(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140764
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両制御装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/16 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G08G1/16 C
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052087
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 翔太
【テーマコード(参考)】
5H181
【Fターム(参考)】
5H181AA01
5H181AA05
5H181BB04
5H181BB13
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181CC27
5H181FF04
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF27
5H181FF32
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL08
5H181LL09
5H181MB02
5H181MC24
5H181MC25
(57)【要約】
【課題】交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した車両制御を実現する。
【解決手段】制御装置100は、自車両の周辺状況を認識する認識部110と、自車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定する第1判定部120と、走行予定車線と同一進行方向の隣接車線があるか否かを判定する第2判定部130と、横断歩道があると判定され且つ隣接車線があると判定された場合に、隣接車線上の横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定する第3判定部140と、他車両が存在すると判定された場合に、自車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する走行制御部150と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定する第1判定部と、
前記認識部の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定する第3判定部と、
前記第3判定部によって前記他車両が存在すると判定された場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する走行制御部と、
を備える、車両制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記横断歩道は、一の道路と他の道路とが交差する交差点に設けられた横断歩道であり、
前記走行予定車線及び前記隣接車線は、前記交差点の前後のいずれにおいても前記一の道路に含まれる車線である、
車両制御装置。
【請求項3】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記第3判定部は、前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し、且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止し、且つ前記横断歩道から所定距離以内の前記他車両が存在するか否かを判定する、
車両制御装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両制御装置であって、
前記第3判定部は、前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し、且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止し、且つ所定の車外報知を行っていない前記他車両が存在するか否かを判定する、
車両制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の車両制御装置であって、
前記車外報知は、方向指示器、ハザードランプ、停止表示板、又は発炎筒による報知である、
車両制御装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の車両制御装置であって、
前記車両制御装置は、
前記走行制御部によって前記抑制制御が実行されているときに、前記抑制制御を終了させる所定の終了条件が成立したか否かを判定する第4判定部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記第4判定部によって前記終了条件が成立したと判定された場合に、前記抑制制御を終了する、
車両制御装置。
【請求項7】
請求項6に記載の車両制御装置であって、
前記第4判定部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記横断歩道の少なくとも所定範囲に交通参加者が存在しないと判定した場合に、前記終了条件が成立したと判定し、
前記所定範囲は、前記横断歩道のうち、前記走行予定車線と重なる部分と、前記隣接車線と重なる部分とを含む、
車両制御装置。
【請求項8】
請求項6に記載の車両制御装置であって、
前記第4判定部は、前記車両が前記横断歩道を通過した場合に、前記終了条件が成立したと判定する、
車両制御装置。
【請求項9】
車両を制御するコンピュータが実行する制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定し、
前記周辺状況の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定し、
前記横断歩道があると判定し、且つ前記隣接車線があると判定した場合に、前記周辺状況の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定し、
前記他車両が存在すると判定した場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する、
処理を行う、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市と人間の居住地を包摂的、安全、強靭且つ持続可能にするため、交通の安全性改善が求められている。交通の安全性改善の観点から、移動体(例えば車両)の運転支援技術や自動運転技術の開発が進められている(例えば下記特許文献1、2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-238185号公報
【特許文献2】特開2016-053755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術にあっては、交通の安全性を向上させる観点から、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、交通の安全性を向上させることが可能な車両制御装置、及び制御方法を提供する。そして、ひいては交通の安全性をより一層改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
車両を制御する車両制御装置であって、
前記車両の周辺状況を認識する認識部と、
前記認識部の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定する第1判定部と、
前記認識部の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定する第2判定部と、
前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定する第3判定部と、
前記第3判定部によって前記他車両が存在すると判定された場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する走行制御部と、
を備える、車両制御装置である。
【0007】
本発明の他の一態様は、
車両を制御するコンピュータが実行する制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定し、
前記周辺状況の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定し、
前記横断歩道があると判定し、且つ前記隣接車線があると判定した場合に、前記周辺状況の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定し、
前記他車両が存在すると判定した場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する、
処理を行う、制御方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、交通の安全性を向上させることが可能な車両制御装置、及び制御方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】制御装置100を含む車両システム1の全体構成を示すブロック図である。
【
図2】制御装置100による制御の具体例を示す図(その1)である。
【
図3】制御装置100による制御の具体例を示す図(その2)である。
【
図4】制御装置100による制御の具体例を示す図(その3)である。
【
図5】制御装置100による制御の具体例を示す図(その4)である。
【
図6】制御装置100が実行する処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両制御装置及び制御方法の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0011】
<車両システム1の全体構成>
図1は、本発明の車両制御装置の一実施形態である制御装置100を含む車両システム1の全体構成を示すブロック図である。車両システム1が搭載される車両を、以下、「自車両M1」とも称する。自車両M1は、例えば、二輪、三輪、又は四輪などの自動車であり、その駆動源は、ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関、電動機、あるいはこれらの組み合わせである。電動機は、内燃機関に連結された発電機による発電電力、あるいは二次電池や燃料電池の放電電力を使用して動作する。
【0012】
車両システム1は、例えば、カメラ10と、レーダ装置12と、LIDAR(Light Detection and Ranging)14と、物体認識装置16と、通信装置20と、HMI(Human Machine Interface)30と、車両センサ40と、ドライバモニタカメラ50と、ナビゲーション装置60と、MPU(Map Positioning Unit)70と、運転操作子80と、ウインカー91と、制御装置100と、走行駆動力出力装置200と、ブレーキ装置210と、ステアリング装置220と、電動パーキングブレーキ装置230と、を備える。これらの装置や機器は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信線などの多重通信線やシリアル通信線、又は無線通信網によって互いに接続されている。
【0013】
カメラ10は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの固体撮像素子を利用したデジタルカメラであり、自車両M1の周辺を撮像する。カメラ10は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。
【0014】
レーダ装置12は、自車両M1の周辺にミリ波などの電波を放射するとともに、物体で反射された電波(反射波)を検出して少なくとも物体の位置(距離及び方位)を検出する。レーダ装置12は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。
【0015】
LIDAR14は、自車両M1の周辺に光(あるいは光に近い波長の電磁波)を照射し、散乱光を測定する。LIDAR14は、発光から受光までの時間に基づいて、対象までの距離を検出する。照射される光は、例えば、パルス状のレーザー光である。LIDAR14は、自車両M1の任意の箇所に取り付けられる。また、自車両M1は、LIDAR14を備えていなくてもよい。
【0016】
物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14のうち一部又は全部の検出結果に対してセンサフュージョン処理を行って、物体の位置、種類、速度などを認識する。物体認識装置16は、認識結果を制御装置100に出力する。物体認識装置16は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14の検出結果をそのまま制御装置100に出力してもよい。また、自車両M1がLIDAR14を備えていない場合、物体認識装置16は、カメラ10、及びレーダ装置12の検出結果に対してセンサフュージョン処理を行うことで、物体の位置などを認識するようにしてもよい。
【0017】
通信装置20は、例えば、セルラー網やWi-Fi(登録商標)網、Bluetooth(登録商標)、DSRC(Dedicated Short Range Communication)などを利用して、自車両M1の周辺に存在する他車両と通信し、あるいは無線基地局を介して各種サーバ装置と通信する。
【0018】
HMI30は、自車両M1の乗員に対して各種情報を提示するとともに、乗員による入力操作を受け付ける。
【0019】
車両センサ40は、自車両M1の走行速度(以下、「車速」とも称する)を検出する車速センサ、加速度を検出する加速度センサ、鉛直軸回りの角速度を検出するヨーレートセンサ、自車両M1の向きを検出する方位センサなどを含む。
【0020】
ドライバモニタカメラ50は、例えば、CCDやCMOSなどの固体撮像素子を利用したデジタルカメラである。ドライバモニタカメラ50は、自車両M1の運転席に着座した乗員(以下、「運転者」とも称する)の頭部を正面から(すなわち顔面を撮像する向きで)撮像可能な位置及び向きで、自車両M1における任意の箇所に取り付けられる。
【0021】
ナビゲーション装置60は、例えば、GNSS(Global Navigation Satellite System)受信機61と、ナビHMI62と、経路決定部63とを備える。ナビゲーション装置60は、HDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどの記憶装置に第1地図情報64を保持している。
【0022】
GNSS受信機61は、GNSS衛星から受信した信号に基づいて、自車両M1の現在位置を特定する。自車両M1の現在位置は、車両センサ40の出力を利用したINS(Inertial Navigation System)によって特定又は補完されてもよい。
【0023】
ナビHMI62は、表示装置、スピーカ、タッチパネル、キーなどを含む。ナビHMI62は、前述したHMI30と一部又は全部が共通化されてもよい。
【0024】
経路決定部63は、例えば、GNSS受信機61により特定された自車両M1の位置(あるいは入力された任意の位置)から、ナビHMI62を用いて乗員により入力された目的地までの経路(以下、「地図上経路」とも称する)を、第1地図情報64を参照して決定する。第1地図情報64は、例えば、道路を示すリンクと、リンクによって接続されたノードとによって道路形状が表現された情報である。第1地図情報64は、道路の曲率やPOI(Point Of Interest)情報などを含んでもよい。地図上経路は、MPU70に出力される。
【0025】
ナビゲーション装置60は、地図上経路に基づいて、ナビHMI62を用いた経路案内を行ってもよい。ナビゲーション装置60は、通信装置20を介してナビゲーションサーバに現在位置と目的地を送信し、ナビゲーションサーバから地図上経路と同等の経路を取得してもよい。
【0026】
MPU70は、例えば、推奨車線決定部71を含み、HDDやフラッシュメモリなどの記憶装置に第2地図情報72を保持している。推奨車線決定部71は、ナビゲーション装置60から提供された地図上経路を複数のブロックに分割し(例えば、車両進行方向に関して100[m]毎に分割し)、第2地図情報72を参照してブロック毎に推奨車線を決定する。推奨車線決定部71は、例えば、左から何番目の車線を走行するといった決定を行う。推奨車線決定部71は、地図上経路に分岐箇所が存在する場合、自車両M1が、分岐先に進行するための合理的な経路を走行できるように、推奨車線を決定する。
【0027】
第2地図情報72は、第1地図情報64よりも高精度な地図情報である。第2地図情報72は、例えば、車線種情報(直進専用車線、右折専用車線、左折専用車線、等)、車線の中央の情報、車線の境界の情報、等を含んでいる。また、第2地図情報72には、道路情報、交通規制情報、住所情報、施設情報、電話番号情報などが含まれてよい。第2地図情報72は、通信装置20が他装置と通信することにより、随時、アップデートされてよい。
【0028】
運転操作子80は、例えば、ステアリングホイール82の他、ウインカーレバー、アクセルペダル、ブレーキペダル、シフトレバー、その他の操作子を含む。運転操作子80には、操作量あるいは操作の有無を検出するセンサが取り付けられており、その検出結果は、制御装置100、走行駆動力出力装置200、ブレーキ装置210、及びステアリング装置220のうち一部又は全部に出力される。
【0029】
ステアリングホイール82は、必ずしも環状である必要は無く、異形ステアやジョイスティック、ボタンなどの形態であってもよい。ステアリングホイール82には、ステアリング把持センサ84が取り付けられている。ステアリング把持センサ84は、静電容量センサなどにより実現され、運転者がステアリングホイール82を把持しているか否かを検知可能な信号を制御装置100に出力する。
【0030】
ウインカー91は、自車両M1の左側(例えば左前と左後)及び右側(例えば右前と右後)のそれぞれに、自車両M1の外部から視認可能に設けられたランプ(灯体)などにより構成される方向指示器である。ウインカー91は、運転者が操作可能に設けられたウインカーレバーの操作に応じて点灯又は消灯する。
【0031】
走行駆動力出力装置200は、自車両M1が走行するための走行駆動力(トルク)を車輪(具体的には駆動輪。例えば前輪)に出力する。走行駆動力出力装置200は、例えば、内燃機関、電動機、及び変速機などの組み合わせと、これらを制御するECU(Electronic Control Unit)とを備える。走行駆動力出力装置200のECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って、上記の構成を制御する。
【0032】
ブレーキ装置210は、例えば、ブレーキキャリパーと、ブレーキキャリパーに油圧を伝達するシリンダと、シリンダに油圧を発生させる電動モータと、ブレーキECUとを備える。ブレーキECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従ってブレーキ装置210の電動モータを制御し、制動操作に応じたブレーキトルクが各車輪に出力されるようにする。
【0033】
ステアリング装置220は、例えば、ステアリングECUと、電動モータとを備える。ステアリング装置220の電動モータは、例えば、ラックアンドピニオン機構に力を作用させて転舵輪の向きを変更する。ステアリングECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って、ステアリング装置220の電動モータを駆動し、転舵輪の向きを変更させる。
【0034】
電動パーキングブレーキ装置230は、例えば、自車両M1の車輪(例えば後輪。すなわち非駆動輪)のブレーキキャリパーを把持するようにブレーキパッドを駆動させることによってブレーキキャリパーに作用する把持力(制動力)を発生させる電動モータと、電動パーキングブレーキECU(以下、「EPB-ECU」とも称する)とを備える。EPB-ECUは、制御装置100から入力される情報、あるいは運転操作子80から入力される情報に従って電動パーキングブレーキ装置230の電動モータを制御し、自車両M1の車輪を固定させる。すなわち、電動パーキングブレーキ装置230は、電子制御により車輪を固定可能に構成される。
【0035】
<制御装置>
制御装置100は、自車両M1の全体を統括制御するコンピュータであり、例えば、認識部110と、第1判定部120と、第2判定部130と、第3判定部140と、走行制御部150と、を備える。
【0036】
認識部110、第1判定部120、第2判定部130、第3判定部140、走行制御部150及び第4判定部160の各機能部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)などのハードウェアプロセッサが所定のプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。また、これらのうち一部又は全部は、LSI(Large Scale Integration)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、GPU(Graphics Processing Unit)などのハードウェア(回路部:circuitryを含む)によって実現されてもよいし、ソフトウェアとハードウェアの協働によって実現されてもよい。プログラムは、制御装置100のHDDやフラッシュメモリなどの記憶装置にあらかじめ格納されていてもよい。
【0037】
認識部110は、カメラ10、レーダ装置12、及びLIDAR14から物体認識装置16を介して入力される情報に基づいて、自車両M1の周辺状況を認識する。例えば、認識部110は、自車両M1の周辺にある物体の位置に加えて、当該物体の速度及び/又は加速度といった移動状態を認識する。物体の位置は、例えば自車両M1の代表点(重心や駆動軸中心など)を原点とした絶対座標上の位置として認識され、制御に使用される。物体の位置は、その物体の重心やコーナーなどの代表点で表されてもよいし、領域で表されてもよい。
【0038】
認識部110によって認識される物体の一例は、自車両M1の周辺に存在する交通参加者である。ここで、交通参加者には、例えば、自車両M1とは異なる自動車である他車両M2のほか、歩行者や自転車なども含まれる。さらに、認識部110は、他車両M2を認識した場合、当該他車両M2において所定の車外報知が行われているかについても認識し得る。ここで、車外報知には、例えば、方向指示器、ハザードランプ、停止表示板、又は発炎筒による報知が含まれる。
【0039】
また、認識部110によって認識される物体の他の一例は、道路区画線や道路標識、横断歩道CW、及び信号機SGといった交通に関する地物である。さらに、認識部110は、信号機SGを認識した場合、当該信号機SGが備える青信号灯SG_G、黄信号灯SG_Y及び赤信号灯SG_Rのうちのどれが点灯しているかについても認識し得る。ここで、青信号灯SG_Gは、所定の停止位置を越えて進行可能であることを示す信号灯である。また、黄信号灯SG_Yは、安全に停止することができない場合を除いて、所定の停止位置を越えて進行してはならないことを示す信号灯である。そして、赤信号灯SG_Rは、所定の停止位置を越えて進行してはならないことを示す信号灯である。
【0040】
また、認識部110は、例えば、MPU70の第2地図情報72に含まれる車線の情報と、カメラ10によって撮像された画像から認識される道路区画線とを比較することで、自車両M1が現在位置する車線(以下、「自車線」とも称する)や、当該自車線に隣接する他車線(例えば後述する隣接車線L2)を認識する。なお、この認識においては、ナビゲーション装置60から取得される自車両M1の現在位置やINSによる処理結果が加味されてもよい。
【0041】
第1判定部120は、認識部110の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する自車両M1の走行予定車線L1に横断歩道CWがあるか否かを判定し、その判定結果を第3判定部140に渡す。一例として、第1判定部120は、運転者の操作を必要としない自動運転によって自車両M1が走行している(すなわち車速が0よりも大きい)ときに、自車両M1の走行予定車線L1に横断歩道CWがあるか否かを判定する。他の一例として、第1判定部120は、自動運転中の自車両M1の前方の信号機SGにおいて青信号灯SG_Gが点灯した場合に自車両M1の走行を開始させるものとし、上記の判定を行ってもよい。なお、運転者の操作を必要としない自動運転による走行を、以下、「自動走行」とも称する。
【0042】
走行予定車線L1は、例えば、自車両M1が現在位置する自車線とすることができる。また、自動運転による自車両M1の走行計画に車線変更が含まれる場合、走行予定車線L1は、当該車線変更による移動先の車線であってもよい。
【0043】
第2判定部130は、認識部110の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、走行予定車線L1に隣接し且つ当該走行予定車線L1と進行方向が同一の隣接車線L2があるか否かを判定し、その判定結果を第3判定部140に渡す。例えば、第2判定部130は、MPU70の第2地図情報72に含まれる車線の情報と、認識部110によって認識された自車線に隣接する他車線の情報とを参照することで、隣接車線L2があるか否かを判定することができる。
【0044】
第3判定部140は、例えば、第1判定部120によって横断歩道CWがあると判定され、且つ第2判定部130によって隣接車線L2があると判定された場合に、認識部110の認識結果に基づいて、隣接車線L2上に位置し且つ自車両M1から見て横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在するか否かを判定する。そして、第3判定部140は、その判定結果を走行制御部150へ渡す。
【0045】
また、自車両M1において過剰な車速の抑制が発生するのを抑制する観点から、第3判定部140は、第1判定部120によって横断歩道CWがあると判定され、且つ第2判定部130によって隣接車線L2があると判定された場合に、認識部110の認識結果に基づいて、隣接車線L2上に位置し、且つ自車両M1から見て横断歩道CWの手前に停止し、且つ横断歩道CWから所定距離以内の他車両M2が存在するか否かを判定するようにしてもよい。このようにすれば、横断歩道CWから遠く離れた位置に停止している他車両M2、すなわち横断歩道CWを横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係の停止要因によって停止している可能性が高い他車両M2に基づいて、自車両M1の車速が抑制されてしまうのを防止することが可能となる。
【0046】
また、上記と同様の観点から、第3判定部140は、第1判定部120によって横断歩道CWがあると判定され、且つ第2判定部130によって隣接車線L2があると判定された場合に、認識部110の認識結果に基づいて、隣接車線L2上に位置し、且つ自車両M1から見て横断歩道CWの手前に停止し、且つ前述した車外報知を行っていない他車両M2が存在するか否かを判定してもよい。このようにしても、横断歩道CWを横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係の停止要因によって停止している可能性が高い他車両M2に基づいて、自車両M1の車速が抑制されてしまうのを防止することが可能となる。
【0047】
走行制御部150は、第3判定部140によって上記の条件を満たす他車両M2が存在すると判定された場合に、自車両M1の走行速度(すなわち車速)を抑制する抑制制御(以下、「車速抑制制御」とも称する)を実行する。一例として、走行制御部150は、車速抑制制御を実行した場合、自動走行中の自車両M1を徐行させる。ここで、徐行とは、直ちに停止させることができるような車速(例えば10[km/h]以下)で自車両M1を走行させることをいう。
【0048】
すなわち、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在する場合、横断歩道CWを横断中又は横断しようとする交通参加者(例えば歩行者)がいることが想定される。そこで、隣接車線L2上に横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在する場合には、自車両M1の車速を抑制することで、他車両M2の影から自車両M1の走行予定車線L1への交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現することが可能となる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0049】
また、制御装置100は、第4判定部160をさらに備えていてもよい。ここで、第4判定部160は、走行制御部150によって車速抑制制御が実行されているときに、車速抑制制御を終了させる所定の終了条件が成立したか否かを判定し、その判定結果を走行制御部150へ渡す。そして、走行制御部150は、第4判定部160によって終了条件が成立したと判定された場合に、車速抑制制御を終了する。
【0050】
一例として、第4判定部160は、認識部110の認識結果に基づいて、横断歩道CW上の少なくとも所定範囲に交通参加者が存在しないと判定した場合に、終了条件が成立したと判定してもよい。ここで、所定範囲は、横断歩道CWのうち、当該走行予定車線L1と重なる部分と、当該走行予定車線L1に隣接する隣接車線L2と重なる部分とを含む。すなわち、横断歩道CWの走行予定車線L1と重なる部分にも隣接車線L2と重なる部分にも、歩行者などの交通参加者が存在しないことが確認できた場合に、第4判定部160は、終了条件が成立したと判定してもよい。これにより、他車両M2の影から自車両M1の走行予定車線L1への交通参加者の飛び出しが発生する可能性が低いことが確認できた場合に、車速抑制制御を終了させることが可能となる。
【0051】
他の一例として、第4判定部160は、自車両M1が横断歩道CWを通過した場合に、終了条件が成立したと判定してもよい。このようにすれば、自車両M1が横断歩道CWを通過したにもかかわらず、自車両M1の走行速度が抑制された状態が延々と続いてユーザの利便性が低下するのを抑制できる。
【0052】
<制御装置による制御の具体例>
つぎに、
図2から
図5を参照して、制御装置100による制御の具体例について説明する。
【0053】
まず、
図2から
図5に示す各例において、共通する内容について説明する。
図2から
図5において、道路Lは片側2車線の道路であり、当該2車線のうち左側の車線である左車線LLと、当該2車線のうち右側の車線である右車線RLとを有する。符号A1で示す矢印は左車線LLの進行方向を表し、符号A2で示す矢印は右車線RLの進行方向を表す。
【0054】
自車両M1は左車線LLを自動走行しており、左車線LL(より具体的には左車線LLにおける自車両M1の前方)が走行予定車線L1となっている。そして、走行予定車線L1には横断歩道CWがあるとともに、自車両M1の前方の信号機SGでは青信号灯SG_Gが点灯中である。
【0055】
なお、
図2等に示す検知可能領域ARは、自車両M1のカメラ10、レーダ装置12、又はLIDAR14などによって得られた情報に基づいて、認識部110が自車両M1の前方の交通参加者を認識(すなわち検知)することが可能な領域を表している。
【0056】
以下、
図2から
図5に示す各例についてそれぞれ説明する。
図2に示す例では、右車線RLが、走行予定車線L1である左車線LLに隣接し、且つ左車線LLと同一の進行方向を有する車線であるため(符号A1、A2で示す矢印を参照)、隣接車線L2となっている。そして、自車両M1の走行予定車線L1に横断歩道CWがあり、且つ自車両M1の前方の信号機SGにおいて青信号灯SG_Gが点灯中であるにもかかわらず、隣接車線L2の他車両M2が横断歩道CWの手前で停止している。
【0057】
ここで、他車両M2の停止位置は、横断歩道CWから所定距離d以内であり、横断歩道CWに向かって走行する自車両M1の検知可能領域ARの一部に停止中の他車両M2の一部が入っている。このため、自車両M1から見て他車両M2の陰になる領域(以下、「死角領域」とも称する)ARaが生じている。そして、この死角領域ARaは、横断歩道CWの一部と重なっている。したがって、横断歩道CWの死角領域ARaと重なる部分に、横断歩道CWを横断する歩行者Hなどの交通参加者が存在していても、制御装置100はそれを認識できない状況にある。よって、このような場合、死角領域ARaからの交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実行することが望まれる。
【0058】
そこで、本例の場合、制御装置100の第1判定部120は走行予定車線L1に横断歩道CWがあると判定し、第2判定部130は走行予定車線L1と進行方向が同一の隣接車線L2があると判定する。また、第3判定部140は、認識部110の認識結果に基づいて、隣接車線L2上に位置し、且つ自車両M1から見て横断歩道CWの手前に停止し、且つ当該横断歩道CWから所定距離d以内の他車両M2が存在すると判定する。そして、このような他車両M2が存在すると第3判定部140が判定したことに基づいて、走行制御部150は車速抑制制御を実行し、自車両M1の車速を抑制する。
【0059】
このように、自車両M1の走行予定車線L1と同一進行方向の隣接車線L2上に横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在する場合には、自車両M1の車速を抑制することにより、他車両M2の影(例えば死角領域ARa)から走行予定車線L1への交通参加者(例えば歩行者H)の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現できる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0060】
また、制御装置100は、例えば、停止した他車両M2が横断歩道CWから所定距離d以内に存在することに基づいて車速抑制制御を実行し、自車両M1の車速を抑制する。これにより、横断歩道CWから遠く離れた位置に停止している他車両M2、すなわち横断歩道CWを横断中又は横断しようとする交通参加者(例えば歩行者H)の有無とは無関係の停止要因によって停止している可能性が高い他車両M2に基づいて、自車両M1の車速を抑制してしまうのを防止できる。したがって、自車両M1において過剰な車速の抑制が発生するのを抑制することが可能となる。
【0061】
図3に示す例では、横断歩道CWが、道路Lと他の道路LTとが交差する交差点CSに設けられており、右車線RLが交差点CSにおける右折専用車線になっている点が、
図2に示した例とは異なっている。この場合、右車線RLは、交差点CS後の進行方向が左車線LLとは異なる車線となるため、前述した隣接車線L2に該当しない。このため、本例の場合、
図3に示すように、右車線RLにおける自車両M1から見て横断歩道CWの手前に他車両M2が存在していても、第3判定部140は否定判定することになり、走行制御部150による車速抑制制御は実行されないことになる。
【0062】
これに対し、仮に、
図3に示す例において、右車線RLが、交差点CSにおける右折専用車線ではなく、左車線LLと同様に交差点CSの後も道路Lに含まれる車線(換言すると交差点CSを道路L方向に進行可能な車線)である場合には、前述した隣接車線L2に該当することになり、走行制御部150による車速抑制制御が実行されることになる。
【0063】
このように、走行予定車線L1の横断歩道CWが交差点CSに設けられている場合には、走行予定車線L1及び隣接車線L2が、当該交差点CSの前後のいずれにおいても一の道路(例えば
図3に示す道路L)に含まれる車線であることに基づいて、車速抑制制御が実行されるようにすることで、例えば右折専用車線といった他の道路へ進行させる車線上の他車両M2(例えば、
図3に示すように右折待ちしている他車両M2)に基づいて、自車両M1の車速を抑制してしまうのを防止できる。したがって、自車両M1において過剰な車速の抑制が発生するのを抑制することが可能となる。
【0064】
図4に示す例では、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2がハザードランプを点灯させる車外報知を行っている点が、
図2に示す例と異なる。この場合、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2がハザードランプを点灯させる車外報知を行っていることから、第3判定部140は否定判定することになり、走行制御部150による車速抑制制御は実行されないことになる。
【0065】
このように、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在する場合であっても、他車両M2がハザードランプを点灯させる等の所定の車外報知を行っている場合には、自車両M1の車速を抑制しないことにより、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者(例えば歩行者H)の有無とは無関係の停止要因によって停止している他車両M2に基づいて、自車両M1の車速を抑制してしまうのを防止できる。したがって、自車両M1において過剰な車速の抑制が発生するのを抑制することが可能となる。
【0066】
なお、
図4に示した例では、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2がハザードランプの点灯といった車外報知を行っている場合に、車速抑制制御が実行されないようにしたが、これに限られない。例えば、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2において、方向指示器、停止表示板、又は発炎筒等によるその他の車外報知が行われている場合にも、車速抑制制御が実行されないようにしてもよい。また、例えば、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2を追い越すように指示する交通誘導員が存在する場合に、車速抑制制御が実行されないようにしてもよい。若しくは、横断歩道CWの手前に停止した他車両M2の後続車両が、他車両M2を追い越す挙動を示している場合には、車速抑制制御が実行されないようにしてもよい。すなわち、これらの場合には、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者(例えば歩行者H)の有無以外の理由で他車両M2が停止している可能性が高いと考えられるためである。
【0067】
図5に示す例は、車速抑制制御を終了させる場合の例である。
図5において、自車両M1が実線で示す位置にあるとき、横断歩道CWに向かって走行する自車両M1の検知可能領域ARの一部に停止中の他車両M2の一部が入っているため、破線で示すように死角領域ARaが生じている。死角領域ARaは横断歩道CWの一部と重なっている。よって、この場合、
図2に示した例と同様に、制御装置100(走行制御部150)は車速抑制制御を実行する。
【0068】
車速抑制制御の開始後、第4判定部160は、横断歩道CWの走行予定車線L1と重なる部分にも隣接車線L2と重なる部分にも、歩行者などの交通参加者が存在しないことが確認できたか否かを判定する。本例では、自車両M1が点線で示す位置まで移動した時期に、横断歩道CWの走行予定車線L1と重なる部分及び隣接車線L2と重なる部分を含む横断歩道CW全体が検知可能領域ARに入り、横断歩道CWに歩行者などの交通参加者が存在しないことが確認できたため、第4判定部160は、車速抑制制御の終了条件が成立したと判定する。そして、この判定結果に基づき、走行制御部150は車速抑制制御を終了する。
【0069】
このように、横断歩道CWの走行予定車線L1と重なる部分にも隣接車線L2と重なる部分にも、歩行者などの交通参加者が存在しないことが確認できた場合には、車速抑制制御を終了させることにより、他車両M2の影から自車両M1の走行予定車線L1への交通参加者の飛び出しが発生する可能性が低い場合には、車速抑制制御を終了させることが可能となる。
【0070】
なお、
図5に示す例において、仮に、横断歩道CWに交通参加者が存在しないことを確認できなかった場合でも、自車両M1が横断歩道CWを通過した場合には、第4判定部160は、車速抑制制御の終了条件が成立したと判定してもよい。そして、この判定結果に基づき、走行制御部150は車速抑制制御を終了してもよい。これにより、自車両M1が横断歩道CWを通過したにもかかわらず、自車両M1の車速が抑制された状態が延々と続いてユーザの利便性が低下するのを抑制できる。
【0071】
<制御装置100が実行する処理の一例>
つぎに、制御装置100が実行する処理の一例について、
図6を参照しながら説明する。制御装置100は、例えば、自車両M1の自動走行中に、
図6に示す処理を所定の周期で実行する。なお、自車両M1の自動走行中には、制御装置100は、
図6に示す処理に加えて、自車両M1と衝突する可能性のある物体を検知(すなわち認識)すると、当該物体と自車両M1との衝突を回避するべく自車両M1の制動及び/又は操舵を行う衝突回避制御を実現する処理(不図示)についても実行するものとする。
【0072】
図6に示すように、制御装置100は、まず、自車両M1の前方の信号機SGにおいて青信号灯SG_Gが点灯中であるか否かを判定する(ステップS1)。青信号灯SG_Gが点灯中でないと判定したならば(ステップS1:NO)、制御装置100は、ステップS1の処理を繰り返す。
【0073】
一方、青信号灯SG_Gが点灯中と判定したならば(ステップS1:YES)、制御装置100は、自車両M1の走行予定車線L1に横断歩道CWがあるか否かを判定する(ステップS2)。走行予定車線L1に横断歩道CWがないと判定したならば(ステップS2:NO)、制御装置100は、そのまま
図6に示す処理を終了する。
【0074】
一方、横断歩道CWがあると判定したならば(ステップS2:YES)、制御装置100は、隣接車線L2があるか否かを判定する(ステップS3)。隣接車線L2がないと判定したならば(ステップS3:NO)、制御装置100は、そのまま
図6に示す処理を終了する。
【0075】
隣接車線L2があると判定したならば(ステップS3:YES)、隣接車線L2上に位置し且つ横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在するか否かを判定する(ステップS4)。該当する他車両M2が存在しないと判定したならば(ステップS4:NO)、制御装置100は、そのまま
図6に示す処理を終了する。一方、該当する他車両M2が存在すると判定したならば(ステップS4:YES)、制御装置100は、自車両M1の車速を抑制する車速抑制制御を開始する(ステップS5)。
【0076】
そして、制御装置100は、横断歩道CWに交通参加者が存在しないことを確認できたか否かを判定する(ステップS6)。横断歩道CWに交通参加者が存在しないことを確認できたならば(ステップS6:YES)、制御装置100は、そのままステップS8の処理へ進む。
【0077】
一方、横断歩道CWに交通参加者が存在しないことを確認できていなければ(ステップS6:NO)、制御装置100は、自車両M1が横断歩道CWを通過したか否かを判定する(ステップS7)。横断歩道CWを通過したと判定したならば(ステップS7:YES)、車速抑制制御を終了して(ステップS8)、
図6に示す処理を終了する。
【0078】
以上説明したように、本実施形態によれば、自車両M1の走行予定車線L1と同一進行方向の隣接車線L2上に横断歩道CWの手前に停止した他車両M2が存在する場合に、自車両M1の車速を抑制する車速抑制制御を実行することにより、他車両M2の影から自車両M1の走行予定車線L1への交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現できる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0079】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0080】
また、前述した実施形態では、本発明の車両制御装置を、自車両M1に搭載された制御装置100によって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、本発明の車両制御装置を、制御装置100と通信可能なサーバによって実現してもよい。この場合、例えば、前述した制御装置100の各処理を、サーバのCPUなどによって実現される処理部が行えばよい。また、本発明の車両制御装置は、制御装置100とサーバとが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した制御装置100の処理のうちの一部がサーバによって実行されてもよい。
【0081】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータで実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、自車両M1に含まれるものであってもよいし、自車両M1と通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0082】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素等を示しているが、これに限定されるものではない。
【0083】
(1) 車両(自車両M1)を制御する車両制御装置(制御装置100)であって、
前記車両の周辺状況を認識する認識部(認識部110)と、
前記認識部の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線(走行予定車線L1)に横断歩道(横断歩道CW)があるか否かを判定する第1判定部(第1判定部120)と、
前記認識部の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報(第2地図情報72)に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線(隣接車線L2)があるか否かを判定する第2判定部(第2判定部130)と、
前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両(他車両M2)が存在するか否かを判定する第3判定部(第3判定部140)と、
前記第3判定部によって前記他車両が存在すると判定された場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する走行制御部(走行制御部150)と、
を備える、車両制御装置。
【0084】
横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者がいることが想定される。(1)によれば、自車両の走行予定車線と同一進行方向の隣接車線上に横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合には、自車両の走行速度を抑制する。これにより、他車両の影から自車両の走行予定車線への交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現できる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0085】
(2) (1)に記載の車両制御装置であって、
前記横断歩道は、一の道路(道路L)と他の道路(道路LT)とが交差する交差点(交差点CS)に設けられた横断歩道であり、
前記走行予定車線及び前記隣接車線は、前記交差点の前後のいずれにおいても前記一の道路に含まれる車線である、
車両制御装置。
【0086】
(2)によれば、例えば右折専用車線といった一の道路から他の道路へ進行させる車線上の他車両に基づいて、自車両の走行速度を抑制してしまうのを防止できる。これにより、安全に配慮しつつも、ユーザの利便性の低下を抑制した制御を実現できる。
【0087】
(3) (1)又は(2)に記載の車両制御装置であって、
前記第3判定部は、前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し、且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止し、且つ前記横断歩道から所定距離以内の前記他車両が存在するか否かを判定する、
車両制御装置。
【0088】
横断歩道から離れた位置で他車両が停止している場合、その停止要因は、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係である可能性が高い。(3)によれば、他車両が横断歩道から所定距離以内に停止している場合に自車両の走行速度を抑制するため、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係の停止要因によって停止している他車両に基づいて、自車両の走行速度を抑制してしまうのを防止できる。これにより、安全に配慮しつつも、ユーザの利便性の低下を抑制した制御を実現できる。
【0089】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記第3判定部は、前記第1判定部によって前記横断歩道があると判定され、且つ前記第2判定部によって前記隣接車線があると判定された場合に、前記認識部の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し、且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止し、且つ所定の車外報知を行っていない前記他車両が存在するか否かを判定する、
車両制御装置。
【0090】
停止している他車両が所定の車外報知を行っている場合、その停止要因は、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係である可能性が高い。(4)によれば、他車両が車外報知を行っていない場合に自車両の走行速度を抑制するため、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係の停止要因によって停止している他車両に基づいて、自車両の走行速度を抑制してしまうのを防止できる。これにより、安全に配慮しつつも、ユーザの利便性の低下を抑制した制御を実現できる。
【0091】
(5) (4)に記載の車両制御装置であって、
前記車外報知は、方向指示器、ハザードランプ、停止表示板、又は発炎筒による報知である、
車両制御装置。
【0092】
方向指示器、ハザードランプ、停止表示板、又は発炎筒による車外報知を行っている他車両の停止要因は、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係である可能性が高い。(5)によれば、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者の有無とは無関係の停止要因によって停止している他車両に基づいて、自車両の走行速度を抑制してしまうのを防止できる。
【0093】
(6) (1)から(5)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記車両制御装置は、
前記走行制御部によって前記抑制制御が実行されているときに、前記抑制制御を終了させる所定の終了条件が成立したか否かを判定する第4判定部をさらに備え、
前記走行制御部は、前記第4判定部によって前記終了条件が成立したと判定された場合に、前記抑制制御を終了する、
車両制御装置。
【0094】
(6)によれば、所定の終了条件が成立した場合に抑制制御を終了するため、抑制制御により自車両の走行速度が抑制された状態が延々と続いてユーザの利便性が低下するのを抑制できる。
【0095】
(7) (6)に記載の車両制御装置であって、
前記第4判定部は、前記認識部の認識結果に基づいて、前記横断歩道の少なくとも所定範囲に交通参加者が存在しないと判定した場合に、前記終了条件が成立したと判定し、
前記所定範囲は、前記横断歩道のうち、前記走行予定車線と重なる部分と、前記隣接車線と重なる部分とを含む、
車両制御装置。
【0096】
(7)によれば、他車両の影から自車両の走行予定車線への交通参加者の飛び出しが発生する可能性が低いことが確認できた場合に、抑制制御を終了させることができる。
【0097】
(8) (6)又は(7)のいずれかに記載の車両制御装置であって、
前記第4判定部は、前記車両が前記横断歩道を通過した場合に、前記終了条件が成立したと判定する、
車両制御装置。
【0098】
(8)によれば、自車両が横断歩道を通過したにもかかわらず、自車両の走行速度が抑制された状態が延々と続いてユーザの利便性が低下するのを抑制できる。
【0099】
(9) 車両を制御するコンピュータが実行する制御方法であって、
前記コンピュータが、
前記車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定し、
前記周辺状況の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定し、
前記横断歩道があると判定し、且つ前記隣接車線があると判定した場合に、前記周辺状況の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定し、
前記他車両が存在すると判定した場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する、
処理を行う、制御方法。
【0100】
横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者がいることが想定される。(9)によれば、自車両の走行予定車線と同一進行方向の隣接車線上に横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合には、自車両の走行速度を抑制する。これにより、他車両の影から自車両の走行予定車線への交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現できる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0101】
(10) 車両を制御するコンピュータに所定の処理を行わせる制御プログラムであって、
前記コンピュータに、
前記車両の周辺状況を認識し、
前記周辺状況の認識結果に基づいて、走行中又は走行を開始する前記車両の走行予定車線に横断歩道があるか否かを判定し、
前記周辺状況の認識結果又はあらかじめ用意された地図情報に基づいて、前記走行予定車線に隣接し且つ当該走行予定車線と進行方向が同一の隣接車線があるか否かを判定し、
前記横断歩道があると判定し、且つ前記隣接車線があると判定した場合に、前記周辺状況の認識結果に基づいて、前記隣接車線上に位置し且つ前記車両から見て前記横断歩道の手前に停止した他車両が存在するか否かを判定し、
前記他車両が存在すると判定した場合に、前記車両の走行速度を抑制する抑制制御を実行する、
処理を行わせる、制御プログラム。
【0102】
横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合、横断歩道を横断中又は横断しようとする交通参加者がいることが想定される。(10)によれば、自車両の走行予定車線と同一進行方向の隣接車線上に横断歩道の手前に停止した他車両が存在する場合には、自車両の走行速度を抑制する。これにより、他車両の影から自車両の走行予定車線への交通参加者の飛び出しに備えた安全に配慮した制御を実現できる。したがって、交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0103】
(11) (10)に記載の制御プログラムを記憶したコンピュータが読み取り可能な記憶媒体。
【符号の説明】
【0104】
100 制御装置(車両制御装置)
110 認識部
120 第1判定部
130 第2判定部
140 第3判定部
150 走行制御部
160 第4判定部
CS 交差点
CW 横断歩道
L 道路(一の道路)
LT 道路(他の道路)
L1 走行予定車線
L2 隣接車線
M1 自車両(車両)
M2 他車両