(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140739
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】自動車用バッテリーケース
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20241003BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/233 20210101ALI20241003BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20241003BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20241003BHJP
H01M 50/224 20210101ALI20241003BHJP
H01M 10/6554 20140101ALI20241003BHJP
H01M 10/6566 20140101ALN20241003BHJP
H01M 10/6567 20140101ALN20241003BHJP
【FI】
H01M50/242
H01M50/249
H01M50/233
H01M50/204 401H
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/6551
H01M50/224
H01M10/6554
H01M10/6566
H01M10/6567
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052048
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 貞雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】リケッツ,アルトゥ-ル
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031KK01
5H040AA14
5H040AA28
5H040AS07
5H040LL01
5H040NN00
(57)【要約】
【課題】自動車用バッテリーケースにおいて、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保する。
【解決手段】自動車用バッテリーケース100は、トレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部141を有し、収容部141の下面142に前端から後端まで車両前後方向に延びて上方へ張り出した下面張出部143が設けられているアンダーカバー140と、アンダーカバー140の下方にて下面張出部143に沿ってアンダーカバー140の前端から後端まで車両前後方向に延び、下面張出部143に少なくとも部分的に収容されるように配置される下面縦補強材160とを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の下面に前端から後端まで車両前後方向に延びて上方へ張り出した下面張出部が設けられているアンダーカバーと、
前記アンダーカバーの下方にて前記下面張出部に沿って前記アンダーカバーの前記前端から前記後端まで車両前後方向に延び、前記下面張出部に少なくとも部分的に収容されるように配置される下面縦補強材と
を備える、自動車用バッテリーケース。
【請求項2】
前記アンダーカバーおよび前記下面縦補強材は、互いに接合されている、請求項1に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項3】
前記アンダーカバーおよび前記下面縦補強材の下方に配置される平板状のボトムプレートをさらに備え、
前記下面縦補強材は、前記ボトムプレートと接合されている、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項4】
前記アンダーカバー内に配置されて前記収容部の車両幅方向の左端から右端まで延びるクロスメンバーをさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項5】
車両上下方向から見て前記アンダーカバーの外側全周にわたって配置されたフレームをさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項6】
前記アンダーカバーの材質は、引張強度590MPa以上の鋼材である、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項7】
前記アンダーカバー内に配置されて前記バッテリーを冷却する冷却部をさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項8】
前記冷却部は、
前記アンダーカバー内において前記下面張出部の上に配置され、前記アンダーカバーの前記下面との間に底空間を画定する平板状の載置板と、
前記底空間に収容され、前記載置板を介して伝導された前記バッテリーの熱を放出する放熱部と
を備える、請求項7に記載の自動車用バッテリーケース。
【請求項9】
前記アンダーカバーを上方から閉じる蓋となっており、上面において車両幅方向の左端から右端まで延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーをさらに備える、請求項1または2に記載の自動車用バッテリーケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用バッテリーケースに関する。
【背景技術】
【0002】
電気自動車のように大容量のバッテリーを搭載した自動車では、バッテリーは、バッテリーケースに格納されて車室下側に配置される。そのような自動車用バッテリーケースでは、路面からの水の浸入を防止する高いシール性能と、自動車衝突時の高いバッテリー保護性能とが求められる。
【0003】
特許文献1~3には、バッテリーをトレイ状のケースに格納して高いシール性能の確保を図るとともに、ケースの形状や補強部材によって高いバッテリー保護性能の確保を図っている自動車用バッテリーケースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-41783号公報
【特許文献2】特開2021-64448号公報
【特許文献3】特開2020-111101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1~3の自動車用バッテリーケースは、いずれも車両幅方向の衝撃に対するバッテリー保護性能が重視されており、車両前後方向の衝撃に対するバッテリー保護性能について改善の余地がある。また、構造が複雑であり、より簡易な構造とする点で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、自動車用バッテリーケースにおいて、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トレイ状のプレス成形品であり、バッテリーを収容する収容部を有し、前記収容部の下面に前端から後端まで車両前後方向に延びて上方へ張り出した下面張出部が設けられているアンダーカバーと、前記アンダーカバーの下方にて前記下面張出部に沿って前記アンダーカバーの前記前端から前記後端まで車両前後方向に延び、前記下面張出部に少なくとも部分的に収容されるように配置される下面縦補強材とを備える、自動車用バッテリーケースを提供する。
【0008】
この構成によれば、下面張出部によって車両前後方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保できる。具体的には、下面張出部を設けることによって、単なる平板と比べて耐荷重を向上でき、より大きな荷重を伝達できる。また、下面縦補強材は、下面張出部に少なくとも部分的に収容されるため、効率よく空間を利用できる。また、一枚の金属板をプレス成形してなるプレス成形品としてのアンダーカバーは接合部のような継ぎ目を有していないため、路面からの水の浸入を防止でき、高いシール性能を確保できる。
【0009】
前記アンダーカバーおよび前記下面縦補強材は、互いに接合されていてもよい。
【0010】
この構成によれば、アンダーカバーおよび下面縦補強材が一体的に荷重を受けることができるため、車両前後方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0011】
前記自動車用バッテリーケースは、前記アンダーカバーおよび前記下面縦補強材の下方に配置される平板状のボトムプレートをさらに備えてもよく、前記下面縦補強材は、前記ボトムプレートと接合されていてもよい。
【0012】
この構成によれば、ボトムプレートでも一体的に荷重を受けることができるため、車両前後方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0013】
前記自動車用バッテリーケースは、前記アンダーカバー内に配置されて前記収容部の車両幅方向の左端から右端まで延びるクロスメンバーをさらに備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、クロスメンバーによって、車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0015】
前記自動車用バッテリーケースは、車両上下方向から見て前記アンダーカバーの外側全周にわたって配置されたフレームをさらに備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、フレームによってアンダーカバーの全周を保護することができるため、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0017】
前記アンダーカバーの材質は、引張強度590MPa以上の鋼材であってもよい。
【0018】
この構成によれば、高強度の鋼材からなるアンダーカバーによって一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0019】
前記自動車用バッテリーケースは、前記アンダーカバー内に配置されて前記バッテリーを冷却する冷却部をさらに備えてもよい。
【0020】
この構成によれば、冷却部によってバッテリーを冷却できるため、バッテリーの安定した駆動を実現できる。
【0021】
前記冷却部は、
前記アンダーカバー内において前記下面張出部の上に配置され、前記アンダーカバーの前記下面との間に底空間を画定する平板状の載置板と、前記底空間に収容され、前記載置板を介して伝導された前記バッテリーの熱を放出する放熱部とを備えてもよい。
【0022】
この構成によれば、放熱部が底空間に収容されるため、省スペース化できる。
【0023】
前記自動車用バッテリーケースは、前記アンダーカバーを上方から閉じる蓋となっており、上面において車両幅方向の左端から右端まで延びて上方へ張り出した上面張出部が設けられているアッパーカバーをさらに備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、アッパーカバーの上面張出部によって、車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、自動車用バッテリーケースにおいて、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図2】本発明の第1実施形態に係る自動車用バッテリーケースの斜視図。
【
図3】
図2の自動車用バッテリーケースの分解斜視図。
【
図4】アンダーカバーと下面縦補強材と冷却部とクロスメンバーとを示す斜視図。
【
図5】アンダーカバーと下面縦補強材とを示す斜視図。
【
図6】
図2の自動車用バッテリーケースを搭載した車体下部構造の斜視図。
【
図7】本発明の第2実施形態に係る自動車用バッテリーケースの斜視図。
【
図8】
図7の自動車用バッテリーケースの分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
【0028】
(第1実施形態)
図1を参照して、自動車1は、バッテリー10から供給される電力によってモータを駆動させて走行する。例えば、自動車1は、電気自動車またはプラグインハイブリッド車等の電動車両であり得る。自動車1の種類については、特に限定されず、乗用車、トラック、作業車、またはその他のモビリティ等であり得る。以下では、自動車1として普通乗用車タイプの電気自動車の場合を一例として説明する。
【0029】
自動車1は、車体前部20にモータおよび高電圧機器等を搭載している。また、自動車1は、車体中央部30の車室Rの下の概ね全面に駆動電力源となるバッテリー10を格納した自動車用バッテリーケース100(以下、単にバッテリーケース100ともいう。)を搭載している。
図1中、自動車1の車両前後方向をX方向で示し(矢印は前向きを示す)、車両上下方向をZ方向で示している(矢印は上向きを示す)。以降の図でも同表記とし、
図2以降で自動車1の車両幅方向をY方向で示す(矢印は右向きを示す)。
【0030】
図2~5を参照して、本実施形態のバッテリーケース100は、アッパーカバー110と、クロスメンバー120と、冷却部130と、アンダーカバー140と、フレーム150と、下面縦補強材160と、ボトムプレート170とを有している。
図3では、バッテリーケース100に格納されるバッテリー10が4つの直方体として模式的に示されている。バッテリー10は、車両幅方向に長い形状を有し、車両前後方向に並んで配置されている。
【0031】
アンダーカバー140は、トレイ状の部材であり、一枚の金属板をプレス成形することにより形成されている。即ち、アンダーカバー140は、接合部のような継ぎ目を有していない単一部品のプレス成形品である。アンダーカバー140はバッテリー10を収容する収容部141を有し、収容部141の下面142には前端から後端まで車両前後方向に延びて上方へ張り出した下面張出部143が設けられている。下面張出部143の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0032】
本実施形態では、アンダーカバー140の下面142に複数の貫通孔144が設けられており、後述する冷却部130から収容部141内にクーラント液が漏出した場合でも複数の貫通孔144から下方へと排出できるようになっている。なお、シール性を考慮して、複数の貫通孔144は、路上からの水の浸入を防止できるようにシール構造を有していてもよいし、単に省略されてもよい。
【0033】
アンダーカバー140は、例えば鋼材からなる。具体的には、アンダーカバー140の材質は、引張強度590MPa以上の鋼材であってもよい。高強度の鋼材からなるアンダーカバー140によって、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。また、アンダーカバー140の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0034】
冷却部130は、アンダーカバー140内に配置され、バッテリー10を冷却する。本実施形態では、冷却部130は、2枚の金属板(例えばアルミ板)が貼り合わされて形成されている。また、冷却部130の位置を固定するために複数のブラケット133が設けられている。複数のブラケット133は、収容部141の車両幅方向の両側面に沿って配置されている。
【0035】
本実施形態では、冷却部130は、平板状の載置板131と、溝を有する板状の放熱部132とを含んでいる。載置板131は、平板状であり、下面張出部143の上にブラケット133を介して配置されている。載置板131とアンダーカバー140の下面142との間には底空間Sbが画定されている。放熱部132は、載置板131の下面に貼り合わされ、底空間Sbに配置されている。放熱部132は、載置板131を介して伝導されたバッテリー10の熱を放出するように、低温のクーラント液が流れる流路となる溝部132aを有している。溝部132aは、放熱面積を確保するために車両前後方向に折り返すように蛇腹状に形成されている。溝部132aが載置板131によって上方から閉じられることによってクーラント液の流路が画定されている。クーラント液は、バッテリーケース100と任意の態様の冷却装置との間で循環するように構成されている。
【0036】
クロスメンバー120は、アンダーカバー140内に配置されて収容部141の車両幅方向の左端から右端まで延びている。本実施形態では、3本のクロスメンバー120が設けられ、複数の冷却部130を仕切るように配置されている。ただし、クロスメンバー120の数については、特に限定されない。クロスメンバー120は、車両幅方向に垂直な断面形状が概略ハット形をしており、凸部143aと干渉しないように下面張出部143と相補的な形状の逃げ部121を有している。
【0037】
クロスメンバー120は、例えば鋼材からなる。具体的には、クロスメンバー120の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、クロスメンバー120の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。なお、クロスメンバー120は、必要に応じて省略されてもよい。
【0038】
アッパーカバー110は、アンダーカバー140を上方から閉じる蓋となっている。バッテリー10は、アンダーカバー140内において載置板131に載置され、アッパーカバー110によって上方から閉じられることによってバッテリーケース100に格納される。
【0039】
本実施形態では、アッパーカバー110は、上面111において車両幅方向の左端から右端まで延びて上方へ張り出した上面張出部112を有している。
【0040】
本実施形態では、車両前後方向に並んだ直方体状の4つのバッテリー10がバッテリーケース100に格納されるため、4つの上面張出部112が4つのバッテリー10に対応して設けられている。なお、上面張出部112の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0041】
本実施形態では、アッパーカバー110は、アンダーカバー140と同様に、一枚の金属板をプレス成形することにより形成されている。即ち、アッパーカバー110は、接合部のような継ぎ目を有していない単一部品のプレス成形品である。
【0042】
アッパーカバー110は、例えば鋼材からなる。具体的には、アッパーカバー110の材質は、軟鋼材であってもよい。また、アッパーカバー110の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0043】
フレーム150は、車両上下方向から見てアンダーカバー140の外側全周にわたって配置されている。本実施形態では、フレーム150は、車両上下方向から見て矩形である。フレーム150は、前方に配置されるフロントフレーム151と、後方に配置されるリアフレーム152と、両サイドに配置されるサイドフレーム153,154とを含んでいる。フロントフレーム151およびリアフレーム152は車両幅方向に延び、サイドフレーム153,154は車両前後方向に延びている。フロントフレーム151、リアフレーム152、およびサイドフレーム153,154は、溶接等によって接合されている。
【0044】
フロントフレーム151、リアフレーム152、およびサイドフレーム153,154は、例えば鋼板を管状にロールフォーム成形してなる。具体的には、これらの材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、これらの材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。なお、フレーム150は、必要に応じて省略されてもよい。
【0045】
下面縦補強材160は、車両前後方向に垂直な断面において概略ハット形を有し、アンダーカバー140を補強する部材である。下面縦補強材160は、アンダーカバー140の下方(アンダーカバー140の外側)にて下面張出部143に沿ってアンダーカバー140の前端から後端まで車両前後方向に延び、下面張出部143に少なくとも部分的に収容されるように配置されている。図示の例では、3本の下面張出部143に対応して、3本の下面縦補強材160が設けられている。下面縦補強材160は、下面張出部143と相補的な形状を有している。下面縦補強材160は、スペーサー161を介してアンダーカバー140と接合されている。スペーサー161によって下面縦補強材160とアンダーカバー140との間には、隙間が設けられている。
【0046】
下面縦補強材160は、例えば鋼材からなる。具体的には、下面縦補強材160の材質は、引張強度980~1470MPa以上の鋼材であってもよい。また、下面縦補強材160の材質は、アルミニウム合金などのその他の金属材料であってもよい。
【0047】
ボトムプレート170は、アンダーカバー140および下面縦補強材160の下方に配置される金属板である。ボトムプレート170は、車両上下方向から見てフレーム150と概略同じ大きさの矩形である。ボトムプレート170には、下面縦補強材160が接合されている。ボトムプレート170には、複数の貫通孔171が設けられており、冷却部130のクーラント液が漏出した場合でも複数の貫通孔171から下方へと排出できるようになっている。ただし、複数の貫通孔171は、省略されてもよい。
【0048】
本実施形態では、ボトムプレート170は、平板状である。ボトムプレート170は、例えば厚み1.4mmの鋼板である。ただし、ボトムプレート170の厚みや材質は特に限定されず、任意であり得る。なお、ボトムプレート170は、必要に応じて省略されてもよい。
【0049】
図6を参照して、上記構成を有するバッテリーケース100は、以下で説明するように、自動車1の車体下部構造の一部を構成する。
【0050】
バッテリーケース100の車両幅方向両外側には、サイドシル200が配置される。サイドシル200は、車両前後方向に延び、自動車1の車両幅方向外面を構成する部材である。サイドシル200は、金属板であるインナーパネル210とアウターパネル220とが貼り合わされるとともにインナーパネル210とアウターパネル220との間の空間に緩衝部材230が配置されるようにして構成されている。緩衝部材230は、車両幅方向に並ぶ複数の部屋r1を有し、自動車1の側面からの衝撃を緩衝する機能を有している。
【0051】
車両幅方向においてサイドシル200の間かつ車両上下方向においてバッテリーケース100の上方には、車室Rの床面を構成するフロアパネル300が配置されている。フロアパネル300は、平坦な金属板である。フロアパネル300の上には、複数(図示の例では3本)のフロアクロス310が配置されている。複数のフロアクロス310は、一対のサイドシル200を接続するように車両幅方向に延びている。
【0052】
本実施形態の自動車用バッテリーケース100によれば、以下の作用効果を奏する。
【0053】
アンダーカバー140の下面張出部143によって車両前後方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両前後方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を簡易な構造で確保できる。具体的には、下面張出部143を設けることによって、単なる平板と比べて耐荷重を向上でき、より大きな荷重を伝達できる。また、下面縦補強材160は、下面張出部143に少なくとも部分的に収容されるため、効率よく空間を利用できる。また、一枚の金属板をプレス成形してなるプレス成形品としてのアンダーカバー140は接合部のような継ぎ目を有していないため、路面からの水の浸入を防止でき、高いシール性能を確保できる。
【0054】
また、アンダーカバー140および下面縦補強材160は互いに接合されているため、アンダーカバー140および下面縦補強材160が一体的に荷重を受けることができる。そのため、車両前後方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0055】
また、ボトムプレート170および下面縦補強材160は互いに接合されているため、ボトムプレート170でも荷重を受けることができる。そのため、車両前後方向の衝撃に対する一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0056】
また、クロスメンバー120によって、車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0057】
また、フレーム150によってアンダーカバー140の全周を保護することができるため、一層高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0058】
また、冷却部130によってバッテリー10を冷却できるため、バッテリー10の安定した駆動を実現できる。さらに、放熱部132が底空間Sbに収容されるため、省スペース化できる。
【0059】
また、アッパーカバー110の上面張出部112によって、車両幅方向に荷重伝達パスを設けることができ、車両幅方向の衝撃に対する高いバッテリー保護性能を確保できる。
【0060】
(第2実施形態)
図7,8に示す第2実施形態の自動車用バッテリーケース100はクロスメンバー120を有しておらず、バッテリー10、冷却部130、およびアッパーカバー110が第1実施形態のものとは異なっている。これらに関する部分以外は、第1実施形態と実質的に同じである。従って、第1実施形態にて示した部分については説明を省略する場合がある。
【0061】
本実施形態では、車両前後方向に長い直方体状の2つのバッテリー10が車両幅方向に並んでバッテリーケース100に格納される。
【0062】
冷却部130は、バッテリー10に対応して車両幅方向に近接して並んで配置されている。溝部132aによって形成される流路は、車両前後方向の全長にわたって延び、車両前後方向に折り返して蛇腹状に構成されている。
【0063】
アッパーカバー110は、蓋として機能するトレイ状をしている。アッパーカバー110の上面は平坦であり、第1実施形態のような上面張出部112(
図2参照)は設けられていない。
【0064】
アンダーカバー140には、第1実施形態のような複数の貫通孔144(
図3参照)は設けられていない。同様に、ボトムプレート170には、第1実施形態のような複数の貫通孔171(
図3参照)は設けられていない。
【0065】
本実施形態の自動車用バッテリーケース100によって奏する作用効果は、上記第1実施形態と異なる構成に関するものを除いて、第1実施形態のものと実質的に同じである。ただし、本実施形態では、第1実施形態に比べて、部品点数が減少し、アッパーカバー110または冷却部130などの各部構造が単純化されている。
【0066】
以上より、本発明の具体的な実施形態およびその変形例について説明したが、本発明は上記形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することができる。例えば、第1実施形態の各構成要素と第2実施形態の各構成要素は、互いに好適に置換され得る。
【0067】
また、冷却部130の構成は、
図9~11に示すように様々であり得る。
図9~11は、
図4のA-A線に沿った位置での断面を示している。
図9~11では、アッパーカバー110およびフレーム150が外された状態が示されている。
【0068】
図9を参照して、冷却部130の放熱部132は、ヒートシンクであってもよい。放熱部132は、底空間Sbに収容され、バッテリー10の熱が伝導されて高温化した載置板131から吸熱するとともに空気中に放熱する。
【0069】
図10を参照して、冷却部130の放熱部132は、バッテリー10の側面に沿って配置されてもよい。図示の例では、放熱部132は、バッテリー10の車両幅方向の外面に隣接して配置されている。ただし、放熱部132は、バッテリー10の車両前後方向の外面に隣接して配置されてもよい。放熱部132は、一枚の金属板(例えばアルミ板)をロールフォーム成形し、複数の部屋r2を有する管状に構成されている。複数の部屋r2は、クーリング液が流れる流路となっている。
【0070】
代替的には、
図11を参照して、放熱部132は、2枚の対向する金属板(例えばアルミ板)の間に波状に曲げ成形された1枚の金属板(例えばアルミ板)を挟み込んで構成されてもよい。この場合でも
図10と同様に、複数の部屋r3が構成され、複数の部屋r3はクーリング液が流れる流路となっている。なお、
図10,11の例では、底空間Sbには何も配置されていないが、前述のヒートシンクなどの別の放熱部132を配置してもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 自動車
10 バッテリー
20 車体前部
30 車体中央部
100 バッテリーケース(自動車用バッテリーケース)
110 アッパーカバー
111 上面
112 上面張出部
120 クロスメンバー
121 逃げ部
130 冷却部
131 載置板
132 放熱部
132a 溝部
133 ブラケット
140 アンダーカバー
141 収容部
142 下面
143 下面張出部
144 貫通孔
150 フレーム
151 フロントフレーム
152 リアフレーム
153,154 サイドフレーム
160 下面縦補強材
161 スペーサー
170 ボトムプレート
171 貫通孔
200 サイドシル
210 インナーパネル
220 アウターパネル
230 緩衝部材
300 フロアパネル
310 フロアクロス