(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140765
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】ロール、定着装置、媒体調整装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G03G15/20 515
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052089
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137752
【弁理士】
【氏名又は名称】亀井 岳行
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100108925
【弁理士】
【氏名又は名称】青谷 一雄
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(72)【発明者】
【氏名】野村 由佳
(72)【発明者】
【氏名】吉次 浩司
(72)【発明者】
【氏名】権田 泰久
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA24
2H033AA40
2H033BA25
2H033BA29
2H033BB18
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB39
2H033BE03
(57)【要約】
【課題】回転させて使用される円筒状のロール等において、当該ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に熱を受けてロールの温度が上昇しても静音性を確保したロールの冷却を行う。
【解決手段】ロール6Aは、回転させて使用される円筒状のロールであって、前記ロールの内部空間61内の少なくとも一部に内部空間61の内周面に接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材7を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転させて使用される円筒状のロールであって、前記ロールの内部空間内の少なくとも一部に前記内部空間の内周面に接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材を備えるロール。
【請求項2】
前記放熱材が、前記内部空間の内周面よりも熱伝導率の高い金属で構成されている請求項1に記載のロール。
【請求項3】
前記金属がアルミニウムである請求項2に記載のロール。
【請求項4】
前記放熱材が前記内部空間のうち軸方向の両端部に配置されている請求項1に記載のロール。
【請求項5】
前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、ロールの回転に連動して当該内部空間内に空気流を発生させる送風部材を備える請求項4に記載のロール。
【請求項6】
前記送風部材が、前記内部空間の一方の端部から他方の端部に向けて流れる空気流を発生させる請求項5に記載のロール。
【請求項7】
前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、前記放熱材よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材を備える請求項4に記載のロール。
【請求項8】
加熱手段を有する加熱用回転体と、
前記加熱用回転体に圧力を加えて接触するとともに未定着像を保持する記録媒体を通過させる定着処理部を形成する加圧回転ロールと、
を備え、
前記加圧回転ロールが請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロールで構成されている定着装置。
【請求項9】
前記放熱材が、前記加圧回転ロールのうち前記記録媒体が接触して通過しない非通過部分に相当する内部空間内に配置されている請求項8に記載の定着装置。
【請求項10】
温度が上昇した記録媒体を接触通過させて調整する回転ロールを備え、
前記回転ロールが請求項1乃至7のいずれか1項に記載のロールで構成されている媒体調整装置。
【請求項11】
未定着像を形成して記録媒体に転写する像形成部と、
前記像形成部で転写された未定着像を記録媒体に定着する定着装置と、
を備え、
前記定着装置が請求項8に記載の定着装置で構成されている画像形成装置。
【請求項12】
温度が上昇した記録媒体を回転体に接触通過させて調整する媒体調整装置を備え、
前記媒体調整装置が請求項10に記載の媒体調整装置で構成されている画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロール、定着装置、媒体調整装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放熱機能を備えたロールに関する技術としては、例えば以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1には、円筒ロールの内周面に、板状の放熱フィンを、軸方向と平行する状態で形成するとともに内周面に沿って所定の間隔をあけた状態で複数形成してなる冷却用ロール等が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-234205号公報(段落[0050]、
図2,3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、回転させて使用される円筒状のロール等において、当該ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に熱を受けてロールの温度が上昇しても静音性を確保したロールの冷却を行うことにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、
回転させて使用される円筒状のロールであって、前記ロールの内部空間内の少なくとも一部に前記内部空間の内周面に接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材を備えるロールである。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明において、前記放熱材が、前記内部空間の内周面よりも熱伝導率の高い金属で構成されているロールである。
第3の発明は、上記第2の発明において、前記金属がアルミニウムであるロールである。
【0008】
第4の発明は、上記第1の発明において、前記放熱材が前記内部空間のうち軸方向の両端部に配置されているロールである。
第5の発明は、上記第4の発明において、前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、ロールの回転に連動して当該内部空間内に空気流を発生させる送風部材を備えるロールである。
第6の発明は、上記第5の発明において、前記送風部材が、前記内部空間の一方の端部から他方の端部に向けて流れる空気流を発生させるロールである。
第7の発明は、上記第4の発明において、前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、前記放熱材よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材を備えるロールである。
【0009】
第8の発明は、
加熱手段を有する加熱用回転体と、
前記加熱用回転体に圧力を加えて接触するとともに未定着像を保持する記録媒体を通過させる定着処理部を形成する加圧回転ロールと、
を備え、
前記加圧回転ロールが上記第1から第7の発明のいずれかのロールで構成されている定着装置である。
第9の発明は、上記第8の発明において、前記放熱材が、前記加圧回転ロールのうち前記記録媒体が接触して通過しない非通過部分に相当する内部空間内に配置されている定着装置である。
【0010】
第10の発明は、
温度が上昇した記録媒体を接触通過させて調整する回転体を備え、
前記回転ロールが上記第1から第7の発明のいずれかのロールで構成されている媒体調整装置である。
【0011】
第11の発明は、
未定着像を形成して記録媒体に転写する像形成部と、
前記像形成部で転写された未定着像を記録媒体に定着する定着装置と、
を備え、
前記定着装置が上記第8の発明の定着装置で構成されている画像形成装置である。
【0012】
第12の発明は、
温度が上昇した記録媒体を回転体に接触通過させて調整する媒体調整装置を備え、
前記媒体調整装置が上記第10の発明の媒体調整装置で構成されている画像形成装置である。
【発明の効果】
【0013】
上記第1の発明によれば、回転させて使用される円筒状のロールにおいて、当該ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に熱を受けてロールの温度が上昇しても静音性を確保したロールの冷却を行うことができる。
【0014】
上記第2の発明によれば、放熱材が熱伝導率の低い金属で構成されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
上記第3の発明によれば、放熱材がアルミニウム以外の金属で構成されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
【0015】
上記第4の発明によれば、放熱材がロールの内部空間のうち軸方向の両端部以外の部分に配置されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
上記第5の発明によれば、ロールの内部空間内にロールの回転に連動して当該内部空間内に空気流を発生させる送風部材を配置していない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
上記第6の発明によれば、送風部材がロールの内部空間の一方の端部から他方の端部に向けて流れる空気流を発生させるものでない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
上記第7の発明によれば、ロールの内部空間のうち放熱材が配置されていない部分に、当該放熱材よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材を備えない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
【0016】
上記第8の発明によれば、円筒状の加圧回転ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に加熱用回転体から熱を受けて加圧回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができる。
上記第9の発明によれば、加圧回転ロールのうち記録媒体が接触して通過しない非通過部分に相当する内部空間内に放熱材が配置されていない場合に比べて、回転使用時に静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができ、定着処理部における温度むらに起因した記録媒体のしわの発生を抑制することもできる。
【0017】
上記第10の発明によれば、円筒状の回転ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に記録媒体から熱を受けて回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した回転ロールの冷却を行うことができる。
【0018】
上記第11の発明によれば、定着装置において、回転使用時に加熱用回転体から熱を受けて加圧回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができる。
【0019】
上記第12の発明によれば、媒体調整装置において、回転使用時に記録媒体から熱を受けて回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した回転ロールの冷却を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施の形態1に係る画像形成装置の概念図である。
【
図2】
図1の画像形成装置の一部(主に放熱材を配置した加圧回転ロールを備えた定着装置)の概念図である。
【
図3】(A)は実施の形態1に係る加圧回転ロールの概略側面図、(B)は(A)の加圧回転ロールのQ1-Q1線に沿う概略端面図である。
【
図4】
図3(B)の加圧回転ロールのQ2-Q2線に沿う概略端面と当該ロールの表面温度のグラフを示す図である。
【
図5】(A)は放熱材の概略正面図、(B)は(A)の放熱材の概略側面図、(C)は(A)の放熱材のQ3-Q3線に沿う概略端面図である。
【
図6】(A)は放熱材の筒密集状構造を構成する筒状体の概略斜視図、(B)は(A)の筒状体の概略側面図である。
【
図7】
図2の定着装置における加圧回転ロールの冷却に関する動作の状態を示す概念図である。
【
図8】実施の形態2に係るロールの概略端面図である。
【
図9】実施の形態3に係るロールの概略端面図である。
【
図10】実施の形態4に係る媒体調整装置の一例である反り解消装置の概念図である。
【
図11】実施の形態5に係る媒体調整装置の他の例である媒体冷却装置の概念図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0022】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像形成装置の概念図である。
図2は、
図1の画像形成装置における定着装置の概念図である。
本明細書および図面においては実質的に同一の構成要素に対して同一の符号を付し、また本明細書ではその同一の構成要素の重複説明を省略する。
【0023】
(1-1)画像形成装置の構成
画像形成装置1は、
図1に示されるように、画像を記録媒体の一例である記録用紙9に形成する装置である。この画像形成装置1は、例えば、情報端末機等の外部機器から接続して入力される画像情報に対応した画像を形成することが可能な装置として構成されている。
【0024】
画像形成装置1は、
図1に示されるように、筐体10の内部空間に、像形成部2と、媒体供給装置4、定着装置5、図示しない制御手段等を備えている。
筐体10は、フレーム等の構造材や、パネル、開閉扉等の外装材等の材料を用いて所要の外観形状に作製される箱状の構造体である。
図1における一点鎖線は、記録用紙9が筐体10内で搬送されるときの主な搬送路45を示している。
【0025】
像形成部2は、未定着像を形成して記録用紙9に転写する部分である。像形成部2は、未定着像を形成する作像ユニット20と、作像ユニット20で形成された未定着像を中継して記録用紙9に転写する中間転写ユニット30とで構成されている。
【0026】
作像ユニット20は、画像情報に基づいて現像剤としてのトナーで構成されるトナー像を形成するよう構成された装置群である。
実施の形態1における作像ユニット20は、例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)および特殊色(S)からなるトナー像を単独で専用に形成する作像ユニット20Y,20M,20C,20K,20S(以後、20(Y,M,C,K,S)と略称することもある。)により構成されている。特殊色(S)は、例えば、白色、透明色等である。
【0027】
作像ユニット20Y,20M,20C,20K,20Sは、現像装置24で使用する現像剤(本例ではトナー)の色が上記Y,M,C,K,Sとして略記する色のいずれか1色であって互いに異なる以外は、ほぼ同様の構成になっている。
すなわち、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)はいずれも、潜像が形成されて保持される潜像保持体の一例である感光ドラム21を有している。また、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)はいずれも、その感光ドラム21の周囲に、帯電装置22、露光装置23、現像装置24(Y,M,C,K,S)、一次転写装置36、ドラム清掃装置26等の機器をそれぞれ配置して構成されている。
【0028】
また、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)は、画像形成装置1の正面側から見たときに、筐体10の内部空間において左右方向に所要の間隔をあけて直列状に並べた状態で配置されている。正面は、画像形成装置1の前側の面として扱われる面である。
図1では、作像ユニット20Kにおいて感光ドラム21、帯電装置22、露光装置23、現像装置24K、一次転写装置36およびドラム清掃装置26の各符号を記載している。また、
図1では、それ以外の作像ユニット20(Y,M,C,S)に対しては現像装置24(Y,M,C,S)の各符号のみを記載し、それ以外の符号の記載を省略している。
【0029】
感光ドラム21は、前後方向に沿って延びる図示しない回転軸線の周りを矢印で示す方向に回転するドラム形態の感光体である。
帯電装置22は、感光ドラム21の像形成面となる外周面を所要の表面電位に帯電させる装置である。帯電装置22は、例えば感光ドラム21の外周面の像形成域に接触させるとともに帯電電流が供給される帯電ロール等の帯電部材を備えて構成されている。
露光装置23は、感光ドラム21の帯電後の外周面に画像情報に基づく露光をして静電潜像を形成する装置である。
【0030】
現像装置24は、感光ドラム21の外周面に形成された静電潜像を対応する所定の色(Y,M,C,K,Sのいずれかの色)の現像剤により現像して未着像の一例であるトナー像にする装置である。
一次転写装置36は、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)における各感光ドラム21の外周面に形成されたトナー像を中間転写ユニット30における中間転写ベルト31に転写させる装置である。一次転写装置36は、感光ドラム21の外周面に接触するとともに一次転写電流が供給される転写ロール等の転写部材を備えて構成されている。なお、一次転写装置36は、中間転写ユニット30を採用する場合、その中間転写ユニット30を構成する一部品としても扱われる。
ドラム清掃装置26は、感光ドラム21の外周面に付着する不要なトナー、紙粉等の不要物を除去して感光ドラム21の外周面を清掃する装置である。
【0031】
中間転写ユニット30は、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)で形成された各トナー像を中間転写体に一時保持した後に記録用紙9に転写するよう構成された装置群である。
中間転写ユニット30は、中間転写体の一例である中間転写ベルト31、中間転写ベルト31を内周面から回転可能に支持する支持ロール32~35、一次転写装置36、二次転写装置37、ベルト清掃装置38等を備えている。また、中間転写ユニット30は、筐体10の内部空間において作像ユニット20(Y,M,C,K,S)の下方となる位置に存在するよう配置されている。
【0032】
中間転写ベルト31は、所要の幅および長さからなる環状に成形された帯状ベルトであり、その外周面がトナー像を静電的な作用で保持できる面になっている。
支持ロール32~35は、中間転写ベルト31をほぼ逆三角形の形態になるよう支持するとともに、矢印で示す方向に回転可能に支持する。
支持ロール32,33は、中間転写ベルト31を作像ユニット20(Y,M,C,K,S)の各感光ドラム21を通過して左右方向に面状に延びる転写面を形成するように支持する。支持ロール32は、例えば、中間転写ベルト31を回転させる動力を付与する駆動ロールとして構成されている。
支持ロール34は、二次転写装置37と対峙する中間転写ベルト31の内周面を支持する二次転写背面ロールとして構成されている。支持ロール35は、例えば、中間転写ベルト31に所要の張力を付与する張力付与ロールとして構成されている。
【0033】
一次転写装置36は、中間転写ベルト31を作像ユニット20(Y,M,C,K,S)の各感光ドラム21の一次転写を行う部位に押し当てるよう配置されている。
二次転写装置37は、中間転写ベルト31の外周面に一次転写されたトナー像を記録用紙9に転写させる装置である。この二次転写装置37は、中間転写ベルト31のうち支持ロール34に支持されている外周面に接触するとともに二次転写電流が供給される転写ロール、転写搬送ベルト等の転写部材を備えて構成されている。
ベルト清掃装置38は、中間転写ベルト31の外周面に付着する不要なトナー、紙粉等の不要物を除去して中間転写ベルト31の外周面を清掃する装置である。
【0034】
媒体供給装置4は、中間転写ユニット30の二次転写位置に供給すべき記録媒体の一例である記録用紙9を収容して供給する装置である。媒体供給装置4は、例えば、筐体10の内部空間において中間転写ユニット30の下方となる位置に配置されている。
媒体供給装置4は、記録用紙9を収容する収容体41A、41Bと、収容体41A、41Bから記録用紙9をそれぞれ1つずつ送り出す送出装置42等を備えている。記録用紙9は、所定のサイズに裁断された媒体である。収容体41の数については、特に限定されない。
【0035】
定着装置5は、中間転写ユニット30で記録用紙9に二次転写されて保持される未定着のトナー像を記録用紙9に定着させる装置である。定着装置5は、例えば、筐体10の内部空間において中間転写ユニット30の片側の斜め下方となる位置に存在するよう配置されている。定着装置5の詳細については後述する。
【0036】
搬送路45は、主に、媒体供給装置4の収容体41A、41Bから中間転写ユニット30の二次転写が行わる部位を経由して定着装置5に至る経路と、最後に定着装置5から筐体10の媒体排出口10eに至る経路で構成されている。
搬送路45は、例えば、一対からなる複数の搬送ロール46a,46b,46c,46d,46e,46fや、吸引式ベルト搬送装置47、図示しない搬送案内材等を配置して構成されている。吸引式ベルト搬送装置47は、中間転写ユニット30の二次転写が行われる部位と定着装置5との間を結ぶ経路内に配置される。
【0037】
筐体10の外部には、媒体排出口10eから排出される記録用紙9を収容する図示しない排出部が設けられている。排出部は、例えば、排出される記録用紙9を収容する収容トレイや、排出される記録用紙9に対して所要の処理を施す後処理装置等で構成される。
【0038】
(1-2)画像形成装置の動作
画像形成装置1では、外部機器等から画像を形成する動作の指令を図示しない制御手段が受けると、以下に説明する一連の基本的な画像形成動作が行われる。
【0039】
まず、画像形成装置1における像形成部2では、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)のいずれか1つにおいて帯電動作、露光動作、現像動作および清掃動作が実行され、また像形成部2の中間転写ユニット30において一次転写動作および二次転写動作が実行される。その一方で、画像形成装置1では、媒体供給装置4と搬送路45において記録用紙9の供給動作が実行される。
これにより、像形成部2では、作像ユニット20(Y,M,C,K,S)のいずれか1つにおける感光ドラム21上にトナー像が形成された後、そのトナー像が中間転写ユニット30の中間転写ベルト31に一次転写されてから記録用紙9に二次転写される。
【0040】
続いて、画像形成装置1では、像形成部2の中間転写ユニット30でトナー像が二次転写された記録用紙9が搬送路45の搬送動作により定着装置5に導入されるよう搬送され、定着装置5において定着動作が実行される。
これにより、未定着のトナー像が記録用紙9に定着される。
この定着が終了した後の記録用紙9は、搬送路45の搬送動作により搬送された後、筐体10の外部に配置される図示しない排出部に排出される。
【0041】
以上により、画像形成装置1では、1枚の記録用紙9の片面にトナーからなる画像を形成する基本的な画像形成動作が完了する。
この際、例えば、作像ユニット20(Y,M,C,K)のすべてにおいて作像動作が行われた場合は、4色(Y,M,C,K)のトナー像で構成されるフルカラーと称されるカラー画像が形成される。また、画像形成装置1では、必要に応じて作像ユニット20Sによる作像動作を行って特殊色(S)のトナー像を形成することが可能になっている。
【0042】
(1-3)定着装置の構成
定着装置5は、
図2に示されるように、記録用紙9の導入口50aやその排出口50bが設けられた箱状のハウジング50の内部空間に、加熱用回転体51、加圧回転ロール52等の機器を配置して構成されている。
【0043】
加熱用回転体51は、
図2等に示されるように、ベルト-パッド形態の回転体として構成されている。ベルト-パッド形態の加熱用回転体51は、無端状の定着ベルト53と、定着ベルト53の内周面から支持してそのベルト外周面を加圧回転ロール52に押し当てる押当て体54、定着ベルト53を押当て体54と協働して回転可能に支持する複数の支持ロール55,56等で構成されている。
【0044】
押当て体54と支持ロール55,56は、その各内部に配置される電熱ヒータ等の加熱手段57A,57B,57Cによりそれぞれ定着温度等の所要の温度に加熱されて維持される。また、支持ロール55は、図示しない駆動装置から回転動力を得て駆動する駆動ロールとして構成されており、定着ベルト53を矢印で示す方向に回転させる。さらに、支持ロール56は、定着ベルト53に所要の張力を付与するとともに定着ベルト53の蛇行を矯正するように変位する調整ロールとして構成されている。
押当て体54と支持ロール55,56は、図示しない支持フレームに支持されている。
【0045】
加圧回転ロール52は、図示しない加圧機構により加熱用回転体51の定着ベルト53を押当て体54に所要の圧力で押し付けるよう配置されている。
また、加圧回転ロール52は、
図3等に示されるように、金属等の材料からなる円筒状のロール本体60を有する円筒状のロール6Aとして構成されている。ロール6Aは、ロール本体60の外周面に必要な層を設けたものであってよい。加圧回転ロール52としてのロール6Aは、ロール本体60の外周面に、例えば、ゴム、合成樹脂等の材料からなる図示しない弾性層等が設けられている。
ロール6Aの詳細については後述する。
【0046】
ロール6Aからなる加圧回転ロール52は、
図3に示されるように、ロール本体60の軸方向Jにおける両端部が軸受523を介して図示しない支持フレームに回転可能に設けられている。また、加圧回転ロール52は、図示しない加圧機構により、加熱用回転体51の定着ベルト53を押当て体54に所要の圧力で押し付けるよう配置されている。
また、加圧回転ロール52は、定着ベルト53の押当て体54に支持されている部分に対して接触および離間するよう上記支持フレームを介して支持されている。加圧回転ロール52は、例えば画像形成動作を行わないときに離間するようになっている。
さらに、加圧回転ロール52は、図示しない駆動装置から回転動力を得て矢印で示す方向に回転駆動するよう構成されている。また、加圧回転ロール52は、その表面温度が温度計測器59で測定されるようになっている。
【0047】
また、定着装置5では、加熱用回転体51と加圧回転ロール52が接触し合う部分が、未定着のトナー像を記録用紙9に定着させるための加熱、加圧等の処理をする定着処理部(いわゆる定着ニップ部)FNとして構成されている。上記接触し合う部分は、具体的には定着ベルト53と加圧回転ロール52が接触し合う部分である。
【0048】
(1-4)定着装置の動作
画像形成装置1では、上記した画像形成動作を行う等の必要な時期になると、定着装置5において以下に説明する定着動作が行われる。
【0049】
まず、定着装置5における加熱用回転体51では、駆動ロールとしての支持ロール55が駆動し始め、これにより定着ベルト53が押当て体54と支持ロール55,56の回りを周回するよう矢印で示す方向に回転し始める。また、加熱用回転体51では、加熱手段57A,57B,57Cが作動し始め、これにより押当て体54と支持ロール55,56がそれぞれ加熱され始める。
一方、定着装置5における加圧回転ロール52は、定着ベルト53を押当て体54に加圧した状態で接触通過させるように矢印で示す方向に回転し始める。
【0050】
これらにより、定着装置5では、定着ベルト53が、加熱された状態でかつ加圧された状態で定着処理部FNを通過するよう回転する。また、このときの加圧回転ロール52は、加熱された定着ベルト53に接触して回転する。
【0051】
そして、定着装置5に対しては、中間転写ユニット30でトナー像が二次転写された記録用紙9が定着処理部FNに導入されて通過させられる。
この結果、トナー像および記録用紙9は、定着処理部FNを通過する過程で加圧下で加熱され、最終的にトナー像が溶融して記録用紙9に定着される。
以上により、1つの記録用紙9の片面へのトナー像の定着動作が完了する。
【0052】
(1-5)加圧回転ロールの冷却に関する構成
定着装置5は、定着動作が行われる時期等になると、加圧回転ロール52が加熱された定着ベルト53等と接触して回転するので、加圧回転ロール52が定着ベルト53等から熱を受ける。
これにより、加圧回転ロール52は、その外周面の温度が、定着装置5が停止しているとき(作動する前)に比べて必要以上に上昇することがある。
【0053】
このため、定着装置5では、加圧回転ロール52を冷却する次の構成を採用している。その冷却に関する構成は、
図2から
図4等に示されるように加圧回転ロール52を筒密集状構造の放熱材7を配置したロール6Aで構成することと、
図1や
図2に示されるように加圧回転ロール52に空気を吹き付けて冷却する送風器58を併設することである。
【0054】
<筒密集状構造の放熱体を配置したロール>
はじめに、加圧回転ロール52を構成するロール6Aは、
図3,
図4等に示されるように、円筒状のロール本体60の内部空間61内の少なくとも一部に、その内部空間61の内周面61aに接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材7を備えている。
【0055】
ここで、円筒状のロール本体60は、軸方向Jにおける両端部が開口した円筒又はそれに近似した筒形状の構造体である。ロール本体60は、ステンレス等の金属で構成されている。
また、筒密集状構造とは、
図5、
図6等に示されるように、両端が開口して貫通した貫通空間71bを有する複数の筒状体71が、貫通空間71bの貫通する方向を互いに揃えて密に集合しているように見える外観を呈する構造である。
換言すれば、筒密集状構造は、複数の筒状体71を密集させるよう並べて一体化させた構造や、あるいは、複数の筒状体71が密集して存在しているかのように見える外観からなる構造である。
【0056】
筒密集状構造における筒状体71は、独立した単体であると捉えた場合、
図6等に示されるように、貫通空間71bを囲んで形成する枠部71aを有する構造体である。
また、筒状体71は、筒密集状構造が複数の筒状体71が密集して存在しているように見える外観からなる構造である場合、隣り合う筒状体71のように見える部分(貫通した形状部分)どうしの境界を形成する構造部分として捉えることもできる。
このことから、独立した単体としての筒状体71における貫通空間71bと筒状体71が存在しているように見える部分における貫通空間71bは、
図6(A)に例示されるように、両端が端部開口71c、71dを有し、筒状の孔と言い換えることもできる。
【0057】
また、筒状体71は、開口断面が所定の形状からなるとともに所要の長さLからなる構造体である。貫通空間71bは、開口断面が所定の形状からなるとともに所要の長さLからなる空間である。
【0058】
筒状体71又は貫通空間71bの開口断面の形状は、例えば、正六角形、菱形、三角形等の多角形や、円形、楕円形等である。
筒密集状構造は、独立した単体の筒状体71を密集するように並べた構造である場合、その隣り合う筒状体71どうしの間に貫通空間71bとは異なる形状の隙間空間が存在していても構わない。
【0059】
筒密集状構造は、ハニカム構造を含むものである。
ハニカム構造は、
図6(A)に例示するような開口断面が正六角形からなる筒状体71を、
図5等に示すように隙間なく規則正しく密集させたような外観を呈する構造であるともいえる。
【0060】
筒密集状構造の放熱材7は、
図5に示されるように、筒状体71が密集する部分(本体)と、その部分の外周部を取り囲む円環状の外周体74とで構成されている。
放熱材7は、効率のよい放熱作用を得る等の観点から、ロール本体60の内部空間61の内周面61aよりも熱伝導率の高い金属で構成されている。熱伝導率の高い金属は、好ましくはアルミニウムが適用される。
【0061】
また、筒密集状構造の放熱材7は、ロール本体60の内部空間61内の軸方向Jにおける両端部に配置される。これにより、放熱材7は、内部空間61内の軸方向Jにおける中央部等の内側部分に配置される場合に比べると、ロール本体60の外部の空気と触れやすくなる。
【0062】
また、加圧回転ロール52を構成するロール6Aにおいては、
図4に示されるように、加圧回転ロール52のうち定着動作時に記録用紙9が接触して通過しない非通過部分NPSに相当する内部空間61内の両端部に、放熱材7をそれぞれ配置するとよい。
この加圧回転ロール52を構成するロール6Aにおける放熱材7の配置場所について、以下に詳しく説明する。
【0063】
まず、定着装置5における加圧回転ロール52は、
図4に示されるように、定着動作時に、記録用紙9が接触して通過する通過部分PSと、記録用紙9が接触して通過しない非通過部分NPSが発生する。
非通過部分NPSは、記録用紙9を搬送路45の搬送方向と交差する幅方向の中心を基準にした状態で搬送するセンターレジの媒体搬送方式の場合には、通過部分PSの軸方向Jの両端から外側の部分になる。また、
図4では、非通過部分NPSとして、搬送時の幅が最大の幅である記録用紙9を通過させたときに生じる非通過部分を例示している。
【0064】
そして、加圧回転ロール52は、
図4に示されるように、その非通過部分NPSにおける外周面の温度が、通過部分PSにおける外周面の温度よりも高くなる。
これは、通過部分PSでは、定着対象の記録用紙9が接触して通過する際に記録用紙9等により吸熱されるのに対して、非通過部分NPSでは記録用紙9等による吸熱がないため相対的に高温になる。
このような軸方向Jにおける温度分布のむらは、同じ幅サイズの記録用紙9が連続して通過する枚数が増える程より顕著にあらわれる。
【0065】
このため、加圧回転ロール52を構成するロール6Aでは、相対的に高温になる非通過部分NPSを優先して効率よく冷却する観点から、加圧回転ロール52における非通過部分NPSに相当するロール本体60の内部空間61内の両端部に放熱材7をそれぞれ配置している。
【0066】
ちなみに、非通過部分NPSについては、搬送時の幅が最大の幅よりも狭い幅の記録用紙9を通過させたときに生じる非通過部分を選択してもよい。この場合の狭い幅の記録用紙9としては、連続した画像形成動作ひいては定着動作に使用される可能性が比較的高い幅の記録用紙を選定するとよい。
このような非通過部分NPSを選択した場合は、以下に説明するしわの発生を抑制することができる。つまり、最大の幅よりも狭い幅の記録用紙9の定着動作を連続して行った後に、その狭い幅の記録用紙9よりも幅の広い別の記録用紙9の定着動作を行ったとき、その広い別の記録用紙9に軸方向Jにおける温度分布のむらに起因したしわが発生することがあるが、この発生を抑制できる。
【0067】
また、加圧回転ロール52における放熱材7は、非通過部分NPSに相当するロール本体60の内部空間61内の軸方向Jにおける両端部に存在するよう配置していれば、通過部分PSに少し入り込んだ部分に至る状態で配置しても構わない。
【0068】
また、放熱材7の軸方向Jにおける幅Wは、放熱材7を配置する場所の幅、例えば、非通過部分NPSの軸方向Jにおける幅に対応して設定される。
加圧回転ロール52を構成するロール6Aのロール本体60における内部空間61内の両端部にそれぞれ配置する放熱材7の各幅W1,W2(
図4参照)については、互いに同じ幅としても、あるいは異なる幅としてもよい。
【0069】
さらに、筒密集状構造の放熱材7は、放熱性を高めるため多くの表面積を確保する等の観点からすると、筒状体71がより多く存在する筒密集状構造であることが好ましい。
このため、筒状体71は、
図6に示されるように、その開口の大きさ(内径D)が比較的小さく、その枠部71aの厚みTが比較的薄いことが好ましい。
図6(B)では、最大の内径D1と最小の内径D2からなる正六角形の開口形状からなる筒状体71が例示されている。
【0070】
一例として、加圧回転ロール52を構成するロール6Aの内部空間61の内径が25mm程度であり、
図5に示されるようなハニカム構造の放熱材7を配置することを仮定した場合、ハニカム部となる筒状体71の最小の内径D2を3~8mmの範囲内の値とし、その筒状体71の厚みTを20~80μmの範囲内の値とする。
またこの仮定のハニカム構造の放熱材7では、その圧縮強さが20~21kgf/cm
2であると好ましい。このときの圧縮強さは、筒状体71の長さL方向に対する強度であって、外周体74を含む場合のものである。
【0071】
筒密集状構造の放熱材7の本体は、例えば、単体で複数の筒状体71を密集させて一体化して製作されるか、あるいは、ハニカム構造の製造法を用いて製作される。
また、放熱材7の外周体74は、放熱材7の本体とは別に製作して、その本体と一体化する。
そして、放熱材7は、ロール6Aの内部空間61に対して嵌め入れて固定するか、あるいは、内部空間61の内周面61aに接着剤等の接着手段を用いて固定することにより、取り付けられる。
【0072】
<送風器>
次に、送風器58は、
図2に示されるように、吹き付ける空気Eを発生する本体部581と、本体部581から放出される空気Eを導いて所要の対象物にむけて吹き付ける吹付けダクト584とで構成されている。
【0073】
本体部581は、吹き付ける空気を発生する部分である。
実施の形態1における本体部581は、定着装置5のハウジング50の外部に配置されており、回転ファン等を有する駆動機器582と、駆動機器582等を覆う図示しないカバー部材で構成されている。
また、本体部581は、ハウジング50の外部のうち記録用紙9の導入口50aが設けられている側面の下部に接近した位置、換言すれば中間転写ユニット30の二次転写部分と定着装置5との間の位置に配置されている。
【0074】
駆動機器582は、例えば、3台の回転ファンを加圧回転ロール52の軸方向Jに並べるよう配置して構成されている。図示しないカバー部材には、吸気口および排気口が形成されている。
【0075】
吹付けダクト584は、その一端部が本体部581の排気口に接続されており、その他端部が定着装置5のハウジング50の内部に侵入して存在するよう配置されている。
他端部の先端には、空気が吹き出される吹出し口584bが設けられている。吹出し口584bは、例えば、加圧回転ロール52の軸方向Jに沿って延びる長方形状の開口として形成されている。
【0076】
送風器58は、本体部581で発生させた空気E(
図2参照)を、吹付けダクト584を通して加圧回転ロール52に吹き付けるように構成されている。
具体的には、吹付けダクト584は、
図2に示されるように、空気Eを吹出し口584bから加圧回転ロール52の外周面の一部であって軸方向Jに沿う部分に直接吹き付けるように吹き出す設計になっている。
【0077】
(1-6)加圧回転ロールの冷却に関する動作
定着装置5では、上記した画像形成動作等の必要な時期になると、以下に説明する加圧回転ロール52に対する冷却動作が行われる。
【0078】
はじめに、定着装置5では、
図2や
図7に示されるように、定着動作が行われる時期等において加圧回転ロール52が定着処理部FNの通過時に加熱された定着ベルト53等と接触して回転するので、上述したように加圧回転ロール52の外周面の温度が上昇する。
この際、特に同じ幅の記録用紙9が複数枚連続して通過する定着動作が繰り返された場合には、加圧回転ロール52の非通過部分NPSの温度が通過部分PSの温度よりも高温になって温度分布のむらが大きくなる。
【0079】
一方、このときの加圧回転ロール52は、
図2や
図3(B)に示されるように、矢印で示す方向に回転し始め、これに伴って放熱材7が一体となって回動する。
また、送風器58が始動して、空気Eが加圧回転ロール52に吹き付けられる。
【0080】
これにより、加圧回転ロール52では、加圧回転ロール52が有する熱が、内部空間61の両端部における内周面61aに接触した状態で配置されている2つの筒密集状構造の放熱材7にそれぞれ効率よく伝導する。
続いて、加圧回転ロール52では、
図4に示されるように、2つの放熱材7にそれぞれ伝導した熱H1,H2が、その各放熱材7における筒状体71や貫通空間71bを通して加圧回転ロール52の外部にそれぞれ放出される。
【0081】
以上により、ロール6Aで構成される加圧回転ロール52は、放熱材7の放熱作用によって冷却される。
この際、放熱材7は、アルミニウムで構成された筒密集状構造(本例ではハニカム構造)であるので、他の金属で構成されている場合に比べると、効率のよい放熱が行われる。
また、このときの加圧回転ロール52は、放熱材7が配置されている部分ひいては非通過部分NPSが相対的に効率よく冷却される。
さらに、放熱材7を配置したロール6Aからなる加圧回転ロール52の冷却では、冷却動作のために回転駆動するものがないため、駆動音等の騒音が発生することがなく、静音性が確保される。
【0082】
したがって、放熱材7を配置したロール6Aで構成された加圧回転ロール52では、そのロール6Aの内部空間61内の少なくとも一部に内部空間61の内周面61aに接触した状態で筒密集状構造の放熱材7を配置していない場合に比べると、回転使用時に熱を受けてロール6Aひいては加圧回転ロール52の温度が上昇しても静音性が確保されたロールの冷却が行われる。
【0083】
また、定着装置5における加圧回転ロール52では、その外周面に対して送風器58から空気Eが直接吹き付けられる。
これにより、加圧回転ロール52は、送風器58からの空気Eの吹き付けによっても冷却される。
【0084】
以上説明したように、実施の形態1に係る定着装置5では、加圧回転ロール52が、放熱材7の放熱作用により冷却されるとともに送風器58の空気の吹き付けにより冷却される。
【0085】
また、定着装置5では、加圧回転ロール52における非通過部分NPSに相当する内部空間61内の位置に放熱材7が配置されていない場合に比べると、加圧回転ロール52における非通過部分NPSの冷却が相対的に効率よく行われて軸方向Jにおける温度分布のむらが低減される。
これにより、定着装置5では、定着処理部FNにおける温度むらに起因した記録用紙9のしわの発生も抑制される。
【0086】
またこれにより、この定着装置5を備える画像形成装置1にあっては、定着装置5における記録用紙9のしわの発生が抑制されるので、その抑制される分、良好な画像形成が行われる。
【0087】
(1-7)実施の形態1の変形例
なお、定着装置5においては、ロール6Aで構成される加圧回転ロール52が回転使用時に放熱材7の存在により放熱冷却されるので、送風器58により吹き付ける空気Eの風量を減らすことが可能である。
このように風量を減らした場合の定着装置5では、送風器58の駆動音が相対的に少なくなり、その分、加圧回転ロール52の冷却時の静音性が高められる。
また、定着装置5においては、送風器58の駆動機器582として3台の回転ファンを加圧回転ロール52の軸方向Jに並べるよう配置した構成例を例示したが、その回転ファンの台数を2台又は1台に減らすことも可能である。
このように回転ファンの台数を減らした場合の定着装置5では、送風器58の駆動音が相対的に少なくなり、その分、加圧回転ロール52の冷却時の静音性が高められる。
【0088】
この他、定着装置5においては、例えば加圧回転ロール52を冷却する程度が低い等の特別な事情がある場合、送風器58の併設を省略することができる。
このように送風器58の併設を省略した場合の定着装置5では、送風器58の駆動音がなくなり、その分、加圧回転ロール52の冷却時の静音性が高められる。しかも、この場合の定着装置5では、送風器58の設置スペースが不要になり、定着装置5の大型化を回避することが可能になる。また、この場合の定着装置5では、加圧回転ロール52の周囲に他の装置や部品等を配置することがない加圧回転ロール52(ロール6A)の冷却を行える。
【0089】
実施の形態2.
図8は、本発明の実施の形態2に係る加圧回転ロール52を構成するロール6Bの概略断面図である。
実施の形態2に係るロール6Bは、送風部材65を追加して変更した以外は実施の形態1に係るロール6Aと同じ構成からなるものである。また、このロール6Bで構成される加圧回転ロール52は、例えば、実施の形態1に係る定着装置5に適用される。
【0090】
(2-1)送風部材を備えたロールの構成
加圧回転ロール52を構成するロール6Bは、
図8に示されるように、そのロール本体60の内部空間61のうち放熱材7が配置されていない内側の空間部分61bに、ロール6Bの回転に連動して内部空間61内に所要の空気流Erを発生させる送風部材65を配置している。
【0091】
実施の形態2における送風部材65は、
図8に示されるように、支持軸66aと、支持軸66aの外周面に設けた螺旋状に延びる螺旋羽根66bとからなるスクリューオーガ型のものである。
【0092】
このうち支持軸66aは、ロール6Bの回転中心を通るとともにロール6Bの軸方向Jに沿って延びる軸であって、その両端部が2つの放熱材7の内側部分にそれぞれ接近した位置でとどまる状態で配置されている。
また、支持軸66aは、その両端部が、ロール6Bの内部空間61の上記空間部分61b内に固定して配置される軸固定材67に固定されている。軸固定材67は、ロール6Bの内部空間61内における空気の軸方向Jに沿う流れの障害にならないよう隙間を多く確保できる棒状の部材等で構成される。
【0093】
一方、螺旋羽根66bは、支持軸66aの外周面に対して所要の高さおよび傾きと所要の螺旋ピッチで設けられる。
螺旋羽根66bの螺旋方向と傾きは、ロール6B(加圧回転ロール52)の回転に連動して発生させるべき空気流Erの向きに対応して設定される。また、螺旋羽根66bの高さや螺旋ピッチは、その空気流Erで求められる風速に対応して設定される。空気流Erの風速は、例えば、0.05~0.3m/秒になることが好ましい。
実施の形態2における送風部材65は、
図8に示されるように、ロール6B(加圧回転ロール52)が回転した際、定着装置5の前側から後側に向けて流れる空気流Erを発生させるように構成されている。
【0094】
(2-2)送風部材を備えたロールの動作
実施の形態2に係るロール6Bで構成される加圧回転ロール52は、例えば実施の形態1に係る定着装置5に適用した場合に上記した画像形成動作等の必要な時期が到来すると、以下に説明する回転体のロール6Bにおける冷却動作が行われる。
【0095】
すなわち、ロール6Bで構成される加圧回転ロール52は、定着装置5において矢印で示す方向に回転し始め(
図2参照)、これに伴って放熱材7と送風部材65も一体となって回動する。
また、送風器58が始動して、空気Eが加圧回転ロール52に吹き付けられる。
【0096】
これにより、加圧回転ロール52では、実施の形態1で説明した場合と同様に、特に非通過部分NPSにおける熱が2つの筒密集状構造の放熱材7にそれぞれ効率よく伝導し、その伝導した熱が加圧回転ロール52の外部にそれぞれ放出される。
また、加圧回転ロール52では、送風部材65が加圧回転ロール52の回転に連動して支持軸66aを中心にして回転するように動く。このため、加圧回転ロール52の内部空間61における上記空間部分61b内には、送風部材65における螺旋羽根66bにより
図8に例示する方向に流れる空気流Erが生じる。このときの空気流Erは、定着装置5の前側から後側に向けて流れる。
【0097】
このときの空気流Erは、加圧回転ロール52(ロール6B)の内部空間61内に存在する空気を動かすことによって発生する。また、この空気流Erは、加圧回転ロール52の外部の空気Einを前側のロール端部にある放熱材7(貫通空間71b)を通して新たに流入させる。
これにより、2つの放熱材7にそれぞれ伝導した熱H2,H3が、空気流Erの影響を受けて運ばれ、後側のロール端部にある放熱材7を通して後方に効率よく放出される。また、この際、空気流Erにより外部から流入する空気Einが生まれるため、放熱材7の放熱作用が高められ、ひいては加圧回転ロール52の冷却効率も高められる。
【0098】
したがって、ロール6Bで構成される加圧回転ロール52は、放熱材7の放熱作用によって冷却されるとともに、送風部材65が発生する空気流により放熱材7の放熱作用や加圧回転ロール52の冷却が高められるよう補助される。
【0099】
また、実施の形態2に係るロール6Bで構成される加圧回転ロール52を適用した定着装置では、加圧回転ロール52が、実施の形態1に係る定着装置5の場合と同様に放熱材7の放熱作用により冷却されるとともに送風器58の空気の吹き付けにより冷却される。
しかも、この定着装置では、加圧回転ロール52を構成するロール6Bの内部空間61内に送風部材65を配置していない場合に比べると、回転使用時にロール6Bの冷却がより効率よく行われる。
【0100】
実施の形態3.
図9は、本発明の実施の形態3に係る加圧回転ロール52を構成するロール6Cの概略断面図である。
実施の形態3に係るロール6Cは、第2放熱材77を追加して変更した以外は実施の形態1に係るロール6Aと同じ構成からなるものである。また、このロール6Cで構成される加圧回転ロール52は、例えば、実施の形態1に係る定着装置5に適用される。
【0101】
(3-1)第2放熱材を備えたロールの構成
加圧回転ロール52を構成するロール6Cは、
図9に示されるように、そのロール本体60の内部空間61のうち放熱材7が配置されていない内側の空間部分61bに、放熱材7よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材77を配置している。
【0102】
実施の形態3における筒密集状構造の第2放熱材77は、アルミニウムよりも熱伝導率が低い金属材料や、紙、繊維強化プラスチック、アラミド等の非金属材料で構成されるハニカム構造等の筒密集構造からなる部材である。
【0103】
また、筒密集状構造の第2放熱材77は、
図9に示されるように、その筒密集状構造における貫通空間78がロール6Cの軸方向Jに沿う状態になり、その貫通空間78の両端の開口が放熱材7に向き合う状態になるよう配置される。
また、第2放熱材77は、放熱材7の場合と同様に、内部空間61の内周面61aに接触した状態で配置される。また、第2放熱材77は、放熱材7の場合と同様に外周体74(
図5参照)を設けてもよいが、外周体74を設けなくともよい。
【0104】
さらに、第2放熱材77は、ロール6Cの軸方向Jにおける冷却のむらを回避する観点からは、
図9に示されるように、内部空間61の上記空間部分61bの全域に配置することが好ましい。この場合の第2放熱材77は、加圧回転ロール52における通過部分PSに相当する内部空間61内に配置されることになる。
【0105】
(3-2)第2放熱材を備えたロールの動作
実施の形態3に係るロール6Cで構成される加圧回転ロール52は、例えば実施の形態1に係る定着装置5に適用した場合に上記した画像形成動作等の必要な時期が到来すると、以下に説明する回転体のロール6Cにおける冷却動作が行われる。
【0106】
すなわち、ロール6Cで構成される加圧回転ロール52は、定着装置5において矢印で示す方向に回転し始め(
図2参照)、これに伴って放熱材7と第2放熱材77も一体となって回転する。
また、送風器58が始動して、空気Eが加圧回転ロール52に吹き付けられる。
【0107】
これにより、加圧回転ロール52では、実施の形態1で説明した場合と同様に、特に非通過部分NPSにおける熱が2つの筒密集状構造の放熱材7にそれぞれ効率よく伝導し、その伝導した熱が加圧回転ロール52の外部にそれぞれ放出される。
また、加圧回転ロール52では、特に非通過部分NPSにおける熱が第2放熱材77に伝導し、その第2放熱材77に伝導した熱が放熱材7を介して加圧回転ロール52の外部に熱H5,H6としてそれぞれ放出される。
【0108】
したがって、ロール6Cで構成される加圧回転ロール52は、放熱材7の放熱作用によって冷却されるとともに、第2放熱材77の放熱作用によって補助的に冷却される。
【0109】
また、実施の形態3に係るロール6Cで構成される加圧回転ロール52を適用した定着装置では、加圧回転ロール52が、実施の形態1に係る定着装置5の場合と同様に放熱材7の放熱作用により冷却されるとともに送風器58の空気の吹き付けにより冷却される。
しかも、この定着装置では、加圧回転ロール52を構成するロール6Cの内部空間61内に第2放熱材77を配置していない場合に比べると、回転使用時にロール6Cの冷却がより効率よく行われる。
【0110】
実施の形態4.
図10は、本発明の実施の形態4に係る媒体調整装置8の一例である反り解消装置8Aの概念図である。
(4-1)反り解消装置の構成
反り解消装置8Aは、外部から熱を受けて温度が上昇していてかつ反り(カール)が生じている記録媒体の一例である記録用紙9Aを回転ロールに接触通過させて当該反りをほぼ解消する装置である。
実施の形態4に係る反り解消装置8Aは、筐体80の内部に、第1押圧通過部PN1、第2押圧通過部PN2、記録用紙9Aの搬送路85等を備えている。
【0111】
筐体80は、記録用紙9Aの導入口80aおよび排出口80bが設けられた箱型の構造体である。
【0112】
第1押圧通過部PN1は、記録用紙9Aを押圧して上方向に凸となるように湾曲させた状態で通過させる部分である。
第1押圧通過部PN1は、矢印で示す方向に回転する第1回転ロール81と第1回転ロール81のほぼ最下の外周面部に押圧された状態で接触して矢印で示す方向に回転する第1押圧ロール82とが接触する部分として構成されている。
このうち第1回転ロール81は、図示しない弾性表面層を有する構造のロールであり、図示しない駆動装置から回転動力を得て矢印で示す方向に回転する。また、第1押圧ロール82は、第1回転ロール81の弾性表面層よりも硬い剛性を有する剛性ロールであり、第1回転ロール81の回転動作に従動して矢印で示す方向に回転する。
【0113】
第2押圧通過部PN2は、第1押圧通過部PN1を通過した後の記録用紙9Aを押圧して下方向に凸となるよう湾曲させた状態で通過させる部分である。
第2押圧通過部PN2は、矢印で示す方向に回転する第2回転ロール83と第2回転ロール83のほぼ最上の外周面部に押圧された状態で接触して矢印で示す方向に回転する第2押圧ロール84とが接触する部分として構成されている。
このうち第2回転ロール83は、図示しない弾性表面層を有する構造のロールであり、図示しない駆動装置から回転動力を得て矢印で示す方向に回転する。また、第2押圧ロール84は、第2回転ロール83の弾性表面層よりも硬い剛性を有する剛性ロールであり、第2回転ロール83の回転に従動して矢印で示す方向に回転する。
【0114】
搬送路85は、筐体80の導入口80aから導入される記録用紙9Aを、第1押圧通過部PN1と第2押圧通過部PN2をこの順に通過させた後に筐体80の排出口80bから排出させるように搬送する部分である。
搬送路85は、例えば、記録用紙9Aの搬送する方向を案内する図示しない搬送案内部材等で構成されている。
【0115】
(4-2)反り解消装置の動作
反り解消装置8Aは、その作動時になると、第1回転ロール81と第2回転ロール83がそれぞれ矢印で示す方向に回転し始める。また、反り解消装置8Aでは、第1押圧ロール82と第2押圧ロール84が、第1回転ロール81の弾性表面層と第2回転ロール83の弾性表面層にそれぞれ所要の深さで食い込むように接触して従動回転する。
【0116】
続いて、反り解消装置8Aでは、記録用紙9Aが筐体80内に導入されて搬送路85を経由して第1押圧通過部PN1と第2押圧通過部PN2をこの順に通過するよう搬送される。
この際、記録用紙9Aは、第1押圧通過部PN1において第1回転ロール81に第1押圧ロール82により下方から押し付けられ、これにより上方向に凸となるよう一時的に湾曲させられた状態になって通過する。このときの記録用紙9Aは、例えば下方に湾曲する反りの部分が矯正される。
また、第1押圧通過部PN1を通過した記録用紙9Aは、第2押圧通過部PN2において第2回転ロール83に第2押圧ロール84により上方から押し付けられ、これにより下方向に凸となるよう一時的に湾曲させられた状態になって通過する。このときの記録用紙9Aは、例えば上方に湾曲する反りの部分が矯正される。
【0117】
これにより、記録用紙9Aは、反り解消装置8Aに導入される前に存在している反りが、反り解消装置8Aの第1押圧通過部PN1および第2押圧通過部PN2を通過することでほぼ解消される。
【0118】
ちなみに、反り解消装置8Aは、例えば、画像形成装置における定着装置から排出される記録用紙9に存在する反りを解消するために、その定着装置の記録用紙9の搬送する方向の下流側の用紙搬送路内に配置して使用される。この使用形態における反り解消装置8Aに導入される記録用紙9は、定着装置で定着された画像が形成されている。
また、反り解消装置8Aは、外部から熱を受けて温度が上昇していてかつ反りが生じている記録用紙9Aが独立して存在する場合であれば、単独の装置として使用することも可能である。
【0119】
(4-3)回転ロールの冷却に関する構成
反り解消装置8Aでは、
図10に示されるように、第1回転ロール81と第2回転ロール83を筒密集状構造の放熱材7を備えたロール6Aでそれぞれ構成している。
【0120】
第1回転ロール81と第2回転ロール83はいずれも、円筒状のロール本体60の内部空間61内の少なくとも一部に、その内部空間61の内周面61aに接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材7を備えている(
図3,
図4参照)。
筒密集状構造の放熱材7は、実施の形態1における放熱材7とほぼ同様に構成されたものである。
【0121】
放熱材7は、第1回転ロール81および第2回転ロール83のうち比較的高温になる部分に相当する内部空間61内の部分に配置される。
具体的には、放熱材7は、第1回転ロール81および第2回転ロール83のうち記録用紙9Aが接触して通過する部分に相当する内部空間61内の部分に配置するとよい。この場合の放熱材7は、その内部空間61内の部分に1つの放熱材として配置されるが、複数の分割した放熱材として互いに接触させた状態又は軸方向Jに間隔をあけた状態で配置しても構わない。
なお、放熱材7は、第1回転ロール81および第2回転ロール83のうち記録用紙9Aが接触して通過する部分でかつ当該部分のうち軸方向Jにおける両端部のみに配置してもよい。
【0122】
(4-4)回転ロールの冷却に関する動作
反り解消装置8Aでは、その作動時になると、第1回転ロール81と第2回転ロール83において以下に説明する冷却が行われる。
【0123】
まず、反り解消装置8Aでは、外部から熱を受けて温度が上昇していてかつ反りが生じている記録用紙9Aが、回転している第1押圧通過部PN1と第2押圧通過部PN2を通過する。
このため、その記録用紙9Aが接触通過する第1押圧通過部PN1における第1回転ロール81と第2押圧通過部PN2における第2回転ロール83は、記録用紙9A等から熱を受けてその各外周面の温度が反り解消装置8Aが停止しているときの温度に比べて上昇した状態になる。
また、このときの第1回転ロール81と第2回転ロール83においては、その内部空間61内に配置されている放熱材7が一体になって回動する。
【0124】
これにより、第1回転ロール81と第2回転ロール83では、特に記録用紙9Aが接触して通過した部分における熱が筒密集状構造の放熱材7に効率よく伝導し、その伝導した熱が第1回転ロール81および第2回転ロール83の外部にそれぞれ放出される。
つまり、ロール6Aで構成された第1回転ロール81および第2回転ロール83は、筒密集状構造の放熱材7の放熱作用によって冷却される。またこの冷却においては、第1回転ロール81および第2回転ロール83の冷却を行うためだけに駆動するものがないため、駆動音のような騒音が発生することがない。
【0125】
したがって、ロール6Aで構成された第1回転ロール81および第2回転ロール83を備えた反り解消装置8Aでは、その各ロール81,83の内部空間内に筒密集状構造の放熱材7を配置しない場合に比べると、回転使用時に記録用紙9Aから熱を受けて第1回転ロール81および第2回転ロール83の温度が上昇しても静音性が確保された当該ロール81,83の冷却を行うことができる。
【0126】
実施の形態5.
図11は、本発明の実施の形態5に係る媒体調整装置8の他の例である媒体冷却装置8Bの概念図である。
(5-1)媒体冷却装置の構成
媒体冷却装置8Bは、外部から熱を受けて温度が上昇している記録媒体の一例である記録用紙9Bを回転体に接触通過させて、その温度上昇した温度よりも低い温度になる程度に冷却する装置である。
実施の形態5に係る媒体冷却装置8Bは、筐体86の内部に、冷却処理部CN、記録用紙9Bの搬送路89等を備えている。
【0127】
筐体86は、記録用紙9Bの導入口86aおよび排出口86bが設けられた箱型の構造体である。
冷却処理部CNは、記録用紙9Bを挟持した状態で搬送して冷却の処理をする部分である。
【0128】
冷却処理部CNは、矢印で示す方向に回転する冷却回転ロール87と冷却回転ロール87の外周面に接触して矢印で示す方向に回転する搬送回転ロール88とが接触する部分として構成されている。
このうち冷却回転ロール87は、熱伝導性に優れた金属等の材料からなるロールであり、図示しない駆動装置から回転動力を得て矢印で示す方向に回転する。また、搬送回転ロール88は、図示しない弾性表面層を有する構造のロールであり、冷却回転ロール87の回転動作に従動して矢印で示す方向に回転する。
【0129】
搬送路89は、筐体86の導入口86aから導入される記録用紙9Bを、冷却処理部CNを通過させた後に筐体86の排出口86bから排出させるように搬送する部分である。
搬送路89は、例えば、記録用紙9Bを挟持して搬送する一対の搬送ロール89a,89bや、記録用紙9Bの搬送する方向を案内する図示しない搬送案内部材等で構成されている。
【0130】
(5-2)媒体冷却装置の動作
媒体冷却装置8Bは、その作動時になると、冷却回転ロール87と一対の搬送ロール89a,89bがそれぞれ所要の方向に回転し始める。また、媒体冷却装置8Bでは、搬送回転ロール88が、冷却回転ロール87に接触して従動回転し始める。
【0131】
続いて、媒体冷却装置8Bでは、記録用紙9Bが筐体86内に導入されて搬送路89を経由して冷却処理部CNを通過するよう搬送される。
この際、記録用紙9Bは、冷却処理部CNにおいて冷却回転ロール87と搬送回転ロール88との間に挟持されて搬送される。
これにより、記録用紙9Bは、冷却回転ロール87に接触して通過することで熱が冷却回転ロール87に伝導して冷却される。
【0132】
ちなみに、媒体冷却装置8Bは、例えば、画像形成装置における記録媒体の搬送路内に配置して使用される。記録用紙9Bは、画像が形成された記録用紙に限らず、画像が形成される前の記録用紙であってもよい。また、記録用紙9Bは、長尺からなる帯状の記録用紙(例えばロール紙)であってもよい。
また、媒体冷却装置8Bは、外部から熱を受けて温度が上昇している記録用紙9Bが独立して存在する場合であれば、単独の装置として使用することも可能である。
【0133】
(5-3)回転ロールの冷却に関する構成
媒体冷却装置8Bでは、
図11に示されるように、冷却回転ロール87を筒密集状構造の放熱材7を備えたロール6Aで構成している。
【0134】
冷却回転ロール87は、円筒状のロール本体60の内部空間61内の少なくとも一部に、その内部空間61の内周面61aに接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材7を備えている(
図3,
図4参照)。
筒密集状構造の放熱材7は、実施の形態1における放熱材7とほぼ同様に構成されたものである。
【0135】
放熱材7は、冷却回転ロール87のうち比較的高温になる部分に相当する内部空間61内の部分に配置される。
具体的には、放熱材7は、冷却回転ロール87のうち記録用紙9Bが接触して通過する部分に相当する内部空間61内の部分に配置するとよい。この場合の放熱材7は、その内部空間61内の部分に1つの放熱材として配置されるが、複数の分割した放熱材として互いに接触させた状態又は軸方向Jに間隔をあけた状態で配置しても構わない。
なお、放熱材7は、冷却回転ロール87のうち記録用紙9Bが接触して通過する部分でかつ当該部分のうち軸方向Jにおける両端部のみに配置してもよい。
【0136】
(5-4)回転ロールの冷却に関する動作
媒体冷却装置8Bでは、その作動時になると、冷却回転ロール87において以下に説明する冷却が行われる。
【0137】
まず、媒体冷却装置8Bでは、外部から熱を受けて温度が上昇している記録用紙9Bが冷却処理部CNを通過する。
このため、その記録用紙9Bが接触通過する冷却処理部CNにおける冷却回転ロール87は、記録用紙9B等から熱を受けてその外周面の温度が媒体冷却装置8Bの停止しているときの温度に比べて上昇した状態になる。
また、このときの冷却回転ロール87は、その内部空間61内に配置されている放熱材7が一体になって回動する。
【0138】
これにより、冷却回転ロール87では、特に記録用紙9Bが接触して通過した部分における熱が筒密集状構造の放熱材7に効率よく伝導し、その伝導した熱が冷却回転ロール87の外部に放出される。
つまり、ロール6Aで構成された冷却回転ロール87は、筒密集状構造の放熱材7の放熱作用によって冷却される。またこの冷却においては、冷却回転ロール87の冷却を行うためだけに駆動するものがないため、駆動音のような騒音が発生することがない。
【0139】
したがって、ロール6Aで構成された冷却回転ロール87を備えた媒体冷却装置8Bでは、その冷却回転ロール87の内部空間内に筒密集状構造の放熱材7を配置しない場合に比べると、回転使用時に記録用紙9Bから熱を受けて冷却回転ロール87の温度が上昇しても静音性が確保された冷却回転ロール87の冷却を行うことができる。
【0140】
変形例.
本発明は、上記実施の形態1-5として例示した構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した各発明の要旨を変更しない範囲内で種々の変形や改変が可能である。このため、本発明は、例えば、以下に示す変形例も含むものである。
【0141】
実施の形態1に係る定着装置5は、加熱用回転体51として、ロール形態のもの(加熱回転ロール)を適用したものであってもよい。
【0142】
実施の形態2では、ロール6Bにおける送風部材65として、支持軸66aに螺旋状に連続する螺旋羽根66bを設けたタイプのものを例示したが、送風部材65はそのタイプに限定されない。
他のタイプの送風部材65としては、支持軸66aに所要の間隔をあけた状態で板状の送風部材を設けたタイプのものでもよい。また、他のタイプの送風部材65としては、ロール本体60における内部空間61の内周面61aから回転中心に向けて突出するような送風突板を設けるタイプのものであってもよい。この場合における送風突板については、熱伝導性を有する材料で構成してもよい。
【0143】
実施の形態3では、第2放熱材77を、ロール6Cの内部空間61のうち放熱材7が存在しない空間部分61bの全域に配置する構成例を示したが、第2放熱材77は、例えば、上記空間部分61bのうち放熱材7に接近した一部の領域にだけ配置してもよい。
このように構成した場合は、例えばロール6Cの放熱材7よりも少し内側の部分が相対的に高温になる傾向にある場合、その内側の部分の冷却を第2放熱材77により局所的に行うことが可能になって有効である。
【0144】
実施の形態4に係る反り解消装置8Aは、第1回転ロール81および第2回転ロール83を、ロール6Aに代えて、実施の形態2,3で例示したロール6B,6C(
図8,
図9参照)で構成してもよい。
また、反り解消装置8Aは、第1回転ロール81と第2回転ロール83の一方を、ロール6A,6B,6Cのいずれかで構成してもよい。
さらに、反り解消装置8Aは、第1押圧通過部PN1と第2押圧通過部PN2の配置を記録用紙9Aの搬送方向において逆の順番になるよう配置してもよい。また、反り解消装置8Aは、第1押圧通過部PN1と第2押圧通過部PN2のいずれか一方のみを備えたものとしてもよい。
【0145】
実施の形態5に係る媒体冷却装置8Bは、ロール6Aに代えて、実施の形態2,3で例示したロール6B,6C(
図8,
図9参照)で構成してもよい。
また、媒体冷却装置8Bは、冷却処理部CNとして、複数の冷却処理部CNを配置してもよい。さらに、媒体冷却装置8Bは、冷却処理部CNについて、冷却回転ロール87と搬送回転ロール88を上下逆の位置関係になるよう配置して構成してもよい。
【0146】
定着装置5を備える画像形成装置は、像形成部2として、中間転写ユニット30、つまり中間転写方式を用いず、未定着像を記録用紙9に直接転写する直接転写方式を採用した像形成部2を備えた画像形成装置であっても構わない。
また、反り解消装置8A、媒体冷却装置8B等に代表される媒体調整装置8を備える画像形成装置は、現像剤で構成される未定着像を形成する方式以外の像形成方式を採用した画像形成装置でもよい。現像剤で構成される未定着像を形成する方式以外の像形成方式とは、例えば、インク噴射による像形成方式等である。
【0147】
(付記)
(((1)))
回転させて使用される円筒状のロールであって、前記ロールの内部空間内の少なくとも一部に前記内部空間の内周面に接触した状態で配置される筒密集状構造の放熱材を備えるロール。
(((2)))
前記放熱材が、前記内部空間の内周面よりも熱伝導率の高い金属で構成されている(((1)))に記載のロール。
(((3)))
前記金属がアルミニウムである (((2)))に記載のロール。
(((4)))
前記放熱材が前記内部空間のうち軸方向の両端部に配置されている(((1))) から(((3)))のいずれかに記載のロール。
(((5)))
前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、ロールの回転に連動して当該内部空間内に空気流を発生させる送風部材を備える(((4)))に記載のロール。
(((6)))
前記送風部材が、前記内部空間の一方の端部から他方の端部に向けて流れる空気流を発生させる(((5)))に記載のロール。
(((7)))
前記内部空間のうち前記放熱材が配置されていない内側の部分に配置され、前記放熱材よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材を備える(((4)))に記載のロール。
(((8)))
加熱手段を有する加熱用回転体と、
前記加熱用回転体に圧力を加えて接触するとともに未定着像を保持する記録媒体を通過させる定着処理部を形成する加圧回転ロールと、
を備え、
前記加圧回転ロールが(((1)))から(((7)))のいずれかに記載のロールで構成されている定着装置。
(((9)))
前記放熱材が、前記加圧回転ロールのうち前記記録媒体が接触して通過しない非通過部分に相当する内部空間内に配置されている(((8)))に記載の定着装置。
(((10)))
温度が上昇した記録媒体を接触通過させて調整する回転ロールを備え、
前記回転ロールが(((1)))から(((7)))のいずれかに記載のロールで構成されている媒体調整装置。
(((11)))
未定着像を形成して記録媒体に転写する像形成部と、
前記像形成部で転写された未定着像を記録媒体に定着する定着装置と、
を備え、
前記定着装置が(((8)))に記載の定着装置で構成されている画像形成装置。
(((12)))
温度が上昇した記録媒体を回転体に接触通過させて調整する媒体調整装置を備え、
前記媒体調整装置が(((10)))に記載の媒体調整装置で構成されている画像形成装置。
【0148】
(((1)))に係るロールによれば、回転させて使用される円筒状のロールにおいて、当該ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に熱を受けてロールの温度が上昇しても静音性を確保したロールの冷却を行うことができる。
(((2)))に係るロールによれば、放熱材が熱伝導率の低い金属で構成されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
(((3)))に係るロールによれば、放熱材がアルミニウム以外の金属で構成されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
(((4)))に係るロールによれば、放熱材がロールの内部空間のうち軸方向の両端部以外の部分に配置されている場合に比べて、回転使用時にロールの冷却を効率よく行うことができる。
(((5)))に係るロールによれば、ロールの内部空間内にロールの回転に連動して当該内部空間内に空気流を発生させる送風部材を配置していない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
(((6)))に係るロールによれば、送風部材がロールの内部空間の一方の端部から他方の端部に向けて流れる空気流を発生させるものでない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
(((7)))に係るロールによれば、ロールの内部空間のうち放熱材が配置されていない部分に、当該放熱材よりも熱伝導率が低い材料で構成される筒密集状構造の第2放熱材を備えない場合に比べて、回転使用時にロールの冷却をより効率よく行うことができる。
(((8)))に係る定着装置によれば、円筒状の加圧回転ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に加熱用回転体から熱を受けて加圧回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができる。
(((9)))に係る定着装置によれば、加圧回転ロールのうち記録媒体が接触して通過しない非通過部分に相当する内部空間内に放熱材が配置されていない場合に比べて、回転使用時に静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができ、定着処理部における温度むらに起因した記録媒体のしわの発生を抑制することもできる。
(((10)))に係る媒体調整装置によれば、円筒状の回転ロールの内部空間内の少なくとも一部に当該内部空間の内周面に接触した状態で筒密集状構造の放熱材を配置していない場合に比べて、回転使用時に記録媒体から熱を受けて回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した回転ロールの冷却を行うことができる。
(((11))) に係る画像形成装置によれば、定着装置において、回転使用時に加熱用回転体から熱を受けて加圧回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した加圧回転ロールの冷却を行うことができる。
(((12))) に係る画像形成装置によれば、媒体調整装置において、回転使用時に記録媒体から熱を受けて回転ロールの温度が上昇しても静音性を確保した回転ロールの冷却を行うことができる。
【符号の説明】
【0149】
1 …画像形成装置
2 …像形成部
5 …定着装置
6A,6B,6C…ロール
7 …放熱体
8 …媒体調整装置
8A…反り解消装置(媒体調整装置の一例)
8B…媒体冷却装置(媒体調整装置の他の例)
9 …記録用紙(記録媒体の一例)
9A…記録用紙(温度が上昇した記録媒体の一例)
9B…記録用紙(温度が上昇した記録媒体の他の例)
51…加熱用回転体
52…加圧回転ロール(ロールの一例)
57A,57B,57C…加熱手段
60…ロール本体
61…内部空間
61a…内周面
61b…内部空間のうち放熱材が存在しない空間部分
65…送風部材
77…第2放熱材
81…第1回転ロール(ロールの他の例)
83…第2回転ロール(ロールの他の例)
87…冷却回転ロール(ロールの他の例)
J …軸方向
FN…定着処理部
Er…空気流
NPS…非通過部分