(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140756
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】バッテリパック
(51)【国際特許分類】
H01M 50/242 20210101AFI20241003BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20241003BHJP
H01M 50/249 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/242
B60K1/04
H01M50/249
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052074
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】家村 侑
(72)【発明者】
【氏名】安井 健
(72)【発明者】
【氏名】川辺 悟
(72)【発明者】
【氏名】立脇 正章
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC14
3D235DD35
3D235FF06
3D235HH26
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT01
5H040AT04
5H040AT06
5H040AY05
5H040AY10
5H040CC59
5H040NN01
(57)【要約】
【課題】側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することが可能なバッテリパックを提供する。
【解決手段】バッテリケース31のサイドフレーム322は、縦リブ50と、縦リブ50に対しバッテリ側に設けられる保護領域70と、反対側に設けられる変形領域60と、を有する。変形領域60には、第2屈曲部51eを有し、縦リブ50の第1接続部50aに接続される第1板状部51と、上下方向から見て第2屈曲部51eと同じ位置に設けられる下屈曲部52cを有し、縦リブ50の第2接続部50bに接続される第2板状部52と、第2屈曲部51eと縦リブ50の第3接続部50cとに連結され、第1接続部50aと第2接続部50bの間に位置する第3板状部53と、を有する。第1接続部50aと第3接続部50cの長さL1は、第2接続部50bと第3接続部50cの長さL2よりも短い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、前記バッテリを収容するバッテリケースと、を備え、車両の床下に取り付けられるバッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリが載置されたボトムプレートと、
前記ボトムプレートが接合され、車幅方向に対向する一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレームを連結するクロスメンバと、を有し、
前記サイドフレームは、それぞれ
縦リブと、
前記縦リブより前記バッテリ側に設けられる保護領域と、
前記縦リブより前記バッテリと反対側に設けられる変形領域と、を有し、
前記変形領域には、
第1座屈点を有し、前記縦リブの第1接続部に接続される第1板状部と、
上下方向から見て前記第1座屈点と同じ位置に設けられる第2座屈点を有し、前記縦リブの第2接続部に接続される第2板状部と、
前記第1座屈点と前記縦リブの第3接続部とに連結され、前記第1接続部と前記第2接続部の間に位置する第3板状部と、を有し、
前記第1接続部と前記第3接続部の長さは、前記第2接続部と前記第3接続部の長さよりも短い、バッテリパック。
【請求項2】
請求項1に記載のバッテリパックであって、
前記クロスメンバは、
前記バッテリパックの前方に位置する前クロスメンバと、
前記バッテリパックの後方に位置する後クロスメンバと、
前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に位置する中クロスメンバと、少なくとも有し、
各クロスメンバと前記サイドフレームが接合されており、
前記各クロスメンバと前記サイドフレームが接合されている位置において、前記各クロスメンバの上面と前記サイドフレームの保護領域の上面は、上下方向の高さが同じである、バッテリパック。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のバッテリパックであって、
前記ボトムプレートは、前記バッテリよりも外側で車両前後方向に延びるクラッシュストローク部を有しており、
前記クラッシュストローク部の周縁は、前記サイドフレームの前記保護領域で、前記サイドフレームに接合されている、バッテリパック。
【請求項4】
請求項3に記載のバッテリパックであって、
前記クラッシュストローク部の幅は、前記サイドフレームの前記保護領域の幅よりも広い、バッテリパック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の床下に搭載されるバッテリパックに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動化技術に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動化技術ではバッテリが重要な役割を担っている。バッテリは高電圧部品であるため、衝撃からバッテリを保護する必要がある。しかしながら、バッテリが車両に搭載される場合、衝突などによりバッテリに大きな荷重が入力される可能性がある。特に、車両の床下に搭載されるバッテリパックにおいては、前突や後突時には、エンジンルーム(モータルーム)やラゲッジルームで衝撃が吸収されるが、側突時には、バッテリパックに大きな荷重が入力される虞がある。
【0004】
これに対し、特許文献1では、バッテリケースの側壁部の外側にエネルギー吸収部を設け、バッテリを保護することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の構造では、エネルギー吸収部で吸収しきれない衝撃によって、側壁部がバッテリ側に内回転すると、側壁部とバッテリの距離が近いため側壁部がバッテリに衝突する虞がある。また、側壁部がバッテリと反対側に外回転すると、側壁部に固定されたボトムプレートがバッテリ側に変形しボトムプレートがバッテリに衝突する虞がある。
【0007】
本発明は、側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することが可能なバッテリパックを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
バッテリと、前記バッテリを収容するバッテリケースと、を備え、車両の床下に取り付けられるバッテリパックであって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリが載置されたボトムプレートと、
前記ボトムプレートが接合され、車幅方向に対向する一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレームを連結するクロスメンバと、を有し、
前記サイドフレームは、それぞれ
縦リブと、
前記縦リブより前記バッテリ側に設けられる保護領域と、
前記縦リブより前記バッテリと反対側に設けられる変形領域と、を有し、
前記変形領域には、
第1座屈点を有し、前記縦リブの第1接続部に接続される第1板状部と、
上下方向から見て前記第1座屈点と同じ位置に設けられる第2座屈点を有し、前記縦リブの第2接続部に接続される第2板状部と、
前記第1座屈点と前記縦リブの第3接続部とに連結され、前記第1接続部と前記第2接続部の間に位置する第3板状部と、を有し、
前記第1接続部と前記第3接続部の長さは、前記第2接続部と前記第3接続部の長さよりも短い。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】バッテリパック1と、バッテリパック1を搭載する電動車両100の斜視図である。
【
図3】バッテリパック1の内部構造を示す平面図である。
【
図5】バッテリパック1に車両横方向の荷重が入力された時のバッテリケース31の変形モードを説明する図である。
【
図6】変形により形成された三角形Tの回転を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態のバッテリパックについて、添付図面に基づいて説明する。
【0012】
本発明の一実施形態のバッテリパック1は、
図1に示すように、ハイブリッド車両、電気自動車、燃料電池車等の電動車両100の床下に搭載可能に構成される。バッテリパック1は、
図2及び
図3に示すように、4つのバッテリモジュール10と、この4つのバッテリモジュール10を収容するバッテリケース31と、を備える。4つのバッテリモジュール10は、前後方向に2列、左右方向に2列に配置されている。なお、バッテリモジュール10は、1つ以上であればその数は任意に設定することができ、配置も特に限定されるものではない。
【0013】
バッテリモジュール10は、不図示の電気接続部材を介して互いに電気的に接続されている。バッテリモジュール10が蓄える電力は、車両の駆動源となるモータ等に供給される。なお、以下の説明では、4つのバッテリモジュール10をまとめてバッテリと称することがある。
【0014】
バッテリモジュール10は、例えば、ラミネート型セルが複数積層されることで構成される。ラミネート型セルは、正極タブが連結された正極と、負極タブが連結された負極と、正極と負極との間に配置された電解質と、これらを収容するラミネートフィルムと、を有しており、電解質を介した正極と負極との間のイオン(例えば、リチウムイオン)の授受により充放電を行う。なお、バッテリモジュール10を構成するセルは、ラミネート型に限らず、缶型又は筒型であってもよく、電解質は、液状であっても個体であってもよい。
【0015】
バッテリケース31は、複数のバッテリモジュール10が載置されるバッテリトレイ32と、バッテリモジュール10の上方を覆う上部カバー33と、を有する。
【0016】
バッテリトレイ32は、バッテリモジュール10が載置されるボトムプレート321と、ボトムプレート321の左右両側に設けられた一対のサイドフレーム322と、一対のサイドフレーム322を連結する前クロスメンバ333、中央クロスメンバ334、後クロスメンバ335と、を備える。
【0017】
前クロスメンバ333はバッテリケース31の前壁を構成し、後クロスメンバ335はバッテリケース31の後壁を構成する。中央クロスメンバ334は、バッテリケース31の内部を前後2つの空間に分割する。前方空間には、2つのバッテリモジュール10が左右に配置され、後方空間には、2つのバッテリモジュール10が左右に配置される。
【0018】
また、
図4に示すように、ボトムプレート321の下方には、カバープレート36が取り付けられ、ボトムプレート321とカバープレート36との間には、ウォータージャケット40が形成されている。
【0019】
以下、サイドフレーム322について
図4を参照しながら詳細に説明する。
サイドフレーム322は、
図4に示すように、所定の高さを有し前後方向に延びる縦リブ50と、縦リブ50よりも外側、即ちバッテリと反対側に設けられた変形領域60と、縦リブ50よりも内側、即ちバッテリ側に設けられた保護領域70と、を備える。変形領域60及び保護領域70は、いずれも車両横方向からの荷重に対しバッテリを守る機能を有し、保護領域70は高剛性の領域であって、その剛性により入力荷重を受ける。これに対し、変形領域60は、変形しながら入力荷重を吸収する。
【0020】
保護領域70は、鉛直方向に延設されバッテリ収容空間の内壁として機能するインナーフレーム71と、水平方向に延設されインナーフレーム71の上端と縦リブ50の上端とを連結するアッパーフレーム72と、水平方向に延設されインナーフレーム71の下端と縦リブ50の中間部とを連結する第1ミドルプレート73と、アッパーフレーム72と第1ミドルプレート73との間に水平方向に延設されインナーフレーム71と縦リブ50とを連結する第2ミドルプレート74と、第1ミドルプレート73の幅方向中央部73aから下方に延出した後に外側に屈曲して水平方向に延設され縦リブ50の下端と連結するロアプレート75と、を備える。
【0021】
インナーフレーム71及びアッパーフレーム72は、他の部分よりも板厚が厚く高剛性に形成されている。インナーフレーム71には、前述の前クロスメンバ333、中央クロスメンバ334、及び後クロスメンバ335が溶接等により結合されている。ここで、インナーフレーム71の上面72aとクロスメンバ333~335の上面336は、上下方向の高さが同じに設定されている。
【0022】
第1ミドルプレート73の幅方向中央部73aよりも内側に位置する内側部分73bの下面には、溶接等によりボトムプレート321及びカバープレート36が取り付けられている。以下、この第1ミドルプレート73の内側部分73bとボトムプレート321との固定部を接合部73cと称する。
【0023】
したがって、サイドフレーム322の保護領域70が内側に回転(以下、内回転とも称する)すると、それに伴ってボトムプレート321及びカバープレート36が下方に変形し、反対にサイドフレーム322の保護領域70が外側に回転(以下、外回転とも称する)すると、それに伴ってボトムプレート321及びカバープレート36が上方に変形する。ボトムプレート321及びカバープレート36が上方に変形すると、ボトムプレート321に搭載されたバッテリと干渉する虞がある。
【0024】
ボトムプレート321に搭載されたバッテリとインナーフレーム71との間には、左右方向において所定の隙間が形成されている。このバッテリよりも外側で前後方向に延びる領域は、クラッシュストローク部37として機能する。言い換えると、クラッシュストローク部37の周縁にサイドフレーム322の保護領域70が設けられ、ボトムプレート321は、保護領域70でサイドフレーム322に接合されている。
【0025】
クラッシュストローク部37の幅W1は、詳しくは後述するがサイドフレーム322の保護領域70が内回転しても保護領域70を構成する部材がバッテリに接触することがないように設定される。クラッシュストローク部37の幅W1は、サイドフレーム322の保護領域70の幅W2よりも広いことが好ましい。
【0026】
変形領域60は、縦リブ50の上端の第1接続部50aから外側に向かって延びる第1板状部51と、縦リブ50の下端の第2接続部50bから外側に向かって延びる第2板状部52と、縦リブ50の中間部の第3接続部50cから外側に向かって延びて第1板状部51に接続される第3板状部53と、鉛直方向に延設され第1板状部51と第2板状部52とを連結する内壁部54及び外壁部55と、を備える。
【0027】
第1板状部51は、縦リブ50の上端の第1接続部50aから外側に向かって斜め下方に延びる緩傾斜部51aと、緩傾斜部51aよりも急傾斜で斜め下方に延びる急傾斜部51bと、急傾斜部51bよりも外側に配置され外側に向かって水平方向に延びる上水平部51cと、緩傾斜部51aと急傾斜部51bとを接続する第1屈曲部51dと、急傾斜部51bと上水平部51cとを接続する第2屈曲部51eと、を備える。第2屈曲部51eは、接合部73cよりも上方に位置している。
【0028】
第2板状部52は、縦リブ50の下端の第2接続部50bから外側に向かって斜め上方に延びる傾斜部52aと、傾斜部52aよりも外側に配置され外側に向かって水平方向に延びる下水平部52bと、傾斜部52aと下水平部52bとを接続する下屈曲部52cと、を備える。
【0029】
第3板状部53は、保護領域70の第2ミドルプレート74の延長線上に位置するように第3接続部50cから外側に延設され、第1板状部51の第2屈曲部51eに接続されている。
【0030】
第1接続部50a、第3接続部50c、及び第2接続部50bは、上方からこの順に配置される。第1接続部50aと第3接続部50cの長さL1は、第2接続部50bと第3接続部50cの長さL2よりも短い。長さL1は、長さL2よりも短ければよいが、半分以下であることが好ましい。
【0031】
第1板状部51と第3板状部53とが接続される第2屈曲部51eと、第2板状部52の下屈曲部52cとは、左右方向で同じ位置、言い換えると、上方から見て重なる位置に配置される。内壁部54は、第2屈曲部51e及び下屈曲部52cよりも外側で第2板状部52と第3板状部53とを連結し、外壁部55は、内壁部54よりもさらに外側で第2板状部52の外端部と第3板状部53の外端部とを連結する。
【0032】
続いて、このように構成されたサイドフレーム322の変形モードについて説明する。
図5は、バッテリパック1に車両横方向の荷重が入力された時のバッテリケース31の変形モードを説明する図である。なお、
図5の符号200は、円柱状の衝撃入力部材である。
【0033】
衝突(1次衝突)によりサイドフレーム322に車両横方向の荷重が入力されると、変形領域60では圧壊変形が始まる。
図5の(A)に示すように、外壁部55が内側に押されると、内壁部54と外壁部55との間で第1板状部51と第2板状部52の上下間隔が広がるように変形するとともに、内壁部54よりも内側では、第1板状部51と第2板状部52の上下間隔が狭まるように荷重が作用する。
【0034】
さらにサイドフレーム322に車両横方向の荷重が入力されると、
図5の(B)に示すように、矢印P1で示す第1板状部51にかかる下向きの荷重によって、第2屈曲部51eが座屈点となって第1板状部51が座屈する。また、矢印P2で示す第2板状部52にかかる上向きの荷重によって、下屈曲部52cが座屈点となって第2板状部52が座屈する。このとき、第2屈曲部51eと下屈曲部52cとは、左右方向で同じ位置(上方から見て重なる位置)に配置されているので、互いに近づくように変形し第2屈曲部51eと下屈曲部52cが衝突する2次衝突が発生する。これにより、
図5の(C)及び
図6に示すように、変形領域60には、縦リブ50と、第1板状部51の緩傾斜部51a及び急傾斜部51bと、第2板状部52の傾斜部52aと、を3辺とする三角形Tが生成される。この三角形Tは、第1接続部50aと、第2接続部50bと、衝突した第2屈曲部51e及び下屈曲部52cと、を頂点とする三角形である。
【0035】
また、この三角形Tは、2つの三角形T1、T2を含む。第1三角形T1は、第1接続部50aと第3接続部50cとの間の縦リブ50と、第1板状部51の緩傾斜部51a及び急傾斜部51bと、第3板状部53と、を3辺とする三角形である。即ち、第1接続部50aと、第3接続部50cと、衝突した第2屈曲部51e及び下屈曲部52cと、を頂点とする三角形である。
【0036】
第2三角形T2は、第2接続部50bと第3接続部50cとの間の縦リブ50と、傾斜部52aと、第3板状部53と、を3辺とする三角形である。即ち、第2接続部50bと、第3接続部50cと、衝突した第2屈曲部51e及び下屈曲部52cと、を頂点とする三角形である。
【0037】
第1接続部50aと第3接続部50cの長さL1は、第2接続部50bと第3接続部50cの長さL2よりも短くなるように設定されているので、第1三角形T1の面積は、第2三角形T2の面積より小さい。言い換えると、三角形Tにおいて、上部(三角形T1)は断面が密であり、下部(第2三角形T2)は断面が疎である。断面が密であれば、荷重によって潰れにくく、荷重が伝わりやすい。一方、断面が疎であれば、荷重によって潰れやすく、荷重が伝わりにくい。そのため、サイドフレーム322に作用する車両横方向の荷重によって、三角形T1により大きな荷重が伝わり保護領域70を押す。
図6中の矢印P31は、サイドフレーム322に作用する車両横方向の荷重P3のうち三角形T1に作用する荷重であり、P32は、サイドフレーム322に作用する車両横方向の荷重のうち三角形T2に作用する荷重である。荷重P31は、荷重P32よりも大きい。
【0038】
これにより、サイドフレーム322に作用する車両横方向の荷重P3は、三角形T1を内側に押すように作用する。三角形T1は接合部73cよりも上方に位置するので、三角形T1が内側に押されることで、保護領域70は、接合部73cを中心に点線Rで示すように内側に回転する。
【0039】
図5の(D)に示すように、サイドフレーム322の保護領域70が内側に回転することで、第1ミドルプレート73の内側部分73bに固定されたボトムプレート321及びカバープレート36は、矢印Qで示すようにバッテリから離れる方向である下方に引っ張られる。これにより、ボトムプレート321がバッテリ側に変形しボトムプレート321がバッテリに衝突することが回避される。
【0040】
このように本開示によれば、変形領域60の変形では吸収しきれなかったエネルギーによるサイドフレーム322の回転をコントロールすることにより、側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することができる。即ち、側突等の車両横方向からの衝撃の入力があったときに、変形領域60の変形に伴い座屈点(第2屈曲部51e、下屈曲部52c)同士が二次衝突することで、効率的にエネルギー吸収を行うことができる。また、座屈点(第2屈曲部51e、下屈曲部52c)同士の二次衝突後、吸収しきれなかったエネルギーにより接合部73cより上側に位置する座屈点(第2屈曲部51e、下屈曲部52c)が水平方向若しくは水平方向よりも上方に押されることで、バッテリモジュール10側に近づく方向にサイドフレーム322の保護領域70が回転する。サイドフレーム322がバッテリケース31の内側に回転することで、サイドフレーム322がボトムプレート321を下方へ押し下げ、ボトムプレート321がバッテリモジュール10側に屈曲することが抑制される。これにより、側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することができる。
【0041】
また、インナーフレーム71の上面72aとクロスメンバ333~335の上面336は、上下方向の高さが同じに設定されているので、サイドフレーム322全体の変形量が抑制され、サイドフレーム322の回転量も抑制される。
【0042】
また、クラッシュストローク部37の周縁は、サイドフレーム322の保護領域70で、サイドフレーム322に接合されているので、変形領域60までボトムプレート321を伸ばす場合に比べて、ボトムプレート321の重量を軽減できる。また、変形領域60までボトムプレート321を伸ばす場合に比べてサイドフレーム322の回転がコントロールしやすくなる。さらに、入力荷重が大きくボトムプレート321が変形する場合にも、クラッシュストローク部37が下に凸となるように変形することで、入力荷重を吸収しつつバッテリを保護することができる。
【0043】
以上、図面を参照しながら各種の実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0044】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0045】
(1) バッテリ(バッテリモジュール10)と、前記バッテリを収容するバッテリケース(バッテリケース31)と、を備え、車両(電動車両100)の床下に取り付けられるバッテリパック(バッテリパック1)であって、
前記バッテリケースは、
前記バッテリが載置されたボトムプレート(ボトムプレート321)と、
前記ボトムプレートが接合され、車幅方向に対向する一対のサイドフレーム(サイドフレーム322)と、
前記一対のサイドフレームを連結するクロスメンバ(前クロスメンバ333、中央クロスメンバ334、後クロスメンバ335)と、を有し、
前記サイドフレームは、それぞれ
縦リブ(縦リブ50)と、
前記縦リブより前記バッテリ側に設けられる保護領域(保護領域70)と、
前記縦リブより前記バッテリと反対側に設けられる変形領域(変形領域60)と、を有し、
前記変形領域には、
第1座屈点(第2屈曲部51e)を有し、前記縦リブの第1接続部(第1接続部50a)に接続される第1板状部(第1板状部51)と、
上下方向から見て前記第1座屈点と同じ位置に設けられる第2座屈点(下屈曲部52c)を有し、前記縦リブの第2接続部(第2接続部50b)に接続される第2板状部(第2板状部52)と、
前記第1座屈点と前記縦リブの第3接続部(第3接続部50c)とに連結され、前記第1接続部と前記第2接続部の間に位置する第3板状部(第3板状部53)と、を有し、
前記第1接続部と前記第3接続部の長さ(長さL1)は、前記第2接続部と前記第3接続部の長さ(長さL2)よりも短い、バッテリパック。
【0046】
(1)によれば、車両横方向からの衝突(一次衝突)、いわゆる側突があったときに、座屈点同士が二次衝突することで、効率的にエネルギー吸収を行うことができる。また、座屈点同士の二次衝突後、吸収しきれなかったエネルギーにより、ボトムプレートとサイドフレームとの接合部より上側に位置する座屈点が内側に押されることで、バッテリ側に近づく方向にサイドフレームの保護領域が回転する。サイドフレームがバッテリケースの内側に回転することで、サイドフレームがボトムプレートを下方へ押し下げるので、ボトムプレートがバッテリ側に屈曲することが抑制される。このように変形領域の変形では吸収しきれなかったエネルギーによるサイドフレームの回転をコントロールすることにより、側突等の車両横方向からの衝撃に対し適切にバッテリを保護することができる。
【0047】
(2) (1)に記載のバッテリパックであって、
前記クロスメンバは、
前記バッテリパックの前方に位置する前クロスメンバ(前クロスメンバ333)と、
前記バッテリパックの後方に位置する後クロスメンバ(後クロスメンバ335)と、
前記前クロスメンバと前記後クロスメンバとの間に位置する中クロスメンバ(中央クロスメンバ334)と、少なくとも有し、
各クロスメンバと前記サイドフレームが接合されており、
前記各クロスメンバと前記サイドフレームが接合されている位置において、前記各クロスメンバの上面(上面336)と前記サイドフレームの保護領域の上面(上面72a)は、上下方向の高さが同じである、バッテリパック。
【0048】
(2)によれば、サイドフレーム全体の変形量が抑制され、サイドフレームの回転量も抑制される。
【0049】
(3) (1)又は(2)に記載のバッテリパックであって、
前記ボトムプレートは、前記バッテリよりも外側で車両前後方向に延びるクラッシュストローク部(クラッシュストローク部37)を有しており、
前記クラッシュストローク部の周縁は、前記サイドフレームの前記保護領域で、前記サイドフレームに接合されている、バッテリパック。
【0050】
(3)によれば、変形領域までボトムプレートを伸ばす場合に比べて、ボトムプレートの重量を軽減できる。また、変形領域までボトムプレートを伸ばす場合に比べてサイドフレームの回転がコントロールしやすくなる。さらに、入力荷重が大きくボトムプレートが変形する場合にも、内回転するサイドフレームとボトムプレートのクラッシュストローク部の周縁が接合されているため、クラッシュストローク部が下に凸となるように変形する。これにより、入力荷重を吸収しつつバッテリを保護することができる。
【0051】
(4) (3)に記載のバッテリパックであって、
前記クラッシュストローク部の幅(幅W1)は、前記サイドフレームの前記保護領域の幅(幅W2)よりも広い、バッテリパック。
【0052】
(4)によれば、サイドフレームがケース内側に回転した際に、サイドフレームがバッテリに干渉することを回避できる。
【符号の説明】
【0053】
1 バッテリパック
10 バッテリモジュール(バッテリ)
31 バッテリケース
37 クラッシュストローク部
50 縦リブ
50a 第1接続部
50b 第2接続部
50c 第3接続部
51 第1板状部
51e 第2屈曲部(第1座屈点)
52 第2板状部
52c 下屈曲部(第2座屈点)
53 第3板状部
60 変形領域
70 保護領域
100 電動車両(車両)
321 ボトムプレート
322 サイドフレーム
333 前クロスメンバ
334 中央クロスメンバ(中クロスメンバ)
335 後クロスメンバ