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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140718
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】仮設構造体及び建物施工方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 5/14 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04G5/14 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052019
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】島袋 孝博
(72)【発明者】
【氏名】宮田 昌信
(72)【発明者】
【氏名】竹島 雅也
(57)【要約】
【課題】施工性の向上を図った転落防止用の仮設構造体を提供する。
【解決手段】仮設手摺り1は、建物の施工中に用いられ、建物の躯体B(梁B2)に取り付けられる。仮設手摺り1は、躯体B上において建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、躯体Bから上下方向に長尺に延びている第1支柱体10及び第2支柱体20と、第1支柱体及び第2支柱体それぞれの延出部分を連結する連結体30とを備えている。第1支柱体10、第2支柱体20は、それぞれ、躯体Bの上面に取り付けられるベース部11、21と、ベース部から上下方向に長尺に延びている支柱部14、24とを有している。支柱部14、24のうち、連結体30が連結される部分が、建物の出幅方向においてベース部11、21よりも内側に設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の施工中に用いられ、前記建物の躯体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、
前記躯体上において前記建物の間口方向及び出幅方向の一方向に間隔を空けて取り付けられ、前記躯体から上下方向に長尺に延びている第1支柱体及び第2支柱体と、
前記第1支柱体及び前記第2支柱体それぞれの延出部分を連結する連結体と、を備え、
前記第1支柱体、前記第2支柱体は、それぞれ、前記躯体の上面又は底面に取り付けられるベース部と、前記ベース部から上下方向に長尺に延びている支柱部と、を有し、
前記支柱部のうち、前記連結体が連結される部分が、前記建物の間口方向及び出幅方向の他方向において前記ベース部よりも内側又は外側に設けられていることを特徴とする仮設構造体。
【請求項2】
前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、
前記ベース部は、前記躯体を構成する梁の上面に取り付けられ、
前記支柱部は、前記ベース部から上方に延びており、
前記支柱部のうち、前記連結体が連結される部分は、前記建物の出幅方向において前記ベース部よりも内側に設けられており、
前記仮設構造体が前記梁の上面に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記梁上に設けられた柱よりも内側に配置され、又は隣り合う前記梁の間に設けられた柱よりも内側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造体。
【請求項3】
前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、
前記支柱部は、前記ベース部から上方へ延びている第1延出部と、前記第1延出部の先端部から前記第1延出部の延出方向とは傾斜する方向に延びている第2延出部と、前記第2延出部の先端部から上方へ延びている第3延出部と、を有し、
前記連結体は、前記第1支柱体の前記第3延出部と、前記第2支柱体の前記第3延出部とに連結され、
前記仮設構造体が前記躯体に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記ベース部及び前記第1延出部よりも内側又は外側に配置されることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造体。
【請求項4】
前記ベース部は、前記躯体を構成する梁の上面に取り付けられ、
前記第1支柱体、前記第2支柱体は、それぞれ、前記ベース部に間隔を空けて設けられ、前記ベース部から下方に向かってそれぞれ突出し、前記梁に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部及び第2突出部をさらに有し、
前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記梁の上部に間隔を空けて形成された前記貫通穴にそれぞれ挿通され、かつ、前記梁の下部に間隔を空けて形成され、前記貫通穴に対応する位置に配置された第2貫通穴にそれぞれ挿通されることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造体。
【請求項5】
前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、
前記連結体は、前記第1支柱体の側面と、前記第2支柱体の側面とに当接した状態で連結され、
前記仮設構造体が前記躯体の上面に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記第1支柱体及び前記第2支柱体よりも内側に配置され、かつ、前記建物の出幅方向の外側から前記第1支柱体及び前記第2支柱体によって支持されることを特徴とする請求項1に記載の仮設構造体。
【請求項6】
前記支柱部は、前記連結体に設けられた被係合部に着脱可能に係合する係合部を有し、
前記係合部は、前記支柱部の側面に設けられる第1係合部と、前記支柱部の側面のうち、前記第1係合部側とは反対側の側面に設けられる第2係合部と、を有していることを特徴とする請求項5に記載の仮設構造体。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載の仮設構造体を利用した建物施工方法であって、
前記躯体を構成する梁に前記仮設構造体を取り付ける工程と、
前記梁において前記仮設構造体よりも前記躯体の外側に位置する部分に外壁パネルを取り付ける工程と、
前記梁から前記仮設構造体を取り外す工程と、を含み、
前記仮設構造体を取り付ける工程では、
前記建物の出幅方向において前記梁上に設けられた柱よりも内側に前記連結体を配置し、又は隣り合う前記梁の間に設けられた柱よりも内側に前記連結体を配置し、
前記柱を跨るように前記連結体を取り付けることを特徴とする建物施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設構造体及び建物施工方法に係り、特に、建物の施工中に用いられ、前記建物の躯体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体及び仮設構造体を利用した建物施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物の施工時や施工後のメンテナンス時に用いられ、建物の躯体に取り付けられる転落防止用の足場や手摺り等が知られている。
例えば、特許文献1、2に記載の仮設手摺りは、建物の梁上において建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、梁から上方に延びている第1支柱体及び第2支柱体と、第1支柱体及び前記第2支柱体それぞれの延出部分を連結する連結体と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-83661号公報
【特許文献2】特開2021-55454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2のような転落防止用の仮設手摺りを用いた建物の施工において、より施工性の向上を図ることが求められていた。
例えば、特許文献1、2のような仮設手摺りでは、第1支柱体及び第2支柱体がそれぞれ建物の躯体(梁)から上方へ直線状に延びている。そのため、仮設手摺りの連結体が、梁上に設けられた柱と干渉しないように、仮設手摺りを取り付ける必要があった。そうすると、柱周辺部において仮設手摺りを取り付けられなかった。
また、建物の梁上に床部材(床パネル)を敷設する作業を行うときに、仮設手摺りの連結体と、作業者とが接触してしまい、施工作業に影響することがあった。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、従来よりも施工性の向上を図った仮設構造体及び建物施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明の仮設構造体によれば、建物の施工中に用いられ、前記建物の躯体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、前記躯体上において前記建物の間口方向及び出幅方向の一方向に間隔を空けて取り付けられ、前記躯体から上下方向に長尺に延びている第1支柱体及び第2支柱体と、前記第1支柱体及び前記第2支柱体それぞれの延出部分を連結する連結体と、を備え、前記第1支柱体、前記第2支柱体は、それぞれ、前記躯体の上面又は底面に取り付けられるベース部と、前記ベース部から上下方向に長尺に延びている支柱部と、を有し、前記支柱部のうち、前記連結体が連結される部分が、前記建物の間口方向及び出幅方向の他方向において前記ベース部よりも内側又は外側に設けられていること、により解決される。
上記構成により、施工性の向上を図った仮設構造体を実現できる。
詳しく述べると、仮設構造体が、第1支柱体及び第2支柱体と、連結体とを備えており、第1支柱体、第2支柱体それぞれの支柱部のうち、連結体が連結される部分が、建物の出幅方向(間口方向)においてベース部よりも内側又は外側の位置にオフセットされている。
そのため、建物の躯体に仮設構造体を取り付けたときに、仮設構造体が、躯体を構成する施工部材と干渉しないように、当該施工部材を躱して仮設構造体を取り付けることができる。
【0007】
このとき、前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、前記ベース部は、前記躯体を構成する梁の上面に取り付けられ、前記支柱部は、前記ベース部から上方に延びており、前記支柱部のうち、前記連結体が連結される部分は、前記建物の出幅方向において前記ベース部よりも内側に設けられており、前記仮設構造体が前記梁の上面に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記梁上に設けられた柱よりも内側に配置され、又は隣り合う前記梁の間に設けられた柱よりも内側に配置されると良い。
上記構成により、仮設構造体が梁上に取り付けられたときに、梁上に設けられた柱を躱して、あるいは隣り合う梁の間に設けられた柱を躱して仮設構造体(連結体)を取り付けることができる。
また上記のように、連結体が、建物の出幅方向において梁上に設けられた柱よりも内側に配置されることで、作業者が好適に外壁パネルの取り付け作業を行うことができる。すなわち、仮設構造体(連結体)と柱が干渉しないように、仮設構造体を仮設できる。
【0008】
このとき、前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、前記支柱部は、前記ベース部から上方へ延びている第1延出部と、前記第1延出部の先端部から前記第1延出部の延出方向とは傾斜する方向に延びている第2延出部と、前記第2延出部の先端部から上方へ延びている第3延出部と、を有し、前記連結体は、前記第1支柱体の前記第3延出部と、前記第2支柱体の前記第3延出部とに連結され、前記仮設構造体が前記躯体に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記ベース部及び前記第1延出部よりも内側又は外側に配置されると良い。
上記のように、例えば第1支柱体、第2支柱体をクランク形状とすることで、建物の躯体を構成する施工部材と干渉しない仮設構造体を実現できる。そのため、従来よりも施工性の向上を図ることができる。
【0009】
このとき、前記ベース部は、前記躯体を構成する梁の上面に取り付けられ、前記第1支柱体、前記第2支柱体は、それぞれ、前記ベース部に間隔を空けて設けられ、前記ベース部から下方に向かってそれぞれ突出し、前記梁に間隔を空けて設けられた貫通穴にそれぞれ挿通される第1突出部及び第2突出部をさらに有し、前記第1突出部及び前記第2突出部は、前記梁の上部に間隔を空けて形成された前記貫通穴にそれぞれ挿通され、かつ、前記梁の下部に間隔を空けて形成され、前記貫通穴に対応する位置に配置された第2貫通穴にそれぞれ挿通されると良い。
上記構成により、建物の梁上に仮設構造体を強固に取り付けることができる。
【0010】
このとき、前記第1支柱体、前記第2支柱体は、前記建物の間口方向に間隔を空けて取り付けられ、前記連結体は、前記第1支柱体の側面と、前記第2支柱体の側面とに当接した状態で連結され、前記仮設構造体が前記躯体の上面に取り付けられたときに、前記連結体が、前記建物の出幅方向において前記第1支柱体及び前記第2支柱体よりも内側に配置され、かつ、前記建物の出幅方向の外側から前記第1支柱体及び前記第2支柱体によって支持されると良い。
上記構成により、連結体が第1支柱体及び第2支柱体によって強固に支持されることになる。そのため、連結体の支持力を安定させることができ、作業者に対する転落防止機能を高めることができる。
【0011】
このとき、前記支柱部は、前記連結体に設けられた被係合部に着脱可能に係合する係合部を有し、前記係合部は、前記支柱部の側面に設けられる第1係合部と、前記支柱部の側面のうち、前記第1係合部側とは反対側の側面に設けられる第2係合部と、を有していると良い。
上記構成により、第1支柱体、第2支柱体それぞれの両側面のうち、任意の側面に連結体を連結させることができる。また、部品の共通化を図ることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の仮設構造体及び建物施工方法によれば、建物の施工時や施工後のメンテナンス時において、従来よりも施工性の向上を図ることができる。
また、狭小スペースにおける建物の施工であっても、安定性に優れ、容易に取り付け及び取り外しすることが可能な仮設構造体を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】建物の躯体に仮設手摺りが取り付けられた状態を示す図である。
図2】仮設手摺りの斜視図である。
図3図2の要部拡大図であって、支柱体及び突出体を示す図である。
図4】仮設手摺りを用いた建物施工方法を示す工程図である。
図5A】躯体の側面図であって、仮設手摺りを取り付ける前の状態を示す図である。
図5B】梁に対し仮設手摺りを取り付けた状態を示す図である。
図5C】梁及び柱に対し外壁パネルを取り付ける様子を示す図である。
図5D】外壁パネルを取り付けた状態を示す図である。
図5E】仮設手摺りを取り外した状態を示す図である。
図6】床パネルの敷設作業において躯体に仮設手摺りが取り付けられた状態を示す図である。
図7】躯体(梁)に仮設手摺が吊り下げられて取り付けられた状態を示す図である。
図8】第2実施形態の仮設手摺りの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る実施形態について図1図8を参照して説明する。
本実施形態は、建物の施工中に用いられ、建物の躯体に取り付けられる転落防止用の仮設構造体であって、従来よりも施工性の向上を図ることを可能とする「仮設構造体」に関するものである。また、「仮設構造体を用いた建物施工方法」に関するものである。
なお、本実施形態では「仮設手摺り」が仮設構造体に相当する。
【0015】
<全体構成>
仮設手摺り1は、図1図3に示すように、建物の施工中に用いられる転落防止用の仮設構造体であって、建物の躯体Bに外壁パネルB4を取り付ける前に取り付けられ、外壁パネルB4を取り付けた後に躯体Bから取り外されるものである。
以下、建物の躯体Bを説明した後に、仮設手摺り1の詳細を説明する。
【0016】
建物の躯体Bは、図1に示すように、建物の間口方向に間隔を空けて設けられ、上下方向に長尺な柱B1と、柱B1同士を連結し、躯体Bの間口方向に延びている梁B2と、梁B2上に固定される床パネルB3と、柱B1及び梁B2にパネル固定金具B5を介して取り付けられ、間口方向に沿って並ぶように配置される外壁パネルB4と、を備えている。
【0017】
柱B1は、躯体Bの出幅方向において梁B2と重なる位置(同じ位置)に配置されている。具体的には、柱B1は、隣り合う梁B2の間に配置されている。なお、柱B1が間柱(小柱)のような場合には、柱B1が梁B2上に取り付けられることもある。
床パネルB3は、躯体Bの出幅方向において柱B1及び梁B2よりも内側に配置されている。具体的には、床パネルB3は、柱B1とは重ならない位置に配置され、かつ、梁B2の上フランジB2aの上面に一部重なるように載置されている。
【0018】
外壁パネルB4は、躯体Bを構成する板状の外壁材であって、躯体Bの出幅方向において柱B1及び梁B2よりも外側に配置されている。
具体的には、外壁パネルB4は、矩形板状のパネルフレームB4aと、パネルフレームB4aの表面に固定される仕上げ面材B4bと、を有している。
図5C、5Dに示すように、パネルフレームB4aの裏面における下端部には、パネル固定金具B5(パネル固定穴B5a)に固定するための固定軸B4c、B4dが設けられている。
また、パネルフレームB4aの裏面における上端部には、第2パネル固定金具B6(パネル固定穴B6a)に固定するための固定ナットB4eが設けられている。
【0019】
上記躯体Bにおいて、図1に示すように、仮設手摺り1は、梁B2の上面に取り付けられる。そして、仮設手摺り1が梁B2の上面に取り付けられたときに、仮設手摺り1の一部(連結体30)が、躯体Bの出幅方向において柱B1よりも内側にオフセットして配置される。つまりは、仮設手摺り1の一部が柱B1を躱すことができ、梁B2に沿って仮設手摺り1を連続的に伸ばすことができる。
そのため、柱B1の近辺においても仮設手摺り1を連続的に仮設することができる。そして、より安全性をもって作業者が外壁パネルB4の取り付け作業を行うことができる。
【0020】
<仮設手摺りの詳細>
仮設手摺り1は、図1図3に示すように、躯体B(梁B2)上において間口方向に間隔を空けて取り付けられ、梁B2から上下方向に長尺に延びている第1支柱体10及び第2支柱体20と、第1支柱体10及び第2支柱体20それぞれの延出部分を連結する連結体30と、を備えている。
連結体30は、上下方向に間隔を空けて設けられ、支柱体10、20の上方部、中央部をそれぞれ連結している。
【0021】
第1支柱体10は、図1図3に示すように、梁B2の上面に取り付けられるベース部11と、ベース部11から下方に向かって突出し、梁B2に挿通される第1突出部12及び第2突出部13と、ベース部11から上方に長尺に延びている支柱部14と、支柱部14の上方部分に設けられ、連結体30を連結するための係合軸15と、を有している。
第2支柱体20は、第1支柱体10と同様の形状からなり、ベース部21と、第1突出部22及び第2突出部23と、支柱部24と、を有している。
【0022】
ベース部11は、仮設手摺り1の取り付け強度(曲げ強度)を確保するベース部材であって、梁B2の上面に当接している。
具体的には、ベース部11は、第1支柱体10の下端部から幅方向の両側に突出している第1ベース部11aと、第1支柱体10の下端部の内側面に設けられ、第1支柱体10の下端部及び第1ベース部11aを連結する第2ベース部11bと、を有している。
【0023】
第1ベース部11a、第2ベース部11bは、それぞれ板状部材からなり、梁B2の上面に当接している。
第1ベース部11aのうち、梁B2の貫通穴B2b(B2d)に対向する位置には、第1突出部12、第2突出部13が溶接されている。
第2ベース部11bは、略台形形状を有し、上下方向において支柱部14側から梁B2側へ向かうに従って傾斜しながら広がっている。
【0024】
第1突出部12、第2突出部13は、図3に示すように、上下方向に長尺な棒状部材であって、ベース部11に間隔を空けて配置されている。
第1突出部12は、第2突出部13よりも長尺となるように突出している。また、第1突出部12、第2突出部13それぞれの先端部12a、13aは、テーパー形状を有し、それぞれ先端に向かうほど細くなっている。
【0025】
第1突出部12、第2突出部13は、ベース部11から下方に向かってそれぞれ突出し、梁B2の上フランジB2aに間隔を空けて設けられた貫通穴B2bにそれぞれ挿通されている。また、第1突出部12、第2突出部13は、下フランジB2cに間隔を空けて設けられ、貫通穴B2bに対応する位置にある第2貫通穴B2dにそれぞれ挿通されている。
そのため、安定性に優れながら、容易に取り付け及び取り外すことが可能な仮設手摺り1を実現できる。
【0026】
支柱部14は、図2図3に示すように、断面矩形状の長尺な中空体であって、ベース部11から上方に延びている。
支柱部14は、クランク形状を有し、ベース部11から上方へ延びている第1延出部14aと、第1延出部14aの先端部から第1延出部14aの延出方向とは傾斜する方向に延びている第2延出部14bと、第2延出部14bの先端部から上方へ延びている第3延出部14cと、を有している。
【0027】
第2延出部14bは、第1延出部14aの先端部から屈曲し、第1延出部14aに対して建物の出幅方向の内側に向かって上方傾斜するように延びている。
具体的には、第2延出部14bは、第1延出部14aに対して約45度傾くように延びている。
【0028】
第3延出部14cは、第2延出部14bの先端部から上方へ屈曲して延びている。
具体的には、第3延出部14cは、第2延出部14bに対して約45度傾くように延びている。
第3延出部14cの上方部、中央部には、連結体30の延出端部に設けられた係合穴31、32を着脱可能に係合させるための係合軸15(係合部)が設けられている。
【0029】
係合軸15は、例えばスプリング式のグラビティロックであって、支柱部14の内側面に設けられ、躯体Bの内側に突出する第1係合軸15aと、支柱部14の外側面に設けられ、躯体Bの外側に突出する第2係合軸15bと、を有している。
【0030】
なお、第2支柱体20のベース部21、第1突出部22、第2突出部23、支柱部24及び係合軸25は、第1支柱体10と同様の形状を有している。
支柱部24は、クランク形状を有し、第1延出部24aと、第2延出部24bと、第3延出部24cと、を有している。
【0031】
連結体30は、図1図3に示すように、板状の長尺体として形成されており、梁B2の長尺方向に沿って延びている。
連結体30の延出方向の両端部には、第1支柱体10、第2支柱体20それぞれに設けられた係合軸15、25に着脱可能に係合する係合穴31、32が形成されている。
【0032】
上記構成において、図1図3に示すように、仮設手摺り1が躯体B(梁B2)の上面に取り付けられたときに、第1支柱体10、第2支柱体20のうち、連結体30が連結される部分(第3延出部14c、24c)が、躯体Bの出幅方向においてベース部11よりも内側に設けられている。
そして、連結体30が、躯体Bの出幅方向において柱B1よりも内側に配置されている。
そうすることで、仮設手摺り1(連結体30)と柱B1が干渉しないように、仮設手摺り1を仮設することができる。そして、作業者が好適に外壁パネルB4の取り付け作業を行うことができる。
【0033】
また上記構成において、図1図3に示すように、仮設手摺り1が躯体B(梁B2)の上面に取り付けられたときに、連結体30が、第1支柱体10の内側面と、第2支柱体20の内側面とに当接した状態で連結される。
そして、連結体30が、躯体Bの出幅方向において第1支柱体10及び第2支柱体20よりも内側に配置され、かつ、躯体Bの出幅方向の外側から第1支柱体10及び第2支柱体20によって支持される。
そうすることで、連結体30が第1支柱体10及び第2支柱体20によって強固に支持される。そのため、連結体30の支持力を安定させることができる。
【0034】
<仮設構造体を利用した建物施工方法>
次に、仮設手摺り1を利用した建物施工方法について図4図5A~5Eに基づいて説明する。具体的には、躯体B(梁B2)に仮設手摺り1を仮設し、外壁パネルB4を取り付ける建物施工方法について説明する。
当該施工方法は、「手摺り取り付け工程」と、「外壁パネル取り付け工程」と、「手摺り取り外し工程」とを少なくとも含むものである。
なお、建物の施工にあたって、上記以外の施工工程については説明を省略する。
【0035】
「手摺り取り付け工程」では、図5A、5Bに示すように、作業者が、躯体Bを構成する梁B2の上面に仮設手摺り1を取り付ける(ステップ1(S1))。
具体的には、作業者が、躯体Bの間口方向に間隔を空けて第1支柱体10、第2支柱体20を取り付ける。そして、躯体Bの出幅方向において梁B2上に設けられた柱B1よりも内側に連結体30をオフセット配置し、柱B1を跨るように連結体30を取り付ける。
そうすることで、柱B1を躱し、仮設手摺り1を連続して伸ばすことができる。
【0036】
「外壁パネル取り付け工程」では、図5C、5Dに示すように、作業者が、梁B2において仮設手摺り1よりも躯体Bの外側に位置する部分に外壁パネルB4を取り付ける(ステップ2)。
具体的には、作業者が、柱B1及び梁B2に設けられたパネル固定金具B5、第2パネル固定金具B6に外壁パネルB4を取り付ける。
外壁パネルB4を取り付けるときには、図5Cに示すように、まず、外壁パネルB4の下端部の固定軸B4c、B4dをパネル固定穴B5a、B6aに嵌合させる。その後、外壁パネルB4を躯体B側に引き寄せて、図5Dに示すように、外壁パネルB4の上端部の固定ナットB4eを、別途設けられた第2パネル固定金具B6のパネル固定穴B6aに連通させて固定ボルトB7によって固定する。
なお、外壁パネルB4を取り付けるにあたって、躯体Bに対し間口方向に延びた仮設手摺り1を位置決め部材として利用できる。
【0037】
「手摺り取り外し工程」では、図5Eに示すように、作業者が、梁B2から仮設手摺り1を取り外す(ステップ3)。
上記ステップ1~ステップ3を経て本施工工程を終了する。
上記建物施工方法であれば、施工性の向上を図った建物施工方法を実現できる。具体的には、第1支柱体10、第2支柱体20をクランク形状とすることで、躯体Bを構成する施工部材(例えば柱B1)と干渉しない仮設手摺り1を実現できる。
【0038】
<仮設手摺りのその他の利用>
次に、床パネルB3の敷設作業において躯体Bに仮設手摺り1を取り付ける実施例について、図6に基づいて説明する。
仮設手摺り1は、図6に示すように、梁B2の上面に取り付けられている。
第1支柱体10(支柱部14)の第3延出部14cは、躯体Bの出幅方向において第1延出部14aよりも外側にオフセット配置されている。同様に、第2支柱体20の第3延出部24cは、第1延出部24aよりも外側にオフセット配置されている。
【0039】
上記構成により、連結体30が、躯体Bの出幅方向において梁B2よりも外側に配置されることになる。
そうすることで、梁B2上に床パネルB3を敷設する作業を行うときに、仮設手摺り1の連結体30と、作業者とが干渉しないようにできる。そのため、作業者が作業領域を確保し易くなり、床パネルB3の敷設作業を好適に行うことができる。
【0040】
そのほか、図7に示すように、躯体B(梁B2)の底面に仮設手摺り1を吊り下げるように取り付けることもできる。
そうすることで、例えば、建物の階段部における踊り場(中二階)において転落防止用の仮設構造体として利用できる。
【0041】
<仮設手摺りの第2実施形態>
次に、第2実施形態の仮設手摺り101について図8に基づいて説明する。
なお、上述した仮設手摺り1と重複する内容は説明を省略する。
【0042】
仮設手摺り101は、梁B2の上面に取り付けられ、上下方向に長尺に延びている第1支柱体110及び第2支柱体120と、連結体130と、を備えている。
第1支柱体110は、ベース部111と、ベース部111から下方に向かって突出し、梁B2に挿通される第1突出部112及び第2突出部113と、ベース部11から上方に延びている支柱部114と、支柱部14の上方部分に設けられる係合軸115と、を有している。
【0043】
支柱部114は、図8に示すように、側面視においてF字形状を有しており、ベース部111から上方へ延びている第1延出部114aと、第1延出部114aの延出方向の先端部、中央部からそれぞれ水平方向に突出している第2延出部114b、114cと、を有している。
第2延出部114b、114cは、それぞれ第1延出部114aの延出方向とは直交する方向に屈曲して延びている。
係合軸115は、第2延出部114b、114cの先端部に取り付けられている。
【0044】
上記シンプルな構成であっても、仮設手摺り101が梁B2の上面に取り付けられたときに、仮設手摺り1の一部(連結体130)が、躯体Bの出幅方向において柱B1よりも内側にオフセットして配置される。つまりは、仮設手摺り1の一部が柱B1を躱すことができ、梁B2に沿って仮設手摺り1を連続的に伸ばすことができる。
【0045】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、図1に示すように、仮設手摺り1が「仮設構造体」に相当するものとして説明されているが、特に限定されることなく変更可能である。
例えば、仮設手摺りではなく、仮設足場であっても良い。あるいは、仮設梯子、仮設壁等であっても良い。
「仮設構造体」を仮設足場として利用する場合には、連結体30が平坦な足場台(天面台)として構成されると良い。
【0046】
上記実施形態では、図1に示すように、仮設手摺り1(支柱体10、20)が、躯体Bのうち梁B2に取り付けられているが、特に限定されることなく、躯体Bの所定の施工部材に取り付けられていても良い。
【0047】
上記実施形態では、図1に示すように、第1支柱体10、第2支柱体20が、躯体Bの間口方向に間隔を空けて取り付けられているが、特に限定されることなく、躯体Bの出幅方向に間隔を空けて取り付けられても良い。
その場合には、第1支柱体10及び第2支柱体20に連結される連結体30が、躯体B間口方向においてベース部11よりも内側又は外側にオフセット配置されることになる。
躯体B内において上記のように仮設手摺り1の取り付け位置、取り付け向きを変更しても良い。
【0048】
上記実施形態では、主として本発明に係る仮設構造体及び建物施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
B 躯体(建物の躯体)
B1 柱
B2 梁(施工部材)
B2a 上フランジ
B2b 貫通穴(第1貫通穴)
B2c 下フランジ
B2d 第2貫通穴
B3 床パネル
B4 外壁パネル
B4a パネルフレーム
B4b 仕上げ面材
B4c、B4d 固定軸
B4e 固定ナット
B5 パネル固定金具
B5a パネル固定穴
B6 第2パネル固定金具
B6a パネル固定穴
B7 固定ボルト
1 仮設手摺り(仮設構造体)
10 第1支柱体
11 ベース部
11a 第1ベース部
11b 第2ベース部
12 第1突出部
12a 先端部
13 第2突出部
13a 先端部
14 支柱部
14a 第1延出部
14b 第2延出部
14c 第3延出部
15 係合軸(係合部)
15a 第1係合軸(第1係合部)
15b 第2係合軸(第2係合部)
20 第2支柱体
21 ベース部
22 第1突出部
23 第2突出部
24 支柱部
24a 第1延出部
24b 第2延出部
24c 第3延出部
25 係合軸
30 連結体
31、32 係合穴(被係合部)
101 仮設手摺り(仮設構造体)
110 第1支柱体
111 ベース部
112 第1突出部
113 第2突出部
114 支柱部
114a 第1延出部
114b、114c 第2延出部
115 係合軸(係合部)
120 第2支柱体
130 連結体
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7
図8