記憶された操舵側中点情報θnsからの積算角に換算する。積算角は、操舵側中点情報θnsからの操舵側モータ13の回転回数をカウントすることにより、360°を超える範囲で換算された値である。設定操舵角θs0は、操舵側準備処理部53によって演算される。操舵側中点情報θnsは、例えば、車両が直進しているときのステアリングホイール3の回転位置であるステアリング中立位置、すなわち基準位置を示す情報である。なお、記憶部51aは、メモリ49bの所定の記憶領域のことである。操舵角演算部51は、換算して得られた積算角に操舵側減速機構14の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、操舵角θsを演算する。操舵角演算部51は、ステアリング中立位置に対する絶対角度として操舵角θsを演算する。こうして得られた操舵角θsは、目標反力トルク演算部52及びピニオン角フィードバック制御部62に出力される。
【0040】
目標反力トルク演算部52には、操舵トルクTh、車速V、転舵側実電流値Ib、操舵角θs、及びピニオン角θpが入力される。目標反力トルク演算部52は、操舵トルクTh、車速V、転舵側実電流値Ib、操舵角θs、及びピニオン角θpに基づいて、目標反力トルクTT*を演算する。目標反力トルクTT*は、操舵側モータ13を通じて発生させるべきステアリングホイール3の操舵反力の目標となる制御量である。こうして得られた目標反力トルクTT*は、加算器56に出力される。
【0041】
操舵側準備処理部53には、操舵トルクTh、回転角θa、操舵側実電流値Ia、操舵側中点情報θns、ピニオン角θp、及びバッテリ交換情報FLGが入力される。操舵側準備処理部53は、操舵トルクTh、回転角θa、操舵側実電流値Ia、操舵側中点情報θns、ピニオン角θp、及びバッテリ交換情報FLGに基づいて、操舵装置2の制御を可能にするのに必要な舵角中点処理及び舵角同期処理を実行する。
【0042】
舵角中点処理において、操舵側における処理は、操舵側中点情報θns及び設定操舵角θs0を演算する処理を含む。操舵側中点情報θnsは、記憶部51aに書き込み処理される。また、設定操舵角θs0は、操舵角演算部51に出力される。また、舵角同期処理において、操舵側における処理は、操舵角θsとピニオン角θpとの関係が所定の対応関係を満たすように同期させる処理を含む。舵角中点処理及び舵角同期処理において、操舵側における処理ついては後で詳しく説明する。
【0043】
バッテリ交換情報FLGは、電源システム46が有するバッテリ47が取り外されて交換された後の状態であるか否かを示す情報である。電源システム46は、バッテリ47が取り外されて交換された後に起動スイッチ48がオン状態へ切り替えられた場合、「1」の値をバッテリ交換情報FLGに設定する。「1」の値のバッテリ交換情報FLGは、バッテリ交換後、最初の電源起動時であることを示す。また、電源システム46は、バッテリ47が取り外されて交換されていないなかで起動スイッチ48がオン状態へ切り替えられた場合、「0(ゼロ)」の値をバッテリ交換情報FLGに設定する。「0」の値のバッテリ交換情報FLGは、バッテリ交換後、最初の電源起動時でないことを示す。こうして得られたバッテリ交換情報FLGは、専用の信号線を介して操舵制御装置1に出力される。
【0044】
操舵側準備処理部53は、舵角中点処理を通じて操舵側中点情報θnsを演算する際、回転角θa及び操舵側実電流値Iaに基づいて、目標回転トルクRT*を演算する。また、操舵側準備処理部53は、舵角同期処理を実行する際、回転角θa及びピニオン角θpに基づいて、目標回転トルクRT*を演算する。目標回転トルクRT*は、操舵側モータ13を通じて発生させるべきステアリングホイール3の回転力の目標となる制御量である。こうして得られた目標回転トルクRT*は、加算器56に出力される。
【0045】
加算器56には、目標反力トルクTT*及び目標回転トルクRT*が入力される。加算器56は、目標反力トルクTT*と目標回転トルクRT*とを加算することによって、操舵側モータトルク指令値Ts*を演算する。目標反力トルクTT*の値は、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵輪5を転舵させるための通常処理を実行するとき、運転者に対して路面反力に応じた適度な手応え感を与える場合に「0(ゼロ)」以外が演算される。目標回転トルクRT*の値は、舵角中点処理又は舵角同期処理を実行するとき、ステアリングホイール3を回転させるための回転トルクを与える場合に「0(ゼロ)」以外が演算される。これにより、操舵側モータトルク指令値Ts*は、上記通常処理を実行するとき、目標反力トルクTT*となる。また、操舵側モータトルク指令値Ts*は、上記舵角中点処理又は舵角同期処理を実行するとき、目標回転トルクRT*となる。こうして得られた操舵側モータトルク指令値Ts*は、操舵側通電制御部54に出力される。
【0046】
操舵側通電制御部54には、操舵側モータトルク指令値Ts*、回転角θa、及び操舵側実電流値Iaが入力される。操舵側通電制御部54は、操舵側モータトルク指令値Ts*に基づき操舵側モータ13に対する電流指令値Ia*を演算する。操舵側通電制御部54は、電流指令値Ia*と、操舵側実電流値Iaを回転角θaに基づき変換して得られるdq座標上の電流値との偏差を求め、当該偏差を無くすように操舵側モータ13に対する給電を制御する。これにより、操舵側モータ13は操舵側モータトルク指令値Ts*に応じたトルクを発生する。
【0047】
ピニオン角演算部61には、回転角θb及び設定ピニオン角θp0が入力される。ピニオン角演算部61は、設定ピニオン角θp0に基づき得られる回転角θbを、記憶部61aに記憶された転舵側中点情報θntからの積算角に換算する。積算角は、転舵側中点情報θntからの転舵側モータ32の回転回数をカウントすることにより、360°を超える範囲で換算された値である。設定ピニオン角θp0は、転舵側準備処理部63によって演算される。転舵側中点情報θntは、例えば、車両が直進しているときのラック軸22の位置であるラック中立位置、すなわち基準位置を示す情報である。なお、記憶部61aは、メモリ49bの所定の記憶領域のことである。ピニオン角演算部61は、換算して得られた積算角に、伝達機構33の回転速度比と、変換機構34のリードと、ラックアンドピニオン機構24の回転速度比に基づく換算係数を乗算することで、ピニオン軸21の実際の回転角であるピニオン角θpを演算する。つまり、ピニオン角演算部61は、ラック中立位置に対する絶対角度としてピニオン角θpを演算する。こうして得られたピニオン角θpは、ピニオン角フィードバック制御部62及び目標反力トルク演算部52に出力される。
【0048】
ピニオン角フィードバック制御部62には、車速V、操舵角θs、及びピニオン角θpが入力される。ピニオン角フィードバック制御部62は、ピニオン角θpをピニオン目標角θp*に追従させるべくピニオン角θpのフィードバック制御を通じて転舵側モータトルク指令値Tt*を演算する。ピニオン目標角θp*は、操舵角θsに対して、操舵角θsとピニオン角θpとの比率である舵角比を考慮したピニオン角θpのスケールに変換された角度として演算される。ピニオン角フィードバック制御部62は、車速Vに応じて舵角比を変化させる。例えば、ピニオン角フィードバック制御部62は、車速Vが低い場合に高い場合よりも、操舵角θsの変化に対するピニオン角θpの変化を大きくするように舵角比を変化させる。つまり、ピニオン目標角θp*の演算では、操舵角θsとの間で、位置関係が所定の対応関係を満たすようにするための換算演算が施される。
【0049】
転舵側モータトルク指令値Tt*の値は、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵輪5を転舵させるための通常処理を実行するとき、転舵輪5を転舵させる場合に「0(ゼロ)」以外が演算される。転舵側モータトルク指令値Tt*の値は、舵角中点処理又は舵角同期処理を実行するとき、「0(ゼロ)」が演算される。こうして得られた転舵側モータトルク指令値Tt*は、転舵側通電制御部64に出力される。
【0050】
転舵側準備処理部63には、回転角θb、転舵側中点情報θnt、ピニオン絶対回転角θabp、及びバッテリ交換情報FLGが入力される。転舵側準備処理部63は、回転角θb、転舵側中点情報θnt、ピニオン絶対回転角θabp、及びバッテリ交換情報FLGに基づいて、操舵装置2の制御を可能にするのに必要な舵角中点処理及び舵角同期処理を実行する。
【0051】
舵角中点処理において、転舵側における処理は、転舵側中点情報θnt及び設定ピニオン角θp0を演算する処理を含む。転舵側中点情報θntは、記憶部61aに書き込み処理される。また、設定ピニオン角θp0は、ピニオン角演算部61に出力される。また、舵角同期処理において、転舵側における処理は、操舵角θsとピニオン角θpとの関係が所定の対応関係を満たすように同期させる処理を含む。転舵側における舵角中点処理及び舵角同期処理において、転舵側における処理については後で詳しく説明する。
【0052】
転舵側通電制御部64には、転舵側モータトルク指令値Tt*、回転角θb、及び転舵側実電流値Ibが入力される。転舵側通電制御部64は、転舵側モータトルク指令値Tt*に基づき転舵側モータ32に対する電流指令値Ib*を演算する。転舵側通電制御部64は、電流指令値Ib*と、転舵側実電流値Ibを回転角θbに基づき変換して得られるdq座標上の電流値との偏差を求め、当該偏差を無くすように転舵側モータ32に対する給電を制御する。これにより、転舵側モータ32は転舵側モータトルク指令値Tt*に応じた角度だけ回転する。
【0053】
<起動時状態のときに実行する処理について>
CPU49aは、スイッチ操作等の運転者による要求に基づいて、起動スイッチ48がオン状態にされて車両の電源システム46が起動された後、起動時状態を経て通常制御状態へと状態遷移する。起動信号Sigは、起動スイッチ48のオンオフ状態を示す信号である。CPU49aは、起動信号Sigの入力後、舵角中点処理及び舵角同期処理を実行するべく起動時状態へと状態遷移する。なお、起動時状態のとき、車両は、停車中である。また、起動時状態のとき、CPU49aは、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵輪5を転舵させるための通常処理を実行しない状態である。これにより、起動時状態の間、転舵輪5は、電源起動時の状態を維持する。
【0054】
つぎに、起動時状態のとき、CPU49aが実行する舵角補正処理の処理手順の一例について、
図3に示すフローチャートに従って説明する。
同図に示すように、CPU49aは、起動信号Sigの入力後、イニシャルチェックを実行する(ステップ101)。ステップ101において、CPU49aは、電源起動に伴う初期点検であって、ハードウェアのチェック、メモリ49bに記憶されている各種情報を読み出す処理を実行する。なお、各種情報には、記憶部51aに記憶されている操舵側中点情報θnsと、記憶部61aに記憶されている転舵側中点情報θntとを含む。
【0055】
つぎに、CPU49aは、操舵状態信号RD1を出力する(ステップ102)。ステップ102のタイミングで、CPU49aは、舵角中点補正処理を開始して準備処理を開始する。ステップ102において、CPU49aは、準備処理の実行中、操舵状態信号RD1を車載ネットワーク8に対して出力する。操舵状態信号RD1は、準備処理の実行中であることを示す情報である。なお、CPU49aは、準備処理の実行中、当該実行中の準備処理が完了するまでの間、操舵状態信号RD1を継続的に出力することになる。ステップ102において出力された操舵状態信号RD1は、車両制御装置7に入力される。車両制御装置7のCPU7aは、操舵状態信号RD1を入力すると、システム起動用の報知内容H1での報知をするように報知装置9の動作を制御する。システム起動用の報知内容H1は、準備処理の実行中であることを示す内容である。また、CPU7aは、操舵状態信号RD1を入力している間、準備処理の実行中、すなわち操舵制御装置1が起動時状態であることを判断する。この場合、CPU7aは、車両の走行を開始させることを待機している状態である。本実施形態において、操舵状態信号RD1は、システム起動用の報知内容H1を指示する信号である。つまり、ステップ102の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。また、操舵状態信号RD1により指示される報知内容H1での報知をするように報知装置9の動作を制御するCPU7aが実行する処理は、報知処理のうちの残りの処理である報知制御処理の一例である。
【0056】
つぎに、CPU49aは、舵角中点補正処理が完了したか否かを判断する(ステップ103)。ステップ103において、CPU49aは、操舵側及び転舵側のそれぞれの処理が完了したことを判断できる場合に、舵角中点処理が完了したことを判断する。なお、CPU49aは、操舵側の処理として、設定操舵角θs0を演算し、かつ、必要であれば操舵側中点情報θnsを記憶部51aに書き込みする。また、CPU49aは、転舵側の処理として、設定ピニオン角θp0を演算し、かつ、必要であれば転舵側中点情報θntを記憶部61aに書き込みする。
【0057】
つぎに、CPU49aは、舵角中点補正処理が完了したことを判断する場合(ステップ103:YES)、舵角同期処理が完了したか否かを判断する(ステップ104)。ステップ104のタイミングで、CPU49aは、舵角同期処理を開始する。ステップ104において、CPU49aは、操舵側及び転舵側のそれぞれの処理が完了したことを判断できる場合に、舵角同期処理が完了したことを判断する。なお、CPU49aは、転舵側の処理として、設定ピニオン角θp0を演算する。また、CPU49aは、操舵側の処理として、設定操舵角θs0を変化させることによって、操舵角θsとピニオン角θpとの位置関係が所定の対応関係を満たすように同期させる。
【0058】
つぎに、CPU49aは、舵角同期処理が完了したことを判断する場合(ステップ104:YES)、起動時状態において実行する準備処理の完了を設定し、通常処理を実行する通常制御状態へと状態遷移する。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD1の出力を停止するとともに、準備処理完了信号RFを車載ネットワーク8に対して出力する。ここで出力された準備処理完了信号RFは、車両制御装置7に入力される。車両制御装置7のCPU7aは、準備処理完了信号RFを入力すると、準備処理の完了、すなわち操舵装置2が通常制御状態へと状態遷移したことを判断する。この場合、CPU7aは、システム起動用の報知内容H1での報知を終了させるように報知装置9の動作を制御する。その後、CPU7aは、車両の走行を開始させることが可能な状態へと状態遷移する。
【0059】
また、ステップ103において、CPU49aは、舵角中点補正処理の実行中で未完了であることを判断する場合(ステップ103:NO)、第1強制終了条件が成立するか否かを判断する(ステップ105)。ステップ105において、CPU49aは、舵角中点補正処理を開始してから経過した時間である経過時間Taが閾時間Tathよりも大きいか否かを判断する。この場合、CPU49aは、経過時間Taが閾時間Tathよりも大きい場合に第1強制終了条件が成立することを判断する。また、CPU49aは、経過時間Taが閾時間Tath以下の場合に第1強制終了条件が成立しないことを判断する。ステップ105の処理は、舵角中点補正処理が長引いている場合、実行中で未完了の舵角中点補正処理を強制的に終了させるかどうかを判断するための処理である。本実施形態において、閾時間Tathは、舵角中点補正処理に要するとして想定される時間に対して十分に長い、例えば、数倍程度の時間として実験的に求められる範囲の値が設定されている。本実施形態において、経過時間Taが閾時間Tathよりも大きいことは強制終了条件の一例である。また、ステップ105の処理は、強制終了条件判断処理の一例である。
【0060】
つぎに、CPU49aは、第1強制終了条件が成立しないことを判断する場合(ステップ105:NO)、ステップ103の処理、すなわち舵角中点補正処理を継続して実行する。一方、CPU49aは、第1強制終了条件が成立することを判断する場合(ステップ105:YES)、ステップ107の処理を実行する。
【0061】
また、ステップ104において、CPU49aは、舵角同期処理の実行中で未完了であることを判断する場合(ステップ104:NO)、第2強制終了条件が成立するか否かを判断する(ステップ106)。ステップ106において、CPU49aは、舵角同期処理を開始してから経過した時間である経過時間Tbが閾時間Tbthよりも大きいか否かを判断する。この場合、CPU49aは、経過時間Tbが閾時間Tbthよりも大きい場合に第2強制終了条件が成立することを判断する。また、CPU49aは、経過時間Tbが閾時間Tbth以下の場合に第2強制終了条件が成立しないことを判断する。ステップ106の処理は、舵角同期処理が長引いている場合、実行中で未完了の舵角同期処理を強制的に終了させるかどうかを判断するための処理である。本実施形態において、閾時間Tbthは、舵角同期処理に要するとして想定される時間に対して十分に長い、例えば、数倍程度の時間として実験的に求められる範囲の値が設定されている。なお、閾時間Tbthは、閾時間Tathと異なる値である。本実施形態において、経過時間Tbが閾時間Tbthよりも大きいことは強制終了条件の一例である。また、ステップ106の処理は、強制終了条件判断処理の一例である。
【0062】
つぎに、CPU49aは、第2強制終了条件が成立しないことを判断する場合(ステップ106:NO)、ステップ104の処理、すなわち舵角同期処理を継続して実行する。一方、CPU49aは、第2強制終了条件が成立する場合(ステップ106:YES)、ステップ107の処理を実行する。
【0063】
つぎに、ステップ105:YES又はステップ106:YESの場合、CPU49aは、システム異常が原因であるか否かを判断する(ステップ107)。ステップ107において、CPU49aは、ステップ105:YES又はステップ106:YESを判断した原因を判断する。この場合、CPU49aは、舵角中点補正処理又は舵角同期処理の実行中に、後述の操舵状態信号RD2を出力したか否かを判断する。操舵状態信号RD2は、舵角中点補正処理又は舵角同期処理の実行中に、ステアリングホイール3に触れる等する運転者の介入があったか否かを示す情報である。CPU49aは、操舵状態信号RD2を出力していない場合、システム異常が原因であることを判断する。また、CPU49aは、操舵状態信号RD2を出力した場合、システム異常でないこと、すなわち運転者の介入が原因であることを判断する。本実施形態において、ステップ107の処理は、終了原因判断処理の一例である。
【0064】
舵角中点補正処理が長引く原因は、ハードウェア等のシステム異常が原因の場合と、ステアリングホイール3に触れる等する運転者の介入が原因の場合との大きく2つに分類される。例えば、システム異常が原因の場合、ハードウェア等が正常に動作しないことによって、舵角中点補正処理を進行させることができない。その結果、経過時間Taが閾時間Tathを超えてタイムアウトする。また、運転者の介入が原因の場合、運転者がステアリングホイール3に触れる等することによって、舵角中点補正処理の進行が妨げられて中断される。その結果、経過時間Taが閾時間Tathを超えてタイムアウトする。これらは、舵角同期処理が長引く原因についても同様である。例えば、システム異常が原因の場合、ハードウェア等が正常に動作しないことによって、舵角同期処理を進行させることができない。その結果、経過時間Tbが閾時間Tbthを超えてタイムアウトする。また、運転者の介入が原因の場合、運転者がステアリングホイール3に触れる等することによって、舵角同期処理の進行が妨げられて中断される。その結果、経過時間Tbが閾時間Tbthを超えてタイムアウトする。
【0065】
ステップ107において、CPU49aは、システム異常が原因であることを判断する場合(ステップ107:YES)、実行中の準備処理を強制的に終了させる(ステップ108)。ステップ108において、CPU49aは、舵角中点補正処理の実行中の場合、当該実行中の舵角中点処理を強制的に終了させる。また、CPU49aは、舵角同期処理の実行中の場合、当該実行中の舵角同期処理を強制的に終了させる。本実施形態において、ステップ108の処理は、強制終了処理の一例である。
【0066】
つぎに、CPU49aは、操舵状態信号RD3を出力する(ステップ109)。ステップ109において、CPU49aは、操舵状態信号RD1の出力を停止するとともに、操舵状態信号RD3を車載ネットワーク8に対して出力する。操舵状態信号RD3は、システム異常が原因で準備処理を強制的に終了させたことを示す情報である。この場合、CPU49aは、準備処理を完了することができないと判断して、操舵制御装置1の機能を停止等する機能停止状態へと状態遷移する。ステップ109において出力された操舵状態信号RD3は、車両制御装置7に入力される。車両制御装置7のCPU7aは、操舵状態信号RD3を入力すると、システム異常用の報知内容H3での報知をするように報知装置9の動作を制御する。システム異常用の報知内容H3は、システム異常が原因で準備処理を強制的に終了されたことを示す内容である。また、CPU7aは、操舵状態信号RD3を入力すると、準備処理が強制的に終了された、すなわち操舵制御装置1が通常制御状態に状態遷移できないことを判断する。この場合、CPU7aは、車両の走行を開始させることができないと判断して、車両の走行の機能を停止等するフェイル状態へと状態遷移する。本実施形態において、操舵状態信号RD3は、システム異常用の報知内容H3を指示する信号である。つまり、ステップ109の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。また、操舵状態信号RD3により指示される報知内容H3での報知をするように報知装置9の動作を制御するCPU7aが実行する処理は、報知処理のうちの残りの処理である報知制御処理の一例である。
【0067】
一方、ステップ107において、CPU49aは、運転者の介入が原因であることを判断する場合(ステップ107:NO)、実行中の準備処理を強制的に終了させる(ステップ110)。ステップ110において、CPU49aは、舵角中点補正処理の実行中の場合、当該実行中の舵角中点処理を強制的に終了させる。また、CPU49aは、舵角同期処理の実行中の場合、当該実行中の舵角同期処理を強制的に終了させる。本実施形態において、ステップ110の処理は、強制終了処理の一例である。
【0068】
つぎに、CPU49aは、操舵状態信号RD4を出力する(ステップ111)。ステップ111において、CPU49aは、操舵状態信号RD1の出力を停止するとともに、操舵状態信号RD4を車載ネットワーク8に対して出力する。操舵状態信号RD4は、運転者の介入が原因で準備処理を強制的に終了させたことを示す情報である。この場合、CPU49aは、準備処理を完了することができないと判断して、操舵制御装置1の機能を停止等する機能停止状態へと状態遷移する。ステップ111において出力された操舵状態信号RD4は、車両制御装置7に入力される。車両制御装置7のCPU7aは、操舵状態信号RD4を入力すると、電源再起動用の報知内容H4での報知をするように報知装置9の動作を制御する。電源再起動用の報知内容H4は、運転者の介入が原因で準備処理を強制的に終了されたことを示す内容である。また、CPU7aは、操舵状態信号RD4を入力すると、準備処理が強制的に終了された、すなわち操舵制御装置1が通常制御状態に状態遷移できないことを判断する。この場合、CPU7aは、車両を再起動して準備処理をやり直しすれば車両の走行を開始させることができると判断して車両の再起動を待機等するフェイル状態へと状態遷移する。本実施形態において、操舵状態信号RD4は、電源再起動用の報知内容H4を指示する信号である。つまり、ステップ111の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。また、操舵状態信号RD4により指示される報知内容H4での報知をするように報知装置9の動作を制御するCPU7aが実行する処理は、報知処理のうちの残りの処理である報知制御処理の一例である。
【0069】
<舵角中点補正処理について>
つぎに、CPU49aが操舵側準備処理部53を通じて実行する舵角中点補正処理における操舵側の処理の処理手順の一例について、
図4に示すフローチャートに従って説明する。
【0070】
同図に示すように、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立するか否かを判断する(ステップ201)。ステップ201において、CPU49aは、バッテリ交換情報FLGを入力する場合、バッテリ交換後、最初の電源起動時であることを判断する。一方、CPU49aは、バッテリ交換情報FLGを入力しない場合、バッテリ交換後、最初の電源起動時でないことを判断する。本実施形態において、バッテリ交換後、最初の電源起動時であることがバッテリ交換条件の一例である。
【0071】
メモリ49bの内容のうち、書き換え可能な内容については、バッテリ交換に伴ってクリアして初期化される。例えば、記憶部51aに記憶される内容は、書き換え可能な内容に相当し、バッテリ交換に伴ってクリアして初期化される。これにより、ステップ201において、CPU49aは、バッテリ交換後、最初の電源起動時であることを判断することによって、記憶部51aに記憶される内容がクリアして初期化されていることを判断している。一方、CPU49aは、バッテリ交換後、最初の電源起動時でないことを判断することによって、記憶部51aに記憶される内容がクリアして初期化されていないことを判断している。
【0072】
つぎに、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立することを判断する場合(ステップ201:YES)、ステアリングホイール3を左右一方の右方へ回転させる(ステップ202)。ステップ202において、CPU49aは、ステアリングホイール3を右方へ自動的に回転させるための目標回転トルクRT*を演算する。例えば、CPU49aは、仮操舵角θsiを操舵目標角θs*に追従させるべく仮操舵角θsiのフィードバック制御を通じて目標回転トルクRT*を演算する。仮操舵角θsiは、電源起動時の回転角θaの位置を仮の基準値として得られる積算角である。操舵目標角θs*は、ステアリングホイール3の回転範囲のうち、操舵側の処理の開始時における仮操舵角θsiの値から右方の回転限界位置3aを超えるように徐々に変化するように更新される値である。
【0073】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立するか否かを判断する(ステップ203)。ステップ203において、CPU49aは、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下であるか否かを判断する。この場合、CPU49aは、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下の場合に継続条件が成立することを判断する。また、CPU49aは、操舵トルクThがトルク閾値Ththよりも大きい場合に継続条件が成立しないことを判断する。ステップ203の処理は、操舵側の処理の実行中に運転者の介入があるか否かを判断するための処理である。本実施形態において、トルク閾値Ththは、運転者がステアリングホイール3に触れる等することによって、ステアリングホイール3の回転を妨げるとして実験的に求められる範囲の値が設定されている。
【0074】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立しないことを判断する場合(ステップ203:NO)、操舵状態信号RD2を出力し(ステップ204)、ステップ203の処理を繰り返し実行する。ステップ204において、CPU49aは、操舵状態信号RD2を車載ネットワーク8に対して出力する。操舵状態信号RD2は、舵角中点補正処理の実行中、運転者の介入があることを示す情報である。この場合、CPU49aは、操舵側の処理を継続することができないと判断して、実行中の操舵側の処理を中断する状態である。なお、ステップ203及びステップ204の処理を繰り返す場合、CPU49aは、舵角中点補正処理、すなわち操舵側の処理を継続的に中断することになる。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を継続的に出力することになる。ステップ204において出力された操舵状態信号RD2は、車両制御装置7に入力される。車両制御装置7のCPU7aは、操舵状態信号RD2を入力すると、警告用の報知内容H2での報知をするように報知装置9の動作を制御する。警告用の報知内容H2は、運転者の介入が解消されることを促す内容である。本実施形態において、操舵状態信号RD2は、システム異常用の報知内容H2を指示する信号である。つまり、ステップ204の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。また、操舵状態信号RD2により指示される報知内容H2での報知をするように報知装置9の動作を制御するCPU7aが実行する処理は、報知処理のうちの残りの処理である報知制御処理の一例である。
【0075】
一方、CPU49aは、継続条件が成立することを判断する場合(ステップ203:YES)、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達したか否かを判断する(ステップ205)。ステップ205において、CPU49aは、例えば、操舵側実電流値Iaを監視する。操舵側実電流値Iaは、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達するまでの間は大きな変化を伴わない。操舵側実電流値Iaは、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達すると絶対値が急増する。これは、ステアリング軸11の自動的な回転がストッパ機構11bを通じて規制されることによって、操舵側モータ13の回転が規制されるからである。この場合、操舵側モータ13の回転が規制されるなかでさらに操舵側モータ13を回転させようとして、目標回転トルクRT*が急増するとともに、操舵側実電流値Iaが急増する。CPU49aは、操舵側実電流値Iaの絶対値が電流閾値Iath以上の場合、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達したことを判断する。一方、CPU49aは、操舵側実電流値Iaの絶対値が電流閾値Iathよりも小さい場合、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達していないことを判断する。例えば、電流閾値Iathは、ステアリング軸11の回転がストッパ機構11bを通じて規制されることによって、操舵側モータ13の回転が規制されているとして実験的に求められる範囲の値が設定されている。
【0076】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達していないことを判断する場合(ステップ205:NO)、ステップ202~ステップ205の処理を繰り返し実行する。一方、CPU49aは、ステアリングホイール3が右方の回転限界位置3aに達していることを判断する場合(ステップ205:YES)、仮右限界位置θrlを一時的に記憶する(ステップ206)。ステップ206において、CPU49aは、右方の回転限界位置3aに達していることの判断時の仮操舵角θsiを仮右限界位置θrlとして一時的に記憶する。
【0077】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3を右方の他方である左方へ回転させる(ステップ207)。ステップ207において、CPU49aは、ステアリングホイール3を左方へ自動的に回転させるための目標回転トルクRT*を演算する。例えば、CPU49aは、ステップ202の処理と同様、仮操舵角θsiを操舵目標角θs*に追従させるべく仮操舵角θsiのフィードバック制御を通じて目標回転トルクRT*を演算する。操舵目標角θs*は、ステアリングホイール3の回転範囲のうち、右方の回転限界位置3aに達した場合における仮操舵角θsiの値から左方の回転限界位置3bを超えるように徐々に変化するように更新される値である。
【0078】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立するか否かを判断する(ステップ208)。ステップ208において、CPU49aは、ステップ203の処理と同様、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下であるか否かを判断する。CPU49aは、継続条件が成立しないことを判断する場合(ステップ208:NO)、操舵状態信号RD2を出力し(ステップ209)、ステップ208の処理を繰り返し実行する。ステップ209において、CPU49aは、ステップ204と同様、舵角中点補正処理の実行中、運転者の介入があることを示す操舵状態信号RD2を車載ネットワーク8に対して出力する。なお、ステップ208及びステップ209の処理を繰り返す場合、CPU49aは、舵角中点補正処理、すなわち操舵側の処理を継続的に中断することになる。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を継続的に出力することになる。つまり、ステップ209の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。
【0079】
一方、CPU49aは、継続条件が成立することを判断する場合(ステップ208:YES)、ステアリングホイール3が左方の回転限界位置3bに達したか否かを判断する(ステップ210)。ステップ210において、CPU49aは、ステップ205と同様、例えば、操舵側実電流値Iaを監視する。
【0080】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3が左方の回転限界位置3bに達していないことを判断する場合(ステップ210:NO)、ステップ207~ステップ210の処理を繰り返し実行する。一方、CPU49aは、ステアリングホイール3が左方の回転限界位置3bに達していることを判断する場合(ステップ210:YES)、仮左限界位置θllを一時的に記憶する(ステップ211)。ステップ211において、CPU49aは、左方の回転限界位置3bに達していることの判断時の仮操舵角θsiを仮左限界位置θllとして一時的に記憶する。
【0081】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3の操舵範囲である操舵実測範囲SRを演算する(ステップ212)。ステップ212において、CPU49aは、ステップ206で一時的に記憶した仮右限界位置θrlと、ステップ211で一時的に記憶した仮左限界位置θllとの差分の絶対値を操舵実測範囲SRとして演算する。
【0082】
つぎに、CPU49aは、操舵実測範囲SRを正常取得できたか否かを判断する(ステップ213)。ステップ213において、CPU49aは、ステップ212で演算した操舵実測範囲SRと設計値SR0との差分の絶対値が操舵範囲閾値SRthよりも小さいか否かを判断する。例えば、ステップ202又はステップ207の処理の実行中、ステアリングホイール3の回転を運転者が触れる等して妨げると、仮右限界位置θrl又は仮左限界位置θllとして正常な値が記憶されていない可能性がある。この場合、操舵実測範囲SRを正常取得できていない可能性がある。CPU49aは、操舵実測範囲SRと設計値SR0との差分の絶対値が操舵範囲閾値SRth以上の場合、操舵実測範囲SRを正常取得できていないことを判断する。一方、CPU49aは、操舵実測範囲SRと設計値SR0との差分の絶対値が操舵範囲閾値SRthよりも小さい場合、操舵実測範囲SRを正常取得できていることを判断する。例えば、設計値SR0は、ステアリングホイール3の操舵範囲を定める値として操舵装置2が搭載される車両毎に設定されている。また、操舵範囲閾値SRthは、ステアリングホイール3の操舵範囲の設計値SR0からずれていないことを判断できるとして公差を加味して得られる範囲の値が設定されている。
【0083】
つぎに、CPU49aは、操舵実測範囲SRを正常取得できなかったことを判断する場合(ステップ213:NO)、ステップ202~ステップ213の処理を繰り返し実行する。
【0084】
一方、CPU49aは、操舵実測範囲SRを正常取得できたことを判断する場合(ステップ213:YES)、中立実測位置を演算する(ステップ214)。ステップ214において、CPU49aは、ステップ206で一時的に記憶した仮右限界位置θrlと、ステップ211で一時的に記憶した仮左限界位置θllとの中点に対応する値を中立実測位置として演算する。中立実測位置と仮右限界位置θrlとの差分の絶対値と、中立実測位置と仮左限界位置θllとの差分の絶対値とは、互いに等しくなる。
【0085】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3を中立実測位置へ回転させる(ステップ215)。ステップ215において、CPU49aは、ステアリングホイール3をステップ214で演算した中立実測位置へ自動的に回転させるための目標回転トルクRT*を演算する。例えば、CPU49aは、仮操舵角θsiを操舵目標角θs*に追従させるべく仮操舵角θsiのフィードバック制御を通じて目標回転トルクRT*を演算する。操舵目標角θs*は、ステアリングホイール3の回転範囲のうち、左方の回転限界位置3bに達した場合における仮操舵角θsiの値から中立実測位置を示す値へと徐々に変化するように更新される値である。
【0086】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立するか否かを判断する(ステップ216)。ステップ216において、CPU49aは、ステップ203の処理と同様、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下であるか否かを判断する。CPU49aは、継続条件が成立しないことを判断する場合(ステップ216:NO)、操舵状態信号RD2を出力し(ステップ217)、ステップ216の処理を繰り返し実行する。ステップ217において、CPU49aは、ステップ204と同様、舵角中点補正処理の実行中、運転者の介入があることを示す操舵状態信号RD2を車載ネットワーク8に対して出力する。なお、ステップ216及びステップ217の処理を繰り返す場合、CPU49aは、舵角中点補正処理、すなわち操舵側の処理を継続的に中断することになる。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を継続的に出力することになる。つまり、ステップ217の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。
【0087】
一方、CPU49aは、継続条件が成立することを判断する場合(ステップ216:YES)、ステアリングホイール3が中立実測位置に達したか否かを判断する(ステップ218)。ステップ218において、CPU49aは、例えば、仮操舵角θsiを監視する。CPU49aは、仮操舵角θsiが中立実測位置に一致する場合、ステアリングホイール3が中立実測位置に達したことを判断する。一方、CPU49aは、仮操舵角θsiが中立実測位置に一致しない場合、ステアリングホイール3が中立実測位置に達していないことを判断する。
【0088】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3が中立実測位置に達していないことを判断する場合(ステップ218:NO)、ステップ215~ステップ218の処理を繰り返し実行する。一方、CPU49aは、ステアリングホイール3が中立実測位置に達していることを判断する場合(ステップ218:YES)、設定操舵角θs0を演算し(ステップ219)、操舵側の処理の完了を設定する。ステップ219のタイミングで、CPU49aは、中立実測位置を記憶部51aに書き込みする。この場合、CPU49aは、ステップ214で演算した中立実測位置に対応する仮操舵角θsiを操舵側中点情報θnsとして記憶部51aに書き込みする。ステップ219において、CPU49aは、記憶部51aに書き込んだ操舵側中点情報θnsに基づき回転角θaを補正して得られる設定操舵角θs0を演算する。設定操舵角θs0は、ステアリング中立位置に対する絶対角度であって、通常処理を実行する際に使用される操舵角θsとして使用される。
【0089】
また、ステップ201において、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立しないことを判断する場合(ステップ201:NO)、設定操舵角θs0を演算し(ステップ219)、操舵側の処理の完了を設定する。この場合のステップ219において、CPU49aは、ステップ101の処理で記憶部51aから読み出した情報のうち、操舵側中点情報θnsに基づき回転角θaを補正して得られる設定操舵角θs0を演算する。なお、ステップ201:NOの場合、CPU49aは、ステップ202~ステップ218の処理を実行しない。
【0090】
つぎに、CPU49aが転舵側準備処理部63を通じて実行する舵角中点補正処理における転舵側の処理の処理手順の一例について、
図5に示すフローチャートに従って説明する。なお、本実施形態において、CPU49aは、転舵側の処理の実行に伴って転舵ユニット6を動作させることはない。これにより、転舵側の処理の実行中、転舵輪5は転舵されない。
【0091】
同図に示すように、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立するか否かを判断する(ステップ301)。ステップ301において、CPU49aは、ステップ201と同様、バッテリ交換情報FLGを入力するか否かに基づいて、バッテリ交換条件が成立するか否かを判断する。
【0092】
つぎに、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立することを判断する場合(ステップ301:YES)、ピニオン絶対回転角θabpを取得し(ステップ302)、ラック中立位置に対応する値を演算する(ステップ303)。ステップ303において、CPU49aは、ピニオン絶対回転角θabpに対応する回転回数を演算する。また、CPU49aは、上記回転回数に基づき回転角θbを補正して得られるピニオン角θpについてのラック中立位置に対応する値を演算する。
【0093】
つぎに、CPU49aは、設定ピニオン角θp0を演算し(ステップ304)、転舵側の処理の完了を設定する。ステップ304のタイミングで、CPU49aは、ラック中立位置を記憶部61aに書き込みする。この場合、CPU49aは、ステップ303で演算したラック中立位置に対応する値を転舵側中点情報θntとして記憶部61aに書き込みする。ステップ304において、CPU49aは、記憶部61aに書き込んだ転舵側中点情報θntに基づき回転角θbを補正して得られる設定ピニオン角θp0を演算する。設定ピニオン角θp0は、ラック中立位置に対する絶対角度であって、通常処理を実行する際に使用されるピニオン角θpとして使用される。
【0094】
また、ステップ301において、CPU49aは、バッテリ交換条件が成立しないことを判断する場合(ステップ301:NO)、設定ピニオン角θp0を演算し(ステップ304)、転舵側の処理の完了を設定する。この場合のステップ304において、CPU49aは、ステップ101の処理で記憶部61aから読み出した情報のうち、転舵側中点情報θntに基づき回転角θbを補正して得られる設定ピニオン角θp0を演算する。なお、ステップ301:NOの場合、CPU49aは、ステップ302及びステップ303の処理を実行しない。
【0095】
上記により、操舵側の処理のステップ219の処理及び転舵側の処理のステップ304の処理後、CPU49aは、舵角中点補正処理が完了したことを判断することができる(ステップ103:YES)。
【0096】
<舵角中点補正処理に関わるステアリングホイールの動作について>
図6(a)は、舵角中点補正処理の実行の開始時におけるステアリングホイール3の初期位置がステアリング中立位置(図中「0(ゼロ)」)である場合を例示している。
【0097】
例えば、
図6(a)に示すように、舵角中点補正処理の実行が開始される場合、ステアリングホイール3は、右方へ自動的に回転し始める。この場合、
図6(g)に示すように、時間t1までの間、仮操舵角θsiは、右方の回転限界位置3aを超えるように更新される図中に一点鎖線で示した操舵目標角θs*に従って「0」から正の値側(図中「θsi(+)」)に向かって徐々に変化する。なお、
図6(g)中において、実線は仮操舵角θsiの変化を示し、一点鎖線は操舵目標角θs*の変化を示す。
【0098】
つぎに、
図6(b)に示すように、ステアリングホイール3は、右方の回転限界位置3aに達する場合、自動的に回転が停止する。この場合、
図6(g)に示すように、時間t1に達すると、仮操舵角θsiは、右方の回転限界位置3aに対応する値になってそれ以後変化しなくなる。なお、操舵目標角θs*は、仮操舵角θsiが変化しなくなった後も変化し続ける。その後、同図に示すように、操舵側実電流値Iaの絶対値が電流閾値Iath以上になる時間t2に達すると、その時の仮操舵角θsiの値である第1値θsi1が仮右限界位置θrlとして一時的に記憶される。
【0099】
つぎに、
図6(c)に示すように、ステアリングホイール3は、左方へ自動的に回転をし始める。この場合、
図6(g)に示すように、時間t3までの間、仮操舵角θsiは、左方の回転限界位置3bを超えるように更新される操舵目標角θs*にしたがって「0」から負の値側(図中「θsi(-)」)に徐々に変化する。
【0100】
つぎに、
図6(d)に示すように、ステアリングホイール3は、左方の回転限界位置3bに達する場合、自動的に回転が停止する。この場合、
図6(g)に示すように、時間t3に達すると、仮操舵角θsiは、左方の回転限界位置3bに対応する値になってそれ以後変化しなくなる。なお、操舵目標角θs*は、仮操舵角θsiが変化しなくなった後も変化し続ける。その後、同図に示すように、操舵側実電流値Iaの絶対値が電流閾値Iath以上になる時間t4に達すると、その時の仮操舵角θsiの値である第2値θsi2が仮左限界位置θllとして一時的に記憶される。
【0101】
つぎに、
図6(e)に示すように、ステアリングホイール3は、中立実測位置(図中「0」)へ自動的に回転をし始める。この場合、
図6(g)に示すように、時間t5までの間、仮操舵角θsiは、中立実測位置を示す値として更新される操舵目標角θs*にしたがって第2値θsi2から「0」に向かって徐々に増加する。
【0102】
つぎに、
図6(f)に示すように、ステアリングホイール3は、中立実測位置に達する場合、自動的に回転が停止する。この場合、
図6(g)に示すように、時間t5に達すると、仮操舵角θsiは、中立実測位置に対応する値になってそれ以後変化しなくなる。なお、操舵目標角θs*は、仮操舵角θsiが中立実測位置に対応する値に達する前に既に変化しなくなっている。その後、設定操舵角θs0を演算し、かつ、中立実測位置に対応する値を操舵側中点情報θnsとして記憶部51aに書き込みすることによって、舵角中点補正処理が終了される。
【0103】
<舵角同期処理について>
つぎに、CPU49aが操舵側準備処理部53を通じて実行する舵角同期処理における操舵側の処理の処理手順の一例について、
図7に示すフローチャートに従って説明する。
【0104】
同図に示すように、CPU49aは、ずれ量Δθを演算する(ステップ401)。ステップ401において、CPU49aは、例えば、舵角中点補正処理が完了時の設定操舵角θs0と設定ピニオン角θp0との差分の絶対値をずれ量Δθとして演算する。この場合、設定ピニオン角θp0は、操舵角θsとピニオン角θpとの比率である舵角比を考慮した設定操舵角θs0のスケールに変換された値である。
【0105】
つぎに、CPU49aは、ずれ量Δθが第1閾値θ1以下であるか否かを判断する(ステップ402)。本実施形態において、第1閾値θ1は、ずれ量Δθを有した状態で車両の走行を開始させたとしても、当該走行を開始させた車両の挙動が運転者に違和感を与え難いとして実験的に求められる範囲の値が設定されている。
【0106】
つぎに、CPU49aは、ずれ量Δθが第1閾値θ1以下であることを判断する場合(ステップ402:YES)、操舵側の処理の完了を設定する。一方、CPU49aは、ずれ量Δθが第1閾値θ1よりも大きいことを判断する場合(ステップ402:NO)、ずれ量Δθが第1閾値θ1よりも大きい、かつ、第2閾値θ2以下であるか否かを判断する(ステップ403)。第2閾値θ2は、ずれ量Δθをゼロ値に近付けるべくステアリングホイール3を回転させたとしても、当該ステアリングホイール3の回転が運転者に違和感を与え難いとして実験的に求められる範囲の値が設定されている。
【0107】
つぎに、CPU49aは、ずれ量Δθが第1閾値θ1よりも大きい、かつ、第2閾値θ2以下であることを判断する場合(ステップ403:YES)、ステアリングホイール3をずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置まで回転させる(ステップ404)。ステップ404において、CPU49aは、ステアリングホイール3をずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置まで自動的に回転させるための目標回転トルクRT*を演算する。例えば、CPU49aは、設定操舵角θs0を操舵目標角θs*に追従させるべく設定操舵角θs0のフィードバック制御を通じて目標回転トルクRT*を演算する。操舵目標角θs*は、設定操舵角θs0の値からずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置まで徐々に変化するように更新される値である。
【0108】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立するか否かを判断する(ステップ405)。ステップ405において、CPU49aは、ステップ203の処理と同様、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下であるか否かを判断する。CPU49aは、継続条件が成立しないことを判断する場合(ステップ405:NO)、操舵状態信号RD2を出力し(ステップ406)、ステップ405の処理を繰り返し実行する。ステップ406において、CPU49aは、ステップ204と同様、舵角同期処理の実行中、運転者の介入があることを示す操舵状態信号RD2を車載ネットワーク8に対して出力する。なお、ステップ405及びステップ406の処理を繰り返す場合、CPU49aは、舵角同期処理、すなわち操舵側の処理を継続的に中断することになる。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を継続的に出力することになる。つまり、ステップ406の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。
【0109】
一方、CPU49aは、継続条件が成立することを判断する場合(ステップ405:YES)、ステアリングホイール3がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に達したか否かを判断する(ステップ407)。ステップ407において、CPU49aは、例えば、設定操舵角θs0を監視する。CPU49aは、設定操舵角θs0がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に一致する場合、ステアリングホイール3がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に達したことを判断する。一方、CPU49aは、設定操舵角θs0がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に一致しない場合、ステアリングホイール3がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に達していないことを判断する。
【0110】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に達していないことを判断する場合(ステップ407:NO)、ステップ404~ステップ407の処理を繰り返し実行する。一方、CPU49aは、ステアリングホイール3がずれ量Δθが第1閾値θ1となる位置に達していることを判断する場合(ステップ407:YES)、操舵側の処理の完了を設定する。
【0111】
また、ステップ403において、CPU49aは、ずれ量Δθが第2閾値θ2よりも大きいことを判断する場合(ステップ403:NO)、ステアリングホイール3をずれ量Δθが「0(ゼロ)」となる位置まで回転させる(ステップ408)。ステップ408において、CPU49aは、ステアリングホイール3をずれ量Δθが「0」となる位置まで自動的に回転させるための目標回転トルクRT*を演算する。例えば、CPU49aは、設定操舵角θs0を操舵目標角θs*に追従させるべく設定操舵角θs0のフィードバック制御を通じて目標回転トルクRT*を演算する。操舵目標角θs*は、設定操舵角θs0の値からずれ量Δθが「0」となる位置まで徐々に変化するように更新される値である。
【0112】
つぎに、CPU49aは、継続条件が成立するか否かを判断する(ステップ409)。ステップ409において、CPU49aは、ステップ203の処理と同様、操舵トルクThがトルク閾値Thth以下であるか否かを判断する。CPU49aは、継続条件が成立しないことを判断する場合(ステップ409:NO)、操舵状態信号RD2を出力し(ステップ410)、ステップ409の処理を繰り返し実行する。ステップ409において、CPU49aは、ステップ204と同様、舵角同期処理の実行中、運転者の介入があることを示す操舵状態信号RD2を車載ネットワーク8に対して出力する。なお、ステップ409及びステップ410の処理を繰り返す場合、CPU49aは、舵角同期処理、すなわち操舵側の処理を継続的に中断することになる。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を継続的に出力することになる。つまり、ステップ410の処理は、報知処理のうちの一部の処理である報知内容指示処理の一例である。
【0113】
一方、CPU49aは、継続条件が成立することを判断する場合(ステップ409:YES)、ステアリングホイール3がずれ量Δθが「0」となる位置に達したか否かを判断する(ステップ411)。ステップ411において、CPU49aは、ステップ407と同様、例えば、設定操舵角θs0を監視する。CPU49aは、設定操舵角θs0がずれ量Δθが「0」となる位置に一致する場合、ステアリングホイール3がずれ量Δθが「0」となる位置に達したことを判断する。一方、CPU49aは、設定操舵角θs0がずれ量Δθが「0」となる位置に一致しない場合、ステアリングホイール3がずれ量Δθが「0」となる位置に達していないことを判断する。
【0114】
つぎに、CPU49aは、ステアリングホイール3がずれ量Δθが「0」となる位置に達していないことを判断する場合(ステップ411:NO)、ステップ408~ステップ411の処理を繰り返し実行する。一方、CPU49aは、ステアリングホイール3がずれ量Δθが「0」となる位置に達していることを判断する場合(ステップ411:YES)、操舵側の処理の完了を設定する。
【0115】
なお、CPU49aが転舵側準備処理部63を通じて実行する舵角同期処理における転舵側の処理は、設定ピニオン角θp0を演算する処理を含むことを除いて特別な処理を含まない。本実施形態において、CPU49aは、転舵側の処理の実行に伴って転舵ユニット6を動作させることはない。これにより、転舵側の処理の実行中、転舵輪5は転舵されない。
【0116】
上記により、操舵側の処理のステップ402:YES、ステップ407:YES、及びステップ411:YESの処理後、CPU49aは、舵角同期処理が完了したことを判断することができる(ステップ104:YES)。
【0117】
本実施形態において、例えば、舵角同期処理の完了後、第1閾値θ1以下のずれ量Δθが残っている場合、CPU49aは、当該残っているずれ量Δθが車両の走行開始後に「0」となるように転舵輪5の転舵位置を補正処理する。
【0118】
<舵角同期処理に関わるステアリングホイールの動作について>
図8(a)は、舵角同期処理の実行の開始時における転舵輪5の位置が、ラック中立位置に対して正の値側である右方にずれている場合(ステップ402:YES)を例示している。例えば、舵角中点補正処理が完了時のずれ量Δθが、第1閾値θ1以下の値を有する角度Raである。この場合、舵角同期処理は、ステアリングホイール3を回転させることなく、ずれ量Δθとして角度Raを有した状態で舵角同期処理が終了される。
【0119】
つぎに、
図8(b)に示すように、車両の走行開始後、ずれ量Δθは、角度Raが「0」となるように転舵輪5の転舵位置がステアリングホイール3の回転位置と所定の対応関係となるように補正される。
【0120】
図9(a)は、舵角同期処理の実行の開始時における転舵輪5の位置が、ラック中立位置に対して正の値側である右方にずれている場合(ステップ403:YES)を例示している。例えば、舵角中点補正処理が完了時のずれ量Δθが、第1閾値θ1よりも大きい、かつ、第2閾値θ2以下の値を有する角度Rbである。この場合、
図9(b)に示すように、舵角同期処理は、ステアリングホイール3を自動的に回転させることによって、ずれ量Δθとして第1閾値θ1を有した状態で舵角同期処理が終了される。
【0121】
つぎに、
図9(c)に示すように、車両の走行開始後、ずれ量Δθは、第1閾値θ1が「0」となるように転舵輪5の転舵位置がステアリングホイール3の回転位置と所定の対応関係となるように補正される。
【0122】
図10(a)は、舵角同期処理の実行の開始時における転舵輪5の位置が、ラック中立位置に対して正の値側である右方にずれている場合(ステップ403:NO)を例示している。例えば、舵角中点補正処理が完了時のずれ量Δθが、第2閾値θ2よりも大きい値を有する角度Rcである。この場合、
図10(b)に示すように、舵角同期処理は、ステアリングホイール3を自動的に回転させることによって、ずれ量Δθを「0」とした状態で舵角同期処理が終了される。
【0123】
<本実施形態の作用および効果>
CPU49aは、舵角中点補正処理及び舵角同期処理を含む準備処理の実行中であっても第1強制終了条件又は第2強制終了条件が成立してタイムアウトする場合、実行中の準備処理を強制的に終了させることができる。
【0124】
例えば、
図11(a)~(c)に示すように、起動スイッチ48がオン状態へ切り替えられる時間t6(
図11(a)中「オフ」から「オン」)から準備処理が開始される。これにより、ステアリングホイール3が自動的に回転する等して、舵角中点補正処理又は舵角同期処理が実行される。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD1を出力する(
図11(c)中「オフ」から「オン」)。出力された操舵状態信号RD1は、車両制御装置7に入力される。
【0125】
これにより、
図11(d)に示すように、車両制御装置7のCPU7aは、システム起動用の報知内容H1での報知をするように報知装置9の動作を制御する。
例えば、
図12(a)に示すように、報知装置9の表示装置HSでは、システム起動用の報知内容H1として、「システム起動中」のメッセージ画像M1が画像表示される。表示装置HSの画像表示により、運転者は、準備処理の実行中であることを把握することができる。
【0126】
つぎに、
図11(a)~(c)に示すように、起動スイッチ48がオン状態へ切り替えられた後、継続条件が成立しないことから運転者の介入が判断される時間t7(
図11(b)中「オフ」から「オン」)から準備処理が中断される。これにより、ステアリングホイール3の自動的な回転が妨げられる等して、舵角中点補正処理又は舵角同期処理が中断される。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を出力する。出力された操舵状態信号RD2は、車両制御装置7に入力される。
【0127】
これにより、
図11(d)に示すように、車両制御装置7のCPU7aは、警告用の報知内容H2での報知をするように報知装置9の動作を制御する。
例えば、
図12(b)に示すように、報知装置9の表示装置HSでは、警告用の報知内容H2として、「ステアリングから手を離して下さい」のメッセージ画像M2が画像表示される。表示装置HSの画像表示により、運転者は、ステアリングホイール3の自動的な回転を妨げている介入の解消を促されていることを把握することができる。
【0128】
つぎに、
図11(a)~(c)に示すように、運転者の介入が判断された後、継続条件が成立することから運転者の介入が判断されなくなる時間t8(
図11(b)中「オン」から「オフ」)から準備処理が再開される。これにより、ステアリングホイール3の自動的な回転が再開されて、舵角中点補正処理又は舵角同期処理が再開される。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD2を出力しなくなる。
【0129】
これにより、
図11(d)に示すように、車両制御装置7のCPU7aは、警告用の報知内容H2での報知を止めて、システム起動用の報知内容H1での報知をするように報知装置9の動作を制御する。表示装置HSの画像表示の変化により、運転者は、ステアリングホイール3の自動的な回転を妨げる介入を解消できたことによって準備処理が再開されることを把握することができる。
【0130】
つぎに、
図11(a)~(c)に示すように、運転者の介入が判断されなくなった後、第1強制終了条件又は第2強制終了条件が成立してタイムアウトする時間t9において、準備処理が強制的に終了される。この場合、CPU49aは、操舵状態信号RD1の出力を停止するとともに、操舵状態信号RD3又は操舵状態信号RD4のいずれかを出力する。出力された操舵状態信号RD3又は操舵状態信号RD4は、車両制御装置7に入力される。これにより、車両制御装置7のCPU7aは、システム異常用の報知内容H3での報知又は電源再起動用の報知内容H4での報知のいずれかの報知をするように報知装置9の動作を制御する。
【0131】
例えば、
図12(c)に示すように、報知装置9の表示装置HSでは、システム異常用の報知内容H3として、「修理点検を受けて下さい」のメッセージ画像M3が画像表示される。表示装置HSの画像表示により、運転者は、システム異常が原因で準備処理がタイムアウトしたことを把握することができる。また、この場合、運転者は、修理点検を受ける必要があることを把握することができる。
【0132】
また、
図12(d)に示すように、報知装置9の表示装置HSでは、電源再起動用の報知内容H4として、「電源再起動して下さい」のメッセージ画像M4が画像表示される。表示装置HSの画像表示により、運転者は、ステアリングホイール3の自動的な回転を妨げる介入が原因で準備処理がタイムアウトしたことを把握することができる。また、この場合、運転者は、車両の走行を可能にするために電源再起動の必要があることを把握することができる。
【0133】
上記のように、CPU49aは、準備処理の実行中、第1強制終了条件又は第2強制終了条件が成立することに起因して、準備処理を強制的に終了させる場合、その旨を運転者に報知するために操舵状態信号RD3又は操舵状態信号RD4のいずれかを出力する。報知装置9では、出力された操舵状態信号RD3又は操舵状態信号RD4に対応する内容の報知がなされる。
【0134】
例えば、実行中の準備処理が強制的に終了される場合、操舵装置2についての通常処理が可能になるまでの期間が長引くことになる。この場合、操舵装置2についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている理由が、実行中の準備処理の強制的な終了に起因することを、報知内容H3又は報知内容H4による報知を通じて運転者に把握させることができる。
【0135】
したがって、操舵装置2についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている場合でも運転者に対して不安を与え難くすることができる。
以上説明した本実施形態によれば、さらに以下に記載する作用および効果が得られる。
【0136】
(1-1)操舵制御装置1のCPU49aは、操舵装置2の制御を主に実行するように構成されている。また、車両制御装置7のCPU7aは、操舵装置2以外の制御を主に実行するように構成されている。これにより、準備処理に関わって実行される、強制終了条件判断処理、強制終了処理、及び報知処理は、操舵制御装置1のCPU49a又は車両制御装置7のCPU7aの機能として振り分けることができる。例えば、CPU49aは、ステップ105及びステップ106の処理と、ステップ108及びステップ110の処理と、ステップ109及びステップ111の処理とは、CPU49aの機能として振り分けられている。また、報知装置9の動作を制御するための処理は、CPU7aの機能として振り分けられている。したがって、CPU49a又はCPU7aの機能を適切に振り分けることができる。
【0137】
(1-2)起動時状態のとき、CPU49aは、強制終了条件が成立する原因を判断するステップ107の処理を実行するように構成されている。CPU49aが実行するステップ109及びステップ111の処理は、ステップ107の処理の判断の結果に基づいて、互いに異なる報知内容H3及び報知内容H4を指示する処理である。報知内容H3及び報知内容H4は、強制終了条件が成立する原因に応じて、運転者のその後の行動を促すことができる内容である。これにより、準備処理が強制的に終了される場合にその原因を運転者に把握させることができる。この場合、運転者は、原因に応じた対処を講ずることができる。これは、操舵装置2についての通常処理が可能になるまでの期間が長引いている場合でも運転者に対する不安を解消するのに効果的である。
【0138】
(1-3)操作部材は、左右方向に回転可能なステアリングホイール3である。また、準備処理は、舵角中点補正処理と舵角同期処理とを含んでいる。舵角中点補正処理は、ステアリングホイール3を自動的に回転させることによって、ステアリングホイール3の回転位置を規定するための基準位置である操舵側中点情報θnsを演算する処理を含んでいる。舵角同期処理は、ステアリングホイール3を自動的に回転させることによって、ステアリングホイール3の回転位置と転舵輪5の転舵位置との位置関係が対応するように同期させる処理を含んでいる。第1強制終了条件及び第2強制終了条件、すなわち閾時間Tath及び閾時間Tbthは、互いに異なる値である。これにより、舵角中点補正処理と舵角同期処理とを準備処理が含んでいる場合、第1強制終了条件及び第2強制終了条件を高いに異ならせることができる。これにより、第1強制終了条件及び第2強制終了条件の適正化を図ることができる。
【0139】
<他の実施形態>
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0140】
・上記実施形態において、準備処理は、舵角中点補正処理及び舵角同期処理のいずれかを含んでいればよい。ここに記載したその他の実施形態では、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0141】
・上記実施形態において、準備処理は、舵角中点補正処理及び舵角同期処理に加えて又は置き換えて、操舵ユニット4の機械的な異常があるか否かを検出する異常検出処理を含んでいてもよい。異常検出処理では、転舵ユニット6の機械的な異常があるか否かを検出するようにしてもよい。
【0142】
・上記実施形態において、閾時間Tath及び閾時間Tbthは、同一の値に設定してもよい。つまり、第1強制終了条件及び第2強制終了条件は、同一の条件を設定することができる。この場合、
図3の処理では、ステップ105の処理とステップ106の処理と統合することができる。
【0143】
・上記実施形態において、
図3の処理では、ステップ105及びステップ106のいずれかの処理を含んでいればよい。ここに記載したその他の実施形態では、上記実施形態と同様の作用及び効果を奏する。
【0144】
・上記実施形態において、
図3の処理では、ステップ107の処理を削除してもよい。この場合、ステップ106:YESの後には、ステップ108及びステップ109の処理が実行されるように構成してもよいし、ステップ110及びステップ111の処理が実行されるように構成してもよい。なお、ステップ110及びステップ111の処理が実行されるように構成する場合、ステップ110及びステップ111の処理が何度も繰り返されることを条件として、ステップ108及びステップ109の処理が実行されるように構成してもよい。
【0145】
・上記実施形態において、ステップ107の処理は、ステップ108又はステップ110の処理に相当する処理の後に実行されるように構成してもよい。
・上記実施形態において、ステップ109及びステップ111の処理は、車両制御装置7のCPU7aの機能として実現してもよい。この場合、操舵制御装置1のCPU49aは、ステップ107の処理の結果を示す情報を車両制御装置7に出力する機能を有していればよい。
【0146】
・上記実施形態において、ステップ105~ステップ107、ステップ109、及びステップ111の処理は、車両制御装置7のCPU7aの機能として実現してもよい。この場合、操舵制御装置1のCPU49aは、ステップ103及びステップ104の処理の結果を示す情報を車両制御装置7に出力する機能を有していればよい。その他、CPU7aでは、
図4の処理のうち、ステップ203及びステップ204等の継続条件が成立したか否かを判断する処理を実行するように構成してもよい。この場合、CPU7aには、トルクセンサ41を接続すればよい。また、
図4の処理では、ステップ203及びステップ204等の継続条件が成立したか否かを判断する処理を削除してもよい。
【0147】
・上記実施形態において、報知装置9は、操舵装置2の構成の一部として実現してもよい。例えば、報知装置9は、ステアリングホイール3に備え付けてもよい。この場合、ステップ109及びステップ111の処理は、それぞれ出力するとしていた情報に対応する報知内容での報知をするように報知装置9の動作を制御する処理に置き換えてもよい。ここに記載したその他の実施形態において、強制終了条件判断処理、強制終了処理、及び報知処理の全ては、操舵制御装置1のCPU49aの機能として振り分けられる。つまり、CPU49aが制御部に相当する。この場合、上記実施形態の作用及び効果を操舵装置2、すなわち操舵制御装置1の機能のみによって実現することができる。
【0148】
・上記実施形態において、CPU49aは、メモリ49bの内容からバッテリ交換後、最初の電源起動時であるか否かを判断してバッテリ交換情報FLGに相当する情報を内部的に設定する処理を実行するようにしてもよい。この場合、
図4のステップ201及び
図5のステップ301の処理は、バッテリ交換情報FLGに相当する情報を読み出してバッテリ交換条件が成立するか否かを判断する処理であればよい。
【0149】
・上記実施形態において、舵角中点補正処理又は舵角同期処理は、例えば、少なくとも操舵側の処理においてのみ実現されていればよい。
・上記実施形態において、舵角中点補正処理又は舵角同期処理の転舵側の処理では、操舵側の処理と同様、転舵輪5を自動的に転舵させる処理として実現することもできる。
【0150】
・上記実施形態において、舵角中点補正処理における操舵側の処理手順は、
図4に示す手順に限らず、適宜変更可能である。例えば、
図4に示すステップ202~ステップ206は、ステップ207~ステップ211の処理後に実行するように処理の順番を変更してもよい。
【0151】
・上記実施形態において、舵角中点補正処理における操舵側の処理、すなわち
図4の処理では、ステップ215~ステップ218の処理を削除してもよい。また、ステップ215~ステップ218の処理は、ステアリングホイール3を仮右限界位置θrl又は仮左限界位置θllへ回転させる処理であってもよい。つまり、ステップ215~ステップ218の処理は、舵角中点補正処理の完了時、ステアリングホイール3の位置が予め定めた位置に達するようにするための処理であればよい。
【0152】
・上記実施形態において、目標反力トルク演算部52は、操舵トルクTh、車速V、転舵側実電流値Ib、操舵角θs、及びピニオン角θpを入力として目標反力トルクTT*を演算することは必須ではない。例えば、操舵トルクTh及び車速Vを入力として目標反力トルクTT*を演算してもよい。
【0153】
・上記実施形態において、ピニオン角演算部61では、ラック軸22の移動量の検出値をピニオン角θpに換算する処理であってもよい。この場合、上記実施形態に対して、ピニオン角θpに関する制御量等は、ラック軸22の移動量の検出値によって換算されることになる。ここに記載したその他の実施形態では、ラック軸22の移動量の検出値が転舵ユニット6から得られる状態変数に相当する。
【0154】
・上記実施形態において、ステアリングホイール3の変位量としては、回転角θaの積算処理に基づき算出された量に限らない。例えば、ステアリング軸11の回転角を直接的に検出する舵角センサの検出値であってもよい。なお、舵角センサは、例えば、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3とトルクセンサ41との間に設けてもよい。
【0155】
・上記実施形態において、運転者が車両を操舵するために操作する操作部材としては、ステアリングホイール3に限らない。例えば、ジョイスティックであってもよい。
・上記実施形態において、ステアリングホイール3に機械的に連結される操舵側モータ13としては、3相のブラシレスモータに限らない。例えば、ブラシ付きの直流モータであってもよい。
【0156】
・上記実施形態において、操舵側減速機構14を備えることは必須ではない。
・上記実施形態において、転舵ユニット6は、転舵側モータ32の回転を伝達機構33を介して変換機構34に伝達したが、これに限らず、例えば、転舵側モータ32の回転を歯車機構を介して変換機構34に伝達するように転舵ユニット6を構成してもよい。また、転舵側モータ32が変換機構34を直接回転させるように転舵ユニット6を構成してもよい。さらに、転舵ユニット6が第2のラックアンドピニオン機構を備える構成とし、転舵側モータ32の回転を第2のラックアンドピニオン機構にてラック軸22の往復動に変換するように転舵ユニット6を構成してもよい。
【0157】
・上記実施形態において、転舵ユニット6としては、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とが連動している構成に限らない。換言すれば、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とを独立に制御できるものであってもよい。
【0158】
・上記実施形態は、操舵装置2を、操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、例えば、クラッチにより操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。
【符号の説明】
【0159】
1…操舵制御装置(車両用制御装置)
2…操舵装置
3…ステアリングホイール(操作部材)
4…操舵ユニット
5…転舵輪
6…転舵ユニット
7…車両制御装置(車両用制御装置)
7a…CPU(制御部、車両制御部)
9…報知装置
46…電源システム
49a…CPU(制御部、操舵制御部)
53…操舵側準備処理部
63…転舵側準備処理部