(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140716
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電池の処理方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/54 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01M10/54
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052017
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂田 幸之
(72)【発明者】
【氏名】藤永 悠志
(72)【発明者】
【氏名】空澤 光将
(72)【発明者】
【氏名】松田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 賢
(72)【発明者】
【氏名】清水 良
【テーマコード(参考)】
5H031
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031BB07
5H031BB09
5H031RR02
(57)【要約】
【課題】簡易かつ短時間で積層電極を分離すること。
【解決手段】リチウムイオン電池又は全固体電池のいずれかであり、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層電極を有する電池の処理方法において、リチウムの失活化を行った後に、積層電極21を水没させる水没工程S3と、積層電極21に電気パルスを印可して積層電極21を分離させる分離工程S4と、を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池又は全固体電池のいずれかであり、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層電極を有する電池の処理方法において、
リチウムの失活化を行った後に、前記積層電極を水没させる水没工程と、
前記積層電極に電気パルスを印可して前記積層電極を分離させる分離工程と、
を有する電池の処理方法。
【請求項2】
前記分離工程は、前記積層電極の極板同士を導通状態にした後、前記積層電極に電気パルスを印可する、
請求項1に記載の電池の処理方法。
【請求項3】
前記分離工程は、前記積層電極に所定の導通部材を貫通させることによって、前記積層電極の極板同士を導通状態にする、
請求項2に記載の電池の処理方法。
【請求項4】
前記電池は、前記正極板が接続される正極側の集電タブと、前記負極板が接続される負極側の集電タブとを有し、前記負極側の集電タブが、前記積層電極を挟んで前記正極側の集電タブの反対側に配置される電池であり、
前記積層電極のうち、前記負極側の集電タブ寄りの領域に前記導通部材を貫通させ、前記正極側及び負極側の集電タブを介して前記積層電極に電気パルスを印可する、
請求項3に記載の電池の処理方法。
【請求項5】
前記電池は、前記積層電極をラミネート材で覆い、かつ、前記ラミネート材の外部に一対の集電タブが露出するラミネート型であり、
前記一対の集電タブを利用して、前記電気パルスを前記積層電極に印可する、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池の処理方法。
【請求項6】
前記電池が電解液を有する場合、
電解液の除去、及び、リチウムの失活化と電解質除去とを行った後に、前記水没工程を行う、
請求項1から4のいずれか一項に記載の電池の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池や全固体電池には、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層電極を備えるものがある。この種の電池の正極合材には、ニッケル系、コバルト系、及びマンガン系からなる三元系正極材料(NCM)が用いられている。電池の廃棄時には、NCM等の有価金属を回収することが望まれる。
電池を破砕して有価金属等を回収する方法は、電池解体物が細粒化されるため、手間や時間がかかってしまう。破砕以外の方法として、ラミネートフィルムからなる外装体を取り外した後、積層電極を水没させ、積層電極と水との間に相対動を与えて正極板と負極板とを剥離状態にする方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、相対動によって剥離する方法は時間がかかってしまう。また、水中のワークの向き等によっては分離されない部分が発生する可能性がある。
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、簡易かつ短時間で積層電極を分離することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
リチウムイオン電池又は全固体電池のいずれかであり、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層電極を有する電池の処理方法において、リチウムの失活化を行った後に、前記積層電極を水没させる水没工程と、前記積層電極に電気パルスを印可して前記積層電極を分離させる分離工程と、を有する電池の処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0006】
簡易かつ短時間で積層電極を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の電池の処理方法を適用可能な対象電池を模式的に示す図である。
【
図2】対象電池の処理方法の各工程を示す図である。
【
図3】対象電池が全固定電池の場合における失活・水没工程の前後の状態を模式的に示す図である。
【
図5】分離工程で電気パルスを印可する状態を模式的に示す図である。
【
図6】分離工程で電気パルスを印可する状態の別例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0009】
[実施形態]
図1は、本発明の電池の処理方法を適用可能な電池(以下、対象電池と表記する)を模式的に示す図である。
対象電池10は、リチウムイオン電池、又は全固体電池等の二次電池であり、ラミネート型に構成されている。
対象電池10は、正極板11と負極板12とがセパレータ13を介して積層された多層体からなる積層電極21を有する。積層電極21は、外装体を構成するラミネート材22で覆われ、ラミネート材22からは一対の集電タブ23A、23Bが外部に露出する。
【0010】
この対象電池10は、パウチ型の電池、ラミネート型の電池セル、パウチ型の電池セル、リチウムイオン電池セル、及び、電池モジュール等と言うことができる。
対象電池10は、高エネルギー密度を有する蓄電デバイスとして注目される電池であり、今後の更なる普及が予測される。また、対象電池10は、ニッケル系、コバルト系、及びマンガン系からなる三元系正極材料(NCM)等の有価金属を含むので、電池廃棄時に有価金属等を回収することが望まれる。
【0011】
対象電池10の構成について更に説明する。
図1に示すように、正極板11と負極板12とは交互に配置され、正極板11と負極板12とからなる一対の極板群が複数対設けられる。
各正極板11は、矩形板状の正極集電体31を備え、正極集電体31の両面に、NCMを含む正極合材32が設けられる。正極集電体31は、例えば、アルミニウム箔又はアルミニウム板である。正極合材32は、例えば、ニッケル酸リチウムやコバルト酸リチウム等の正極活物質、導電材、導電材剤、及びバインダー等である。各正極板11からは正極端子11Aがそれぞれ延出し、各正極端子11Aは正極側の集電タブ23Aに接続される。
【0012】
各負極板12は、矩形板状の負極集電体41を備え、正極板11と対向する面に負極合材42を有する。各負極板12からは負極端子12Aがそれぞれ延出し、各負極端子12Aは負極側の集電タブ23Bに接続される。
一対の集電タブ23A,23Bは、銅、又はアルミニウム等の薄板状の金属材で形成され、外装体を構成する2枚のラミネート材22の間を通って外部に露出する。
ラミネート材22は、例えば、アルミニウム合金やステンレス鋼等の金属材を基材とするラミネートフィルムであり、所定の強度を有する外装体、及び、積層電極21を封止する封止体として機能する。
【0013】
セパレータ13は、正極板11と負極板12との間に配置され、正極板11と負極板12の短絡を防止する。対象電池10がリチウムイオン電池の場合、対象電池10の内部、つまり、ラミネート材22内には電解液が充填される。
これに対し、対象電池10が全固体電池の場合、ラミネート材22内には電解液がなく、正極板11と負極板12との間に固体電解質が設けられる。この固体電解質はセパレータ13を兼用する。
【0014】
電解液、及び固体電解質の電解質としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウム塩化合物が使用される。なお、対象電池10の各構成は、上記構成に限定されず、従来のラミネート型電池の構成を適用可能である。
【0015】
次に、NCM等の有価金属の取り出しに好適な対象電池10の処理方法について説明する。
図2は、対象電池10の処理方法の各工程を示す図である。
図3乃至
図5は、各工程の状態を模式的に示す図である。
図2に示すように、対象電池10の処理方法は、切開工程S1、失活工程S2、水没工程S3、及び分離工程S4からなる。
切開工程S1では、外装体を構成するラミネート材22の一部を切開し、外部から積層電極21へアクセス可能な状態にする。対象電池10がリチウムイオン電池の場合、切開した箇所から電解液を排出する。
【0016】
失活工程S2では、水没やシャワーといった公知の方法を利用して、積層電極21等に含まれるリチウムの一部を水酸化リチウム等のリチウム化合物に変化させ、水に溶けやすい物質にする。硫化水素が発生する場合には吸気と中和処理を行うことが必要である。水没工程S3では、積層電極21を水に浸漬させることによって、水溶性の水酸化リチウムや固体電解質等を水に溶かす。
【0017】
図3には、対象電池10が全固定電池の場合における失活・水没工程S2,S3の前後の状態を模式的に示している。
図3に示すように、失活・水没工程S2,S3によって、固体電解質や単体リチウムの少なくとも一部を分離できるので、充放電反応を抑制できる。続く分離工程S4では、積層電極21に電気パルスを印可して積層電極21を分離させる。
【0018】
ここで、
図3に示すように、積層電極21及びその周囲は疎の状態になるので、積層電極21の連続性が失われ、積層電極21は通電しない可能性が生じる。そのため、分離工程S4では、電気パルスの印可前に、
図4に示すように、積層電極21に、所定の導通部材51を貫通させることによって、積層電極21の極板11,12同士を導通させる工程、つまり、極板11,12同士を短絡させる工程が実施される。
【0019】
図4には、所定の導通部材51として、先端が尖った金属製の棒材を採用し、複数の導通部材51を、極板11,12の長手方向に間隔を空けて、ラミネート材22の外部から積層電極21に貫通させた場合を例示している。これにより、積層電極21をラミネート材22で覆った状態で、簡易かつ短時間で極板11,12同士を導通させることができる。また、複数箇所で板11,12同士を導通させるので、極板11,12同士を短絡させるのに好適な導通経路を形成できる。
なお、導通部材51とラミネート材22とが導通しないように、導通部材51とラミネート材22とを物理的に離間させる隙間S等を設けることが好ましい。
【0020】
図5には、分離工程S4で電気パルスを印可する状態を模式的に示している。
図5に示すように、対象電池10の一対の集電タブ23A、23Bに電気パルス印可装置55が接続される。電気パルス印可装置55は、一対の集電タブ23A、23B間に高圧の電気パルスを印可することによって、積層電極21の各極板11,12に電気パルスを印可する。電気パルスによりジュール熱が発生し、ジュール熱で各部が溶解することによって積層電極21の極板11,12及び残留物を分離できる。この場合、抵抗の高い正極合材32の箇所が高温になりやすいので、残留する正極合材32を分離し易くなる。
このように、一対の集電タブ23A、23Bを利用して電気パルスを印可すること、及び、電気パルスを利用することによって、簡易かつ短時間で積層電極21を分離することができる。
【0021】
ところで、例えば、正極集電体31にアルミニウム箔が使用され、負極集電体41に銅箔が使用されている場合、積層電極21に対し、
図4に示すように複数の導通部材51を貫通させると、通電した際にアルミニウム合金より銅の方が電気伝導性が高いため、銅箔側への通電が大きくなってしまう。そのため、アルミニウム箔への通電量が少なくなり、本来目的とする正極集電体31の分離効率が低くなってしまうおそれがある。
この場合、
図6に示すように、積層電極21のうち、負極側の集電タブ23B寄りの領域に一本の導通部材51を貫通させ、一対の集電タブ23A、23B間に高圧の電気パルスを印可するようにしてもよい。これにより、電気パルスが、
図6に一点鎖線で示す経路を流れる。
【0022】
この電気パルスが流れる経路は、負極集電体41については、一部(負極側の集電タブ23Bから導通部材51との間に相当)だけを通電経路にし、正極集電体31については、大部分(導通部材51と正極側の集電タブ23Aとの間に相当)を通電経路にするものとなる。これにより、負極集電体41よりも正極集電体31への通電を多くすることができ、正極集電体31よりも負極集電体41の電気伝導性が高い場合でも、正極集電体31の分離効率を高くすることが可能になる。
つまり、本構成では、負極側の集電タブ23Bが、積層電極21を挟んで正極側の集電タブ23Aの反対側に配置される対象電池10であり、この対象電池10の積層電極21のうち、負極側の集電タブ23B寄りの領域に導通部材51を貫通させ、正極側及び負極側の集電タブ23A、23Bを介して積層電極21に電気パルスを印可することにより、負極集電体41よりも正極集電体31への通電を多くし、正極集電体31よりも負極集電体41の電気伝導性が高い場合でも、正極集電体31の分離効率を高くすることが可能になる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態では、リチウムの失活化を行った後に、積層電極21を水没させる水没工程S3を行うので、リチウムと水分の反応を抑制できるとともに、水溶性を有する水酸化リチウムや固体電解質等を水に溶かすことができる。この水没工程S3の後、積層電極21に電気パルスを印可して積層電極21を分離させる分離工程S4を行うので、簡易かつ短時間で積層電極21を分離することができる。
これにより、従来の破砕方法や、相対動によって極板11,12を剥離する方法と比べ、簡易かつ短時間で積層電極21を分離することが可能になる。
【0024】
また、分離工程S4は、積層電極21の極板11,12同士を導通状態にした後、積層電極21に電気パルスを印可するので、全ての極板11,12に電気パルスを印可でき、積層電極21を適切に分離し易くなる。
【0025】
また、積層電極21に所定の導通部材51を貫通させることによって、積層電極21の極板11,12同士を導通状態にするので、簡易かつ短時間で極板11,12同士を導通状態にできる。しかも、積層電極21のラミネート材22を取り外すことなく、極板11,12同士を導通状態にすることが可能である。
なお、導通部材51は、
図4に示すような先端が尖った金属製の棒材に限定されない。例えば、門型形状の針を積層電極21に打ち込むステープラー等を利用して、極板11,12同士を導通状態にしてもよい。
【0026】
また、
図6に示したように、対象電池10は、負極側の集電タブ23Bが、積層電極21を挟んで正極側の集電タブ23Aの反対側に配置される電池であり、積層電極21のうち、負極側の集電タブ23B寄りの領域に導通部材51を貫通させ、正極側及び負極側の集電タブ23A、23Bを介して積層電極21に電気パルスを印可する。これにより、負極集電体41よりも正極集電体31への通電を多くし、正極集電体31よりも負極集電体41の電気伝導性が高い場合でも、正極集電体31の分離効率を高くすることが可能になる。
なお、正極集電体31の分離効率を十分に確保できる範囲で、導通部材51の位置や本数等を適宜に変更してもよく、また、
図3に示す導通部材51の配置を採用してもよい。
【0027】
また、対象電池10は、積層電極21をラミネート材22で覆い、かつ、ラミネート材22の外部に一対の集電タブ23A、23Bが露出するラミネート型であり、一対の集電タブ23A、23Bを利用して、電気パルスを積層電極21に印可する。これにより、電気パルス印可装置55と積層電極21との電気的接続を簡易に行うことができる。また、ラミネート材22を取り外すことなく、積層電極21へ電気パルスを印可することが可能になる。
【0028】
また、対象電池10が電解液を有する場合、電解液の除去、及び、リチウムの失活化と電解質除去とを行った後に水没工程S3を行うので、リチウムと水分の反応を十分に抑制できる。対象電池10がラミネート型の場合、ラミネート材22の一部を切開して電解液を排出することにより、電解液の除去作業が容易である。また、電解液の除去後に、処理液(例えば塩水)にラミネート型電池を水没させることにより切開部から処理液がラミネート内に侵入しリチウムの失活化と電解質除去を行うことができ作業が容易である。
【0029】
上記の実施形態は、あくまでも本発明の一実施の態様であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変形、及び応用が可能である。
例えば、上記の実施形態では、ラミネート材22を取り外すことなく、失活工程S2、水没工程S3、及び分離工程S4を実施する場合を説明したが、失活工程S2、水没工程S3、及び分離工程S4のいずれかの工程を、ラミネート材22を取り外して行うようにしてもよい。
【0030】
また、上記の実施形態では、積層電極21に導通部材51を貫通させることによって、極板11,12同士を導通状態にする場合を例示したが、極板11,12同士を導通状態にする任意の方法を適用してもよい。例えば、貫通させない導通部材によって、極板11,12同士を導通状態にしてもよい。
【0031】
また、上記の実施形態では、ラミネート型のリチウムイオン電池、及び、ラミネート型の全固体電池に本発明の電池の処理方法を適用する場合を説明したが、これに限定されない。つまり、本発明の電池の処理方法を、ラミネート型以外のリチウムイオン電池、及び、全固体電池に適用してもよい。
【0032】
[上記実施の形態によりサポートされる構成]
上記実施の形態は、以下の構成をサポートする。
【0033】
(構成1)リチウムイオン電池又は全固体電池のいずれかであり、正極板と負極板とがセパレータを介して積層された積層電極を有する電池の処理方法において、リチウムの失活化を行った後に、前記積層電極を水没させる水没工程と、前記積層電極に電気パルスを印可して前記積層電極を分離させる分離工程と、を有する電池の処理方法。
この方法によれば、簡易かつ短時間で積層電極を分離することができる。
【0034】
(構成2)前記分離工程は、前記積層電極の極板同士を導通状態にした後、前記積層電極に電気パルスを印可する、構成1に記載の電池の処理方法。
この方法によれば、全ての極板に電気パルスを印可でき、積層電極を適切に分離し易くなる。
【0035】
(構成3)前記積層電極に所定の導通部材を貫通させることによって、前記積層電極の極板同士を導通状態にする、構成2に記載の電池の処理方法。
この方法によれば、簡易かつ短時間で極板同士を導通状態にできる。また、積層電極の外装体を取り外すことなく、極板同士を導通状態にすることも可能である。
【0036】
(構成4)前記電池は、前記正極板が接続される正極側の集電タブと、前記負極板が接続される負極側の集電タブとを有し、前記負極側の集電タブが、前記積層電極を挟んで前記正極側の集電タブの反対側に配置される電池であり、前記積層電極のうち、前記負極側の集電タブ寄りの領域に前記導通部材を貫通させ、前記正極側及び負極側の集電タブを介して前記積層電極に電気パルスを印可する、構成3に記載の電池の処理方法。
この方法によれば、負極集電体よりも正極集電体への通電を多くし、正極集電体よりも負極集電体の電気伝導性が高い場合でも、正極集電体の分離効率を高くすることが可能になる。
【0037】
(構成5)前記電池は、前記積層電極をラミネート材で覆い、かつ、前記ラミネート材の外部に一対の集電タブが露出するラミネート型であり、前記一対の集電タブを利用して、前記電気パルスを前記積層電極に印可する、構成1から4のいずれか一項に記載の電池の処理方法。
この方法によれば、電気パルスを印可する装置と積層電極との電気的接続を簡易に行うことができ、かつ、ラミネート材を取り外すことなく、積層電極への電気パルスの印可が可能になる。
【0038】
(構成6)前記電池が電解液を有する場合、電解液の除去、及び、リチウムの失活化と電解質除去とを行った後に、前記水没工程を行う、構成1から4のいずれか一項に記載の電池の処理方法。
この方法によれば、リチウムと水分の反応を十分に抑制できる。また、対象電池がラミネート型の場合、ラミネート材の一部を切開して電解液を排出後に、処理液にラミネート型電池を水没させることにより切開部から処理液がラミネート内に侵入しリチウムの失活化と電解質除去を行うことができ作業が容易である。
【符号の説明】
【0039】
10…対象電池、11…正極板、12…負極板、13…セパレータ、21…積層電極、22…ラミネート材、22A,22B…集電タブ、31…正極集電体、32…正極合材、41…負極集電体、42…負極合材、51…導通部材、55…電気パルス印可装置。