(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140742
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】運転支援装置
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
G08G 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 C
G08G1/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052052
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】松本 康平
(72)【発明者】
【氏名】花木 武彦
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC14
5H181EE12
5H181EE13
5H181LL07
5H181LL09
(57)【要約】
【課題】運転者による車両運転を細やかに支援することのできる運転支援装置を提供する。
【解決手段】運転支援装置は、周辺監視カメラ26と、タイヤ検出部32と、実行部33とを備える。周辺監視カメラ26は、車両10に設けられるとともに、同車両10のタイヤを撮像する。タイヤ検出部32は、周辺監視カメラ26によって撮像した撮像画像をもとに、タイヤのパンクの有無やタイヤの種類といったタイヤの状態を検出する。実行部33は、タイヤ検出部32により検出されたタイヤの状態に応じて、運転者への注意喚起にかかるパンク警告制御、および車両10の制動にかかる制動制御を実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による車両の運転を支援する運転支援装置であって、
前記車両に設けられて同車両のタイヤを撮像するカメラと、
前記カメラによって撮像した撮像画像をもとに前記タイヤの状態を検出するタイヤ検出部と、
前記タイヤ検出部により検出された前記タイヤの状態に応じて、前記運転者への注意喚起にかかる警告制御および前記車両の制動にかかる制動制御の少なくとも一方を実行する実行部と、
を備える運転支援装置。
【請求項2】
前記運転支援装置は、前記車両の走行路の状態を検出する走行路検出部を備え、
前記実行部は、前記タイヤ検出部により検出された前記タイヤの状態と前記走行路検出部により検出された前記走行路の状態との関係に応じて、前記警告制御および前記制動制御の少なくとも一方を実行するものである、
請求項1に記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援装置は、少なくとも減速を自動で行う自動運転モードを有する前記車両に適用されるものであり、
前記タイヤ検出部により検出される前記タイヤの状態は、冬タイヤおよび夏タイヤを含む前記タイヤの種類であり、
前記走行路検出部により検出される前記走行路の状態は、乾燥路、および濡れた路、および雪路を含み、
前記実行部は、前記タイヤ検出部により前記夏タイヤが検出されるとともに前記走行路検出部により前記雪路が検出される第1状況、または、前記タイヤ検出部により前記冬タイヤが検出されるとともに前記走行路検出部により前記濡れた路が検出される第2状況では、前記走行路検出部により前記乾燥路が検出される第3状況と比較して、早いタイミングで前記車両の制動を開始する態様で、前記自動運転モードであるときの前記制動制御を実行するものである、
請求項2に記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記自動運転モードは、先行車両との車間距離を保ちながら当該先行車両に追従走行するクルーズコントロールを実行する運転モードである、
請求項3に記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記運転支援装置は、降雨または降雪を検出するレインセンサと、前記車両の外気温度を検出する外気温センサと、を備え、
前記走行路検出部は、前記レインセンサにより検出される降雨または降雪に関する情報と前記外気温センサにより検出される外気温度とに基づいて、前記走行路の状態を検出するものである、
請求項2~4のいずれか一項に記載の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転支援装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、運転者による車両の運転を支援する運転支援装置が種々実用されている。特許文献1に記載の運転支援装置は、タイヤの空気圧を検出するための空気圧センサを備えている。この装置では、車両運転を支援するべく、タイヤの空気圧が過剰に低下した場合にそのことが運転者に報知される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記運転支援装置では、車両運転を支援する制御の実行パラメータとしてのタイヤ情報をタイヤの空気圧から得ている。空気圧から得られるタイヤについての情報は限られる。上記運転支援装置は、機能向上を図る上では、そうしたタイヤ情報が限定される点において課題を残すものとなっている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための装置の各態様を記載する。
[態様1]運転者による車両の運転を支援する運転支援装置であって、前記車両に設けられて同車両のタイヤを撮像するカメラと、前記カメラによって撮像した撮像画像をもとに前記タイヤの状態を検出するタイヤ検出部と、前記タイヤ検出部により検出された前記タイヤの状態に応じて、前記運転者への注意喚起にかかる警告制御および前記車両の制動にかかる制動制御の少なくとも一方を実行する実行部と、を備える運転支援装置。
【0006】
上記構成において、カメラによる撮像画像には、タイヤの種類や外形、摩耗度合いなど、タイヤについての多種の情報が含まれている。上記構成によれば、そうした撮像画像から得られる多種のタイヤ情報に応じて、運転者への注意喚起を実行したり、車両制動にかかる制動制御を実行したりすることができる。したがって、運転者による車両運転を細やかに支援することができる。
【0007】
[態様2]前記運転支援装置は、前記車両の走行路の状態を検出する走行路検出部を備え、前記実行部は、前記タイヤ検出部により検出された前記タイヤの状態と前記走行路検出部により検出された前記走行路の状態との関係に応じて、前記警告制御および前記制動制御の少なくとも一方を実行するものである、[態様1]に記載の運転支援装置。
【0008】
上記構成によれば、タイヤの状態と走行路の状態との関係に応じて、言い換えれば車両のスリップし易さに応じて、警告制御や制動制御を実行することができるため、運転者による車両の運転を細やかに支援することができる。
【0009】
[態様3]前記運転支援装置は、少なくとも減速を自動で行う自動運転モードを有する前記車両に適用されるものであり、前記タイヤ検出部により検出される前記タイヤの状態は、冬タイヤおよび夏タイヤを含む前記タイヤの種類であり、前記走行路検出部により検出される前記走行路の状態は、乾燥路、および濡れた路、および雪路を含み、前記実行部は、前記タイヤ検出部により前記夏タイヤが検出されるとともに前記走行路検出部により前記雪路が検出される第1状況、または、前記タイヤ検出部により前記冬タイヤが検出されるとともに前記走行路検出部により前記濡れた路が検出される第2状況では、前記走行路検出部により前記乾燥路が検出される第3状況と比較して、早いタイミングで前記車両の制動を開始する態様で、前記自動運転モードであるときの前記制動制御を実行するものである、[態様2]に記載の運転支援装置。
【0010】
上記構成によれば、夏タイヤで雪路を走行する第1状況や冬タイヤで濡れた路を走行する第2状況、すなわち乾燥路を走行する第3状況よりも制動距離が長くなり易い状況において、それを見越した早いタイミングで、車両の制動を開始して実行することができる。そのため、自動運転モードでの車両運転を、タイヤの種類や走行路の状態に応じたかたちで好適に実行することができる。
【0011】
[態様4]前記自動運転モードは、先行車両との車間距離を保ちながら当該先行車両に追従走行するクルーズコントロールを実行する運転モードである、[態様3]に記載の運転支援装置。
【0012】
上記構成によれば、自動運転モードでの車両運転に際して、タイヤの種類や走行路の状態に応じたかたちで、先行車両との車間距離を適正に保つことができるため、先行車両に対する追従走行を適正に実行することができる。
【0013】
[態様5]前記運転支援装置は、降雨または降雪を検出するレインセンサと、前記車両の外気温度を検出する外気温センサと、を備え、前記走行路検出部は、前記レインセンサにより検出される降雨または降雪に関する情報と前記外気温センサにより検出される外気温度とに基づいて、前記走行路の状態を検出するものである、[態様2]~[態様4]のいずれか一つに記載の運転支援装置。
【0014】
上記構成によれば、レインセンサによって降雨または降雪の有無を検出することができる。そして、降雨または降雪が検出される場合には、外気温センサによって検出される外気温度が高いときには降雨と判断する一方、同外気温度が低いときには降雪と判断するといったように、降雨(濡れた路)および降雪(雪路)のいずれであるかを判別することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転者による車両運転を細やかに支援することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態の運転支援装置が適用される車両の概略構成を示す略図である。
【
図3】パンク警告制御の実行手順を概念的に示すフローチャートである。
【
図4】制動制御の実行手順を概念的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、運転支援装置の一実施形態について、
図1~
図4を参照して説明する。
図1に示すように、車両10は駆動源としての原動機11を備えている。原動機11としては、内燃機関を用いたり、電動機を用いたり、内燃機関および電動機を組み合わせたものを用いたりすることができる。
【0018】
車両10は、ブレーキ装置12を備えている。ブレーキ装置12は、車両10(詳しくは、タイヤ15)の制動を行うためのものである。ブレーキ装置12は、基本的には、運転者によるブレーキ操作部材(図示略)の操作に応じて作動する。そして、ブレーキ装置12が作動すると、タイヤ15の回転を制動する制動力が発生する。
【0019】
車両10はディスプレイ13を備えている。ディスプレイ13は、車室内における運転席の近傍に設けられている。ディスプレイ13は、任意の情報を表示するためのものである。
【0020】
車両10は、その運転状態を検出するための各種センサ類を備えている。
各種センサ類としては、例えばアクセル操作部材(図示略)の操作量(アクセル操作量AC)を検出するためのアクセルセンサ20や、ブレーキ操作部材の操作量(ブレーキ操作量BR)を検出するためのブレーキセンサ21が設けられている。
【0021】
また、各種センサ類としては、車両10の走行速度(車速SPD)を検出するための車速センサ22や、フロントガラスに付着する水滴を検出するためのレインセンサ23が設けられている。なお、レインセンサ23によってフロントガラスへの水滴付着が検出される場合には、このときの天候が降雨(あるいは降雪)であると判断することができる。
【0022】
さらに、各種センサ類としては、車両10の外気温度(外気温TH)を検出するための外気温センサ24、前方監視センサ25、周辺監視カメラ26、および運転スイッチ27等も設けられている。
【0023】
前方監視センサ25は、車両10の前部に設けられる。前方監視センサ25は、レーダ251(レーザーレーダまたはミリ波レーダ)と前方監視カメラ252とを含んでいる。前方監視センサ25は、レーダ251および前方監視カメラ252を用いて車両10の前方に存在する物体を検知するためのものである。本実施形態では、前方監視センサ25は、車両10の直前を走行する車両(以下、先行車両)と同車両10との車間距離Dを検出する。
【0024】
周辺監視カメラ26は、車両10の両側、詳しくは左右のドアミラーの下部に1つずつ設けられる。2つの周辺監視カメラ26はそれぞれ、タイヤ15(詳しくは、車両10の前タイヤ)およびその周辺を撮像する。周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像は、電子制御装置30のメモリに記憶される。
【0025】
運転スイッチ27は、車両10を起動させるときにオン操作されるとともに同車両10の運転を停止させるときにオフ操作されるスイッチである。
車両10は、例えばマイクロコンピュータを中心に構成された電子制御装置30を有している。電子制御装置30には、各種センサ類の検出信号が取り込まれている。電子制御装置30は、それら検出信号をもとに各種の演算を行うとともに、その演算結果をもとに原動機11の運転制御や、ブレーキ装置12の作動制御、ディスプレイ13の作動制御など、車両10の運転にかかる各種制御を実行する。
【0026】
本実施形態では、車両10の運転モードとして、「通常運転モード」と「自動運転モード」とが設定されている。
<通常運転モード>
通常運転モードでは、アクセル操作量ACに応じて原動機11の出力が調節される。アクセルセンサ20によって検出されるアクセル操作量ACは、運転者によって要求される原動機11の駆動力に対応する値となる。通常運転モードでは、そうしたアクセル操作量ACに基づいて原動機11の目標出力が算出される。そして、この目標出力と実際の原動機11の出力とが一致するように同原動機11の運転制御が実行される。本実施形態の原動機11の運転制御では、基本的には、アクセル操作量ACが大きいときほど、原動機11の出力も大きくなる。
【0027】
また通常運転モードでは、ブレーキ操作量BRに応じてブレーキ装置12の作動が制御される。ブレーキセンサ21によって検出されるブレーキ操作量BRは、運転者によって要求される車両10の制動力に対応する値となる。通常運転モードでは、そうしたブレーキ操作量BRに基づいてブレーキ装置12の作動制御が実行される。
【0028】
<自動運転モード>
自動運転モードでは、先行車両との車間距離Dを保ちながら当該先行車両に追従走行するクルーズコントロールが実行される。
【0029】
車両10は、クルーズコントロールにおける各種の設定を行うための操作装置14を備えている。この操作装置14の操作を通じて、クルーズコントロールの実行と実行停止との切り替えや、クルーズコントロールにおける車速SPDの目標値(以下、目標速度TS)の設定が行われる。操作装置14は、運転者による同操作装置14の操作に基づく信号を電子制御装置30に出力する。電子制御装置30は、操作装置14からの信号に基づき、クルーズコントロールを実行もしくは停止する。
【0030】
運転者による操作装置14の操作を通じてクルーズコントロールの実行が選択されると、車両10の運転モードは「自動運転モード」になる。なお、運転者による操作装置14の操作によって、クルーズコントロールの実行停止が選択される場合には、車両10の運転モードは「通常運転モード」になる。
【0031】
自動運転モードでは、基本的には、運転者が設定した目標速度TSと実際の車速SPDとを一致させるように、原動機11の運転制御、およびブレーキ装置12の作動制御が実行される。そして、先行車両が存在する場合には、上記目標速度TSを上限速度としつつ先行車両との車間距離Dを一定に保つように、原動機11の運転制御、およびブレーキ装置12の作動制御が実行される。
【0032】
このように自動運転モードでは、運転者によって設定される目標速度TS、および先行車両との車間距離Dに応じて、原動機11の運転制御、およびブレーキ装置12の作動制御が実行される。なお自動運転モードでは、目標速度TSよりも高くなった車速SPDを目標速度TSまで低下させるとき、および、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎたときには、車両10の制動が行われる。詳しくは、電子制御装置30は、ブレーキ装置12の駆動回路に指令信号を出力することにより、タイヤ15の制動が行われる態様でブレーキ装置12を作動させる。
【0033】
<パンク警告制御>
本実施形態の運転支援装置は、運転者による車両10の運転を支援するべく、「パンク警告制御」を実行する。
【0034】
パンク警告制御では、周辺監視カメラ26によってタイヤ15が撮像されるとともに、撮像された撮像画像をもとにタイヤ15の状態、具体的にはパンクの有無が検出される。そして、タイヤ15のパンクが検出された場合には、その旨がディスプレイ13に表示されるとともに、ディスプレイ13に内蔵のスピーカーから警告音が発せられる。本実施形態では、このようにしてタイヤ15のパンクの可能性があることが運転者に報知される。これにより、運転者がタイヤ15のパンクに気付かずに車両10を走行させるといった事態になることが抑えられる。また、運転者にパンク修理やタイヤ交換を促すことができる。なお本実施形態では、パンク警告制御が、運転者への注意喚起にかかる警告制御に相当する。また本実施形態では、こうしたパンク警告制御が、左右のタイヤ15(詳しくは、前タイヤ)に対応して各別に実行される。
【0035】
以下、パンク警告制御の具体的な実行手順について、
図3を参照して説明する。
図3は、パンク警告制御にかかる処理の実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す一連の処理は、パンク警告制御にかかる処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置30により実行される。
【0036】
図3に示すように、この処理では先ず、車両10の運転停止時において(ステップS11:YES)、周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像が「停止時画像」として電子制御装置30のメモリに記憶される(ステップS12)。なお本実施形態では、運転スイッチ27がオン操作されてからオフ操作されるまでの期間(いわゆるトリップ)中においては、周辺監視カメラ26によるタイヤ15の撮像が定期的に実行されている。ステップS12の処理では、今回のトリップにおいて周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像のうち、最後に撮像された撮像画像が上記「停止時画像」として電子制御装置30のメモリに記憶される。
【0037】
その後における車両10の起動時においては(ステップS11:NO、且つ、ステップS13:YES)、周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像が「起動時画像」として電子制御装置30のメモリに記憶される(ステップS14)。詳しくは、今回のトリップにおいて周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像のうち、最初に撮像された撮像画像が上記「起動時画像」として電子制御装置30のメモリに記憶される。
【0038】
その後、停止時画像および起動時画像に基づいてパンクの有無が判定される(ステップS15)。ステップS15の処理では、例えば停止時画像と起動時画像との差分が求められる。そして、この差分が所定レベル以上である場合には、前回トリップと今回トリップとの間(すなわち駐車中)にタイヤ15の外形がパンクの発生が疑われる程度に変化しているとして、パンク有りと判定される。一方、上記差分が所定レベル未満である場合には、前回トリップと今回トリップとの間にタイヤ15の外形が略変化していないとして、パンク無しと判定される。
【0039】
そして、パンク有りと判定された場合には(ステップS16:YES)、運転者に対するパンクの警告がなされる(ステップS17)。ステップS17の処理では、「パンク有り」を示す警告がディスプレイ13に表示されるとともに、ディスプレイ13に内蔵のスピーカーから警告音が発せられる。
【0040】
なお、パンク無しと判定された場合には(ステップS16:NO)、運転者に対するパンクの警告を実行することなく(ステップS17の処理をジャンプして)、本処理は終了される。また、車両10の運転時および同車両10の起動時のいずれでもない場合には(ステップS11:NO、且つステップS13:NO)、各処理(ステップS12,S14~S17)を実行することなく、本処理は終了される。
【0041】
<制動制御>
本実施形態の運転支援装置は、運転者による車両10の運転を支援するべく、同車両10の制動にかかる制動制御を実行する。以下、この制動制御について説明する。
【0042】
図2に示すように、電子制御装置30は、機能部として、走行路検出部31、タイヤ検出部32、および実行部33を有している。
<走行路検出部>
制動制御において、走行路検出部31は、レインセンサ23により検出される降雨または降雪に関する情報と、外気温センサ24により検出される外気温THとに基づいて、車両10の走行路の状態を検出する。
【0043】
具体的には、走行路検出部31は、レインセンサ23によって降雨または降雪が検出されない場合には、車両10の走行路の状態として乾燥路を検出する。一方、レインセンサ23によって降雨または降雪が検出される場合に、外気温THが所定温度(例えば、マイナス3度)以上であるときには降雨と判断することができる。そのため走行路検出部31は、このときにおける車両10の走行路の状態として、濡れた路(ウェット路)を検出する。他方、レインセンサ23によって降雨または降雪が検出される場合に、外気温THが上記所定温度未満であるときには降雪と判断することができる。そのため走行路検出部31は、このときにおける車両10の走行路の状態として、雪路を検出する。
【0044】
<タイヤ検出部>
制動制御において、タイヤ検出部32は、周辺監視カメラ26によって撮像された撮像画像をもとに、タイヤ15の状態(詳しくは、種類)を検出する。具体的には、撮像画像についての画像解析を行うことで、タイヤ15の側面に、冬タイヤであることを示すマーク(例えば、スノーフレークマーク)が有るか否かを判定する。そして、タイヤ15の側面に上記マークが有る場合にはタイヤ15の種類として冬タイヤ(スタッドレスタイヤなど)を検出する。一方、タイヤ15の側面に上記マークが無い場合にはタイヤ15の種類として夏タイヤ(いわゆるノーマルタイヤ)を検出する。
【0045】
<実行部>
制動制御において、実行部33は、タイヤ検出部32により検出されたタイヤ15の種類と走行路検出部31により検出された走行路の状態との関係に応じて、自動運転モードであるときのブレーキ装置12の作動制御を実行する。
【0046】
以下では、タイヤ検出部32により夏タイヤが検出されるとともに走行路検出部31により雪路が検出される状況を「第1状況」とする。また、タイヤ検出部32により冬タイヤが検出されるとともに走行路検出部31によりウェット路が検出される状況を「第2状況」とする。さらに、走行路検出部31により乾燥路が検出される状況を「第3状況」とする。
【0047】
実行部33は、具体的には、車両運転状態が同一の条件下では上記第1状況、第2状況、および第3状況の各々において異なるタイミングで車両10の制動が開始される態様で、自動運転モードであるときのブレーキ装置12の作動制御を実行する。
【0048】
<第1状況における制動制御>
詳しくは、夏タイヤで雪路を走行する第1状況においては、第1状況~第3状況のうちで最もスリップし易い状況であるため、制動距離が長くなり易い。そのため、第1状況では、第1状況~第3状況のうちで最も早いタイミングで車両10の制動が開始される態様で、ブレーキ装置12の作動制御が実行される。なお以下では、第1状況において実行されるブレーキ装置12の作動制御を「第1制動制御」という。
【0049】
本実施形態によれば、第1状況において第1制動制御を実行することにより、第1状況では制動距離が長くなり易いとはいえ、それを見越した早いタイミングで車両10の制動を開始して実行することができる。そのため、第1状況において車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0050】
<第2状況における制動制御>
一方、冬タイヤでウェット路を走行する第2状況は、夏タイヤで雪路を走行する第1状況よりもスリップし難い状況であるものの、乾燥路を走行する第3状況よりもスリップし易い状況である。そのため、第2状況では、第1状況よりも遅いタイミングで車両10の制動が開始される態様であって、且つ、第3状況よりも早いタイミングで車両10の制動が開始される態様で、ブレーキ装置12の作動制御が実行される。以下では、第2状況において実行される制動制御を「第2制動制御」という。
【0051】
本実施形態によれば、第2状況において第2制動制御を実行することにより、第2状況では第3状況よりも制動距離が長くなり易いとはいえ、それを見越した早いタイミングで車両10の制動を開始して実行することができる。そのため、第2状況において車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0052】
<第3状況における制動制御>
他方、乾燥路を走行する第3状況においては、第1状況~第3状況のうちで最もスリップし難い状況であるため、制動距離が長くなり難い。そのため、第3状況においては、第1状況~第3状況のうちで、最も遅いタイミングで車両10の制動が開始される態様で、ブレーキ装置12の作動制御が実行される。以下では、第3状況において実行される制動制御を「第3制動制御」という。
【0053】
本実施形態によれば、第3状況において第3制動制御を実行することにより、第1状況~第3状況のうちで最もスリップし難い第3状況に見合う態様で、車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0054】
ここで、上述したように本実施形態では、自動運転モードにおいては、目標速度TSよりも高くなった車速SPDを目標速度TSまで低下させるとき、および、先行車両との車間距離Dが小さくなりすぎたときに車両10の制動が行われる。そのため本実施形態では、早いタイミングで車両10の制動を開始する態様でブレーキ装置12の作動制御を実行する構成が、車両10の制動が行われる車両運転領域を次のように設定することによって実現されている。例えば、車両10の制動が行われる車両運転領域を車速SPDが低い側の領域に設定したり、同車両運転領域を車間距離Dが大きい側の領域に設定したりすることによって、上記構成は実現されている。
【0055】
以下、本実施形態の制動制御の具体的な実行手順について、
図4を参照して説明する。
図4は、制動制御にかかる処理の実行手順を示すフローチャートである。なお、このフローチャートに示す一連の処理は、制動制御にかかる処理の実行手順を概念的に示したものであり、実際の処理は所定周期毎の処理として、電子制御装置30により実行される。
【0056】
図4に示すように、この処理では先ず、車両10の起動時において(ステップS21:YES)、周辺監視カメラ26による撮像画像をもとに、タイヤ15の種類が検出される(ステップS22)。ここでは、車両10の起動に際して、同車両10のタイヤ15が冬タイヤおよび夏タイヤのいずれであるかが検出される。
【0057】
そして、車両10のトリップ中においては(ステップS21:YES、または、ステップS21:NO)、車両10の走行路の状態が検出される(ステップS23)。ステップS23の処理では、そのときどきにおける車両10の走行路が、乾燥路、ウェット路、および雪路のいずれであるかが検出される。
【0058】
そして、夏タイヤで雪路を走行する第1状況である場合には(ステップS24:YES)、第1制動制御が実行される(ステップS25)。また、運転者に対してスリップし易い旨の警告がなされる(ステップS26)。ステップS26の処理では、スリップし易い状況であることを示す警告がディスプレイ13に表示されるとともに、ディスプレイ13に内蔵のスピーカーから警告音が発せられる。
【0059】
一方、冬タイヤでウェット路を走行する第2状況である場合には(ステップS24:NO、且つ、ステップS27:YES)、第2制動制御が実行される(ステップS28)。また、運転者に対してスリップし易い旨の警告がなされる(ステップS29)。ステップS29の処理では、スリップし易い状況であることを示す警告がディスプレイ13に表示されるとともに、ディスプレイ13に内蔵のスピーカーから警告音が発せられる。
【0060】
他方、第1状況および第2状況のいずれでもない場合には(ステップS24:NO、且つ、ステップS27:NO)、第3制動制御が実行される(ステップS30)。
なお本処理において、第1状況および第2状況のどちらでもない状況は(ステップS:NO)、乾燥路を走行する第3状況の他、冬タイヤで雪路を走行する第4状況、および、夏タイヤでウェット路を走行する第5状況を含む。本実施形態では、そうした第4状況および第5状況においても、第3状況と同様に、第3制動制御が実行される。したがって、第1状況および第2状況よりもスリップし難い第4状況および第5状況に見合う態様で、車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0061】
<効果>
本実施形態によれば、以下に記載する効果が得られる。
(1)運転支援装置は、車両10のタイヤ15を撮像する周辺監視カメラ26、タイヤ検出部32、実行部33を備える。タイヤ検出部32は、周辺監視カメラ26による撮像画像をもとにタイヤ15の状態を検出する。実行部33は、タイヤ検出部32により検出されたタイヤ15の状態に応じて、パンク警告制御および制動制御を実行する。
【0062】
周辺監視カメラ26によって撮像される撮像画像には、タイヤ15の種類や外形、摩耗度合いなど、タイヤ15についての多種の情報が含まれている。本実施形態によれば、そうした撮像画像から得られる多種のタイヤ情報に応じて、運転者への注意喚起を実行したり、車両10の制動にかかる制動制御を実行したりすることができる。これにより、運転者による車両10の運転を細やかに支援することができる。
【0063】
(2)運転支援装置は、車両10の走行路の状態を検出する走行路検出部31を備える。実行部33は、タイヤ検出部32により検出されたタイヤ15の種類と走行路検出部31により検出された走行路の状態との関係に応じて、車両10の制動にかかる制動制御およびスリップし易い状況である旨を警告する警告制御を実行する。本実施形態によれば、タイヤ15の種類と走行路の状態との関係に応じて、言い換えれば車両10のスリップし易さに応じたかたちで、警告制御や制動制御を実行することができるため、運転者による車両10の運転を細やかに支援することができる。
【0064】
(3)車両10の運転モードとして、通常運転モードと自動運転モードとが設定されている。タイヤ検出部32は、タイヤ15の状態として、タイヤ15の種類、詳しくは冬タイヤおよび夏タイヤのいずれかを検出する。走行路検出部31は、走行路の状態として、乾燥路、ウェット路、および雪路のいずれかを検出する。実行部33は、第1状況および第2状況では、第3状況と比較して早いタイミングで車両10の制動を開始する態様で、自動運転モードであるときの制動制御を実行する。
【0065】
本実施形態によれば、夏タイヤで雪路を走行する第1状況や冬タイヤでウェット路を走行する第2状況、すなわち乾燥路を走行する第3状況よりも制動距離が長くなり易い状況では、それを見越した早いタイミングで車両10の制動を開始して実行することができる。そのため、自動運転モードでの車両運転を、タイヤ15の種類や走行路の状態に応じたかたちで、好適に実行することができる。
【0066】
(4)自動運転モードを、先行車両との車間距離Dを保ちながら当該先行車両に追従走行するクルーズコントロールを実行する運転モードにした。本実施形態によれば、自動運転モードでの車両10の運転に際して、タイヤ15の種類や走行路の状態に応じたかたちで、車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。これにより、先行車両との車間距離Dを適正に保つことができるため、先行車両に対する追従走行を適正に実行することができる。
【0067】
(5)走行路検出部31は、レインセンサ23により検出される降雨または降雪に関する情報と、外気温センサ24により検出される外気温THとに基づいて、車両10の走行路の状態を検出する。
【0068】
本実施形態によれば、レインセンサ23によって降雨または降雪の有無を検出することができる。そして、降雨または降雪が検出される場合において、外気温センサ24によって検出される外気温THが高いときには降雨と判断することができるとともに、同外気温THが低いときには降雪と判断することができる。本実施形態によれば、このようにして降雨(濡れた路)および降雪(雪路)のいずれであるかを判別および検出することができる。
【0069】
<変更例>
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態および以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0070】
・「第1状況」における第1制動制御や「第2状況」における第2制動制御において、目標速度TSよりも低い速度で車両10の走行速度を制限するようにしてもよい。例えば、夏タイヤで雪路の高速道路を走行する第1状況においては車両10の走行速度を時速50kmで制限したり、冬タイヤでウェット路の高速道路を走行する第2状況において車両10の走行速度を時速80kmで制限したりしてもよい。
【0071】
上記構成によれば、第3状況よりもスリップし易い状況である第1状況や第2状況において、車両10の速度が高くならないように制限することができる。これにより、第1状況および第2状況では制動距離が長くなり易いとはいえ、車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0072】
・「第1状況」における第1制動制御や「第2状況」における第2制動制御においては、「第3状況」における制動制御と比較して、車両運転状態が同一の条件の下での車両10の制動力を小さくするようにしてもよい。
【0073】
上記構成によれば、第3状況よりもスリップし易い状況である第1状況や第2状況において、車両10の制動力を小さくすることができる。これにより、制動時における車両10のスリップを抑えることができるため、同車両10を適正に減速あるいは停止させることができる。
【0074】
・走行路検出部31の検出対象とする走行路の状態としては、乾燥路、ウェット路、雪路の他、冠水路や凍結路を採用することができる。この場合には、冠水路の走行に適した態様で警告制御や制動制御を実行したり、凍結路の走行に適した態様で警告制御や制動制御を実行したりすればよい。
【0075】
・走行路検出部31による走行路の状態の検出パラメータとして、レインセンサ23および外気温センサ24以外のセンサの検出値を用いるようにしてもよい。そうしたセンサとしては、例えば、車両10に車外の照度を検出するための照度センサや、走行路を撮像するカメラを採用することができる。
【0076】
また、カメラ以外のセンサを利用することなく、カメラによる撮像画像のみに基づいて、走行路の状態を検出することなども可能である。この場合には、例えば、カメラによって走行路を撮像するとともに、その撮像した撮像画像についての画像解析(例えば、AI画像解析)を行うことで、走行路の状態を検出することができる。同構成を採用する場合には、タイヤ検出部32によるタイヤ15の状態の検出、および、走行路検出部31による走行路の状態の検出を、同一のカメラ(例えば、周辺監視カメラ26)によって撮像した撮像画像を利用して実行することができる。したがって、運転支援装置をシンプルな構造にすることができる。
【0077】
・タイヤ検出部32によるタイヤ15の種類の検出を、タイヤ15の側面に設けられる前記マークに基づき実行することの他、タイヤ15の側面に設けられる同タイヤ15の型式に基づき実行したり、タイヤ15の溝形状に基づき実行したりすることができる。
【0078】
・タイヤ検出部32により検出されるタイヤ15の種類としては、夏タイヤおよび冬タイヤの他、オールシーズンタイヤを採用することができる。
タイヤ検出部32によりオールシーズンタイヤが検出される場合には、同オールシーズンタイヤでの車両走行に適した態様で警告制御や制動制御を実行すればよい。
【0079】
例えば、制動制御において、オールシーズンタイヤで走行する場合には、走行路の状態によらず、第3制動制御を実行するようにしてもよい。その他、制動制御において、オールシーズンタイヤで雪路を走行する場合、および、オールシーズンタイヤでウェット路を走行する場合には、第2制動制御を実行すること等も可能である。
【0080】
・タイヤ検出部32により検出されるタイヤ15の状態としては、タイヤ15の種類の他、タイヤ15の摩耗度合いを採用することができる。この場合には、タイヤ15の摩耗がさほど進行していない状況、すなわちスリップし難い状況に見合う態様で警告制御や制動制御を実行したり、タイヤ15の摩耗が進行したスリップし易い状況に見合う態様で警告制御や制動制御を実行したりすればよい。
【0081】
・車両10のトリップ中において、タイヤ検出部32により「タイヤ15のパンク」や「スタンディングウェーブ現象の発生」を検出するようにしてもよい。
同構成は、例えば、以下に記載する(構成1)や(構成2)によって実現することができる。(構成1)トリップ中において周辺監視カメラ26によるタイヤ15の撮像を定期的に実行する。そして、それら撮像した撮像画像(画像データ)に統計処理を施すことによってタイヤ15のパンク(またはスタンディングウェーブ現象)の有無を導出(検出)する。(構成2)トリップ中に周辺監視カメラ26によってタイヤ15を撮像するとともに、撮像した撮像画像についての画像解析(例えば、AI画像解析)を行うことで、タイヤ15のパンク(またはスタンディングウェーブ現象)を検出する。
【0082】
「タイヤ15のパンク」や「スタンディングウェーブ現象」を検出した場合には、その旨を運転者に報知する警告制御を実行したり、車両10を減速あるいは停止させるべく同車両10を制動する制動制御を実行したりすればよい。
【0083】
・制動制御において、第2状況である場合に第3制動制御を実行するようにしてもよい。その他、制動制御において、第2状況である場合に第1制動制御を実行すること等も可能である。
【0084】
・制動制御において、第1状況、第2状況、第3状況、前記第4状況、および前記第5状況の各々において異なるタイミングで車両10の制動が開始される態様で、自動運転モードであるときのブレーキ装置12の作動制御を実行するようにしてもよい。なお第4状況は、タイヤ検出部32により冬タイヤが検出されるとともに走行路検出部31により雪路が検出される状況、すなわち冬タイヤで雪路を走行する状況である。また、第5状況は、タイヤ検出部32により夏タイヤが検出されるとともに走行路検出部31によりウェット路が検出される状況、すなわち夏タイヤでウェット路を走行する状況である。
【0085】
・
図3に示すパンク警告制御、および
図4に示す制動制御の一方を省略してもよい。
【符号の説明】
【0086】
10…車両
11…原動機
12…ブレーキ装置
13…ディスプレイ
14…操作装置
15…タイヤ
20…アクセルセンサ
21…ブレーキセンサ
22…車速センサ
23…レインセンサ
24…外気温センサ
25…前方監視センサ
251…レーダ
252…前方監視カメラ
26…周辺監視カメラ
27…運転スイッチ
30…電子制御装置
31…走行路検出部
32…タイヤ検出部
33…実行部