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特開2024-140723表示制御方法、表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140723
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】表示制御方法、表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 35/23 20240101AFI20241003BHJP
【FI】
B60K35/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052027
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231512
【氏名又は名称】日本精機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】秦 誠
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA19
3D344AB01
3D344AC25
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両の姿勢変動による画像(仮想オブジェクト)の仮想現実感の低下を抑制する。
【解決手段】ヘッドアップディスプレイ装置は、車両の前方の路面と重なる虚像表示領域VS内の第1の領域VS10に表示される第1虚像V10と、第1の領域VS10より虚像表示領域VSの上下方向の端部に近い第2の領域VS20に表示される第2虚像V20と、を少なくとも表示させ、車両1の姿勢変動による虚像と路面との相対的な位置ズレを抑制するために、姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定し、車両の姿勢が変化した場合、第1虚像V10の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、第2虚像V20の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部を有し、前記画像の光を被投影部に向けることで、前記車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御方法であって、
前記虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、前記第1の領域より前記虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させることと、
前記車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得することと、
前記車両の姿勢変動による前記虚像と前記路面との相対的な位置ズレを抑制するために、前記姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定することと、
前記車両の姿勢が変化した場合、
1)前記第1虚像の位置を、前記第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)前記第2虚像の位置を、前記第1画像調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行することと、を含む、
表示制御方法。
【請求項2】
前記車両の姿勢変動の予測を示す情報又は前記車両の姿勢変動予測値を含む予測関連情報をさらに取得することと、
前記予測関連情報に基づき、前記車両の姿勢変動の予測が第1の予測状態である場合、
1)前記第1虚像の位置を、前記第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)前記第2虚像の位置を、前記第1画像調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制する第2画像調整処理を実行することと、
前記車両の姿勢変動の予測が前記第1の予測状態よりも小さい第2の予測状態である場合、
3)前記第1虚像の位置及び前記第2の虚像の位置を、前記第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行することと、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項3】
前記車両の姿勢変動が大きい、又は前記車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、前記第2画像調整処理を実行するコンテンツの数を増やすこと、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項4】
前記車両の姿勢変動が所定の閾値以上に変化した後、前記車両の姿勢変動が前記所定の閾値未満になった場合、前記第2虚像の位置を、前記第2画像調整処理から前記第1画像調整処理に切り替えて調整すること、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項5】
前記第2画像位置調整処理を実行すると、前記第2虚像が前記虚像表示領域の第2の位置調整範囲内に配置される状態から前記第2の位置調整範囲外に配置される状態に変化する場合、前記第1虚像及び前記第2虚像に対し、前記第2画像位置調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制する第3位置調整処理、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御装置。
【請求項6】
前記第2虚像を、前記第1虚像より下方に視認されるように配置することと、
前記車両が前傾となり、前記第1画像位置調整処理を実行するとオフセットされる前記第1虚像が、第1の位置調整範囲内に配置される状態から前記第1の位置調整範囲よりも上側に配置される状態に変化する場合、前記第1虚像の位置を前記第1の位置調整範囲内の上方周縁部に固定し、同時に、前記第2虚像の位置を前記第1の位置調整範囲内の前記上方周縁部より下方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項7】
前記第2虚像を、前記第1虚像より下方に視認されるように配置することと、
前記車両が後傾となり、前記第2画像位置調整処理を実行するとオフセットされる前記第2虚像が、第2の位置調整範囲内に配置される状態から前記第2の位置調整範囲よりも下側に配置される状態に変化する場合、前記第2虚像の位置を前記第2の位置調整範囲内の下方周縁部に固定し、同時に、前記第1虚像の位置を前記第2の位置調整範囲内の前記下方周縁部より上方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項8】
前記虚像表示領域内の前記第2虚像の上下方向の位置に応じて、前記第2位置調整量を変化させ、前記第2虚像の位置が前記虚像表示領域の上下方向の端部に近いほど、前記第2位置調整量を小さくすること、をさらに含む、
請求項1に記載の表示制御方法。
【請求項9】
車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部を有し、前記画像の光を被投影部に向けることで、前記車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御装置であって、
1つ又は複数の制御回路と、
メモリと、
前記メモリに格納され、前記1つ又は複数の制御回路によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
前記制御回路は、
前記虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、前記第1の領域より前記虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させ、
前記車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得し、
前記車両の姿勢変動による前記虚像と前記路面との相対的な位置ズレを抑制するために、前記姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定し、前記車両の姿勢が変化した場合、
1)前記第1虚像の位置を、前記第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)前記第2虚像の位置を、前記第1画像調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する、
表示制御装置。
【請求項10】
車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部と、
前記表示部からの表示光を被投影部にむけるリレー光学系と、
1つ又は複数の制御回路と、
メモリと、
前記メモリに格納され、前記1つ又は複数の制御回路によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え
前記車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
前記制御回路は、
前記虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、前記第1の領域より前記虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させ、
前記車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得し、
前記車両の姿勢変動による前記虚像と前記路面との相対的な位置ズレを抑制するために、前記姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定し、前記車両の姿勢が変化した場合、
1)前記第1虚像の位置を、前記第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)前記第2虚像の位置を、前記第1画像調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する、
ことを特徴とするヘッドアップディスプレイ装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両等の移動体で使用され、移動体の前景(車両の乗員から見た移動体の前進方向の実景)に画像を重畳して視認させる表示制御装置、ヘッドアップディスプレイ装置、及び表示制御方法等に関する。
【0002】
ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head Up Display)装置は、車両前方の風景に画像(仮想オブジェクト)を重ねて表示することで、実景又は実景に存在する実オブジェクトに情報などを付加・強調した拡張現実(AR:Augmented Reality)を表現し、車両を運転するユーザの視線移動を極力抑えつつ、所望の情報を的確に提供することで、安全で快適な車両運行に寄与することができるものである。
【0003】
特許文献1に記載のヘッドアップディスプレイ装置は、表示基準位置に画像(仮想オブジェクト)を表示し、車両の姿勢変動による画像(仮想オブジェクト)と実景との相対的な位置ずれを抑制するように、車両の姿勢変動に応じて画像を表示基準位置の外側にシフトする。これにより、車両の姿勢変動が生じても、画像と実景との相対的な位置関係が維持される(画像と実景との位置ずれが抑制される)ため、画像を実景にさらに調和させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開2018/088362号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
車両の姿勢変動前に、画像が、元々重なって視認されていた実景の領域を重畳実景領域とする。ヘッドアップディスプレイ装置において、車両の大きな姿勢変動によって、虚像表示領域が重畳実景領域に重ならない程ずれてしまった場合、大きな姿勢変動に合わせて画像の位置を調整すると、調整される画像の一部又は全部が、虚像表示領域内に収まらなくなる(表示できなくなる)。姿勢変動によって画像の一部又は全部が欠けてしまうと、虚像の仮想現実感が損なわれ、観察者に違和感を与えることが想定される。
【0006】
また、画像の一部又は全部の欠けをおそれ、姿勢変動に応じた画像の位置調整を行わない場合、画像と実景との相対的な位置関係が車両の姿勢変動に合わせて変化し、仮想現実感が損なわれ、観察者に違和感を与えることが想定される。
【0007】
本明細書に開示される特定の実施形態の要約を以下に示す。これらの態様が、これらの特定の実施形態の概要を読者に提供するためだけに提示され、この開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。実際に、本開示は、以下に記載された実施態様と、以下に記載されない種々の態様との組み合わせを包含し得る。
【0008】
本開示の概要は、虚像の視認における違和感を低減することに関する。より具体的には、車両の姿勢変動による画像(仮想オブジェクト)の仮想現実感の低下を抑制する、ことにも関する。
【0009】
したがって、本明細書に記載される表示制御方法、表示制御装置、及びヘッドアップディスプレイ装置は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。本実施形態は、虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、第1の領域より虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する、ことをその要旨とする。
【0010】
したがって、本明細書に記載される第1実施態様における表示制御方法は、車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部を有し、画像の光を被投影部に向けることで、車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御方法であって、
虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、第1の領域より虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させることと、
車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得することと、
車両の姿勢変動による虚像と路面との相対的な位置ズレを抑制するために、姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定することと、
車両の姿勢が変化した場合、
1)第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行することと、を含む。これによれば、虚像表示領域内の端部に近い第2虚像を車両の姿勢変動に応じて位置調整を実施して仮想現実感の低下を抑制しつつ、位置調整量を抑制することで、第2虚像の一部又は全部が見切れてしまう(虚像表示領域内に収まらない)ことを防止することができ、一方、虚像表示領域内の上下方向の中央部に近い第1虚像では、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減するという利点が想定される。
【0011】
第1の実施形態に従属し得る第2実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動の予測を示す情報又は車両の姿勢変動予測値を含む予測関連情報をさらに取得することと、
予測関連情報に基づき、車両の姿勢変動の予測が第1の予測状態である場合、
1)第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第2画像調整処理を実行することと、
車両の姿勢変動の予測が第1の予測状態よりも小さい第2の予測状態である場合、
3)第1虚像の位置及び第2の虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行することと、をさらに含む。これによれば、車両の姿勢変動が大きいと予測される場合に、見切れが生じる可能性が高い第2虚像の位置調整を迅速に抑制することができ、車両の姿勢変動が小さいと推測される場合は、位置調整を抑制せずに、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減するという利点も想定される。
【0012】
第1又は2の実施形態に従属し得る第3実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、第2画像調整処理を実行するコンテンツの数を増やすこと、をさらに含む。これによれば、車両の姿勢変動に応じて、見切れを抑制する第2画像調整処理の適用範囲を自動的に拡げることができるという利点も想定される。また、別の第3実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、第2画像調整処理を実行する第2虚像とみなす第2の領域を虚像表示領域の上下方向の中央へ向けて拡大する。すなわち、第2の領域が虚像表示領域の下方に配置される場合、この第3実施形態における表示制御方法では、第2の領域を上方に拡大し得る。これによれば、見切れやすい虚像表示領域の端部に近いものから順次、第2画像調整処理を適用することができる。
【0013】
第1乃至3の実施形態に従属し得る第4実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が所定の閾値以上に変化した後、車両の姿勢変動が所定の閾値未満になった場合、第2虚像の位置を、第2画像調整処理から第1画像調整処理に切り替えて調整すること、をさらに含む。これによれば、
見切れが生じにくい状態を判定し、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減する第1画像調整処理に自動的に切り替えることができるという利点が想定される。
【0014】
第1乃至4の実施形態に従属し得る第5実施形態における表示制御方法では、前記第2画像位置調整処理を実行すると、前記第2虚像が前記虚像表示領域の第2の位置調整範囲内に配置される状態から前記第2の位置調整範囲外に配置される状態に変化する場合、前記第1虚像及び前記第2虚像に対し、前記第2画像位置調整処理よりも前記車両の姿勢変化に対する前記虚像の位置の調整を抑制する第3位置調整処理、をさらに含む。これによれば、第2画像位置調整処理でも見切れが生じてしまう場合に、車両の姿勢変動に対する虚像の位置調整量をさらに抑制することで、より強力に虚像の見切れを防止するという利点も想定される。また、別の第5実施形態における表示制御方法では、前記第2画像位置調整処理を実行すると、前記第2虚像が前記虚像表示領域の第2の位置調整範囲内に配置される状態から前記第2の位置調整範囲外に配置される状態に変化する場合、前記第1虚像及び前記第2虚像に対し、車両の姿勢変化に対する虚像の位置の固定する第3位置調整処理、をさらに含む。これによれば、第2画像位置調整処理でも見切れが生じてしまう場合に、車両の姿勢変動に対する虚像の位置を固定することで、虚像の見切れを完全に防止するという利点も想定される。
【0015】
第1乃至5の実施形態に従属し得る第6実施形態における表示制御方法では、第2虚像を、第1虚像より下方に視認されるように配置することと、
車両が前傾となり、第1画像位置調整処理を実行するとオフセットされる第1虚像が、第1の位置調整範囲内に配置される状態から第1の位置調整範囲よりも上側に配置される状態に変化する場合、第1虚像の位置を第1の位置調整範囲内の上方周縁部に固定し、同時に、第2虚像の位置を第1の位置調整範囲内の上方周縁部より下方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む。これによれば、一方の虚像が固定され、他方の虚像が位置補正され続けることを防止する、という利点も想定される。
【0016】
第1乃至6の実施形態に従属し得る第7実施形態における表示制御方法では、第2虚像を、第1虚像より下方に視認されるように配置することと、
車両が後傾となり、第2画像位置調整処理を実行するとオフセットされる第2虚像が、第2の位置調整範囲内に配置される状態から第2の位置調整範囲よりも下側に配置される状態に変化する場合、第2虚像の位置を第2の位置調整範囲内の下方周縁部に固定し、同時に、第1虚像の位置を第2の位置調整範囲内の下方周縁部より上方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む。これによれば、一方の虚像が固定され、他方の虚像が位置補正され続けることを防止する、という利点も想定される。
【0017】
第1乃至7の実施形態に従属し得る第8実施形態における表示制御方法では、虚像表示領域内の第2虚像の上下方向の位置に応じて、第2位置調整量を変化させ、第2虚像の位置が虚像表示領域の上下方向の端部に近いほど、第2位置調整量を小さくすること、をさらに含む。これによれば、虚像表示領域内の複数の虚像間での位置補正量の違いにより違和感を観察者が受けにくくなるという利点も想定される。
【0018】
また、第9実施形態における表示制御装置は、車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部を有し、画像の光を被投影部に向けることで、車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置を制御する表示制御装置であって、
1つ又は複数の制御回路と、
メモリと、
メモリに格納され、1つ又は複数の制御回路によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
制御回路は、
虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、第1の領域より虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させ、
車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得し、
車両の姿勢変動による虚像と路面との相対的な位置ズレを抑制するために、姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定し、車両の姿勢が変化した場合、
1)第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。これによれば、虚像表示領域内の端部に近い第2虚像を車両の姿勢変動に応じて位置調整を実施して仮想現実感の低下を抑制しつつ、位置調整量を抑制することで、第2虚像の一部又は全部が見切れてしまう(虚像表示領域内に収まらない)ことを防止することができ、一方、虚像表示領域内の上下方向の中央部に近い第1虚像では、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減するという利点が想定される。
【0019】
第9の実施形態に従属し得る第10実施形態における表示制御装置では、車両の姿勢変動の予測を示す情報又は車両の姿勢変動予測値を含む予測関連情報をさらに取得し、
制御回路は、予測関連情報に基づき、
車両の姿勢変動の予測が第1の予測状態である場合、
1)第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第2画像調整処理を実行し、
車両の姿勢変動の予測が第1の予測状態よりも小さい第2の予測状態である場合、
3)第1虚像の位置及び第2の虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行する。
【0020】
第9又は10の実施形態に従属し得る第11実施形態における表示制御装置では、制御回路は、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、第2画像調整処理を実行するコンテンツの数を増やす。
【0021】
第9乃至11の実施形態に従属し得る第12実施形態における表示制御装置では、制御回路は、車両の姿勢変動が所定の閾値以上に変化した後、車両の姿勢変動が所定の閾値未満になった場合、第2虚像の位置を、第2画像調整処理から第1画像調整処理に切り替えて調整する。
【0022】
第9乃至12の実施形態に従属し得る第13実施形態における表示制御装置では、制御回路は、第2画像位置調整処理を実行すると、第2虚像が虚像表示領域の第2の位置調整範囲内に配置される状態から第2の位置調整範囲外に配置される状態に変化する場合、第1虚像及び第2虚像に対し、第2画像位置調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第3位置調整処理をさらに実行する。
【0023】
第9乃至13の実施形態に従属し得る第14実施形態における表示制御装置では、制御回路は、第2虚像を、第1虚像より下方に視認されるように配置し、
車両が前傾となり、第1画像位置調整処理を実行するとオフセットされる第1虚像が、第1の位置調整範囲内に配置される状態から第1の位置調整範囲よりも上側に配置される状態に変化する場合、第1虚像の位置を第1の位置調整範囲内の上方周縁部に固定し、同時に、第2虚像の位置を第1の位置調整範囲内の上方周縁部より下方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理を実行する。
【0024】
第9乃至14の実施形態に従属し得る第15実施形態における表示制御装置では、
制御回路は、
前記第2虚像を、前記第1虚像より下方に視認されるように配置し、
前記車両が後傾となり、前記第2画像位置調整処理を実行するとオフセットされる前記第2虚像が、第2の位置調整範囲内に配置される状態から前記第2の位置調整範囲よりも下側に配置される状態に変化する場合、前記第2虚像の位置を前記第2の位置調整範囲内の下方周縁部に固定し、同時に、前記第1虚像の位置を前記第2の位置調整範囲内の前記下方周縁部より上方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理をさらに実行する。
【0025】
第9乃至15の実施形態に従属し得る第16実施形態における表示制御装置では、制御回路は、虚像表示領域内の第2虚像の上下方向の位置に応じて、第2位置調整量を変化させ、第2虚像の位置が虚像表示領域の上下方向の端部に近いほど、第2位置調整量を小さくする。
【0026】
また、第17実施形態におけるヘッドアップディスプレイ装置は、車両に搭載され、表示面に画像を表示する表示部を有し、画像の光を被投影部に向けることで、車両の前方の路面と重なる虚像表示領域内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置であって、
1つ又は複数の制御回路と、
メモリと、
メモリに格納され、1つ又は複数の制御回路によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、
制御回路は、
虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、第1の領域より虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させ、
車両の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得し、
車両の姿勢変動による虚像と路面との相対的な位置ズレを抑制するために、姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量を設定し、車両の姿勢が変化した場合、
1)第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、
2)第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。これによれば、虚像表示領域内の端部に近い第2虚像を車両の姿勢変動に応じて位置調整を実施して仮想現実感の低下を抑制しつつ、位置調整量を抑制することで、第2虚像の一部又は全部が見切れてしまう(虚像表示領域内に収まらない)ことを防止することができ、一方、虚像表示領域内の上下方向の中央部に近い第1虚像では、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減するという利点が想定される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、本実施形態の車両用表示システムを車両へ適用した例を示す図である。
図2図2は、ヘッドアップディスプレイ装置の構成を示す図である。
図3図3は、いくつかの実施形態の車両用表示システムのブロック図である。
図4図4は、いくつかの実施形態に従って、コンテンツ、及び仮想視点を配置したモデル空間を説明する図である。
図5図5は、車両の走行中において、観察者が視認する前景と、前景に重畳して表示される画像(虚像)の例を示す図である。
図6図6は、位置調整処理前の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。
図7A図7Aは、第1画像調整処理後の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。
図7B】7Bは、見切れ抑制処理後の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。
図8図8は、位置調整量の限度を説明するための図である。
図9図9は、位置調整量の限度を説明するための図である。
図10図10は、いくつかの実施形態における表示制御のフローを示す図である。
図11図11は、姿勢変動に対する画像調整処理を説明する図であり、コンテンツによって第1画像調整処理又は第2画像調整処理を実行する例を示す。
図12図12は、姿勢変動に対する画像調整処理を説明する図であり、コンテンツによって第1画像調整処理又は第2画像調整処理を実行する例を示す。
図13図13は、姿勢変動に対する位置調整処理を説明する図であり、コンテンツによって第1位置調整処理又は第2位置調整処理を実行する例を示す。
図14図14は、姿勢変動に対する位置調整処理を説明する図であり、コンテンツによって第1位置調整処理又は第2位置調整処理を実行する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図1ないし図14では、例示的な車両用表示システムの構成、及び動作の説明を提供する。なお、本発明は以下の実施形態(図面の内容も含む)によって限定されるものではない。下記の実施形態に変更(構成要素の削除も含む)を加えることができるのはもちろんである。また、以下の説明では、本発明の理解を容易にするために、公知の技術的事項の説明を適宜省略する。
【0029】
図1を参照する。図1は、車両用虚像表示システムの構成の一例を示す図である。なお、図1において、車両(移動体の一例。)1の左右方向(換言すると、車両1のの幅方向)をX軸(X軸の正方向は、車両1が前方を向いた際の左方向。)とし、左右方向に直交すると共に、地面又は地面に相当する面(ここでは路面6)に直交する線分に沿う上下方向(換言すると、車両1の高さ方向)をY軸(Y軸の正方向は、上方向。)とし、左右方向及び上下方向の各々に直交する線分に沿う前後方向をZ軸(Z軸の正方向は、車両1の直進方向。)とする。この点は、他の図面においても同様である。
【0030】
図示するように、車両(移動体)1に備わる車両用表示システム10は、観察者(典型的には車両1の運転席に着座する運転者)の左目700Lと右目700Rの位置や視線方向を検出する瞳(あるいは顔)検出用の目位置検出部(視線検出部)409、車両1の前方(広義には周囲)を撮像するカメラ(例えばステレオカメラ)などで構成される車外センサ411、車両1の姿勢を検出する姿勢検出部415、ヘッドアップディスプレイ装置(以下では、HUD装置とも呼ぶ)20、及びHUD装置20を制御する表示制御装置30、を有する。なお、目位置検出部(視線検出部)409、車外センサ411は、省略され得る。
【0031】
図2は、ヘッドアップディスプレイ装置20の構成の一態様を示す図である。HUD装置20は、例えばダッシュボード(図1符号5)内に設置される。このHUD装置20は、画像表示装置(表示部)40、リレー光学系80及び、これら画像表示装置40とリレー光学系80を収納し、画像表示装置40からの表示光Kを内部から外部に向けて出射可能な光出射窓21を有する筐体22、を有する。
【0032】
画像表示装置(表示部)40は、ここでは視差式3D表示装置とする。この立体表示装置(視差式3D表示装置)40は、左視点画像と右視点画像と視認させることで奥行き表現を制御可能な多視点画像表示方式を用いた裸眼立体表示装置である表示器50及び、バックライトとして機能する光源ユニット60、により構成される。なお、画像表示装置(表示部)40は、3D画像を表示する立体画像表示装置に限定されるものではなく、2D画像を表示するものであってもよい。
【0033】
表示器50は、光源ユニット60からの照明光を光変調して画像Mを表示面50aに生成する表示面50a及び、例えば、レンチキュラレンズやパララックスバリア(視差バリア)等を有し、表示面50aから出射される光を、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光(図1符号K10)と、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光(図1符号K20)とに分離する光学レイヤ(光線分離部の一例。)52、を有する。光学レイヤ52は、レンチキュラレンズ、パララックスバリア、レンズアレイ及び、マイクロレンズアレイなどの光学フィルタを含む。実施形態で光学レイヤ52は、前述した光学フィルタに限定されることなく、表示面50a前面又は後面に配置される全ての形態の光学レイヤを含む。但し、これは一例であり、限定されるものではない。
【0034】
また、画像表示装置40は、光学レイヤ(光線分離部の一例。)52代わりに又は、それに加えて、光源ユニット60を指向性バックライトユニット(光線分離部の一例。)で構成することで、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光(図1符号K10)と、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光(図1符号K20)と、を出射させてもよい。具体的に、例えば、後述する表示制御装置30は、指向性バックライトユニットが左目700Lに向かう照明光を照射した際に、表示面50aに左視点画像を表示させることで、左目用の光線K11、K12及び、K13等の左目用表示光K10を、観察者の左目700Lに向け、指向性バックライトユニットが右目700Rに向かう照明光を照射した際に、表示面50aに右視点画像を表示させることで、右目用の光線K21、K22及び、K23等の右目用表示光K20を、観察者の左目700Lに向ける。但し、これは一例であり、限定されるものではない。
【0035】
後述する表示制御装置30は、例えば、画像レンダリング処理(グラフィック処理)、表示器駆動処理などを実行することで、観察者の左目700Lへ左視点画像V11の元となる左目用表示光K10及び、右目700Rへ右視点画像V12の元となる右目用表示光K20、を向け、左視点画像V11及び右視点画像V12を調整することで、HUD装置20が表示する(観察者が知覚する)コンテンツFUの態様を制御することができる。なお、後述する表示制御装置30は、一定空間に存在する点などから様々な方向に出力される光線をそのまま(概ね)再現するライトフィールドを再現するように、ディスプレイ(表示器50)を制御してもよい。
【0036】
リレー光学系80は、画像表示装置40からの光を反射し、画像の表示光K10、K20を、ウインドシールド(被投影部)2に投影する曲面ミラー(凹面鏡等)81、82を有する。但し、その他の光学部材(レンズなどの屈折光学部材、ホログラムなどの回折光学部材、反射光学部材又は、これらの組み合わせを含んでいてもよい。)を、さらに有してもよい。
【0037】
図1では、HUD装置20の画像表示装置40によって、左右の各目用の、視差をもつ画像(視差画像)が表示される。各視差画像は、図1に示されるように、虚像表示領域(虚像結像面)VSに結像したV10として表示される。観察者(人)の各目のピントは、虚像表示領域VSの位置に合うように調節される。なお、虚像表示領域VSの位置を、「調節位置(又は結像位置)」と称し、また、所定の基準位置(例えば、HUD装置20のアイボックス200の中心205、観察者の視点位置、又は、車両1の特定位置など)から虚像表示領域VSまでの距離を調節距離(結像距離)と称する。
【0038】
また、虚像表示領域VSは、表示器50における表示面50aに対応して、乗員(運転者等の視認者)の前方の実空間に設定される仮想的な(見かけ上の)面である。また、虚像表示領域VSとしては、例えば、路面6に垂直な立面VS01、路面6に対して傾斜した傾斜面VS02、路面6に重畳される路面重畳面VS03、乗員(視認者)に近い側が立面(疑似立面を含む)であり、遠い側が傾斜面となっている面(不図示)等がある。立面VS01を除く他の面を用いた表示では、虚像表示領域上での表示位置に応じて虚像の表示距離が異なり、よって奥行き表現が可能である。
【0039】
図3は、いくつかの実施形態に係る、車両用虚像表示システムのブロック図である。表示制御装置30は、1つ又は複数のI/Oインタフェース31、1つ又は複数の制御回路33、1つ又は複数の画像処理回路35、及び1つ又は複数のメモリ37を備える。図3は、1つの実施形態に過ぎず、図示された構成要素は、より数の少ない構成要素に組み合わされてもよく、又は追加の構成要素があってもよい。例えば、画像処理回路35(例えば、グラフィック処理ユニット)が、1つ又は複数の制御回路33に含まれてもよい。
【0040】
図示するように、制御回路33及び画像処理回路35は、メモリ37と動作可能に連結される。より具体的には、制御回路33及び画像処理回路35は、メモリ37に記憶されているプログラムを実行することで、例えば画像データを生成、及び/又は送信するなど、車両用表示システム10(画像表示装置40)の制御を行うことができる。制御回路33及び/又は画像処理回路35は、少なくとも1つの汎用マイクロ制御回路(例えば、中央処理装置(CPU))、少なくとも1つの特定用途向け集積回路(ASIC)、少なくとも1つのフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、又はそれらの任意の組み合わせを含むことができる。メモリ37は、ハードディスクのような任意のタイプの磁気媒体、CD及びDVDのような任意のタイプの光学媒体、揮発性メモリのような任意のタイプの半導体メモリ、及び不揮発性メモリを含む。揮発性メモリは、DRAM及びSRAMを含み、不揮発性メモリは、ROM及びNVRAMを含んでもよい。
【0041】
図示するように、制御回路33は、I/Oインタフェース31と動作可能に連結されている。I/Oインタフェース31は、例えば、車両に設けられた後述の車両ECU401及び/又は、他の電子機器(後述する符号403~419)と、CAN(Controller Area Network)の規格に応じて通信(CAN通信とも称する)を行う。なお、I/Oインタフェース31が採用する通信規格は、CANに限定されず、例えば、CANFD(CAN with Flexible Data Rate)、LIN(Local Interconnect Network)、Ethernet(登録商標)、MOST(Media Oriented Systems Transport:MOSTは登録商標)、UART、もしくはUSBなどの有線通信インタフェース、又は、例えば、Bluetooth(登録商標)ネットワークなどのパーソナルエリアネットワーク(PAN)、802.11x Wi-Fi(登録商標)ネットワークなどのローカルエリアネットワーク(LAN)等の数十メートル内の近距離無線通信インタフェースである車内通信(内部通信)インタフェースを含む。また、I/Oインタフェース31は、無線ワイドエリアネットワーク(WWAN0、IEEE802.16-2004(WiMAX:Worldwide Interoperability for Microwave Access))、IEEE802.16eベース(Mobile WiMAX)、4G、4G-LTE、LTE Advanced、5Gなどのセルラー通信規格により広域通信網(例えば、インターネット通信網)などの車外通信(外部通信)インタフェースを含んでいてもよい。
【0042】
図示するように、制御回路33は、I/Oインタフェース31と相互動作可能に連結されることで、車両用表示システム10(I/Oインタフェース31)に接続される種々の他の電子機器等と情報を授受可能となる。I/Oインタフェース31には、例えば、車両ECU401、道路情報データベース403、自車位置検出部405、操作検出部407、目位置検出部409、車外センサ411、明るさ検出部413、姿勢検出部415、携帯情報端末417、及び外部通信機器419などが動作可能に連結される。なお、I/Oインタフェース31は、車両用表示システム10に接続される他の電子機器等から受信する情報を加工(変換、演算、解析)する機能を含んでいてもよい。
【0043】
画像表示装置40は、制御回路33及び画像処理回路35に動作可能に連結される。したがって、いくつかの実施形態において、表示面50aによって表示される画像は、制御回路33及び/又は画像処理回路35から受信された画像データに基づいてもよい。制御回路33及び画像処理回路35は、I/Oインタフェース31から取得される情報に基づき、表示面50aが表示する画像を制御(調整)する。
【0044】
メモリ37に記憶されたソフトウェア構成要素は、描画モジュール510、及び画像調整モジュール520(位置調整モジュール522、俯角調整モジュール524、サイズ調整モジュール526)を含む。
【0045】
描画モジュール510は、表示制御装置30が取得した情報(ナビゲーション情報、車両情報など)に基づいて、画像Mを形成し、バッファ(不図示)に形成された画像Mを一時的に保存する。表示器50に表示された画像Mは、虚像V20として観察者700に視認される。このとき、虚像V20は、コンテンツFUを表現する。
【0046】
図4は、コンテンツFU、及び仮想視点VPを配置したモデル空間を説明する図である。図4では、仮想視点VPの座標系は、奥行き方向をZ1軸方向とし、左右方向をX1軸方向(車両1の幅方向Xに対応している)とし、上下方向をY1軸方向(車両1の上下方向Yに対応している)とする。描画モジュール510は、各描画フレームにおいて、描画するコンテンツFUの各頂点データの計算を行う。この場合、各コンテンツFUのモデル空間を構築する。そして、仮想オブジェクト毎の「モデル座標系(ローカル座標系)」上で、描画する各頂点のデータを計算する。描画モジュール510は、モデル座標系に描画したコンテンツFUを、仮想視点VPを基準とした所定の射影面(後述する虚像表示領域VS)に射影することで2次元画像に変換し、この2次元画像を画像Mとする。なお、描画モジュール510は、「モデル座標系(ローカル座標系)」に配置した各コンテンツFUを「ワールド座標系」の空間に配置してもよい。すなわち、「モデル座標系」上で計算された描画対象の各コンテンツFUの頂点データを「ワールド座標系」上に配置していってもよい。なお、一部又は全部のコンテンツFUは、「ワールド座標系」上に配置されなくてもよい。
【0047】
観察者700は、被投影部2を介して虚像表示領域VSに形成された(結像された)虚像V20を視認することで、所定のターゲット位置MPに、コンテンツFUがあるように知覚する。例えば、コンテンツFUが、進路を案内する矢印である場合、仮想視点VPから見て実景の所定のターゲット位置MPにコンテンツFUが配置されているかのように視認されるように、虚像V20の矢印が虚像表示領域VSに表示される。すなわち、仮想視点VPを基準に、コンテンツFUを虚像表示領域VSに射影変換された画像(ここでは虚像V20)を表示すると、仮想視点VPと同様の位置(例えば、アイボックス200の中心205)から観察者700が見ると、図5に示すように、仮想視点VPから見たような所定のターゲット位置MPに配置されているようなコンテンツFUを知覚することができる。
【0048】
通常は、コンテンツFUが配置される(設定される)ターゲット位置MPが配置される仮想平面100は、前景(路面6)の表面の高さに一致させる(すなわち、設定高さを0mに設定する)。但し、これは一例であり、限定されるものではない。他の例では、ターゲット位置MP(仮想平面100)は、前景(路面6)の表面の高さより高い位置に設定してもよい(すなわち、設定高さを0.5mや1mに設定してもよい)。また、他の例では、ターゲット位置MP(仮想平面100)は、前景(路面6)の表面の高さより低い位置に設定してもよい(すなわち、設定高さを-1mや-2mに設定してもよい)。俯角βは、所定の仮想視点VPから見た水平方向(Z1-X1平面)とコンテンツFU(ターゲット位置MP)との間の角度(見下ろし角)である。
【0049】
図3の画像調整モジュール520(位置調整モジュール522、俯角調整モジュール524、サイズ調整モジュール526)は、車両1の姿勢変動に合わせて、虚像表示領域VS内に表示する虚像V20の位置を調整する処理(位置調整処理)、俯角を調整する処理(俯角調整処理)、及びサイズを調整する処理(サイズ調整処理)を実行する。
【0050】
図6は、位置調整処理前の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。図6では、車両姿勢AT10がAT11であるとする。コンテンツFUは、視認者により仮想平面100のターゲット位置MP(第1領域110)にコンテンツFUが重なって見えるように配置される。コンテンツFUは、所定のサイズを有し、仮想平面100の第1領域110に重なるように配置される。コンテンツFUのサイズは、図6では、第1領域110の奥行き方向の第1長さL10とする。任意の仮想平面100は、コンテンツFUが配置される仮想的な平面であり、例えば、車両1の前後左右方向と平行に設定される(路面6と概ね一致していてもよい)。描画モジュール510は、仮想視点VP1を基準に、コンテンツFUを虚像表示領域VSに射影変換された画像(ここでは虚像V21)を表示するように、虚像V21の元となる画像Mを表示器50に表示させる。ここで、仮想視点VP1から第1領域110まで仮想平面100に沿った距離をD0とし、仮想平面100から仮想視点VP1までの距離(高さ)をh0とする。
【0051】
図7Aは、第1位置調整処理後の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。図7Aでは、車両姿勢AT10が、第1位置調整処理前の車両姿勢AT11よりも車両1が比較的小さいピッチング角α12だけ前傾したAT12であるとする。ここで前傾とは、図6に示す車両姿勢AT11を基準に、車両1の前方が下がる(換言すると、車両1の後方が上がる)ことを指すものとする。図6の状態から図7Aの状態へ車両1が前傾すると、観察者の視点から見られる虚像表示領域VSが、姿勢変動により実景(路面)6に対して相対的に下方(Y軸負方向)にB12だけシフトする。第1位置調整処理が行われない場合、図6に示していた虚像V21は、虚像表示領域VSの姿勢変動による下方向の画像シフト量B12に伴い、図7A右図の位置G2に下方向の画像シフト量B12だけシフトしてしまう。すなわち、観察者の視点から見られるコンテンツFUは、配置しておきたいターゲット位置MP1から虚像V21がずれてしまう。いくつかの実施形態における制御回路33は、第1位置調整処理を実行することで、姿勢変動による画像シフト量B12を抑制(相殺)するように、虚像の位置G2を上方(Y軸正方向)に第1位置調整量C12(C10)だけ補正する(位置調整した虚像V22を表示する)。好ましくは、第1位置調整量C12(C10)は、姿勢変動による画像シフト量B12(B10)と等しくする(C10=B10)ことで、姿勢変動後での虚像V20を、第1領域110(ターゲット位置MP1)に維持することができる。これによれば、姿勢変動による画像シフト量B10は、第1位置調整量C10によって相殺され、観察者に認識されない。但し、第1位置調整量C10は、姿勢変動による画像シフト量B10を低減できればよく、画像シフト量B10より小さくてもよい。これによれば、車両姿勢の変化に基づく虚像の位置ずれを抑制することができる。
【0052】
図7Bは、見切れ抑制処理後の虚像を示す図であり、左図は、虚像と仮想平面との関係を示し、右図は、観察者が前方を向いた際に視認される前景と虚像とを示す。図7Bでは、車両姿勢AT10が、第1位置調整処理実行時の車両姿勢AT11よりも車両1が比較的大きいピッチング角α13(>α12)だけ前傾したAT13であるとする。図6の状態から図7Bの状態へ車両1が前傾すると、観察者の視点から見られる虚像表示領域VSが、姿勢変動により実景(路面)6に対して相対的に下方(Y軸負方向)にB13だけシフトする。位置調整が行われない場合、図6に示していた虚像V21は、虚像表示領域VSの姿勢変動による画像シフト量B13に伴い、図7B右図の位置G3に画像シフト量B13だけシフトしてしまう。この姿勢変動による下方向の画像シフト量B13を相殺するために、虚像V20を上方向に画像シフト量B13だけ移動させればよいが、虚像V20を上方向に画像シフト量B13だけ移動させると、虚像表示領域VS13外に出ることになる。
【0053】
いくつかの実施形態における制御回路33は、車両1の姿勢変動が大きい場合(後述の所定条件の一例)、見切れ抑制処理を実行することで、姿勢変動による虚像表示領域VSの下方向の画像シフト量B13に対し、第1位置調整処理における第1位置調整量C13(C10)よりも小さい位置調整量の限度CTだけ虚像の位置G3を上方(Y軸正方向)に補正する(位置調整した虚像V23を表示する)。位置調整量の限度CTは、姿勢変動による画像シフト量B13(B10)より小さくする(CT<B10)ことで、第1位置調整処理に比べると、第1領域110(ターゲット位置MP1)よりも近傍側の第2領域120(ターゲット位置MP1とは異なる位置)へ大きくずれてしまうものの、虚像V23を、虚像表示領域VS13内に維持することができる。これによれば、姿勢変動による画像シフト量B13(B10)は、位置調整量の限度CTでは相殺されないため、観察者に認識される。
【0054】
コンテンツFUは、路面6に対して所定の角度関係をもって配置される。具体的に例えば、コンテンツFUは、路面6に平行に視認されるように配置される。しかしながら、車両1のピッチング角αが変化した場合、コンテンツFUと路面6との角度関係が変化してしまう。具体的には、虚像V20が路面6に平行になるように表示されていた場合、ピッチング角αにより虚像V20と路面6との平行関係がピッチング角αだけずれることになる。この車両1の姿勢変動(ピッチング)に伴う虚像V20と路面6との角度関係のずれは、虚像V20の左右方向を軸とした角度(虚像V20の見下ろし角(俯角))βを調整することで補正することができる。
【0055】
いくつかの実施形態における制御回路33は、見切れ抑制処理において、車両1の姿勢変動に対し、虚像V20(コンテンツFU)の俯角βを調整してもよい。制御回路33は、前傾方向のピッチング角αの増加に合わせて、ダイナミックに俯角βを増加させる。逆に、制御回路33は、後傾方向のピッチング角αの増加に合わせて、ダイナミックに俯角βを減少させる。
【0056】
いくつかの実施形態における制御回路33は、第1位置調整処理実行時に、車両1の姿勢変動に対し、虚像V20(コンテンツFU)の俯角βも調整してもよい(第1俯角調整処理)。見切れ抑制処理実行時と同様、制御回路33は、前傾方向のピッチング角αの増加に合わせて、ダイナミックに俯角βを増加させる。逆に、制御回路33は、後傾方向のピッチング角αの増加に合わせて、ダイナミックに俯角βを減少させる。
【0057】
いくつかの実施形態における制御回路33は、第1位置調整処理実行時に、ピッチング角の変化量αと同じ角度だけ俯角βを調整し得る(第1俯角調整処理の一例)。具体的には、図6の状態から図7Aの状態へ車両1が前傾する場合、ピッチング角の変化量αは、α12である。図6に示す仮想視点VP1は、図7Aに示す前傾のピッチング角の変化量α12に基づき、仮想平面100に対する仮想視点VP2角度がα12だけ変化させる。これにより、仮想視点VP2を基準としたターゲット位置MP1に配置されるコンテンツFUを見下ろす俯角β12は、俯角β11よりもα12だけ大きくなる。また、いくつかの実施形態における制御回路33は、ピッチング角の変化量αに所定の係数を乗算した角度だけ俯角βを調整し得る(第1俯角調整処理の一例)。
【0058】
また、いくつかの実施形態における制御回路33は、見切れ抑制処理実行時に、ピッチング角の変化量αと同じ角度だけ俯角βを調整し得る(第1俯角調整処理の一例)。具体的には、図6の状態から図7Bの状態へ車両1が前傾する場合、ピッチング角の変化量αは、α13である。図6に示す仮想視点VP1は、図7Bに示す前傾のピッチング角の変化量α13により、仮想視点VP3位置に移動し、仮想平面100に対する仮想視点VP3角度がα13だけ変化する。これに合わせて、制御回路33は、虚像V23で表現するコンテンツFUの俯角βを前傾のピッチング角の変化量α13分だけ大きくしてもよい。また、いくつかの実施形態における制御回路33は、ピッチング角の変化量αに所定の係数を乗算した角度だけ俯角βを調整し得る(第1俯角調整処理の一例)。
【0059】
好ましい、いくつかの実施形態における制御回路33は、見切れ抑制処理とともに実行される俯角調整処理(第2俯角調整処理)におけるピッチング角の変化量αに対する俯角βの調整量(俯角調整量E20)を、第1位置調整処理とともに実行される俯角調整処理(第1俯角調整処理)におけるピッチング角の変化量αに対する俯角βの調整量(俯角調整量E10)より大きくしてもよい。見切れ抑制処理された虚像V23は、第1位置調整処理された虚像V22よりもターゲット位置MP1からずれて視認されることになる。具体的には、前傾において、見切れ抑制処理された虚像V23は、第1位置調整処理された虚像V22よりもターゲット位置MP1(110)を基準として、より観察者の手前側の実景(路面6)に重なる位置120にシフトして視認されることになる。コンテンツFUが路面6と平行な仮想平面100に沿って観察者の近くに配置される場合、仮想視点VPを基準としたコンテンツFUを見下ろす俯角βは大きくなる。逆に、コンテンツFUが観察者から遠くに配置される場合、仮想視点VPを基準としたコンテンツFUを見下ろす俯角βは小さくなる。したがって、より好ましいいくつかの実施形態における制御回路33は、見切れ抑制処理とともに実行される俯角調整処理(第2俯角調整処理)におけるコンテンツFUの俯角βの調整量(俯角調整量)を、車両1のピッチング角αの変化による俯角調整量と、仮想平面100(一例として路面6と概ね一致するように設定される)の遠近方向におけるコンテンツFUのシフトによる俯角調整量と、を合わせた俯角調整量としてもよい。図7Bにおける俯角β13は、姿勢変化の基準となる図6の俯角β11を、コンテンツFUが仮想平面100上の第1領域110から近傍側の第2領域120にシフトしたことによる俯角調整量と、車両1のピッチング角αの変化による俯角調整量とを合わせた俯角調整量により補正したものとして演算される。
【0060】
図8は、位置調整範囲を説明するための図である。いくつかの実施形態における虚像は、虚像毎に、位置調整範囲VTが設定される。図8に示すように、虚像V1の基準位置POに対し、位置調整範囲VTの下端が近くに設定されれば、虚像V1の下方向の位置調整量の限度CTdは短く設定される。一方、虚像V1の基準位置POに対し、位置調整範囲VTの上端が遠くに設定されれば、虚像V1の上方向の位置調整量の限度CTuは長く設定される。表示制御装置30(画像調整モジュール520)は、位置調整範囲VTを虚像表示領域VSに表示される複数の虚像V1毎に個別に設定してもよく、すべての虚像V1で共通に設定してもよい。位置調整範囲VTは、虚像表示領域VSであってもよい(虚像表示領域VSの全体が位置調整範囲VTに設定されてもよい)。なお、画像調整モジュール520は、車両1の姿勢変動(ピッチング角α)と、虚像V1の位置調整量Cと、を関連付けたテーブルデータ(不図示)を有し、前記テーブルデータに基づき、虚像V1の位置調整量Cが下方向の位置調整量の限度CTdに達する際に想定される後傾のピッチング角の限度(姿勢閾値)αTu、及び虚像V1の位置調整量Cが上方向の位置調整量の限度CTuに達する際に想定される前傾のピッチング角の限度(姿勢閾値)αTdを設定してもよい。
【0061】
本実施形態における表示制御装置30(制御回路33)は、虚像表示領域内の第1の領域に表示される第1虚像と、第1の領域より虚像表示領域の上下方向の端部に近い第2の領域に表示される第2虚像と、を少なくとも表示させ、第1虚像の位置を、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、第2虚像の位置を、第1画像調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。
【0062】
図9は、いくつかの実施形態における虚像表示領域内に表示される第1虚像及び第2虚像の画像調整処理の例を示す図である。虚像表示領域VSは、上端を含む第2の領域VS22、第2の領域VS22の下方に配置される第1の領域VS10、及び下端を含み、第1の領域VS10の下方に配置されるVS21に分類される。第1の領域VS10内に基準位置POを有する虚像を第1虚像V10、第2の領域VS20(図9では第2の領域VS22)内に基準位置POを有する虚像を第2虚像V20、とする。位置調整範囲VTは、コンテンツ毎に、虚像表示領域VS内に複数設けられ得る。図9では、第1虚像V10には、位置調整範囲VT1が設定され、第2虚像V20には、位置調整範囲VT2が設定される。第1虚像V10又は第2虚像V20が、位置調整範囲VT内で下方にシフトされる場合、第1虚像V10又は第2虚像V20は、下方向の位置調整量の限度CTdに達するまで姿勢変動に応じてダイナミックにシフトするが、それ以上大きな姿勢変動に対しては下方向の位置調整量の限度CTdで位置調整した位置に固定表示されるようにする。逆に、第1虚像V10又は第2虚像V20が、位置調整範囲VT内で上方にシフトされる場合、第1虚像V10又は第2虚像V20は、上方向の位置調整量の限度CTuに達するまで姿勢変動に応じてダイナミックにシフトするが、それ以上大きな姿勢変動に対しては上方向の位置調整量の限度CTuで位置調整した位置に固定表示されるようにする。
【0063】
図10は、図10は、いくつかの実施形態における表示制御のフローを示す図である。図10に示す画像調整処理S1は、制御回路33がメモリ37に記憶された画像調整モジュール520を実行することによって実施される。ステップS110では、画像調整モジュール520(位置調整モジュール522)は、描画モジュール510にて生成された描画データを取得する。ステップS120では、位置調整モジュール522は、取得した描画データに含まれる位置調整処理を実行する前の画像Mの表示位置を示す情報(基準位置POを示す情報)から、虚像V1(虚像V1の元となる画像M)の位置調整量の限度CTを設定する。具体的に例えば、位置調整モジュール522は、位置調整範囲VTを設定し、位置調整範囲VT、及び基準位置POに基づいて、位置調整量Cの限度CTを設定する。
【0064】
次に、ステップS130では、位置調整モジュール522は、姿勢検出部415から車両1の姿勢変動を示す情報(姿勢変動情報)を取得する。姿勢検出部415は、例えば、ジャイロセンサ、加速度センサ、及びハイトセンサなどの1つ以上のセンサを含む。姿勢検出部415は、移動体の角速度、加速度、高さなどのセンサ値から、ピッチング角やロール角などの車両姿勢や前記車両姿勢の変化の周波数などを姿勢変動情報として算出し、表示制御装置30へ出力してもよい。前記姿勢変動情報は、車両姿勢(ピッチング角、ロール角等)の他に、前記車両姿勢の変化の周波数(振動周波数)などを含んでいても良い。姿勢検出部415が姿勢変動情報を算出する機能の一部又は全部は、表示制御装置30に設けられていても良い。
【0065】
ステップS140では、位置調整モジュール522は、後述する第1画像調整処理S151で用いる第1位置調整量C10を算出する。まず、位置調整モジュール522は、姿勢検出部415から取得する前記姿勢変動情報に基づいて、車両1の姿勢変動量(角度のずれ量)を算出する。例えば、位置調整モジュール522は、姿勢検出部415が検出した角速度を積分演算することによって、車両1のピッチ軸周りの角度(ピッチング角)αを算出する。これにより、図1に示すY軸(前記ピッチ軸)を中心とした回転方向における車両1のずれ量(角度)を算出することができる。なお、本実施形態では、ピッチング角度を算出するが、ヨー角度又はロール角度を算出してもよい。例えば、X軸、Y軸及びZ軸周りの角度を全て算出してもよい。但し、位置調整モジュール522における姿勢変動量(角度のずれ量)を算出する機能の一部又は全部は、表示制御装置30と通信可能な表示制御装置30とは別の装置が有し、表示制御装置30は、前記別の装置からI/Oインタフェース31を介して車両1の姿勢変動量(角度のずれ量)を示す情報を入力してもよい。すなわち、いくつかの表示制御装置30は、位置調整モジュール522における姿勢変動量(角度のずれ量)を算出する機能を省略しても良い。
【0066】
ステップS140において、さらに、位置調整モジュール522は、車両1の姿勢変動量(角度のずれ量)に基づいて、虚像V20の表示位置を補正するための第1位置調整量C10を算出する。具体的には、位置調整モジュール522は、(ピッチング角)のずれ量を画素数に換算して、ずれている分の画素数(姿勢変動による画像シフト量B10)を元に戻すような調整量を決定する。好ましくは、位置調整モジュール522は、車両1の姿勢変動による虚像V20の位置ずれを元に戻すため、姿勢変動による画像シフト量B10と等しい逆方向の位置調整量(第1位置調整量C10)を算出する。
【0067】
いくつかの実施形態のステップS150では、画像調整モジュール520は、ステップS110で取得した描画データに画像調整を行うことで画像データを生成する。S150において、画像調整モジュール520は、描画データの画素を、位置調整量C、俯角調整量E、サイズ調整量Fに基づき、画像データの画素として再配列する。S160では、画像調整モジュール520は、S150で生成した(調整した)画像データを表示器50へ出力する。
【0068】
いくつかの実施形態のステップS150では、制御回路33(位置調整モジュール522)は、第1虚像V10の位置を第1位置調整量C10に基づき調整する第1画像調整処理(後述のS151)を実行し、第2虚像V20の位置を第1画像調整処理(後述のS151)よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第2画像調整処理(後述のS152)を実行する。
【0069】
第1画像調整処理S151では、位置調整モジュール522は、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせてステップS140でダイナミックに設定される第1位置調整量C10(位置調整量C)に基づき、第1虚像V10(第1虚像V10の元となる画像M)の位置調整をする。好ましくは、第1位置調整量C10は、姿勢変動によって生じる画像の位置ずれを相殺するように設定される。
【0070】
いくつかの実施形態における第1画像調整処理S151では、画像調整モジュール520(俯角調整モジュール524)は、前記位置調整に加え、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせて、第1俯角調整量E10(俯角調整量E)をダイナミックに変更し、この第1俯角調整量E10(俯角調整量E)に基づき、第1虚像V10(第1虚像V10の元となる画像M)の俯角調整をしてもよい。
【0071】
いくつかの実施形態における第1画像調整処理S151において、第1位置調整量C10は、姿勢変動によって生じる画像の位置ずれを相殺するように設定されない場合(換言すると、姿勢変動による画像の位置ずれを生じさせる場合)、画像調整モジュール520(サイズ調整モジュール526)は、前記位置調整に加え、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせて、サイズ調整量Fをダイナミックに変更し、このサイズ調整量Fに基づき、第1虚像V10(第1虚像V10の元となる画像M)のサイズ調整をしてもよい。
【0072】
第2画像調整処理S152では、画像調整モジュール520(俯角調整モジュール524)は、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせて、第2俯角調整量E20(俯角調整量E)をダイナミックに変更し、この第2俯角調整量E20(俯角調整量E)に基づき、虚像V20(虚像V20の元となる画像M)の俯角調整を行ってもよい。第2画像調整処理S152における俯角調整量E20は、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを補正する俯角調整量である。好ましくは、第2画像調整処理S152における俯角調整量E20は、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを補正する俯角調整量に、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により近傍へシフトしたことを表現する(又は遠方へシフトしたことを表現する)ための俯角調整量を加算してもよい。
【0073】
また、いくつかの実施形態における第2画像調整処理S152では、画像調整モジュール520(位置調整モジュール522)は、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせて第2位置調整量C20(位置調整量C)をダイナミックに変化させる(第2画像調整処理S152における位置調整処理)。画像調整モジュール520は、ステップS130で取得される姿勢変動から第2位置調整量C20(位置調整量C)を設定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0074】
第2画像調整処理S152における位置調整処理において、画像調整モジュール520は、車両1の姿勢変動量に基づいて、ダイナミックに変更される第2位置調整量C20を算出する。例えば、第2位置調整量C20は、車両1の姿勢変動量に基づいて決定される第1位置調整量C10に1より小さい係数を乗算することで求められる。また、いくつかの実施形態の位置調整モジュール522は、車両1の姿勢変動量に基づかない、メモリ37に記憶された第2位置調整量C20を読み出しても良い。なお、本実施形態では、ピッチ軸方向の調整量を算出するが、ヨー軸方向及びロール方向の調整量を算出してもよい。ロール角については、角度のまま、ロール角のずれ量を元に戻すような調整量を決定する。但し、画像調整モジュール520の第2位置調整量C20を算出する機能の一部又は全部は、表示制御装置30と通信可能な表示制御装置30とは別の装置が有し、表示制御装置30は、前記別の装置からI/Oインタフェース31を介して虚像の位置を調整するための表示パラメータ(第2位置調整量C20)を入力してもよい。
【0075】
また、いくつかの実施形態における第2画像調整処理S152において、画像調整モジュール520は、前記位置調整に加え、ステップS130で取得される姿勢変動に合わせて、サイズ調整量Fをダイナミックに変更し、このサイズ調整量Fに基づき、虚像V20(虚像V20の元となる画像M)のサイズ調整処理を行ってもよい。画像調整モジュール520は、ステップS130で取得される姿勢変動からサイズ調整量Fを設定するためのテーブルデータ、演算式、などを含み得る。
【0076】
図11は、姿勢変動に対する画像調整処理を説明する図であり、コンテンツによって第1画像調整処理又は第2画像調整処理を実行する例を示す。第1虚像V10は、車両1の姿勢変動に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量C10、第1俯角調整量E10によって調整される(第1画像調整処理が実行される)。第1位置調整量C10は、姿勢変動により生じた上下方向への虚像のずれを強力に抑制する(好ましくは、相殺する)ように、姿勢変動(ピッチング角αの前傾)に合わせて虚像表示領域VS内の虚像の位置を上下方向にダイナミックに補正する位置調整量Cである。これにより、虚像の位置ずれは、好ましくは相殺される(虚像の位置は、ターゲット位置MP1に維持される)。第1俯角調整量E10は、所定の基準姿勢に対する姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを抑制する(好ましくは、相殺する)ように、姿勢変動(ピッチング角αの前傾)に合わせて虚像の俯角βをダイナミックに大きくする俯角調整量Eである。虚像の位置ずれが第1位置調整量C10によって相殺されていれば、虚像がターゲット位置MP1からずれず、サイズの調整は必要ないため、第1サイズ調整量F10はゼロとなる。
【0077】
第2虚像V20は、車両1の姿勢変動に合わせてダイナミックに変化する第2位置調整量C20、第2俯角調整量E20によって調整される(第2画像調整処理が実行される)。第2位置調整量C20は、姿勢変動により生じた上下方向への虚像のずれを強力に抑制する(好ましくは、相殺する)第1位置調整量C10より小さく、姿勢変動(ピッチング角αの前傾)に合わせて虚像表示領域VS内の虚像の位置を上下方向にダイナミックに補正する位置調整量Cである。これにより、姿勢変動(ピッチング角αの前傾/後傾)による虚像の下方向/上方向のずれが生じる(換言すると、前傾によって虚像が観察者の近傍へシフトしたり、後傾によって虚像が観察者の遠方へシフトしたりする)。俯角調整量Eは、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを補正する俯角調整量と、虚像が観察者の近傍へシフトしたことを表現する俯角調整量とを加算し、姿勢変動(ピッチング角αの前傾)に合わせて虚像の俯角βをダイナミックに大きくする第2俯角調整量E20に設定される。ここで、第2俯角調整量E20は、虚像が観察者の近傍へシフトしたことを表現する俯角調整量も加算するため、第1俯角調整量E10に比べると大きくなる。第2サイズ調整量F20は、虚像が観察者の近傍へシフトしたことを表現するために、虚像のサイズを姿勢変動(ピッチング角αの変化)に合わせてダイナミックに大きくするように設定される。
【0078】
図12は、いくつかの実施形態における虚像表示領域内に表示される第1虚像及び第2虚像の画像調整処理の例を示す図である。時間t11~t12では、ピッチング角αは、所定の基準姿勢α0に対し前傾であり、予め設定された姿勢閾値αTd2より小さい前傾であり、時間t12~t13では、ピッチング角αは、予め設定された姿勢閾値αTu2より小さい後傾である。位置調整量Cは、姿勢変動により生じた下方向(t12~t13では上方向)への虚像のずれを強力に抑制する(好ましくは、相殺する)ように、姿勢変動(ピッチング角αの前傾(t12~t13では後傾))に合わせて虚像表示領域VS内の虚像の位置を上方向(t12~t13では下方向)にダイナミックに補正する位置調整量C(第1虚像V10は第1位置調整量C10、第2虚像V20は第2位置調整量C20)に設定される。これにより、虚像の位置ずれは、好ましくは相殺される(虚像の位置は、ターゲット位置MP1に維持される)。俯角調整量Eは、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを抑制する(好ましくは、相殺する)ように、姿勢変動(ピッチング角αの前傾(t12~t13では後傾))に合わせて虚像の俯角βをダイナミックに大きくする(t12~t13では小さくする)俯角調整量E(第1虚像V10は第1俯角調整量E10、第2虚像V20は第2俯角調整量E20)に設定される。虚像の位置ずれが第1位置調整量C10によって相殺されていれば、虚像がターゲット位置MP1からずれず、サイズの調整は必要ないため、第1サイズ調整量F10はゼロとなる。第2サイズ調整量F20は、t11~t12では、虚像が観察者の近傍へシフトしたことを表現するために、虚像のサイズを姿勢変動(ピッチング角αの変化)に合わせてダイナミックに大きくするように設定され、t12~t13では、虚像が観察者の遠方へシフトしたことを表現するために、虚像のサイズを姿勢変動(ピッチング角αの変化)に合わせてダイナミックに小さくするように設定される。基準姿勢α0は、予めメモリ37に記憶された車両のピッチング角αであり、典型的には、車両のピッチング角がゼロ(路面6に対して平行)である状態である。なお、基準姿勢α0は、可変してもよい。具体的には、車両のピッチング角αが所定の時間以上あまり変化がない場合、その時の安定したピッチング角αを基準姿勢α0として設定(更新)し、メモリ37に記憶してもよい。
【0079】
時間t13~t14では、ピッチング角αは、予め設定された姿勢閾値αTu2より大きい後傾である。位置調整量Cは、姿勢変動(ピッチング角αの後傾)に依らず虚像表示領域VS内の虚像の位置を固定する第3位置調整量C21(位置調整量の限度CT)に設定される。これにより、姿勢変動(ピッチング角αの後傾)による虚像の上方向のずれがさらに大きくなる(図12において第2位置調整量C20によるずれ量が点線であるとすると、第3位置調整量C21は太線となる)。俯角調整量Eは、姿勢変動(ピッチング角αの変化)により生じる実景(路面6)と虚像との俯角ずれを補正する俯角調整量と、虚像が観察者の遠方へシフトしたことを表現する俯角調整量とを加算し、姿勢変動(ピッチング角αの後傾)に合わせて虚像の俯角βをダイナミックに大きくする第3俯角調整量E21に設定される。ここで、第3俯角調整量E21は、虚像が観察者の遠方へシフトしたことを表現する俯角調整量も加算するため、第2俯角調整量E20に比べると大きくなる。第3サイズ調整量F21は、虚像が観察者の遠方へシフトしたことを表現するために、虚像のサイズを姿勢変動(ピッチング角αの変化)も合わせてダイナミックに小さくするサイズ調整量を設定する。時間t14~t17での画像処理は、時間t11~t13での画像処理と同様であり、説明は省く。
【0080】
いくつかの実施形態において、制御回路33(画像調整モジュール520)は、車両1の姿勢変動の予測が第1の予測状態である場合、1)第1虚像V10の位置を、第1位置調整量C10に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、2)第2虚像V20の位置を、第1画像調整処理よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第2画像調整処理を実行することと、車両1の姿勢変動の予測が第1の予測状態よりも小さい第2の予測状態である場合、3)第1虚像V10の位置及び第2虚像V20の位置を、第1位置調整量C10に基づき調整する第1画像調整処理を実行してもよい。このとき、第2虚像V20に設定された位置調整範囲VT2は変化しない(但し、これに限定されない)。いくつかの実施形態において、姿勢検出部415は、車両の姿勢変動を予測可能な情報(加速度や加速度)に基づいて、車両の姿勢変動を予測することに関係する様々な動作を実行するための様々なソフトウェア構成要素を含み、車両の姿勢変動の予測結果を示す情報(予測関連情報の一例)、又は車両の姿勢変動の予測値(予測関連情報の一例)を、制御回路33へ出力してもよい。具体的に、例えば、姿勢検出部415は、車両の姿勢変動を予測可能な観測情報(加速度や加速度)を入力し、最小二乗法や、カルマンフィルタ、α-βフィルタ、又はパーティクルフィルタなどの予測アルゴリズムを用いて、過去の1つ又はそれ以上の観測情報を用いて、次回の値を予測するようにしてもよい。なお、この車両の姿勢変動を予測する機能の一部又は全部は、制御回路33が有していてもよい(メモリ37に予測アルゴリズムである予測モジュール(不図示)を有していてもよい)。
【0081】
いくつかの実施形態において、制御回路33(画像調整モジュール520)は、第2虚像に対し、車両の姿勢変動が所定の閾値未満である場合、第1位置調整量に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、車両の姿勢変動が所定の閾値より大きい場合、第1画像調整処理よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行してもよい。
【0082】
図13は、いくつかの実施形態における虚像表示領域内に表示される第1虚像及び第2虚像の画像調整処理の例を示す図である。制御回路33(画像調整モジュール520)は、第2虚像に対し、車両1のピッチング角α(姿勢変動の一例)が所定の閾値αth1未満である場合(時間t21~t22、t23~t25、t26~t27)、第1位置調整量C10に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、車両1のピッチング角α(姿勢変動の一例)が所定の閾値αth1より大きい場合、第1画像調整処理よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量C22(C20)に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。
【0083】
いくつかの実施形態において、制御回路33(画像調整モジュール520)は、第2虚像に対し、第2位置調整量に基づき調整する第2画像調整処理を実行し、車両の姿勢変動のピークを算出し、車両の姿勢変動のピークが所定の閾値未満になり、車両の姿勢変動が基準姿勢を基点に逆位相になるタイミングで、第2画像調整処理から第1画像調整処理に切り替えてもよい。
【0084】
図14は、いくつかの実施形態における虚像表示領域内に表示される第1虚像及び第2虚像の画像調整処理の例を示す図である。制御回路33(画像調整モジュール520)は、車両が前傾すると、時間t31~t32において、第2虚像V20に対し、第1位置調整量C10よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量C23(C20)に基づき調整する第2画像調整処理を実行し、車両が前傾した際の車両姿勢変動のピークを算出し、所定の閾値αth2未満であるか判定する。時間t31~t32において、車両の姿勢変動のピークは、所定の閾値αth2より大きかった為、第2虚像V20は、時間t32~t33の逆位相(後傾)においても第2位置調整量C23(C20)に基づき調整する第2画像調整処理を実行する(t33~t34も同様)。時間t33~t34において、車両の姿勢変動のピークは、所定の閾値αth2より小さかった為、第2虚像V20は、時間t34~t35の逆位相(後傾)において、第2画像調整処理から第1画像調整処置に切り替える。
【0085】
いくつかの実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、第2画像調整処理を実行するコンテンツの数を増やす。例えば、
第1画像調整処理をするコンテンツが2つ、かつ第2画像調整処理をするコンテンツが2つ表示されている場合であり、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定された場合、第1画像調整処理をするコンテンツが1つ、かつ第2画像調整処理をするコンテンツが3つとしてもよい。
【0086】
また、いくつかの実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定される場合、第2画像調整処理を実行する第2虚像とみなす第2の領域を虚像表示領域の上下方向の中央へ向けて拡大する。例えば、図9に示すように、第2の領域VS21が虚像表示領域VSの下方に配置される場合であり、車両の姿勢変動が大きい、又は車両の姿勢変動が頻繁であると判定された場合、第2の領域VS21を上方に拡大し得る。これにより、第2の領域VS21に属するコンテンツが増加する。これによれば、見切れやすい虚像表示領域の端部に近いものから順次、第2画像調整処理を適用することができる。
【0087】
第1乃至3の実施形態に従属し得る第4実施形態における表示制御方法では、車両の姿勢変動が所定の閾値以上に変化した後、車両の姿勢変動が所定の閾値未満になった場合、第2虚像の位置を、第2画像調整処理から第1画像調整処理に切り替えて調整すること、をさらに含む。これによれば、
見切れが生じにくい状態を判定し、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減する第1画像調整処理に自動的に切り替えることができるという利点が想定される。
【0088】
いくつかの実施形態における表示制御方法では、第2画像位置調整処理を実行すると、第2虚像V20が虚像表示領域VSの第2の領域VS20内に配置される状態から第2の領域外に配置される状態に変化する場合、第1虚像V10及び第2虚像V20に対し、第2画像位置調整処理よりも車両の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制する第3位置調整処理(車両の姿勢変化に対してダイナミックに虚像の調整をする態様も含む)、をさらに含む。これによれば、第2画像位置調整処理でも見切れが生じてしまう場合に、車両の姿勢変動に対する虚像の位置調整量をさらに抑制することで、より強力に虚像の見切れを防止するという利点も想定される。
【0089】
また、いくつかの実施形態における表示制御方法では、第2画像位置調整処理を実行すると、第2虚像V20が虚像表示領域VSの第2の領域VS20内に配置される状態から第2の領域VS20外に配置される状態に変化する場合、第1虚像V10及び第2虚像V20に対し、車両の姿勢変化に対する虚像の位置の固定する第3位置調整処理、をさらに含む。これによれば、第2画像位置調整処理でも見切れが生じてしまう場合に、車両の姿勢変動に対する虚像の位置を固定することで、虚像の見切れを完全に防止するという利点も想定される。
【0090】
いくつかの実施形態における表示制御方法では、第2虚像V20を、第1虚像V10より下方に視認されるように配置することと、車両1が前傾となり、第1画像位置調整処理を実行するとオフセットされる第1虚像V10が、第1の位置調整範囲VT1内に配置される状態から第1の位置調整範囲VT1よりも上側に配置される状態に変化する場合、第1虚像V10の位置を第1の位置調整範囲VT1内の上方周縁部に固定し、同時に、第2虚像V20の位置を第1の位置調整範囲VT1内の上方周縁部より下方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む。これによれば、一方の虚像が固定され、他方の虚像が位置補正され続けることを防止する、という利点も想定される。
【0091】
いくつかの実施形態における表示制御方法では、第2虚像V20を、第1虚像V10より下方に視認されるように配置することと、車両1が後傾となり、第2画像位置調整処理を実行するとオフセットされる第2虚像V20が、第2の位置調整範囲VT2内に配置される状態から第2の位置調整範囲VT2よりも下側に配置される状態に変化する場合、第2虚像V20の位置を第2の位置調整範囲VT2内の下方周縁部に固定し、同時に、第1虚像V10の位置を第2の位置調整範囲VT2内の下方周縁部より上方の所定の位置に固定する第3画像位置調整処理、をさらに含む。これによれば、一方の虚像が固定され、他方の虚像が位置補正され続けることを防止する、という利点も想定される。
【0092】
いくつかの実施形態における表示制御方法では、虚像表示領域VS内の第2虚像V20の上下方向の位置に応じて、第2位置調整量C20を変化させ、第2虚像V20の位置が虚像表示領域VSの上下方向の端部に近いほど、第2位置調整量C20を小さくすること、をさらに含む。これによれば、虚像表示領域内の複数の虚像間での位置補正量の違いにより違和感を観察者が受けにくくなるという利点も想定される。
【0093】
また、本実施形態の表示制御装置30は、車両1に搭載され、表示面50aに画像を表示する表示器50を有し、画像の光を被投影部2に向けることで、車両1の前方の路面と重なる虚像表示領域VS内に虚像を重ねて視認させるヘッドアップディスプレイ装置20を制御する表示制御装置30であって、1つ又は複数の制御回路33と、メモリ37と、メモリ37に格納され、1つ又は複数の制御回路33によって実行されるように構成される1つ又は複数のコンピュータ・プログラムと、を備え、制御回路33は、虚像表示領域VS内の第1の領域VS10に表示される第1虚像V10と、第2の領域VS20より虚像表示領域VSの上下方向の端部に近い第2の領域VS20に表示される第2虚像V20と、を少なくとも表示させ、車両1の姿勢変動を示す姿勢変動量情報を取得し、車両1の姿勢変動による虚像と路面との相対的な位置ズレを抑制するために、姿勢変動量情報に合わせてダイナミックに変化する第1位置調整量C10を設定し、車両1の姿勢が変化した場合、1)第1虚像V10の位置を、第1位置調整量C10に基づき調整する第1画像調整処理を実行し、2)第2虚像V20の位置を、第1画像調整処理よりも車両1の姿勢変化に対する虚像の位置の調整を抑制した第2位置調整量C20に基づき調整する第2画像調整処理を実行する。これによれば、虚像表示領域内の端部に近い第2虚像を車両の姿勢変動に応じて位置調整を実施して仮想現実感の低下を抑制しつつ、位置調整量を抑制することで、第2虚像の一部又は全部が見切れてしまう(虚像表示領域内に収まらない)ことを防止することができ、一方、虚像表示領域内の上下方向の中央部に近い第1虚像では、車両の姿勢変動による虚像と実景との位置ずれを強力に低減するという利点が想定される。
【0094】
本明細書に記載されるヘッドアップディスプレイ装置20では、いくつかの実施形態におけるいずれかの表示制御装置30と、表示光を出射する表示面50aと、表示面50aからの表示光を被投影部2にむけるリレー光学系80と、を備える。この場合も、上記と同様の利点が想定される。
【0095】
上述の処理プロセスの動作は、汎用制御回路又は特定用途向けチップなどの情報処理装置の1つ以上の機能モジュールを実行させることにより実施することができる。これらのモジュール、これらのモジュールの組み合わせ、及び/又はそれらの機能を代替えし得る公知のハードウェアとの組み合わせは全て、本発明の保護の範囲内に含まれる。
【0096】
車両用表示システム10の機能ブロックは、任意選択的に、説明される様々な実施形態の原理を実行するために、ハードウェア、ソフトウェア、又はハードウェア及びソフトウェアの組み合わせによって実行される。図3で説明する機能ブロックが、説明される実施形態の原理を実施するために、任意選択的に、組み合わされ、又は1つの機能ブロックを2以上のサブブロックに分離されてもいいことは、当業者に理解されるだろう。したがって、本明細書における説明は、本明細書で説明されている機能ブロックのあらゆる可能な組み合わせ若しくは分割を、任意選択的に支持する。
【符号の説明】
【0097】
1 :車両
2 :被投影部
6 :路面
10 :車両用表示システム
20 :HUD装置(ヘッドアップディスプレイ装置)
21 :光出射窓
22 :筐体
30 :表示制御装置
31 :I/Oインタフェース
33 :制御回路
35 :画像処理回路
37 :メモリ
40 :画像表示装置
50 :表示器
50a :表示面
52 :光学レイヤ
60 :光源ユニット
80 :リレー光学系
100 :仮想平面
200 :アイボックス
205 :中心
401 :車両ECU
403 :道路情報データベース
405 :自車位置検出部
407 :操作検出部
409 :目位置検出部
411 :車外センサ
413 :明るさ検出部
415 :姿勢検出部
417 :携帯情報端末
419 :外部通信機器
510 :描画モジュール
520 :画像調整モジュール
522 :位置調整モジュール
524 :俯角調整モジュール
526 :サイズ調整モジュール
700 :観察者
C :位置調整量
C10 :第1位置調整量
C20 :第2位置調整量
CT :限度
CTd :限度
CTu :限度
E :俯角調整量
F :サイズ調整量
M :画像
MP :ターゲット位置
PO :基準位置
V10 :第1虚像
V20 :第2虚像
VP :仮想視点
VS :虚像表示領域
VS01 :立面
VS02 :傾斜面
VS03 :路面重畳面
VS10 :第1の領域
VS20 :第2の領域
VS21 :第2の領域
VS22 :第2の領域
VT :位置調整範囲
VT1 :第1の位置調整範囲
VT2 :第2の位置調整範囲
α :ピッチング角
α0 :基準姿勢
αTd2 :姿勢閾値
αTu2 :姿勢閾値
αth1 :閾値
αth2 :閾値
β :俯角
図1
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図3
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図7A
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