(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140732
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】データ収集装置、データ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システム
(51)【国際特許分類】
G08G 1/09 20060101AFI20241003BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052039
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】521042770
【氏名又は名称】ウーブン・バイ・トヨタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(72)【発明者】
【氏名】田中 雅浩
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181BB04
5H181BB13
5H181BB20
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF10
5H181FF13
5H181FF27
5H181FF33
5H181MC19
(57)【要約】
【課題】通信量が増大することを抑制しつつ、連続した区間にわたって地物を表すデータを収集することが可能なデータ収集装置を提供する。
【解決手段】データ収集装置は、車両2の走行中において、車両2に搭載されたカメラ21により生成された車両2の周囲を表す画像から、車両2の周囲に存在する所定の地物を検出し、検出した地物に基づいてプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部32に記憶させる検出部42と、車両2が収集対象領域に進入すると、その進入の直前において車両2が走行し、あるいは、車両2が収集対象領域を退出した直後において車両2が走行した追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域において生成された画像とを、車両2に搭載された通信装置23を介してサーバ4へ送信する通信処理部43とを有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路上または道路周囲の所定の地物を表すプローブデータの収集対象領域を表す情報を記憶する記憶部と、
車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像から、前記車両の周囲に存在する前記所定の地物を検出し、当該検出した地物に基づいて前記プローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に記憶させる検出部と、
前記車両が前記収集対象領域に進入すると、前記進入の直前において前記車両が走行し、あるいは、前記車両が前記収集対象領域を退出した直後において前記車両が走行した追加区間及び前記収集対象領域のそれぞれにおいて生成された前記プローブデータと、前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記画像とを、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部と、
を有するデータ収集装置。
【請求項2】
前記車両または前記車両の周囲の環境に対する前記プローブデータの収集の適性を表す適性判定データを生成し、生成した前記適性判定データを前記記憶部に記憶させる適性判定データ生成部をさらに有し、
前記通信処理部は、前記車両が前記収集対象領域に進入すると、前記追加区間を前記車両が走行している間に生成された前記適性判定データ及び前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記適性判定データを、前記通信装置を介してサーバへ送信し、
前記通信装置を介して前記サーバから収集指示を受信したときに限り、前記追加区間及び前記収集対象領域のそれぞれにおいて生成された前記プローブデータと、前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記画像とを、前記通信装置を介して前記サーバへ送信する、請求項1に記載のデータ収集装置。
【請求項3】
前記通信処理部は、前記追加区間が前記進入の直前において前記車両が走行した区間である場合、前記車両が前記収集対象領域に進入した進入位置から順に前記車両が走行した経路の逆向きに沿って検出された前記所定の地物の数の累計値を求め、当該累計値が所定数に達したときの位置から前記進入位置までの前記経路を前記追加区間に設定する、請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項4】
前記通信処理部は、前記追加区間の長さを、前記サーバから前記通信装置を介して受信した長さに設定する、請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項5】
前記通信処理部は、前記車両が前記収集対象領域に進入する直前に走行した第1の区間において検出された地物の第1の数と、前記車両が前記収集対象領域から退出した直後に走行した第2の区間において検出された第2の数とを求め、前記第1の数と前記第2の数とに基づいて、前記第1の区間及び前記第2の区間の少なくとも一方を前記追加区間に設定する、請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項6】
前記通信処理部は、前記車両が前記収集対象領域に進入する直前に走行した第1の区間と、前記車両が前記収集対象領域から退出した直後に走行した第2の区間のうち、前記サーバから前記通信装置を介して指定された方の区間を前記追加区間に設定する、請求項1または2に記載のデータ収集装置。
【請求項7】
車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像から、前記車両の周囲に存在する道路上または道路周囲の所定の地物を検出し、
当該検出した地物を表すプローブデータを生成し、
生成した前記プローブデータを記憶部に記憶させ、
前記車両が前記プローブデータの収集対象領域に進入すると、前記進入の直前において前記車両が走行し、あるいは、前記車両が前記収集対象領域を退出した直後において前記車両が走行した追加区間及び前記収集対象領域のそれぞれにおいて生成された前記プローブデータと、前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記画像とを、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、
ことを含むデータ収集方法。
【請求項8】
車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像から、前記車両の周囲に存在する道路上または道路周囲の所定の地物を検出し、
当該検出した地物を表すプローブデータを生成し、
生成した前記プローブデータを記憶部に記憶させ、
前記車両が前記プローブデータの収集対象領域に進入すると、前記進入の直前において前記車両が走行し、あるいは、前記車両が前記収集対象領域を退出した直後において前記車両が走行した追加区間及び前記収集対象領域のそれぞれにおいて生成された前記プローブデータと、前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記画像とを、前記車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、
ことを前記車両に搭載されたプロセッサに実行させるデータ収集用コンピュータプログラム。
【請求項9】
車両に搭載されたデータ収集装置と、前記データ収集装置と通信可能に接続されるサーバとを有するデータ収集システムであって、
前記データ収集装置は、
道路上または道路周囲の所定の地物を表すプローブデータの収集対象領域を表す情報を記憶する記憶部と、
前記車両の走行中において、前記車両に搭載されたカメラにより生成された前記車両の周囲を表す画像から、前記車両の周囲に存在する前記所定の地物を検出し、当該検出した地物に基づいて前記プローブデータを生成し、生成した前記プローブデータを前記記憶部に記憶させる検出部と、
前記車両が前記収集対象領域に進入すると、前記進入の直前において前記車両が走行し、あるいは、前記車両が前記収集対象領域を退出した直後において前記車両が走行した追加区間及び前記収集対象領域のそれぞれにおいて生成された前記プローブデータと、前記収集対象領域を前記車両が走行している間に生成された前記画像とを、前記車両に搭載された通信装置を介して前記サーバへ送信する通信処理部と、
を有するデータ収集システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図を生成または更新するために用いられるデータを収集するデータ収集装置、データ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車両の自動運転システムが車両を自動運転制御するために参照する高精度な地図には、道路に関する情報を正確に表していることが求められる。そこで、所定の領域を実際に走行した車両から、その車両に搭載されたセンサにより得られた、その所定の領域内の道路または道路の周囲の地物を表すデータが収集される。ただし、そのようなデータを収集するサーバに対して、無制限に車両からデータが送信されると、通信量が膨大となる。そこで、車両において検出されたデータの収集において、通信量を抑制する技術が提案されている(特許文献1を参照)。
【0003】
特許文献1に開示された技術では、車載機は、ダウンロードした地図データと、センサ等により認識した地物データとの差異を検出して、差異度、余裕度を算出する。差異がある場合でも、車載機により走行制御が可能となる場合には、車載機は、差異のある地物データを車両プローブデータとしてセンタ側に送信しないことで通信量の削減を図る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
地物を表すデータを収集したい道路区間が短い場合、車両からサーバに対して、途切れ途切れの区間のデータが送信されることになる。そのため、サーバ側で収集されるデータが不十分となるおそれがある。また、収集対象領域を、実際に地物を表すデータを収集したい領域よりも広く設定すると、本来は地物を表すデータを必要としない道路区間しか走行しない車両からもデータが収集されることとなり、通信量が無駄に増大してしまう。
【0006】
そこで、本発明は、通信量が増大することを抑制しつつ、連続した区間にわたって地物を表すデータを収集することができるデータ収集装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態によれば、データ収集装置が提供される。このデータ収集装置は、道路上または道路周囲の所定の地物を表すプローブデータの収集対象領域を表す情報を記憶する記憶部と、車両の走行中において、車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像から、車両の周囲に存在する所定の地物を検出し、検出した地物に基づいてプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に記憶させる検出部と、車両が収集対象領域に進入すると、その進入の直前において車両が走行し、あるいは、車両が収集対象領域を退出した直後において車両が走行した追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成された画像とを、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部とを有する。
【0008】
また、このデータ収集装置は、車両または車両の周囲の環境に対するプローブデータの収集の適性を表す適性判定データを生成し、生成した適性判定データを記憶部に記憶させる適性判定データ生成部をさらに有することが好ましい。この場合において、通信処理部は、車両が収集対象領域に進入すると、追加区間を車両が走行している間に生成された適性判定データ及び収集対象領域を車両が走行している間に生成された適性判定データを、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する。そして通信処理部は、通信装置を介してサーバから収集指示を受信したときに限り、追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成された画像とを、通信装置を介してサーバへ送信することが好ましい。
【0009】
あるいは、通信処理部は、追加区間が進入の直前において車両が走行した区間である場合、車両が収集対象領域に進入した進入位置から順に車両が走行した経路の逆向きに沿って検出された所定の地物の数の累計値を求め、その累計値が所定数に達したときの位置から進入位置までの車両の経路を追加区間に設定することが好ましい。
【0010】
あるいはまた、通信処理部は、追加区間の長さを、サーバから通信装置を介して受信した長さに設定することが好ましい。
【0011】
あるいはまた、通信処理部は、車両が収集対象領域に進入する直前に走行した第1の区間において検出された地物の第1の数と、車両が収集対象領域から退出した直後に走行した第2の区間において検出された第2の数とを求め、第1の数と第2の数とに基づいて、第1の区間及び第2の区間の少なくとも一方を追加区間に設定することが好ましい。
【0012】
あるいはまた、通信処理部は、車両が収集対象領域に進入する直前に走行した第1の区間と、車両が収集対象領域から退出した直後に走行した第2の区間のうち、サーバから通信装置を介して指定された方の区間を追加区間に設定することが好ましい。
【0013】
本発明の他の形態によれば、データ収集方法が提供される。このデータ収集方法は、車両の走行中において、車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像から、車両の周囲に存在する道路上または道路周囲の所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に記憶させ、車両がプローブデータの収集対象領域に進入すると、その進入の直前において車両が走行し、あるいは、車両が収集対象領域を退出した直後において車両が走行した追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成された画像とを、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、ことを含む。
【0014】
本発明のさらに他の形態によれば、データ収集用コンピュータプログラムが提供される。このデータ収集用コンピュータプログラムは、車両の走行中において、車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像から、車両の周囲に存在する道路上または道路周囲の所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成し、生成したプローブデータを記憶部に記憶させ、車両がプローブデータの収集対象領域に進入すると、その進入の直前において車両が走行し、あるいは、車両が収集対象領域を退出した直後において車両が走行した追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成された画像とを、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する、ことを車両に搭載されたプロセッサに実行させる命令を含む。
【0015】
本発明のさらに他の形態によれば、車両に搭載されたデータ収集装置と、データ収集装置と通信可能に接続されるサーバとを有するデータ収集システムが提供される。このデータ収集システムにおいて、データ収集装置は、道路上または道路周囲の所定の地物を表すプローブデータの収集対象領域を表す情報を記憶する記憶部と、車両の走行中において、車両に搭載されたカメラにより生成された車両の周囲を表す画像から、車両の周囲に存在する所定の地物を検出し、検出した地物に基づいてプローブデータを生成し、生成したプローブデータを前記記憶部に記憶させる検出部と、車両が収集対象領域に進入すると、その進入の直前において車両が走行し、あるいは、車両が収集対象領域を退出した直後において車両が走行した追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成された画像とを、車両に搭載された通信装置を介してサーバへ送信する通信処理部と、を有する。
【発明の効果】
【0016】
本開示に係るデータ収集装置は、通信量が増大することを抑制しつつ、連続した区間にわたって地物を表すデータを収集することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】データ収集装置が実装されるデータ収集システムの概略構成図である。
【
図3】一つの実施形態によるデータ収集装置のハードウェア構成図である。
【
図4】データ収集装置のプロセッサの機能ブロック図である。
【
図5】車両が走行した経路と、サーバへアップロードされるデータとの関係の一例を示す図である。
【
図6】データ収集処理の動作フローチャートである。
【
図8】サーバのプロセッサの機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図を参照しつつ、データ収集装置、データ収集装置にて実行されるデータ収集方法及びデータ収集用コンピュータプログラムならびにデータ収集システムについて説明する。このデータ収集装置は、車両に搭載される。そしてこのデータ収集装置は、地図の生成または更新に利用される、道路上または道路周囲の所定の地物を表すデータ(以下、プローブデータと呼ぶ)を、車両の周囲を表す画像に基づいて生成する。また、このデータ収集装置は、プローブデータの収集対象領域に車両が進入すると、その進入の直前において車両が走行していた追加区間において生成された、プローブデータの収集の適性度合いを表す適性判定データ及び収集対象領域を車両が走行している間に生成された適性判定データを、通信装置を介してサーバへ送信する。さらに、このデータ収集装置は、通信装置を介してサーバからプローブデータの収集指示を受信すると、追加区間を車両が走行している間に生成されたプローブデータと、収集対象領域を車両が走行している間に生成されたプローブデータとを、通信装置を介してサーバへ送信する。さらにまた、このデータ収集装置は、収集対象領域を車両が走行している間に生成された車両の周囲を表す画像もサーバへ送信する。
【0019】
図1は、データ収集装置が実装されるデータ収集システムの概略構成図である。本実施形態では、データ収集システム1は、少なくとも一つの車両2に搭載されたデータ収集装置3と、サーバ4とを有する。データ収集装置3は、例えば、サーバ4が接続される通信ネットワーク5とゲートウェイ(図示せず)などを介して接続される無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。なお、
図1では、一つの車両2のみが図示されているが、データ収集システム1は、データ収集装置3が搭載された車両2を複数有してもよい。同様に、複数の無線基地局6が通信ネットワーク5に接続されていてもよい。
【0020】
先ず、車両2及びデータ収集装置3について説明する。上記のように、データ収集システム1には、データ収集装置3が搭載された車両2が複数含まれてもよいが、データ収集処理に関して各車両2及び各データ収集装置3は同じ構成を有し、かつ同じ処理を実行すればよいので、以下では、一つの車両2及び一つのデータ収集装置3について説明する。
【0021】
図2は、車両2の概略構成図である。車両2は、車両2の周囲を撮影するためのカメラ21と、GPS受信機22と、無線通信端末23と、データ収集装置3とを有する。カメラ21、GPS受信機22、無線通信端末23及びデータ収集装置3は、コントローラエリアネットワークといった規格に準拠した車内ネットワークを介して通信可能に接続される。また、車両2は、LiDARセンサといった、車両2の周囲の物体までの距離を測定するための測距センサ(図示せず)をさらに有してもよい。
【0022】
カメラ21は、撮像部の一例であり、CCDあるいはC-MOSなど、可視光に感度を有する光電変換素子のアレイで構成された2次元検出器と、その2次元検出器上に撮影対象となる領域の像を結像する結像光学系を有する。そしてカメラ21は、例えば、車両2の前方を向くように、例えば、車両2の車室内に取り付けられる。そしてカメラ21は、所定の撮影周期(例えば1/30秒~1/10秒)ごとに車両2の前方領域を撮影し、その前方領域が写った画像を生成する。カメラ21により得られた画像は、カラー画像であってもよく、あるいは、グレー画像であってもよい。なお、車両2には、撮影方向または焦点距離が異なる複数のカメラ21が設けられてもよい。
【0023】
カメラ21は、画像を生成する度に、その生成した画像を、車内ネットワークを介してデータ収集装置3へ出力する。
【0024】
GPS受信機22は、所定の周期ごとにGPS衛星からのGPS信号を受信し、受信したGPS信号に基づいて車両2の自己位置を測位する。そしてGPS受信機22は、所定の周期ごとに、GPS信号に基づく車両2の自己位置の測位結果を表す測位情報を、車内ネットワークを介してデータ収集装置3へ出力する。なお、車両2は、GPS受信機22以外の衛星測位システムに準拠した受信機を有していてもよい。この場合、その受信機が車両2の自己位置を測位すればよい。
【0025】
無線通信端末23は、通信装置の一例であり、所定の無線通信規格に準拠した無線通信処理を実行する機器であり、例えば、無線基地局6にアクセスすることで、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4と接続される。そして無線通信端末23は、サーバ4から受信した、収集指示信号または収集対象領域を表す信号を含むダウンリンクの無線信号を受信し、受信したそれらの信号をデータ収集装置3へ出力する。また、無線通信端末23は、データ収集装置3から受け取った、適性判定データ、または、指定された種別の収集対象データ(例えば、プローブデータまたは画像)を含むアップリンクの無線信号を生成する。そして無線通信端末23は、そのアップリンクの無線信号を無線基地局6へ送信することで、適性判定データまたは収集対象データをサーバ4へ送信する。
【0026】
図3は、データ収集装置3のハードウェア構成図である。データ収集装置3は、カメラ21から受け取った画像を一時的に保存する。さらに、データ収集装置3は、画像などに基づいて適性判定データ及びプローブデータを生成し、生成した適性判定データ及びプローブデータを一時的に保存する。そしてデータ収集装置3は、適性判定データ、プローブデータ及び画像を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。そのために、データ収集装置3は、通信インターフェース31と、メモリ32と、プロセッサ33とを有する。
【0027】
通信インターフェース31は、車内通信部の一例であり、データ収集装置3を車内ネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。すなわち、通信インターフェース31は、車内ネットワークを介して、カメラ21、GPS受信機22及び無線通信端末23と接続される。そして通信インターフェース31は、カメラ21から画像を受信する度に、受信した画像をプロセッサ33へわたす。また、通信インターフェース31は、GPS受信機22から測位情報を受信する度に、受信した測位情報をプロセッサ33へわたす。さらに、通信インターフェース31は、無線通信端末23から、収集指示信号といったサーバ4からの情報を受信する度に、その情報をプロセッサ33へわたす。さらにまた、通信インターフェース31は、プロセッサ33から受け取った、適性判定データ及び収集対象データなどを、車内ネットワークを介して無線通信端末23へ出力する。
【0028】
メモリ32は、記憶部の一例であり、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。メモリ32は、ハードディスク装置といった他の記憶装置をさらに有してもよい。そしてメモリ32は、データ収集装置3のプロセッサ33により実行されるデータ収集に関連する処理において使用される各種のデータを記憶する。例えば、メモリ32は、車両2の識別情報、カメラ21の焦点距離、撮影方向、設置位置といったカメラ21のパラメータ、カメラ21から受信した画像、画像から地物を検出するための識別器を特定するための各種パラメータ、及び、GPS受信機22から受信した測位情報などを記憶する。さらに、メモリ32は、サーバ4から受信した収集対象領域を表す情報を記憶する。さらに、メモリ32は、プロセッサ33で実行される各処理を実現するためのコンピュータプログラムなどを記憶してもよい。
【0029】
プロセッサ33は、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ33は、論理演算ユニット、数値演算ユニットあるいはグラフィック処理ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ33は、カメラ21から受信した画像、GPS受信機22から受信した測位情報などをメモリ32に保存する。その際、プロセッサ33は、カメラ21から画像を受信する度に、最新の測位情報で表される車両2の位置及び方位センサ(図示せず)により示される車両2の向きをその画像に関連付ける。さらに、プロセッサ33は、カメラ21の焦点距離、設置位置及び撮影方向といったカメラ21のパラメータも、その画像に関連付けてもよい。これらの画像に関連付けられた情報は、画像がサーバ4へアップロードされる際に、画像そのものとともにサーバ4へアップロードされる。さらにまた、プロセッサ33は、車両2が走行している間、データ収集処理を実行する。
【0030】
図4は、データ収集装置3のプロセッサ33の機能ブロック図である。プロセッサ33は、適性判定データ生成部41と、検出部42と、通信処理部43とを有する。プロセッサ33が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ33上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ33が有するこれらの各部は、プロセッサ33に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0031】
適性判定データ生成部41は、例えば、所定の周期(例えば、10秒~数分)ごとに、あるいは、車両2が所定距離(例えば、100m~1km)走行する度に、適性判定データを生成する。
【0032】
適性判定データ生成部41は、車両2または車両2の周囲の環境に対する収集対象データの収集の適性を表す適性判定データを生成する。適性判定データには、例えば、鮮明性指標、静止指標、遮蔽指標及び位置指標のうちの少なくとも一つが含まれる。
【0033】
鮮明性指標は、車両2に搭載されたカメラにより生成される画像に表された道路または道路の地物の鮮明性を表す指標である。鮮明性指標には、例えば、現時刻、車両2のオートライトの制御情報、車両2に搭載された照度センサのセンサ値、車両2に搭載されたカメラの汚れに関する情報、及び、画像の鮮明性を表す値の少なくとも一つが含まれる。なお、画像の鮮明性を表す値は、例えば、道路が表された領域のコントラストまたは輝度分布等であり、車両2に搭載されたカメラにより生成された画像に対する解析の結果として得られる。
【0034】
静止指標は、車両2が静止中か否かを表す指標である。静止指標には、例えば、車両2のシフトポジションまたは車両2の車速が含まれる。
【0035】
遮蔽指標は、画像において車両2の周囲の地物が他の物体(例えば、車両2の周囲の他の車両)により遮蔽されているか否かを表す指標である。遮蔽指標には、例えば、車両2にオートクルージングが適用されている場合における車間距離の設定値、あるいは、車両2に搭載された測距センサにより得られた、車両2から車両2の周囲に存在する他の物体までの距離の測定値が含まれる。
【0036】
位置指標は、車線区画線に対する車両2の相対的な位置関係を表す指標である。
【0037】
さらに、適性判定データには、その適性判定データが生成されたときの車両2の位置及び進行方向を表す位置情報と、車両2の識別情報とが含まれる。そのために、適性判定データ生成部41は、GPS受信機22から受信した最新の測位情報で表される車両2の位置を、適性判定データが生成されたときの車両2の位置として適性判定データに含める。あるいは、適性判定データ生成部41は、最新の測位情報の取得時刻から現時刻までのオドメトリ情報を参照して、最新の測位情報で表される車両2の位置を補正することで得られる位置を、適性判定データが生成されたときの車両2の位置として適性判定データに含めてもよい。さらに、適性判定データ生成部41は、車両2に搭載された方位センサ(図示せず)により示される最新の車両2の進行方向を、適性判定データに含める。
【0038】
適性判定データ生成部41は、適性判定データに、鮮明性指標として現時刻を含める場合、車両2に搭載された時計(図示せず)から、あるいは無線通信端末23を介して受信した時刻情報から、現時刻を表す情報を取得すればよい。また、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、鮮明性指標として車両2のオートライトの制御情報を含める場合、車両2のヘッドライトを制御する電子制御装置(図示せず)から、車内ネットワークを介してその制御情報を取得すればよい。同様に、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、鮮明性指標として車両2に搭載された照度センサ(図示せず)のセンサ値を含める場合、その照度センサから、あるいは、ワイパーを制御する電子制御装置(図示せず)から、車内ネットワークを介してそのセンサ値を取得すればよい。
【0039】
さらに、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、鮮明性指標としてカメラ21の汚れに関する情報を含める場合、例えば、カメラ21により生成された画像から、カメラ21の汚れに起因するボケ度合いを表す値を求めればよい。その際、適性判定データ生成部41は、例えば、画像に対してエッジ検出フィルタを適用することで検出される個々のエッジの強度の統計的代表値を、ボケ度合いを表す値として算出する。あるいは、適性判定データ生成部41は、画像からカメラの汚れの度合いを求める様々な手法の何れかに従って、カメラ21の汚れの度合いを表す値をもとめてもよい。さらにまた、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、鮮明性指標として、カメラ21により生成された画像の鮮明性を表す値を含める場合、画像から、その鮮明性を表す値を算出すればよい。例えば、適性判定データ生成部41は、画像上で道路が表された領域内のコントラスト(例えば、その領域内の各画素の輝度のうちの最大値と最小値の和に対する、輝度の最大値と最小値の差の比)を、鮮明性を表す値として算出する。あるいは、適性判定データ生成部41は、画像の各画素の輝度のうちの最小値、最大値、分散などを、鮮明性を表す値として算出してもよい。すなわち、輝度の最小値が、輝度値の取り得る範囲(例えば、0~255)の上限に近い値である場合、画像全体がほぼ白飛びとなっており、画像の鮮明性は低いことが分かる。同様に、輝度の最大値が、輝度値の取り得る範囲の下限に近い値である場合、画像全体がほぼ黒つぶれとなっており、画像の鮮明性は低いことが分かる。また、輝度値の分散が低い場合には、画像全体がほぼ一様な輝度となっているので、画像の鮮明性は低いことが分かる。
【0040】
また、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、静止指標として車両2のシフトポジションを含める場合、車両2の走行を制御する電子制御装置(図示せず)から、車内ネットワークを介してシフトポジションを表す情報を取得すればよい。同様に、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、静止指標として車両2の車速を含める場合、車両2の車速を測定する車速センサ(図示せず)あるいは車両2の走行を制御する電子制御装置から、車内ネットワークを介して車速の測定値を取得すればよい。
【0041】
さらに、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、遮蔽指標として車両2にオートクルージングが適用されている場合における車間距離の設定値を含める場合、車両2の走行を制御する電子制御装置から、車内ネットワークを介して車間距離の設定値を取得すればよい。同様に、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、遮蔽指標として車両2から車両2の周囲に存在する他の物体までの距離の測定値を含める場合、測距センサあるいは車両2の走行を制御する電子制御装置から、車内ネットワークを介してその距離の測定値を取得すればよい。
【0042】
さらにまた、適性判定データ生成部41は、適性判定データに、位置指標として車両2と車線区画線の相対的な位置関係を表す情報を含める場合、例えば、カメラ21から取得した画像から車線区画線を検出する。そして適性判定データ生成部41は、画像上での車線区画線の位置に基づいて、車両2が車線区画線を横切っているか否かを判定し、その判定結果を表すフラグを位置指標とすればよい。なお、適性判定データ生成部41は、検出部42に関して後述するように、例えば、画像を、車線区画線といった地物を検出するように予め学習された識別器に入力することで、車線区画線を検出できる。また、車両2の進行方向に対する相対的なカメラ21の撮影方向は予め既知であるので、車両2が車線区画線を横切る場合において、画像上での車線区画線が表されると想定される範囲も既知となる。そこでそのような範囲がメモリ32に予め記憶され、適性判定データ生成部41は、その範囲に検出される車線区画線が含まれるか否かを判定することで、車両2が車線区画線を横切っているか否かを判定できる。
【0043】
適性判定データ生成部41は、適性判定データを生成すると、生成した適性判定データを、メモリ32に保存する。
【0044】
検出部42は、車両2の走行中において、所定の周期ごとに、あるいは、車両2が所定距離走行する度に、カメラ21により生成された最新の画像から、所定の地物を検出する。なお、所定の地物は、生成または更新対象となる地図に表される地物であり、例えば、各種の道路標示、各種の道路標識、縁石、ガードレール、信号機あるいは道路標識などを設置するためのポールである。そして検出部42は、画像上で検出された地物の種類及びその地物の位置を表すプローブデータを生成する。
【0045】
例えば、検出部42は、画像を識別器に入力することで、入力された画像に表された所定の地物を検出する。検出部42は、そのような識別器として、Single Shot MultiBox Detector、または、Faster R-CNNといった、コンボリューショナルニューラルネットワーク(CNN)型のアーキテクチャを持つディープニューラルネットワーク(DNN)を用いることができる。あるいは、検出部42は、そのような識別器として、Vision Transformerといった、self attention network(SAN)型のアーキテクチャを有するDNNを用いてもよい。あるいはまた、検出部42は、そのような識別器として、AdaBoost識別器といった、他の機械学習手法に基づく識別器を用いてもよい。このような識別器は、画像から検出対象となる所定の地物を検出するように、その地物が表された多数の教師画像を用いて誤差逆伝搬法といった所定の学習手法に従って予め学習される。そして識別器は、入力された画像上で検出対象となる地物が含まれる領域(例えば、検出対象となる地物の外接矩形、以下、物体領域と呼ぶ)を表す情報、及び、物体領域に表された地物の種類を表す情報を出力する。
【0046】
検出部42は、画像から検出された物体領域の重心に対応する、カメラ21からの方位、画像生成時の車両2の位置、進行方向及びカメラ21の撮影方向、焦点距離及び設置位置といったパラメータに基づいて、その物体領域に表された地物の位置を推定する。そして検出部42は、検出された地物の種類及び推定された位置を表す情報を含むプローブデータを生成する。検出部42は、さらに、画像生成時の車両2の位置及び進行方向を表す情報をプローブデータに含めてもよい。検出部42は、物体領域のサイズ及び画像上での位置を表す情報をさらにプローブデータに含めてもよい。そして検出部42は、生成したプローブデータをメモリ32に保存する。
【0047】
通信処理部43は、メモリ32に記憶されている適性判定データ、プローブデータ及び画像を、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0048】
本実施形態では、通信処理部43は、メモリ32に記憶されている、収集対象領域を表す情報と、最新の測位情報とを参照して、車両2が収集対象領域に進入したか否か判定する。なお、収集対象領域は、例えば、連続した1以上の道路区間ごと、あるいは、所定の形状を有する領域ごとに指定される。収集対象領域が道路の区間として指定される場合、収集対象領域を表す情報は、その道路の区間を識別するための識別情報及びその道路区間に進入または退出可能な端部の位置を表す情報を含む。また、収集対象領域が所定の形状を有する領域である場合、収集対象領域を表す情報は、その領域の外縁の位置を表す情報を含む。そして、最新の測位情報で表される車両2の位置が、収集対象領域で表される情報で示される領域または道路区間に含まれる場合、通信処理部43は、車両2が収集対象領域に進入したと判定する。
【0049】
車両2が収集対象領域に進入すると、通信処理部43は、メモリ32に記憶されている適性判定データのうち、車両2が収集対象領域に進入する直前の追加区間を車両2が走行している間に生成された適性判定データを特定する。追加区間は、所定距離(例えば、数km)の長さを持ち、かつ、車両2が走行した経路に沿った区間である。したがって、複数の車両2が同じ位置から収集対象領域に進入した場合でも、車両2ごとに走行した経路が異なっていれば、追加区間も異なるものとなる。通信処理部43は、適性判定データに含まれる車両2の位置情報を参照することで、車両2が収集対象領域に進入したときの車両2の位置から所定距離以内の位置にて生成された適性判定データを、追加区間において生成されたものとして特定すればよい。
【0050】
さらに、通信処理部43は、車両2が収集対象領域に進入してから、収集対象領域を退出するまでに生成された適性判定データを、収集対象領域を車両2が走行している間に生成された適性判定データとして特定する。その際、通信処理部43は、最新の測位情報で示される車両2の位置が、収集対象領域を表す情報に示される領域または道路区間から外れると、車両2が収集対象領域から退出したと判定すればよい。
【0051】
通信処理部43は、車両2が追加区間を走行している間に生成された適性判定データと、車両2が収集対象領域を走行している間に生成された適性判定データとを、通信インターフェース31を介して無線通信端末23へ出力する。これにより、通信処理部43は、それらの適性判定データを、無線基地局6及び通信ネットワーク5を介してサーバ4へ送信する。
【0052】
データ収集装置3からサーバ4へ適性判定データが送付された後、サーバ4から、無線通信端末23を介して収集指示信号を受信すると、通信処理部43は、その収集指示信号にて指定されるデータを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。
【0053】
具体的に、収集指示信号により、プローブデータが収集対象データとして指定されていると、通信処理部43は、メモリ32に記憶されているプローブデータのうち、車両2が収集対象領域を走行している間に生成されたプローブデータを特定する。さらに、通信処理部43は、車両2が上記の追加区間を走行している間に生成されたプローブデータを特定する。その際、通信処理部43は、上記の適性判定データの特定と同様に、プローブデータに含まれる車両2の位置を表す情報を参照して、それらのプローブデータを特定すればよい。
【0054】
通信処理部43は、車両2が追加区間を走行している間に生成されたプローブデータと、車両2が収集対象領域を走行している間に生成されたプローブデータとを、通信インターフェース31を介して無線通信端末23へ出力する。これにより、サーバ4へ適性判定データが送信された区間と同じ区間において生成されたプローブデータが、サーバ4へアップロードされる。
【0055】
また、収集指示信号により、プローブデータ及び画像が収集対象データとして指定されていると、通信処理部43は、上記のように、車両2が追加区間を走行している間に生成されたプローブデータと、車両2が収集対象領域を走行している間に生成されたプローブデータを特定する。さらに、通信処理部43は、メモリ32に記憶されている画像のうち、車両2が収集対象領域を走行している間にカメラ21により生成された画像を特定する。その際、通信処理部43は、上記の適性判定データの特定と同様に、画像に関連付けられた車両2の位置を表す情報を参照して、車両2が収集対象領域を走行している間にカメラ21により生成された画像を特定すればよい。
【0056】
通信処理部43は、車両2が追加区間を走行している間に生成されたプローブデータと、車両2が収集対象領域を走行している間に生成されたプローブデータ及び画像とを、通信インターフェース31を介して無線通信端末23へ出力する。これにより、比較的データ量が少ないプローブデータについては、追加区間と収集対象領域の両方について生成されたものがサーバ4へアップロードされる。これに対して、比較的データ量が大きい画像については、収集対象領域について生成されたもののみサーバ4へアップロードされる。したがって、通信処理部43は、通信量を抑制しつつ、地図の生成または更新に必要なデータをサーバ4へアップロードすることができる。
【0057】
さらに、収集指示信号により指定される画像は、部分画像であってもよい。この場合、通信処理部43は、収集対象領域において生成された個々の画像のそれぞれについて、その画像から路面が表されていると推定される範囲を切り出すことで部分画像を生成する。そして通信処理部43は、車両2が追加区間を走行している間に生成されたプローブデータと、車両2が収集対象領域を走行している間に生成されたプローブデータ及び部分画像とを、通信インターフェース31を介して無線通信端末23へ出力すればよい。
【0058】
図5は、車両2が走行した経路と、サーバ4へアップロードされるデータとの関係の一例を示す図である。
図5において、車両2は走行軌跡500に沿って走行したものとする。また、
図5に示される個々の道路区間のうち、道路区間501と道路区間502とがそれぞれ収集対象領域となっているものとする。
【0059】
車両2が収集対象領域の一つである道路区間501に進入すると、道路区間501のうちの車両2が走行した区間501aとその進入前の区間511のそれぞれにおいて生成された適性判定データがサーバ4へ送信される。そしてこの例では、道路区間501について、サーバ4からプローブデータ及び画像の収集が指示されるものとする。そのため、区間511と区間501aのそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、区間501aにおいて生成された画像とがサーバ4へアップロードされる。
【0060】
また、車両2が収集対象領域の他の一つである道路区間502に進入すると、道路区間502のうちの車両2が走行した区間502aとその進入前の区間512のそれぞれにおいて生成された適性判定データがサーバ4へ送信される。そしてこの例では、道路区間502について、サーバ4からプローブデータのみの収集が指示されるものとする。そのため、区間512と区間502aのそれぞれにおいて生成されたプローブデータがサーバ4へアップロードされる。
【0061】
図6は、データ収集処理の動作フローチャートである。プロセッサ33は、以下の動作フローチャートに従ってデータ収集処理を実行する。
【0062】
プロセッサ33の適性判定データ生成部41は、所定の周期ごと、あるいは車両2が所定距離走行する度に、適性判定データを生成する(ステップS101)。また、プロセッサ33の検出部42は、所定の周期ごと、あるいは車両2が所定距離走行する度に、最新の画像から所定の地物を検出し、検出した地物を表すプローブデータを生成する(ステップS102)。
【0063】
プロセッサ33の通信処理部43は、車両2が収集対象領域に進入したか否か判定する(ステップS103)。車両2が収集対象領域に進入していなければ(ステップS103-No)、プロセッサ33は、ステップS101以降の処理を繰り返す。
【0064】
一方、車両2が収集対象領域に進入すると(ステップS103-Yes)、通信処理部43は、その進入前の追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成された適性判定データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する(ステップS104)。
【0065】
その後、通信処理部43は、サーバ4から無線通信端末23を介してデータ収集装置3が収集指示信号を受信したか否か判定する(ステップS105)。データ収集装置3が収集指示信号を受信していなければ(ステップS105-No)、プロセッサ33は、ステップS105の処理を繰り返す。
【0066】
一方、データ収集装置3が収集指示信号を受信した場合(ステップS105-Yes)、通信処理部43は、収集指示信号で指定された収集対象データが、プローブデータ以外に画像を含むか否か判定する(ステップS106)。画像が収集対象データに指定されていない場合(ステップS106-No)、プローブデータのみが収集対象データに指定されている。そこでこの場合、通信処理部43は、追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する(ステップS107)。
【0067】
一方、画像が収集対象データに指定されている場合(ステップS106-Yes)、通信処理部43は、追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成されたプローブデータと、収集対象領域において生成された画像とを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する(ステップS108)。ステップS107またはステップS108の後、プロセッサ33は、データ収集処理を終了する。また、適性判定データの送信後に一定期間を経過しても収集指示信号を受信しない場合、プロセッサ33は、プローブデータ及び画像をサーバ4へ送信することなく、データ収集処理を終了してもよい。この場合、プロセッサ33は、メモリ32の記憶領域が一杯になると、新たに生成されたプローブデータ及び画像でその記憶領域を上書きすることで、追加区間及び収集対象領域のそれぞれにおいて生成された適性判定データ及びプローブデータをメモリ32から消去してもよい。
【0068】
次に、サーバ4について説明する。サーバ4は、個々の車両2に搭載されたデータ収集装置3から送信されたプローブデータまたは画像を保存する。そしてサーバ4は、それらのプローブデータまたは画像に基づいて、収集対象領域の地図を生成し、あるいは、更新する。さらに、サーバ4は、個々の車両2に対して、収集対象領域を通知する。さらに、サーバ4は、受信した適性判定データに基づいて、収集対象領域について収集対象となるデータの種別を指定し、指定した種別のデータを収集対象データとして表す収集指示信号を、適性判定データを送信した車両2へ送信する。
【0069】
図7は、サーバ4のハードウェア構成図である。サーバ4は、通信インターフェース51と、ストレージ装置52と、メモリ53と、プロセッサ54とを有する。通信インターフェース51、ストレージ装置52及びメモリ53は、プロセッサ54と信号線を介して接続されている。サーバ4は、キーボード及びマウスといった入力装置と、液晶ディスプレイといった表示装置とをさらに有してもよい。
【0070】
通信インターフェース51は、通信部の一例であり、サーバ4を通信ネットワーク5に接続するためのインターフェース回路を有する。そして通信インターフェース51は、個々の車両2に搭載されたデータ収集装置3と、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して通信可能に構成される。すなわち、通信インターフェース51は、個々の車両2のデータ収集装置3から無線基地局6及び通信ネットワーク5を介して受信した、適性判定データ及び収集対象データなどをプロセッサ54へわたす。また、通信インターフェース51は、プロセッサ54から受け取った収集指示信号などを、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して個々の車両2のデータ収集装置3へ送信する。
【0071】
ストレージ装置52は、記憶部の一例であり、例えば、ハードディスク装置または光記録媒体及びそのアクセス装置を有する。そしてストレージ装置52は、種別指定情報、及び、複数の道路区間のそれぞれについて、その道路区間について収集された収集対象データなどを記憶する。ストレージ装置52は、個々の車両2の識別情報をさらに記憶してもよい。さらに、ストレージ装置52は、プロセッサ54上で実行される、サーバ4側でのデータ収集処理を実行するためのコンピュータプログラムを記憶してもよい。さらにまた、ストレージ装置52は、収集対象データに基づいて生成または更新される地図を記憶してもよい。
【0072】
メモリ53は、記憶部の他の一例であり、例えば、不揮発性の半導体メモリ及び揮発性の半導体メモリを有する。そしてメモリ53は、データ収集処理の実行中に生成される各種データ、及び、適性判定データといった個々の車両2との通信により取得される各種データなどを一時的に記憶する。
【0073】
プロセッサ54は、制御部の一例であり、1個または複数個のCPU(Central Processing Unit)及びその周辺回路を有する。プロセッサ54は、論理演算ユニットあるいは数値演算ユニットといった他の演算回路をさらに有していてもよい。そしてプロセッサ54は、サーバ4側でのデータ収集処理を実行する。
【0074】
図8は、サーバ4側でのデータ収集処理に関連するプロセッサ54の機能ブロック図である。プロセッサ54は、判定部61と、指示部62とを有する。プロセッサ54が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ54上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、プロセッサ54が有するこれらの各部は、プロセッサ54に設けられる、専用の演算回路であってもよい。
【0075】
判定部61は、サーバ4が何れかの車両2のデータ収集装置3から適性判定データを受信する度に、その適性判定データに基づいて、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているか否かを判定する。本実施形態では、判定部61は、収集対象領域において生成された適性判定データ及び追加区間について生成された適性判定データのそれぞれについて、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているか否かを判定する。判定部61は、各適性判定データに対して同一の処理を実行すればよいので、以下では、一つの適性判定データに対する処理について説明する。
【0076】
例えば、適性判定データに鮮明性指標が含まれる場合、判定部61は、その鮮明性指標が、車両2に搭載されたカメラにより生成された画像において、道路または道路の地物が鮮明であることを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定する。これにより、地図に表すべき地物を認識することが困難な収集対象データが車両2からサーバ4へ送信されることが防止される。
【0077】
具体的に、鮮明性指標が現時刻である場合、判定部61は、現時刻が日中に相当する時刻である場合、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。一方、現時刻が夜間に相当する時刻である場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明でないと判定する。あるいは、判定部61は、現時刻が日出または日没に相当する時刻であり、かつ、車両2の進行方向が太陽へ向かう方向である場合に、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定してもよい。また、鮮明性指標が車両2のオートライトの制御情報である場合、判定部61は、その制御情報が、車両2のヘッドライトが消灯していることを示す場合、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。一方、その制御情報が、車両2のヘッドライトが点灯していることを示す場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明でないと判定する。さらに、鮮明性指標が車両2に搭載された照度センサのセンサ値である場合、判定部61は、そのセンサ値が所定の照度閾値よりも高い場合、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。一方、そのセンサ値が所定の照度閾値以下である場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明でないと判定する。さらにまた、鮮明性指標が車両2に搭載されたカメラの汚れに関する情報である場合、判定部61は、その情報が、画像の鮮明性に対する汚れによる影響が無いことを示している場合、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。例えば、鮮明性指標の一例である、汚れに起因するボケ度合いが所定の閾値以下である場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。一方、画像の鮮明性に対する汚れによる影響が有ることを示している場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明でないと判定する。さらにまた、鮮明性指標が画像の鮮明性を表す値である場合、その値が、画像が鮮明である鮮明度条件を満たす場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明であると判定する。一方、その値が鮮明度条件を満たさない場合、判定部61は、画像において、道路または道路の地物が鮮明でないと判定する。なお、画像の鮮明性を表す値が、コントラスト、分散または輝度の最大値である場合、その値が所定の閾値以上となる場合に鮮明度条件が満たされると判定される。また、画像の鮮明性を表す値が、輝度の最小値である場合、その値が所定の閾値以下となる場合に鮮明度条件が満たされると判定される。
【0078】
また、適性判定データに静止指標が含まれる場合、判定部61は、その静止指標が、車両2が移動していることを表している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定する。これにより、同じ地物が表された収集対象データが車両2からサーバ4へ送信されることが防止される。具体的に、静止指標が車両2のシフトポジションである場合、判定部61は、シフトポジションがパーキング及びニュートラルの何れでも無い場合、車両2が移動していると判定し、一方、シフトポジションがパーキングまたはニュートラルである場合、車両2が静止していると判定する。また、静止指標が車両2の車速である場合、判定部61は、車速が所定の速度閾値(例えば、5~10km/h)よりも速い場合、車両2が移動していると判定し、一方、車速が所定の速度閾値以下である場合、車両2が静止していると判定する。
【0079】
さらに、適性判定データに遮蔽指標が含まれる場合、判定部61は、その遮蔽指標が、画像において、車両2の周囲の地物(例えば、道路標示、道路標識または信号機)が遮蔽されていないことを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定する。これにより、地図に表すべき地物を表されていない収集対象データが車両2からサーバ4へ送信されることが防止される。
【0080】
具体的に、遮蔽指標が、車両2にオートクルージングが適用されている場合における、車間距離の設定値である場合、判定部61は、車間距離の設定値が所定の距離閾値(例えば、50m~100m)よりも長い場合、車両2の周囲の地物が遮蔽されていないと判定する。一方、車間距離の設定値が所定の距離閾値以下である場合、判定部61は、車両2の周囲の地物は遮蔽されていると判定する。また、遮蔽指標が、車両2に搭載された測距センサにより得られた、車両2から車両2の周囲に存在する他の物体までの距離の測定値である場合、判定部61は、その距離の測定値が所定の距離閾値よりも長い場合、車両2の周囲の地物が遮蔽されていないと判定する。一方、その車間距離が所定の距離閾値以下である場合、判定部61は、車両2の周囲の地物は遮蔽されていると判定する。
【0081】
さらにまた、適性判定データに位置指標が含まれる場合、判定部61は、その位置指標が、車両2の位置が収集対象データの収集に適した位置であることを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定する。具体的に、位置指標が、車線区画線に対する車両2の相対的な位置関係を表す情報である場合、例えば、判定部61は、その情報が、車両2が車線区画線を横切っていないことを示している場合、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定する。これにより、通常時(例えば、車両2が車線に沿って走行している場合)とは異なる見え方で地物が表された収集対象データが車両2からサーバ4へ送信されることが防止される。
【0082】
なお、適性判定データに複数の鮮明性指標が含まれていてもよい。この場合、判定部61は、各鮮明性指標が画像において道路または道路の地物が鮮明であることを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定してもよい。同様に、適性判定データに複数の静止指標が含まれていてもよい。この場合、判定部61は、各静止指標が、車両2が移動していることを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定してもよい。さらに、適性判定データに複数の遮蔽指標が含まれていてもよい。この場合、判定部61は、各遮蔽指標が、画像において車両2の周囲の地物が遮蔽されていないことを示している場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定してもよい。さらにまた、適性判定データに、鮮明性指標、静止指標、遮蔽指標及び位置指標のうちの二つ以上が含まれていてもよい。この場合、判定部61は、その二つ以上の指標のそれぞれについて、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定した場合に限り、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているとしてもよい。一方、判定部61は、その二つ以上の指標の何れか一つでも、車両2の現況が収集対象データの収集に適していないことを示している場合、車両2の現況は収集対象データの収集に適していないと判定してもよい。
【0083】
なお、収集対象領域において複数の適性判定データが生成されていることがある。この場合、判定部61は、それら複数の適性判定データのうちの所定割合(例えば、5割~8割)以上の適性判定データについて車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定した場合に、収集対象領域について、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているとすればよい。同様に、追加区間について複数の適性判定データが生成されている場合、それら複数の適性判定データのうちの所定割合以上の適性判定データについて車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定した場合に、判定部61は、追加区間について、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているとすればよい。
【0084】
判定部61は、収集対象領域及び追加区間のそれぞれにおいて生成された適性判定データに対する、車両2の現況が収集対象データの収集に適しているか否かの判定結果を指示部62へ通知する。
【0085】
指示部62は、判定部61により、収集対象領域及び追加区間の何れについても、車両2の現況が収集対象データの収集に適していると判定された場合、車両2に対して、収集対象データの収集を指示する収集指示信号を生成する。
【0086】
指示部62は、適性判定データに表される車両2の位置を含む収集対象領域を特定し、特定した収集対象領域に対応する種別指定情報を参照する。そして指示部62は、その種別指定情報に基づいて、収集対象領域について指定される、収集対象データの種別を特定する。収集対象データの種別には、車両2に搭載されたカメラ21により生成された車両2の周囲の環境を表す画像、その画像から切り出された路面が表された部分画像、または、その画像から検出された地物を表すプローブデータが含まれる。したがって、種別指定情報には、収集対象領域ごとに、収集対象データの種別として、画像、部分画像及びプローブデータの何れかが示される。
【0087】
指示部62は、特定された収集対象データの種別を指定するための情報を収集指示信号に含める。種別指定情報においてプローブデータが示されている場合、指示部62は、収集対象データとしてプローブデータのみを指定する。また、種別指定情報において画像が示されている場合、指示部62は、収集対象データとしてプローブデータ及び画像を指定する。さらに、種別指定情報において部分画像が示されている場合、指示部62は、収集対象データとしてプローブデータ及び部分画像を指定する。
【0088】
指示部62は、生成した収集指示信号を、適性判定データとともに受信した識別情報により特定される車両2へ、通信インターフェース51、通信ネットワーク5及び無線基地局6を介して送信する。
【0089】
なお、プロセッサ54は、ストレージ装置52に記憶されている個々の道路区間について収集されたプローブデータの数に基づいて、収集対象領域を設定してもよい。例えば、直近の所定期間(例えば、数週間~数カ月)において収集されたプローブデータの数が所定の収集閾値未満である道路区間を収集対象領域に設定する。あるいは、プロセッサ54は、更新対象の地図に表される個々の道路区間のうち、前回の更新からの経過時間が所定の経過時間閾値以上となった道路区間を収集対象領域に設定してもよい。そしてプロセッサ54は、設定した収集対象領域を、通信インターフェース51を介して個々の車両2のデータ収集装置3へ通知すればよい。
【0090】
さらに、プロセッサ54は、収集したプローブデータ及び画像を用いて、地図を生成し、あるいは更新してもよい。この場合、プロセッサ54は、一つの車両2から連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物を、過去に収集された他のプローブデータに表され、あるいは更新対象となる地図に表される対応する地物と位置合わせする。そしてプロセッサ54は、連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物のうち、他のプローブデータあるいは更新対象となる地図に対応する地物が無いものを新たに設置された地物として特定する。そしてプロセッサ54は、生成または更新対象となる地図に、特定した地物に関する情報(位置及び種別)を追加する。また、プロセッサ54は、更新対象となる地図に表された地物のうち、連続した区間について収集されたそれぞれのプローブデータに表される地物において対応するものが無い地物について、撤去されたものとして特定してもよい。そしてプロセッサ54は、撤去されたものとして特定した地物に関する情報を、更新対象となる地図から削除してもよい。
【0091】
以上に説明してきたように、このデータ収集装置は、収集対象領域及び収集対象領域の直前に車両が走行していた追加区間のそれぞれにおいて車両が走行している間に生成されたプローブデータを、通信装置を介してサーバへ送信する。さらに、このデータ収集装置は、収集対象領域において車両が走行している間に生成された、車両の周囲を表す画像も、通信装置を介してサーバへ送信する。このように、このデータ収集装置は、収集対象領域が狭くても、ある程度連続した区間についてのプローブデータを収集してサーバへ送信することができる。そのため、サーバは、収集されたプローブデータに表される地物と、更新対象の地図または別途収集されたプローブデータに表される、対応する地物との位置合わせを正確に行うことができる。サーバは、収集されたプローブデータに表された地物について正確に位置合わせすることができるので、収集対象領域において生成された画像からサーバにおいて検出した地物の位置を正確に推定することができる。そのため、実際に地物に関する情報を収集することが求められる道路区間が短くても、収集対象領域を広く設定する必要がない。したがって、実際には地物に関する情報を収集することが求められていない道路区間しか走行していない車両からサーバへプローブデータ及び画像を送信することが抑制される。その結果として、このデータ収集装置は、通信量が増大することを抑制することができる。
【0092】
変形例によれば、車両2のイグニッションスイッチがオンにされたときの位置から車両2が収集対象領域に進入するまでの経路の長さが追加区間の長さに満たないことがある。このような場合には、通信処理部43は、車両2のイグニッションスイッチがオンにされたときの位置から車両2が収集対象領域に進入するまでの経路において生成された適性判定データ及びプローブデータを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信すればよい。すなわち、車両2のイグニッションスイッチがオンにされたときの位置から車両2が収集対象領域に進入するまでの経路が追加区間に設定される。
【0093】
また、追加区間の長さは、サーバ4により指定されてもよい。この場合、サーバ4は、収集対象領域を個々の車両2のデータ収集装置3へ通知する際に、追加区間の長さも通知すればよい。例えば、収集対象領域において車両2が走行した距離が短いほど、サーバ4は、追加区間を長く設定すればよい。
【0094】
また、サーバ4側での地物の位置合わせは、検出された地物の数が多いほど精度が向上する。そこで、通信処理部43は、プローブデータを参照して、車両2が収集対象領域に進入した進入位置から順に、車両2の経路の逆向きに沿って検出された地物の数の累計値を求め、その累計値に基づいて追加区間を設定してもよい。この場合、通信処理部43は、地物の数の累計値が所定数に達したときの位置から、上記の進入位置までの車両2の経路を追加区間とすればよい。この変形例によれば、通信処理部43は、検出された地物の数に基づいて追加区間を設定するので、データ収集装置3は、サーバ4による地物の位置合わせの精度を確保しつつ、通信量を抑制するように適切な長さの追加区間を設定することができる。
【0095】
なお、車線区画線のような線状の地物と、ポールまたは信号機のような点状に存在する地物とでは、位置合わせにおける使用方法が異なることがある。そこで、通信処理部43は、地物の種類ごと、あるいは、位置合わせでの用途に応じた地物の種類のグループごとに累計値を算出してもよい。さらに、地物の種類ごと、あるいはグループごとに所定数が設定されてもよい。そして通信処理部43は、種類ごと、あるいはグループごとの累計値が対応する所定数に達したときの位置から進入位置までの車両2の経路を追加区間としてもよい。
【0096】
また、上記の変形例によれば、通信処理部43は、車両2が収集対象領域を走行している間に検出された地物の数も、上記の累計値に加えてもよい。この場合も、データ収集装置3は、上記の変形例と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また他の変形例によれば、追加区間は、車両2が収集対象領域を退出してから車両2が走行した所定距離の長さの区間であってもよい。この場合、通信処理部43は、車両2が追加区間の走行を終えてから、無線通信端末23を介して適性判定データをサーバ4へ送信すればよい。この変形例においても、データ収集装置3は、上記の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0098】
さらに、追加区間が収集対象領域退出後の区間として設定される場合でも、サーバ4が追加区間の長さを個々の車両2のデータ収集装置3へ通知してもよい。あるいは、通信処理部43は、車両2が収集対象領域から退出した地点から車両2の経路に沿って検出された地物の数の累計値をもとめてもよい。さらに、通信処理部43は、車両2が収集対象領域を走行している間に検出された地物の数も、上記の累計値に加えてもよい。そして通信処理部43は、その累計値が所定数に達したときの位置までの経路を、追加区間に設定してもよい。この場合も、通信処理部43は、地物の種類ごと、あるいは、グループごとに累計値をもとめて、追加区間を設定してもよい。
【0099】
さらに他の変形例によれば、通信処理部43は、追加区間を、サーバ4からの指示にしたがって、車両2が収集対象領域に進入する直前に走行した区間、あるいは、収集対象領域から退出した直後に走行した区間の何れか、あるいは両方に設定してもよい。この場合、データ収集装置3は、車両2が収集対象領域に進入する直前に走行した所定距離の第1の区間において検出部42により検出された地物の数(以下、第1の数と呼ぶことがある)を適性判定データに含める。同様に、データ収集装置3は、車両2が収集対象領域から退出した直後に走行した所定距離の第2の区間において検出部42により検出された地物の数(以下、第2の数と呼ぶことがある)を適性判定データに含める。あるいは、データ収集装置3は、車両2の運転支援用あるいは自動運転制御用の電子制御装置から、その電子制御装置がカメラ21により得られた画像から検出した地物の第1の数及び第2の数を受け取って適性判定データに含めてもよい。そして通信処理部43は、第1の区間及び第2の区間のそれぞれにおいて生成された適性判定データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信する。サーバ4の指示部62は、第1の区間及び第2の区間のそれぞれにおいて生成された適性判定データに含まれる、第1の区間において検出された地物の第1の数及び第2の区間において検出された地物の第2の数に基づいて、追加区間を設定する。例えば、指示部62は、第1の区間及び第2の区間のうち、検出された地物の数が多い方の区間を追加区間に設定する。あるいは、第1の数と第2の数の合計が所定数未満である場合、指示部62は、第1の区間と第2の区間の両方を追加区間に設定してもよい。そして指示部62は、適性判定データを送信した車両2へ送信する収集指示信号に、第1の区間及び第2の区間のうちの何れを追加区間に設定したかを示す情報を含めればよい。この変形例によれば、データ収集装置3は、収集対象領域の前後においてプローブデータを収集する追加区間をより適切に設定することができる。
【0100】
また、サーバ4の指示部62は、第1の区間において生成された適性判定データと第2の区間において生成された適性判定データとに基づいて、第1の区間と第2の区間の何れを追加区間に設定するかを決定してもよい。例えば、第1の区間において生成された適性判定データが、車両2の現況が収集対象データの収集に適していることを示し、一方、第2の区間において生成された適性判定データが、車両2の現況が収集対象データの収集に適していないことを示している場合、指示部62は、第1の区間を追加区間に設定すればよい。逆に、第1の区間において生成された適性判定データが、車両2の現況が収集対象データの収集に適していないことを示し、一方、第2の区間において生成された適性判定データが、車両2の現況が収集対象データの収集に適していることを示している場合、指示部62は、第2の区間を追加区間に設定すればよい。
【0101】
上記の実施形態または変形例において、サーバ4は、個々の車両2のデータ収集装置3に対して、収集対象領域を通知する際に、その収集対象領域における収集対象となるデータの種別も通知してもよい。さらに、データ収集装置3のプロセッサ33が、サーバ4のプロセッサ54の判定部61及び指示部62の処理を実行してもよい。そして通信処理部43は、その判定結果に基づいて、追加区間を設定し、あるいは、プローブデータ及び画像をサーバ4へ送信するか否かを判定してもよい。すなわち、追加区間及び収集対象領域のそれぞれについて、車両2の現況が収集対象データの収集に適している判定された場合にのみ、通信処理部43は、指定された種別の収集対象データを、無線通信端末23を介してサーバ4へ送信すればよい。この変形例によれば、事前に適性判定データをサーバ4へ送信する必要がなくなるので、データ収集装置3は、データ収集における通信量をさらに抑制することができる。
【0102】
以上のように、当業者は、本発明の範囲内で、実施される形態に合わせて様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0103】
1 データ収集システム
2 車両
21 カメラ
22 GPS受信機
23 無線通信端末
3 データ収集装置
31 通信インターフェース
32 メモリ
33 プロセッサ
41 適性判定データ生成部
42 検出部
43 通信処理部
4 サーバ
51 通信インターフェース
52 ストレージ装置
53 メモリ
54 プロセッサ
61 判定部
62 指示部
5 通信ネットワーク
6 無線基地局