(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140754
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】同期投入装置及び同期投入方法
(51)【国際特許分類】
H02J 3/42 20060101AFI20241003BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H02J3/42
H02J3/38 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052071
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石黒 絢也
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和樹
(72)【発明者】
【氏名】泉田 悠貴
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066HA03
5G066HB09
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】迅速に同期投入を実行することができる同期投入装置等を提供する。
【解決手段】第1の電源装置が接続される電力系統に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置であって、前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部を、備え、前記制御部は、前記第1の電源装置を制御して前記電力系統の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統に投入する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電源装置が接続される電力系統に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置であって、
前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部を、備え、
前記制御部は、
前記第1の電源装置を制御して前記電力系統の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統に投入する同期投入装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記系統側同期制御において、前記電力系統の出力特性値が、時間当たりの変動量が制限されるように、前記第1の電源装置を制御する請求項1に記載の同期投入装置。
【請求項3】
前記第1の電源装置は、蓄電池とインバータとを含む蓄電システムであり、
前記第2の電源装置は、発電機であり、
前記制御部は、前記蓄電システムの前記インバータを制御する請求項1に記載の同期投入装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第2の電源装置を制御して前記第2の電源装置の出力特性値を変化させ、前記電力系統の出力特性値との同期をとる装置側同期制御を実行し、
前記第2の電源装置の前記電力系統への同期接続時における前記第1の電源装置の状態に基づいて、前記系統側同期制御及び前記装置側同期制御の少なくとも一方を実行するか否かを判断する請求項1に記載の同期投入装置。
【請求項5】
第1の電源装置が接続される電力系統に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置によって実行される同期投入方法であって、
前記同期投入装置は、
前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部を、備え、
前記制御部が、
前記第1の電源装置を制御して前記電力系統の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統に投入することを、実行する同期投入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、同期投入装置及び同期投入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、二つの異なる電力系統を連系する遮断器に対し、系統間の電圧差、位相差、周波数差を検出し、遮断器に同期投入指令を出力する同期検定装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。同期検定装置は、電力系統側と発電機側から得られた電圧信号に基づいて同期投入指令を生成して遮断器に入力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、同期投入を行う場合、系統間の電圧、周波数、位相を一致させる必要がある。この場合、発電機側の系統を制御して、系統間の電圧、周波数、位相を一致させている。しかしながら、発電機側の系統を制御する場合、出力応答性が低いことから、系統間の電圧、周波数、位相を一致させるまでに時間がかかり、同期投入までの時間を要してしまうことがある。例えば、電力系統の出力を、蓄電システムにより維持している場合、発電機の同期投入が遅れてしまうと、蓄電システムによる給電時間が増えてしまう。これにより、蓄電システムの給電時間が長いと、必要となる蓄電システムの電池容量が増大したり、蓄電システムのみの系統維持の時間が長くなるため、脆弱性が高くなったり、蓄電システムで賄えない電気負荷の復旧時間が長くなったりする。
【0005】
そこで、本開示は、迅速に同期投入を実行することができる同期投入装置及び同期投入方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の同期投入装置は、第1の電源装置が接続される電力系統に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置であって、前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部を、備え、前記制御部は、前記第1の電源装置を制御して前記電力系統の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統に投入する。
【0007】
本開示の同期投入方法は、第1の電源装置が接続される電力系統に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置によって実行される同期投入方法であって、前記同期投入装置は、前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部を、備え、前記制御部が、前記第1の電源装置を制御して前記電力系統の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統に投入することを、実行する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、迅速に同期投入を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの動作に関する説明図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの概略構成図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。
【
図5】
図5は、第二実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。
【
図7】
図7は、第三実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの動作に関する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能であり、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせることも可能である。
【0011】
[第一実施形態]
本実施形態に係る同期投入装置20は、電力システム10に設けられ、解列した発電機15を電力系統12に同期投入するための装置である。
【0012】
図1は、第一実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの動作に関する説明図である。
図2は、第一実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの概略構成図である。
図3及び
図4は、第一実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。先ず、
図1を参照して、電力システム10について説明する。
【0013】
(電力システム)
図1に示すように、電力システム10は、電力系統12に、給電元となる発電機15及び蓄電システム16が接続されるシステムとなっている。電力システム10には、給電先となる負荷17が接続されている。電力システム10は、例えば、移動体に設けられるマイクログリッド、陸上に設けられるマイクログリッド等の設備である。なお、マイクログリッドは、外部の電力系統から切り離しても独立して運用可能な電力系統である。電力システム10は、発電機15及び蓄電システム16が電力系統12に接続されている状態(
図1の下側)において、負荷17に対して発電機15及び蓄電システム16から給電を行う。
【0014】
電力システム10において、発電機15の保守または故障等により、発電機15と電力系統12とを接続する遮断器18が開状態となって発電機15が解列する(
図1の上側)と、電力システム10は、負荷17に対して蓄電システム16から給電を行う。また、電力システム10において、発電機15が復帰して、発電機15と電力系統12とを接続する遮断器18が閉状態となって発電機15が投入(接続)される(
図1の下側)と、負荷17に対して発電機15及び蓄電システム16から給電を行う。
【0015】
次に、
図2を参照して、第一実施形態の電力システム10について具体的に説明する。電力システム10は、電力系統12と、発電機(第2の電源装置)15と、蓄電システム(第1の電源装置)16と、負荷17と、同期投入装置20と、を備えている。
【0016】
電力系統12は、送電網14と、遮断器18と、を有している。送電網14は、電源となる発電機15及び蓄電システム16から送電先へ電力を供給する電路となっている。遮断器18は、閉状態において、送電網14と発電機15とを接続し、開状態において、送電網14と発電機15とを解列する。
【0017】
発電機15は、電力供給源(電源)であり、交流電力となる電源装置となっている。発電機15は、機械式であることから、機械特性(慣性力)による影響で、蓄電システム16に比して出力応答性が低いものとなっている。
【0018】
蓄電システム16は、電力供給源(電源)であり、蓄電池24とインバータ25とを含む電源装置となっている。蓄電池24は、直流電力を出力し、インバータ25によりDC/AC変換(電力変換)を行って交流電力を出力する。蓄電システム16は、発電機15に比して出力応答性が高いものとなっている。
【0019】
負荷17は、例えば、電力系統12に接続される電気機器である。なお、電力系統12と負荷17との間に、分電盤を設けてもよい。
【0020】
(同期投入装置)
同期投入装置20は、解列状態の発電機15を電力系統12に同期投入する装置である。同期投入装置20は、2つの電圧検出器31a、31bと、制御部32と、を有している。
【0021】
2つの電圧検出器31a、31bは、遮断器18の給電側と送電側とにそれぞれ設けられている。2つの電圧検出器31a、31bは、制御部32にそれぞれ接続され、制御部32に電圧値を入力する。
【0022】
制御部32は、2つの電圧検出器31a、31bに基づいて、電力系統12と発電機15との同期をとり、同期後に遮断器18を閉状態にして、発電機15を電力系統12に同期投入する。制御部32は、電圧検出器31aから電力系統12の出力特性値としての電圧を取得し、また、電圧検出器31bから発電機15の出力特性値としての電圧を取得する。そして、制御部32は、取得した電力系統12の電圧及び発電機15の電圧に基づいて、蓄電システム16を制御する。
【0023】
具体的に、制御部32は、蓄電システム16のインバータ25の出力制御を実行し、電力系統12の電圧を変化させることで、発電機15との同期制御を実行する。なお、同期制御は、電圧、周波数、位相を一致させる制御となっている。
【0024】
ここで、
図3及び
図4を参照して、制御部32によるインバータ制御について説明する。
図3は、同期投入前のインバータ制御を示す図であり、
図4は、同期投入時のインバータ制御を示す図である。先ず、
図3を参照して、同期投入前のインバータ制御について説明する。インバータ25は、三相インバータである。
図3に示すように、制御部32は、d軸及びq軸のそれぞれの系統において、第1の減算器41a、41bと、PI制御器42a、42bと、電流/電圧変換増幅器43a、43bと、第1の加算器44a、44bと、第2の加算器45a、45bと、dq/三相変換部46と、を有している。
【0025】
なお、
図3における記号は、下記のとおりである。
Vd*:d軸電圧指令値
Vd:d軸電圧(インバータ出力)
Vq*:q軸電圧指令値
Vq:q軸電圧(インバータ出力)
Id:d軸電流(インバータ出力)
Iq:q軸電流(インバータ出力)
Vgridd:d軸電圧(系統)
Vgridq:q軸電圧(系統)
ω:角周波数
【0026】
第1の減算器41a、41bは、d軸及びq軸のそれぞれの系統において、電圧指令値からインバータ出力の電圧を減算して、差分電圧を出力する回路である。PI制御器42a、42bは、第1の減算器41a、41bから入力される差分電圧が0に収束するように制御する。電流/電圧変換増幅器43a、43bは、d軸電流がq軸電流に及ぼす影響及び、q軸電流がd軸電流に及ぼす影響を打ち消す制御器となっている。第1の加算器44a、44bは、d軸及びq軸のそれぞれの系統において、PI制御器42a、42bから出力された電圧に、電流/電圧変換増幅器43a、43bから出力された電圧を加算する。第2の加算器45a、45bは、d軸及びq軸のそれぞれの系統において、第1の加算器44a、44bから出力された電圧に、電力系統12における電圧を加算する。dq/三相変換部46は、第2の加算器45a、45bから入力されるd軸及びq軸のそれぞれの電圧に基づいて、dq直交2軸回転座標系における電圧を、UVW三相静止座標系における電圧(Vu*,Vv*,Vw*)に変換する処理を行う。なお、dq/三相変換部46には、インバータ25が生成する電圧の基準位相角ωtが入力され、基準位相角ωtに基づいて変換処理が実行される。dq/三相変換部46から出力された電圧(Vu*,Vv*,Vw*)は、インバータ25を制御するためのPWM(Pulse width modulation)信号の生成に用いられる。
【0027】
次に、
図4を参照して、同期投入時のインバータ制御について説明する。
図4に示すように、制御部32は、
図3の構成に加え、第3の加算器47a、47bと、第4の加算器48と、乗算器49と、第5の加算器50と、をさらに有している。
【0028】
なお、
図4における記号は、
図3に示す記号の他は下記のとおりである。
Vddef*:d軸電圧指令値(遮断器前後の電圧の差分)
Vqdef*:q軸電圧指令値(遮断器前後の電圧の差分)
ω*:遮断器前後の角周波数の差分
θ*:遮断器前後の位相角の差分
【0029】
第3の加算器47a、47bは、d軸及びq軸のそれぞれの系統において、第1の減算器41a、41bの入力側に接続され、d軸電圧指令値に、遮断器18前後の電圧の差分を加算して出力する回路である。遮断器18前後の電圧の差分は、電圧検出器31a、31bにより計測した電圧の差分である。電圧検出器31aにより計測したd軸及びq軸のそれぞれの電圧をVd1、Vq1とし、電圧検出器31bにより計測したd軸及びq軸のそれぞれの電圧をVd2、Vq2とすると、Vddef*及びVqdef*は、下記の(1)式及び(2)式のとおりとなる。
Vddef*=Vd2-Vd1 ・・・(1)
Vqdef*=Vq2-Vq1 ・・・(2)
【0030】
これにより、dq/三相変換部46に入力される電圧は、電力系統12の電圧と、発電機15の電圧との差分を考慮した電圧となる。
【0031】
第4の加算器48は、基準位相角ωtにおける角周波数ωに、遮断器18前後の角周波数の差分を加算して出力する回路である。遮断器18前後の角周波数の差分は、電圧検出器31a、31bにより計測した電圧に基づいて得られる角周波数の差分である。電力系統12側の角周波数を、ω1とし、発電機15側の角周波数を、ω2とすると、ω*は、下記の(3)式のとおりとなる。
ω*=ω2-ω1 ・・・(3)
【0032】
乗算器49は、第4の加算器48から入力される角周波数に、時間tを乗算して位相角θを算出する回路である。第5の加算器50は、乗算器49から入力される位相角θに、遮断器18前後の位相角の差分を加算して出力する回路である。遮断器18前後の位相角の差分は、電圧検出器31a、31bにより計測した電圧に基づいて得られる位相角の差分である。電力系統12側の位相角を、θ1とし、発電機15側の位相角を、θ2とすると、θ*は、下記の(4)式のとおりとなる。
θ*=θ2-θ1 ・・・(4)
【0033】
dq/三相変換部46には、第5の加算器50から出力される位相角が入力され、位相角に基づいて変換処理が実行される。これにより、dq/三相変換部46は、電力系統12の位相角と、発電機15の位相角との差分を考慮した位相角となる。
【0034】
(同期投入方法)
上記のような同期投入装置20において、制御部32は、同期投入時において、電圧検出器31a、31bの計測結果を考慮して、dq/三相変換部46から電圧(Vu*,Vv*,Vw*)を出力し、電圧(Vu*,Vv*,Vw*)に基づいてインバータ25を制御するためのPWM信号を生成する。制御部32は、生成したPWM信号を用いて、蓄電システム16を制御して電力系統12の電圧を変化させ、発電機15の電圧との同期をとる系統側同期制御を実行する。制御部32は、同期後、遮断器18を閉状態として、発電機15を電力系統12に投入する。
【0035】
なお、第一実施形態では、電源として、蓄電システム16を適用したが、発電機15よりも出力応答性が高い電源であれば、何れであってもよく、例えば、キャパシタを用いたシステムであってもよいし、インバータを介して接続されるものであってもよい。
【0036】
[第二実施形態]
次に、
図5及び
図6を参照して、第二実施形態について説明する。
図5は、第二実施形態に係る同期投入装置の制御部に関する一例の図である。なお、第二実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一実施形態と異なる部分について説明し、第一実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0037】
第二実施形態の同期投入装置20は、同期投入時における蓄電システム16のインバータ制御(系統側同期制御)において、電力系統12の電圧の変化が緩慢となるように、ランプ回路65、75を有する制御部32としている。
【0038】
制御部32は、第一実施形態の構成に加え、遮断器18前後の角周波数の差分ω*に対して、時間当たりの変動量を制限する
図5のランプ回路65を付加している。また、制御部32は、第一実施形態の構成に加え、遮断器18前後の位相角の差分θ*に対して、時間当たりの変動量を制限する
図6のランプ回路75を付加している。なお、第二実施形態では、ランプ回路65、75を適用したが、この構成に特に限定されず、時間当たりの変動量を制限する構成であれば、何れの構成であってもよい。
【0039】
図5に示す回路60は、ランプ特性を付与した角周波数の差分ω*を算出する回路である。具体的に、回路60は、2つのタイマー61、62と、ステップ回路63と、第2の減算器64と、ランプ回路65と、積分器66と、第3の減算器67と、乗算器68と、切り替えスイッチ69とを有している。
【0040】
2つのタイマー61、62は、時間trをカウントする。ステップ回路63は、タイマー62の出力側に設けられる。ステップ回路63は、同期制御開始前(例えば、t=0から5)において、一定の値(例えば、0)を出力し、同期制御開始(t=5)以降において、一定の値(例えば、1)を出力する。第2の減算器64は、タイマー61がカウントした時間trから、タイマー62からステップ回路63を経て出力される時間trを減算して出力する回路である。ランプ回路65は、入力される時間trの増加に応じて、角周波数の差分ω*が比例的に増加するように制御しており、時間0からtrまでの間において出力を制限する回路となっている。積分器66は、角周波数の差分ω*に対する偏差がゼロとなるように制御する。つまり、積分器66から出力される値をXとすると、値Xは、同期制御開始時に「0<X≦1」となるように、差分ω*の出力を抑制し、同期制御開始後においては最終的に「X=1」となるように、差分ω*の出力を制御する。第3の減算器67は、発電機15側の角周波数ω2から、電力系統12側の角周波数ω1を減算して、角周波数の差分ω*を算出する回路である。乗算器68は、積分器66から出力された値と、第3の減算器67から出力された角周波数の差分ω*とを乗算して、ランプ特性が付与された角周波数の差分ω*を算出する。切り替えスイッチ69は、同期制御の実行の可否を切り替えるスイッチであり、ランプ回路65の入力側に設けられている。切り替えスイッチ69は、同期制御なしの場合、時間tr=0が入力されるように切り替える一方で、同期制御ありの場合、第2の減算器64に接続するように切り替える。
【0041】
また、
図6に示す回路70は、ランプ特性を付与した位相角の差分θ*を算出する回路である。なお、回路70は、回路60とほぼ同様の構成であり、2つのタイマー71、72と、ステップ回路73と、第2の減算器74と、ランプ回路75と、積分器76と、第3の減算器77と、乗算器78と、切り替えスイッチ79とを有している。
【0042】
2つのタイマー71、72は、時間trをカウントする。ステップ回路73は、タイマー62の出力側に設けられる。ステップ回路73は、同期制御開始(t=0)以降において、一定の値(例えば、1)を出力する。第2の減算器74は、タイマー71がカウントした時間trから、タイマー72からステップ回路73を経て出力される時間trを減算して出力する回路である。ランプ回路75は、入力される時間trの増加に応じて、位相角の差分θ*が比例的に増加するように制御する。積分器76は、位相角の差分θ*に対する偏差がゼロとなるように制御する。第3の減算器77は、発電機15側の位相角θ2から、電力系統12側の位相角θ1を減算して、位相角の差分θ*を算出する回路である。乗算器78は、積分器76から出力された値と、第3の減算器77から出力された位相角の差分θ*とを乗算して、ランプ特性が付与された位相角の差分θ*を算出する。切り替えスイッチ79は、同期制御の実行の可否を切り替えるスイッチであり、ランプ回路75の入力側に設けられている。切り替えスイッチ79は、同期制御なしの場合、時間tr=0が入力されるように切り替える一方で、同期制御ありの場合、第2の減算器74に接続するように切り替える。
【0043】
[第三実施形態]
次に、
図7を参照して、第三実施形態について説明する。
図7は、第三実施形態に係る同期投入装置を備えた電力システムの動作に関する説明図である。なお、第三実施形態では、重複した記載を避けるべく、第一及び第二実施形態と異なる部分について説明し、第一及び第二実施形態と同様の構成である部分については、同じ符号を付して説明する。
【0044】
第三実施形態の同期投入装置20は、蓄電システム16の出力を制御して同期制御を実行する系統側同期制御の他、発電機15の出力を制御して同期制御を実行する装置側同期制御を実行可能となっている。制御部32は、同期投入時において、蓄電システム16の状態、例えば、蓄電池24の充電率(SoC:State of Charge)に基づいて、系統側同期制御及び装置側同期制御の少なくとも一方を実行するか否かを判断する。例えば、制御部32は、蓄電池24の充電率が規定値以下となる場合、迅速な同期投入を実行すべく、系統側同期制御を実行する。一方で、例えば、制御部32は、蓄電池24の充電率が規定値よりも大きくなる場合、系統出力が安定する同期投入を実行すべく、装置側同期制御を実行する。なお、制御部32は、蓄電池24の状態に応じて、系統側同期制御及び装置側同期制御の両方を実行してもよい。
【0045】
以上のように、第一実施形態から第三実施形態に記載の同期投入装置20及び同期投入方法は、例えば、以下のように把握される。
【0046】
第1の態様に係る同期投入装置20は、第1の電源装置(蓄電システム16)が接続される電力系統12に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置(発電機15)を同期投入する同期投入装置20であって、前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部32を、備え、前記制御部32は、前記第1の電源装置を制御して前記電力系統12の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統12の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統12に投入する。
【0047】
この構成によれば、出力応答性の高い第1の発電装置を制御して電力系統12の出力特性値(電圧)を、第2の発電装置の出力特性値(電圧)に同期させることができる。このため、電力系統12に第2の発電装置を迅速に同期投入することができる。
【0048】
第2の態様として、第1の態様に係る同期投入装置20において、前記制御部32は、前記系統側同期制御において、前記電力系統12の出力特性値が、時間当たりの変動量が制限されるように、前記第1の電源装置を制御する。
【0049】
この構成によれば、電力系統12の出力特性値の変動を抑制することができるため、系統擾乱の発生を抑制することができる。
【0050】
第3の態様として、第1または第2の態様に係る同期投入装置20において、前記第1の電源装置は、蓄電池24とインバータ25とを含む蓄電システム16であり、前記第2の電源装置は、発電機15であり、前記制御部32は、前記蓄電システム16の前記インバータ25を制御する。
【0051】
この構成によれば、蓄電システム16と発電機15とを備える電力システム10に適用することができ、同期投入前において、蓄電池24だけで給電する給電時間を減らすことができる。このため、蓄電池24の電池容量を減らすことができ、脆弱性を改善することができ、電力システム10に接続される負荷17の復旧時間を早めたりすることができる。
【0052】
第4の態様として、第1から第3のいずれか1つの態様に係る同期投入装置20において、前記制御部32は、前記第2の電源装置を制御して前記第2の電源装置の出力特性値を変化させ、前記電力系統12の出力特性値との同期をとる装置側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の前記電力系統への同期接続時における前記第1の電源装置の状態に基づいて、前記系統側同期制御及び前記装置側同期制御の少なくとも一方を実行するか否かを判断する。
【0053】
この構成によれば、第1の電源装置の状態に応じて、適切な同期制御を実行することができる。
【0054】
第5の態様に係る同期投入方法は、第1の電源装置が接続される電力系統12に、前記第1の電源装置よりも出力応答性の低い第2の電源装置を同期投入する同期投入装置20によって実行される同期投入方法であって、前記同期投入装置20は、前記第2の電源装置の出力特性値を取得し、取得した前記出力特性値に基づいて、前記第1の電源装置を制御する制御部32を、備え、前記制御部32が、前記第1の電源装置を制御して前記電力系統12の出力特性値を変化させ、前記第2の電源装置の出力特性値との同期をとる系統側同期制御を実行し、前記第2の電源装置の出力特性値と前記電力系統12の出力特性値との同期後、前記第2の電源装置を前記電力系統12に投入することを、実行する。
【0055】
この構成によれば、出力応答性の高い第1の発電装置を制御して電力系統12の出力特性値(電圧)を、第2の発電装置の出力特性値(電圧)に同期させることができる。このため、電力系統12に第2の発電装置を迅速に同期投入することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 電力システム
12 電力系統
14 送電網
15 発電機
16 蓄電システム
17 負荷
18 遮断器
20 同期投入装置
24 蓄電池
25 インバータ
31a、31b 電圧検出器
32 制御部
41a、41b 第1の減算器
42a、42b PI制御器
43a、43b 電流/電圧変換増幅器
44a、44b 第1の加算器
45a、45b 第2の加算器
46 dq/三相変換部
47a、47b 第3の加算器
48 第4の加算器
49 乗算器
50 第5の加算器
60 回路
65 ランプ回路
70 回路
75 ランプ回路