(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140779
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】車両の運転支援装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20241003BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241003BHJP
B60W 40/068 20120101ALI20241003BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W30/02
G08G1/16 D
B60W40/068
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052108
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】弁理士法人イトーシン国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀口 陽宣
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BB01
3D241BC01
3D241CC02
3D241CC08
3D241CC11
3D241CD05
3D241CE04
3D241CE05
3D241DA39Z
3D241DB01Z
3D241DB05Z
3D241DB12Z
3D241DB27Z
3D241DB32Z
3D241DC18Z
3D241DC31Z
3D241DC46Z
3D241DC47Z
3D241DC59Z
5H181AA01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181EE13
5H181LL09
5H181LL16
(57)【要約】
【課題】路面状況に応じて適切な車速制御を行うことができる車両の運転支援装置を提供する。
【解決手段】走行_ECU14は、自動減速制御を伴う車速制御時における自車両Mのスリップを判定し、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定し、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出し、自動減速制御を伴う車速制御時において、自車両Mが高μ領域を走行するときの目標減速度を第1の路面μに対する目標減速度よりも高く設定する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定するスリップ判定手段と、
前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する第1の路面μ推定手段と、
前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出する高μ領域検出手段と、
前記減速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標減速度を前記第1の路面μに対する前記目標減速度よりも高く設定する目標減速度設定手段と、
を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項2】
前記減速を伴う前記車速制御時において、前記自車両の車輪のうち右側の前記車輪或いは左側の前記車輪のみが前記高μ領域を通過するとき、発生するヨーレートを打ち消す方向に操舵制御を行う操舵制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項3】
前記加速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標加速度を前記第1の路面μに対する前記目標加速度よりも低く設定する目標加速度設定手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の車両の運転支援装置。
【請求項4】
加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定するスリップ判定手段と、
前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する第1の路面μ推定手段と、
前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出する高μ領域検出手段と、
前記加速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標加速度を前記第1の路面μに対する前記目標減速度よりも低く設定する目標加速度設定手段と、
を備えたことを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項5】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定し、
前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定し、
前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出し、
前記減速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標減速度を前記第1の路面μに対する前記目標減速度よりも高く設定することを特徴とする車両の運転支援装置。
【請求項6】
プロセッサを備え、
前記プロセッサは、
加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定し、
前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定し、
前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出し、
前記加速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標加速度を前記第1の路面μに対する前記目標加速度よりも低く設定することを特徴とする車両の運転支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自車両の加減速制御を行うことが可能な車両の運転支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの自動車等の車両は、運転支援装置を搭載している。運転支援装置は、基本的に、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)機能と、車線中央維持(ALKC:Active Lane Keep Centering)制御機能等と、を備えることによって運転支援制御を実現する。このような運転支援制御により、運転支援装置は、運転者の運転操作に対する負担の軽減、及び、走行時における安全性の向上等を実現する。
【0003】
また、運転支援装置においては、更なる利便性の向上等を目的とした様々な技術が提案されている。例えば、特許文献1には、車両の前方領域を撮像した画像データに基づいて自車線用の信号機を認識し、認識した信号機までの距離及び信号灯の色に基づいて車両の加減速制御を行う技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に開示された技術では、加減速制御を用いた適切な車速制御を実現することが困難な場合がある。例えば、自車走行レーンに積雪がある場合等のような路面μが低い状況においては、信号機を通過する前後の車速やカーブ進入時等の車速を適切に制御することが困難な場合がある。
【0006】
本発明は、路面状況に応じて適切な車速制御を行うことができる車両の運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による車両の運転支援装置は、加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定するスリップ判定手段と、前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する第1の路面μ推定手段と、前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出する高μ領域検出手段と、前記減速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標減速度を前記第1の路面μに対する前記目標減速度よりも高く設定する目標減速度設定手段と、を備えたものである。
【0008】
本発明の他態様による車両の運転支援装置は、加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定するスリップ判定手段と、前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する第1の路面μ推定手段と、前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出する高μ領域検出手段と、前記加速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標加速度を前記第1の路面μに対する前記目標加速度よりも低く設定する目標加速度設定手段と、を備えたものである。
【0009】
本発明の他態様による車両の運転支援装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定し、前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定し、前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出し、前記減速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標減速度を前記第1の路面μに対する前記目標減速度よりも高く設定する。
【0010】
本発明の他態様による車両の運転支援装置は、プロセッサを備え、前記プロセッサは、加速または減速を伴う車速制御時における自車両のスリップ状態を判定し、前記自車両がスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定し、前記第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を前記自車両よりも前方において検出し、前記加速を伴う前記車速制御時において、前記自車両が前記高μ領域を走行するときの目標加速度を前記第1の路面μに対する前記目標加速度よりも低く設定する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の車両の運転支援装置によれば、路面状況に応じて適切な車速制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】自動減速制御時における減速制御ルーチンを示すフローチャート
【
図3】自動加速制御時における加速制御ルーチンを示すフローチャート
【
図7】各道路位置における道路状況と安全度との関係を示すマップ
【
図8】片輪に対応する高μ部分のみが存在する路面状況を例示する模式図
【
図9】左右両輪に対応する高μ部分が存在する路面状況を例示する模式図
【
図10】自車走行レーンを横切る高μ部分が存在する路面状況を例示する模式図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に図面を参照しながら、本発明の一態様の実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明に用いる図においては、各構成要素を図面上で認識可能な程度の大きさとするため、構成要素毎に縮尺を異ならせてあるものである。従って、本発明は、これらの図に記載された構成要素の数量、構成要素の形状、構成要素の大きさの比率、および各構成要素の相対的な位置関係のみに限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、運転支援装置1は、カメラユニット10を有する。カメラユニット10は、例えば、車両(自車両)Mの車室内の前部且つ上部の中央に固定されている。
【0015】
このカメラユニット10は、ステレオカメラ11と、画像処理ユニット(IPU)12と、画像認識ユニット(画像認識_ECU)13と、走行制御ユニット(走行_ECU)14と、を有して構成されている。
【0016】
ステレオカメラ11は、メインカメラ11aと、サブカメラ11bと、を有する。メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、例えば、CMOS等の撮像素子を有して構成されている。これら、メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、車幅方向の中央を挟んで左右対称な位置に配置されている。
【0017】
メインカメラ11a及びサブカメラ11bは、車外前方の走行環境を異なる視点からステレオ撮像する。これらメインカメラ11a及びサブカメラ11bの撮像周期は、互いに同期されている。
【0018】
IPU12は、ステレオカメラ11によって撮像した走行環境画像を所定に画像処理する。これにより、IPU12は、画像上に表された立体物や路面上の区画線等の各種対象のエッジを検出する。そして、IPU12は、左右の画像上において対応するエッジの位置ズレ量から距離情報を求める。これにより、IPU12は、距離情報を含む画像情報(距離画像情報)を生成する。
【0019】
画像認識_ECU13は、IPU12から受信した距離画像情報などに基づき、自車両Mが走行する車線(自車走行レーン)の左右を区画する区画線、左右区画線間の幅(車線幅)、及び、左右区画線の曲率から求まる道路曲率〔1/m〕等を求める。また、画像認識_ECU13は、自車両Mが走行する車線に隣接する車線等の左右を区画する区画線、車線幅、及び、道路曲率等についても求める。
【0020】
また、画像認識_ECU13は、距離画像情報に対して所定のパターンマッチングなどを行う。これにより、画像認識_ECU13は、道路に沿って延在するガードレール、縁石、中央分離帯、及び、周辺車両等の立体物の認識を行う。ここで、画像認識_ECU13における立体物の認識では、例えば、立体物の種別、立体物までの距離、立体物の速度、立体物と自車両Mとの相対速度などの認識が行われる。
【0021】
これら画像認識_ECU13において認識された各種情報は、走行環境情報として走行_ECU14に出力される。
【0022】
このように、本実施形態において、画像認識_ECU13は、ステレオカメラ11及びIPU12とともに、車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段としての一具体例に相当する。
【0023】
走行_ECU14は、運転支援装置1を統括制御するための制御ユニットである。
【0024】
この走行_ECU14には、各種の制御ユニットとして、コックピット制御ユニット(CP_ECU)21と、エンジン制御ユニット(E/G_ECU)22と、トランスミッション制御ユニット(T/M_ECU)23と、ブレーキ制御ユニット(BK_ECU)24と、パワーステアリング制御ユニット(PS_ECU)25と、がCAN(Controller Area Network)等の車内通信回線を介して接続されている。
【0025】
さらに、走行_ECU14には、各種のセンサ類として、ロケータユニット36と、左前側方センサ37lfと、右前側方センサ37rfと、左後側方センサ37lrと、右後側方センサ37rrと、が接続されている。
【0026】
CP_ECU21には、運転席の周辺に配設されたヒューマン・マシーン・インターフェース(HMI)31が接続されている。HMI31には、例えば、操作スイッチ、モード切換スイッチ、ステアリングタッチセンサ、ターンシグナルスイッチ、ドライバモニタリングシステム(DMS)、タッチパネル式ディスプレイ、コンビネーションメータ、及び、スピーカ等が含まれる。ここで、操作スイッチは、各種の運転支援制御の設定及び実行等を行うためのスイッチである。モード切換スイッチは、運転支援モードの切り換えを行うためのスイッチである。ステアリングタッチセンサは、ドライバの保舵状態を検出するためのセンサである。DMSは、ドライバの顔認証や視線検出等を行うためのシステムである。
【0027】
CP_ECU21は、走行_ECU14からの制御信号を受信すると、各種情報をドライバに対して適宜報知する。各種情報には、例えば、先行車等に対する各種警報、運転支援制御の実施状況、及び、自車両Mの走行環境等が含まれる。各種情報の報知は、例えば、HMI31を用いた表示や音声等により行われる。
【0028】
また、CP_ECU21は、HMI31を用いてドライバが入力した各種入力情報を、走行_ECU14に出力する。各種入力情報には、例えば、各種運転支援制御に対するオンまたはオフ操作状態、自車両Mに対する設定車速(セット車速)、ターンシグナルスイッチの操作状態等が含まれる。
【0029】
E/G_ECU22の出力側には、電子制御スロットルのスロットルアクチュエータ32等が接続されている。また、E/G_ECU22の入力側には、図示しないアクセルセンサ等の各種センサ類が接続されている。
【0030】
E/G_ECU22は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号等に基づき、スロットルアクチュエータ32に対する駆動制御を行う。これにより、E/G_ECU22は、エンジンの吸入空気量を調整し、所望のエンジン出力を発生させる。また、E/G_ECU22は、各種センサ類において検出されたアクセル開度等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0031】
T/M_ECU23の出力側には、油圧制御回路33が接続されている。また、T/M_ECU23の入力側には、図示しないシフトポジションセンサ等の各種センサ類が接続されている。T/M_ECU23は、E/G_ECU22において推定されたエンジントルク信号や各種センサ類からの検出信号等に基づき、油圧制御回路33に対する油圧制御を行う。これにより、T/M_ECU23は、自動変速機に設けられている摩擦係合要素やプーリ等を動作させ、エンジン出力を所望の変速比にて変速する。また、T/M_ECU23は、各種センサ類において検出されたシフトポジション等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0032】
BK_ECU24の出力側には、ブレーキアクチュエータ34が接続されている。ブレーキアクチュエータ34は、各車輪に設けられているブレーキホイールシリンダに出力するブレーキ液圧を各々調整する。また、BK_ECU24の入力側には、図示しないブレーキペダルセンサ、ヨーレートセンサ40、前後加速度センサ41、及び、車輪速センサ42(左前輪車輪速センサ42fl,右前輪車輪速センサ42fr,左後輪車輪速センサ42rl,右後輪車輪速センサ42rr)等の各種センサ類が接続されている。
【0033】
BK_ECU24は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、ブレーキアクチュエータ34に対する駆動制御を行う。これにより、BK_ECU24は、自車両Mに対する強制的な制動制御(減速制御)やヨーレート制御等を行うためのブレーキ力を各車輪に適宜発生させる。また、BK_ECU24は、各種センサにおいて検出されたブレーキ操作状態、ヨーレート、前後加速度、及び、車速(自車速)等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0034】
PS_ECU25の出力側には、電動パワステモータ35が接続されている。電動パワステモータ35は、モータの回転力による操舵トルクをステアリング機構に付与する。また、PS_ECU25の入力側には、操舵トルクセンサや舵角センサ等の各種センサ類が接続されている。
【0035】
PS_ECU25は、走行_ECU14からの制御信号或いは各種センサ類からの検出信号に基づき、電動パワステモータ35に対する駆動制御を行う。これにより、PS_ECU25は、ステアリング機構に対する操舵トルクを発生させる。また、PS_ECU25は、各種センサにおいて検出された操舵トルク、及び、舵角等の信号を、走行_ECU14に出力する。
【0036】
ロケータユニット36は、GNSSセンサ36aと、高精度道路地図データベース(道路地
図DB)36bと、を有して構成されている。
【0037】
GNSSセンサ36aは、複数の測位衛星から発信された測位信号を受信する。これにより、GNSSセンサ36aは、自車両Mの位置(緯度、経度、高度等)を測位する。
【0038】
道路地
図DB36bは、HDDなどの大容量記憶媒体である。この道路地
図DB36bには、高精度な道路地図情報(ダイナミックマップ)が記憶されている。道路地図情報には、例えば、自動運転を行う際に必要とする車線データとして、車線幅データ、車線中央位置座標データ、車線の進行方位角データ、制限速度データなどが含まれる。車線データは、道路地図上の各車線に、数メートル間隔で格納されている。道路地
図DB36bは、例えば、GNSSセンサ36aにおいて測位された自車位置を基準とする設定範囲の道路地図情報を、走行環境情報として走行_ECU14に出力する。
【0039】
このように、本実施形態において、道路地
図DB36bは、GNSSセンサ36aとともに、車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段として一具体例に相当する。
【0040】
左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、ミリ波レーダによって構成されている。これら左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、例えば、フロントバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfは、ステレオカメラ11の画像では認識することが困難な自車両Mの左右斜め前方及び側方の領域に存在する立体物を走行環境情報として検出する。
【0041】
左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、ミリ波レーダによって構成されている。これら左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、例えば、リアバンパの左右側部にそれぞれ配設されている。左後側方センサ37lr及び右後側方センサ37rrは、左前側方センサ37lf及び右前側方センサ37rfでは認識することが困難な自車両Mの左右斜め側方及び後方の領域に存在する立体物を走行環境情報として検出する。
【0042】
ここで、各レーダがミリ波レーダにより構成されている場合、ミリ波レーダは、出力した電波に対し、物体からの反射波を解析する。これにより、ミリ波レーダは、主として併走車及び後続車等の立体物を検出する。具体的には、各レーダは、立体物に関する情報として、立体物の横幅、立体物の代表点の位置(自車両Mとの相対位置)、及び、速度等を検出する。
【0043】
このように、本実施形態において、左前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lr、及び、右後側方センサ37rrは、車外の走行環境情報を認識する走行環境認識手段の一具体例に相当する。
【0044】
なお、画像認識_ECU13、ロケータユニット36、左前側方センサ37lf、右前側方センサ37rf、左後側方センサ37lf、及び、右後側方センサ37rrにおいてそれぞれ認識された走行環境情報に含まれる車外の各対象の座標は、例えば、自車両Mの中心を原点とする三次元座標系の座標に変換される。このような座標変換は、例えば、走行_ECU14において行われる。
【0045】
走行_ECU14には、運転モードとして、手動運転モードと、走行制御のためのモードである第1の走行制御モード及び第2の走行制御モードと、退避モードと、が設定されている。これらの各運転モードは、走行_ECU14によって選択的に切換可能となっている。このような切換は、例えば、HMI31に設けられているモード切換スイッチに対する操作状況等に基づいて行われる。
【0046】
ここで、手動運転モードとは、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、手動運転モードは、例えば、ドライバによるステアリング操作、アクセル操作およびブレーキ操作などの運転操作に従って、自車両Mを走行させる運転モードである。
【0047】
第1の走行制御モードも同様に、ドライバによる保舵を必要とする運転モードである。すなわち、第1の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を反映しつつ、自車両Mを走行させる、いわば半自動運転モードである。この第1の走行制御モードは、例えば、走行_ECU14が、E/G_ECU22、BK_ECU24、及び、PS_ECU25に対して各種制御信号を出力することにより実現される。第1の走行制御モードでは、主として、追従車間距離制御(ACC:Adaptive Cruise Control)、車線中央維持制御(ALKC:Active Lane Keep Centering)、車線逸脱抑制制御(ALKB:Active Lane Keep Bouncing)、及び、車線変更制御等が適宜組み合わせて行われる。これにより、自車両Mは、目標走行経路に沿って走行することが可能となっている。
【0048】
ここで、追従車間距離制御は、基本的には、画像認識_ECU13等から入力される走行環境情報に基づいて行われる。
【0049】
具体的に説明すると、画像認識_ECU14等において自車両Mの前方に先行車が認識されていない場合、走行_ECU14は、追従車間距離制御の一環として定速走行制御を行う。この定速走行制御において、走行_ECU14は、ドライバにより入力された設定車速を目標車速として、自車両Mに対する加減速制御を行う。これにより、走行_ECU14は、自車両Mの車速を設定車速に維持する。
【0050】
一方、画像認識_ECU13等において自車両Mの前方に先行車が認識されている場合、走行_ECU14は、追従車間距離制御の一環として追従走行制御を行う。この追従走行制御において、走行_ECU14は、先行車の車速等に基づいて、目標車間距離を設定し、目標車間距離を維持するための加減速制御を行う。
【0051】
また、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御は、基本的には、画像認識_ECU13及びはロケータユニット36のうちの少なくとも何れか一方から入力される走行環境情報に基づいて行われる。すなわち、走行_ECU14は、例えば、走行環境情報に含まれる車線区画線情報等に基づき、自車走行車線の中央に、左右の車線区画線に沿った目標進行路を設定する。そして、走行_ECU14は、目標進行路に基づき、操舵に対するフィードフォワード制御及びフィードバック制御等を行うことにより、自車両Mを車線中央に維持する。
【0052】
第2の走行制御モードとは、ドライバによる保舵、アクセル操作およびブレーキ操作を必要とすることなく、自車両Mを走行させる運転モードである。すなわち、第2の走行制御モードは、ドライバによる運転操作を必要とすることなく、自車両Mを自律走行させる、いわば自動運転モードである。この第2の走行制御モードは、例えば、走行_ECU14が、E/G_ECU22、BK_ECU24、及び、PS_ECU25に対して各種制御信号を出力することにより実現される。第2の走行制御モードでは、主として、先行車追従制御と、車線中央維持制御および車線逸脱抑制制御等が適宜組み合わせて行われる。これにより、自車両Mは、目標ルート(ルート地図情報)に従って走行することが可能となっている。
【0053】
退避モードは、自車両Mを路側帯などに自動的に停止させるためのモードである。この退避モードは、例えば、第2の走行制御モードによる走行中に、当該モードによる走行が継続不能となり、且つ、ドライバに運転操作を引き継ぐことができなかった場合(すなわち、手動運転モード、または、第1の走行制御モードに遷移できなかった場合)に実行される。
【0054】
また、走行_ECU14は、上述の各運転モードにおいて、自車両Mと衝突する可能性の高い車両等の障害物に対し、適宜、緊急ブレーキ制御(衝突被害軽減ブレーキ(AEB:Autonomous Emergency Braking))等を行うことが可能である。
【0055】
緊急ブレーキ制御は、基本的には、自車両Mの目標進行路上の前方に存在する障害物との衝突を、減速制御(自動減速制御)によって回避するためのものである。
【0056】
この緊急ブレーキ制御に際し、走行_ECU14は、障害物に対する衝突予測時間を算出する。そして、走行_ECU14は、縦衝突予測時間と予め設定された閾値との比較結果に基づいて、減速制御を段階的に実行する。
【0057】
さらに、走行_ECU14は、例えば、第2の走行制御モードの選択時に、必要に応じて加速制御(自動加速制御)または減速制御(自動減速制御)を伴う車速制御を行う。
【0058】
例えば、自車走行レーン前方の信号機が赤信号であるとき、走行_ECU14は、自車両Mを停止線の手前で停止(自車速を「0」まで減速)させるための目標減速度を設定する。そして、走行_ECU14は、設定した目標減速度を用いて自動減速制御を行う。
【0059】
また、例えば、自車走行レーン前方の信号機が赤信号から青信号に変化したとき、走行_ECU14は、自車両Mを設定時間かけて所定の目標車速まで加速させるための目標加速度を設定する。そして、走行_ECU14は、設定した目標加速度を用いて自動加速制御を行う。
【0060】
また、例えば、自車走行レーンの前方にカーブを認識しているとき、走行_ECU14は、カーブ進入前の自車速を適切な車速まで減速させるための目標減速度を設定する。そして、走行_ECU14は、設定した目標減速度を用いて自動減速制御を行う。
【0061】
このような自車両Mに対する自動減速制御時において、走行_ECU14は、車輪のスリップ状態を監視する。例えば、走行_ECU14は、自動減速制御時における減速度が想定よりも低いとき、自車両Mがスリップ状態にあると判定する。より具体的には、走行_ECU14は、例えば、前後加速度センサ41等によって検出された減速度と、自動減速制御における目標減速度と、の差が設定値以上であるとき、自車両Mがスリップ状態にあると判定する。
【0062】
自車両Mがスリップ状態にあると判定すると、走行_ECU14は、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。この第1の路面μの推定は、例えば、自車両Mの前後加速度及び各車輪の車輪速等に基づき、周知の演算方法によって行うことが可能である。
【0063】
さらに、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。この高μ領域の検出は、例えば、主として、カメラ(ステレオカメラ11)によって取得した画像情報に基づいて行うことが可能である。このため、走行_ECU14には、例えば、路面の色と路面μとの関係を示すマップが、予め設定されて格納されている(
図4参照)。マップに示すように、例えば、道路地図上の道路に対応する領域のうち、黒く撮像された領域は、アスファルトが露出した路面であると推定できる。また、道路地図上の道路に対応する領域のうち、茶色く撮像された領域は、土に覆われた路面、或いは、未舗装の路面であると推定できる。また、道路地図上の道路に対応する領域のうち、白く撮像された領域は、雪によって覆われた路面であると推定できる。さらに、白く撮像された領域においては、当該領域の高さ方向の情報から、路面上の積雪量を推定することができる。また、道路地図上の道路に対応する領域のうち、透明に撮像された領域は、氷によって覆われた路面であると推定できる。さらに、道路地図上の道路に対応する領域のうち、透明な部分に水が混在する領域は、溶けた氷で覆われた路面であると推定できる。
【0064】
これらの路面状態の推定結果に基づいて、走行_ECU14は、自車両M前方の各領域における路面μを推定する。例えば、
図4に示すように、路面の色が黒色である場合、路面の色が茶色である場合よりも高い路面μが推定される。また、路面の色が茶色である場合、路面の色が白色である場合よりも高い路面μが推定される。また、路面の色が白色である場合、路面の色が透明である場合よりも高い路面μが推定される。この場合において、積雪量が多い路面では、積雪量が少ない路面よりも高い路面μが推定される。また、路面の色が透明である場合、路面が透明な部分に水が混在する場合よりも高い路面μが推定される。なお、各色に対応する路面μには、例えば、予め実験等によって求められた固定値を用いることが可能である。
【0065】
そして、走行_ECU14は、例えば、自車両Mがスリップ状態にあることを判定した地点の路面の色と、自車両Mの前方における路面の色と、を比較することによって、高μ領域を抽出することが可能である。例えば、自車両Mがスリップ状態にあることを判定した地点の路面の色が透明である場合、自車両M前方の路面の色が白色、茶色、または、黒色をなす領域を高μ領域として抽出することが可能である。
【0066】
なお、路面の色に基づいて推定した路面μについては、例えば、路面温度Tr、及び、気温Tに基づいて補正することも可能である。このため、走行_ECU14には、路面温度Trと路面μとの関係を示すマップ(
図5参照)、及び、気温Tと路面μとの関係を示すマップ(
図6参照)等が予め設定されて格納されている。
【0067】
高μ領域が複数抽出されている場合、走行_ECU14は、各高μ領域に対する優先順位付けを行う。この優先順位付けは、基本的には、路面μが高い高μ領域ほど高い優先順位が設定される。但し、走行_ECU14は、優先順位付けを行う際に、自車走行路上における高μ領域の位置(道路位置)、及び、走行環境情報を加味することが望ましい。例えば、
図7に示すように、道路上の中央線寄りの領域は、対向車の有無、及び、中央分離帯の有無等によって、自車両Mが走行する際の安全度が異なる。また、例えば、道路上の路肩寄りの領域は、側溝の有無、雪壁の有無、歩行者の有無、及び、路肩との段差の有無等によって安全度が異なる。そこで、本実施形態において、走行_ECU14は、各高μ領域の路面μに、高μ領域の道路位置及び走行環境情報から求まる安全度を加味した上で、各高μ領域に対する優先順位付けを行う。
【0068】
また、走行_ECU14は、自動減速制御の経路(減速経路)として、最も優先度の高い高μ領域を自車両Mに通過させるための経路を設定する。
【0069】
さらに、走行_ECU14は、設定した減速経路上の路面μ毎に、目標減速度を設定する。この場合において、走行_ECU14は、高μ領域における目標減速度を、スリップ発生時の目標減速度よりも相対的に高く設定する。このように高μ領域に高い目標減速度を設定することにより、走行_ECU14は、スリップによって延長された減速距離を、当初の減速距離まで短縮させる。
【0070】
そして、走行_ECU14は、領域毎に設置した目標減速度を用い、減速経路に沿った自車両Mの減速制御を行う。
【0071】
その際、走行_ECU14は、減速経路上の高μ領域が自車両Mの左右輪のうちの片輪のみに対応している場合(例えば、
図8中に実線で示した減速経路参照)と、減速経路上の高μ領域が自車両Mの左右輪に対応している場合(例えば、
図9,10中に実線で示した減速経路参照)と、の判別を行う。そして、高μ領域が片輪のみに対応している場合、走行_ECU14は、左右輪間の路面μの相違に起因して発生するヨーレートを打ち消すための操舵制御を追加して行う。
【0072】
同様に、自車両Mに対する自動加速制御時においても、走行_ECU14は、車輪のスリップ状態を監視する。例えば、走行_ECU14は、自動加速制御時における加速度が想定よりも低いとき、自車両Mがスリップ状態にあると判定する。より具体的には、走行_ECU14は、例えば、前後加速度センサ41等によって検出された加速度と、自動加速制御における目標加速度と、の差が設定値以上であるとき、自車両Mがスリップ状態にあると判定する。
【0073】
自車両Mがスリップ状態にあると判定すると、走行_ECU14は、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。
【0074】
さらに、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。
【0075】
そして、自車走行経路上に第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在する場合であって、且つ、高μ領域を操舵によって回避できない場合、走行_ECU14は、路面μ毎に目標加速度を設定する。この場合において、走行_ECU14は、例えば、高μ領域以外における目標加速度として、第1の路面μに応じた目標加速度を設定する。これにより、高μ路以外における目標加速度はスリップ発生時の目標加速度よりも低く設定される。従って、自動加速制御時における車輪のスリップが抑制される。また、走行_ECU14は、高μ領域における目標加速度を、他の領域における目標加速度よりもさらに低く設定する。これにより、高μ領域において車輪のグリップ力が急増することに起因する、自車両Mの急加速(所謂、μジャンプ)が抑制される。
【0076】
一方、自車走行経路上に第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在する場合であって、且つ、自車走行経路上の高μ領域を操舵によって回避できる場合、走行_ECU14は、高μ領域に対する操舵回避を実施する。さらに、走行_ECU14は、第1の路面μに応じた目標加速度を設定する。
【0077】
また、自車走行経路上に第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在しない場合、走行_ECU14は、第1の路面μに応じた目標加速度を設定する。
【0078】
そして、走行_ECU14は、設定した目標加速度を用い、自車両Mの加速制御を行う。
【0079】
このように、本実施形態において、走行_ECU14は、スリップ判定手段、第1の路面μ推定手段、高μ領域検出手段、目標減速度設定手段、操舵制御手段、及び、目標加速度設定手段としての一具体例に相当する。
【0080】
次に、自動減速制御時における減速制御について、
図2に示す減速制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU14において、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0081】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU14は、ステップS101において、自車両Mが自動減速制御中であるか否かを調べる。
【0082】
そして、ステップS101において、自動減速制御中でないと判定した場合(ステップS101:NO)、走行_ECU14は、そのままルーチンを抜ける。
【0083】
一方、ステップS101において、自動減速制御中であると判定した場合(ステップS101:YES)、走行_ECU14は、ステップS102に進む。
【0084】
ステップS102において、走行_ECU14は、減速制御中の自車両Mの減速度が想定よりも低いか否かを調べる。すなわち、走行_ECU14は、例えば、現在の自動減速制御において設定されている目標減速度と、前後加速度センサ41によって検出された加速度(減速度)との差が設定値以上であるか否かを調べる。
【0085】
そして、ステップS102において、自車両Mの減速度が想定の範囲内であり、自車両Mがスリップしていないと判定した場合(ステップS102:NO)、走行_ECU14は、ステップS103に進む。
【0086】
ステップS103において、走行_ECU14は、自動減速制御の開始時に設定した目標減速度に基づく自動減速制御を継続した後、ルーチンを抜ける。
【0087】
一方、ステップS102において、自車両Mの減速度が想定よりも低く、自車両Mがスリップしていると判定した場合(ステップS102:YES)、走行_ECU14は、ステップS104に進む。
【0088】
ステップS104において、走行_ECU14は、現在の路面μを第1の路面μとして推定する。すなわち、走行_ECU14は、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。
【0089】
続くステップS105において、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。
【0090】
続くステップS106において、走行_ECU14は、高μ領域に対する優先順位付けを行う。すなわち、高μ領域が複数検出されている場合、走行_ECU14は、各高μ領域における第2の路面μに、各高μ領域の道路位置及び走行環境情報を加味した上で、各高μ領域に対する優先順位付けを行う。
【0091】
続くステップS107において、走行_ECU14は、自動減速制御の経路として、最も優先度の高い高μ領域を含む減速経路を設定する。
【0092】
続くステップS108において、走行_ECU14は、設定した減速経路上の路面μ毎に、目標減速度を設定する。
【0093】
続くステップS109において、走行_ECU14は、減速経路上の高μ領域が、自車両Mの左右輪のうちの片輪のみに対応しているか否かを調べる。
【0094】
そして、ステップS109において、減速経路上の高μ領域が片輪のみに対応していると判定した場合(ステップS109:YES)、走行_ECU14は、ステップS112に進む。
【0095】
一方、ステップS109において、減速経路上の高μ領域が左右両輪に対応していると判定した場合(ステップS109:NO)、走行_ECU14は、ステップS110に進む。
【0096】
ステップS109からステップS110に進むと、走行_ECU14は、ステップS108において設定した目標減速度を用い、減速経路に沿った減速制御を行う。
【0097】
続くステップS111において、走行_ECU14は、自動減速制御の開始時に設定された目標車速に自車速が到達したか否かを調べる。
【0098】
そして、ステップS111において、自車速が目標車速に到達していないと判定した場合(ステップS111:NO)、走行_ECU14は、ステップS110に戻る。
【0099】
一方、ステップS111において、自車速が目標車速に到達したと判定した場合(ステップS111:YES)、走行_ECU14は、ルーチンを抜ける。
【0100】
また、ステップS109からステップS112に進むと、走行_ECU14は、左右輪の路面μ差に起因して発生するヨーレートを打ち消すための修正舵角を演算する。
【0101】
続くステップS113において、走行_ECU14は、ステップS108において設定した目標減速度を用い、減速経路に沿った減速制御を行う。その際、走行_ECU14は、ステップS109において設定した修正舵角を反映させた操舵制御を行う。
【0102】
続くステップS114において、走行_ECU14は、自動減速制御の開始時に設定された目標車速に自車速が到達したか否かを調べる。
【0103】
そして、ステップS114において、自車速が目標車速に到達していないと判定した場合(ステップS114:NO)、走行_ECU14は、ステップS113に戻る。
【0104】
一方、ステップS114において、自車速が目標車速に到達したと判定した場合(ステップS114:YES)、走行_ECU14は、ルーチンを抜ける。
【0105】
次に、自動加速制御時における加速制御について、
図3に示す加速制御ルーチンのフローチャートに従って説明する。このルーチンは、走行_ECU14において、設定時間毎に繰り返し実行されるものである。
【0106】
ルーチンがスタートすると、走行_ECU14は、ステップS201において、自車両Mが自動加速制御中であるか否かを調べる。
【0107】
そして、ステップS201において、自動加速制御中でないと判定した場合(ステップS201:NO)、走行_ECU14は、そのままルーチンを抜ける。
【0108】
一方、ステップS201において、自動加速制御中であると判定した場合(ステップS201:YES)、走行_ECU14は、ステップS202に進む。
【0109】
ステップS202において、走行_ECU14は、加速制御中の自車両Mの加速度が想定よりも低いか否かを調べる。すなわち、走行_ECU14は、例えば、現在の自動加速制御において設定されている目標加速度と、前後加速度センサ41によって検出された加速度との差が設定値以上であるか否かを調べる。
【0110】
そして、ステップS202において、自車両Mの加速度が想定の範囲内であり、自車両Mがスリップしていないと判定した場合(ステップS202:NO)、走行_ECU14は、ステップS203に進む。
【0111】
ステップS203において、走行_ECU14は、自動加速制御の開始時に設定した目標加速度に基づく自動加速制御を継続した後、ルーチンを抜ける。
【0112】
一方、ステップS202において、自車両Mの加速度が想定よりも低く、自車両Mがスリップしていると判定した場合(ステップS202:YES)、走行_ECU14は、ステップS204に進む。
【0113】
ステップS204において、走行_ECU14は、現在の路面μを第1の路面μとして推定する。すなわち、走行_ECU14は、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。
【0114】
続くステップS205において、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。
【0115】
続くステップS206において、走行_ECU14は、自車走行経路上に第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在するか否かを調べる。
【0116】
そして、ステップS206において、第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在しないと判定した場合(ステップS206:NO)、走行_ECU14は、ステップS212に進む。
【0117】
一方、ステップS206において、第1の路面μとの差が閾値以上となる高μ領域が存在すると判定した場合(ステップS206:YES)、走行_ECU14は、ステップS207に進む。
【0118】
ステップS207において、走行_ECU14は、現在の自車走行経路上に存在する高μ領域を操舵によって回避することが可能か否かを調べる。
【0119】
そして、ステップS207において、操舵回避か不可能であると判定した場合(ステップS207:NO)、走行_ECU14は、ステップS208に進む。
【0120】
一方、ステップS207において、操舵回避が可能であると判定した場合(ステップS207:YES)、走行_ECU14は、ステップS211に進む。
【0121】
ステップS211において、走行_ECU14は、高μ領域に対する操舵回避を実施した後、ステップS212に進む。
【0122】
ステップS206或いはステップS211からステップS212に進むと、走行_ECU14は、第1の路面μに応じた目標加速度を設定する。
【0123】
続くステップS213において、走行_ECU14は、ステップS212において設定した目標加速度を用い、自車両Mに対する加速制御を行う。
【0124】
続くステップS214において、走行_ECU14は、自動加速制御の開始時に設定された目標車速に自車速が到達したか否かを調べる。
【0125】
そして、ステップS214において、自車速が目標車速に到達していないと判定した場合(ステップS214:NO)、走行_ECU14は、ステップS213に戻る。
【0126】
一方、ステップS214において、自車速が目標車速に到達したと判定した場合(ステップS214:YES)、走行_ECU14は、ルーチンを抜ける。
【0127】
また、ステップS207からステップS208に進むと、走行_ECU14は、自車走行経路上の路面μ毎の目標加速度を設定する。この場合において、走行_ECU14は、例えば、高μ領域以外における目標加速度として、第1の路面μに応じた目標加速度を設定する。また、走行_ECU14は、例えば、高μ領域における目標加速度を、他の領域における目標加速度よりもさらに低く設定する。
【0128】
続くステップS209において、走行_ECU14は、ステップS208において設定した目標加速度を用い、自車両Mに対する加速制御を行う。
【0129】
続くステップS210において、走行_ECU14は、自動加速制御の開始時に設定された目標加速に自車速が到達したか否かを調べる。
【0130】
そして、ステップS210において、自車速が目標車速に到達していないと判定した場合(ステップS210:NO)、走行_ECU14は、ステップS209に戻る。
【0131】
一方、ステップS210において、自車速が目標車速に到達したと判定した場合、走行_ECU14は、ルーチンを抜ける。
【0132】
このような実施形態によれば、走行_ECU14は、自動減速制御を伴う車速制御時における自車両Mのスリップを判定し、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。また、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。そして、走行_ECU14は、自動減速制御を伴う車速制御時において、自車両Mが高μ領域を走行するときの目標減速度を第1の路面μに対する目標減速度よりも高く設定する。これにより、路面上に積雪等がある場合においても、路面状況に応じて適切な車速制御を行うことができる。
【0133】
すなわち、減速制御中にスリップが発生すると、自車速を目標車速まで減速させるために要する距離(減速距離)が長くなる。これに対し、走行_ECU14は、高μ領域における目標減速度を第1の路面μに対する目標減速度よりも高く設定する。これにより、スリップによって延長された減速距離を、自動減速制御の開始当初に予定していた減速距離まで短縮することができる。従って、自車両Mが信号機の手前やカーブの手前等に到達するまでに、自車両Mの車速を適切な車速まで減速させることができる。
【0134】
このような減速制御時において、高μ領域が片輪のみにしか対応していない場合、走行_ECU14は、左右輪の路面μ差に起因して発生するヨーレートを打ち消す方向の修正舵角を演算する。これにより、高μ領域が片輪のみにしか対応していない場合であっても、当該高μ領域を有効活用して適切な減速制御を実現することができる。
【0135】
また、走行_ECU14は、自動加速制御を伴う車速制御時における自車両Mのスリップを判定し、自車両Mがスリップを開始したときの路面μを第1の路面μとして推定する。また、走行_ECU14は、第1の路面μよりも高い第2の路面μを有する高μ領域を自車両Mよりも前方において検出する。そして、走行_ECU14は、自動加速制御を伴う車速制御時において、自車両Mが高μ領域を走行するときの目標加速度を第1の路面μに対する目標加速度よりも低く設定する。これにより、路面上に積雪等がある場合においても、路面状況に応じて適切な車速制御を行うことができる。
【0136】
すなわち、加速制御中にスリップが発生すると、自車速を目標車速まで加速させるために要する距離(加速距離)が長くなる。その一方で、加速制御時には、自車速を目標車速まで加速するための目標地点が設定されることは特段考えにくい。加えて、スリップが発生するような走行路での加速制御時には、急激な加速度変化を抑制することが、安全性や乗り心地等の観点から重要となる。このような要件に対し、走行_ECU14は、高μ領域における目標加速度を第1の路面μに対する目標加速度よりも低く設定する。これにより、高μ領域における急激な加速度変化を抑制することができ、安定した加速走行を実現することができる。
【0137】
但し、走行_ECU14は、高μ領域における路面μ(第2の路面μ)と第1の路面μとの差が閾値未満である場合には、高μ領域における目標加速度を、第1の路面μに対する目標加速度のまま維持する。これにより、高μ領域における急激な加速度変化が予測されにくい走行路においては、加速制御を簡素化することができる。
【0138】
また、第1の路面μと高μ領域における第2の路面μとのμ差が閾値以上である場合において、自車両Mが高μ領域を回避可能である場合、走行_ECU14は、高μ領域に対する回避操舵を行う。これにより、加速制御を簡素化しつつ、急激な加速度変化を的確に抑制することができる。
【0139】
上述のように、走行_ECU14は、高μ領域に対し、自動減速制御時と自動加速制御時とで相反する制御を行う。すなわち、自動減速制御時において、走行_ECU14は、高μ領域における目標減速度を他の領域の目標減速度よりも高く設定する。一方、自動加速制御時において、走行_ECU14は、高μ領域における目標加速度を他の領域の目標加速度よりも低く設定する。これらの加減速制御により、安全性を確保しつつ、路面状況に応じて適切な車速制御を実現することができる。
【0140】
ここで、上述の実施形態において、画像認識_ECU13、走行_ECU14、CP_ECU21、E/G_ECU22、T/M_ECU23、BK_ECU24、及び、PS_ECU25は、CPU,RAM,ROM、不揮発性記憶部等を備える周知のマイクロコンピュータ、及びその周辺機器で構成されており、ROMにはCPUで実行するプログラムやデータテーブル等の固定データ等が予め記憶されている。なお、プロセッサの全部若しくは一部の機能は、論理回路あるいはアナログ回路で構成してもよく、また各種プログラムの処理を、FPGAなどの電子回路により実現するようにしてもよい。
【0141】
以上の実施の形態に記載した発明は、それらの形態に限ることなく、その他、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々の変形を実施し得ることが可能である。さらに、上記形態には、種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜な組合せにより種々の発明が抽出され得るものである。
【0142】
例えば、各形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、述べられている課題が解決でき、述べられている効果が得られる場合には、この構成要件が削除された構成が発明として抽出され得るものである。
【符号の説明】
【0143】
1 … 運転支援装置
10 … カメラユニット
11 … ステレオカメラ
11a … メインカメラ
11b … サブカメラ
13 … 画像認識_ECU
14 … 走行_ECU
21 … CP_ECU
22 … E/G_ECU
23 … T/M_ECU
24 … BK_ECU
25 … PS_ECU
31 … HMI
32 … スロットルアクチュエータ
33 … 油圧制御回路
34 … ブレーキアクチュエータ
35 … 電動パワステモータ
36 … ロケータユニット
36a … GNSSセンサ
36b … 道路地
図DB
37lf … 左前側方センサ
37lr … 右後側方センサ
37rf … 左後側方センサ
37rr … 右後側方センサ
40 … ヨーレートセンサ
41 … 前後加速度センサ
42fl … 左前輪車輪速センサ
42fr … 右前輪車輪速センサ
42rl … 左後輪車輪速センサ
42rr … 右後輪車輪速センサ
M … 車両(自車両)