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特開2024-140753非接触加振システムおよび非接触加振方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140753
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】非接触加振システムおよび非接触加振方法
(51)【国際特許分類】
   G01M 7/02 20060101AFI20241003BHJP
   B06B 1/04 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01M7/02 B
B06B1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052070
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 丈雄
(72)【発明者】
【氏名】北原 大道
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 敏生
(72)【発明者】
【氏名】高田 潤一
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA07
5D107BB09
5D107CC09
5D107CD03
(57)【要約】
【課題】非磁性体の動翼列を備えた回転機械の回転振動試験において、動翼列を所望の節直径モードで精度よく加振する。
【解決手段】回転機械の非磁性体の動翼列に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させる加振器と、動翼列の回転数を検出するための回転数センサと、加振器を制御するコントローラと、を備える。コントローラは、回転数センサの検出結果から得られる動翼列の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finのローレンツ力を加振器に発生させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転機械の非磁性体の動翼列に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させる加振器と、
前記動翼列の回転数を検出するための回転数センサと、
前記加振器を制御するコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記回転数センサの検出結果から得られる前記動翼列の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finの前記ローレンツ力を前記加振器に発生させる、
非接触加振システム。
【請求項2】
前記動翼列に作用させるローレンツ力を増強する増強部材をさらに備え、
前記加振器は、前記動翼列に取り付けられた前記増強部材に対して変動磁界を印加する、
請求項1に記載の非接触加振システム。
【請求項3】
前記増強部材は、前記動翼列に対して励起する振動モードに応じて、前記動翼列における取り付け位置が異なる、
請求項2に記載の非接触加振システム。
【請求項4】
前記加振器は、前記動翼の一方表面と対向する第1磁極と、前記動翼の他方表面と対向する第2磁極と、を有し、前記第1磁極と前記第2磁極との間に、前記動翼を貫通する変動磁界を形成する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非接触加振システム。
【請求項5】
磁極と前記動翼との間のギャップの大きさ、および、磁極のサイズ、の少なくとも一方が、前記第1磁極と前記第2磁極とで異なっている、
請求項4に記載の非接触加振システム。
【請求項6】
前記加振器は、
永久磁石と、
前記永久磁石の磁極面を前記動翼の表面に対して接近および離隔させることにより、前記動翼に印加する変動磁界を形成する駆動部と、を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非接触加振システム。
【請求項7】
前記加振器は、電磁石を含み、
前記コントローラは、前記周波数finと等しい電流周波数の加振電流を前記加振器に出力する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の非接触加振システム。
【請求項8】
非磁性体の動翼列を有する回転機械を回転させる工程と、
前記動翼列の回転数を検出する工程と、
回転中の前記動翼列に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させる工程と、を備え、
前記ローレンツ力を作用させる工程において、前記動翼列の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finの前記ローレンツ力を発生させる、
非接触加振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非接触加振システムおよび非接触加振方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンなどの産業用タービンでは、性能試験の1つとして回転振動試験が実施されている。回転振動試験では、回転中のタービンの動翼を、加振器により非接触で励振(加振)する。回転中に励振された動翼の振動を、検出器により検出することにより、動翼の振動特性を得る(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1は、加振器による加振の具体例として、タービンの動翼を、電磁石からなる加振器により吸引する技術を開示する。特許文献1では、この加振器へ出力する加振信号を、動翼列の回転周波数、励起する節直径モードのモード数、およびそのモードでの動翼の固有振動数に基づいて決定することで、動翼列をN節直径モードで加振できるようにする技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-52975号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に例示された加振技術は、タービンの動翼を、電磁石からなる加振器により吸引するという構成上、動翼が磁性体に限定され、チタン翼などの非磁性体の動翼を備えた回転機械には適用しにくい。そこで、非磁性体の動翼列を備えた回転機械についても、動翼列を所望の節直径モードで精度よく加振できるようにすることが望まれる。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、非磁性体の動翼列を備えた回転機械の回転振動試験において、動翼列を所望の節直径モードで精度よく加振することが可能な非接触加振システムおよび非接触加振方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示の非接触加振システムは、回転機械の非磁性体の動翼列に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させる加振器と、前記動翼列の回転数を検出するための回転数センサと、前記加振器を制御するコントローラと、を備え、前記コントローラは、前記回転数センサの検出結果から得られる前記動翼列の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finの前記ローレンツ力を前記加振器に発生させる。
【0008】
また、本開示の非接触加振方法は、非磁性体の動翼列を有する回転機械を回転させる工程と、前記動翼列の回転数を検出する工程と、回転中の前記動翼列に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させる工程と、を備え、前記ローレンツ力を作用させる工程において、前記動翼列の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finの前記ローレンツ力を発生させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示の非接触加振システムおよび非接触加振方法によれば、非磁性体の動翼列を備えた回転機械の回転振動試験において、動翼列を所望の節直径モードで精度よく加振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、非接触加振システムの全体構成を表す概略図である。
図2図2は、励振装置を、回転軸に沿った方向に見た説明図である。
図3図3は、動翼列が8節直径モードで面外方向に振動している状態を示す模式図である。
図4図4は、コントローラの構成を示すブロック図である。
図5図5は、第1実施形態における加振器および動翼列を回転軸に沿った方向から見た模式図である。
図6図6は、図5のVI-VI線に沿った断面模式図である。
図7図7は、第1実施形態の非接触加振方法を示すフローチャートである。
図8図8は、第1実施形態の変形例による加振器の構成を示す模式図である。
図9図9は、第2実施形態の加振器の構成を示す模式図である。
図10図10は、第2実施形態の第1変形例による加振器を示す模式図である。
図11図11は、第2実施形態の第2変形例による加振器を示す模式図である。
図12図12は、第3実施形態の加振器の構成を示す模式図である。
図13図13は、第4実施形態における加振器、増強部材および動翼列を回転軸に沿った方向から見た模式図である。
図14図14は、図13のXIII-XIII線に沿った断面模式図である。
図15図15は、第5実施形態の増強部材の第1の取付例を示す説明図である。
図16図16は、第5実施形態の増強部材の第2の取付例を示す説明図である。
図17図17は、第5実施形態の増強部材の第3の取付例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0012】
[第1実施形態]
<非接触加振システム>
図1は、非接触加振システムの全体構成を表す概略図である。非接触加振システム10は、励振装置20と、コントローラ30とを備える。非接触加振システム10は、蒸気タービンなどの産業用のタービン(回転機械)90に対して、回転振動試験を行うシステムである。
【0013】
図1に示すように、タービン90は回転軸91と動翼列92とを有する。動翼列92は、回転軸91に対して放射状に配置された多数枚の動翼93を含む。動翼列92は、少なくとも動翼93の部分が非磁性体により形成されている。また、動翼列92は、電気伝導体により形成されている。非磁性導体の材料は、例えばチタン材(チタンまたはチタン合金)である。
【0014】
タービン90の回転試験振動をする場合、動翼列92を試験室110内に配置した状態で、回転軸91を回転支持柱111aおよび111bにより回転自在に支持する。試験室110内には、動翼列92に対面する状態で励振装置20が配置される。励振装置20は、動翼列92から、回転軸91の軸方向に間隔を隔てて、動翼列92とは非接触の状態で配置されている。また、動翼列92の回転数及び回転方向のゼロ位置を検出する回転数センサ40が、回転軸91の近傍に配置されている。回転数センサ40は、回転軸91の回転角度を検出することにより、回転軸91と一体回転する動翼列92の回転数及びゼロ位置を検出する。
【0015】
回転振動試験をする際には、図示しない回転駆動源により回転軸91に回転力を入力して、タービン90を試験に必要な回転数で回転させる。励振装置20が、コントローラ30による制御の下、回転中の動翼列92に対して加振を行う。
【0016】
<励振装置>
図2は、励振装置20を、回転軸91に沿った方向に見た説明図である。
【0017】
図2に示すように、励振装置20は、一対の脚台21により両持ち支持された円環状の支持体22を備える。支持体22の内周側を、回転軸91(図1参照)が通過している。支持体22には、加振器23と、受振器24とが設けられている。加振器23は、1つまたは複数設けることができる。受振器24は、1つまたは複数設けることができる。図2では、加振器23および受振器24が、8個ずつ設けられた例を示す。
【0018】
加振器23は、タービン90の非磁性体の動翼列92(図1参照)を、非接触で加振する。加振器23は、タービン90の非磁性体の動翼列92に変動磁界を印加してローレンツ力を作用させるように構成されている。第1実施形態の加振器23は、後述する電磁石60を含み、電流供給により変動磁界を発生する。図2の例では、複数の加振器23が、回転軸91周りの周方向(動翼列92の回転方向)に沿って間隔を隔てて配列されている。
【0019】
受振器24は、動翼93の振動状態を非接触で検出する。図2の例では、複数の受振器24が、回転軸91周りの周方向に沿って間隔を隔てて配列されている。受振器24は、それぞれの動翼93に取り付けられるひずみゲージなどにより接触方式で振動検出してもよい。
【0020】
回転振動試験をする際、各加振器23は、回転中のタービン90(動翼列92)に対して、予め設定した振動モードで動翼93が面外方向に振動するように、加振力(ローレンツ力)を作用させる。なお、面外方向とは、動翼列92における各動翼93が配列された面とは交差する方向である。動翼列92が振動すると、各受振器24からは、そのときの振動状態に応じた検出信号がコントローラ30に出力される。コントローラ30は、回転数センサ40および受振器24の検出信号に基づいて、動翼列92の各動翼93の振動状態(振動モード等)を検出することができる。
【0021】
動翼列92の面外方向の振動は、振動の節が径方向に沿った直線状に形成される節直径振動モードと、振動の節が円周方向に沿った同心円状に形成される節円振動モードと、の組み合わせで把握できる。図3は、動翼列92が8節直径モード(節直径数8、曲げ一次モード)で面外方向に振動している状態を示す模式図である。図3では、振動がない状態の動翼列92に対して、振動状態の動翼列92の形状FLを重畳して示している。
【0022】
<コントローラの構成>
図4は、コントローラ30の構成を示すブロック図である。図4を参照して、コントローラ30の構成について説明する。コントローラ30は、ソフトウエア(プログラム)とハードウエア(コンピュータ)とが協働して情報処理を行う情報処理装置である。
【0023】
コントローラ30は、加振器23を制御する。コントローラ30は、回転数センサ40および受振器24の検出信号に基づいて加振器23の制御を行う。図4では、非接触加振システム10は、M個の加振器23と、M個の受振器24とを備える。Mは、2以上の自然数である。つまり、図2はM=8の例を示したものである。以下、M個の加振器23、受振器24を個別に特定する場合、加振器23-1~23-Mといった形態で枝番号を付して説明し、個別に特定する必要がない場合には単に加振器23と総称する。
【0024】
コントローラ30は、通電指令部31、振動モード検出部32、表示部33、統合演算・指令部34、周波数・位相演算部35、加振タイミング演算部36、加振波形選択部37、調整位相演算部38を備える。通電指令部31は、加振器23-1~23-Mに個別に設けられており、これらを通電指令部31-1~31-Mとする。
【0025】
コントローラ30は、入力部50から、今回試験する振動モード(節直径モード)を示す節直径数N(但し、Nは整数)を予め取得する。コントローラ30は、節直径数Nで示す振動モード(N節直径モード)で動翼列92が振動するように、通電指令部31-1~31-Mから加振指令信号a1~aMを出力する。
【0026】
加振指令信号a1~aMは、アンプ51-1~51-Mにより増幅される。アンプ51-1~51-Mは、加振指令信号a1~aMを増幅した加振電流A1~AMを加振器23-1~23-Mに供給する。電流センサ52-1~52-Mは、加振電流A1~AMを検出してフィードバック信号を通電指令部31-1~31-Mにフィードバックする。通電指令部31-1~31-Mは、フィードバック信号を受けてフィードバック制御をすることにより、加振指令信号a1~aMの波形、出力タイミング、周波数、位相を調整する。
【0027】
受振器24-1~24-Mから出力された検出信号b1~bMは、アンプ53-1~53-Mにより増幅され、振動モード検出部32に供給される。振動モード検出部32は、検出信号b1~b8に基づき、動翼列92の振動モードを検出する。検出した振動モード波形は、表示部33に表示される。
【0028】
回転数センサ40は、タービン90の回転数信号R及びゼロ位置信号Zを出力する。回転数信号R及びゼロ位置信号Zはコントローラ30に送られる。
【0029】
周波数・位相演算部35は、入力部50から取得された節直径数Nに基づき、加振指令信号a1~aMの周波数finを決定する。周波数・位相演算部35は回転数センサ40の検出結果から得られる動翼列92の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼93の固有振動数fとを用いて、下式(1)により周波数finを決定する。
in=frpm×N±f ・・・(1)
【0030】
加振タイミング演算部36は、回転数センサ40から出力された回転数信号Rおよびゼロ位置信号Zに基づいて、回転する動翼列92の同じ位置に加振力を加えるように、回転毎の加振指令信号a1~aMの出力タイミングを決定する。
【0031】
加振波形選択部37は、加振指令信号a1~aMの信号波形を、予め設定された複数波形の中から選択する。信号波形は、例えば正弦波形、矩形波系、正弦半波などである。加振波形選択部37は、受振器24の検出信号b1~bMに基づいて、振動モード波形の振幅を最も大きくすることが可能な信号波形を選択する。
【0032】
調整位相演算部38は、加振器23が発生させる加振力の応答遅れ、電流センサ52-1~52-Mの検出応答遅れ、回転数センサ40の検出応答遅れ、などの各種の応答遅れを補正するための調整位相を算出する。
【0033】
統合演算・指令部34は、各演算部の算出結果に基づいて、統合演算・指令部34は、通電指令部31-1~31-Mの信号出力を制御する。統合演算・指令部34は、周波数・位相演算部35により決定された加振周波数fin、加振波形選択部37により選択された信号波形、調整位相演算部38により算出された調整位相、加振タイミング演算部36により決定された出力タイミングで、通電指令部31-1~31-Mから加振指令信号a1~aMを出力させる。
【0034】
このような構成により、コントローラ30は、回転数センサ40の検出結果から得られる動翼列92の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼93の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finのローレンツ力を加振器23に発生させるように、加振器23を制御する。コントローラ30は、周波数finと等しい電流周波数の加振電流A1~AMを加振器23に出力する。
【0035】
<加振器の具体的な構成および配置>
図5は、第1実施形態における加振器23および動翼列92を回転軸に沿った方向から見た模式図である。図6は、図5のVI-VI線に沿った断面模式図である。図5および図6を参照して、加振器23の具体的な構成を説明する。なお、ここでは説明のため便宜的に、複数の加振器23-1~23-Mのうち、1つのみを示して説明する。
【0036】
図5に示すように、加振器23は、動翼列92と対向するように配置されている。加振器23は、動翼列92の径方向において、動翼列92の外径側に設けられている。より具体的には、図6に示すように、加振器23は、動翼列92の外周端部近傍の部分と対向する。
【0037】
加振器23は、電磁石60を含む。電磁石60は、磁心61とコイル62とを有する。図6の例では、電磁石60は、C字状(またはU字状)の磁心61の2つの端面により、第1磁極63と第2磁極64と有する。第1磁極63と第2磁極64とは、互いに異なる極性の磁極である。図6の例では、磁心61に対して2つのコイル62が巻回されているが、コイル62は1つでもよい。C字状の電磁石60の第1磁極63と第2磁極64とは、動翼列92の表面に沿って並び、動翼列92に対してそれぞれ対向している。
【0038】
これにより、加振器23は、第1磁極63および第2磁極64の一方(N極)から出て、動翼列92の動翼93内を通過して、第1磁極63および第2磁極64の他方(S極)に向かい、磁心61を通過して一方の磁極に戻る経路の磁界70のループ(磁気回路)を形成する。動翼93が非磁性体であるので、磁界70による磁気吸引力は、動翼93には作用しない。
【0039】
加振器23は、例えば、コントローラ30からの交流の加振電流A1~AMに応じて、磁界70の向きを交互に逆転させる変動磁界を動翼列92に印加する。磁界70の変化により、磁界70が印加された動翼93には、ローレンツ力71が発生する。このローレンツ力71により、動翼93が加振され、その結果厚み方向の振動が励起される。なお、ここでは、動翼93の厚み方向は、動翼列92の回転軸91の軸方向と同義として説明する。
【0040】
磁界70が変化することにより、動翼93は、加振器23(電磁石60)から離れる方向と加振器23(電磁石60)に近づく方向とに交互に加振される。ローレンツ力71の周波数(加振周波数)は、電磁石60に供給される電流周波数(加振電流A1~AMの周波数)と一致する。
【0041】
動翼列92は回転しているので、静止している加振器23は、複数の動翼93の各々が加振器23と対向する位置に到達するタイミングで、対向する動翼93に加振力(ローレンツ力71)を作用させる。そのため、動翼列92の回転周波数frpmと、加振周波数(電流周波数)finと、加振したい節直径モードの節直径数Nとそのモードにおける動翼93の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fとなる加振力を作用させることで、動翼列92に所望の節直径数Nの節直径モードによる固有振動数fiの共振振動を励起させることができる。
【0042】
なお、図2においては、複数の加振器23が周方向に間隔を隔てて配置されている。そのため、各加振器23は、いずれか1つの加振器23の角度位置を基準(位相差0)として、基準角度位置からの角度位置の差分に相応した位相差で加振することにより、動翼列92に所望の節直径数Nの節直径モードで振動させるための加振力を同期して印加できる。そのため、図4に示したコントローラ30(周波数・位相演算部35)は、節直径数Nと、その加振器23の基準角度からの角度ずれγとに基づく位相ずれ(N×γ)を付加した加振指令信号a1~aM(加振電流A1~AM)を、各加振器23-1~23-Mに供給する。
【0043】
以上により、たとえば節直径数N=8を入力した場合、複数の加振器23の各々による加振力(ローレンツ力71)によって、図3に示したような8節直径モードの振動を動翼列92に生じさせることができる。
【0044】
<非接触加振方法>
図7は、第1実施形態の非接触加振方法を示すフローチャートである。非接触加振方法は、上述した非接触加振システム10により実行される。
【0045】
次に、非接触加振システム10は、図示しない回転駆動源により、非磁性体の動翼列92を有するタービン90を回転させる(工程S1)。そして、回転数センサ40が、回転中の動翼列92の回転数を検出する(工程S2)。
【0046】
次に、加振器23(電磁石60)が、コントローラ30の制御の下、回転する動翼列92に変動磁界(磁界70)を印加してローレンツ力71を作用させる(工程S3)。この工程S3において、コントローラ30は、回転数センサ40の検出結果から得られる動翼列92の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼93の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finのローレンツ力71を加振器23に発生させるように、加振器23を制御する。なお、節直径数Nは入力部50から予め取得され、固有振動数fはタービン90の構造から既知である。これにより、動翼列92に、予め設定したN節直径モードの面外振動が励起される。
【0047】
回転振動試験では、コントローラ30は、動翼93に取り付けた各種センサ(図示省略)により、回転している動翼列92がN節直径モードで振動しているときの動翼93の振動応答を取得し、動翼列92の振動特性(固有振動数、減衰など)を分析する。
【0048】
<第1実施形態の変形例>
図8は、第1実施形態の変形例による加振器23の構成を示す模式図である。加振器23が有する電磁石は、C字状以外の形状でもよい。図8では、I字状の電磁石60Aの例を示す。電磁石60Aは、直線棒状の磁心61Aと、磁心61Aの中心軸周りに巻回されたコイル62とを含む。加振器23は、磁心61Aの一端で動翼93に対向する第1磁極63と、磁心61Aの他端で動翼93とは反対側を向く第2磁極64とを有する。図8の他、加振器23が有する電磁石は、例えば、E字状の電磁石(図示せず)であってもよい。
【0049】
[第2実施形態]
図9は、第2実施形態の加振器23の構成を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0050】
第2実施形態では、加振器23の構成のみが上記第1実施形態と異なり、その他の点は上記第1実施形態と同じである。
【0051】
図9に示すように、加振器23は、動翼93の一方表面93aと対向する第1磁極63と、動翼93の他方表面93bと対向する第2磁極64と、を有し、第1磁極63と第2磁極64との間に、動翼93を貫通する変動磁界(磁界70)を形成する。なお、動翼93の一方表面93aと他方表面93bとは、動翼列92の回転軸91に沿った方向に互いに反対側を向く各表面である。
【0052】
具体的には、加振器23は、C字状の磁心61とコイル62とを有する電磁石60Bを含む。第1磁極63は、磁心61の2つの端面のうち動翼93の一方表面93aと対向する端面である。第2磁極64は、磁心61の2つの端面のうち動翼93の他方表面93bと対向する端面である。第1磁極63は一方表面93aとの間にギャップG1を隔てて配置され、第2磁極64は他方表面93bとの間にギャップG2を隔てて配置されている。ギャップG1の大きさとギャップG2の大きさとは、磁界70を印加していない状態で、ほぼ等しい。第1磁極63と第2磁極64とは、動翼93を介して、回転軸91に沿った方向に互いに対向している。
【0053】
磁心61は、回転軸91の径方向において、動翼93の先端部の外側を回り込んで、第1磁極63と第2磁極64とに接続している。つまり、電磁石60Bは、動翼93の先端部を非接触で囲むようにC字状に形成されている。
【0054】
これにより、加振器23は、第1磁極63および第2磁極64の一方(N極)から出て、動翼列92の動翼93内を厚み方向に貫通して、第1磁極63および第2磁極64の他方(S極)に向かい、磁心61を通過して一方の磁極に戻る経路の磁界70のループ(磁気回路)を形成する。加振器23は、例えばコントローラ30からの交流の加振電流A1~AMに応じて、磁界70の向きを交互に逆転させる変動磁界を動翼列92に印加する。磁界70の変化により、磁界70が印加された動翼93には、ローレンツ力71が発生する。磁界70の変化に応じてローレンツ力71の向きが変化することにより、動翼93が加振される。
【0055】
<第2実施形態の変形例>
図10は、第2実施形態の第1変形例による加振器23を示す模式図である。図11は、第2実施形態の第1変形例による加振器23を示す模式図である。
【0056】
図10に示す第1変形例では、磁極と動翼93との間のギャップの大きさが、第1磁極63と第2磁極64とで異なっている。すなわち、第1変形例では、第1磁極63と一方表面93aとの間のギャップG1の大きさと、第2磁極64と他方表面93bとの間のギャップG2の大きさとが、異なっている。図10ではギャップG1がギャップG2よりも大きい例を示しているが、ギャップG1がギャップG2よりも小さくてもよい。ギャップの大きさを一方表面93a側と他方表面93b側とで異ならせることにより、ギャップの大きさが等しい場合と比べて磁界70の変化を大きくできる。
【0057】
図11に示す第2変形例では、磁極のサイズが、第1磁極63と第2磁極64とで異なっている。すなわち、第2変形例では、第1磁極63の磁極面に沿った断面積(磁極面の面積)と、第2磁極64の磁極面に沿った断面積(磁極面の面積)とが、異なっている。図11では磁心61のうち、第1磁極63側の部分65のサイズを、第2磁極64側の部分66のサイズよりも大きくした例を示している。第1磁極63側の部分65のサイズを、第2磁極64側の部分66のサイズよりも小さくしてもよい。磁極のサイズを一方表面93a側と他方表面93b側とで異ならせることにより、磁極のサイズが等しい場合と比べて磁界70の変化を大きくできる。
【0058】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態の加振器23Aの構成を示す模式図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
第3実施形態では、加振器23Aの構成のみが上記第1実施形態と異なり、その他の点は上記第1実施形態と同じである。
【0060】
図12に示すように、加振器23Aは、永久磁石161と、永久磁石161を移動させる駆動部162と、を含む。
【0061】
永久磁石161は、磁極面161aが動翼93の表面に所定のギャップを隔てて対向するように配置されている。永久磁石161は、一方の磁極面161a(N極)から出て、動翼列92の動翼93内を通過して、他方の磁極面161b(S極)に向かう経路の磁界70を形成する。図12の例では、永久磁石161は、磁極面161a、161bが両端に形成された棒状磁石であるが、永久磁石161の形状は特に限定されず、C字(U字)状などでもよい。
【0062】
駆動部162は、永久磁石161の磁極面161aを動翼93の表面に対して接近および離隔させることにより、動翼93に印加する変動磁界を形成するように構成されている。すなわち、図12の例では、駆動部162は、永久磁石161を回転軸91に沿った方向に、往復変位させる。それにより、磁極面161aと動翼93の表面とのギャップが変化する。ギャップの変化により、動翼93に変動磁界が印加される。駆動部162は、直動アクチュエータにより構成されうる。直動アクチュエータは、電動モーター、圧電素子、ソレノイドなどを駆動源として採用できる。なお、第3実施形態では、コントローラ30からの加振指令信号a1~aM(加振電流A1~AM)は、駆動部162の駆動信号(駆動電流)である。駆動部162は、加振指令信号a1~aM(加振電流A1~AM)と同じ周波数で永久磁石161を往復変位させる。
【0063】
加振器23Aは、例えばコントローラ30からの交流の加振指令信号a1~aMに応じて、動翼93に印加する磁界70の強さを変化させる変動磁界を動翼列92に印加する。磁界70の変化により、磁界70が印加された動翼93には、ローレンツ力71が発生する。磁界70の変化に応じてローレンツ力71の向きが変化することにより、動翼93が加振される。
【0064】
[第4実施形態]
図13は、第4実施形態における加振器23、増強部材80および動翼列92を回転軸91に沿った方向から見た模式図である。なお、上述した第1実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0065】
第4実施形態に係る非接触加振システム10は、図13に示すように、動翼列92に作用させるローレンツ力71を増強する増強部材80をさらに備える。増強部材80は、非磁性導体からなる。増強部材80の材料組成は、動翼93の材料組成とは異なる。増強部材80は、同じ磁界変化が印加された場合に、動翼93に発生するローレンツ力よりも大きなローレンツ力が生じる材料(磁気抵抗が大きい材料)により構成されている。動翼93がチタン材料で構成されている場合、増強部材80は、例えば銅材料(銅又は銅合金)で構成される。
【0066】
増強部材80は、板状形状を有し、動翼93の表面に取り付けられる。増強部材80は、動翼列92を構成する複数の動翼93の各々に、個別に取り付けられている。動翼列92における増強部材80の径方向の位置は、加振器23と対向する位置となるように設定される。つまり、各増強部材80の回転軸91からの径方向距離が、加振器23の回転軸91からの径方向距離と略一致している。
【0067】
増強部材80の大きさは、特に限定されないが、増強部材80は、例えば動翼93の表面のうち、加振器23からの磁界70が通過する領域を包含する範囲で、なるべく小さくする。増強部材80の厚みについても同様である。増強部材80を取り付けた試験時と、増強部材80を取り外した実運用時との間の、タービン90の振動特性の誤差を小さくするためである。
【0068】
図14は、図13のXIII-XIII線に沿った断面模式図である。
【0069】
加振器23は、電磁石60を含み、図6に示した第1実施形態と同様に、コントローラ30からの加振電流A1~AMに応じて変動磁界を発生する。第4実施形態では、加振器23により形成される磁界70が、増強部材80内を通過する。図6では、磁界70は、増強部材80と動翼93との両方を通過する。磁界70の変化により、磁界70が印加された増強部材80および動翼93に、ローレンツ力71が発生する。増強部材80は、動翼93よりもローレンツ力71を発生させやすいため、増強部材80を設けない場合と比べて、動翼93に作用させるローレンツ力71(加振力)が大きくなる。
【0070】
第4実施形態のその他の点は上記第1実施形態と同じである。
【0071】
[第5実施形態]
図15は、第5実施形態の増強部材の第1の取付例を示す説明図である。図16は、第5実施形態の増強部材の第2の取付例を示す説明図である。図17は、第5実施形態の増強部材の第3の取付例を示す説明図である。なお、上述した第4実施形態と同様の機能を有する部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0072】
第5実施形態では、増強部材80は、動翼列92に対して励起する振動モードに応じて、動翼列92における取り付け位置が異なる。そして、加振器23が、増強部材80の取り付け位置に応じて、増強部材80と対向する位置に配置される。
【0073】
具体的には、図15に示すように、動翼列92に対して、1次曲げモードの振動を励起したい場合、増強部材80が、動翼93の表面のうち、回転軸91の径方向における先端部に取り付けられる。図15では、増強部材80が、動翼93の表面であって、径方向の先端縁TEを含む範囲に取り付けられている。
【0074】
加振器23が、回転軸91の軸方向に沿って増強部材80と対向する位置に配置される。すなわち、増強部材80の回転軸91からの径方向距離が、加振器23の回転軸91からの径方向距離と略一致している。これにより、加振器23が、増強部材80を介して、動翼93の径方向の先端部を加振する。その結果、動翼列92の個々の動翼93に1次曲げ振動モード(点線部参照)が励起される。
【0075】
図16に示すように、動翼列92に対して、2次曲げモードの振動を励起したい場合、増強部材80が、動翼93の表面のうち、先端部よりも回転軸91側(径方向内側)にずれた位置に取り付けられる。より具体的には、動翼93の表面のうち、動翼93の2次曲げ振動モードの腹(振幅ピークPk)の位置を含む範囲に、増強部材80が取り付けられる。
【0076】
加振器23が、回転軸91の軸方向に沿って増強部材80と対向する位置に配置される。これにより、加振器23が、増強部材80を介して、動翼93の2次曲げ振動モードのピーク位置を加振する。その結果、動翼列92の個々の動翼93に2次曲げ振動モード(点線部参照)が励起される。
【0077】
3次以降の曲げ振動モードについても、同様に、その振動モードの振幅ピークとなる位置に増強部材80を取り付けて加振することによって、その振動モードを励起できる。振幅ピークとなる位置が複数ある場合、最も径方向外側の位置を選択してよい。複数の位置それぞれに増強部材80を取り付けて、それぞれ加振器23によって加振してもよい。
【0078】
図17は、1つの動翼93を、動翼93の延びる方向(つまり、動翼列92の径方向)から見た場合の、増強部材80の取り付け位置を示している。動翼93のねじり振動モードを励起したい場合、図17に示すように、増強部材80が、動翼93の表面のうち、周方向(回転方向)における端部に取り付けられる。図17では、増強部材80が、動翼93の表面であって、周方向の一端縁SEを含む範囲に取り付けられている。増強部材80の形成範囲は、動翼93の周方向の中央から一端縁SE側の範囲に収まる。
【0079】
加振器23が、回転軸91の軸方向に沿って増強部材80と対向する位置に配置される。動翼列92の回転中、加振器23から動翼93に対して変動磁界を印加すると、動翼93が加振器23の正面を通過するタイミングで加振力(ローレンツ力71)が動翼93に作用する。動翼93の周方向における一端縁SE側のみに増強部材80が設けられることにより、周方向において、増強部材80の配置箇所では、増強部材80の非配置箇所と比べて相対的に大きな加振力が作用する。つまり、動翼93の周方向に沿った加振力の分布に、偏りが生じる。その結果、動翼93のねじり振動モードが励起される。
【0080】
なお、上記第4実施形態や図15図16の曲げ振動モードの固有振動数と、図17のねじり振動モードの固有振動数とは、一般に異なる。そのため、加振力(ローレンツ力71)の周波数finを、励起したい振動モードの固有振動数に応じて設定することによって、曲げ振動モードやねじり振動モードなどの所望の振動モードのみを励起することが可能である。
【0081】
第5実施形態のその他の点は上記第4実施形態と同じである。
【0082】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係る非接触加振システムは、タービン(回転機械)90の非磁性体の動翼列92に変動磁界を印加してローレンツ力71を作用させる加振器23と、動翼列92の回転数を検出するための回転数センサ40と、加振器23を制御するコントローラ30と、を備え、コントローラ30は、回転数センサ40の検出結果から得られる動翼列92の回転周波数frpmと、N節直径モードでの動翼93の固有振動数fとを用いて、fin=frpm×N±fにより表される周波数finのローレンツ力71を加振器23に発生させる。
【0083】
第1の態様に係る非接触加振システムによれば、非磁性体の動翼列92であっても、変動磁界によるローレンツ力71を加振力として作用させることができる。そして、fin=frpm×N±fにより表される周波数finのローレンツ力71を加振器23に発生させることによって、所望の節直径数Nの節直径モードにおける共振振動を励起するのに適した加振力(ローレンツ力71)を動翼列92に対して印加できるので、非磁性体の動翼列92を備えた回転機械の回転振動試験において、動翼列92を所望の節直径モードで精度よく加振することができる。
【0084】
第2の態様に係る非接触加振システムは、動翼列92に作用させるローレンツ力71を増強する増強部材80をさらに備え、加振器23は、動翼列92に取り付けられた増強部材80に対して変動磁界を印加する。これにより、増強部材80を介して動翼列92に大きな加振力(ローレンツ力71)を作用させることができる。そのため、動翼列92に所望の大きさの振幅を発生させるのに要する投入エネルギーを低減できる。
【0085】
第3の態様に係る非接触加振システムでは、増強部材80は、動翼列92に対して励起する振動モードに応じて、動翼列92における取り付け位置が異なる。これにより、増強部材80の取り付け位置を適切に決めて、その位置の増強部材80を介して動翼列92を加振することにより、動翼列92に所望の振動モード(1次曲げ振動モード、2次曲げ振動モード、ねじり振動モードなど)の振動を発生させることができる。
【0086】
第4の態様に係る非接触加振システムでは、加振器23は、動翼93の一方表面93aと対向する第1磁極63と、動翼93の他方表面93bと対向する第2磁極64と、を有し、第1磁極63と第2磁極64との間に、動翼93を貫通する変動磁界を形成する。第1磁極63と第2磁極64との間の磁束の略全部が動翼93を通過するので、動翼93に印加する磁界の変動(磁束の変化)を大きくすることができる。
【0087】
第5の態様に係る非接触加振システムでは、磁極と動翼93との間のギャップ(G1、G2)の大きさ、および、磁極のサイズ、の少なくとも一方が、第1磁極63と第2磁極64とで異なっている。これにより、磁束の変化を、効果的に大きくすることができる。
【0088】
第6の態様に係る非接触加振システムでは、加振器23Aは、永久磁石161と、永久磁石161の磁極面を動翼93の表面に対して接近および離隔させることにより、動翼93に印加する変動磁界を形成する駆動部162と、を含む。電磁石を用いなくても、永久磁石161を機械的に加振することによって、動翼列92にローレンツ力71を作用させることができる。
【0089】
第7の態様に係る非接触加振システムでは、加振器23は、電磁石60を含み、コントローラ30は、周波数finと等しい電流周波数の加振信号を加振器23に出力する。ここで、磁性体の動翼93を電磁石60により磁気吸引する加振方法の場合、電磁石60に入力する交流電流の正負どちらでも動翼93に対して吸引力が作用し、加振力の周波数が電磁石60に入力する加振電流A1~AMの周波数の2倍になるのに対して、ローレンツ力71を発生させる本態様では、交流電流の正負で逆方向の磁気変動(ローレンツ力71)が生じることになり、電流周波数と加振力(ローレンツ力71)の周波数とが等しくなる。そこで、周波数finと等しい電流周波数の加振電流A1~AMを加振器23に出力することで、所望の周波数finの加振力を動翼列92に印加することができる。
【0090】
[変形例]
なお、上述した第4、第5実施形態において、動翼列92に増強部材80を取り付ける例を示したが、第1実施形態~第3実施形態およびこれらの変形例の各構成に対して、動翼列92に増強部材80を取り付ける構成を適用してもよい。特に第2実施形態では、増強部材80を動翼93の一方表面93aと他方表面93bとのそれぞれに取り付けてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態では、回転機械を蒸気タービンなどの産業用のタービンとして説明したが、回転機械は、例えば、圧縮機のタービンや、軸流式ポンプのインペラであってもよく、他の回転機械であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10 非接触加振システム
23 加振器
30 コントローラ
40 回転数センサ
60、60A、60B 電磁石
63 第1磁極
64 第2磁極
71 ローレンツ力
80 増強部材
90 タービン(回転機械)
92 動翼列
93 動翼
93a 一方表面
93b 他方表面
161 永久磁石
161a 磁極面
162 駆動部
G1、G2 ギャップ
A1~AM 加振電流
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17