(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140751
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】繊維強化複合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 1/08 20060101AFI20241003BHJP
B32B 5/26 20060101ALI20241003BHJP
B29C 70/68 20060101ALI20241003BHJP
B29C 70/50 20060101ALI20241003BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B32B1/08 Z
B32B5/26
B29C70/68
B29C70/50
B29C44/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052067
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000120010
【氏名又は名称】宇部エクシモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 啓輔
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 貴文
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
4F214
【Fターム(参考)】
4F100AG00B
4F100AG00D
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK01E
4F100AK44B
4F100AK44D
4F100AK74A
4F100AK74C
4F100AK74E
4F100BA03
4F100BA05
4F100BA06
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100BA10E
4F100CA01A
4F100DA16
4F100DG01B
4F100DG01D
4F100DH02B
4F100DH02D
4F100DJ02A
4F100EJ82
4F100JA13
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JB16E
4F100YY00A
4F100YY00B
4F100YY00D
4F205AA13
4F205AA36
4F205AC02
4F205AD05
4F205AD12
4F205AD16
4F205AD17
4F205AG14
4F205AR15
4F205HA13
4F205HA14
4F205HA27
4F205HA33
4F205HA34
4F205HA37
4F205HB02
4F205HB11
4F205HC16
4F205HF05
4F205HK04
4F205HK05
4F205HT16
4F205HT26
4F214AA13
4F214AB02
4F214AG14
4F214AG20
4F214AR15
4F214UA11
4F214UB02
4F214UC02
4F214UC12
4F214UC22
4F214UW02
(57)【要約】
【課題】品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明では、熱可塑性樹脂からなる中芯と、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、を少なくとも備え、前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体及びその製造方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる中芯と、
樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、
前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、
を少なくとも備え、
前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、
前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体。
【請求項2】
前記中芯の独立発泡率は、50%以上である、請求項1に繊維強化複合体。
【請求項3】
見かけ比重が、1未満である、請求項1又は2に繊維強化複合体。
【請求項4】
熱可塑性樹脂からなる中芯と、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、を少なくとも備え、前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体の製造方法であって、
前記スキン層を形成し、形成した前記スキン層の厚みを調整する工程、
を少なくとも行う、繊維強化複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維強化複合体及びその製造方法に関する。より詳しくは、品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
強化繊維を樹脂で結着した繊維強化製物品は、強度が高く且つ軽量であるという点から、金属製物品に代わる材料として、自動車部材、電子部品、農林資材、建築材、家具等の幅広い分野で利用されている。例えば、この繊維強化製物品に関する技術を使用した製品の一つとして、ガラスロービング等の長繊維束を強化繊維とし、樹脂をマトリックスとするパイプ、ロッド、線状物等も古くから各種産業分野で使用されている。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1には、熱可塑性樹脂からなる中芯棒状体の外周を補強用長繊維を一体的に結着してなる熱硬化性樹脂層で被覆し、該熱硬化性樹脂層の外周面を更に熱可塑性樹脂層で被覆してなり、該中心棒状体並びに外層を構成する熱可塑性樹脂の少なくとも一方は中間層を構成するマトリックス成分である熱可塑性樹脂と化学的親和性を有する熱可塑性樹脂から形成されてなることを特徴とする三層構造からなる強化プラスチック製棒状物が開示されている。
【0004】
また、例えば、特許文献2には、比重1以下の高分子発泡体よりなる中芯と、該中芯の外側に設けたガラス繊維と熱硬化性樹脂とより構成される強化プラスチック層と、該強化プラスチック層の外側に設けた合成樹脂よりなる被覆層と、を一体に成形してあることを特徴とする三層構造棒状体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実全昭53-24376号公報
【特許文献2】実開昭60-184628号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術では、例えば、海洋分野や水処理分野において、使用した際に内部に水が浸入し、中芯内部に水が充填することで、浮力が落ちて沈降するといった問題などがあった。したがって、従来技術の更なる改良が求められているという実情があった。
【0007】
そこで、本発明では、このような実情に鑑み、品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らが鋭意実験検討を行った結果、繊維強化複合体のうち、中芯にスキン層を設け、更に、該スキン層の厚みを特定の範囲に制御することで、品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明では、熱可塑性樹脂からなる中芯と、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、を少なくとも備え、前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体を提供する。
前記中芯の独立発泡率は、50%以上であってもよい。
本発明に係る繊維強化複合体は、見かけ比重が、1未満であってもよい。
【0010】
また、本発明では、熱可塑性樹脂からなる中芯と、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、を少なくとも備え、前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体の製造方法であって、前記スキン層を形成し、形成した前記スキン層の厚みを調整する工程、を少なくとも行う、繊維強化複合体の製造方法も提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法を提供することができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る繊維強化複合体1の一実施形態を示す参考端面図である。
【
図2】製造ライン2の一実施形態を示す模式概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
1.繊維強化複合体1
図1は、本発明に係る繊維強化複合体1の一実施形態を示す参考端面図である。本発明に係る繊維強化複合体1(以下、単に「本発明に係る複合体1」とも称する。)は、中芯11と、中間層12と、外層13と、を少なくとも備える。また、必要に応じて、複数の中間層12や外層13を設けることも可能である。
【0015】
また、本発明に係る繊維強化複合体1において、前記中芯11は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯11における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層111の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明に係る複合体1は、従来技術と比較して、後述する実施例に示すように、品質が向上しているため、金属製物品に代わる材料として、これまで以上に、自動車部材、電子部品、農林資材、建築材、家具、海洋資材、水処理用資材等の幅広い分野で利用されることが期待できる。また、3Dプリンタのフィラメント材料や、該材料を用いた成形体等へ転用されることも期待できる。
【0017】
本発明に係る複合体1の見かけ比重は、1未満であることが好ましく、0.9未満であることがより好ましく、0.8未満であることが更に好ましい。本発明に係る複合体1の見かけ比重が1未満であることで、本発明に係る複合体1の軽量性を担保できる。海洋資材、水処理用資材等の用途で用いた場合に、十分な浮力を得ることができる。また、見かけ比重は、例えば、0.15以上、0.2以上、又は0.3以上とすることができる。
【0018】
本発明に係る複合体1の形状としては、例えば、略円筒状又は略多角筒状とすることができる。「略円筒状」とは、具体的には、その断面が円形、又は楕円形などの扁平形状となる形状をいう。「略多角筒状」とは、具体的には、その断面が三角形、四角形などの多角形となる形状をいう。
以下、各部位について詳細に説明する。
【0019】
(1)中芯11
本発明において、中芯11は、熱可塑性樹脂からなり、該熱可塑性樹脂の一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体である。本明細書において、「独立発泡」とは、一つ一つの気泡が独立しており、他の気泡と繋がっていない状態をいう。
【0020】
本発明において、樹脂発泡体における独立発泡率は、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましく、60%以上が更に好ましい。独立発泡率が50%以上であることで、成形時にかかる応力に対して復元する効果が期待され、また、本発明に係る複合体1の圧縮応力を担保できる。更には、海洋分野、水処理分野等で用いた際の浮力の低下を防ぐことができる。また、樹脂発泡体における独立発泡率は、100%以下であってよく、製造容易性の観点などから、95%以下であってもよい。なお、樹脂発泡体における独立発泡率は、例えば、後述する実施例に示す方法により測定することができる。
【0021】
中芯11の比重は、0.7以下であることが好ましく、0.65以下であることがより好ましく、0.6以下であることが更に好ましい。中芯11の比重が0.7以下であることで、本発明に係る複合体1の軽量性を担保できる。海洋資材、水処理用資材等の用途で用いた場合に、十分な浮力を得ることができる。また、見かけ比重は、例えば、0.01以上、又は0.015以上とすることができる。
【0022】
本発明において、樹脂発泡体における発泡倍率は、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。発泡倍率が1.3以上であることで、より軽量性に優れる繊維強化複合体1を提供できる。また、樹脂発泡体における発泡倍率は、100以下が好ましく、75以下がより好ましく、50以下が更に好ましい。発泡倍率が100以下であることで、成形性を向上させることができる。なお、樹脂発泡体における発泡倍率は、例えば、得られた樹脂発泡体の重量を水投法により求めた体積により除することにより密度を求め、算出することができる。
【0023】
本発明において、樹脂発泡体において、独立発泡を形成する気泡セル112の断面方向における平均セル径は、10μm以上が好ましく、50μm以上がより好ましい。平均セル径が10μm以上であることで、より軽量性に優れる繊維強化複合体1を提供できる。また、気泡セル112の断面方向における平均セル径は、500μm以下が好ましく、450μm以下がより好ましい。平均セル径が500μm以下であることで、成形性を向上させることができる。なお、気泡セル112の平均セル径は、例えば、ASTM D3576-3577に準拠して測定することができる。なお、長さ方向の平均セル径については、適宜設定することができる。
【0024】
本発明において、樹脂発泡体における独立発泡セル率は、50%以上が好ましく、55%以上がより好ましい。独立発泡セル率が50%以上であることで、より軽量性に優れる繊維強化複合体1を提供できる。また、樹脂発泡体における独立発泡セル率は、100%以下が好ましく、90%以下がより好ましい。独立発泡セル率が100%以下であることで、成形性を向上させることができる。なお、樹脂発泡体における独立発泡セル率は、例えば、ASTM D 2856に準拠して測定することができる。
【0025】
<樹脂発泡体>
本明細書において、「樹脂発泡体」とは、熱可塑性樹脂と発泡剤とを少なくとも含む熱可塑性樹脂組成物を発泡したものをいう。本発明では、中芯11の一部又は全部が樹脂発泡体により形成されているが、中央部付近は熱可塑性樹脂からなり、その周囲を樹脂発泡体が覆っている形態が好ましい。
【0026】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイソブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリフェニルスルホン系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂等が挙げられる。また、これらのうち2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
本発明では、これらの中でも、熱可塑性樹脂として、スチレン系樹脂が好ましく、スチレン系樹脂の中でも、ポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂が好ましい。これらの熱可塑性樹脂は、後述する中間層12との密着性に優れるからである。
【0028】
発泡剤としては、例えば、物理発泡剤、化学発泡剤等が挙げられるが、生産性の観点から、化学発泡剤が好ましい。
化学発泡剤としては、例えば、有機系化学発泡剤、無機系化学発泡剤等が挙げられる。
有機系化学発泡剤としては、例えば、アゾジカルボンアミド、ヒドラゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム塩、ジニトロソペンタエチレンテトラミン、ニトロソグアニジン、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホン酸ヒドラジド)、トリヒドラジンシンメトリックトリアジン、バリウムアゾジカルボキシレート、アゾビスイソブチロニトリル、トルエンスルホニルヒドラジド等が挙げられる。
無機系化学発泡剤としては、例えば、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸亜鉛、炭酸水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウム等が挙げられる。
物理発泡剤としては、例えば、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、エタン、プロパン、n-ブタン、イソブタン、n-ペンタン、イソペンタン、n-ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロテトラフルオロエタン等が挙げられる。
これらの発泡剤は、用いる熱可塑性樹脂の種類、所望する発泡倍率等を考慮して、適宜選択することができ、本発明では、これらのうち2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
発泡剤の含有量としては、特に限定されないが、用いる発泡剤や熱可塑性樹脂の種類、所望する発泡倍率等を考慮して、適宜設定することができる。例えば、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01質量部以上10質量部以下が好ましく、0.05質量部以上5質量部以下がより好ましい。
【0030】
また、樹脂発泡体は、その他の任意の成分として、気泡調整剤、安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤、結晶化促進剤、滑剤、架橋剤、界面活性剤、収縮防止剤、難燃剤、劣化防止剤等を含んでいてもよいが、本発明ではこれらに限定されない。
【0031】
<スキン層111>
本発明では、上述した通り、中芯11におけるスキン層111の厚みが、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下であることを特徴とする。本明細書において、「スキン層」とは、中芯11における外周面の一部又は全部に形成されており、気泡が発生していない領域をいう。
【0032】
スキン層111が無かったり、極端に薄かったりすると、中間層12を形成する際に用いる含浸樹脂の種類によっては、中芯11が溶ける恐れがあり、仮に、中芯11における独立発泡率の値が大きかったとしても、前記含浸樹脂が中芯11の内部にまで浸食して気泡同士を繋げてしまう恐れがある。また、スキン層111が無い場合、中芯11成形時の寸法精度が悪くなり、その結果、中間層12及び外層13の追従が悪くなって、繊維強化複合体1としての品質は低くなる。更には、スキン層111が無い場合、中芯11、中間層12、及び外層13の一体成型時に寸法精度が低いことに由来して、樹脂に含浸させた強化繊維による絞り(圧縮)の応力、硬化時の発熱量等が不均一になってしまい、成形不良になるといった問題も生じる。なお、本明細書において、「含浸樹脂」とは、強化繊維を含浸する樹脂をいう。
【0033】
また、本願発明者らは、たとえスキン層111があったとしても、3μm未満であると前記含浸樹脂による中芯11の発泡領域の浸食で気泡が連結化し、独立発泡の形成が困難になり、成形性が不良となる一方で、前記中芯の直径に対して30%超であると、中芯11における気泡の率が少なくなり、成形性が不良となり、更には、例えば、海洋資材、水処理用資材等の用途で用いた場合に、十分な浮力が得られないといった不具合が生じることを見出した。すなわち、本発明に係る複合体1では、中芯11にスキン層111を設け、更に、該スキン層111の厚みを上記特定の範囲に制御することで、品質を飛躍的に向上させることに成功した。
【0034】
また、本発明では、中芯11におけるスキン層111の厚みが、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下であるが、前記スキン層111の厚みは、5μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して25%以下であることが好ましい。
【0035】
(2)中間層12
本発明において、中間層12は、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯11の外周に一体に結着してなる層である。なお、
図1に示す実施形態では、中間層12は1層であるが、本発明ではこれに限定されず、必要に応じて、複数の中間層12を有していてもよい。
【0036】
樹脂としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。強化繊維に熱可塑性樹脂を含浸させたものは、一般的に、繊維強化熱可塑性樹脂(FRTP)と称される。また、強化繊維に熱硬化性樹脂を含浸させたものは、一般的に、(FRP)と称される。本発明では、これらのいずれも中間層12を形成する素材として用いることができる。
【0037】
<中間層12に用いられる熱可塑性樹脂>
中間層12に用いられるマトリックス樹脂としての熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイソブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ウレタン樹脂等が挙げられる。また、その他にも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0038】
<中間層12に用いられる熱硬化性樹脂>
中間層12に用いられるマトリックス樹脂としての熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂(例えば、テレフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂等)、ビニルエステル樹脂(例えば、エポキシアクリレート樹脂等)、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリアミド樹脂、フェノール樹脂等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0039】
本発明では、これらの中でも特に、中間層12を形成する素材として、熱硬化性樹脂が好ましく、熱硬化性樹脂の中でも、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂が好ましい。熱硬化性樹脂は、成形安定性、成形簡便性、及びコスト削減の観点から好ましいためである。
【0040】
<強化繊維>
強化繊維としては、例えば、連続長繊維束、繊維編組物(例えば、織物、編物、組物など)の形態を有する基材であることが好ましい。これらを用いることで、連続含浸性、外層13の連続形成性が確保でき、生産性に優れるからである。
【0041】
強化繊維としては、例えば、オレフィン系繊維、アラミド繊維、液晶ポリエステル(LCP)繊維等の有機繊維;ガラス繊維;炭素繊維等の無機繊維;チラノ繊維等のセラミック繊維;ボロン繊維、銅、ステンレス等の金属繊維;アモルファス繊維等を用いることができる。また、本発明では、これらの混織物等を用いることもできる。
【0042】
本発明では、これらの中でも特に、強化繊維として、ガラス繊維、炭素繊維が好ましい。これらの繊維は、含浸樹脂との相性がよいからである。また、コスト削減の観点から、ガラス繊維がより好ましい。
【0043】
ガラス繊維としては、例えば、ガラス繊維モノフィラメント、ガラス繊維ストランド、ガラス繊維ロービング、ガラス繊維ヤーン等の長繊維を用いることができる。本発明では、これらの中でも特に、ガラス繊維として、ガラス繊維ロービング、ガラス繊維ヤーンが好ましい。また、ガラス繊維織物、ガラス繊維組物、ガラス繊維編物等のガラス繊維編組物を用いることもできる。
【0044】
なお、ガラス繊維として、エポキシシランカプリング剤、アクリルシランカップリング剤等の表面処理剤で表面処理を施したものを用いてもよい。また、ガラス繊維のガラス組成としては、例えば、Eガラス、Sガラス、Cガラス等が挙げられる。本発明では、これらの中でも特に、ガラス組成として、Eガラスが好ましい。また、ガラス繊維モノフィラメントの断面は略円形であってもよく、略楕円形等の扁平形状でもよい。
【0045】
炭素繊維としては、コールタールピッチや石油ピッチを原料にした「ピッチ系」、ポリアクリロニトリルを原料とする「PAN系」、及びセルロース繊維を原料とする「レーヨン系」の3種類があり、本発明では、どの炭素繊維も用いてもよい。
【0046】
強化繊維の直径としては、特に限定されないが、3μm以上40μm以下が好ましく、10μm以上23μm以下がより好ましい。3μm未満であると使用する強化繊維の本数が多くなり、作業性の悪化や、成形時の準備にかかる人員が増え、コストが増大する。40μm超であると含浸性の低下を招き、含浸効率が悪くなる。
【0047】
使用する強化繊維の本数としては、特に限定されないが、中間層12に占める繊維の率(Vf:含有繊維率)は、20%以上80%以下が好ましく、30%以上70%以下がより好ましい。Vfが20%未満であると中間層12は所定の形状を維持できず、繊維強化複合体1として、物性が悪くなる。Vfが80%を超えると強化繊維と絞りとの摩擦抵抗の増大や、絞り時の中芯11にかかる圧縮応力が増大し、成形安定性や成形効率が悪くなる。
【0048】
強化繊維は、必要に応じて、周知の方法により所望の尺長に織り上げるか、組み上げるか、又は編み上げるか等の方法により調製しておくことができ、また、長尺のものをロールに巻き取って使用してもよい。また、強化繊維への樹脂の含浸性を高める目的や、強化繊維中の水分を除去させる目的で、必要に応じて、強化繊維を加熱してもよい。
【0049】
強化繊維(束)の体積含有率は、中間層12全体に対して20%以上80%以下であることが好ましく、40%以上60%以下であることがより好ましい。体積含有率が20%より低くなると、強化繊維による補強効果が低くなる。逆に、体積含有率が80%を超えると、樹脂量が少ないために、曲げ強力に悪影響を生じる。
【0050】
(3)外層13
外層13は、前記中間層12を被覆し、熱可塑性樹脂からなる層である。なお、
図1に示す実施形態では、外層13は1層であるが、本発明ではこれに限定されず、必要に応じて、複数の外層13を有していてもよい。
【0051】
<外層13に用いられる熱可塑性樹脂>
外層13に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリイソブチレン(PB)等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリエチレンナフタレート(PENp)、液晶ポリエステル(LCP)等のポリエステル系樹脂;ポリスチレン(PS)、アクリロ二トリル-スチレン樹脂(AS)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル-アクリル-スチレン樹脂(AAS)、アクリロニトリル・エチレンプロピレンゴム・スチレン(AES)等のスチレン系樹脂;ウレタン樹脂等が挙げられる。また、その他にも、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリアミド(PA)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、変性PPE、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルホン(PSU)、変性PSU、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリケトン(PK)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリアリレート(PAR)、ポリエーテルニトリル(PEN)等が挙げられる。また、本発明では、これらを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0052】
本発明では、これらの中でも特に、熱可塑性樹脂として、コスト削減、成形性、及び物性の観点から、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン樹脂が好ましい。
【0053】
2.繊維強化複合体1の製造方法
図2は、製造ライン2の一実施形態を示す模式概念図である。本発明に係る製造方法は、上述した繊維強化複合体1の製造方法であって、前記スキン層111を形成し、形成した前記スキン層111の厚みを調整する工程、を少なくとも行う。また、必要に応じて、他の工程を行ってもよい。
以下、本発明に係る製造方法について、
図2を参照しながら詳細に説明する。
【0054】
(1)強化繊維を引取可能とする工程
所要本数の長繊維状の強化繊維23を集合ガイドの所定のガイド孔に挿通し、含浸槽24の含浸操作ガイド、中芯11の外周に所定配置で縦添いさせるための絞り26、及び外層13用の溶融押出機27等からなる製造ライン2を通して、強化繊維(束)23を引取り可能に準備する。
【0055】
(2)樹脂組成物を注入する工程
含浸樹脂を熱硬化性樹脂とする場合、含浸槽24に熱硬化性樹脂及び熱硬化剤等を含む液状の硬化性樹脂組成物を注入する。一方で、含浸樹脂を熱可塑性樹脂とする場合、含浸槽24に熱可塑性樹脂、熱を加えて溶融状態にした熱可塑性樹脂、又は溶媒を加えて液状化させた熱可塑性樹脂を注入する。
【0056】
(3)中芯11を形成する工程(「スキン層111を形成し、形成したスキン層111の厚みを調整する工程」を含む。)
中芯11を形成するため、熱可塑性樹脂と発泡剤と、必要に応じて、その他の任意成分を含む熱可塑性樹脂組成物を中芯11用の溶融押出機21から所定寸法の円柱状に連続的に押出し、これを連続的に引き取り、中芯11用の冷却槽22にて冷却することで、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなる中芯11を形成する。
【0057】
この際、中芯11用の溶融押出機21の入口側から出口側に向かって、略への字型の温度勾配を付与する。これにより、スキン層111を形成し、また、温度勾配の程度を調整することでスキン層111の厚みを調整できる。温度勾配としては、例えば、温度上昇を溶融温度から発泡剤分解温度までとし、温度減少を発泡剤分解温度から溶融温度までとすることができる。
【0058】
具体的な温度条件としては、40℃≦最高温度-最低温度≦90℃となるように設定することが好ましい。すなわち、例えば、溶融押出機の入口側と出口側を190℃(最低温度)に設定した場合、最高温度は230℃~280℃の範囲に設定する。40℃以上とすることで、ガスが逃げずに効率的に発泡でき、また、目的とするスキン層111の厚みより薄いスキン層111が形成されてしまうことを防ぐことができる。90℃以下とすることで、スキン層111の肥大を防ぎ、また、金型との摩擦が大きくなって押し出せないといった事態を回避できる。更には、シリンダー内で熱可塑性樹脂と発泡剤とを溶融混練している際に発生するガスが中芯11用の溶融押出機21の入口と出口から逃げなくなり、気泡セル112を効率的に形成でき、所望の独立発泡率で発泡させることができる。
【0059】
(4)未硬化状管状物を形成する工程
準備した強化繊維23を引き取りつつ、含浸槽24に含浸操作ガイドを下降させて、強化繊維23に熱可塑性樹脂組成物又は熱硬化性樹脂組成物を含浸させ、これを絞り26の孔部の中央を走行する中芯11の外周に縦添いして、余剰の樹脂組成物を絞り26により段階的に絞り、中芯11に強化繊維23が縦添され、硬化前の中間層12を備えた未硬化状管状物を形成する。
【0060】
(5)外層13を溶融被覆する工程
前記未硬化状管状物を、外層13用の溶融押出機27のクロスヘッドに通して、外層13を形成する熱可塑性樹脂により、円環状に押出被覆し、外層13用の冷却槽28にて冷却することで、溶融被覆する。
【0061】
(6)繊維強化複合体1を得る工程
熱可塑性樹脂により被覆された未硬化状管状物を、含浸樹脂として熱硬化性樹脂を用いた場合は、硬化槽29に導いて、内部の未硬化状熱硬化性樹脂組成物を熱硬化し、繊維強化複合体1用の冷却槽30にて冷却することで、各層が密着一体化した繊維強化複合体1を得る。含浸樹脂として熱可塑性樹脂を用いた場合は、硬化槽29は不要であり、繊維強化複合体1用の冷却槽30にて冷却することで、各層が密着一体化した繊維強化複合体1を得る。
【0062】
なお、得られた繊維強化複合体1は、必要に応じて、引取機31等により引き取られてもよい。また、引き取られた繊維強化複合体1は、カット機32等により所定の長さにカットされてもよい。
【実施例0063】
以下、実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0064】
<繊維強化複合体の製造>
以下に、製造に用いた原料を記載する。
中芯の熱可塑性樹脂:ABS樹脂(東レ株式会社製、トヨラック(登録商標) 600-309N)
中間層の強化繊維:ガラス繊維(日東紡績株式会社製、(2200tex) RS220RL-510AH)
含浸樹脂:不飽和ポリエステル樹脂(日本ユピカ株式会社製、ユピカ(登録商標) 3464)
外層の熱可塑性樹脂:ABS樹脂(東レ株式会社製、トヨラック(登録商標) 600-309N)
発泡剤:化学発泡剤(永和化成工業株式会社製、パンスレン HB27A)
【0065】
実施例1~実施例6に係る繊維強化複合体は、
図1に示す実施形態と同様の構造であり、上述した本発明に係る製造方法と同様の方法により製造した。比較例1及び比較例2に係る繊維強化複合体は、
図1に示す実施形態と同様の構造であるがスキン層の厚みが本発明の範囲外であり、上述した本発明に係る製造方法においてスキン層の厚みを本発明の範囲外に調整した以外は、上述した本発明に係る製造方法と同様の方法により作製した。
【0066】
<評価>
作製した各繊維強化複合体について、スキン層の厚み、独立発泡率、真円性、及び水に浮かぶか否かについて、評価を行った。
【0067】
[スキン層の厚み]
マイクロスコープ(キーエンス製、VHXー5000)で断面(長手方向に対して直交する方向)から測定した。任意の場所において、倍率30で、中芯の外径となる仮想円とスキン層の界面で仮想円を描いて、任意の5点におけるその差から平均値を算出した。
【0068】
[独立発泡率]
まず、以下の方法で、連続気泡率を算出した。
各中芯から、ランダムに長手方向の長さ2cmのサンプルを3本切り取り、その重量(浸漬前重量) を測定した。次いで、サンプルを水に浸漬し、0.09MPa以下の真空下で3分間放置した後に取り出した。その後、表面及び断面の付着水分をよく拭き取り、サンプルの重量(浸漬後重量)を測定した。そして、下記式(1)から連続気泡率(%)を算出した。
F1={(M-m)/[m×(f-1) ]/S0}×100・・・(1)
F1:連続気泡率(%)
M:浸漬後重量(g)
m:浸漬前重量(g)
f:発泡倍率
S0:中芯の固体成分の比重
【0069】
次いで、得られた連続気泡率に基づき、下記式(2)から独立気泡率(%)を算出した。
F2=100-F1・・・(2)
F2:独立気泡率(%)
F1:連続気泡率(%)
【0070】
[真円性]
マイクロスコープ(キーエンス製、VHXー5000)で断面(長手方向に対して直交する方向)から測定した。具体的には、繊維強化複合体の端から10mmの位置の断面における異なった3点を5回測定した。そして、実測円上の3点(360度を3等分の目安で選択した3点)を真円で近似し、その直径を求め、得られた5点の直径の最大値及び最小値の差から真円度を求め、前記真円度を繊維強化複合体の直径を割って真円性とした。
【0071】
成形性の評価として、下記式(3)から真円性を算出し、下記の通りに評価した。
真円性=真円度÷繊維強化複合体の直径×100・・・(3)
〇:真円性が90%以上
×:真円性が90%未満
【0072】
[水に浮かぶか否か]
深さ30cmの水槽(水温:18℃)の底に繊維強化複合体の外層側が接触するように静置し、3分後に水に入れて浮かぶかを目視にて確認した。
【0073】
水に浮かぶか否かの評価として、下記の通りに評価した。
〇:繊維強化複合体が30秒以内に一部でも水面に接する
△:繊維強化複合体が30秒超3分以内に一部でも水面に接する
×:繊維強化複合体が3分以内に一部も水面に接しない
【0074】
<評価>
各評価結果を、下記表1及び表2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
<考察>
実施例1~実施例6の繊維強化複合体は、比較例1及び比較例2の繊維強化複合体と比較して、品質が向上していた。具体的には、真円性が良好であることから、優れた意匠性を有しており、また、水に浮かぶ性質を有することから、海洋資材、水処理用資材等の用途でも問題なく利用できることが分かった。したがって、熱可塑性樹脂からなる中芯と、樹脂により含浸した強化繊維を、前記中芯の外周に一体に結着してなる中間層と、前記中間層を被覆し、熱可塑性樹脂からなる外層と、を少なくとも備え、前記中芯は、一部又は全部が独立発泡した樹脂発泡体からなり、前記中芯における外周面の一部又は全部に形成されたスキン層の厚みは、3μm以上であり、且つ、前記中芯の直径に対して30%以下である、繊維強化複合体とすることで、品質が向上した繊維強化複合体を提供できることが分かった。
本発明によれば、品質が向上した、繊維強化複合体及びその製造方法を提供することができる。したがって、本発明に係る繊維強化複合体1は、金属製物品に代わる材料として、これまで以上に、自動車部材、電子部品、農林資材、建築材、家具、海洋資材、水処理用資材等の幅広い分野で利用されることが期待できる。また、3Dプリンタのフィラメント材料や、該材料を用いた成形体等へ転用されることも期待できる。