(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140761
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】植物プランクトン培養装置及び培養植物プランクトンの生産方法
(51)【国際特許分類】
C12M 1/00 20060101AFI20241003BHJP
C12N 1/12 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C12M1/00 E
C12N1/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052083
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(74)【代理人】
【識別番号】100173473
【弁理士】
【氏名又は名称】高井良 克己
(72)【発明者】
【氏名】中西 弘文
(72)【発明者】
【氏名】野島 大佑
(72)【発明者】
【氏名】内田 幸宏
(72)【発明者】
【氏名】石井 健知
【テーマコード(参考)】
4B029
4B065
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029BB04
4B029CC01
4B029DA01
4B029DF05
4B029DG06
4B065AA83X
4B065BB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】植物プランクトンの栄養源となる海洋深層水を継続的に供給しつつ、休眠状態にない植物プランクトンを培養系内に継続的に保持することが可能となることにより、培養効率が向上した植物プランクトン培養装置及びそれを用いた培養植物プランクトンの生産方法を提供する。
【解決手段】植物プランクトン捕獲区画211と植物プランクトン排出区画212とを備える培養ユニット210を備える、植物プランクトンを海洋深層水で培養するための植物プランクトン培養装置であって、前記植物プランクトン排出区画は、海洋深層水を前記植物プランクトン排出区画中へ流入させるための、開閉可能な蓋233有する流入口231と、培養植物プランクトン含有海洋深層水を外部へ排出させるための、開閉可能な蓋を有する排出口232とを備え、植物プランクトン排出区画は、開閉可能な仕切り221を介して、植物プランクトン捕獲区画と開閉可能に連結される、培養装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とを備える培養ユニットを備える、植物プランクトンを海洋深層水で培養するための植物プランクトン培養装置であって、
前記植物プランクトン排出区画は、
海洋深層水を前記植物プランクトン排出区画中へ流入させるための、開閉可能な蓋を有する流入口と、
培養植物プランクトン含有海洋深層水を外部へ排出させるための、開閉可能な蓋を有する排出口と
を備え、
前記植物プランクトン排出区画は、開閉可能な仕切り及び任意で他の植物プランクトン排出区画を介して、前記植物プランクトン捕獲区画と開閉可能に連結され、
前記植物プランクトン排出区画は、前記植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結され、かつ前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋が閉鎖されている時に、前記植物プランクトン捕獲区画と共に、植物プランクトンを海洋深層水で培養するための培養区画を構成する、
植物プランクトン培養装置。
【請求項2】
前記流入口の蓋、前記排出口の蓋、及び前記仕切りの開閉を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項3】
前記制御部が、以下のステップ(a)~(c):
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養するステップと、
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を前記排出口を介して排出するステップと、
(c)ステップ(a)に戻るステップと
を行わせる、請求項2に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項4】
前記制御部が、任意の段階で、以下のステップ(p):
(p)前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に、植物プランクトンを補給するステップ
をさらに行わせる、請求項3に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項5】
前記制御部が、ステップ(a)の後かつステップ(b)の前に、以下のステップ(j):
(j)前記培養区画中の植物プランクトンの量が十分であるかどうかを判定し、前記植物プランクトンの量が十分であると判定された場合に、ステップ(b)に進み、前記植物プランクトンの量が十分でないと判定された場合に、ステップ(a)に戻るステップ
をさらに行わせる、請求項3又は4に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項6】
前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画中の植物プランクトン量を測定するセンサをさらに備える、請求項1又は2に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項7】
前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に光を供給する機構をさらに備える、請求項1又は2に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項8】
海洋深層水を海洋深層領域から汲み上げて前記植物プランクトン排出区画の流入口へ供給するための海洋深層水供給手段をさらに備え、
前記汲み上げ手段が、
使用時に海洋深層領域中に位置する、海洋深層領域から海洋深層水を汲み上げるための汲み上げ口と、
前記流入口と前記開閉可能な蓋を介して接続された、汲み上げた海洋深層水を前記流入口へ供給するための供給口と、
海洋深層水の汲み上げ及び流入口への供給を促進する水流を駆動させるための水流駆動手段と
を備える、
請求項1又は2に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項9】
前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に植物プランクトンを補給する手段をさらに備える、請求項1又は2に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項10】
前記培養ユニットが、複数の植物プランクトン排出区画をを備える、請求項1に記載の植物プランクトン培養装置。
【請求項11】
前記流入口の蓋、前記排出口の蓋、及び前記仕切りの開閉を制御する制御部をさらに備える、請求項10に記載の植物プランクトン培養装置であって、
前記制御部が、以下のステップ(d)~(f):
(d)培養ユニット内の一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、培養ユニット内の残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップと、
(e)前記一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、前記残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップと、
(f)ステップ(d)に戻るステップと
を行わせる、植物プランクトン培養装置:
(A)培養ユニット内において、流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養すること;
(B)培養ユニット内において、仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出口を介して排出すること。
【請求項12】
直列に連結された複数の培養ユニットを備える、請求項10又は11に記載の植物プランクトン培養装置であって、
末端の流入口及び排出口を除き、各培養ユニットの全ての排出口が、隣接する培養ユニットの全ての流入口と、培養ユニット間区画を介して連結している、
植物プランクトン培養装置。
【請求項13】
請求項1に記載の植物プランクトン培養装置を用いた、培養植物プランクトンの生産方法であって、以下のステップ(a)~(c):
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養するステップと、
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を前記排出口を介して排出するステップと、
(c)ステップ(a)に戻るステップと
を含む、培養植物プランクトンの生産方法。
【請求項14】
請求項10又は11に記載の植物プランクトン培養装置を用いた、培養植物プランクトンの生産方法であって、以下のステップ(d)~(f):
(d)一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップと、
(e)前記一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、前記残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップと、
(f)ステップ(d)に戻るステップと
を含む、培養植物プランクトンの生産方法:
(A)流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養すること;
(B)仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出口を介して排出すること。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、植物プランクトン培養装置及び培養植物プランクトンの生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海洋の深層領域に存在する深層水は、リン酸塩や硝酸塩などの栄養塩に富んでいるので、これを汲み上げて利用することが提案されている。例えば、特許文献1には、パイプを用いて深層水を深層領域から表層領域まで汲み上げ、汲み上げた深層水を栄養源として、魚介類の餌となるプランクトンを生産することが記載されている。
【0003】
この方法では、植物プランクトンが深層水に流されて移動しながら増殖する。したがって、植物プランクトンを持続的に生産するには、流れの上流から植物プランクトン(またはその休眠状態の細胞(休眠期細胞、休眠細胞、休眠胞子))を供給し続ける必要がある。深層水に含まれる植物プランクトンの細胞は休眠状態にあると考えられるから、上記方法は、汲み上げた海洋深層水中に「常に」休眠状態の細胞が含まれている場合か、培養する植物プランクトンを上流側から供給する設備を別に備える必要があると考えられる。
【0004】
また、休眠状態の植物プランクトンを発芽させ、増殖可能な状態にするには、適切な環境(光、温度、栄養塩など)を適切な時間保つ必要がある。一方で、休眠状態にない植物プランクトンを継続的に培養することができれば、休眠状態にある植物プランクトンの培養に比べて培養時間の短縮が可能になり、培養効率が向上すると期待することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、休眠状態にない植物プランクトンを継続的に培養することができれば、休眠状態にある植物プランクトンの培養に比べて培養時間の短縮が可能になると考えられる。そこで、植物プランクトンの栄養源となる海洋深層水を継続的に供給しつつ、休眠状態にない植物プランクトンを培養系内に継続的に保持することが可能な植物プランクトン培養装置があれば、海洋深層水での植物プランクトンの培養効率の向上を期待することができる。
【0007】
本開示は、植物プランクトンの栄養源となる海洋深層水を継続的に供給しつつ、休眠状態にない植物プランクトンを培養系内に継続的に保持することが可能となることにより、培養効率が向上した植物プランクトン培養装置及びそれを用いた培養植物プランクトンの生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔1〕植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とを備える培養ユニットを備える、植物プランクトンを海洋深層水で培養するための植物プランクトン培養装置であって、
前記植物プランクトン排出区画は、
海洋深層水を前記植物プランクトン排出区画中へ流入させるための、開閉可能な蓋を有する流入口と、
培養植物プランクトン含有海洋深層水を外部へ排出させるための、開閉可能な蓋を有する排出口と
を備え、
前記植物プランクトン排出区画は、開閉可能な仕切り及び任意で他の植物プランクトン排出区画を介して、前記植物プランクトン捕獲区画と開閉可能に連結され、
前記植物プランクトン排出区画は、前記植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結され、かつ前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋が閉鎖されている時に、前記植物プランクトン捕獲区画と共に、植物プランクトンを海洋深層水で培養するための培養区画を構成する、
植物プランクトン培養装置。
これにより、植物プランクトン排出区画を通じて海洋深層水を継続的に供給しつつ、植物プランクトン捕獲区画中に休眠状態にない植物プランクトンを継続的に保持することができるので、培養効率が向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0009】
〔2〕前記流入口の蓋、前記排出口の蓋、及び前記仕切りの開閉を制御する制御部をさらに備える、請求項1に記載の植物プランクトン培養装置。
【0010】
〔3〕前記制御部が、以下のステップ(a)~(c):
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養するステップと、
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を前記排出口を介して排出するステップと、
(c)ステップ(a)に戻るステップと
を行わせる、上記〔2〕に記載の植物プランクトン培養装置。
これにより、植物プランクトン排出区画を通じて海洋深層水を継続的に供給しつつ、植物プランクトン捕獲区画中に休眠状態にない植物プランクトンを継続的に保持することがより確実に制御されるので、培養効率がより向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0011】
〔4〕前記制御部が、任意の段階で、以下のステップ(p):
(p)前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に、植物プランクトンを補給するステップ
をさらに行わせる、上記〔3〕に記載の植物プランクトン培養装置。
【0012】
〔5〕前記制御部が、ステップ(a)の後かつステップ(b)の前に、以下のステップ(j):
(j)前記培養区画中の植物プランクトンの量が十分であるかどうかを判定し、前記植物プランクトンの量が十分であると判定された場合に、ステップ(b)に進み、前記植物プランクトンの量が十分でないと判定された場合に、ステップ(a)に戻るステップ
をさらに行わせる、上記〔3〕又は〔4〕に記載の植物プランクトン培養装置。
【0013】
〔6〕前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画中の植物プランクトン量を測定するセンサをさらに備える、上記〔1〕~〔5〕に記載の植物プランクトン培養装置。
【0014】
〔7〕前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に光を供給する機構をさらに備える、上記〔1〕~〔6〕に記載の植物プランクトン培養装置。
これにより、培養系に光が供給されて、植物プランクトンの活性化及び増殖が促進し、培養効率が向上する。
【0015】
〔8〕海洋深層水を海洋深層領域から汲み上げて前記植物プランクトン排出区画の流入口へ供給するための海洋深層水供給手段をさらに備え、
前記汲み上げ手段が、
使用時に海洋深層領域中に位置する、海洋深層領域から海洋深層水を汲み上げるための汲み上げ口と、
前記流入口と前記開閉可能な蓋を介して接続された、汲み上げた海洋深層水を前記流入口へ供給するための供給口と、
海洋深層水の汲み上げ及び流入口への供給を促進する水流を駆動させるための水流駆動手段と
を備える、
上記〔1〕~〔7〕に記載の植物プランクトン培養装置。
これにより、海洋深層水の培養系への能動的な供給が促進され、培養効率が向上する。
【0016】
〔9〕前記植物プランクトン捕獲区画及び/又は前記植物プランクトン排出区画に植物プランクトンを補給する手段をさらに備える、上記〔1〕~〔8〕に記載の植物プランクトン培養装置。
【0017】
〔10〕前記培養ユニットが、複数の植物プランクトン排出区画を備える、上記〔1〕~〔9〕に記載の植物プランクトン培養装置。
これにより、複数の植物プランクトン排出区画が「流路」及び「培養容器」のいずれかとして機能するモードを交互に取るので、培養ユニット全体として海洋深層水の継続的な供給と、植物プランクトン捕獲区画中での休眠状態にない植物プランクトンを継続的な保持の両方が継続的に可能となるので、培養効率がさらに向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0018】
〔11〕前記流入口の蓋、前記排出口の蓋、及び前記仕切りの開閉を制御する制御部をさらに備える、請求項10に記載の植物プランクトン培養装置であって、
前記制御部が、以下のステップ(d)~(f):
(d)培養ユニット内の一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、培養ユニット内の残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップと、
(e)前記一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、前記残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップと、
(f)ステップ(d)に戻るステップと
を行わせる、植物プランクトン培養装置:
(A)培養ユニット内において、流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養すること;
(B)培養ユニット内において、仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出口を介して排出すること。
これにより、複数の植物プランクトン排出区画が「流路」及び「培養容器」のいずれかとして機能するモードを交互に取ることがより確実に制御されるので、培養ユニット全体として海洋深層水の継続的な供給と、植物プランクトン捕獲区画中での休眠状態にない植物プランクトンを継続的な保持の両方がより確実に制御されるので、培養効率が一層向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0019】
〔12〕直列に連結された複数の培養ユニットを備える、請求項10又は11に記載の植物プランクトン培養装置であって、
末端の流入口及び排出口を除き、各培養ユニットの全ての排出口が、隣接する培養ユニットの全ての流入口と、培養ユニット間区画を介して連結している、
植物プランクトン培養装置。
これにより、水平方向に小さな面積の培養ユニットを高密度に複数積層することができ、培養効率がより一層向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0020】
〔13〕請求項1に記載の植物プランクトン培養装置を用いた、培養植物プランクトンの生産方法であって、以下のステップ(a)~(c):
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養するステップと、
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を前記排出口を介して排出するステップと、
(c)ステップ(a)に戻るステップと
を含む、培養植物プランクトンの生産方法。
【0021】
〔14〕請求項10又は11に記載の植物プランクトン培養装置を用いた、培養植物プランクトンの生産方法であって、以下のステップ(d)~(f):
(d)一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップと、
(e)前記一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、前記残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップと、
(f)ステップ(d)に戻るステップと
を含む、培養植物プランクトンの生産方法:
(A)流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養すること;
(B)仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出口を介して排出すること。
【発明の効果】
【0022】
本開示によれば、植物プランクトンの栄養源となる海洋深層水を継続的に供給しつつ、休眠状態にない植物プランクトンを培養系内に継続的に保持することが可能となることにより、培養効率が向上した植物プランクトン培養装置及びそれを用いた培養植物プランクトンの生産方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本開示の植物プランクトン培養装置(200)の構成例を示す。
【
図2】植物プランクトン排出区画(212)が「流路モード」を取る時の、
図1の植物プランクトン培養装置(200)の使用例を示す。
【
図3】植物プランクトン排出区画(212)が「培養容器モード」を取る時の、
図1の植物プランクトン培養装置(200)の使用例を示す。
【
図4】海洋深層水供給手段さらに備える場合の本開示の植物プランクトン培養装置(200)の構成例を示す。
【
図5】植物プランクトン排出区画(212)が「流路モード」を取る時の、
図4の植物プランクトン培養装置(200)の使用例を示す。
【
図6】植物プランクトン排出区画(212)が「培養容器モード」を取る時の、
図4の植物プランクトン培養装置(200)の使用例を示す。
【
図7】植物プランクトン排出区画(212)が「流路モード」を取る時の、
図4と同様な実施形態の植物プランクトン培養装置(200)の使用例(斜視図)を示す。
【
図8】植物プランクトン排出区画(212)が「培養容器モード」を取る時の、
図4と同様な実施形態の植物プランクトン培養装置(200)の使用例(斜視図)を示す。
【
図9】培養ユニットが複数の植物プランクトン排出区画(212a、212b)を備える場合の本開示の植物プランクトン培養装置(200)又は培養ユニットの構成例を示す。
【
図10】第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が「流路モード」を取り、一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が「培養容器モード」を取る時の、
図9の植物プランクトン培養装置(200)又は培養ユニットの使用例を示す。
【
図11】第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が「培養容器モード」を取り、一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が「流路モード」を取る時の、
図9の植物プランクトン培養装置(200)又は培養ユニットの使用例を示す。
【
図12】右図は、第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が「流路モード」を取り、一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が「培養容器モード」を取る時の、
図9と同様な実施形態の植物プランクトン培養装置(200)又は培養ユニットの使用例(斜視図)を示す。左図は、第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が「培養容器モード」を取り、一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が「流路モード」を取る時の、
図9と同様な実施形態の植物プランクトン培養装置(200)又は培養ユニットの使用例(斜視図)を示す。
【
図13】直列に連結された複数の培養ユニットを備え、かつ各培養ユニットが複数の植物プランクトン排出区画(212a、212b)を備える場合の本開示の植物プランクトン培養装置(200)の構成例を示す。
【
図14】
図13と同様な実施形態の植物プランクトン培養装置(200)の概略図(斜視図)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しながら、本発明を詳細に説明するが、図面は本発明を説明するための例示であり、本発明の技術的範囲は図面による例示により限定されるものではない。
【0025】
〔植物プランクトン培養装置〕
(植物プランクトン培養装置の使用形式)
本開示の植物プランクトン培養装置は、植物プランクトンを海洋深層水で培養するために用いられる。本開示の植物プランクトン培養装置は、通常は、所定の区画で区切られた長尺型容器又は流路(例、パイプ)の形状を有し、一方の端部に、海洋深層水を流入させるための流入部を有し、他方の端部に、培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出させるための排出部を有する。本明細書中で「区画」とは、容器又は流路中の所定の境界で区切られた領域をいう。本開示の植物プランクトン培養装置は、通常は、流入部が海洋深層領域に位置し、かつ排出部が海洋表層領域に位置するように、海洋中に設置して用いられる。本開示の植物プランクトン培養装置は、海洋深層水を海洋深層領域から流入部を介して培養装置内部へ流入させ、培養装置内部で植物プランクトンを海洋深層水で培養し、培養装置内部の植物プランクトン含有海洋深層水を排出部を介して培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出させることによって、植物プランクトンを培養する。
【0026】
(植物プランクトン培養装置の構成)
一実施形態において、本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、1つ又は複数の培養ユニット(210)を備える。培養ユニット(210)は、1つ又は複数の植物プランクトン捕獲区画(211)と、1つ又は複数の植物プランクトン排出区画(212)とを備える。ここで、植物プランクトン排出区画(212)は、海洋深層水(111)を前記植物プランクトン排出区画(212)中へ流入させるための、開閉可能な蓋を有する流入口(231)と、培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)を外部へ排出させるための、開閉可能な蓋を有する排出口とを備える。また、植物プランクトン排出区画(212)は、開閉可能な仕切り及び任意で他の植物プランクトン排出区画(212)を介して、前記植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結される。また、植物プランクトン排出区画(212)は、植物プランクトン捕獲区画(211)と開放的に連結され、かつ流入口の蓋及び前記排出口の蓋が閉鎖されている時に、植物プランクトン捕獲区画(211)と共に、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養するための培養区画を構成する。本開示の植物プランクトン培養装置(200)が培養ユニット(210)内に植物プランクトン捕獲区画(211)と植物プランクトン排出区画(212)を備えることから、植物プランクトン排出区画(212)を通じて海洋深層水(111)を継続的に供給しつつ、植物プランクトン捕獲区画中(211)に休眠状態にない植物プランクトンを継続的に保持することができるので、培養効率が向上した植物プランクトンの培養が可能となる。
【0027】
<植物プランクトン捕獲区画>
本開示において、「植物プランクトン捕獲区画」とは、培養供給源となる植物プランクトンを捕獲する「捕獲容器」としての機能と、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養する「培養容器」としての機能を兼ね備える区画である。培養ユニット(210)内で、植物プランクトン捕獲区画(211)は、開閉可能な仕切りを介して植物プランクトン排出区画(212)と開閉可能に連結される。また、植物プランクトン捕獲区画(211)は、通常は、上記の開閉可能な仕切りを介した植物プランクトン排出区画(212)との連結以外には、海洋深層水導通系とは連結しない(このことを、植物プランクトン捕獲区画(211)が固定された蓋(235、236)で閉鎖されている、ということがある。)。培養ユニット(210)内での植物プランクトン捕獲区画(211)の数は、1つであっても複数であってもよいが、機構の簡略化の観点から、1つであることが好ましい。
【0028】
<植物プランクトン排出区画>
本開示において、「植物プランクトン排出区画」とは、海洋深層水(111)を流入させつつ培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)を外部へ排出させる「流路」としての機能と、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養する「培養容器」としての機能を兼ね備える区画である。植物プランクトン排出区画は、開閉可能な蓋を有する流入口(231)と、開閉可能な蓋を有する排出口とを備える。各植物プランクトン排出区画において、流入口の蓋及び排出口の蓋は、連動して開閉するものであってもよく、連動せず別個に開閉するものであってもよいが、連動して開閉するものであることが好ましい。
【0029】
また、培養ユニット(210)内で、植物プランクトン排出区画は、「直接的に」又は「間接的に」植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結される。上記の「直接的に連結される」とは、植物プランクトン排出区画が、開閉可能な仕切りを介して植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結されることを意味する。一方、上記の「間接的に連結される」とは、培養ユニット(210)が複数の植物プランクトン排出区画を備える場合に、植物プランクトン排出区画が開閉可能な仕切り及び他の植物プランクトン排出区画を介して植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結されることを意味する。より具体的には、上記の「間接的に連結される」とは、植物プランクトン排出区画が、開閉可能な仕切りを介して別の植物プランクトン排出区画と開閉可能に連結され、さらに、当該別の植物プランクトン排出区画が、開閉可能な仕切りを介して植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結されるか、あるいは、開閉可能な仕切り及びさらに別の植物プランクトン排出区画を介して植物プランクトン捕獲区画(211)と開閉可能に連結されることを意味する。
【0030】
培養ユニット(210)内での植物プランクトン排出区画の数は、1つであっても複数であってもよいが、後述するように連続運転での培養を可能にする観点から、複数であることが好ましい。
【0031】
<植物プランクトン排出区画の取り得るモード>
植物プランクトン排出区画は、流入口の蓋、排出口の蓋、及び仕切りの開閉状態に応じて、「流路」又は「培養容器」のいずれかとして機能するモード(以下、それぞれ「流路モード」、「培養容器モード」という。)を取る。
【0032】
-流路モード-
仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画(211)との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放することにより、植物プランクトン排出区画は、「流路モード」を取る。植物プランクトン排出区画が「流路モード」を取る場合、海洋深層水(111)を流入口(231)を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)を排出口を介して排出するように培養ユニット(210)を運転させることができる。また、植物プランクトン培養装置(200)を使用する初期状態において、植物プランクトン排出区画が「流路モード」を取る場合、海洋深層水(111)を流入口(231)を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させて、海洋深層水(111)を植物プランクトン排出区画中に充填させるように培養ユニット(210)を運転させることができる。
【0033】
-培養容器モード-
流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画(211)と開放的に連結させることにより、植物プランクトン排出区画は、「培養容器モード」を取る。植物プランクトン排出区画が「培養容器モード」を取る場合、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画(211)及び植物プランクトン排出区画は、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養するための区画(以下、「培養区画」という。)を構成し、当該「培養区画」中で、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養するように培養ユニット(210)を運転させることができる。
【0034】
<センサ>
本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、植物プランクトン捕獲区画(211)及び/又は植物プランクトン排出区画中の植物プランクトン量を測定するセンサをさらに備えてもよい。センサの測定対象となる植物プランクトン量の指標となるパラメータとしては、例えば、培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)の栄養塩濃度(数値が低いほど植物プランクトン量が多いことを示す。)、生物量、クロロフィル量、濁度(以上、数値が高いほど植物プランクトン量が多いことを示す。)等が挙げられる。
【0035】
<光を供給する機構>
植物プランクトンの増殖には光が必要である一方で、海中では深くなるにつれて太陽光が到達しなくなる。そこで、植物プランクトンの活性化及び増殖を促進する観点から、本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、植物プランクトン捕獲区画(211)及び/又は植物プランクトン排出区画に光を供給する機構をさらに備えてもよい。光を供給する機構としては、例えば、太陽光線を導光する装置等が挙げられる。また、本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、光の供給が容易になる観点から、透明であってもよい。
【0036】
<海洋深層水供給手段>
本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、海洋深層水(111)を海洋深層領域から汲み上げて前記植物プランクトン排出区画の流入口(231)へ供給するための手段(100)(以下、「海洋深層水供給手段(100)」という。)をさらに備えてもよい。「海洋深層水供給手段(100)」は、例えば、
使用時に海洋深層領域中に位置する、海洋深層領域から海洋深層水(111)を汲み上げるための汲み上げ口(101)と、
前記流入口(231)と前記開閉可能な蓋を介して接続された、汲み上げた海洋深層水(111)を前記流入口(231)へ供給するための供給口(102)と、
海洋深層水(111)の汲み上げ及び流入口(231)への供給を促進する水流を駆動させるための水流駆動手段(103)と
を備えるものであってもよい。
【0037】
<植物プランクトン補給手段>
本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、植物プランクトン捕獲区画(211)及び/又は植物プランクトン排出区画に植物プランクトンを補給する手段(以下、「植物プランクトン補給手段」という。)をさらに備えてもよい。植物プランクトン補給手段としては、例えば、植物プランクトンをあらかじめ封入した容器、植物プランクトン捕獲区画(211)の蓋を取り外して設置された植物プランクトン供給手段等が挙げられる。
【0038】
<撹拌手段>
本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、植物プランクトン捕獲区画(211)及び/又は植物プランクトン排出区画に撹拌手段を備えてもよい。撹拌手段としては、回転羽根、バブリング等が挙げられる。
【0039】
<制御部>
本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、流入口の蓋、排出口の蓋、及び仕切りの開閉を制御する制御部をさらに備えてもよい。
【0040】
<制御方法>
制御部は、植物プランクトン排出区画を「流路モード」にすることと、「培養容器モード」にすることを交互に繰り返すように流入口の蓋、排出口の蓋、及び仕切りの開閉を制御することが好ましい。このような制御は、具体的には、制御部に以下のステップ(a)~(c)を行わせることによって実現することができる。ここで、ステップ(a)が「培養容器モード」に相当し、ステップ(b)が「流路モード」に相当する。
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画(211)と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画(211)と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養するステップ。
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画(211)との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水(111)を前記流入口(231)を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)を前記排出口を介して排出するステップ。
(c)ステップ(a)に戻るステップ。
【0041】
また、十分な量の培養源となる植物プランクトンを培養系に確保するために、制御部は、任意の段階で、以下のステップ(p)をさらに行わせるものであってもよい。
(p)植物プランクトン捕獲区画(211)及び/又は植物プランクトン排出区画に、植物プランクトンを補給するステップ。
ステップ(p)は、例えば、上述した植物プランクトン補給手段を用いて行うことができる。
【0042】
また、十分な培養量の植物プランクトンを得るために、制御部は、ステップ(a)の後かつステップ(b)の前に、以下のステップ(j)をさらに行わせるものであってもよい。
(j)培養区画中の植物プランクトンの量が十分であるかどうかを判定し、植物プランクトンの量が十分であると判定された場合に、ステップ(b)に進み、植物プランクトンの量が十分でないと判定された場合に、ステップ(a)に戻るステップ。
ステップ(j)における植物プランクトンの量が十分であるかどうかの判定は、例えば、上述したセンサを用いて「培養区画」中の植物プランクトンの量の指標となるパラメータを測定し、当該パラメータの経時変化が概ねプラトーに達した時に、植物プランクトンの量が十分であると判定することによって行うことができる。
【0043】
また、初期状態において、制御部は、最初のステップ(a)を行う前に、以下のステップ(i)をさらに行わせるものであってもよい。
(i)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、かつ、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画(211)と開放的に連結させ、次いで、海洋深層水(111)を前記流入口を介して植物プランクトン排出区画及び植物プランクトン捕獲区画(211)に充填するステップ。
【0044】
(培養ユニットが複数の植物プランクトン排出区画を備える植物プランクトン培養装置)
別の実施形態において、本開示の植物プランクトン培養装置(200)の培養ユニット(210)は、複数の植物プランクトン排出区画を備えてもよい。培養ユニット(210)内での植物プランクトン排出区画の数が複数であれば、後述する制御方法を用いて連続運転での培養を可能にすることができるので、好ましい。
【0045】
<制御方法>
培養ユニット(210)内での植物プランクトン排出区画の数が複数である場合、制御部は、培養ユニット(210)内のプランクトン排出区画を「第1群」(下記の「一部の植物プランクトン排出区画」に相当)及び「第2群」(下記の「残りの植物プランクトン排出区画」に相当)」に分け、
・「第1群」の植物プランクトン排出区画を「培養容器モード」(下記(A)の状態に相当)にしつつ「第2群」の植物プランクトン排出区画を「流路モード」(下記(B)の状態に相当)にすること(下記のステップ(d)に相当)と、
・「第1群」の植物プランクトン排出区画を「流路モード」にしつつ「第2群」の植物プランクトン排出区画を「培養容器モード」にすること(下記のステップ(e)に相当)
を交互に繰り返すように流入口の蓋、排出口の蓋、及び仕切りの開閉を制御することが好ましい。
【0046】
このような制御は、具体的には、制御部に以下のステップ(d)~(f)を行わせることによって実現することができる。
(d)培養ユニット(210)内の一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、培養ユニット(210)内の残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップ。
(e)上記の一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、上記の残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップ。
(f)ステップ(d)に戻るステップ。
(A)培養ユニット(210)内において、流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画(211)と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画(211)と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水(111)で培養すること。
(B)培養ユニット(210)内において、仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画(211)との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水(111)を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)を排出口を介して排出すること。
【0047】
上記制御方法により作動する1つの培養ユニット(210)からなる植物プランクトン培養装置(200)の模式図の例を、
図9~12に示す。
図9は、植物プランクトン培養装置(200)(培養ユニット(210))の構成例を示す。
【0048】
図11及び
図12の左図は、ステップ(d)を行っている時の植物プランクトン培養装置(200)(培養ユニット(210))を示す。同図では、第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が、流入口の蓋及び排出口の蓋が閉鎖され、かつ、仕切りが開放されることによって「培養容器モード」を取り、植物プランクトン捕獲区画(211)と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンが海洋深層水(111)で培養される。一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が、仕切りが閉鎖され、かつ、流入口の蓋及び排出口の蓋が開放されることによって「流路モード」を取り、海洋深層水(111)が流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入しつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)が排出口を介して排出される。
【0049】
図10及び
図12の右図は、ステップ(e)を行っている時の植物プランクトン培養装置(200)(培養ユニット(210))を示す。同図では、第1群の植物プランクトン排出区画(212a)が、仕切りが閉鎖され、かつ、流入口の蓋及び排出口の蓋が開放されることによって「流路モード」を取り、海洋深層水(111)が流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入しつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水(112)が排出口を介して排出される。一方で、第2群の植物プランクトン排出区画(212b)が、流入口の蓋及び排出口の蓋が閉鎖され、かつ、仕切りが開放されることによって「培養容器モード」を取り、植物プランクトン捕獲区画(211)と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンが海洋深層水(111)で培養される。
【0050】
「培養容器モード」と「流路モード」の切り替えのタイミングは、培養区画中の植物プランクトンの量が十分であるかどうかによって決定してもよく、所定時間の経過を指標として決定してもよい。
【0051】
上記のように、複数の植物プランクトン排出区画を「第1群」及び「第2群」に分け、交互に「培養容器モード」と「流路モード」にすることによって、培養ユニット(210)において、培養植物プランクトンの培養と、海洋深層水(111)の流入及び排出とを連続運転で行うことができる。
【0052】
(複数の培養ユニットを備える植物プランクトン培養装置)
さらに別の実施形態において、本開示の植物プランクトン培養装置(200)は、直列に連結された複数の培養ユニット(210)を備えてもよい。この場合、各培養ユニット(210)は、上記で説明した複数の植物プランクトン排出区画を備える培養ユニット(210)である。また、末端の流入口及び排出口を除き、各培養ユニット(210)の全ての排出口が、隣接する培養ユニット(210)の全ての流入口と、培養ユニット(210)間区画を介して連結している。このような植物プランクトン培養装置(200)の模式図の例を、
図13及び14に示す。
【0053】
各培養ユニット(210)における「培養容器モード」と「流路モード」の切り替えのタイミングは、同期していてもよく、非同期であってもよい。
【0054】
各培養ユニット(210)は、上記のように、植物プランクトンの培養と、海洋深層水(111)の流入及び排出とを連続運転で行うことができることが好ましい。各培養ユニット(210)が植物プランクトンの培養と、海洋深層水(111)の流入及び排出とを連続運転で行うことができれば、植物プランクトン培養装置(200)全体として、植物プランクトンの培養を連続運転で行うことができ、培養植物プランクトンの生産効率の向上を期待することができる。
【0055】
〔培養植物プランクトンの生産方法〕
本開示の植物プランクトン培養装置は、培養植物プランクトンの生産方法に用いることができる。上記の一実施形態における本開示の植物プランクトン培養装置を用いた場合、培養植物プランクトンの生産方法は、例えば、以下のステップ(a)~(c)を含んでもよい。
(a)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を閉鎖し、次いで、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養するステップ。
(b)前記仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して前記植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ、前記植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を前記排出口を介して排出するステップ。
(c)ステップ(a)に戻るステップ。
【0056】
また、十分な量の培養源となる植物プランクトンを培養系に確保するために、培養植物プランクトンの生産方法は、任意の段階で、以下のステップ(p)をさらに含んでもよい。
(p)植物プランクトン捕獲区画及び/又は植物プランクトン排出区画に、植物プランクトンを補給するステップ。
ステップ(p)は、例えば、上述した植物プランクトン補給手段を用いて行うことができる。
【0057】
また、十分な培養量の植物プランクトンを得るために、培養植物プランクトンの生産方法は、ステップ(a)の後かつステップ(b)の前に、以下のステップ(j)をさらに含んでもよい。
(j)培養区画中の植物プランクトンの量が十分であるかどうかを判定し、植物プランクトンの量が十分であると判定された場合に、ステップ(b)に進み、植物プランクトンの量が十分でないと判定された場合に、ステップ(a)に戻るステップ。
ステップ(j)における植物プランクトンの量が十分であるかどうかの判定は、例えば、上述したセンサを用いて「培養区画」中の植物プランクトンの量の指標となるパラメータを測定し、当該パラメータの経時変化が概ねプラトーに達した時に、植物プランクトンの量が十分であると判定することによって行うことができる。
【0058】
また、培養植物プランクトンの生産方法は、初期状態において、最初のステップ(a)を行う前に、以下のステップ(i)をさらに含んでもよい。
(i)前記流入口の蓋及び前記排出口の蓋を開放し、かつ、前記仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、海洋深層水を前記流入口を介して植物プランクトン排出区画及び植物プランクトン捕獲区画に充填するステップ。
【0059】
培養植物プランクトンの生産方法のステップをより細かく分けると、例えば、以下の順序のとおりとなる。
・工程S1:植物プランクトン培養装置への海洋深層水の供給を開始する。
・工程S2:植物プランクトン捕獲区画に植物プランクトンと海洋深層水を導入する。
・工程S3:植物プランクトン排出区画に海洋深層水を充填する(植物プランクトン排出区画の流入口の蓋及び排出口の蓋は開放。植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画の連結は閉鎖。)。
・工程S4:植物プランクトン排出区画の流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖する(植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画の連結は閉鎖。)。
・工程S5:植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画の連結を開放する。
・工程S6:培養区画(植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画)中で植物プランクトンを培養する。
・工程S7:培養区画中の植物プランクトンの培養が十分となり終了したか判定する。培養が十分でなければ、工程S6に戻り、培養が十分であれば、工程S8に進む。
・工程S8:植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画の連結を閉鎖する。
・工程S9:植物プランクトン排出区画の流入口の蓋及び排出口の蓋を開放する。植物プランクトン排出区画から培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出し、植物プランクトン排出区画に海洋深層水を導入する。
・工程S10:植物プランクトン排出区画からの培養植物プランクトン含有海洋深層水の排出が完了したか判定する。排出が完了していなかったら、工程S9に戻り、排出が完了していたら、工程S3に戻る。
【0060】
また、上記の別の実施形態における本開示の植物プランクトン培養装置(即ち、培養ユニットが複数の植物プランクトン排出区画を備える植物プランクトン培養装置)を用いた場合、培養植物プランクトンの生産方法は、例えば、以下のステップ(d)~(f)を含んでもよい。
(d)一部の植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせつつ、残りの植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせるステップ。
(e)前記一部の植物プランクトン排出区画に下記(B)を行わせつつ、前記残りの植物プランクトン排出区画に下記(A)を行わせるステップ。
(f)ステップ(d)に戻るステップ。
(A)流入口の蓋及び排出口の蓋を閉鎖し、次いで、仕切りを開放することにより植物プランクトン排出区画を植物プランクトン捕獲区画と開放的に連結させ、次いで、開放的に連結された植物プランクトン捕獲区画と植物プランクトン排出区画とで構成される培養区画中で、植物プランクトンを海洋深層水で培養すること。
(B)仕切りを閉鎖することにより植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との連結を閉鎖し、次いで、流入口の蓋及び排出口の蓋を開放し、次いで、海洋深層水を流入口を介して植物プランクトン排出区画中へ流入させつつ植物プランクトン排出区画中の培養植物プランクトン含有海洋深層水を排出口を介して排出すること。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本開示によれば、植物プランクトンの栄養源となる海洋深層水を継続的に供給しつつ、休眠状態にない植物プランクトンを培養系内に継続的に保持することが可能となることにより、培養効率が向上した植物プランクトン培養装置及びそれを用いた培養植物プランクトンの生産方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0062】
100 海洋深層水供給手段
101 汲み上げ口
102 供給口
103 水流駆動手段
111 海洋深層水
112 培養植物プランクトン含有海洋深層水
200 植物プランクトン培養装置
210 培養ユニット
211 植物プランクトン捕獲区画
212 植物プランクトン排出区画
212a 第1群の植物プランクトン排出区画
212b 第2群の植物プランクトン排出区画
214 供給区画
221 開閉可能な仕切り
221a 第1群の植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との間の開閉可能な仕切り
221b 第2群の植物プランクトン排出区画と植物プランクトン捕獲区画との間の開閉可能な仕切り
231 流入口
231a 第1群の植物プランクトン排出区画の流入口
231b 第2群の植物プランクトン排出区画の流入口
232 排出口
232a 第1群の植物プランクトン排出区画の排出口
232b 第2群の植物プランクトン排出区画の排出口
233 流入口の蓋
233a 第1群の植物プランクトン排出区画の流入口の蓋
233b 第2群の植物プランクトン排出区画の流入口の蓋
234 排出口の蓋
234a 第1群の植物プランクトン排出区画の排出口の蓋
234b 第2群の植物プランクトン排出区画の排出口の蓋
235 植物プランクトン捕獲区画の下側蓋
236 植物プランクトン捕獲区画の上側蓋
240 植物プランクトン
250 培養ユニット間区画