(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140731
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】エアバッグシステム及び車両
(51)【国際特許分類】
B60R 21/233 20060101AFI20241003BHJP
B60R 21/015 20060101ALI20241003BHJP
B60R 21/214 20110101ALI20241003BHJP
B60R 21/206 20110101ALI20241003BHJP
B60R 21/207 20060101ALI20241003BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B60R21/233
B60R21/015 312
B60R21/015 320
B60R21/214
B60R21/206
B60R21/207
B60N2/42
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052038
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】古和 宗高
(72)【発明者】
【氏名】志田 隼人
(72)【発明者】
【氏名】松本 未希
(72)【発明者】
【氏名】小島 琢人
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 大貴
【テーマコード(参考)】
3B087
3D054
【Fターム(参考)】
3B087CD04
3B087CD05
3D054AA07
3D054BB08
3D054BB30
3D054EE11
3D054EE14
3D054EE30
3D054EE60
3D054FF16
(57)【要約】
【課題】衝突の際、シートバックが所定の角度を超えて傾斜している場合でも乗員を適切に保護するエアバッグシステムを提供する。
【解決手段】エアバッグシステム1は、乗員の上体側に向かって展開するルーフエアバッグ35と、シートクッション10の下側に配置され、シートクッション10を持ち上げるクッションエアバッグ31と、衝突検知センサ40と、シート状態検知センサと、制御部50とを備え、制御部50は、車両状態検知部51と、シート状態判定部52と、ルーフエアバッグ展開部53と、クッションエアバッグ展開部54と、を有し、制御部50は、車両の衝突を検知し、シートバック11がシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定した場合、クッションエアバッグ展開部54により第2インフレータを作動させた後又は同時にルーフエアバッグ展開部53により第1インフレータを作動させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のルーフ部に設けられ、第1インフレータからガスの供給を受けて車両用シートに着座する乗員の上体側に向かって展開するルーフエアバッグと、
前記車両用シートのシートクッションの下側に配置され、第2インフレータからのガスの供給を受けて前記車両用シートの前記シートクッションを持ち上げるクッションエアバッグと、
前記車両の衝突を検知する衝突検知センサと、
前記車両用シートの状態を検出するシート状態検知センサと、
制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記衝突検知センサから受信した信号に基づき前記車両の状態を検知する車両状態検知部と、
前記シート状態検知センサから取得した情報に基づき、前記車両用シートの状態を判定するシート状態判定部と、
前記第1インフレータを作動させ前記ルーフエアバッグを展開するルーフエアバッグ展開部と、
前記第2インフレータを作動させ前記クッションエアバッグを展開するクッションエアバッグ展開部と、を有し、
前記制御部は、前記車両状態検知部が、前記車両の衝突を検知し、前記シート状態判定部が、前記車両用シートのシートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させた後又は同時に、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させることを特徴とするエアバッグシステム。
【請求項2】
前記制御部は、前記車両状態検知部が、前記車両の衝突を検知し、前記シート状態判定部が、前記車両用シートの前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させた後に、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項3】
前記車両用シートは、前記シートクッションを支持する左右一対の脚部材と、前記左右一対の脚部材の間に配置される中間支持部材とを備え、
前記クッションエアバッグは、前記中間支持部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項4】
前記クッションエアバッグは、シート幅方向において、前記車両用シートのヘッドレストと重なる位置に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項5】
展開した前記クッションエアバッグの少なくとも一部は、シート前後方向において、展開した前記ルーフエアバッグと重なる位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項6】
展開した前記クッションエアバッグの前端は、前記シートクッションの前端よりも後方に位置することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項7】
前記車両用シートは、前記車両の前後方向における位置を調節可能なスライド装置を有し、
前記制御部は、
前記車両状態検知部が前記車両の衝突したことを検知し、
前記シート状態判定部が、前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定し、且つ、
前記車両用シートが所定の位置よりも前方にあると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させることなく、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項8】
前記車両用シートは、前記車両の前後方向における位置を調節可能なスライド装置と、
前記車両のインストルメントパネルに設けられ、第3インフレータからガスの供給を受けて前記乗員の脚に向かって展開するニーエアバッグと、を備え、
前記制御部は、
前記第3インフレータを作動させ前記ニーエアバッグを展開するニーエアバッグ展開部を有し、
前記制御部は、
前記車両状態検知部が前記車両の衝突したことを検知し、
前記シート状態判定部が、前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定し、且つ、
前記車両用シートが所定の位置よりも前方にあると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させず、前記ニーエアバッグ展開部により前記第3インフレータを作動させ、その後、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項9】
前記車両用シートは、アームレストを有しており、
前記アームレストは、収納位置と使用位置との間で回動可能に、前記車両用シートの前記シートバックに取り付けられており、
前記アームレストが前記使用位置にある場合において、前記ルーフエアバッグが展開したとき、前記アームレストは、展開した前記ルーフエアバッグにより下方に押され、前記使用位置よりもさらに下側に回動することを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項10】
前記車両用シートは、脆弱部が設けられたアームレストを有しており、
前記アームレストは、収納位置と使用位置との間で回動可能に、前記車両用シートの前記シートバックに取り付けられており、
前記アームレストが前記使用位置にある場合において、前記ルーフエアバッグが展開したとき、前記アームレストは、展開した前記ルーフエアバッグが接触することで、前記脆弱部を起点に折れ曲がることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグシステム。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のエアバッグシステムを備えることを特徴とする車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグシステム及び車両に係り、特に、ルーフエアバッグを備えたエアバッグシステム及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両の衝突が検知された場合、乗員の大腿部を持ち上げると共に、ルーフ部に設けられたルーフエアバッグを展開するルーフエアバッグシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるルーフエアバッグシステムでは、ルーフエアバッグを展開する際、乗員の大腿部を機械的手段で持ち上げる持ち上げ機構が設けられている。しかしながら、機械的手段だと持ち上げに時間がかかり、シートベルトをしている状態でも、衝突時の荷重で乗員が前後方向に移動する可能性があった。そのため、衝突の際、瞬時にクッションを持ち上げ、適切に乗員を保護することが望まれていた。
【0005】
本発明は、上記の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば衝突の際、シートバックが所定の角度を超えて傾斜している場合でも乗員を適切に保護することが可能なエアバッグシステム及び車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題は、本発明のエアバッグシステムによれば、車両のルーフ部に設けられ、第1インフレータからガスの供給を受けて車両用シートに着座する乗員の上体側に向かって展開するルーフエアバッグと、前記車両用シートのシートクッションの下側に配置され、第2インフレータからのガスの供給を受けて前記車両用シートの前記シートクッションを持ち上げるクッションエアバッグと、前記車両の衝突を検知する衝突検知センサと、前記車両用シートの状態を検出するシート状態検知センサと、制御部と、を備え、前記制御部は、前記衝突検知センサから受信した信号に基づき前記車両の状態を検知する車両状態検知部と、前記シート状態検知センサから取得した情報に基づき、前記車両用シートの状態を判定するシート状態判定部と、前記第1インフレータを作動させ前記ルーフエアバッグを展開するルーフエアバッグ展開部と、前記第2インフレータを作動させ前記クッションエアバッグを展開するクッションエアバッグ展開部と、を有し、前記制御部は、前記車両状態検知部が前記車両の衝突したことを検知し、前記シート状態判定部が、前記車両用シートのシートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させた後又は同時に、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させることにより解決される。
【0007】
シートクッションを持ち上げるクッションエアバッグを備え、衝突を検知したとき、第2インフレータを作動させた後又は同時に第1インフレータを作動させることにより、素早くクッションを持ち上げつつ、クッションエアバッグを展開させた後又は同時にルーフエアバッグを展開させることで、乗員を効率的に保護することができる。
【0008】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記制御部は、前記車両状態検知部が、前記車両の衝突を検知し、前記シート状態判定部が、前記車両用シートの前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させた後に、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させるとよい。
第2インフレータを作動させた後に、第1インフレータを作動させることで、クッションエアバッグによりシートクッションを持ち上げた後、ルーフエアバッグにより乗員を保護することができる。先にシートクッションを持ち上げることで、例えば乗員が衝突時の荷重により車両用シートから前方向に移動することを抑制し、ルーフエアバッグにより乗員を押さえることができる。
【0009】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記車両用シートは、前記シートクッションを支持する左右一対の脚部材と、前記左右一対の脚部材の間に配置される中間支持部材とを備え、前記クッションエアバッグは、前記中間支持部材に取り付けられているとよい。
クッションエアバッグを脚部材の間に配置された中間支持部材に取り付けることで、クッションエアバッグをシートクッションの下側に配置することができ、展開時、適切にシートクッションを持ち上げることが可能となる。
【0010】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記クッションエアバッグは、シート幅方向において、前記車両用シートのヘッドレストと重なる位置に配置されているとよい。
クッションエアバッグを、シート幅方向においてヘッドレストと重なる位置に配置することで、コンパクトな配置とすることができる。
【0011】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、展開した前記クッションエアバッグの少なくとも一部は、シート前後方向において、展開した前記ルーフエアバッグと重なる位置に配置されるとよい。
シート前後方向において、展開したクッションエアバッグとルーフエアバッグとが重なる位置にあることで、乗員を効率よく保護することができる。
【0012】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、展開した前記クッションエアバッグの前端は、前記シートクッションの前端よりも後方に位置するとよい。
クッションエアバッグが展開する領域を必要以上に前方に広げないことで、乗員の脚の跳ね上げを抑制することができる。
【0013】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記車両用シートは、前記車両の前後方向における位置を調節可能なスライド装置を有し、前記制御部は、前記車両状態検知部が前記車両の衝突したことを検知し、前記シート状態判定部が、前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定し、且つ、前記車両用シートが所定の位置よりも前方にあると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させることなく、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させるとよい。
第2インフレータを作動させずクッションエアバッグを展開させないことにより、乗員の脚がインストルメントパネルと干渉することを抑制できる。
【0014】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記車両用シートは、前記車両の前後方向における位置を調節可能なスライド装置と、前記車両のインストルメントパネルに設けられ、第3インフレータからガスの供給を受けて前記乗員の脚に向かって展開するニーエアバッグと、を備え、前記制御部は、前記第3インフレータを作動させ前記ニーエアバッグを展開する二―エアバッグ展開部を有し、前記制御部は、前記車両状態検知部が前記車両の衝突したことを検知し、前記シート状態判定部が、前記シートバックがシート後方側へ所定の角度を超えて傾斜していると判定し、且つ、前記車両用シートが所定の位置よりも前方にあると判定した場合、前記クッションエアバッグ展開部により前記第2インフレータを作動させず、前記ニーエアバッグ展開部により前記第3インフレータを作動させ、その後、前記ルーフエアバッグ展開部により前記第1インフレータを作動させるとよい。
車両用シートが、所定の位置よりも前方にある場合、クッションエアバッグの代わりにニーエアバッグを作動させることで、乗員を効率よく保護することができる。
【0015】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記車両用シートは、アームレストを有しており、前記アームレストは、収納位置と使用位置との間で回動可能に、前記車両用シートの前記シートバックに取り付けられており、前記アームレストが前記使用位置にある場合において、前記ルーフエアバッグが展開したとき、前記アームレストは、展開した前記ルーフエアバッグにより下方に押され、前記使用位置よりもさらに下側に回動するとよい。
アームレストが、ルーフエアバッグにより押され使用位置よりも下側に回転することで、アームレストがルーフエアバッグの展開を阻害することを抑制できる。
【0016】
また、上記のエアバッグシステムにおいて、前記車両用シートは、脆弱部が設けられたアームレストを有しており、前記アームレストは、収納位置と使用位置との間で回動可能に、前記車両用シートの前記シートバックに取り付けられており、前記アームレストが前記使用位置にある場合において、前記ルーフエアバッグが展開したとき、前記アームレストは、展開した前記ルーフエアバッグが接触することで、前記脆弱部を起点に折れ曲がるとよい。
アームレストがルーフエアバッグにより押され脆弱部を起点に折れ曲がることで、アームレストがルーフエアバッグの展開を阻害することを抑制できる。
【0017】
また、前記課題は、上記のエアバッグシステムを備える車両により解決される。
【発明の効果】
【0018】
本発明のエアバッグシステムによれば、シートクッションを持ち上げるクッションエアバッグを備え、衝突を検知したとき、第2インフレータを作動させた後又は同時に第1インフレータを作動させることにより、素早くクッションを持ち上げつつ、クッションエアバッグを展開させた後又は同時にルーフエアバッグを展開させることで、乗員を効率的に保護することができる。
また、第2インフレータを作動させた後に、第1インフレータを作動させることで、クッションエアバッグによりシートクッションを持ち上げた後、ルーフエアバッグにより乗員を適切に保護することができる。先にシートクッションを持ち上げることで、例えば乗員が衝突時の荷重により車両用シートから前方向に移動することを抑制し、ルーフエアバッグにより乗員を確実に押さえることができる。
また、クッションエアバッグを脚部材の間に配置された中間支持部材に取り付けることで、クッションエアバッグをシートクッションの下側に配置することができ、展開時、適切にシートクッションを持ち上げることが可能となる。
また、クッションエアバッグを、シート幅方向においてヘッドレストと重なる位置に配置することで、コンパクトな配置とすることができる。
シート前後方向において、展開したクッションエアバッグとルーフエアバッグとが重なる位置にあることで、乗員を効率よく保護することができる。
クッションエアバッグが展開する領域を必要以上に前方に広げないことで、乗員の脚の跳ね上げを抑制することができる。
車両用シートが、所定の位置よりも前方にある場合、第2インフレータを作動させずクッションエアバッグを展開させないことにより、乗員の脚がインストルメントパネルと干渉することを抑制できる。
車両用シートが、所定の位置よりも前方にある場合、クッションエアバッグの代わりにニーエアバッグを作動させることで、乗員を効率よく保護することができる。
アームレストが、ルーフエアバッグにより押され使用位置よりも下側に回転することで、アームレストがルーフエアバッグの展開を阻害することを抑制できる。
アームレストがルーフエアバッグにより押され脆弱部を起点に折れ曲がることで、アームレストがルーフエアバッグの展開を阻害することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態に係るエアバッグシステムを備えた車両の室内を示す図であり、ルーフエアバッグ及びクッションエアバッグが展開する前の状態を示す図である。
【
図2】ルーフエアバッグ及びクッションエアバッグが展開した状態を示す図である。
【
図3】クッションエアバッグを備える車両用シートの正面図である。
【
図4】クッションエアバッグが設けられたクッションフレームを示す斜視図である。
【
図5】ニーエアバッグが展開した状態を示す図である。
【
図6】エアバッグシステムの機能構成を示すブロック図である。
【
図7】エアバッグシステムの作動を説明するフローチャートである。
【
図8】シートベルト装置のベルトを弛め乗員の上体を起こした状態を示す図である。
【
図9】リアシートの車両用シートにおいて、前席が倒れていた場合にルーフエアバッグを展開させた状態を示す図である。
【
図10A】ルーフエアバッグの展開によりアームレストが下方に回動した状態を示す図である。
【
図10B】ルーフエアバッグの展開によりアームレストが脆弱部で折れ曲がった状態を示す図である。
【
図11】スマホ叩き落とし用のサブエアバッグを展開させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の第一実施形態に係るエアバッグシステム1及びエアバッグシステム1を搭載した車両Vの構成について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
また、以下の説明中、エアバッグシステム1で用いられるエアバッグ、車両用シートS1等の構成部品の材質、形状及び大きさに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0021】
なお、以下では、エアバッグシステム1を備えた車両Vとして、自動運転可能な自動車を挙げ、その構成例について説明することとする。ただし、本発明は、自動車・鉄道など車輪を有する地上走行用乗物に搭載されるエアバッグシステム1に限定されるものではなく、例えば、地上以外を移動する航空機や船舶などに搭載されるエアバッグシステム1にも適用され得る。
【0022】
また、以下の説明中、「前後方向」とは、車両Vの前後方向であり、車両走行時の進行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両Vの横幅方向であり、「上下方向」とは、車両Vの上下方向であり、車両Vが水平面を走行しているときには鉛直方向と一致する方向である。
また、以下の説明において、「シート幅方向」、「シート高さ方向」のように各種方向に「シート」を付して記載する場合には、車両用シートS1に対する方向を示し、「車両内側」、「車両外側」のように「車両」を付して記載する場合には、車両Vに対する方向を示すものとする。
【0023】
<エアバッグシステム1の構成>
まず、本発明の第一実施形態に係るエアバッグシステム1の構成について説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係るエアバッグシステム1を備えた車両Vの前側の断面が模式的に示されており、車両右側の車両用シートS1が示されている。
図1は、ルーフエアバッグ30及びクッションエアバッグ31の展開前の状態が示されており、
図2は、ルーフエアバッグ30及びクッションエアバッグ31の展開後の状態が示されている。
【0024】
図1に示すように、本実施形態に係る車両Vは、ルーフエアバッグ30、クッションエアバッグ31及びニーエアバッグ32を含んで構成されている。
【0025】
ルーフエアバッグ30は、車両Vのルーフ部RFに設けられている。より具体的には、ルーフエアバッグ30及び第1インフレータ35をからなるエアバッグモジュールが収納ボックス19に収容されており、収納ボックス19は、ルーフエアバッグ30が車両用シートS1の上方に位置するようにルーフ部RFに配置されている。
【0026】
クッションエアバッグは、車両用シートS1にシートクッション10の下側に配置されている。ニーエアバッグ32は、インストルメントパネルIP内において下側に設けられている。なお、インストルメントパネルIPは、収納ボックスであってもよい。また、図示しないが、車両用シートS1が通常の着座状態である場合に用いられるエアバッグも、ステアリング、サイドドア、インストルメントパネルIPの上側に搭載されている。
【0027】
ルーフエアバッグ30は、
図2に示すように、車両Vの衝突時に第1インフレータ35からガスが供給されることで、展開したルーフエアバッグ30aとなり、車両用シートS1に着座した乗員Hの上体側に向かって展開され、乗員Hを保護するように構成されている。
【0028】
クッションエアバッグ31は、
図2に示すように、車両Vの衝突時に第2インフレータ36からガスが供給されることで、展開したクッションエアバッグ31aとなり、車両用シートS1のシートクッション10を持ち上げるように構成されている。
【0029】
ニーエアバッグ32は、
図5に示すように、車両Vの前面衝突時に第3インフレータ37からガスが供給されることで、展開したニーエアバッグ32aとなり、車両用シートS1に着座した乗員Hの脚部に向かって展開され、乗員Hを保護するように構成されている。
【0030】
車両用シートS1は、着座する乗員Hの大腿部及び臀部を支持するシートクッション10と、乗員Hの背部を支持するシートバック11と、シートバック11の上方端部に設けられ、乗員Hの頭部を支持するヘッドレスト12とを備えている。また、車両用シートS1には、三点式のシートベルト装置17が設けられており、シートベルトのリトラクターを巻き締めることで着座する乗員Hを拘束している。
【0031】
シートクッション10には、
図4に示すように、平面視で矩形枠状を成すシートクッションフレーム20が設けられている。シートクッションフレーム20は、シート幅方向の両端にシート前後方向に沿って延びる一対のクッションサイドフレーム21,21を有する。また、一対のクッションサイドフレーム21,21の前端部同士をシート幅方向に連結するパンフレーム22及びフロントパイプ23を有し、一対のクッションサイドフレーム21,21の後端部同士をシート幅方向に連結するリアパイプ24を有する。また、Sバネ25が、フロントパイプ23及びリアパイプ24を架け渡して設けられている。
【0032】
また、シートクッションフレーム20は、左右一対の脚部材26を介して車体フロアFLに取り付けられている。脚部材26は、高さ調整装置15と、車体フロアFL上において、車両前後方向に沿って配置されたスライド装置14とから構成されている。シートクッション10は、高さ調整装置15により高さを調整したり、車体フロアFLに対して後傾させたりすることができる。より具体的に述べると、シートクッションフレーム20の後端部には、シート幅方向に沿って軸部15bが設けられており、高さ調整装置15のフロントリンク15aが伸びることで、シートクッションフレーム20を回動させることも可能となっている。
【0033】
また、スライド装置14により、車両前後方向にスライド移動させることができる。スライド装置14には、シート状態を検知するシート状態検知センサとして、位置センサ42が設けられており、位置センサ42を用いることで、車両前後方向における車両用シートS1の位置を検出することが可能となっている。
【0034】
図3及び
図4に示すように、左右一対の脚部材26の間には、中間支持部材27が設けられている。また、中間支持部材27には、スライド装置14を駆動させるアクチュエータ28が設けられており、自動で車両用シートS1を前後移動させることができる。また、クッションエアバッグ31及びそれを展開する第2インフレータ36からなるエアバッグモジュールが取り付けられている。第2インフレータ36からのガスの供給を受けて、クッションエアバッグ31が展開し、シートクッション10の前側端部を持ち上げることができる。
【0035】
クッションエアバッグ31を中間支持部材27に設けることで、車両用シートS1が前後方向に移動した場合でも、クッションエアバッグ31の下側に配置することができ、クッションエアバッグ31を展開させたとき、
図2に示すようにシートクッション10を持ち上げることができる。
【0036】
また、
図3に示すように、クッションエアバッグ31は、シート幅方向において、ヘッドレスト12と重なる位置に配置されているとよい。言い換えれれば、クッションエアバッグ31はシート幅方向において略中央に位置するように配置されるとよい。このように配置することで、左右にずれることなくコンパクトな配置が可能であり、適切にシートクッション10を持ち上げることができる。
【0037】
なお、シート前後方向においては、展開したクッションエアバッグ31aの少なくとも一部が、展開したルーフエアバッグ30aと重なる位置に配置されるように、クッションエアバッグ31を配置するとよい。このように配置することで、
図2に示すようにリラックス姿勢の車両用シートS1に着座する乗員Hを効率よく保護することができる。
【0038】
<クッションエアバッグの形状>
また、展開したクッションエアバッグ31aの前端は、シートクッション10の前端よりも後方に位置するとよい。クッションエアバッグ31が展開する領域を必要以上に前方に広げないことで、乗員Hの脚の跳ね上げを抑制することができる。
【0039】
シートバック11は、その下端部がシートクッション10の後端部と連結されており、連結部分にリクライニング装置が設けられることで、シートバック11がシートクッション10に対して後傾角度を調整可能に回動することができる。
リクライニング装置13には、シート状態を検出するシート状態検知センサの一例として角度センサ41が設けられている。この角度センサ41により、車両用シートS1において、シートバック11のリクライニング角度(後傾角度)が検出可能とされている。
【0040】
シートバック11がシート後方側へ所定の角度(例えば60度)を超えて傾斜している場合、
図1に示すようにリラックス姿勢の状態とされる。リラックス姿勢では、ステアリングホイール及びペダルから上半身や足を遠ざけ、膝が伸ばせるように車両用シートS1を後方にスライドさせた状態となっており、乗員Hの背中が伸びるようにシートバック11が後傾された状態となっている。
【0041】
<サンバイザ18について>
ルーフ部RFの前方端部には、
図1に示すように、前後方向に回動可能なサンバイザ18が設けられている。また、サンバイザ18の後方に、ルーフエアバッグ30及び第1インフレータ35をからなるエアバッグモジュールを収納した収納ボックス19が配置されている。エアバッグモジュールを収納した収納ボックス19は、サンバイザ18が回動しても重ならない位置に配置される。すなわち、サンバイザの回転半径と重ならない位置にエアバッグモジュールが配置される。なお、サンバイザ18は、側方にあるドアのウインドウ側に回転する場合であっても、ルーフエアバッグ30のエアバッグモジュールと干渉しない位置に配置されるのがよい。
【0042】
<エアバッグシステム1のハードウェア構成>
車両Vには、制御部であるECU(Electronic Control Unit)50が設けられており、エアバッグシステム1は、ECU50により制御される。ECU50は、
図1に示すように、例えばインストルメントパネルIP内に設けられる。
ECU50には、エアバッグ制御用の制御回路が組み込まれている。そして、ECU50は、エアバッグ制御用の制御回路を通じて、エアバッグのインフレータ等を起動させることが可能となっている。
【0043】
ECU50は、主として中央演算装置であるCPU(Central Processing Unit)、記憶装置としてのROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等から構成されている。ECU50は、衝突を検知する衝突検知センサ40、リクライニング装置13及びスライド装置14を駆動するアクチュエータ28、角度センサ41、位置センサ42、ルーフエアバッグ30を展開させる第1インフレータ35、クッションエアバッグ31を展開させる第2インフレータ36、ニーエアバッグ32を展開させる第3インフレータ37と接続している。また、各構成はバスを介して相互に通信可能に接続されている。
【0044】
CPUは、中央演算処理ユニットであり、各種プログラムを実行したり、各部を制御したりする。すなわち、CPUは、ROMやHDDからプログラムを読み出し、RAMを作業領域としてプログラムを実行する。CPUは、ROMやHDDに記憶されているプログラムに従って、各構成の制御及び各種演算処理を実行する。
【0045】
ROMは、各種プログラムおよび各種データを格納する。RAMは、作業領域として一時的にプログラムまたはデータを記憶する。HDDは、SSD(Solid State Drive)であってもよく、オペレーティングシステムを含む各種プログラム及び各種データを格納する。
【0046】
<エアバッグシステム1の機能構成>
エアバッグシステム1の機能構成について説明する。ルーフエアバッグ30等を備えた車両Vは、上述した各種センサや装置等を利用して、各種の機能を実現する。エアバッグシステム1は、車両状態検知部51、シート状態判定部52、ルーフエアバッグ展開部53、クッションエアバッグ展開部54及びニーエアバッグ展開部55を有する。
【0047】
車両状態検知部51は、車両Vの衝突を検知又は予知する。具体的には、車両Vに搭載された衝突検知センサ40等の、複数のセンサ類からの信号を受けて車両Vの衝突を検知する。
【0048】
シート状態判定部52は、リクライニング装置13に設けられた角度センサ41によって、シートバック11の後傾角度αの情報を受信する。受信した後傾角度αに基づいて、車両用シートS1がリクライニング姿勢であるか否かを判定する。
また、シート状態判定部52は、スライド装置14に設けられた位置センサ42からの位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて、車両前後方向における位置が所定位置より前方にあるか否かを判定する。
なお、シートバック11の後傾角度αや位置情報は、角度センサ41や位置センサ42だけでなく、車内の設けられたカメラ等が撮影した映像に基づいて取得してもよい。
【0049】
ルーフエアバッグ展開部53は、車両Vに搭載されたルーフエアバッグ30を制御する。具体的には、第1インフレータ35を作動させることでガスを発生させ、ルーフエアバッグ30へガスを供給し、膨張展開させる。
【0050】
クッションエアバッグ展開部54は、車両Vに搭載されたクッションエアバッグ31を制御する。具体的には、第2インフレータ36を作動させることでガスを発生させ、クッションエアバッグ31へガスを供給し、膨張展開させる。
【0051】
ニーエアバッグ展開部55は、車両Vに搭載されたニーエアバッグ32を制御する。具体的には、第3インフレータ37を作動させることでガスを発生させ、ニーエアバッグ32へガスを供給し、膨張展開させる。
【0052】
<エアバッグシステム1の作動>
図7に示すフローチャートを用いて、エアバッグシステム1の作動について説明する。なお、この車両Vのルーフエアバッグ30、クッションエアバッグ31、ニーエアバッグ32等の展開処理は、ECU50が有するCPUがROM又はHDDからプログラムを読み出して、プログラムがRAMに展開することにより実行される。
【0053】
ECU50は、ステップS101において、衝突検知センサ40から受信した信号により車両Vが衝突したことを検知又は予知する。
【0054】
車両Vの衝突を検知又は予知した場合、ECU50は、ステップS102において、シート状態検知センサ(角度センサ41、位置センサ42)から受信した後傾角度αや位置情報に基づき、車両用シートS1の状態を判定する。
【0055】
ECU50の車両状態検知部51は、ステップS103において、シートバック11の後傾角度αが所定の角度を超えているか否かを判定する。超えていない場合(ステップS103:No)、すなわち車両用シートS1がリラックス姿勢ではないと判定した場合は、ステップS104の処理へ移行し、ステアリング等に設けられたエアバッグを通常展開する。
【0056】
ECU50のシート状態判定部52が、ステップS103において、シートバック11の後傾角度αが所定の角度を超えていると判定した場合(ステップS103:Yes)、すなわち車両用シートS1がリラックス姿勢であると判定した場合、ECU50は、ステップS105の処理へ移行する。
【0057】
ECU50のシート状態判定部52は、ステップS105において、車両用シートS1のシート位置が、所定の位置より前方であるか否を判定する。所定の位置より前方に位置しない、すなわち、後方に位置すると判定した場合(ステップS105:No)、ECU50は、ステップS106の処理へ移行する。
【0058】
ステップ106において、ECU50のクッションエアバッグ展開部54は、第2インフレータ36を作動させ、それによりクッションエアバッグ31が膨張展開する。クッションエアバッグ31が展開することにより、シートクッション10が持ち上がる。
【0059】
引き続いて、ECU50のルーフエアバッグ展開部53が、第1インフレータ35を作動させ、ルーフエアバッグ30を展開する(ステップS107)。それにより、
図2に示すように、リラックス姿勢の車両用シートS1に着座した乗員Hが拘束されるようになる。
【0060】
前面衝突時において、シートクッション10が持ち上がることで、乗員Hがシートクッション10に沈み込む姿勢となり、いわゆるサブマリン現象を抑制することができる。クッションエアバッグ31により瞬時にシートクッション10が持ち上がるため、乗員Hが車両用シートS1の着座位置に留まり、ルーフエアバッグ30を展開することで、拘束できるようになる。
【0061】
なお、ステップS105の処理とステップS106の処理は同時であってもよい。すなわち、クッションエアバッグ31とルーフエアバッグ30とを同時に展開させても構わない。
【0062】
ECU50のシート状態判定部52が、ステップS105において、車両用シートS1のシート位置が、所定の位置より前方にあると判定した場合(ステップS105:Yes)、ステップS108の処理へ移行する。
【0063】
ステップS108において、ECU50のニーエアバッグ展開部55が、第3インフレータ37を作動させ、ニーエアバッグ32が膨張展開する。
【0064】
引き続いて、ECU50のルーフエアバッグ展開部53が、第1インフレータ35を作動させ、ルーフエアバッグ30を展開する(ステップS109)。それにより、
図5に示すように、リラックス姿勢の車両用シートS1に着座する乗員Hが拘束されるようになる。
【0065】
クッションエアバッグ31の代わりに、ニーエアバッグ32を膨張展開させることにより、乗員Hの脚を抑え、インストルメントパネルIPと干渉することを抑制しつつ、リラックス姿勢の車両用シートS1に着座する乗員Hを拘束することができる。
【0066】
なお、ステップS108の処理とステップS109の処理は同時に実行されてもよい。すなわち、クッションエアバッグ31とルーフエアバッグ30とを同時に展開させても構わない。
また、必要に応じて、ステップS108の処理を省略し、ステップS109を実行してもよい。すなわち、クッションエアバッグ31及びニーエアバッグ32を展開させず、ルーフエアバッグ30のみを展開してもよい。クッションエアバッグ31を展開させないことにより、乗員Hの脚がインストルメントパネルIPと干渉することを抑制できる。
【0067】
なお、衝突を検出した時、ルーフエアバッグ30及びクッションエアバッグ31を展開させるが、同時に、シートベルト装置17のリトラクターを弱める制御を行ってもよい。
図8に示すように、シートベルト装置17のベルトを緩めることにより、衝突時において
図8の矢印Bのように上半身が前方に回転しやすくなり、乗員Hがシートベルトからすっぽ抜けることを抑制する。通常、衝突時は、シートベルト装置17のリトラクターを巻き締めるような制御するが、あえて緩める制御を行うことで、乗員Hの上体を起こすように誘導する。乗員Hの上体を起こすことで、いわゆるサブマリン現象の発生を抑制できる。
【0068】
また、
図1及び
図2に示すエアバッグシステム1は、フロントシートである車両用シートS1に適用されているが、エアバッグシステム1は、
図9に示すように、車両Vのリアシートである車両用シートS2に適用されてもよい。なお、
図9において、
図1に記載する構成と同一の機能を有するものについては同一の符号を付しその説明は省略する。
【0069】
リアシートである車両用シートS2に適用する場合、ECU50は、前席である車両用シートS1の状態に応じて、クッションエアバッグ31を展開させるか判断する。例えば、フロントシートである車両用シートS1の後傾角度αが所定角度を超えておりリラックス姿勢である場合、衝突を検知したとき、車両用シートS2のクッションエアバッグ31を展開しないようにする。クッションエアバッグ31を展開しないことにより、乗員Hの脚と、車両用シートS1のシートバック11との干渉を避けることができる。
【0070】
<第二実施形態>
次に、第二実施形態について説明する。
図10A及び
図10Bは、アームレスト16,16Aを有する車両用シートS1が搭載された車両V2、V2Aを示す図である。
【0071】
図10Aに示すように、車両用シートS1のシートバックの側部には、アームレスト16が設けられている。アームレスト16は、
図10Aにおいて点線で示される収納位置と、二点鎖線で示される使用位置との間で回動可能に取り付けられている。使用位置ではアームレスト16はストッパ等によりその位置が固定され、乗員Hの腕を支持することが可能となっている。しかしながら、車両用シートS1がリラックス姿勢でありアームレスト16が使用位置にあると、ルーフエアバッグ30が展開したとき、その展開を阻害してしまう可能性がある。
【0072】
本実施形態では、ルーフエアバッグ30が展開したとき、アームレスト16が展開したルーフエアバッグ30aにより押され使用位置よりも下側に回動することが可能となっている。すなわち、ルーフエアバッグ30が展開する際、ストッパが外れ、アームレスト16が
図10Aの矢印A方向に回転するように構成されている。使用位置よりも下側に回転することで、アームレスト16がルーフエアバッグ30の展開を阻害することを抑制できる。
【0073】
また、
図10Bに示す車両用シートS1のように、アームレスト16Aに脆弱部29が設けられてもよい。脆弱部29を設けることで、アームレスト16Aが使用位置にある場合において、ルーフエアバッグ30が展開したとき、アームレスト16Aは、展開したルーフエアバッグ30aと接触することで、脆弱部29を起点に折れ曲がる。
アームレスト16Aが展開したルーフエアバッグ30aにより押され脆弱部を起点に折れ曲がることで、アームレスト16Aがルーフエアバッグ30の展開を阻害することを抑制できる。
【0074】
<第三実施形態>
次に、第三実施形態について説明する。
図11は、車両用シートS1にスマホ叩き落とし用のサブエアバッグ33が設けられた車両V3を示す図である。サブエアバッグ33は、車両用シートS1のシートバック11の側部に設けられている。
【0075】
サブエアバッグ33は、第1袋部331と、第1袋部331の先端において巻き付くように取り付けられた第2袋部332とからなり、展開した場合、
図11に示す展開したサブエアバッグ33aのように全体としてL字形になるように形成されている。展開時にL字形となるように形成することで、サブエアバッグ33の先端が乗員Hの手に当たり、携帯端末60を下げるようにすることができる。
【0076】
ECU50は、衝突を検知したとき、車内カメラ等の映像により乗員Hが携帯端末60等を持っていると判断した場合に、第4インフレータ38を用いて展開させる。サブエアバッグ33は、ルーフエアバッグ30の展開よりも先だって展開され、サブエアバッグ33により乗員Hの腕や携帯端末60が振り下ろされる。これにより、ルーフエアバッグ30と乗員Hの体との間に、乗員Hの腕や携帯端末60が挟まれることが抑制され、乗員Hを適切に保護することができる。
【0077】
以上、本発明の実施形態について図を用いて説明した。本実施形態では、車両用シートS1がリラックス姿勢であるとき、ルーフエアバッグ30及びクッションエアバッグ31が展開され、リラックス姿勢以外の通常の着座姿勢であるときは、ルーフエアバッグ30及びクッションエアバッグ31以外のステアリング、サイドドア、インストルメントパネルの上方に設けられるエアバッグが展開される。車両用シートS1の位置や姿勢によって、使用するエアバッグを使い分けることにより、乗員Hを適切に保護することができる。また、本実施形態では、運転席側のルーフエアバッグ30やクッションエアバッグ31について説明しているが、助手席側においても運転席側と略同じ構成を有してもよい。
【符号の説明】
【0078】
V 車両
S1 車両用シート(フロントシート)
S2 車両用シート(リアシート)
RF ルーフ部
FL 車体フロア
IP インストルメントパネル
1 エアバッグシステム
10 シートクッション
11 シートバック
12 ヘッドレスト
13 リクライニング装置
14 スライド装置
15 高さ調整装置
16、16A アームレスト
17 シートベルト装置
18 サンバイザ
19 収納ボックス
20 シートクッションフレーム
21 クッションサイドフレーム
22 パンフレーム
23 フロントパイプ
24 リアパイプ
25 Sバネ
26 脚部材
27 中間支持部材
28 アクチュエータ
29 脆弱部
30 ルーフエアバッグ
31 クッションエアバッグ
32 ニーエアバッグ
33 サブエアバッグ
35 第1インフレータ
36 第2インフレータ
37 第3インフレータ
38 第4インフレータ
40 衝突検知センサ
41 角度センサ
42 位置センサ
50 ECU(制御部)
51 車両状態検知部
52 シート状態判定部
53 ルーフエアバッグ展開部
54 クッションエアバッグ展開部
55 ニーエアバッグ展開部
60 携帯端末