IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特開2024-140735自動車用バッテリーケースおよびその製造方法
<>
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図1
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図2
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図3
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図4
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図5
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図6
  • 特開-自動車用バッテリーケースおよびその製造方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140735
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自動車用バッテリーケースおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/242 20210101AFI20241003BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20241003BHJP
   H01M 50/213 20210101ALI20241003BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/242
B60K1/04 Z
H01M50/213
H01M50/249
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052043
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】リケッツ,アルトゥ-ル
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA01
3D235BB04
3D235BB25
3D235BB43
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235FF09
5H040AA14
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT01
5H040AY03
5H040AY08
5H040CC05
5H040CC32
5H040JJ02
5H040JJ03
5H040LL01
5H040LL10
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】アッパーカバーを利用して高いバッテリー保護性能を確保する。
【解決手段】自動車用バッテリーケース100は、蓋として機能するトレイ状のプレス成形品であり、バッテリー10を収容する収容部121を有し、収容部121の上面122に左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部123が設けられているアッパーカバー120と、アッパーカバー120を下方から閉じてバッテリー10を収容するアンダーカバー150と、アッパーカバー120の上に配置され、収容部121の左端から右端まで車両幅方向に延びる上面外側横補強材110とを備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓋として機能するトレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の上面に左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーと、
前記アッパーカバーを下方から閉じて前記バッテリーを収容するアンダーカバーと、
前記アッパーカバーの上に配置され、前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延びる上面外側横補強材と
を備える、自動車用バッテリーケース。
【請求項2】
前記アッパーカバーおよび前記上面外側横補強材は、互いに接合されている、請求項1に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項3】
前記アッパーカバーおよび前記上面外側横補強材の少なくとも1つは、車室床面となるフロアパネルを構成する、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項4】
前記上面張出部に沿って前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延び、前記上面張出部に少なくとも部分的に収容されるように前記アッパーカバー内に配置される上面内側横補強材をさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項5】
前記アッパーカバーの材料が、引張強度590MPa以上の鋼材である、請求項1または2記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項6】
前記アッパーカバーの車両前後方向の中央部のみがテイラードウェブドブランク構造を有している、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項7】
前記バッテリーは、前記アッパーカバーから吊り下げられ、前記アンダーカバーから浮かせて配置される、請求項1または2に記載のケースを用いた自動車用バッテリーケース。
【請求項8】
前記アンダーカバーの下に配置され、車両前後方向に延び、前記アンダーカバーに接合されている下面縦補強材をさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項9】
蓋として機能するトレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の上面に左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーと、前記アッパーカバーを下方から閉じて前記バッテリーを収容するアンダーカバーと、前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延びるように前記アッパーカバーの上に配置される上面外側横補強材と、前記アンダーカバーの上に設置されて前記バッテリーを受けるバッテリーマウントと、前記アッパーカバーの車両幅方向外側にて車両前後方向に延びるサイドシルとを準備し、
前記バッテリーの上部を基材に取り付け、
前記基材に取り付けられた前記バッテリーを前記バッテリーマウントに載置し、
前記アンダーカバーと前記サイドシルとを下方から締結し、
前記基材と前記アッパーカバーと前記上面外側横補強材とを締結することによって、前記バッテリーを前記アッパーカバーから吊り下げて前記バッテリーマウントから浮かせて配置する
ことを含む、自動車用バッテリーケースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用バッテリーケースおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のように大容量のバッテリーを搭載した自動車では、バッテリーは、バッテリーケースに格納されて車室下側に配置される。そのような自動車用バッテリーケースでは、路面からの水の浸入を防止する高いシール性能と、自動車衝突時の高いバッテリー保護性能とが求められる。
【0003】
特許文献1~3には、バッテリーをトレイ状のケースに格納して高いシール性能の確保を図るとともに、トレイの形状や補強部材によって高いバッテリー保護性能の確保を図っている自動車用バッテリーケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-41783号公報
【特許文献2】特開2021-64448号公報
【特許文献3】特開2020-111101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の自動車用バッテリーケースでは、トレイ状のケースにバッテリーが格納され、概略平坦なアッパーカバーによって上方から閉じられている。即ち、蓋体は、単なる蓋として機能しており、バッテリー保護性能に大きく寄与していない。
【0006】
本発明は、自動車用バッテリーケースおよびその製造方法において、アッパーカバーを利用して高いバッテリー保護性能を確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面は、蓋として機能するトレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の上面に左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーと、前記アッパーカバーを下方から閉じて前記バッテリーを収容するアンダーカバーと、前記アッパーカバーの上に配置され、前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延びる上面外側横補強材とを備える、自動車用バッテリーケースを提供する。
【0008】
この構成によれば、上面張出部によって車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保できる。具体的には、上面張出部を設けることによって、単なる平板と比べて耐荷重を向上でき、より大きな荷重を伝達できる。また、一枚の金属板をプレス成形してなるプレス成形品としてのアッパーカバーは接合部のような継ぎ目を有していないため、外部からの水の浸入を防止でき、高いシール性能を確保できる。
【0009】
前記アッパーカバーおよび前記上面外側横補強材は、互いに接合されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、アンダーカバーおよび上面外側横補強材が一体的に荷重を受けることができるため、車両幅方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0011】
前記アッパーカバーおよび前記上面外側横補強材の少なくとも1つは、車室床面となるフロアパネルを構成してもよい。
【0012】
この構成によれば、フロアパネルを別体として設ける必要がなく、部品点数を削減でき、軽量化できる。
【0013】
前記自動車用バッテリーケースは、前記上面張出部に沿って前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延び、前記上面張出部に少なくとも部分的に収容されるように前記アッパーカバー内に配置される上面内側横補強材をさらに備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、上面内側横補強材によっても荷重を受けることができるため、車両幅方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0015】
前記アッパーカバーの材料が、引張強度590MPa以上の鋼材であってもよい。
【0016】
この構成によれば、高強度の鋼材からなるアッパーカバーによって一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0017】
前記アッパーカバーの車両前後方向の中央部のみがテイラードウェブドブランク構造を有していてもよい。
【0018】
これらの構成によれば、アッパーカバーの車両前後方向の中央部の強度を他の部分に比べて高めることができる。例えば、テイラードウェブドブランク構造によって、当該中央部に対して、高強度の材質を採用したり、厚みを厚くしたりすることができる。当該中央部は、自動車の側面衝突において高い荷重が付加される部分であり、高い耐荷重が求められる。そのため、当該中央部の強度を高めることは有効である。
【0019】
前記バッテリーは、前記アッパーカバーから吊り下げられ、前記アンダーカバーから浮かせて配置されてもよい。
【0020】
この構成によれば、アンダーカバーに対して荷重が付加された場合でも、アンダーカバーからバッテリーに荷重が直接的に伝達されないため、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0021】
前記自動車用バッテリーケースは、前記アンダーカバーの下に配置され、車両前後方向に延び、前記アンダーカバーに接合されている下面縦補強材をさらに備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、アンダーカバーおよび下面縦補強材が一体的に荷重を受けることができるため、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0023】
本発明の第2の側面は、蓋として機能するトレイ状のプレス成形品であり、前記バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の上面に左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーと、前記アッパーカバーを下方から閉じて前記バッテリーを収容するアンダーカバーと、前記収容部の左端から右端まで車両幅方向に延びるように前記アッパーカバーの上に配置される上面外側横補強材と、前記アンダーカバーの上に設置されて前記バッテリーを受けるバッテリーマウントと、前記アッパーカバーの車両幅方向外側にて車両前後方向に延びるサイドシルとを準備し、前記バッテリーの上部を基材に取り付け、前記基材に取り付けられた前記バッテリーを前記バッテリーマウントに載置し、前記アンダーカバーと前記サイドシルとを下方から締結し、前記基材と前記アッパーカバーと前記上面外側横補強材とを締結することによって、前記バッテリーを前記アッパーカバーから吊り下げて前記バッテリーマウントから浮かせて配置することを含む、自動車用バッテリーケースの製造方法を提供する。
【0024】
この製造方法によれば、前述のようにしてアッパーカバーを利用して高いバッテリー保護性能を確保できる。また、前述のようにアンダーカバーに対して荷重が付加された場合でも、アンダーカバーからバッテリーに荷重が直接的に伝達されないため、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、自動車用バッテリーケースおよびその取り付け方法において、アッパーカバーを利用して高いバッテリー保護性能を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】自動車の側面図。
図2】本発明の第1実施形態に係る自動車用バッテリーケースの斜視図。
図3図2の自動車用バッテリーケースの分解斜視図。
図4】アッパーカバーと上面外側横補強材と上面内側横補強材とを示す斜視図。
図5図2のV-V線に沿った自動車用バッテリーケースの断面図。
図6図2の自動車用バッテリーケースを搭載した車体下部構造の斜視図。
図7】本発明の第2実施形態に係る自動車用バッテリーケースにおけるアッパーカバーの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1を参照して、自動車1は、バッテリー10から供給される電力によってモータを駆動させて走行する。例えば、自動車1は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等の電動車両であり得る。自動車1の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、自動車1として普通乗用車タイプの電気自動車の場合を一例として説明する。
【0029】
自動車1は、車体前部20にモータおよび高電圧機器等を搭載している。また、自動車1は、車体中央部30の車室Rの下の概ね全面に駆動電力源となるバッテリー10を格納した自動車用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。図1中、自動車1の車両前後方向をX方向で示し(矢印は前向きを示す)、車両上下方向をZ方向で示している(矢印は上向きを示す)。以降の図でも同表記とし、図2以降で自動車1の車両幅方向をY方向で示す(矢印は右向きを示す)。
【0030】
図2~5を参照して、本実施形態のバッテリーケース100は、上面外側横補強材110と、アッパーカバー120と、上面内側横補強材130と、基材140と、アンダーカバー150と、バッテリーマウント160と、フレーム170と、下面縦補強材180と、ボトムプレート190とを有している。図3ではバッテリー10の図示が省略されており、図5にてバッテリー10は示されている。バッテリー10は、車両上下方向に長い円柱形状を有し、車両前後方向および車両幅方向に並んで密に配置されている。図5では、破線円で囲まれる部分が拡大して示されている。
【0031】
アッパーカバー120は、蓋として機能するトレイ状の部材であり、一枚の金属板をプレス成形することにより形成されている。即ち、アッパーカバー120は、接合部のような継ぎ目を有していない単一部品のプレス成形品である。アッパーカバー120はバッテリー10を収容する収容部121を有し、収容部121の上面122には左端から右端まで車両幅方向に延びて上方へ張り出した上面張出部123が設けられている。上面張出部123の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。収容部121の下端からは、フランジ部124が水平方向外側に延びている。
【0032】
アッパーカバー120は、例えば鋼材からなる。具体的には、アッパーカバー120の材質は、引張強度590MPa以上の鋼材であってもよい。高強度の鋼材からなるアッパーカバー120によって、高いバッテリー保護性能を確保できる。また、アッパーカバー120の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0033】
上面外側横補強材110は、アッパーカバー120を補強する部材である。本実施形態では、上面外側横補強材110は、車両幅方向に垂直な断面において連続したハット形を有する波板となっている。上面外側横補強材110は、アッパーカバー120の上に(アッパーカバー120の外側に)配置され、アッパーカバー120の収容部121の左端から右端まで車両幅方向に延びている。上面外側横補強材110は、車両上下方向から見ると、アッパーカバー120の収容部121と概略同じ大きさの矩形状となっている。ただし、上面外側横補強材110の形状、大きさ、または数は、任意であり得る。
【0034】
上面外側横補強材110は、アッパーカバー120と接合され、アッパーカバー120との間に複数の外側補強空間Soを構成する(図5参照)。即ち、車両幅方向から見て、上面外側横補強材110は、アッパーカバー120と合わせて複数の外側補強空間Soを画定する複数の閉断面形状を構成する。これにより、車両幅方向の耐荷重を向上させている。
【0035】
上面外側横補強材110は、例えば鋼材からなる。具体的には、上面外側横補強材110の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、上面外側横補強材110の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0036】
上面内側横補強材130は、アッパーカバー120を補強する部材である。本実施形態では、上面内側横補強材130は、車両幅方向に垂直な断面において連続したハット形を有する波板となっている。上面内側横補強材130は、上面張出部123に少なくとも部分的に収容されるようにアッパーカバー120の下に(アッパーカバー120の内側に)配置され、アッパーカバー120の上面張出部123に沿って収容部121の左端から右端まで車両幅方向に延びている。また、上面内側横補強材130は、車両上下方向から見ると、アッパーカバー120の収容部121と概略同じ大きさの矩形状となっている。ただし、上面外側横補強材110の形状、大きさ、または数は、任意であり得る。
【0037】
上面内側横補強材130は、アッパーカバー120と接合され、アッパーカバー120との間に閉じられた複数の内側補強空間Siを構成する(図5参照)。即ち、車両幅方向から見て、上面内側横補強材130は、アッパーカバー120と合わせて複数の内側補強空間Siを画定する複数の閉断面形状を構成する。これにより、車両幅方向の耐荷重を向上させている。
【0038】
上面内側横補強材130は、例えば鋼材からなる。具体的には、上面内側横補強材130の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、上面内側横補強材130の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。なお、上面内側横補強材130は、必要に応じて省略されてもよい。
【0039】
基材140は、バッテリー10を吊り下げるように保持する部材である。図5の例では、複数の円柱状のバッテリー10が基材140から吊り下げられるように配置されている。基材140は、車両上下方向から見て概略矩形であり、車両幅方向から見て上面内側横補強材130と相補的な形状を有している。基材140は、上面内側横補強材130の下面に対して接合され、収容部121において上部に位置している(図4参照)。
【0040】
アンダーカバー150は、アッパーカバー120を下方から(少なくとも部分的に)閉じてバッテリー10を収容する。本実施形態では、アンダーカバー150は、収容部121の車両幅方向両外側が一段下がった形状を有する概略平板状である。
【0041】
アンダーカバー150は、例えば鋼材からなる。具体的には、アンダーカバー150の材質は、引張強度590MPa以上の鋼材であってもよい。これにより、高強度の鋼材からなるアンダーカバー150によって高いバッテリー保護性能を確保できる。また、アンダーカバー150の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0042】
バッテリーマウント160は、アンダーカバー150の上に(上面に)設置され、バッテリーケース100の製造過程においてバッテリー10を一時的に受ける部品である。バッテリーマウント160は、複数のバッテリー10と相補的な複数の有底円筒形状を有し、複数のバッテリー10を載置して水平方向の位置を固定する。なお、バッテリーケース100の完成品の状態では、前述のように、複数のバッテリー10は、基材140から吊り下げられるように配置されるため、バッテリーマウント160には載置されない。なお、バッテリーマウント160は、必要に応じて省略されてもよい。
【0043】
フレーム170は、アッパーカバー120の車両幅方向外側に配置されている。本実施形態では、フレーム170は、車両前後方向にアッパーカバー120の全長にわたって延びるサイドフレーム171,172を含んでいる。ただし、フレーム170は、当該形態に限らず、例えば車両上下方向から見てアッパーカバー120の外側全周にわたって配置されてもよい。
【0044】
サイドフレーム171,172は、例えば鋼板を曲げ成形してなる。具体的には、サイドフレーム171,172の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、これらの材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。なお、フレーム170は、必要に応じて省略されてもよい。
【0045】
下面縦補強材180は、アンダーカバー150を補強する部材である。下面縦補強材180は、アンダーカバー150の下に配置され、収容部121の前端から後端まで車両前後方向に延び、アンダーカバー150に接合されている。図示の例では、断面ハット形の3本の下面縦補強材180が設けられている。
【0046】
下面縦補強材180は、例えば鋼材からなる。具体的には、下面縦補強材180の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、下面縦補強材180の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。なお、下面縦補強材180は、必要に応じて省略されてもよい。
【0047】
ボトムプレート190は、アンダーカバー150および下面縦補強材180の下方に配置される金属板である。ボトムプレート190は、車両上下方向から見てアッパーカバー120と概略同じ大きさの矩形である。ボトムプレート190は、アッパーカバー120のフランジ部124と接合されている。本実施形態では、ボトムプレート190は、平坦な鋼板である。例えば、ボトムプレート190は、1.4mmの鋼板である。ただし、ボトムプレート190の厚みや材質は特に限定されず、任意であり得る。なお、ボトムプレート190は、必要に応じて省略されてもよい。
【0048】
図6を参照して、上記構成を有するバッテリーケース100は、以下で説明するように、自動車1の車体下部構造の一部を構成する。
【0049】
バッテリーケース100の車両幅方向両外側には、サイドシル200が配置される。サイドシル200は、車両前後方向に延び、自動車1の車両幅方向外面を構成する部材である。サイドシル200は、金属板であるインナーパネル210とアウターパネル220とが貼り合わされるとともにインナーパネル210とアウターパネル220との間の空間に緩衝部材230が配置されるようにして構成されている。緩衝部材230は、車両幅方向に並ぶ複数の部屋r1を有し、自動車1の側面からの衝撃を緩衝する機能を有している。
【0050】
本実施形態では、上面外側横補強材110は、車室Rの床面となるフロアパネルを構成している。即ち、上面外側横補強材110は、アッパーカバー120を補強する機能と、フロアパネルとしての機能とを有している。なお、上面外側横補強材110がアッパーカバー120の上面122の全体を覆うように配置されていない場合には、上面外側横補強材110およびアッパーカバー120の少なくとも一方がフロアパネルを構成する。
【0051】
次に、本実施形態のバッテリーケース100の製造方法について説明する。
【0052】
まず、前述の各部品を準備する(図3,6参照)。次いで、バッテリー10の上部を基材140に取り付ける。その後、基材140に取り付けられたバッテリー10をバッテリーマウント160に載置する。そして、バッテリーマウント160を介してバッテリー10が載置されたアンダーカバー150と、フレーム170と、サイドシル200とを下方から締結(例えばボルトナット締結)する。その後、基材140とアッパーカバー120と上面外側横補強材110と上面内側横補強材130とを締結(例えばボルトナット締結による共締め)することによって、バッテリー10をアッパーカバー120から吊り下げてバッテリーマウント160から浮かせて配置する(図5参照)。なお、前述の通り、フレーム170や上面内側横補強材130は、必要に応じて省略され得る。
【0053】
本実施形態の自動車用バッテリーケース100によれば、以下の作用効果を奏する。
【0054】
アッパーカバー120の上面張出部123によって車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保できる。具体的には、上面張出部123を設けることによって、単なる平板と比べて耐荷重を向上でき、より大きな荷重を伝達できる。また、一枚の金属板をプレス成形してなるプレス成形品としてのアッパーカバー120は接合部のような継ぎ目を有していないため、外部からの水の浸入を防止でき、高いシール性能を確保できる。
【0055】
また、アッパーカバー120および上面外側横補強材110が互いに接合されているため、アッパーカバー120および上面外側横補強材110が一体的に荷重を受けることができる。そのため、車両幅方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0056】
また、アッパーカバー120および上面外側横補強材110の少なくとも一方がフロアパネルとして機能するので、フロアパネルを別体として設ける必要がなく、部品点数を削減でき、軽量化できる。
【0057】
また、上面内側横補強材130によっても荷重を受けることができるため、車両幅方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0058】
また、バッテリー10がアンダーカバー150から浮かせて配置されているため、アンダーカバー150に対して荷重が付加された場合でも、アンダーカバー150からバッテリー10に荷重が直接的に伝達されないため、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0059】
また、アンダーカバー150および下面縦補強材180が互いに接合されているため、アンダーカバー150および下面縦補強材180が一体的に荷重を受けることができる。そのため、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0060】
(第2実施形態)
図7に示す第2実施形態の自動車用バッテリーケースは、アッパーカバー120の形状が第1実施形態とは異なる。これに関する部分以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。図7では、アッパーカバー120のみが示されており、破線円で囲まれる部分が拡大して示されている。
【0061】
本実施形態では、アッパーカバー120の車両前後方向の中央部125のみがテイラードウェブドブランク構造を有している。テイラードウェブドブランク構造は、プレス加工を利用して特定部分に板材を重ね合わせるものである。図示の例では、中央部125として車両前後方向の中央から4分の1程度までの領域にテイラードウェブドブランク構造が設けられている。車両前後方向の中央部125は、例えば車両前後方向の中央から半分程度までの領域とされてもよい。ここで、中央部125よりも車両前後方向の前方または後方の領域を外側部126と称する。
【0062】
図示の例のテイラードウェブドブランク構造では、中央部125において他の金属板127を重ね合わせ、中央部125の厚みを外側部126の厚みよりも大きくしている。即ち、中央部125のみが2枚の金属板によって構成されている。例えば、アッパーカバー120が鋼材からなる場合には、中央部125において引張強度のより高い鋼板を重ねて配置してもよい。
【0063】
本実施形態によれば、アッパーカバー120の車両前後方向の中央部125の強度を他の部分に比べて高めることができる。中央部125は、自動車の側面衝突において高い荷重が付加される部分であり、高い耐荷重が求められる。そのため、当該中央部125の強度を高めることは有効である。
【0064】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、個々の実施形態の内容を適宜組み合わせたものを、この発明の一実施形態としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 自動車
10 バッテリー
20 車体前部
30 車体中央部
100 バッテリーケース(自動車用バッテリーケース)
110 上面外側横補強材
120 アッパーカバー
121 収容部
122 上面
123 上面張出部
124 フランジ部
125 中央部
126 外側部
127 金属板
130 上面内側横補強材
140 基材
150 アンダーカバー
160 バッテリーマウント
170 フレーム
171,172 サイドフレーム
180 下面縦補強材
190 ボトムプレート
200 サイドシル
210 インナーパネル
220 アウターパネル
230 緩衝部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7