(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014078
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
H04N 1/04 20060101AFI20240125BHJP
H04N 1/191 20060101ALI20240125BHJP
H04N 1/028 20060101ALI20240125BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H04N1/12 Z
H04N1/191
H04N1/028 B
B41J29/393 105
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116650
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100143960
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 早百合
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 宏門
【テーマコード(参考)】
2C061
5C051
5C072
【Fターム(参考)】
2C061AQ05
2C061AS06
2C061KK26
2C061KK28
2C061KK35
5C051AA01
5C051BA04
5C051DB01
5C051DB22
5C051DE07
5C051DE18
5C051DE21
5C072AA01
5C072BA13
5C072DA02
5C072DA08
5C072DA12
5C072DA21
5C072DA23
5C072DA25
5C072EA07
5C072NA01
5C072RA16
5C072UA02
5C072UA17
(57)【要約】
【課題】補正値を用いてシェーディング補正が実行される印刷装置において、読取部の構成を変えることなく、補正値設定後にレンズアレイとセンサとの位置関係がずれている場合を検出可能な印刷装置を提供すること。
【解決手段】印刷装置の制御部は、媒体に画像を印刷し、搬送部が媒体を搬送中に、媒体に印刷された画像を読取部で読み取った第一画像を取得する。制御部は、搬送部が媒体を搬送中に、余り領域に対応する基準板を、読取部で読み取った第二画像を取得する(S22)。制御部は、第一画像と第二画像との各々について、基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う(S23)。制御部は、S23で補正された第二画像の全体に亘って幅方向に一定周期の読取異常値を検出することで補正値を設定後にレンズアレイとセンサとの位置関係がずれた場合を位置ずれ発生として検出する(S30)。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の媒体を、搬送方向に搬送する搬送部と、
前記搬送方向において、前記搬送部の上流に設けられる印刷ヘッドと、
前記搬送方向において、前記印刷ヘッドの下流に設けられ、前記搬送方向に直交する幅方向に長い基準板と、
前記搬送方向において、前記印刷ヘッドの下流に設けられる読取部であって、
前記基準板に対して所定の相対位置に配置され、前記幅方向の所定領域内で配列されたレンズアレイと、
前記レンズアレイを通過した光を検出するセンサと
を備える読取部と、
前記搬送部と、前記印刷ヘッドと、前記読取部との各々を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記印刷ヘッドと前記搬送部とを制御し、前記媒体に画像を印刷する印刷制御処理と、
前記搬送部が前記媒体を搬送中に、前記幅方向の長さが前記レンズアレイよりも短い前記媒体に印刷された前記画像を前記読取部で読み取った第一画像を取得する第一処理と、
前記搬送部が前記媒体を搬送中に、前記幅方向において、前記レンズアレイの前記所定領域のうちの、前記媒体が搬送される領域を除いた余り領域に対応する前記基準板を、前記読取部で読み取った第二画像を取得する第二処理と、
前記第一処理で取得された前記第一画像と、前記第二処理で取得された前記第二画像との各々について、前記基準板を読み取った基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う補正処理と、
前記補正処理で補正された前記第二画像の全体に亘って前記幅方向に一定周期の読取異常値を検出することで前記補正値を設定後に前記レンズアレイと前記センサとの位置関係がずれた場合を位置ずれ発生として検出する検出処理
とを実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記印刷制御処理は、前記媒体に設定された、前記搬送方向に並ぶ複数の印刷領域の各々に対して連続して実行され、
前記第一処理は、前記複数の印刷領域の各々に対して実行され、
前記第二処理は、前記複数の印刷領域のうちの、注目する印刷領域についての前記第一処理が実行された後、前記注目する印刷領域の印刷順序が次の印刷領域についての前記第一処理を実行する前に実行されることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記余り領域は、前記レンズアレイの前記所定領域のうち、前記幅方向の一方側と、他方側との各々について設定され、
前記制御部は、前記検出処理で、前記補正処理で補正された前記第二画像において、前記幅方向の前記一方側の前記余り領域と、前記幅方向の前記他方側の前記余り領域との各々について、前記幅方向に前記一定周期の前記読取異常値を検出することで前記位置ずれ発生を検出することを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記第二画像を構成する複数の画素の各々の入力階調値について、前記入力階調値を出力階調値に変換するガンマ補正テーブルであって、
前記基準板が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲の入力階調値を第一出力値に変換し、
前記第一範囲に連続する第二範囲の入力階調値を、前記第一出力値とは互いに異なる第二出力値に変換し、
前記第二範囲に連続し、前記第一範囲とは連続しない第三範囲の入力階調値を、前記第一出力値及び前記第二出力値とは互いに異なる第三出力値に変換する
前記ガンマ補正テーブルを用いてガンマ補正するガンマ補正処理を実行し、
前記検出処理で、前記幅方向において、前記第二画像の前記全体に亘って前記幅方向に前記一定周期で前記第二出力値を検出した場合を前記位置ずれ発生として検出することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第二画像を構成する複数の画素の各々の入力階調値について、前記入力階調値を出力階調値に変換するガンマ補正テーブルであって、
前記基準板が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲の入力階調値を、前記第一範囲の前記入力階調値の変化を強調した出力階調値である強調階調値に変換し、
前記第一範囲に連続する第二範囲の入力階調値を、前記入力階調値によらず、前記強調階調値とは異なる出力階調値である固定値に変換する
前記ガンマ補正テーブルを用いてガンマ補正するガンマ補正処理と、
前記複数の画素の各々の前記出力階調値の隣接差分を算出する差分算出処理と、
を更に実行し、
前記検出処理は、前記幅方向において、前記第二画像の前記全体に亘って前記幅方向に前記一定周期で前記隣接差分のピークを検出した場合を前記位置ずれ発生として検出することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【請求項6】
報知部を更に備え、
前記制御部は、
前記検出処理で前記位置ずれ発生が検出された場合、前記印刷制御処理を停止し、前記報知部にエラーを報知させる報知制御処理
を更に実行することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記シェーディング補正後の前記第一画像を第一ガンマ補正テーブルを用いてガンマ補正し、前記シェーディング補正後の前記第二画像を前記第一ガンマ補正テーブルとは異なる第二ガンマ補正テーブルを用いてガンマ補正処理を実行し、
前記検出処理は、前記補正処理及び前記ガンマ補正処理で補正された前記第二画像の前記全体に亘って前記幅方向に前記一定周期の前記読取異常値を検出することで前記位置ずれ発生を検出することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【請求項8】
前記印刷制御処理実行前に前記読取部で前記所定領域に対応する前記基準板を読み取った前記基準画像に基づき前記補正値を設定する補正値設定処理を実行することを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の画像読取装置は、原稿を読み取る画像読取部、シェーディング補正データ作成部、画像データ処理部、及び基準位置検出部を備える。画像読取部は、レンズアレイを備え、原稿を読み取る。レンズアレイには、あらかじめ原稿が搬送されない位置にマークが付加されている。基準位置検出部は、画像読取部が読み取ったデータからマーク位置を検出する。基準位置検出部によって検出されるマーク位置が、あらかじめ検出しておいたマーク位置と異なる場合、画像データ処理部は、検出されるマーク位置と、既知のマーク位置との差分量及びシェーディング補正データに基づき、画像読取部によって読み取った画像データを処理する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の画像読取装置は、レンズアレイとラインセンサとの位置関係がずれているかをレンズアレイに付与したマークに基づき検出する。従来の画像読取装置は、レンズアレイにマークを設ける必要があることから、画像読取装置の加工が必要である。このように画像読取装置を加工することは通常困難であり、大きなコストアップにつながる。
【0005】
本発明の目的は、補正値を用いてシェーディング補正が実行される印刷装置において、読取部の構成を変えることなく、補正値設定後にレンズアレイとセンサとの位置関係がずれている場合を検出可能な印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る印刷装置は、長尺状の媒体を、搬送方向に搬送する搬送部と、前記搬送方向において、前記搬送部の上流に設けられる印刷ヘッドと、前記搬送方向において、前記印刷ヘッドの下流に設けられ、前記搬送方向に直交する幅方向に長い基準板と、前記搬送方向において、前記印刷ヘッドの下流に設けられる読取部であって、前記基準板に対して所定の相対位置に配置され、前記幅方向の所定領域内で配列されたレンズアレイと、前記レンズアレイを通過した光を検出するセンサとを備える読取部と、前記搬送部と、前記印刷ヘッドと、前記読取部との各々を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記印刷ヘッドと前記搬送部とを制御し、前記媒体に画像を印刷する印刷制御処理と、前記搬送部が前記媒体を搬送中に、前記幅方向の長さが前記レンズアレイよりも短い前記媒体に印刷された前記画像を前記読取部で読み取った第一画像を取得する第一処理と、前記搬送部が前記媒体を搬送中に、前記幅方向において、前記レンズアレイの前記所定領域のうちの、前記媒体が搬送される領域を除いた余り領域に対応する前記基準板を、前記読取部で読み取った第二画像を取得する第二処理と、前記第一処理で取得された前記第一画像と、前記第二処理で取得された前記第二画像との各々について、前記基準板を読み取った基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う補正処理と、前記補正処理で補正された前記第二画像の全体に亘って前記幅方向に一定周期の読取異常値を検出することで前記補正値を設定後に前記レンズアレイと前記センサとの位置関係がずれた場合を位置ずれ発生として検出する検出処理とを実行する。印刷装置の検出処理は、補正値を用いてシェーディング補正が実行される印刷装置において、読取部の構成を変えること無く、補正値設定後にレンズアレイとセンサとの位置関係がずれている場合を検出することに貢献する。印刷装置は、従来のようにレンズアレイを加工する手間と加工に伴うコストアップを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】台紙M1及び複数のラベルM2を備える媒体Mと、媒体Mに印刷される画像G1との説明図である。
【
図4】印刷装置1の電気的構成を示すブロック図である。
【
図8】第二ガンマ補正テーブル94を用いて入力階調値D1をガンマ処理することで、入力階調値D1を出力階調値D2に変換する処理と、出力階調値D2の隣接差分D3に基づき、異常読取値の周期性を確認する処理との説明図である。
【
図9】変形例の第二ガンマ補正テーブル95を用いて入力階調値D1をガンマ処理することで、入力階調値D1を出力階調値D4に変換する処理と、出力階調値D4に基づき、異常読取値の周期性を確認する処理との説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態に係る印刷装置1について、図面を参照して順に説明する。参照する図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明するために用いられるものであり、記載される装置の構成などは、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。本実施形態の説明では、
図1の左下側、右上側、右下側、左上側、上側、及び下側を各々、印刷装置1の前側、後側、右側、左側、上側、及び下側とする。
【0009】
図1から
図3を参照して、印刷装置1の物理的構成を説明する。
図1に示すように、印刷装置1は、筐体2、表示部3、及び操作部4を備える。筐体2は、前壁24、右壁25、後壁26、下壁27、上壁28、左壁29、及びカバー23を有する。筐体2は、卓上に載置可能な大きさの直方体状である。筐体2には、排出口21及び開口22が形成される。排出口21は、筐体2の前壁24に、正面視左右方向に長い矩形状に形成される。開口22は、筐体2の右壁25の後下部に、右側面視矩形状に形成される。カバー23は、右側面視矩形状の板であり、
図1中実線で図示する、開口22を塞ぐ閉位置と、
図1中一点鎖線で図示する、開口22を解放する開位置とに回動可能に筐体2の右側面の後下部に支持される。表示部3は、筐体2の前壁24の前面右上部に設けられ、画像を表示する。操作部4は、筐体2の前壁24の前面右上部のうち、表示部3の下方に設けられ、各種指示を入力する複数のボタンである。表示部3及び操作部4は、排出口21の上方に設けられる。
【0010】
図2に示すように、印刷装置1は、前壁24に設けた巻取装置接続部68及び外部機器接続部69を介して後述の巻取装置60と接続可能である。巻取装置接続部68は、筐体2の前壁24の右下部に設けられる。巻取装置接続部68は、巻取装置60と電気的に接続するためのコネクタである。外部機器接続部69は、前壁24において巻取装置接続部68の下方に設けられる。外部機器接続部69は、PC等の外部の情報機器と電気的に接続するためのコネクタである。
【0011】
印刷装置1は、筐体2の内部に、供給部5、搬送部7、10、15、19、48、隔壁55、張力付与部8、媒体検出部53、印刷ヘッド6、定着ユニット40、基準板77、及び読取部45を収容する。印刷装置1は、長尺状の媒体Mに印刷を行うインクジェットプリンタである。媒体Mは、例えば、筒状の紙管Kにロール状に巻回された長尺状である。
図3に示すように、本実施形態の媒体Mは長尺状の台紙M1と、台紙M1に添付された複数のラベルM2とを含む。各ラベルM2は、媒体Mの長手方向、つまり搬送方向Fの長さが長さFL、長手方向に直交する幅方向Wの長さが横幅WLである矩形状である。複数のラベルM2は台紙M1に間隔Jをあけて搬送方向Fに等間隔で貼付されている。
【0012】
供給部5は、
図1に実線で示す閉位置にあるカバー23の左方、且つ、印刷装置1の後下部の、
図2に示す隔壁55と後壁26とによって囲まれた空間に設けられる。供給部5は、ロールRを保持する。ロールRは、媒体Mがロール状に巻かれたものである。本実施形態の供給部5は、軸部51、及びマガジン52を備える。軸部51は、左右方向に延び、ロールRの紙管Kに挿通される。マガジン52は、正面視U字状の支持台である。マガジン52は、軸部51の左右両端部を、軸部51が左右方向に延びる軸周りに回動可能に支持する。軸部51は、マガジン52に取り外し可能に支持される。マガジン52は、印刷装置1に取り外し可能に支持される。印刷装置1のユーザはロールRを交換する場合、
図1に示すカバー23を開位置に配置して、
図2に示すマガジン52を筐体2の内部から取り出し、ロールRの交換作業を行う。隔壁55は、筐体2の下壁27から上方に延びる第一壁部56と、第一壁部56の上端から後方に延びる第二壁部57とを有し、筐体2の内部空間を仕切る。第二壁部57は、筐体2の後壁26と前後方向に離隔する。
【0013】
印刷ヘッド6は、供給部5から供給される媒体Mに画像を印刷する。本実施形態の印刷ヘッド6は、液体状のインク80を吐出方向に吐出する複数のノズル70を備え、複数のノズル70からインク80を吐出することで、媒体Mに画像を印刷するインクジェットヘッドである。本実施形態の吐出方向は下方であり、印刷ヘッド6は、媒体Mの搬送経路Qの上方に、複数のノズル70が下方を向く姿勢で設けられる。搬送経路Qは、供給部5から繰り出され、排出口21から筐体2の外部に排出されるまでの、媒体Mが搬送される経路である。インク80は、図示しないチューブを介して筐体2の内部に配置されたタンク20から印刷ヘッド6に供給される。
【0014】
搬送部7は、媒体Mを供給部5から印刷ヘッド6に向かう搬送方向Fと、搬送方向Fとは反対の戻し方向Bとに搬送する。搬送方向Fは供給部5から印刷ヘッド6に向かう搬送経路Qに沿った方向である。搬送方向Fは、ロールRの回転軸の延設方向である左右方向に交差する方向であり、搬送経路Q上の位置に応じて変化する方向である。供給部5から張力付与部8までの搬送方向Fは、媒体Mの残量に応じて変化する方向であり、
図2に示すように、媒体Mの残量が初期値、すなわち、ロールR交換直後の残量値である場合、概ね上方である。張力付与部8から排出口21までの搬送方向Fは、概ね前方である。つまり印刷装置1では、媒体Mが張力付与部8に当接する部分で、搬送経路Qが屈曲し、搬送方向Fが上方から前方に変化する。
【0015】
搬送部7は、印刷ヘッド6に対し搬送方向Fの上流、且つ 供給部5に対し搬送方向Fの下流に設けられる。つまり搬送部7は、媒体Mの搬送経路Qにおいて、印刷ヘッド6と、供給部5との間に設けられる。本実施形態の搬送部7は、左右方向に延びる軸を中心に回転するピンチローラ71と、搬送ローラ72とを有し、ピンチローラ71と、搬送ローラ72とで媒体Mを上下に挟んでニップ搬送を行う。
【0016】
媒体検出部53は、媒体Mの検出結果を
図4の制御部30に出力する。本実施形態の媒体検出部53は、透過型センサ又は反射型センサである。媒体検出部53が反射型センサである場合、媒体検出部53は、例えば、台紙M1と、ラベルM2との反射率の差によって、ラベルM2の先端を検出する。台紙M1が搬送方向Fに所定間隔で列設された複数の孔を備え、媒体検出部53が透過型センサである場合、媒体検出部53は、例えば、台紙M1に複数の孔を透過するか否かによって、ラベルM2の先端を検出する。
【0017】
搬送部10は、搬送部7よりも搬送方向Fの上流に設けられ、媒体Mを搬送方向F及び戻し方向Bに搬送する。本実施形態の搬送部10は、供給部5に保持されたロールRを回動して、媒体Mを戻し方向Bに搬送して、ロールRに巻き取る。本実施形態の搬送部10は、供給部5の軸部51と取り外し可能に係合する。搬送部10は、供給部5に保持されたロールRを回動して、媒体Mを搬送方向Fに搬送して、ロールRから媒体Mを印刷ヘッド6に向けて繰り出させる。
【0018】
張力付与部8は、搬送経路Qにおいて、供給部5と搬送部7との間の媒体Mに張力を付与する。張力は、媒体Mの進行方向とは逆方向に作用する張力である。張力付与部8は、搬送部7よりも搬送方向Fの上流、且つ、搬送部10よりも搬送方向Fの下流に配置され、媒体Mに当接して媒体Mを搬送方向Fと交差する方向に付勢する。つまり、張力付与部8は、搬送経路Qにおいて、搬送部7と、搬送部10との間に設けられる。張力付与部8は、搬送部7の後方、且つ、供給部5の上方に設けられる。
【0019】
搬送部15は、印刷ヘッド6の下方、且つ、搬送部7に対し搬送方向Fの下流に設けられ、媒体Mを搬送方向Fに搬送する。搬送部15は、駆動ローラ13、従動ローラ14、及び無端ベルト16を備える。駆動ローラ13と、従動ローラ14とは、前後方向に互いに離隔している。無端ベルト16は、駆動ローラ13と、従動ローラ14とに掛け渡される。無端ベルト16の回転に伴い、従動ローラ14が回転する。無端ベルト16の外周面の上端は、搬送部7により媒体Mがニップされる部分の上下位置と略同じであり、印刷ヘッド6の複数のノズル70と対向する。無端ベルト16の外周面の上端は、搬送方向Fにおいて、搬送部7と、搬送部19との間で搬送される媒体Mを下方から、静電気又は負圧により無端ベルト16に吸着させた状態で搬送する。
【0020】
定着ユニット40は、印刷ヘッド6に対し搬送方向Fの下流且つ搬送部19に対し搬送方向Fの上流に配置される。定着ユニット40は、ハロゲンヒータであり、ハロゲンランプ41、反射板42、及び筐体43を有する。筐体43の下壁には、左右方向に沿った開口44が形成されている。定着ユニット40は、開口44を通じて赤外光を輻射し、開口44の直下を通過する媒体Mを加熱する。これにより、印刷ヘッド6により媒体M上に吐出されたインク80は媒体Mに定着する。
【0021】
搬送部19は、印刷ヘッド6及び定着ユニット40に対し搬送方向Fの下流、且つ、読取部45、及び排出口21に対し搬送方向Fの上流に設けられ、媒体Mを搬送方向Fと、戻し方向Bとに搬送する。搬送部19は、左右方向に延びる軸を中心に回転するピンチローラ17と、搬送ローラ18とを有し、ピンチローラ17と、搬送ローラ18とで媒体Mを上下に挟んでニップ搬送を行う。
【0022】
基準板77は、搬送方向Fにおいて、印刷ヘッド6の下流に設けられ、搬送方向Fに直交する幅方向Wに長い板状である。基準板77は、搬送経路Qに対して下方に配置される。基準板77の上面は、読取部45が読み取った画像をシェーディング補正する時の基準となる色を有する。基準板77は、例えば、白色基準板、灰色基準板、及び黒色基準板の何れかである。本実施形態の基準板77は、一例として白色基準板である。基準板77は、付勢部材78により上方に付勢されている。
【0023】
読取部45は、印刷ヘッド6及び搬送部19に対し搬送方向Fの下流、且つ、排出口21に対し搬送方向Fの上流に設けられる。読取部45は、搬送経路Qの直上に位置する。読取部45は、媒体MのラベルM2の表面に印刷された画像を光学的に読み取り、読み取られた画像を示す画像信号を出力する。読取部45は、例えば、媒体Mの幅方向、つまり、左右方向に長いCIS(Contact Image Sensor)等のラインイメージセンサである。読取部45は、レンズアレイ75と、センサ76とを備える。レンズアレイ75は、基準板77に対して所定の相対位置に配置され、幅方向Wの所定領域R1(
図3参照)内で配列される。所定領域R1の幅方向Wの長さは媒体Mの幅方向Wの長さよりも長い。レンズアレイ75は、円柱状のレンズを複数有し、各レンズは、幅方向Wに並べられている。センサ76は、レンズアレイ75を通過した光を検出する。読取部45は、センサ76が検出した光量に応じた階調値を出力する。
【0024】
搬送部48は、読取部45に対し搬送方向Fの下流、且つ、排出口21に対し搬送方向Fの上流に設けられ、媒体Mを搬送方向Fと、戻し方向Bとに搬送する。搬送部48は、左右方向に延びる軸を中心に回転するピンチローラ46と、搬送ローラ47とを有し、ピンチローラ46と、搬送ローラ47とで媒体Mを上下に挟んでニップ搬送を行う。
【0025】
巻取装置60は、ケーブル61及び軸部63を備える。ケーブル61は、巻取装置接続部68に接続可能なプラグ62を、先端部に備える。使用者は、巻取装置60を使用する場合、巻取装置60を印刷装置1の前方に配置し、プラグ62を巻取装置接続部68に差し込む。巻取装置60は、印刷装置1に電気的に接続した状態で、読取部45に対して搬送方向Fの下流に配置される。ケーブル61は、巻取装置接続部68に差し込まれた状態で、印刷装置1から供給される電力を伝送する。軸部63には、媒体Mが巻回される芯材が装着される。使用者は、巻取装置60に媒体Mを巻き取らせる場合、媒体Mを排出口21から引き出し、引き出した媒体Mを芯材に固定する。巻取装置60は、印刷装置1から伝送される電力を受けて、芯材とともに軸部63を回転させる。排出口21から排出される媒体Mが、芯材に巻回される。印刷装置1に巻取装置60が接続される場合、排出口21から排出された媒体Mの搬送経路Qが屈曲し、搬送方向Fが前方から前斜め下方に変化する。
【0026】
図4を参照し、印刷装置1の電気的構成を説明する。印刷装置1は、制御部30と、制御部30に電気的に接続された記憶部31、操作部4、表示部3、駆動部9、11、38、39、49、印刷ヘッド6、ハロゲンランプ41、エンコーダ33から37、媒体検出部53、張力検出部54、読取部45、巻取装置接続部68及び外部機器接続部69とを備える。制御部30は、印刷装置1の制御を司り、印刷ヘッド6、ハロゲンランプ41、駆動部9、11、38、39、49、及び表示部3を制御する。記憶部31は、制御部30による各種プログラムの実行時に必要な各種パラメータ等を記憶するROM、RAM、及びフラッシュメモリ等を含む。
図5に示すように、制御部30は、画像処理回路群90、第一ガンマ補正テーブル93、第二ガンマ補正テーブル94、切替部97、及びDRAM96を備える。画像処理回路群90は、読取部45から出力され画像を処理する複数の回路を含む。本実施形態の画像処理回路群90は、シェーディング補正回路91及びガンマ補正回路92を含む。シェーディング補正回路91は、予め読取部45により基準板77を読み取らせることで作成された補正値を用いて、画像を補正し、画像中の光源の光量の不均一性、及びセンサ76の各画素の感度バラつきなどの影響を低減する。切替部97は、ガンマ補正回路92が参照するガンマ補正テーブルを、第一ガンマ補正テーブル93及び第二ガンマ補正テーブル94の何れかに切り替える。DRAM96は、画像処理回路群90を経た画像を記憶する。
【0027】
駆動部9は、制御部30の制御により、搬送部7を回転駆動する。駆動部11は、制御部30の制御により、搬送部10を回転駆動する。駆動部38は、制御部30の制御により、搬送部15の駆動ローラ13を回転させることで、搬送部15の無端ベルト16を回転させる。駆動部39は、制御部30の制御により、搬送部19を回転駆動する。駆動部49は、制御部30の制御により、搬送部48を回転駆動する。駆動部9、11、38、39、49は各々、例えば、正逆回転可能なステッピングモータである。エンコーダ33は、駆動部9に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ34は、駆動部11に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ35は、駆動部38に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ36は、駆動部39に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。エンコーダ37は駆動部49に駆動量に応じた値を制御部30に入力する。張力検出部54は、張力付与部8により、張力付与部8と、搬送部7との間の媒体Mに付与された張力に応じた検出結果を制御部30に出力する。巻取装置接続部68は、巻取装置60との入出力インタフェースとして機能する。外部機器接続部69は、PC等の外部の情報機器との入出力インタフェースとして機能する。
【0028】
図6から
図8を参照して、印刷装置1の制御部30によって実行されるメイン処理について、
図3の具体例を用いて説明する。制御部30は印刷装置1の電源がONになった場合に、記憶部31からメイン処理を行うためのプログラムを読み出して、以下の処理を実行する。本実施形態のメイン処理は、巻取装置接続部68を介して巻取装置60と連携して実行され、複数の印刷領域に対する印刷が連続して実行されてもよい。以下の説明において、各処理のステップを「S」と略記する。メイン処理開始時において、媒体Mは、搬送部7に挟まれており、媒体Mの属性がユーザにより印刷装置1に入力されている。制御部30は、媒体Mの属性に基づき、媒体Mのうちの、ラベルM2が添付された領域を、印刷領域とする。制御部30は、幅方向Wにおいて、所定領域R1のうち、媒体Mが搬送される領域を除いた余り領域R2、R3を設定する。余り領域R2は、所定領域R1のうち、媒体Mが搬送される領域の左側の領域である。余り領域R3は、所定領域R1のうち、媒体Mが搬送される領域の右側の領域である。本実施形態の余り領域R2の幅方向Wの長さは、余り領域R3の幅方向Wの長さと等しい。
【0029】
図6に示すように、制御部30は、印刷データを取得する(S1)。具体例では、印刷装置1のユーザは、操作部4を操作して識別コードを含む画像を、連続して印刷するための印刷データを指定した上で、印刷開始の指示を入力する。識別コードは、機械により読み取り可能な文字列、記号、模様等の配列によって各種の情報を表すものである。識別コードは、例えば、一次元コード及び二次元コード等でもよい。一次元コードは、例えば、バーコードであってよい。二次元コードは、QRコード(登録商標)、VeriCode(ベリコード)、CPコード、AztecCode(アズテックコード)、及びPDF417等でもよい。制御部30は、印刷開始の指示において指定された印刷データを取得する。
【0030】
制御部30は、印刷制御処理実行前に読取部45で所定領域R1に対応する基準板77を読み取った基準画像に基づき補正値を設定する(S2)。補正値は、シェーディング補正を行う際に用いられる。制御部30は、印刷順序を表す変数Nと、読取順序を表す変数Eとの各々に1を設定する(S3)。制御部30は、搬送部7、10、15、19、48を制御して、媒体Mを搬送方向Fに搬送を開始する(S4)。印刷装置1が巻取装置60と連携してメイン処理を行う場合は、制御部30は、巻取装置60に搬送開始を通知する。巻取装置60は、搬送開始の通知を受領後、所定のタイミングで媒体Mの巻き取りを開始する。
【0031】
制御部30は、媒体検出部53の検出結果に基づき、媒体Mの先端に隣接する、印刷順序が1番目のラベルM2の先端、つまり、印刷順序が1番目の印刷領域の先端を検出し、検出結果を原点位置として記憶する(S5)。印刷装置1が巻取装置60と連携してメイン処理を行う場合は、S5の処理が省略されてよい。制御部30は、媒体Mの先端からN番目の印刷領域が印刷位置に達したかを判断する(S6)。制御部30は、原点位置検出後の駆動部9、11、38、39、49の駆動量と、媒体Mの属性と、原点位置から印刷位置までの距離とに基づき、N番目の印刷領域が印刷位置に達したかを判断する。N番目の印刷領域が印刷位置に達していない場合(S6:NO)、制御部30は、E番目の印刷領域が読取位置に達したかを判断する(S9)。制御部30は、原点位置検出後の駆動部9、11、38、39、49の駆動量と、媒体Mの属性と、原点位置から読取位置までの距離とに基づき、E番目の印刷領域が読取位置に達したかを判断する。E番目の印刷領域が読取位置に達していない場合(S9:NO)、制御部30は処理をS6に戻す。
【0032】
N番目の印刷領域が印刷位置に達した場合(S6:YES)、制御部30は、印刷ヘッド6と搬送部7、10、15、19、48とを制御し、S2で取得された印刷データに従って、媒体MのN番目の印刷領域に、識別コードを含むN番目の画像G(N)を印刷する(S7)。制御部30は、変数Nを1だけインクリメントして(S8)、処理をS6に戻す。
【0033】
E番目の印刷領域が読取位置に達した場合(S9:YES)、制御部30は、搬送部7、10、15、19、48が媒体Mを搬送中に、幅方向Wの長さがレンズアレイ75よりも短い媒体Mに印刷された画像を読取部45で読み取った第一画像を取得する(S10)。制御部30のシェーディング補正回路91は、S10で取得された第一画像について、S2で基準板77を読み取った基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う(S11)。制御部30のガンマ補正回路92は、シェーディング補正後の第一画像を第一ガンマ補正テーブル93を用いてガンマ補正する(S12)。制御部30は、例えば、シェーディング補正、ガンマ補正を経た第一画像を用いて、識別コードを含む画像G(N)の印刷品質を判定する。
【0034】
制御部30は、検査処理を行う(S13)。検査処理は、媒体Mの複数の印刷領域のうちの、注目する印刷領域についてのS10の処理が実行された後、注目する印刷領域の印刷順序が次の印刷領域についてのS10の処理を実行する前に実行される。
図7に示すように、検査処理では、制御部30は、切替部97に切替信号を出力して、ガンマ補正テーブルをS12の処理で用いられた第一ガンマ補正テーブル93から第二ガンマ補正テーブル94に切り替える(S21)。制御部30は、搬送部7、10、15、19、48が媒体Mを搬送中に、幅方向Wにおいて、余り領域R2、R3に対応する基準板77を、読取部45で読み取った第二画像を取得する(S22)。余り領域R2、R3は、レンズアレイ75の所定領域R1のうちの、媒体Mが搬送される領域を除いた領域である。制御部30のシェーディング補正回路91は、S22で取得された第二画像について、S2で基準板77を読み取った基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う(S23)。
【0035】
制御部30のガンマ補正回路92は、シェーディング補正後の第二画像を第二ガンマ補正テーブル94を用いてガンマ補正する(S24)。第二ガンマ補正テーブル94は、第二画像を構成する複数の画素の各々の入力階調値について、入力階調値を出力階調値に変換するテーブルである。
図8に模式的に示すように、第二ガンマ補正テーブル94は、基準板77が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲V1の入力階調値D1を、第一範囲V1の入力階調値D1の変化を強調した出力階調値D2である強調階調値に変換するように設定される。入力階調値D1、出力階調値D2は、0から255の数値で示される。本実施形態の基準板77は、白色基準板であるので、基準板77が正常に読み取られた場合の階調値は255である。第一範囲V1は、一例として、入力階調値D1が245から255の範囲である。強調階調値は、一例として、1から255の間で曲線状に変化する値である。第二ガンマ補正テーブル94は、第一範囲V1に連続する第二範囲V2の入力階調値D1を、入力階調値D1によらず、強調階調値とは異なる出力階調値である固定値に変換するように設定される。第二範囲V2は、一例として、入力階調値D1が0から244の範囲である。固定値は、一例として、0である。制御部30は、入力階調値D1に第二ガンマ補正テーブル94を適用して、出力階調値D2を得る。
【0036】
制御部30は、S24でガンマ補正された第二画像の複数の画素の各々の出力階調値D2の隣接差分D3を算出する(S25)。制御部30は、U番目の画素の階調値から、(U+1)番目の画素の出力階調値D2を差し引いた値を、U番目の隣接差分D3とする。Uが1である場合の隣接差分D3は、0とする。制御部30は、隣接差分D3の絶対値の最大値が閾値以上を判断する(S26)。閾値は、第二ガンマ補正テーブル94を適用することで得られる出力階調値D2を考慮して、適宜設定されればよい。隣接差分D3の絶対値が閾値以上である場合は、読取異常値が検出された場合である。隣接差分D3の絶対値の最大値が閾値以上ではない場合(S26:NO)、制御部30は、検査結果に異常なしを設定する(S29)。
【0037】
図8の具体例では隣接差分D3の絶対値の最大値は60であり、閾値以上と判断される(S26:YES)。この場合、制御部30は、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で隣接差分D3のピークがあるかを確認する(S27)。隣接差分D3のピークは、画素の番号に対する隣接差分D3の変化のグラフGFにおいて、極大値又は極小値として検出される。制御部30は、ピークP1及びピークP2の間隔T1と、ピークP2及びピークP3の間隔T2の差が所定範囲に収まる場合を、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で隣接差分D3のピークがある場合とする。制御部30は、S27の確認結果に基づき、周期性があるか否かを判断する(S28)。周期性がある場合(S28:YES)、制御部30は、検査結果に位置ずれ発生を設定する(S30)。周期性がない場合(S28:NO)、制御部30は、検査結果に汚れ発生を設定する(S31)。S29からS31のいずれかの次に、制御部30は、切替部97に切替信号を出力して、ガンマ補正テーブルをS21の処理で用いられた第二ガンマ補正テーブル94からS12の処理で用いられた第一ガンマ補正テーブル93に切り替える(S32)。制御部30は、以上で検査処理を終了し、処理をメイン処理に戻す。
【0038】
制御部30は、S13の検査処理で設定された検査結果が異常なしであるかを判断する(S14)。検査結果が異常なしではない場合(S14:NO)、制御部30は、検査結果を表示部3に表示してエラーを報知する(S16)。検査結果が異常なしである場合(S14:YES)、制御部30は、変数Eが最後の印刷領域の数かを判断する(S15)。変数Eが最後の印刷領域の数ではない場合(S15:NO)、制御部30は、変数Eを1だけインクリメントして(S17)、処理をS6に戻す。変数Eが最後の印刷領域の数である場合(S15:YES)、又はS16の次に、制御部30は、搬送部7、10、15、19、48を制御して、媒体Mを搬送方向Fへの搬送を停止する(S18)。印刷装置1が巻取装置60と連携してメイン処理を行う場合は、制御部30は、巻取装置60に、搬送停止を通知する。巻取装置60は、搬送停止の通知を受領後、所定のタイミングで媒体Mの巻き取りを停止する。制御部30は、媒体Mを排出する処理を実行後(S19)、以上でメイン処理を終了する。
【0039】
図9を参照して、変形例のメイン処理で実行される検査処理を説明する。制御部30は、変形例のメイン処理の検査処理は、S25を省略する点と、S24、S26、S27の処理とが、上記実施形態の検査処理と互いに異なり、他の処理は、上記実施形態と同じである。以下では、上記実施形態と互いに異なるS24、S26、S27の処理の各々について説明する。
【0040】
制御部30のガンマ補正回路92は、変形例のS24では、上記実施形態の第二ガンマ補正テーブル94とは互いに異なる第二ガンマ補正テーブル95を用いて、シェーディング補正後の第二画像をガンマ補正する(S24)。変形例の第二ガンマ補正テーブル95は、入力階調値D1を、入力階調値D1に応じて、第一出力値、第二出力値、及び第三出力値の何れかの出力階調値D4に変換する。入力階調値D1が、基準板77が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲V11の入力階調値である場合、制御部30は、第二ガンマ補正テーブル95に基づき、入力階調値を第一出力値に変換する。入力階調値D1が、第一範囲に連続する第二範囲V12内の値である場合、制御部30は、第二ガンマ補正テーブル95に基づき、入力階調値D1を第一出力値とは互いに異なる第二出力値に変換する。入力階調値D1が、第二範囲V12に連続し、第一範囲V11とは連続しない第三範囲V13内の値である場合、制御部30は、第二ガンマ補正テーブル95に基づき、入力階調値D1を、第一出力値及び第二出力値とは互いに異なる第三出力値に変換する。変形例の第一範囲V11は、入力階調値D1が250以上且つ255以下の範囲である。第二範囲V12は、入力階調値D1が245以上且つ250未満の範囲である。第二範囲V12には、読取異常値と判断される範囲が設定される。第三範囲V13は、入力階調値D1が0以上且つ245未満の範囲である。第一出力値は、255である。第二出力値は、200である。第三出力値は、0である。S24の処理により、第二画像の入力階調値D1は、出力階調値D4に変換される。
【0041】
制御部30は、変形例のS26では、出力階調値D4が、第一出力値のみを含むかを判断する(S26)。出力階調値D4が第一出力値のみを含む場合には(S26:YES)、制御部30は検査結果に異常なしを設定する(S29)。出力階調値D4が第一出力値のみではない場合(S26:NO)、制御部30は、幅方向Wにおいて、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で第二出力値を検出したかに基づき、周期性を確認する(S27)。制御部30は、第二画像のうちの第二出力値が連続している範囲T11、T13、T15と、第一出力値が連続している範囲T12、T14との各々を比較する。範囲T12は、第二画像のうちの範囲T11、T13の間に位置する。範囲T14は、第二画像のうちの範囲T13、T15の間に位置する。制御部30は、範囲T11、T13、T15が各々同じ又は類似する長さであり、範囲T12、T14が各々同じ又は類似する長さである場合に周期性があると判断する。範囲の長さは、例えば、範囲に含まれる画素数で表される。類似する長さは、一例として、二つの範囲の長さの差の絶対値が1以下である場合を言う。類似する長さの判断基準は、適宜変更されてよい。以降の処理は上記実施形態と同様である。制御部30は、S27の確認結果に基づき、幅方向Wにおいて、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で第二出力値を検出した場合(S28:YES)を位置ずれ発生として検出する(S30)。
【0042】
上記実施形態において、印刷装置1、印刷ヘッド6、制御部30、読取部45、レンズアレイ75、センサ76、及び基準板77は各々、本発明の印刷装置、印刷ヘッド、制御部、読取部、レンズアレイ、センサ、及び基準板の一例である。搬送部7、10、15、19、48は、本発明の搬送部の一例である。S7の処理は、印刷制御処理の一例である。S10の処理は、本発明の第一処理の一例である。S22の処理は、本発明の第二処理の一例である。S11、S23の処理は、本発明の補正処理の一例である。S27、S28、S30の処理は、本発明の検出処理の一例である。S16の処理は、本発明の報知制御処理の一例である。S12、S24の処理は、本発明のガンマ補正処理の一例である。S2の処理は、本発明の補正値設定処理の一例である。
【0043】
上記実施形態の印刷装置1は、搬送部7、10、15、19、48、印刷ヘッド6、基準板77、読取部45、制御部30を備える。搬送部7、10、15、19、48は、長尺状の媒体Mを、搬送方向Fに搬送する、印刷ヘッド6は、搬送方向Fにおいて、搬送部19、48の上流に設けられる。基準板77は、搬送方向Fにおいて、印刷ヘッド6の下流に設けられ、搬送方向Fに直交する幅方向Wに長い。読取部45は、搬送方向Fにおいて、印刷ヘッド6の下流に設けられる。読取部45は、レンズアレイ75及びセンサ76を備える。レンズアレイ75は、基準板77に対して所定の相対位置に配置され、幅方向Wの所定領域R1内で配列される。センサ76は、レンズアレイ75を通過した光を検出する。制御部30は、搬送部7、10、15、19、48と、印刷ヘッド6と、読取部45との各々を制御する。制御部30は、印刷ヘッド6と搬送部7、10、15、19、48とを制御し、媒体Mに画像を印刷する(S4、S7)。制御部30は、搬送部7、10、15、19、48が媒体Mを搬送中に、幅方向Wの長さがレンズアレイ75よりも短い媒体Mに印刷された画像を読取部45で読み取った第一画像を取得する(S10)。制御部30は、搬送部7、10、15、19、48が媒体Mを搬送中に、幅方向Wにおいて、レンズアレイ75の所定領域R1のうちの、媒体Mが搬送される領域を除いた余り領域R2、R3に対応する基準板77を、読取部45で読み取った第二画像を取得する(S22)。制御部30は、S10の処理で取得された第一画像と、S22の処理で取得された第二画像との各々について、基準板77を読み取った基準画像に基づき設定された補正値を用いたシェーディング補正を行う(S11、S23)。制御部30は、S23で補正された第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期の読取異常値を検出することで補正値を設定後にレンズアレイ75とセンサ76との位置関係がずれた場合を位置ずれ発生として検出する(S30)。印刷装置1のS30の処理は、補正値を用いてシェーディング補正が実行される印刷装置1において、読取部45の構成を変えること無く、補正値設定後にレンズアレイ75とセンサ76との位置関係がずれている場合を検出することに貢献する。印刷装置1は、従来のようにレンズアレイ75を加工する手間と加工に伴うコストアップを抑制できる。
【0044】
印刷装置1の制御部30は、S7で搬送方向Fに並ぶ複数の印刷領域の各々に対して連続して実行する。S10の処理は、複数の印刷領域の各々に対して実行される。S22の処理は、複数の印刷領域のうちの、注目する印刷領域についてのS10の処理が実行された後、注目する印刷領域の印刷順序が次の印刷領域についてのS10を実行する前に実行される。印刷装置1のS30の処理は、S10の処理と並列してS22の処理が実行される場合に比べ、制御部30に加わる処理の負荷を軽減することに貢献する。
【0045】
印刷装置1では、余り領域R2、R3は、レンズアレイ75の所定領域R1のうち、幅方向Wの一方側と、他方側との各々について設定される。制御部30は、S27、S28で、S23の処理で補正された第二画像において、幅方向Wの一方側の余り領域R2と、幅方向Wの他方側の余り領域R3との各々について、幅方向Wに一定周期の読取異常値を検出することで位置ずれ発生を検出する(S30)。上記実施形態の読取異常値は、隣接差分D3の絶対値が閾値未満の場合である。位置ずれ発生時には、レンズアレイ75の所定領域R1の全域に亘って、幅方向Wに一定周期の読取異常値が検出される。レンズアレイ75の所定領域R1の一方側のみ又はレンズアレイ75の所定領域R1の他方側のみに読取異常値が検出される場合は、レンズアレイ75とセンサ76との位置関係がずれた場合ではない可能性が高い。印刷装置1のS30の処理は、レンズアレイ75の所定領域R1の一方側及び他方側の何れかのみに余り領域R2、R3が設定される場合に比べ、位置ずれ発生を好適に検出できる。
【0046】
印刷装置1では、制御部30は、第二画像を構成する複数の画素の各々の入力階調値D1について、入力階調値D1を出力階調値D2に変換するガンマ補正テーブル94を用いてガンマ補正する(S24)。制御部30は、ガンマ補正テーブル94に基づき、基準板77が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲V1の入力階調値D1を、第一範囲V1の入力階調値D1の変化を強調した出力階調値D2である強調階調値に変換する。制御部30は、ガンマ補正テーブル94に基づき、第一範囲V1に連続する第二範囲V2の入力階調値D1を、入力階調値D1によらず、強調階調値とは異なる出力階調値D2である固定値に変換する。制御部30は、複数の画素の各々の出力階調値D2の隣接差分D3を算出する(S25)。制御部30は、S27、S28の処理は、幅方向Wにおいて、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で隣接差分D3のピークを検出した場合を位置ずれ発生として検出する(S30)。補正値設定後に、位置ずれ発生時の入力階調値D1と、基準板77が正常に読み取られた場合の入力階調値D1との差は、一般的に所定範囲に収まる。印刷装置1は、所定範囲に応じた第一範囲V1が設定されることで、第一範囲V1内の入力階調値D1の変化を敏感に検出できる。一方、第二範囲V2は、レンズアレイ75とセンサ76との位置関係がずれた場合の検出に不要な範囲であるので、印刷装置1は、隣接差分D3のピークを検出することにより、第二範囲V2の入力階調値D1が、異常値として誤検出されることを回避できる。故に印刷装置1は、比較的簡単な処理で、位置ずれ発生を精度よく検出できる。
【0047】
印刷装置1は、表示部3を備える。制御部30は、S30の処理で位置ずれ発生が検出された場合、S7の実行を停止し、表示部3にエラーを報知させる(S16、S18)。印刷装置1のS16の処理は、位置ずれ発生状態でS7の処理が継続されることを防ぐことに貢献する。印刷装置1は、印刷装置1のユーザに、レンズアレイ75とセンサ76との位置関係を戻す、又は補正値を再設定する等の対応を促すことができる。
【0048】
印刷装置1では、制御部30は、シェーディング補正後の第一画像を第一ガンマ補正テーブル93を用いてガンマ補正し、シェーディング補正後の第二画像を第一ガンマ補正テーブル93とは異なる第二ガンマ補正テーブル94を用いてガンマ補正処理を実行する(S12、S24)。制御部30は、S23及びS24の処理で補正された第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期の読取異常値を検出することで位置ずれ発生を検出する。
【0049】
印刷装置1では、S7の処理実行前に読取部45で所定領域R1に対応する基準板77を読み取った基準画像に基づき補正値を設定する(S2)。制御部30は、基準画像に基づき補正値を設定することで、幅方向Wにおいて、印刷領域を含む所定領域R1全体を補正可能な補正値を設定できる。
【0050】
変形例の印刷装置1では、制御部30は、第二画像を構成する複数の画素の各々の入力階調値D1について、入力階調値D1を出力階調値D4に変換するガンマ補正テーブル95を用いてガンマ補正を行う。ガンマ補正テーブル95は、基準板77が正常に読み取られた場合の階調値を含む第一範囲V11の入力階調値D1を第一出力値に変換し、第一範囲V11に連続する第二範囲V12の入力階調値D1を、第一出力値とは互いに異なる第二出力値に変換し、第二範囲V12に連続し、第一範囲V11とは連続しない第三範囲V13の入力階調値D1を、第一出力値及び第二出力値とは互いに異なる第三出力値に変換するテーブルである。制御部30は、S27、S28で、幅方向Wにおいて、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で第二出力値を検出した場合を位置ずれ発生として検出する(S30)。補正値設定後に、位置ずれ発生時の入力階調値D1と、基準板77が正常に読み取られた場合の入力階調値D1との差は、一般的に所定範囲に収まる。変形例の印刷装置1は、位置ずれ発生時の入力階調値D1の範囲を第二範囲V12として設定し、第二画像の全体に亘って幅方向Wに一定周期で第二出力値を検出した場合を位置ずれ発生として検出する。故に変形例の印刷装置1は、比較的簡単な処理で、位置ずれ発生を精度よく検出できる。
【0051】
本発明の印刷装置は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更が加えられてもよい。例えば、以下の変形が適宜加えられてもよい。本発明は印刷装置の他、印刷方法、印刷プログラム、及び印刷プログラムを記録したコンピュータ可読媒体等の他の態様で実現されてもよい。
【0052】
媒体Mの構成は適宜変更されてよく、例えば、用紙に刻まれたミシン目に沿って折りたたまれているファンフォールド紙でもよい。ロールRは、紙管Kを有さず、供給部5に装着可能にロール状に巻回されてもよい。印刷ヘッド6の構成は適宜変更されてよく、インクの種類及び数は適宜変更されてよい。印刷ヘッド6は、電子写真式又は感熱式のサーマルヘッドでもよい。定着ユニット40は、印刷装置1の印刷方式に応じて、省略されてもよいし、構成が変更されてもよい。印刷装置1は、媒体Mを切断するよう構成された切断部を備えてもよい。切断部は、ユーザのマニュアル操作で媒体Mを切断してもよいし、自動で媒体Mを切断してもよい。搬送部10、15、搬送部7、搬送部48の少なくとも何れかは、必要に応じて省略されてもよいし、構成が変更されてもよい。読取部45は、例えば、CCD(Charge Coupled Devices)等の他の装置であってもよい。印刷装置1は、巻取装置60と接続不能でもよい。
【0053】
図6のメイン処理を実行させるための指令を含むプログラムは、制御部30がプログラムを実行するまでに、印刷装置1の記憶装置に記憶されればよい。従って、プログラムの取得方法、取得経路及びプログラムを記憶する機器の各々は、適宜変更してもよい。制御部30が実行するプログラムは、ケーブル又は無線通信を介して、他の装置から受信し、フラッシュメモリ等の記憶装置に記憶されてもよい。他の装置は、例えば、PC、及びネットワーク網を介して接続されるサーバを含む。
【0054】
印刷装置1のメイン処理の各ステップは、制御部30によって実行される例に限定されず、一部又は全部が他の電子機器(例えば、ASIC)によって実行されてもよい。メイン処理の各ステップは、複数の電子機器、例えば、複数のCPUによって分散処理されてもよい。メイン処理の各ステップは、必要に応じて順序の変更、ステップの省略、及び追加が可能である。印刷装置1上で稼動しているオペレーティングシステム(OS)等が、制御部30からの指令に基づきメイン処理の一部又は全部を行う態様も、本発明の範囲に含まれる。例えば、メイン処理に以下の変更が適宜加えられてもよい。
【0055】
制御部30は、S24を省略し第二画像に対してガンマ補正を行わずに、検出処理を実行してもよい。この場合、制御部30は、例えば、入力階調値が読取異常値と判断される場合を抽出し、当該抽出された読取異常値が一定周期で検出されたかどうかに基づき、位置ずれ発生を検出してもよい。制御部30は、S12、S21、S32の処理を省略し、制御部30は、第一画像についてガンマ補正を行わなくてもよい。制御部30はS10の第一処理とS22の第二処理とを交互に行わなくてもよい。例えば、制御部30は、S10の処理を所定回数行った後、第二処理を実行してもよい。制御部30は、S10の第一処理とS22の第二処理とを同時に行ってもよい。所定領域R1のうち、幅方向Wの一方側の端部のみに、余り領域が設定されてもよい。所定領域R1のうち、幅方向Wの両端部に余り領域R2、R3が設定される場合に、S22で余り領域R2、R3の一方のみを読み取った第二画像を用いて、位置ずれ発生を検出してもよいし、余り領域R2を検査対象にする場合と、余り領域R3を検査対象にする場合とを所定の周期で切り替えてもよい。ガンマ補正テーブル94、95における入力階調値の第一範囲、第二範囲、及び第三範囲、出力階調値は、適宜変更されてよい。制御部30は、表示部3に替えてスピーカを備え、位置ずれ発生を音声で報知してもよい。制御部30は、S16の処理を省略してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1:印刷装置、3:表示部、7、10、15、19、48:搬送部、30:制御部、45:読取部、75:レンズアレイ、76:センサ、77:基準板、93:第一ガンマ補正テーブル、94:第二ガンマ補正テーブル