(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140771
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】環境制御装置、環境調整装置、制御方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/65 20180101AFI20241003BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241003BHJP
F24F 11/79 20180101ALI20241003BHJP
F24F 11/80 20180101ALI20241003BHJP
【FI】
F24F11/65
F24F11/74
F24F11/79
F24F11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052097
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 翔太
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260BA25
3L260CA08
3L260FA02
3L260FA03
3L260FA06
3L260FA07
3L260FA08
3L260GA01
(57)【要約】
【課題】対象者を確実に覚醒させる環境制御装置を提供する。
【解決手段】人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置を対象とする。環境制御装置(E)の制御部(100)は、環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させ、第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得し、第1動作の実行中に取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、第1動作を停止させる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置であって、
前記制御部(100)は、
前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させ、
前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得し、
前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる
環境制御装置。
【請求項2】
前記制御部(100)は、前記第1動作を停止させた後に第2動作を実行させ、
前記第1動作では、前記環境指標の目標値を第1目標値から第2目標値に変化させ、前記環境指標が前記第2目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御し、
前記第2動作では、前記環境指標の目標値を前記第2目標値から、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させる方向と逆方向の第3目標値に変化させ、前記環境指標が前記第3目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する
請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項3】
前記第2動作において、前記第3目標値と前記第2目標値との差は、前記第1目標値と前記第2目標値との差と同じである
請求項2に記載の環境制御装置。
【請求項4】
前記第2動作において、前記第3目標値と前記第2目標値との差は、前記第1目標値と前記第2目標値との差よりも大きい
請求項2に記載の環境制御装置。
【請求項5】
前記制御部(100)は、前記第1動作を実行させる前に第3動作を実行させ、
前記第3動作では、前記環境指標が前記第1目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する
請求項3または4に記載の環境制御装置。
【請求項6】
前記環境指標は、空気の温度、湿度、輻射温度、風量、または風向である
請求項1に記載の環境制御装置。
【請求項7】
請求項1に記載の前記環境調整部(A)および前記制御部(100)を備える
環境調整装置。
【請求項8】
前記対象者(T)の感情情報を推定する感情推定部(60)を更に備え、
前記制御部(100)は、前記感情推定部(60)によって推定した前記対象者(T)の前記感情情報を取得する
請求項7に記載の環境調整装置。
【請求項9】
ユーザが不快の感情情報を入力する操作部(51)を更に備え、
前記制御部(100)は、前記操作部(51)に入力された前記感情情報を取得する
請求項7に記載の環境調整装置。
【請求項10】
前記環境調整部(A)は、前記対象者(T)が存在する空間の空気を調和する空気調和部である
請求項7~9のいずれか1つに記載の環境調整装置。
【請求項11】
人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する制御方法であって、
前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させる処理と、
前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得する処理と、
前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる処理とを含む
制御方法。
【請求項12】
人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムであって、
前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させる処理と、
前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得する処理と、
前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる処理とをコンピュータに実行させる
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境制御装置、環境調整装置、制御方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の空気調和システムでは、室内の在室者に対して刺激を与える刺激付与運転を行う。刺激付与運転は、在室者から得た感情データおよび在室者の周囲環境データから得られる快適温度および快適風速に基づいて行われる。具体的には、刺激付与運転では、空調装置が第1制御パターンと第2制御パターンのそれぞれを行う。第1制御パターンでは、室内の室温を、室内の上記快適温度と該快適温度以外の温度とに変動させて、在室者に室温変動による刺激を与える。第2制御パターンでは、室内の風速を、上記快適風速と該快適風速以外の風速とに変動させて、在室者に風速変動による刺激を与える。これにより、在室者に刺激を与えて知的生産性の向上を図りつつ、在室者の快適性を維持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような空気調和システムの刺激付与運転を、例えば、在室者の眠気を抑制するために行う場合、第1制御パターンにおける快適温度以外の温度による刺激が弱い、若しくは該刺激が付与される時間が短いために、在室者にとって眠気を抑制するのに十分な刺激でないことがある。同様に、第2制御パターンにおける快適風速以外の風速による刺激が、在室者にとって眠気を抑制するのに十分でないことがある。このような場合には、対象者に室温変動および風速変動による刺激を与えたとしても、在室者が眠気を感じたり、集中力が低下することにより、知的生産性が低下することがあった。
【0005】
本開示の目的は、対象者を確実に覚醒させる環境制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様は、人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する制御部(100)を備えた環境制御装置を対象とする。環境制御装置(E)の制御部(100)は、前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させ、前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得し、前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる。
【0007】
第1の態様では、対象者(T)を覚醒させる第1動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、第1動作を停止する。言い換えると、制御部(100)は、対象者(T)が不快と感じるまで環境調整部(A)に第1動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【0008】
第2の態様は、第1の態様において、前記制御部(100)は、前記第1動作を停止させた後に第2動作を実行させる。前記第1動作では、前記環境指標の目標値を第1目標値から第2目標値に変化させ、前記環境指標が前記第2目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する。前記第2動作では、前記環境指標の目標値を前記第2目標値から、前記第1目標値から前記第2目標値に変化させる方向と逆方向の第3目標値に変化させ、前記環境指標が前記第3目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する。
【0009】
第2の態様では、第2動作において、第1動作における環境指標が変化する方向とは逆方向の第3目標値に近づくように環境調整部(A)を制御する。制御部(100)は、対象者(T)を覚醒させる第1動作の後に上記第2動作を実行するので、不快と感じた対象者(T)の感情を不快でない状態に変化させることができる。これにより、対象者(T)の快適性を損なうことなく、対象者(T)の覚醒状態を維持できる。
【0010】
第3の態様は、第2の態様において、前記第2動作において、前記第3目標値と前記第2目標値との差は、前記第1目標値と前記第2目標値との差と同じである。
【0011】
第3の態様では、第3目標値と第2目標値との差が、第1目標値と第2目標値との差と同じなので、第2動作における第3目標値は、第1目標値と同じ目標値となる。したがって、第2動作を実行することにより、環境指標を第1動作の開始前の状態に戻すことができる。これにより、第1動作により不快になった対象者(T)の感情を不快でない状態に変化させることができる。
【0012】
第4の態様は、第2の態様において、前記第2動作において、前記第3目標値と前記第2目標値との差は、前記第1目標値と前記第2目標値との差よりも大きい。
【0013】
第4の態様では、第3目標値と第2目標値との差が、第1目標値と第2目標値との差よりも大きいので、第2動作における第3目標値は、第1動作の環境指標の変化方向と逆方向に第1目標値よりも大きくなる。これにより、第2動作により不快になった対象者(T)の感情を不快でない状態により早く変化させることができる。
【0014】
第5の態様は、第3または第4の態様において、前記制御部(100)は、前記第1動作を実行させる前に第3動作を実行させる。前記第3動作では、前記環境指標が前記第1目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する。
【0015】
第5の態様では、第1動作の実行前に、環境指標の目標値が第1目標値である第3動作が実行される。これにより、第1動作の実行前は、対象者(T)の感情が不快でない環境に整えられている。
【0016】
第6の態様は、第1~第5のいずれか1つの態様において、前記環境指標は、空気の温度、湿度、輻射温度、風量、または風向である。
【0017】
第7の態様は、環境調整装置を対象とする。環境調整装置(10)は、第1~第6のいずれか1つに記載の前記環境調整部(A)および前記制御部(100)を備える。
【0018】
第7の態様では、対象者(T)を確実に覚醒させる環境調整装置を提供できる。
【0019】
第8の態様は、第7の態様において、前記対象者(T)の感情情報を推定する感情推定部(60)を更に備える。前記制御部(100)は、前記感情推定部(60)によって推定した前記対象者(T)の感情情報を取得する。
【0020】
第8の態様では、感情推定部(60)によって対象者(T)の感情が推定される。これにより、制御部(100)は、推定された対象者(T)の前記感情情報に基づいて第1動作を停止させることができる。そのため、自動で第1動作を停止させることができる。
【0021】
第9の態様は、第7の態様において、ユーザが不快の感情情報を入力する操作部(51)を更に備える。前記制御部(100)は、前記操作部(51)に入力された前記感情情報を取得する。
【0022】
第9の態様では、ユーザによって不快の感情情報が操作部(51)に入力される。これにより、対象者(T)の感情が不快であるという感情情報を確実に取得できる。そして、制御部(100)は、ユーザの入力した感情情報に基づいて第1動作を停止させることができるので、対象者(T)が過度に不快な感情を感じることを確実に抑制できる。
【0023】
第10の態様は、第7~第9のいずれか1つの態様において、前記環境調整部(A)は、前記対象者(T)が存在する空間の空気を調和する空気調和部(A)である。
【0024】
第11の態様は、人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する制御方法を対象とする。制御方法は、前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させる処理と、前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得する処理と、前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる処理とを含む。
【0025】
第11の態様では、対象者(T)を覚醒させる第1動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、第1動作を停止する処理を行う。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで環境調整部(A)に第1動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【0026】
第12の態様は、人が存在する空間の環境を調整するための環境指標を変化させる環境調整部(A)を制御する処理をコンピュータに実行させるプログラムを対象とする。プログラムは、前記環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように前記環境調整部(A)を制御する第1動作を実行させる処理と、前記第1動作の実行中に、前記対象者(T)の感情情報を取得する処理と、前記第1動作の実行中に取得した前記感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、前記第1動作を停止させる処理とをコンピュータに実行させる。
【0027】
第12の態様では、対象者(T)を覚醒させる第1動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、第1動作を停止する処理をコンピュータに実行させる。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで環境調整部(A)に第1動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、実施形態1の空気調和装置の概略の構成図である。
【
図2】
図2は、実施形態1の空気調和装置の概略の配管系統図である。
【
図3】
図3は、実施形態1の空気調和装置の室内機の内部構造を示す構成図である。
【
図4】
図4は、実施形態1の空気調和装置の室内機の正面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の空気調和装置の主要機器を示すブロック図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の眠気抑制運転のフローチャートである。
【
図7】
図7は、実施形態1の覚醒動作のフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態1の感情改善動作のフローチャートである。
【
図9】
図9は、実施形態2のRusselの感情円環モデルの模式図である。
【
図11】
図11は、実施形態2の通常動作のフローチャートである。
【
図19】
図19は、その他の実施形態の変形例7の空気調和部の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比または数を誇張または簡略化して表す場合がある。
【0030】
《実施形態1》
実施形態1の環境制御装置(E)について説明する。
【0031】
本開示の環境制御装置(E)は、空気調和装置(10)に適用される。空気調和装置(10)は、環境調整装置の一例である。
図1に示すように、空気調和装置(10)は、対象空間である室内空間(I)の対象者(T)に環境刺激を付与する。空気調和装置(10)は、環境指標を変化させることにより、室内空間(I)の環境を調整する。空気調和装置(10)は、室内空間(I)の空気を調和する。本実施形態の空気調和装置(10)は、室内空間(I)の空気の温度を調節する。本実施形態の環境指標は、室内空間(I)の空気(以下、室内空気ともいう)の温度である。
【0032】
(1)空気調和装置の構成
(1-1)全体構成
図1および
図2に示すように、空気調和装置(10)は、室外機(20)と、室内機(30)と、第1連絡配管(12)と、第2連絡配管(13)とを有する。空気調和装置(10)は、1つの室外機(20)と1つの室内機(30)とを有するペア式である。第1連絡配管(12)は、ガス連絡配管であり、第2連絡配管(13)は、液連絡配管である。室外機(20)と室内機(30)とが、第1連絡配管(12)および第2連絡配管(13)を介して互いに接続されることで、冷媒回路(11)が構成される。冷媒回路(11)は、冷媒を循環させることにより冷凍サイクルを行う。冷媒は、例えばジフルオロメタンである。
【0033】
(1-2)室外機
室外機(20)は、室外に設置される。室外機(20)は、室外ケーシング(20a)と、圧縮機(21)と、室外熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、四方切換弁(24)と、室外ファン(25)とを有する。室外ケーシング(20a)は、圧縮機(21)と、室外熱交換器(22)と、膨張弁(23)と、四方切換弁(24)と、室外ファン(25)とを収容する。
【0034】
圧縮機(21)は、揺動ピストン式、ロータリ式、スクロール式などの回転式圧縮機である。室外熱交換器(22)は、フィンアンドチューブ式である。四方切換弁(24)は、第1状態(
図2の実線で示す状態)と第2状態(
図2の破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と第1連絡配管(12)とを連通させる。第2状態の四方切換弁(24)は、圧縮機(21)の吐出部と第1連絡配管(12)とを連通させ、且つ圧縮機(21)の吸入部と室外熱交換器(22)のガス端部とを連通させる。室外ファン(25)は、プロペラファンである。
【0035】
(1-3)室内機
図3および
図4に示す室内機(30)は、室内空間(I)に設置される。室内機(30)は、室内空間(I)の壁(W)に設置される壁掛け式である。室内機(30)は、室内ケーシング(30a)と、エアフィルタ(31)と、室内熱交換器(32)と、室内ファン(33)と、ドレンパン(34)と、第1フラップ(35)と、第2フラップ(36)とを有する。
【0036】
室内ケーシング(30a)は、左右に横長の中空状に形成される。室内ケーシング(30a)は、エアフィルタ(31)と、室内熱交換器(32)と、室内ファン(33)と、ドレンパン(34)と、第1フラップ(35)と、第2フラップ(36)とを収容する。室内ケーシング(30a)には、吸込口(41)および吹出口(42)が形成される。吸込口(41)は、室内ケーシング(30a)の上部に形成される。吸込口(41)は、室内空間(I)の空気を吸い込むための開口である。吸込口(41)は、室内ケーシング(30a)の長手方向(左右方向)に延びる。吹出口(42)は、室内ケーシング(30a)の下部の前側寄りに形成される。吹出口(42)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に延びる。室内ケーシング(30a)の内部には、吸込口(41)から吹出口(42)までの間に空気通路(43)が形成される。
【0037】
エアフィルタ(31)は、空気通路(43)における室内熱交換器(32)の上流側に配置される。エアフィルタ(31)は、吸込口(41)に沿うように形成されるメッシュ状の部材である。エアフィルタ(31)は、吸込口(41)から吸い込まれる空気中の塵埃を捕集する。
【0038】
室内熱交換器(32)は、空気通路(43)における室内ファン(33)の上流側に配置される。室内熱交換器(32)は、フィンアンドチューブ式の熱交換器である。室内熱交換器(32)は、その内部を流れる冷媒と、室内ファン(33)によって搬送される空気とを熱交させる。
【0039】
室内ファン(33)は、送風機の一例である。室内ファン(33)は、クロスフローファンである。室内ファン(33)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に延びている。室内ファン(33)は、ファンモータ(33a)によって回転駆動される。室内ファン(33)は、空気通路(43)の空気を搬送する。室内ファン(33)が駆動すると、室内空間(I)の空気が空気通路(43)に吸い込まれ、空気通路(43)を流れる。同時に、空気通路(43)の空気は、吹出口(42)から吹き出される。室内ファン(33)は、吹出口(42)から室内空間(I)へ供給される吹出空気の風量を調節可能に構成される。ファンモータ(33a)の回転数が調節されることで、吹出空気の風量が調節される。
【0040】
ドレンパン(34)は、室内熱交換器(32)の下側に配置される。ドレンパン(34)は、室内ケーシング(30a)内で発生した水を受けるトレーである。ドレンパン(34)は、室内熱交換器(32)の表面で発生した結露水を受ける。
【0041】
第1フラップ(35)および第2フラップ(36)は、吹出空気の風向を調節する風向調節部を構成する。室内機(30)は、2つの第1フラップ(35)と、8つの第2フラップ(36)とを有するが、これらの数は単なる例示である。第1フラップ(35)は、吹出空気の上下の向きを調節する。第2フラップ(36)は、吹出空気の左右の向きを調節する。2つの第1フラップ(35)は、上下方向に配列される。第1フラップ(35)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に沿って延びる。第1フラップ(35)は、第1フラップモータ(35a)の駆動により、上下に回動する。複数の第2フラップ(36)は、室内ケーシング(30a)の長手方向に配列される。第2フラップ(36)は、上下方向に沿って延びる。第2フラップ(36)は、第2フラップモータ(36a)の駆動により、左右に回動する。
【0042】
(1-4)リモートコントローラ
図2および
図5に示すように、空気調和装置(10)は、リモートコントローラ(50)を有する。リモートコントローラ(50)は、操作部(51)と表示部(52)とを有する。操作部(51)は、ユーザが空気調和装置(10)に対する各種の指示を入力するために用いられる。操作部(51)は、ボタン、スイッチ、またはタッチパネルなどで構成される。ここでいう指示は、空気調和装置(10)のONとOFFの切り換え、空気調和装置(10)の運転モードの選択、室内空間(I)の設定温度の変更を含む。表示部(52)は、空気調和装置(10)の状態や運転に関する情報を表示する。この情報は、空気調和装置(10)の運転モードや設定温度を含む。
【0043】
(1-5)センサ
空気調和装置(10)は、複数のセンサを有する。複数のセンサは、室内温度センサ(55)と、赤外線センサ(56)と、電波センサ(57)とを含む。室内温度センサ(55)は、吸込口(41)の付近に配置される。
図4に示すように、赤外線センサ(56)および電波センサ(57)は、室内ケーシング(30a)の前面に配置される。赤外線センサ(56)および電波センサ(57)は、室内ケーシング(30a)の前面における長手方向(左右方向)の中間位置に配置される。
【0044】
室内温度センサ(55)は、室内空間(I)の空気の温度を検出する。室内温度センサ(55)は、吸込口(41)に吸い込まれる空気の温度を検出する。
【0045】
赤外線センサ(56)は、室内空間(I)の空気の温度分布、および室内空間(I)に存在する人の表面温度を検知する。赤外線センサ(56)は、室内空間(I)を2次元的な複数の区間に細分化し、これらの区間毎の温度のデータを取得するために用いられる。
【0046】
電波センサ(57)は、対象者(T)の感情情報を取得するためのセンサである。電波センサ(57)は、マイクロ波を用いて対象者(T)の生体信号を検出するバイタルセンサである。電波センサ(57)は、非接触式のバイタルセンサである。つまり、電波センサ(57)は、対象者(T)に接触させることなく対象者(T)の生体信号を検出できる。生体信号は、対象者(T)の呼吸、心拍、脈波、脳波、体動などに由来する信号を含む。
【0047】
(1-6)制御部
制御部(100)は、空気調和装置(10)を制御する環境制御装置(E)を構成する。厳密にいうと、制御部(100)は、空気調和部(A)を制御する。ここで、空気調和部(A)は、室内空間(I)の空調を行うために必要な機械的な要素を意味する。空気調和部(A)は、対象者の周囲の環境を調整し、対象者(T)に環境刺激を付与するための環境調整部を構成する。
【0048】
図5に示すように、制御部(100)は、室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)を有する。室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)は、有線または無線を介して互いに通信可能に構成される。室内制御部(IC)、室外制御部(OC)、および操作制御部(RC)のそれぞれは、MCU(Micro Control Unit,マイクロコントローラユニット)、電気回路、電子回路を含む。MCUは、CPU(Central Processing Unit,中央演算処理装置)、メモリ、通信インターフェースを含む。メモリには、CPUが実行するための各種のプログラムが記憶されている。
【0049】
室外制御部(OC)は、室外機(20)に設けられる。室外制御部(OC)は、室外ケーシング(20a)の内部に配置される。室外制御部(OC)は、圧縮機(21)、膨張弁(23)、四方切換弁(24)、および室外ファン(25)を制御する。厳密には、室外制御部(OC)は、圧縮機(21)の運転および停止、圧縮機(21)の回転数、膨張弁(23)の開度、四方切換弁(24)の状態、室外ファン(25)の運転および停止、室外ファン(25)の回転数を制御する。
【0050】
室内制御部(IC)は、室内機(30)に設けられる。室内制御部(IC)は、室内ケーシング(30a)の内部に配置される。室内制御部(IC)は、室内ファン(33)を制御する。具体的には、室内制御部(IC)は、室内ファン(33)の運転および停止、室内ファン(33)のファンモータ(33a)の回転数を制御する。室内制御部(IC)は、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)を制御する。具体的には、室内制御部(IC)は、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)の角度位置を調節するように、第1フラップモータ(35a)および第2フラップモータ(36a)を制御する。
【0051】
室内制御部(IC)には、室内温度センサ(55)、赤外線センサ(56)、および電波センサ(57)の検出信号が入力される。
【0052】
操作制御部(RC)は、ユーザが操作部(51)により入力した運転モードや設定温度に関する指令を室内制御部(IC)に送信する。この指令は、室内制御部(IC)から室外制御部(OC)に送信される。
【0053】
(2)基本動作
空気調和装置(10)は、冷房運転と、暖房運転とを行う。
【0054】
(2-1)冷房運転
冷房運転は、室内空間(I)の空気を冷却し、設定温度(目標温度)に近づける運転である。冷房運転では、四方切換弁(24)が第1状態になる。圧縮機(21)で圧縮した冷媒が室外熱交換器(22)で放熱した後、膨張弁(23)で減圧する。減圧した冷媒は、室内熱交換器(32)で蒸発する。室内熱交換器(32)によって冷却された空気は室内空間(I)へ供給される。室内熱交換器(32)で蒸発した冷媒は、圧縮機(21)に吸入される。
【0055】
(2-2)暖房運転
暖房運転は、室内空間(I)の空気を加熱し、設定温度(目標温度)に近づける運転である。暖房運転では、四方切換弁(24)が第2状態になる。暖房運転では、圧縮機(21)で圧縮した冷媒が室内熱交換器(32)で放熱した後、膨張弁(23)で減圧する。室内熱交換器(32)によって加熱された空気は室内空間(I)へ供給される。減圧した冷媒は、室外熱交換器(22)で蒸発した後、圧縮機(21)に吸入される。
【0056】
(3)眠気抑制運転
空気調和装置(10)は、眠気抑制運転を行う。眠気抑制運転は、対象者(T)の眠気を抑制する運転である。眠気抑制運転では、対象者(T)に対して環境刺激を付与することにより、対象者(T)を覚醒させて、眠気による集中力の低下を抑制する。これにより、対象者(T)の集中力を維持させることができる。以下では、眠気抑制運転に関する内容の詳細を説明する。
【0057】
(3-1)感情推定部
空気調和装置(10)は、対象者(T)の感情情報を推定するための感情推定部(60)を有する。感情推定部(60)は、電波センサ(57)および演算処理部(61)によって構成される。本実施形態では、演算処理部(61)は、空気調和装置(10)の制御部(100)に設けられる。具体的には、
図5に示すように、演算処理部(61)は、室内制御部(IC)に設けられる。
【0058】
感情推定部(60)は、電波センサ(57)で検出した生体信号に基づいて対象者(T)の感情情報を推定する。本実施形態の感情推定部(60)は、快適-不快の感情価に基づいて対象者(T)の感情を推定する。
【0059】
快適-不快の感情価は、自律神経の状態を示す指標に基づいて推定できる。ここで、このパラメータとしては、自律神経バランス(LF/HF)や自律神経活動度(SDNN)がある。これらのパラメータは、何れも電波センサ(57)が検出した生体信号から抽出した心拍の成分に基づき取得できる。
【0060】
LF/HFは、対象者(T)の交感神経と副交感神経のバランスを指標化したものである。感情推定部(60)は、例えば心拍間隔を周波数解析して、0.05.Hz~0.20Hzの領域の間の低周波成分(LF)と、0.20Hz以上の高周波成分(HF)を求め、これらの成分の比をLF/HFとして求める。HFは、副交感神経が交感神経よりも優位である場合に大きくなり、LHは、交換神経が副交感神経よりも優位である場合に大きくなる。したがって、対象者(T)が不快であり、ストレスが高い場合には、LF/HFが大きくなる。逆に、対象者(T)が快適であり、ストレスが低い場合には、LF/HFが小さくなる。
【0061】
SDNNは、心拍間隔のゆらぎを表す指標である。SDNNは、例えば5分間における心拍間隔の標準偏差である。SDNNは、副交感神経が交感神経よりも優位である場合に大きくなり、交換神経が副交感神経よりも優位である場合に小さくなる。したがって、対象者(T)が不快であり、ストレスが高い場合には、SDNNが小さくなる。逆に、対象者(T)が快適であり、ストレスが低い場合には、SDNNは大きくなる。
【0062】
以上のようにして、自律神経の状態を示す指標に基づいて、対象者(T)の快適-不快の感情価を推定できる。
【0063】
(3-2)眠気抑制運転の具体的な制御動作
眠気抑制運転の詳細について、
図6~
図8のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0064】
ユーザがリモートコントローラ(50)の操作部(51)を操作し、眠気抑制運転を開始させる入力操作を行うと、制御部(100)に眠気抑制運転の開始が要求される。すると、制御部(100)は、
図6に示す眠気抑制運転を開始させる。眠気抑制運転では、まず
図7に示す覚醒動作が行われる。覚醒動作において、対象者(T)を覚醒させるような環境刺激が対象者(T)に付与される。覚醒動作を行った結果、対象者(T)の感情が不快になった場合、
図8に示す感情改善動作が実行される。感情改善動作において、不快になった対象者(T)の感情が不快でなくなるように、対象者(T)に環境刺激を付与する。本実施形態の環境刺激は、熱刺激である。なお、本実施形態では、眠気抑制運転の開始時において、対象者(T)の感情はどのような状態であってもよい。
【0065】
(3-2-1)覚醒動作
図6に示すように、眠気抑制運転が始まると、ステップS1では、制御部(100)が、空気調和部(A)に覚醒動作を開始させる。覚醒動作は、本開示の第1動作に対応する。覚醒動作では、制御部(100)は、室内空間(I)の温度が対象者(T)を覚醒させるような所定の目標温度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。
【0066】
具体的には、
図7に示すように、ステップS31において、制御部(100)が、室内空気の目標温度を第2目標温度T2に決定する。第2目標温度T2は、第1目標温度T1よりも低い(T1>T2)。つまり、室内空気の温度の目標値を、第1目標温度T1から第2目標温度T2に低下(変化)させる。ここで、第1目標温度T1は、リモートコントローラ(50)に設定された設定温度に相当する。第1目標温度T1は、本開示の第1目標値に対応する。第2目標温度T2は、本開示の第2目標値に対応する。
【0067】
次いで、ステップS32において、制御部(100)が、室内空気の温度を取得する。
【0068】
次いで、ステップS33において、制御部(100)は、室内空気の温度が第2目標温度T2に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、室内空気の目標温度を低下させたことに伴い、室内熱交換器の冷媒温度(凝縮温度や蒸発温度)が低くなるように、圧縮機(21)の回転数が調節される。圧縮機(21)の回転数は、制御部(100)が取得した室内空気の温度と第2目標温度T2との差に応じて調節される。
【0069】
その結果、室内空気の温度を低下させることに起因する熱刺激が対象者(T)に付与される。対象者(T)の周囲の温度を低下させると、対象者(T)の感情価を不快側に近づけることができる。
【0070】
次いで、
図6に示すステップS2では、制御部(100)が対象者(T)の感情情報を取得する。本実施形態のステップS2では、制御部(100)は、感情推定部(60)が推定した感情情報を取得する。具体的には、演算処理部(61)が、電波センサ(57)で検出した生体信号に基づいて、上述のようにして、対象者(T)の快適-不快の感情価を推定する。演算処理部(61)は、推定した対象者(T)の感情情報としての感情価を出力する。そして、制御部(100)は、演算処理部(61)が出力した対象者(T)の感情情報を取得する。ステップS2では、感情推定部(60)は、覚醒動作の動作時間が所定時間を超えた後に、対象者(T)の感情を推定するのが好ましい。
【0071】
次いで、ステップS3では、制御部(100)は、対象者(T)の感情が不快の範囲であることを示す条件が成立するか否かを判定する。この条件は、例えば上述したLF/HFが所定値より大きい条件や、SDNNが所定値より小さい条件である。
【0072】
ステップS3において、条件が成立せず対象者(T)の感情が快適側と判定されると、ステップS1の覚醒動作が継続して実行される。これは、対象者(T)の感情が不快になっていないので、対象者(T)の覚醒度合いが低い状態と考えられるからである。すなわち、このとき、対象者(T)の覚醒度合いがまだ高くなっていない。一方、ステップS3において、条件が成立して対象者(T)の感情が不快側と判定されると、処理はステップS4に移行する。
【0073】
ステップS4では、制御部(100)は、空気調和部(A)に覚醒動作を停止させる。このように、対象者(T)の感情が不快側と判定された場合(すなわち、取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合)に、覚醒動作を停止させる。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで空気調和部(A)に覚醒動作を実行させる。これは、対象者(T)が不快と感じることによって、対象者(T)の覚醒度合いが上昇するからである。これにより、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。加えて、制御部(100)が対象者(T)の感情情報が不快であることを示す情報を取得すると覚醒動作を停止させるので、対象者(T)が過度に不快な感情を感じることを抑制できる。
【0074】
(3-2-2)感情改善動作
次いで、ステップS5では、制御部(100)は、空気調和部(A)に感情改善動作を開始させる。感情改善動作は、本開示の第2動作に対応する。感情改善動作では、制御部(100)は、不快となった対象者(T)の感情を改善させるように、空気調和部(A)を制御する。言い換えると、感情改善動作では、対象者(T)を不快でない状態にさせる。
【0075】
具体的には、
図8に示すように、ステップS41において、制御部(100)が、室内空気の目標温度を第3目標温度T3に決定する。第3目標温度T3は、第2目標温度T2よりも高い(T2>T3)。つまり、室内空気の温度の目標値を、第2目標温度T2から第3目標温度T3に上昇(変化)させる。言い換えると、第3目標温度T3は、第1目標温度T1から第2目標温度T2に変化させる方向と逆方向の温度である。第3目標温度T3は、本開示の第3目標値に対応する。
【0076】
次いで、ステップS42において、制御部(100)が、室内空気の温度を取得する。
【0077】
次いで、ステップS43において、制御部(100)は、室内空気の温度が第3目標温度T3に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、室内空気の目標温度を上昇させたことに伴い、室内熱交換器の冷媒温度(凝縮温度や蒸発温度)が高くなるように、圧縮機(21)の回転数が調節される。圧縮機(21)の回転数は、制御部(100)が取得した室内空気の温度と第3目標温度T3との差に応じて調節される。
【0078】
その結果、室内空気の温度を上昇させることに起因する熱刺激が対象者(T)に付与される。対象者(T)の周囲の温度を上昇させると、対象者(T)を覚醒側の状態を維持しつつ、対象者(T)の感情価を快適側に近づけることができる。
【0079】
ここで、本実施形態の第3目標温度T3は、第1目標温度T1と同じである(T3=T1)。言い換えると、第3目標温度T3と第2目標温度T2との差ΔT2(T3-T2=ΔTb)は、第1目標温度T1と第2目標温度T2との差(T1-T2=ΔTa)と同じである(ΔTa=ΔTb)。そのため、室内温度を初期設定温度に戻すことができる。これにより、覚醒動作で不快になった対象者(T)の感情を不快でない状態に変化させることができる。
【0080】
次いで、
図6に示すステップS6では、制御部(100)が対象者(T)の感情情報を取得する。ステップS6の処理は、ステップS2と同様の動作である。ステップS6では、感情推定部(60)は、感情改善動作の動作時間が所定時間を超えた後に、対象者(T)の感情を推定するのが好ましい。
【0081】
次いで、ステップS7では、制御部(100)は、対象者(T)の感情が不快の範囲であることを示す条件が成立するか否かを判定する。ステップS7の処理は、ステップS3と同様の動作である。
【0082】
ステップS7において、条件が成立して対象者(T)の感情が不快側と判定されると、ステップS5の感情改善動作が継続して実行される。対象者(T)の感情が不快側から快適側に改善されていないからである。一方、ステップS7において、条件が成立せず対象者(T)の感情が快適側と判定されると、感情改善動作が停止される。これは、対象者(T)の感情が不快側から快適側に改善され、対象者(T)が高い覚醒状態になったと考えられるからである。
【0083】
(3-3)眠気抑制運転に関する制御
以上のように、本開示の制御方法は、上記(3-1)、上記(3-2)、上記(3-2-1)、上記(3-2-2)、および
図6~
図8に記載の各処理を含む。
【0084】
具体的には、制御方法は、環境指標が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように空気調和部(A)を制御する覚醒動作を実行させる処理と、覚醒動作の実行中に、対象者(T)の感情情報を取得する処理と、覚醒動作の実行中に取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、覚醒動作を停止させる処理とを含む。
【0085】
さらに、制御方法は、覚醒動作を停止させた後に感情改善動作を実行させる処理を含む。制御方法は、感情推定部(60)によって推定した対象者(T)の感情情報を取得する処理を含む。
【0086】
本開示の制御方法は、詳細を後述する実施形態2、各変形例、およびその他の実施形態で述べる処理を有してもよい。
【0087】
(3-4)プログラム
制御部(100)の記憶部には、上述した眠気抑制運転に関する制御方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが記憶されている。ここでいう、制御方法は、上記(3-3)の「眠気抑制運転に関する制御方法」で述べた全ての処理を含む。
【0088】
(4)本実施形態の特徴
(4-1)
本実施形態の制御部(100)は、室内空気の温度が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように空気調和部(A)を制御する覚醒動作を実行させる。制御部(100)は、覚醒動作の実行中に、対象者(T)の感情情報を取得する。制御部(100)は、覚醒動作の実行中に取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、覚醒動作を停止させる。
【0089】
本実施形態では、対象者(T)を覚醒させる覚醒動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、覚醒動作を停止する。言い換えると、制御部(100)は、対象者(T)が不快と感じるまで空気調和部(A)に覚醒動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【0090】
(4-2)
本実施形態の制御部(100)は、覚醒動作を停止させた後に感情改善動作を実行させる。覚醒動作では、室内空気の温度の目標値を第1目標温度から第2目標温度に変化させ、室内空気の温度が記第2目標温度に近づくように空気調和部(A)を制御する。感情改善動作では、室内空気の温度の目標値を第2目標温度から、第1目標温度から第2目標温度に変化させる方向と逆方向の第3目標温度に変化させ、室内空気の温度が第3目標温度に近づくように空気調和部(A)を制御する。
【0091】
本実施形態の感情改善動作では、覚醒動作において室内空気の温度が変化する方向とは逆方向の第3目標温度に近づくように空気調和部(A)を制御する。制御部(100)は、対象者(T)を覚醒させる覚醒動作の後に感情改善動作を実行するので、不快と感じた対象者(T)の感情を不快でない状態に変化させることができる。これにより、対象者(T)の快適性を損なうことなく、対象者(T)の覚醒状態を維持できる。
【0092】
(4-3)
本実施形態の感情改善動作において、第3目標温度と第2目標温度との差は、第1目標温度と第2目標温度との差と同じである。
【0093】
本実施形態では、第3目標温度と第2目標温度との差が、第1目標温度と第2目標温度との差と同じなので、感情改善動作における第3目標温度は、第1目標温度と同じ目標値となる。したがって、感情改善動作を実行することにより、室内空気の温度を覚醒動作の開始前の状態に戻すことができる。これにより、覚醒動作により不快になった対象者(T)の感情を不快でない状態に変化させることができる。
【0094】
(4-4)
本実施形態の環境指標は、空気の温度である。これにより、室内空間(I)の環境が緩やかに変化する。そのため、自然な状態で対象者(T)を覚醒させることができる。
【0095】
(4-5)
本実施形態の空気調和装置(10)は、対象者(T)の感情情報を推定する感情推定部(60)を備える。制御部(100)は、感情推定部(60)によって推定した対象者(T)の感情情報を取得する。
【0096】
本実施形態では、感情推定部(60)によって対象者(T)の感情が推定される。これにより、制御部(100)は、推定された対象者(T)の感情情報に基づいて第1動作を停止させることができる。そのため、自動で第1動作を停止させることができる。
【0097】
(4-6)
本実施形態の制御方法は、室内空気の温度が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように空気調和部(A)を制御する覚醒動作を実行させる処理と、覚醒動作の実行中に、対象者(T)の感情情報を取得する処理と、覚醒動作の実行中に取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、覚醒動作を停止させる処理とを含む。
【0098】
本実施形態では、覚醒動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、覚醒動作を停止する処理を行う。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで空気調和部(A)に覚醒動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【0099】
(4-7)
本実施形態のプログラムは、室内空気の温度が対象者(T)を覚醒させるような目標値に近づくように空気調和部(A)を制御する覚醒動作を実行させる処理と、覚醒動作の実行中に、対象者(T)の感情情報を取得する処理と、覚醒動作の実行中に取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合に、覚醒動作を停止させる処理とをコンピュータに実行させる。
【0100】
本実施形態では、覚醒動作の実行中に不快を示す感情情報を検知すると、覚醒動作を停止する処理をコンピュータに実行させる。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで空気調和部(A)に覚醒動作を実行させる。そのため、対象者(T)を確実に覚醒させることができる。
【0101】
《実施形態2》
実施形態2の環境制御装置(E)について説明する。本実施形態の環境制御装置(E)は、眠気抑制運転における覚醒動作の前の処理、および覚醒動作を停止するための判定処理が、実施形態1の環境制御装置(E)と異なる。ここでは、本実施形態の環境制御装置(E)の眠気抑制運転について、実施形態1の眠気抑制運転と異なる点を説明する。
【0102】
(1)眠気抑制運転
(1-1)感情推定部
本実施形態の感情推定部(60)は、快適-不快の感情価と、覚醒-非覚醒の状態とに基づいて対象者(T)の感情を推定する。
図9に示すように、人の感情は、例えばRusselが推定した感情円環モデルで表すことができる。感情円環モデルは、横軸Xに快適-不快の感情価、縦軸Yに覚醒-非覚醒をとった場合に、感情価および覚醒度合いと、人の感情の関係を概念的に表したものである。このため、快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒の状態を把握できれば、人の感情を推定できる。
【0103】
快適-不快の感情価は、自律神経の状態を示す指標に基づいて推定できる。快適-不快の感情価の推定は、実施形態1と同様に、電波センサ(57)が検出した生体信号から抽出した心拍の成分に基づき、自律神経バランス(LF/HF)や自律神経活動度(SDNN)などのパラメータを取得することで行う。
【0104】
覚醒-非覚醒の状態は、対象者(T)の体動、呼吸、心拍などに影響を与える。このため、電波センサ(57)で取得した生体信号から、体動、呼吸、心拍に由来する信号を抽出することで、対象者(T)が覚醒状態か、非覚醒状態かを推定できる。
【0105】
以上のようにして、快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒状態がわかれば、感情円環モデルを用いて対象者(T)の感情を推定できる。
【0106】
(1-2)眠気抑制運転の具体的な制御動作
図11に示す本実施形態の眠気抑制運転では、ステップS1の覚醒動作の前に、通常運転を行う。
【0107】
ユーザがリモートコントローラ(50)の操作部(51)を操作し、眠気抑制運転を開始させる入力操作を行うと、制御部(100)に眠気抑制運転の開始が要求される。すると、制御部(100)は、
図10に示す眠気抑制運転を開始させる。眠気抑制運転では、まず
図11に示す通常動作が実行される。通常動作を行った結果、対象者(T)の覚醒度合いが低い状態と判断された場合、実施形態1と同様の覚醒動作が行われる。覚醒動作において、対象者(T)を覚醒させるような環境刺激が対象者(T)に付与される。覚醒動作を行った結果、対象者(T)の感情が不快になった場合、実施形態1と同様の感情改善動作が実行される。感情改善動作において、不快になった対象者(T)の感情が不快でなくなるように、対象者(T)に環境刺激を付与する。本実施形態の環境刺激は、熱刺激である。
【0108】
(1-2-1)通常動作
図10に示すように、眠気抑制運転が始まると、ステップS11では、制御部(100)が、空気調和部(A)に通常動作を開始させる。通常動作は、本開示の第3動作に対応する。通常動作では、室内空気の温度が所定の目標温度に近づくように、上述した冷房運転や暖房運転と同様の動作が行われる。
【0109】
具体的には、
図11に示すように、ステップS21において、制御部(100)が、室内空気の目標温度を第1目標温度T1に決定する。第1目標温度T1は、リモートコントローラ(50)に設定された設定温度に相当する。第1目標温度T1は、本開示の第1目標値に対応する。
【0110】
次いで、ステップS22において、制御部(100)が、室内空気の温度を取得する。具体的には、室内温度センサ(55)が室内空気の温度を検出し、検出したデータを室内制御部(IC)に送信する。室内制御部(IC)は、送信された室内空気の温度を受信する。
【0111】
次いで、ステップS23において、制御部(100)は、室内空気の温度が第1目標温度T1に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、制御部(100)が、取得した室内空気の温度と第1目標温度T1との差に応じて、圧縮機(21)の回転数を調節することで、室内熱交換器(32)の冷媒温度が調節される。これにより、室内熱交換器(32)において冷却または加熱された空気が室内空間(I)に供給され、室内空気の温度が第1目標温度T1に近づく。
【0112】
ここで、通常動作の開始から所定期間においては、対象者(T)の感情は
図9における領域A内の状態であると言える。つまり、対象者(T)は、快適側且つ覚醒側になっている。言い換えると、対象者(T)は、覚醒状態であり、且つ不快ではない状態である。なぜなら、第1目標温度T1がリモートコントローラ(50)に設定された設定温度であるため、室内空間(I)の温度は対象者(T)にとって適温になるように調節されているからである。
【0113】
次いで、
図10に示すステップS12では、制御部(100)が対象者(T)の感情情報を取得する。本実施形態では、制御部(100)は、感情推定部(60)が推定した感情情報を取得する。具体的には、演算処理部(61)が、電波センサ(57)で検出した生体信号に基づいて、上述のようにして、対象者(T)の快適-不快の感情価、および覚醒-非覚醒の状態を推定する。演算処理部(61)は、推定した対象者(T)の感情情報を出力する。そして、制御部(100)は、演算処理部(61)が出力した対象者(T)の感情情報を取得する。ステップS12では、感情推定部(60)は、通常動作の動作時間が所定時間を超えた後に、対象者(T)の感情を推定するのが好ましい。
【0114】
次いで、ステップS13では、制御部(100)は、対象者(T)の覚醒度合いが、覚醒側であるか、非覚醒側であるかを判定する。制御部(100)は、例えば推定した対象者(T)の感情が
図9の感情円環モデルの横軸Xの上側の範囲にある場合、対象者(T)が覚醒側にあると判定し、横軸Xの下側の範囲にある場合、対象者(T)が非覚醒側にあると判定する。
【0115】
ステップS13において、対象者(T)が覚醒側と判定されると、ステップS11の通常動作が継続して実行される。このとき、対象者(T)の感情は、快適側且つ覚醒側の状態である。ステップS13において、対象者(T)が覚醒側と判定されない(すなわち、対象者(T)が非覚醒側と判定される)と、通常動作が停止され、処理はステップS1に移行する。このとき、対象者(T)の感情は、快適側且つ非覚醒側の状態である。つまり、対象者(T)の感情は、
図9における領域B内の状態である。このような状態は、例えば対象者(T)が眠気を感じているときや、軽度の疲労を感じているとき、集中力が途切れているときなどに生じる。
【0116】
(1-2-2)覚醒動作
ステップS1では、制御部(100)は、空気調和部(A)に覚醒動作を開始させる。覚醒動作は、実施形態1と同様の動作である。
【0117】
次いで、ステップS2では、制御部(100)が対象者(T)の感情情報を取得する。ステップS2では、感情推定部(60)は、覚醒動作の動作時間が所定時間を超えた後に、対象者(T)の感情を推定するのが好ましい。
【0118】
次いで、ステップS14の処理が行われる。ステップS14では、制御部(100)は、対象者(T)の覚醒度合いが、覚醒側であるか、非覚醒側であるかを判定する。
【0119】
ステップS14において、対象者(T)が覚醒側と判定されない(すなわち、対象者(T)が非覚醒側と判定される)と、ステップS1の覚醒動作が継続して実行される。覚醒動作を実行したにもかかわらず、対象者(T)がまだ覚醒していないからである。ステップS14において、対象者(T)が覚醒側と判定されると、処理はステップS3に移行する。
【0120】
ステップS3では、制御部(100)は、対象者(T)の感情が不快の範囲であることを示す条件が成立するか否かを判定する。本実施形態では、この条件は、推定した対象者(T)の感情が、
図9の感情円環モデルの縦軸Yの左側の範囲にあることを意味する。この条件は、例えば上述したLF/HFが所定値より大きい条件や、SDNNが所定値より小さい条件であってもよい。
【0121】
ステップS3において、条件が成立せず対象者(T)の感情が快適側と判定されると、ステップS1の覚醒動作が継続して実行される。このとき、対象者(T)の感情は、
図9における領域A内の状態である。つまり、対象者(T)は覚醒状態にあるが快適と感じている。このとき、対象者(T)の覚醒度合いがすぐに非覚醒側に戻る可能性が高い。そこで、対象者(T)の感情が快適側と判定されたときに覚醒動作を継続して実行することにより、対象者(T)が再び非覚醒側の状態に戻ることを抑制できる。
【0122】
一方、ステップS3において、条件が成立して対象者(T)の感情が不快と判定されると、処理はステップS4に移行する。このとき、対象者(T)の感情は、覚醒側且つ不快側の状態である。つまり、対象者(T)の感情は、
図9における領域C内の状態である。
【0123】
ステップS4では、制御部(100)は、空気調和部(A)に覚醒動作を停止させる。このように、対象者(T)の感情が不快と判定された場合(すなわち、取得した感情情報が不快であることを示す情報であった場合)に、覚醒動作を停止させる。言い換えると、対象者(T)が不快と感じるまで空気調和部(A)に覚醒動作を実行させる。これにより、対象者(T)を確実に覚醒させ、対象者(T)の覚醒状態を長時間維持させることができる。加えて、制御部(100)が対象者(T)の感情情報が不快であることを示す情報を取得することで覚醒動作を停止させるので、対象者(T)が過度に不快な感情を感じることを抑制できる。
【0124】
(1-2-3)感情改善動作
次いで、ステップS5からステップS7の処理が実行される。ステップS5からステップS7の処理は、実施形態1と同様である。ここで、ステップS6の後の処理では、対象者の感情が不快の範囲であることを示す条件が成立するか否かを判定するが、対象者(T)の覚醒度合いが、覚醒側であるか、非覚醒側であるかを判定していない。これは、本実施形態の眠気抑制運転では、対象者(T)が不快と感じるまで覚醒動作が実行されることにより対象者(T)が確実に覚醒し、対象者(T)が確実に覚醒した状態で感情改善動作が開始される。そのため、感情改善動作の実行中においては対象者(T)の覚醒状態が維持されていると推定できるからである。これにより、対象者(T)の覚醒度合いを判定する処理を省略できる。
【0125】
(2)本実施形態の特徴
本実施形態の制御部(100)は、覚醒動作を実行させる前に通常動作を実行させる。通常動作では、室内空気の温度が第1目標温度に近づくように空気調和部(A)を制御する。
【0126】
本実施形態では、覚醒動作の実行前に、室内空気の温度の目標値が第1目標温度である通常動作が実行される。これにより、覚醒動作の実行前は、対象者(T)の感情が不快でない環境に整えられている。
【0127】
(3)変形例
上記実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0128】
上記実施形態の眠気抑制運転では、
図12に示すように、ステップS7において、条件が成立せず対象者(T)の感情が快適側と判定されると、処理は、ステップS15に移行する。ステップS15では、制御部(100)は、対象者(T)の覚醒度合いが、覚醒側であるか、非覚醒側であるかを判定する。
【0129】
ステップS15において、対象者(T)が覚醒側と判定されない(すなわち、対象者(T)が非覚醒側と判定される)と、ステップS1の覚醒動作が実行される。感情改善動作を実行した結果、対象者(T)の状態が非覚醒側になり、再び低い覚醒状態に戻ってしまったからである。ステップS15において、対象者(T)が覚醒側と判定されると、処理はステップS11に移行する。
【0130】
このように、ステップS15において、対象者(T)の覚醒度合いを判定することにより、感情改善動作を実行した結果、再び低い覚醒状態に戻っても、対象者(T)を直ぐに高い覚醒状態に変化させることができる。
【0131】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0132】
(1)共通の変形例
上記各実施形態については以下のような変形例としてもよい。なお、以下の説明では、原則として上記実施形態と異なる点について説明する。
【0133】
(1-1)変形例1
本変形例の眠気抑制運転では、感情改善動作において、第3目標温度T3と第2目標温度T2との差ΔT2(T3-T2=ΔTb)は、第1目標温度T1と第2目標温度T2との差(T1-T2=ΔTa)よりも大きい(ΔTa<ΔTb)。言い換えると、第3目標温度T3は、第1目標温度T1と異なる(T3≠T1)。本変形例の感情改善動作を実行することにより、覚醒動作により不快になった対象者の感情を、不快でない状態により早く回復させることができる。
【0134】
(2-2)変形例2
本変形例の眠気抑制運転では、対象とする環境指標が上記各実施形態と異なる。本変形例の環境指標は、風量である。本変形例の眠気抑制運転については、上記実施形態2と異なる点を説明する。本変形例の通常動作、覚醒動作、および感情改善動作では、所定の風量に近づくように、空気調和部(A)を制御する。
【0135】
図13に示す通常動作では、ステップS121において、制御部(100)が、室内空間(I)の目標風量を第1目標風量C1に決定する。第1目標風量C1は、リモートコントローラ(50)に設定された設定風量、または制御部(100)によって自動で設定される風量に相当する。第1目標風量C1は、本開示の第1目標値に対応する。
【0136】
次いで、ステップS122において、制御部(100)は、空気の風量が第1目標風量C1に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、制御部(100)は、吹出空気の風量が第1目標風量C1になるように、室内ファン(33)の回転数を調節する。ここで、通常動作の開始から所定期間においては、上記実施形態と同様に、対象者(T)の感情は
図6における領域A内の状態(快適側且つ覚醒側)であると言える。
【0137】
図14に示す覚醒動作では、制御部(100)は、空気の風量が対象者(T)を覚醒させるような所定の風量に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、ステップS131において、制御部(100)が、目標風量を第2目標風量C2に決定する。第2目標風量C2は、第1目標風量C1よりも大きい(C1<C2)。つまり、風量の目標値を、第1目標風量C1から第2目標風量C2に上昇(変化)させる。第2目標風量C2は、本開示の第2目標値に対応する。
【0138】
次いで、ステップS132において、制御部(100)は、風量が第2目標風量C2に近づくように、室内ファン(33)の回転数を増大させる。その結果、覚醒動作では、風量を大きくすることに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。対象者(T)に作用する空気の風量が増大すると、対象者(T)を覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を不快側に近づける効果が得られる。
【0139】
図15に示す感情改善動作では、制御部(100)は、不快となった対象者(T)の感情を改善させるように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、ステップS141において、制御部(100)が、目標風量を第3目標風量C3に決定する。第3目標風量C3は、第2目標風量C2よりも小さい(C2>C3)。つまり、風量目標値を、第2目標風量C2から第3目標風量C3に低下(変化)させる。言い換えると、第3目標風量C3は、第1目標風量C1から第2目標風量C2に変化させる方向と逆方向の値である。第3目標風量C3は、本開示の第3目標値に対応する。
【0140】
次いで、ステップS142において、制御部(100)は、風量が第3目標風量C3に近づくように、室内ファン(33)の回転数を減少させる。その結果、感情改善動作では、風量を小さくすることに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。対象者(T)に作用する空気の風量が減少すると、対象者(T)を覚醒側の状態に維持しつつ、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0141】
(1-3)変形例3
本変形例の眠気抑制運転では、対象とする環境指標が上記各実施形態と異なる。本変形例の環境指標は、風向である。本変形例の眠気抑制運転については、上記実施形態2と異なる点を説明する。本変形例の通常動作、覚醒動作、および感情改善動作では、所定の風向に近づくように、空気調和部(A)を制御する。
【0142】
図15に示す通常動作では、ステップS221において、制御部(100)が、目標風向を第1目標風向D1に決定する。第1目標風向D1は、リモートコントローラ(50)に設定された設定風向、または制御部(100)によって自動で設定される風向に相当する。第1目標風向D1は、対象者(T)に直接に風が当たらないように、対象者(T)以外に向かう方向である。第1目標風向D1は、本開示の第1目標値に対応する。
【0143】
次いで、ステップS222において、制御部(100)は、吹出空気の風向が第1目標風向D1に近づくように、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)の角度位置を調節する。ここで、通常動作の開始から所定期間においては、上記実施形態2と同様に、対象者(T)の感情は
図9における領域A内の状態(快適側且つ覚醒側)であると言える。
【0144】
図17に示す覚醒動作では、制御部(100)は、風向が対象者(T)を覚醒させるような所定の風向に近づくように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、ステップS231において、制御部(100)が、目標風向を第2目標風向D2に決定する。第2目標風向D2は、第1目標風向D1と異なる向きである。第2目標風向D2は、対象者(T)に直接に風が当たるように、対象者(T)に向かう方向である。つまり、風向の目標値を、第1目標風向D1から第2目標風向D2に変化させる。第2目標風向D2は、本開示の第2目標値に対応する。
【0145】
次いで、ステップS232において、制御部(100)は、吹出空気の風向が第2目標風向D2に近づくように、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)の角度位置を変更する。その結果、覚醒動作では、風向を変更することに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。これにより、対象者(T)に作用する空気の風量が増大するので、対象者(T)を覚醒側の状態に促すとともに、対象者(T)の感情価を不快側に近づける効果が得られる。
【0146】
図18に示す感情改善動作では、制御部(100)は、不快となった対象者(T)の感情を改善させるように、空気調和部(A)を制御する。具体的には、ステップS241において、制御部(100)が、風向を第3目標風向D3に決定する。第3目標風向D3は、第2目標風向D2と異なる向きである。第3目標風向D3は、対象者(T)に直接に風が当たらないように、対象者(T)以外に向かう方向である。つまり、風向を、第2目標風向D2から第3目標風向D3に変化させる。第3目標風向D3は、第1目標風向D1から第2目標風向D2に変化させる方向と逆方向である。第3目標風向D3は、本開示の第3目標値に対応する。
【0147】
次いで、ステップS242において、制御部(100)は、吹出空気の風向が第3目標風向D3に近づくように、第1フラップ(35)および第2フラップ(36)の角度位置を変更する。その結果、感情改善動作では、風向を変更することに起因する対象者(T)の風の刺激が付与される。対象者(T)に作用する空気の風量が減少するので、対象者(T)を覚醒側の状態に維持しつつ、対象者(T)の感情価を快適側に近づける効果が得られる。
【0148】
(1-4)変形例4
本変形例の眠気抑制運転では、対象とする環境指標が上記各実施形態と異なる。本変形例の環境指標は、湿度である。本変形例の空気調和装置(10)は、室内空間(I)の空気の湿度を検出する室内湿度センサを更に備える。室内湿度センサは、吸込口(41)の付近に配置される。
【0149】
本変形例の通常動作、覚醒動作、および感情改善動作では、所定の湿度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。通常動作では、制御部(100)は、本開示の第1目標値に対応する第1目標湿度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。覚醒動作では、制御部(100)は、本開示の第2目標値に対応する第2目標湿度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。感情改善動作では、制御部(100)は、本開示の第3目標値に対応する第3目標湿度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。
【0150】
ここで、第2目標湿度は、第1目標湿度よりも高い。そのため、覚醒動作を実行することにより、対象者(T)に湿度の変化に伴う刺激が付与される。対象者(T)の周囲の湿度が上昇すると、対象者(T)の感情を不快側に変化させることができる。第3目標湿度は、第2目標湿度よりも低い。そのため、感情改善動作を実行することにより、対象者(T)に湿度の変化に伴う刺激が付与される。対象者(T)の周囲の湿度が低下すると、対象者(T)の感情を快適側に近づけることができる。
【0151】
(1-5)変形例5
本変形例の眠気抑制運転では、対象とする環境指標が上記各実施形態と異なる。本変形例の環境指標は、輻射温度である。本変形例の通常動作、覚醒動作、および感情改善動作では、所定の輻射温度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。通常動作では、制御部(100)は、本開示の第1目標値に対応する第1目標輻射温度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。覚醒動作では、制御部(100)は、本開示の第2目標値に対応する第2目標輻射温度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。感情改善動作では、制御部(100)は、本開示の第3目標値に対応する第3目標輻射温度に近づくように、空気調和部(A)を制御する。
【0152】
ここで、第2目標輻射温度は、第1目標輻射温度よりも低い。そのため、覚醒動作を実行することにより、対象者(T)に輻射温度の変化に伴う熱刺激が付与される。対象者(T)の周囲の温度が低下すると、対象者(T)の感情を不快側に変化させることができる。第3目標輻射温度は、第2目標輻射温度よりも高い。そのため、感情改善動作を実行することにより、対象者(T)に輻射温度の変化に伴う熱刺激が付与される。対象者(T)の周囲の輻射温度が上昇すると、対象者(T)の感情を快適側に近づけることができる。
【0153】
(1-6)変形例6
本変形例の眠気抑制運転では、複数の環境指標を変更してもよい。例えば、室内空気の温度および風向を環境指標とした場合、それぞれの環境指標の目標値を変更する。この場合、覚醒動作において、室内空気の温度の目標値を第1目標温度T1から第2目標温度T2に低下させるとともに、風向の目標値を対象者(T)以外に向かう方向である第1目標風向D1から対象者(T)に向かう方向である第2目標風向D2に変更させる。このように、覚醒動作において2つ以上の環境指標の目標値を変更することにより、対象者(T)をより確実に覚醒させることができる。覚醒動作と同様に、通常動作および感情改善動作においても、複数の環境指標を変更してもよい。
【0154】
(1-7)変形例7
上記各実施形態では、対象者(T)の感情を感情推定部(60)によって推定する。これに対し、本変形例では、対象者(T)自身が自己の不快という感情を操作部(51)に直接入力する。
【0155】
具体的には、操作部(51)は、対象者(T)(ユーザ)が不快という感情情報を入力可能に構成される。操作部(51)に不快という情報が入力されると、不快であることを示す情報の信号が操作制御部(RC)から室内制御部(IC)に送信される。室内制御部(IC)は、不快であることを示す情報を取得する。覚醒動作において、制御部(100)が、不快であることを示す情報を取得すると、覚醒動作を停止する。
【0156】
なお本変形例において、空気調和装置(10)は、感情推定部(60)を有してもよいし、感情推定部(60)を有していなくてもよい。
【0157】
(1-8)変形例8
上記各実施形態の眠気抑制運転では、眠気に起因する集中力の低下を抑制するが、集中力の低下の要因は、眠気に限定されない。例えば、軽度の疲れや投薬による副作用などに起因する集中力の低下に対して、本実施形態の運転動作を適用してもよい。言い換えると、本実施形態の眠気抑制運転は、集中力維持運転と称してもよい。
【0158】
(1-9)変形例9
上記各実施形態の空気調和部(A)は、室内空間(I)の空気の温度を調節する機能と、対象者(T)に供給する空気の風向および風量を調節する機能とを有する。加えて、本変形例の空気調和部(A)は、室内空間(I)を換気する換気要素(70)を有する。厳密には、換気要素(70)は、室内空間(I)に外気を供給する給気の機能と、室内空間(I)の空気を室外に排出する排気の機能とを有する。
図19に示すように、換気要素(70)は、換気ファン(71)と、ダクト(72)と、流路切換機構(73)とを有する。
【0159】
換気ファン(71)は、室外機(20)の内部に設置される。換気ファン(71)は、ファンモータの回転数を調節することにより、風量が可変に構成される。
【0160】
ダクト(72)は、空気が流れる流路を形成する部材である。ダクト(72)は、硬質の管でもよいし、柔軟なホースであってもよい。ダクト(72)は、連絡配管(12,13)とともに壁(W)を貫通する。ダクト(72)の一端は、室外空間(O)に連通し、ダクト(72)の他端は、室内機(30)内の空気通路(43)に接続される。ダクト(72)の一端は、空気通路(43)における室内熱交換器(32)の上流側に接続されるのが好ましい。
【0161】
流路切換機構(73)は、ダクト(72)の中途部に接続される。ダクト(72)は、複数の流路と、これらの流路を切り換えるダンパ(図示を省略)とを有する。ダクト(72)は、第1状態と第2状態とに切り換わる。第1状態のダクト(72)は、換気ファン(71)の吸込側と室外空間(O)とを連通し、且つ換気ファン(71)の吹出側と室内機(30)の空気通路(43)とを連通する。第2状態のダクト(72)は、換気ファン(71)の吸込側と室内機(30)の空気通路(43)とを連通し、且つ換気ファン(71)の吹出側と室外空間(O)とを連通する。
【0162】
制御部(100)は、換気要素(70)を制御する。具体的には、制御部(100)は、換気ファン(71)の運転および停止、換気ファン(71)の回転数、流路切換機構(73)の状態を制御する。制御部(100)は、給気動作と排気動作を切り換えるように、換気要素(70)を制御する。
【0163】
給気動作では、制御部(100)は流路切換機構(73)を第1状態とし、換気ファン(71)を運転させる。給気動作では、室外空間(O)の室外空気が、ダクト(72)および空気通路(43)を介して室内空間(I)へ供給される。
【0164】
排気動作では、制御部(100)は流路切換機構(73)を第2状態とし、換気ファン(71)を運転させる。排気動作では、室内空間(I)の空気が、空気通路(43)およびダクト(72)を介して室外空間(O)へ排出される。
【0165】
(2)環境調整装置の他の例
上記各実施形態の環境調整装置は、空気調和部(A)を有する空気調和装置(10)である。しかし、環境調整装置は、対象者(T)に環境刺激を付与できる環境調整部を有する装置であれば、他の装置であってもよい。環境調整装置は、例えば床暖房装置、浴槽水温調整装置、サウナ装置、または音響発生装置であってもよい。
【0166】
床暖房装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように床面の温度を調整する環境調整部を有する。浴槽水温調整装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように対象者(T)が存在する浴槽内の水温を調整する環境調整部を有する。サウナ装置は、対象者(T)に熱刺激を付与するように対象者(T)が存在するサウナ空間の温度を調整する環境調整部を有する。音響発生装置は、対象者(T)に音の刺激を付与するように音を発する環境調整部を有する。
【0167】
(3)感情推定部の他の例
感情推定部(60)は、対象者(T)の感情を推定できれば、他の構成であってもよい。具体的には、感情推定部(60)は、電波センサ(57)に代わる他のセンサを有してもよい。非接触式のセンサは、例えばミリ波レーダであってもよい。
【0168】
感情推定部(60)の演算処理部(61)は、制御部(100)と別体に構成されてもよい。具体的には、例えば、感情推定部(60)は、上記のセンサと、演算処理部(61)とを有するユニットであり、感情推定部(60)で推定した対象者(T)の感情を制御部(100)に出力する構成であってもよい。この場合、制御部(100)は、ユニットから受信した対象者(T)の感情に基づいて環境調整部を制御する。
【0169】
(4)制御部の他の例
制御部(100)は、空気調和装置(10)の通信可能な管理装置に設けられてもよい。管理装置は、例えばサーバ装置、集中管理装置、または端末装置である。端末装置は、ユーザが所有するスマートフォンや、タブレット端末であってもよい。
【0170】
(5)空気調和装置の他の例
空気調和装置(10)は、1つの室内機(30)と1つの室外機(20)とを有するペア式である。しかしながら、空気調和装置(10)は、2つ以上の室内機(30)を有する室内マルチ式や、2つ以上の室外機(20)を有する室外マルチ式であってもよい。
【0171】
空気調和装置(10)は、空気を換気する換気装置、空気を浄化する空気清浄装置、空気を加湿したり除湿したりする調湿装置であってもよい。つまり、ここでいう「空気調和」は、空気の温度調節だけでなく、空気の換気、空気の清浄、空気の湿度調節を含む意味である。
【0172】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【0173】
以上に述べた「第1」、「第2」、「第3」…という記載は、これらの記載が付与された語句を区別するために用いられており、その語句の数や順序までも限定するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0174】
以上説明したように、本開示は、環境制御装置、環境調整装置、制御方法、およびプログラムについて有用である。
【符号の説明】
【0175】
10 空気調和装置(環境調整装置)
51 操作部
60 感情推定部
100 制御部
A 空気調和部(環境調整部)
E 環境制御装置
T 対象者