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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140789
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】位置決め装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 3/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G05D3/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052123
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000219314
【氏名又は名称】東レエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】奈良場 聰
(72)【発明者】
【氏名】寺田 勝美
【テーマコード(参考)】
5H303
【Fターム(参考)】
5H303AA06
5H303BB02
5H303BB07
5H303BB12
5H303CC01
5H303DD04
5H303FF06
5H303FF11
5H303FF20
5H303GG11
5H303HH02
5H303HH07
5H303KK01
(57)【要約】
【課題】位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる位置決め装置を提供する。
【解決手段】位置決め装置はX軸移動装置及びY軸移動装置と、移動位置を計測する撮像装置と、各移動装置に対して位置制御信号Sを出力し、対象物の計測位置Pmを取得する制御装置と、を有する。制御装置は、目標位置Ptと計測位置Pmとに基づいて位置制御信号Sの基準校正値Cを算出する第1校正制御S1と、基準校正値Cに所定値を加減した仮校正値によって校正された校正位置制御信号Scに基づいて移動された加算側校正計測位置Pmaと減算側校正計測位置Pmsとのうち目標位置Ptとの差が小さい校正計測位置を選択し、前記選択した校正計測位置に前記対象物を移動させた校正位置制御信号Scの算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値Cに設定する第2校正制御S2と、を行う。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電動アクチュエータを有し、前記電動アクチュエータによって対象物を移動させる対象物移動部と、
前記対象物の移動位置を計測する対象物位置計測部と、
前記対象物移動部に対して、前記対象物を目標位置に向けて移動させる位置制御信号を出力し、前記対象物位置計測部が計測した前記対象物の計測位置を取得する制御部と、を有する位置決め装置であって、
前記制御部は、
前記目標位置と前記計測位置とに基づいて前記位置制御信号の基準校正値を算出する第1校正制御と、
前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分増加させた加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の移動位置を計測した加算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得し、
前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分減少させた減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の移動位置を計測した減算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得し、
前記加算側校正計測位置と前記減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が小さい校正計測位置を選択し、前記選択した校正計測位置に前記対象物を移動させた校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値に設定する第2校正制御と、を行う、
位置決め装置。
【請求項2】
請求項1に記載の位置決め装置において、
前記制御部は、
前記第2校正制御において、前記加算側校正計測位置と前記目標位置との差または前記減算側校正計測位置と前記目標位置との差が所定範囲に含まれていない場合、前記第2校正制御において設定された前記新たな基準校正値に基づいて、前記第2校正制御を行う、
位置決め装置。
【請求項3】
請求項1また2に記載の位置決め装置において、
前記制御部は、
前記対象物移動部に対して、異なる値の複数の加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した複数の校正位置制御信号をそれぞれ出力し、前記対象物移動部によって移動された前記対象物のそれぞれの移動位置を計測した複数の加算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得し、
前記対象物移動部に対して、異なる値の複数の減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号をそれぞれ出力し、前記対象物移動部によって移動された前記対象物のそれぞれの移動位置を計測した複数の減算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得し、
前記複数の加算側校正計測位置と前記複数の減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が最も小さい校正計測位置に前記対象物を移動させた校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値に設定する第2校正制御と、を行う、
位置決め装置。
【請求項4】
請求項2に記載の位置決め装置において、
前記制御部は、
第2校正制御において、前記新たな基準校正値が設定された場合、前記対象物移動部に対して、前記新たな基準校正値に設定された加算側仮校正値または減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって前記対象物を目標位置に向けて移動させた際の加算側校正計測位置または減算側校正計測位置と前記目標位置との差に基づいて新たな加算側仮校正値及び減算側仮校正値を算出する、
位置決め装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の位置決め装置において、
前記対象物移動部は、
前記対象物をX軸方向に移動させるX軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向に垂直なY軸方向に移動させるY軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向及び前記Y軸方向に垂直なZ軸方向に移動させるZ軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向、前記Y軸方向及び前記Z軸方向のいずれか一つの軸回りに回転させる電動アクチュエータとのうち少なくとも一つを有する、
位置決め装置。
【請求項6】
少なくとも一つの電動アクチュエータを有し、前記電動アクチュエータによって対象物を移動可能な対象物移動部の校正方法であって、
目標位置と計測位置とに基づいて位置制御信号の基準校正値を算出する第1校正工程と、
前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分増加させた加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の加算側校正計測位置を計測する加算側校正計測工程と、
前記基準校正値よりも所定値分減少させた減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を前記対象物移動部に対して出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の減算側校正計測位置を計測する減算側校正計測工程と、
前記加算側校正計測位置と前記減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が小さい校正計測位置に前記対象物を移動させた前記校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値とする第2校正工程と、を有する、
校正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は対象物を位置決めする位置決め装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置、インクジェット塗布装置等の製造装置は、基板等を載置するステージと、前記基板等にICチップを接続するボンダ装置、インク等を塗布する塗布装置等の加工装置とを有している。前記製造装置は、ステージ上の基板等に対する加工装置の位置を相対的に位置決めする位置決め装置によってステージまたは加工装置を任意の位置に移動可能に構成されている。前記位置決め装置は、前記ステージまたは前記加工装置をそれぞれ移動させるアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御装置とを有する。また、前記アクチュエータは、前記ステージまたは前記加工装置の位置を計測する計測装置を有している。前記位置決め装置は、前記計測装置からの計測信号に基づいて前記ステージまたは前記加工装置を目標位置に移動させる。
【0003】
このような位置決め装置は、数μm以下の高い位置決め精度が求められる。一方、位置決め装置は、アクチュエータの精度のばらつき、機構部分の摩耗等による経年変化、環境温度による構成部材の熱膨張または熱収縮等により指令値に対する位置決め位置にずれが生じる。よって、前記製造装置は、前記計測装置の計測値に基づいて前記ステージまたは前記加工装置を目標位置に移動させても所定の精度で位置決めできない可能性がある。そこで、アクチュエータの精度のばらつき、機構部分の摩耗等による経年変化、環境温度による構成部材の熱膨張または熱収縮等によって生じる位置決めのずれを抑制するための校正方法が知られている。
【0004】
特許文献1に記載の部品実装装置は、所定位置に位置決めした基板に搭載ヘッドによってピックアップした部品を搭載する。前記部品実装装置は、校正用基板所定位置に位置決めする位置決め手段と、前記搭載ヘッドによりピックアップした校正用部品を制御データに基づいて前記校正用基板上の目標搭載位置に搭載する校正用部品搭載手段と、前記校正用基板上に搭載された前記校正用部品の実際の搭載位置と前記目標搭載位置とのずれを検出して制御データの校正を行う校正手段とを有する。前記部品実装装置は、前記校正用基板と前記校正用部品とを用いて前記校正用基板に対する前記校正用部品の目標搭載位置と搭載位置とのずれに基づいて前記制御データを校正する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-227047号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の部品実装装置の位置決め精度は、前記校正用基板及び前記校正用部品を用いた校正精度に影響される。よって、前記部品実装装置の校正は、部品を基板に実装する際に必要とする位置決め精度よりも高い校正精度が求められる。一方、前記部品実装装置は、微細化された前記部品を前記基板上の目標位置に搭載するために前記基板に対する前記部品の位置決め精度を高めなければならない。よって、前記部品実装装置は、必要な位置決め精度が高くなるにつれて前記校正における誤差の影響によって必要な位置決め精度が得られない場合があった。
【0007】
本発明の目的は、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる位置決め装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、校正の誤差を抑制して、位置決め精度を高めることができる位置決め装置の構成について検討した。鋭意検討の結果、本発明者は、以下のような構成に想到した。
【0009】
本発明の実施形態に係る位置決め装置は、少なくとも一つの電動アクチュエータを有し、前記電動アクチュエータによって対象物を移動可能な対象物移動部と、前記対象物の移動位置を計測する対象物位置計測部と、前記対象物移動部に対して前記対象物を目標位置に移動させる位置制御信号を出力し、前記対象物位置計測部が計測した前記対象物の計測位置を取得する制御部と、を有する位置決め装置である。
【0010】
前記制御部は、前記目標位置と前記計測位置とに基づいて前記位置制御信号の基準校正値を算出する第1校正制御を行う。更に、前記制御部は、前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分増加させた加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の移動位置を計測した加算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得する。前記制御部は、前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分減少させた減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の移動位置を計測した減算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得する。更に、前記制御部は、前記加算側校正計測位置と前記減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が小さい校正計測位置を選択し、前記選択した校正計測位置に前記対象物を移動させた校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値に設定する。
【0011】
上述の構成では、位置決め装置は、基準校正値を求める第1校正制御と新たな基準校正値を算出する第2校正制御とを実施する。前記位置決め装置は、前記第2校正制御において、加算側仮校正値によって校正された校正位置制御信号に基づいて移動された対象物の加算側校正計測位置と目標位置との差、減算側仮校正値によって校正された校正位置制御信号に基づいて移動された前記対象物の減算側校正計測位置と前記目標位置との差の比較によって、計測位置を前記目標位置に一致させる真の校正値と基準校正値との関係が明確になる。よって、前記位置決め装置は、前記加算側仮校正値及び前記減算側仮校正値のうち前記計測位置をより前記目標位置に近づける校正位置制御信号の算出に用いられた仮校正値を新たな基準校正値として選択することで校正の誤差を小さくすることができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0012】
他の観点によれば、本発明の位置決め装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記第2校正制御において、前記加算側校正計測位置と前記目標位置との差または前記減算側校正計測位置と前記目標位置との差が所定範囲に含まれていない場合、前記第2校正制御において設定された前記新たな基準校正値に基づいて、前記第2校正制御を行う。
【0013】
上述の構成では、前記制御部は、前記第2校正制御において算出した前記加算側仮校正値に基づく加算側校正計測位置と前記目標位置の差及び前記減算側仮校正値に基づく減算側校正計測位置と前記目標位置の差のうち少なくとも一方の差が所定範囲に含まれるまで前記第2校正制御を行う。よって、前記第2校正制御において設定される新たな基準校正値による位置決め精度が所定の精度以上に維持される。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0014】
他の観点によれば、本発明の位置決め装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記対象物移動部に対して、異なる値の複数の加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した複数の校正位置制御信号をそれぞれ出力し、前記対象物移動部によって移動された前記対象物のそれぞれの移動位置を計測した複数の加算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得する。前記制御部は、前記対象物移動部に対して、異なる値の複数の減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号をそれぞれ出力し、前記対象物移動部によって移動された前記対象物のそれぞれの移動位置を計測した複数の減算側校正計測位置を前記対象物位置計測部から取得する。更に、前記制御部は、前記複数の加算側校正計測位置と前記複数の減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が最も小さい校正計測位置に前記対象物を移動させた校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値に設定する。
【0015】
上述の構成では、前記制御部は、予め設定した複数の仮校正値によって校正された複数の校正位置制御信号に基づいて移動された複数の加算側校正計測位置と前記目標位置との差及び複数の減算側校正計測位置と前記目標位置との差を算出するので、真の校正値が複数ある場合でも適切な校正値を基準校正値に設定することができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0016】
他の観点によれば、本発明の位置決め装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、第2校正制御において、前記新たな基準校正値が設定された場合、前記対象物移動部に対して、前記新たな基準校正値に設定された加算側仮校正値または減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって前記対象物を目標位置に向けて移動させた際の加算側校正計測位置または減算側校正計測位置と前記目標位置との差に基づいて新たな加算側仮校正値及び減算側仮校正値を算出する。
【0017】
上述の構成では、前記制御部は、前記目標位置と前記加算側校正計測位置との差、または前記目標位置と前記減算側校正計測位置との差に基づいて前記基準校正値に加算及び減算する所定値を設定する。前記制御部は、例えば、前記目標位置と前記加算側校正計測位置との差、または前記目標位置と前記減算側校正計測位置との差に比例させて前記所定値を増加及び減少させる。つまり、前記目標位置と前記校正計測位置との関係から、前記基準校正値が真の校正値から比較的離れていると考えられる場合、前記基準校正値と加算側仮校正値との差、及び前記基準校正値と減算側仮校正値との差を大きくする。よって、前記加算側校正計測位置または前記減算側校正計測位置と前記目標位置との誤差が大きいほど前記加算側校正計測位置または減算側校正計測位置を前記目標位置に向かって大きく移動させることができる。また、前記基準校正値が真の校正値に比較的近い場合、前記基準校正値と加算側仮校正値との差、及び前記基準校正値と減算側仮校正値との差を小さくする。よって、加算側校正計測位置または減算側校正計測位置と前記目標位置との差が小さいほど加算側校正計測位置または減算側校正計測位置を前記目標位置に向かって緻密に移動させることができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0018】
他の観点によれば、本発明の位置決め装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記対象物移動部は、前記対象物をX軸方向に移動させるX軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向に垂直なY軸方向に移動させるY軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向及び前記Y軸方向に垂直なZ軸方向に移動させるZ軸電動アクチュエータと、前記対象物を前記X軸方向、前記Y軸方向及び前記Z軸方向のいずれか一つの軸回りに回転させる電動アクチュエータとのうち少なくとも一つを有する。
【0019】
上述の構成では、前記位置決め装置は、前記対象物移動部が有する少なくともX軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び軸回りの移動についての基準校正値をそれぞれ真の校正値に近づけることができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0020】
本発明の実施形態に係る校正方法は、少なくとも一つの電動アクチュエータを有し、前記電動アクチュエータによって対象物を移動可能な対象物移動部の校正方法である。前記校正方法は、前記目標位置と前記計測位置とに基づいて前記位置制御信号の基準校正値を算出する第1校正工程を有する。また、前記校正方法は、前記対象物移動部に対して、前記基準校正値よりも所定値分増加させた加算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の加算側校正計測位置を計測する加算側校正計測工程を有する。また、前記校正方法は、前記基準校正値よりも所定値分減少させた減算側仮校正値によって前記位置制御信号を校正した校正位置制御信号を前記対象物移動部に対して出力し、前記校正位置制御信号に基づいて、前記対象物移動部によって移動された前記対象物の減算側校正計測位置を計測する減算側校正計測工程を有する。また、前記校正方法は、前記加算側校正計測位置と前記減算側校正計測位置とのうち前記目標位置との差が小さい校正計測位置に前記対象物を移動させた前記校正位置制御信号の算出に用いた仮校正値を新たな基準校正値とする第2校正工程を有する。
【0021】
上述の構成では、加算側校正計測工程において取得した対象物の加算側校正計測位置と、減算側校正計測工程において取得した前記対象物の減算側校正計測位置と、前記対象物の目標位置とに基づいて、前記第2校正工程において前記対象物の移動位置を前記目標位置に一致させる真の校正値と前記基準校正値との関係が明確になる。よって、前記基準校正値に基づいて算出された校正位置制御信号よりも前記計測位置を前記目標位置に近づける仮校正値によって校正することができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0022】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施形態のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0023】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0024】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な電気的接続または結合を含むことができる。
【0025】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。
【0026】
[対象物]
本明細書において、対象物とは、対象物移動部によって移動される部材を意味する。前記対象物は、例えば、基板、素子、部品、校正用及び検証用の基板等を含む。前記対象物は、前記対象物移部によって移動可能な程度の大きさの部材である。
【0027】
[電動アクチュエータ]
本明細書において、電動アクチュエータとは、電気的エネルギーを機械的エネルギーに変換する装置である。前記電動アクチュエータは、電気により磁界を発生させるコイルを有する固定子と、前記固定子の磁界によって前記固定子に対して移動する可動子とを有する電動モータ、リニアモータ等を含む。
【0028】
[対象物位置計測部]
本明細書において、対象物位置計測部とは、計測する対象物の位置情報を出力する装置を意味する。前記対象物位置計測部は、例えば、対象物移動部に搭載されたスケールと、前記スケールの目盛を検出するカメラと、前記カメラが撮像した画像から前記対象物の位置を算出する処理装置等を含む。または、前記対象物位置計測部は、例えば、前記対象物移動部に搭載された検出器と、移動しない基部に設けられた前記検出器によって目盛りを検出されるスケールである。または、前記対象物位置計測部は、例えば、前記対象物移動部に搭載された位置検出用マークと、前記マークを検出するカメラと、前記カメラが撮像した画像から対象物の位置を算出する処理装置等を含む。前記対象物位置計測部は、例えば光学式または磁気式のリニアスケール、2Dスケール等を含む。また、前記対象物位置計測部は、前記対象物移動部に搭載された検証用基板、検証用チップ等を含む。
【0029】
[校正]
本明細書において、校正とは、計器又は測定系の示す値、若しくは実量器又は標準物質の表す値と、標準によって実現される値との間の関係を確定する一連の作業を意味する。本実施形態の位置決め装置の校正は、前記対象物移動部の目標位置と前記対象物移動部の計測位置との間の関係を検出する。
【0030】
[校正値]
本明細書において、校正値とは、対象物を目標位置に向けて移動させた際に実際に位置する移動位置を前記目標位置に一致させるための制御係数を意味する。前記校正値は、前記対象物を移動させる対象物移動に対して入力される位置制御信号に対して作用させる。
【0031】
[仮校正値]
本明細書において、仮校正値とは、校正値の値を意図的に増加及び減少させた仮の校正値を意味する。本実施形態において、加算側仮校正値は、校正量を所定値分増加させた仮の校正値である。本実施形態において、減算側仮校正値は、校正量を所定値分減少させた仮の校正値である。
【発明の効果】
【0032】
本発明の一実施形態によれば、少なくとも一つの電動アクチュエータを有し、前記電動アクチュエータによって対象物を移動させる対象物移動部と、前記対象物の移動位置を計測する対象物位置計測部と、前記対象物移動部に対して前記対象物を目標位置に移動させる位置制御信号を出力し、前記対象物位置計測部が計測した前記対象物の計測位置を取得する制御部と、を有する位置決め装置において、より高精度な電動アクチュエータ及び対象物位置計測部を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1図1は、本発明の実施形態における位置決め装置のZ軸方向に見た平面図及びX軸方向に見た側面図である。
図2図2は、本発明の実施形態における位置決め装置のY軸方向に見た側面図である。
図3図3は、本発明の実施形態における位置決め装置の第1校正制御における計測座標を取得する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。
図4図4は、本発明の実施形態における位置決め装置の第1校正制御における基準校正値を算出する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。
図5図5は、本発明の実施形態における位置決め装置の第2校正制御における基準校正値を算出する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。
図6図6は、本発明の実施形態における位置決め装置の第1校正制御及び第2校正制御における各工程を示すフローチャートである。
図7図7は、本発明の実施形態における位置決め装置での目標位置と位置決め後の測定位置との誤差を示す模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態における位置決め装置での基準校正値の更新の流れを示す模式図である。
図9図9は、本発明の実施形態における位置決め装置での第1校正制御のフローチャートである。
図10図10は、本発明の実施形態1における位置決め装置での第2校正制御のフローチャートである。
図11図11は、本発明の実施形態2における位置決め装置での第2校正制御のフローチャートである。
図12図12は、本発明の実施形態3における位置決め装置での第2校正制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下で、本発明に係る位置決め装置について図面を参照しながら説明する。各図において、同一部分には同一の符号を付して、その同一部分の説明は繰り返さない。各図中の構成部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び各構成部材の寸法比率等を忠実に表していない。なお、以下の本発明の実施の形態の説明において、X軸方向及びY軸方向は、水平面上の方向であるものとする。Y軸方向は、X軸方向に対して垂直な方向である。Z軸方向は、X軸方向及びY軸方向に対して垂直な方向である。ただし、この方向の定義により、各実施形態における位置決め装置の使用時の向きを限定する意図はない。
【0035】
また、以下の説明において、“固定”、“接続”、“接合”及び“取り付ける”等(以下、固定等)の表現は、部材同士が直接、固定等されている場合だけでなく、他の部材を介して固定等されている場合も含む。すなわち、以下の説明において、固定等の表現には、部材同士の直接的及び間接的な固定等の意味が含まれる。
【0036】
[実施形態1]
<位置決め装置1の構成>
図1から図5を用いて、本発明に係る位置決め装置の実施形態1である位置決め装置1について説明する。図1は、本発明の実施形態における位置決め装置1、1A、1BのZ軸方向に見た平面図及びX軸方向に見た側面図である。図2は、位置決め装置1、1A、1BのY軸方向に見た側面図である。図3は、位置決め装置1、1A、1Bの第1校正制御S1における計測位置Pmを取得する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。図4は、位置決め装置1、1A、1Bの第1校正制御S1における基準校正値Cを算出する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。図5は、位置決め装置1、1A、1Bの第2校正制御S2における新たな基準校正値Cを算出する際の制御信号及び位置情報の伝達を示すブロック図である。以下の実施形態にいて、位置決め装置を作動させる際の周囲の温度である環境温度は、一定であることが望ましい。環境温度が一定の場合、位置決め装置は、温度変化による誤差を低減でき、より高精度に校正を行うことができる。
【0037】
図1及び図2に示すように、位置決め装置1は、対象物を位置決めする。位置決め装置1は、図示しない半導体製造装置等の製造装置に設けられる。位置決め装置1は、対象物移動部を構成するX軸移動装置2と、対象物移動部を構成するY軸移動装置6と、対象物位置計測部を構成する撮像装置10(図2参照)と、対象物位置計測部を構成する計測用基板11と、制御部を構成する制御装置12(図3参照)とを有する。
【0038】
X軸移動装置2は、位置決め対象物をX軸方向の任意の位置に案内する装置である。X軸移動装置2は、例えば、図示しない製造装置のベース上に設けられている。X軸移動装置2は、X軸電動アクチュエータであるX軸リニアモータ3と、X軸テーブル4と、X軸スケール5とを有している。
【0039】
X軸リニアモータ3は、X軸テーブル4を移動させる駆動力を発生させるアクチュエータである。X軸リニアモータ3は、X軸レール3aとX軸ブロック3bと、図示しないX軸推力発生装置及びアンプ等を有する。X軸レール3aは、前記ベースに固定されている。X軸ブロック3bは、X軸レール3aに沿って移動可能にX軸レール3aに支持されている。
【0040】
X軸推力発生装置は、電磁力によって推力を発生する。前記X軸推力発生装置は、固定子と可動子とから構成されている。前記固定子は、X軸レール3aに固定されている。前記可動子は、X軸ブロック3bに固定されている。前記X軸推力発生装置は、前記ベースに対して、X軸ブロック3bがX軸レール3aの延伸方向に移動するように推力を発生する。
【0041】
X軸テーブル4は、X軸リニアモータ3によってX軸方向に移動されるテーブルである。X軸テーブル4は、十分な剛性を有する平板状の部材である。X軸テーブル4は、X軸ブロック3bに固定されている。X軸テーブル4には、Y軸移動装置6が搭載される。
【0042】
X軸スケール5は、X軸ブロック3bの位置を検出する。つまり、X軸スケール5は、前記ベースに対するX軸ブロック3bの位置を検出する。X軸スケール5は、例えば、光学式のリニアスケールである。
【0043】
このように構成されるX軸移動装置2は、X軸リニアモータ3のX軸スケール5が検出するX軸リニアモータ3のX軸ブロック3bの位置に基づいて、X軸ブロック3bに固定されたX軸テーブル4をX軸リニアモータ3のX軸レール3aの延伸方向における任意の位置に移動する。X軸移動装置2は、制御装置12から入力される位置制御信号Sに含まれるX軸位置制御信号Sxに基づいて、X軸テーブル4を移動させる。
【0044】
Y軸移動装置6は、位置決め対象物をY軸方向の任意の位置に案内する装置である。Y軸移動装置6は、X軸移動装置2のX軸テーブル4上に設けられている。Y軸移動装置6は、Y軸電動アクチュエータであるY軸リニアモータ7と、Y軸テーブル8と、Y軸スケール9とを有している。
【0045】
Y軸リニアモータ7は、Y軸テーブル8を移動させる駆動力を発生させるアクチュエータである。Y軸リニアモータ7は、Y軸レール7aとY軸ブロック7bと、図示しないY軸推力発生装置及びアンプ等を有する。Y軸レール7aは、X軸テーブル4に固定されている。Y軸ブロック7bは、Y軸レール7aに沿って移動可能にY軸レール7aに支持されている。
【0046】
Y軸推力発生装置は、電磁力によって推力を発生する。前記Y軸推力発生装置は、固定子と可動子とから構成されている。前記固定子は、Y軸レール7aに固定されている。前記可動子は、Y軸ブロック7bに固定されている。前記Y軸推力発生装置は、X軸テーブル4に対して、Y軸ブロック7bがY軸レール7aの延伸方向に移動するように推力を発生する。
【0047】
Y軸テーブル8は、Y軸リニアモータ7によってY軸方向に移動されるテーブルである。Y軸テーブル8は、十分な剛性を有する平板状の部材である。Y軸テーブル8は、Y軸リニアモータ7のY軸ブロック7bに固定されている。Y軸テーブル8には、位置決め対象物または計測用基板11が搭載される。
【0048】
Y軸スケール9は、Y軸推力発生装置の固定子に対する可動子の位置を検出する。つまり、Y軸スケール9は、X軸テーブル4に対するY軸ブロック7bの位置を検出する。Y軸スケール9は、例えば、光学式のリニアスケールである。
【0049】
このように構成されるY軸移動装置6は、Y軸リニアモータ7のY軸スケール9が検出するY軸リニアモータ7のY軸ブロック7bの位置に基づいて、Y軸ブロック7bに固定されたY軸テーブル8をY軸リニアモータ7のY軸レール7aの延伸方向における任意の位置に移動する。Y軸移動装置6は、制御装置12から入力される位置制御信号Sに含まれるY軸位置制御信号Syに基づいて、Y軸テーブル8を移動させる。
【0050】
Y軸移動装置6のY軸テーブル8は、Y軸移動装置6のY軸リニアモータ7によってY軸方向の任意の位置に移動される。また、Y軸移動装置6は、X軸移動装置2のX軸リニアモータ3によってX軸方向の任意の位置に移動される。よって、Y軸テーブル8は、X軸リニアモータ3とY軸リニアモータ7とによってXY平面上の任意の位置に移動される。
【0051】
撮像装置10は、Y軸テーブル8の位置を測定する。撮像装置10は、例えば、Y軸テーブル8上の位置決め対象物または計測用基板11を撮像可能なCCDカメラ及び図示しない位置計測装置等から構成されている。撮像装置10は、前記ベースに支持されている。撮像装置10のCCDカメラは、X軸リニアモータ3とY軸リニアモータ7との可動範囲内においてXY平面上の任意の位置に移動された位置決め対象物または計測用基板11を撮像することができる。撮像装置10の位置計測装置は、CCDカメラが撮像した画像から、CCDカメラに対する位置決め対象物または計測用基板11の任意の点のX軸座標及びY軸座標を算出する。つまり、撮像装置10は、CCDカメラの位置を基準として位置決め対象物またはY軸テーブル8の移動後のX軸計測座標Pmx、Y軸計測座標Pmyを計測する対象物位置計測部として機能する。
【0052】
計測用基板11は、基板上の位置を示す目盛りを有する検証用の基板である。計測用基板11は、熱膨張率が比較的小さいガラス等から構成されている。計測用基板11は、Y軸テーブル8に搭載することができる。計測用基板11は、基準点からX方向に所定間隔で並ぶ目盛りと基準点からY方向に所定間隔で並ぶ目盛りとを有する。つまり、計測用基板11は、基板上の基準点からの任意の位置のX座標とY座標として示している。計測用基板11は、Y軸テーブル8に搭載している場合、Y軸テーブル8のX軸計測座標Pmx、Y軸計測座標Pmyを示している。計測用基板11は、位置決め装置1の検証用及び校正用の計測用基板として使用可能である。
【0053】
図3から図5に示すように、制御部である制御装置12は、X軸移動装置2、Y軸移動装置6及び撮像装置10を制御する。制御装置12は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている。または、制御装置12は、ワンチップのLSI等からなる構成であってもよい。制御装置12は、X軸移動装置2、Y軸移動装置6及び撮像装置10の動作を制御するために種々のプログラム及びデータが格納されている。
【0054】
制御装置12は、位置決め対象物または計測用基板11が搭載されたY軸テーブル8を目標位置Ptに位置付けるための位置制御信号SをX軸移動装置2及びY軸移動装置6に対して、出力可能に構成される。目標位置Ptは、X軸目標座標Ptx及びY軸目標座標Ptyを含む。位置制御信号Sには、目標位置PtおけるX軸目標座標Ptxに対するX軸位置制御信号Sx及び目標位置Ptおける及びY軸目標座標Ptyに対するY軸位置制御信号Syを含む。
【0055】
制御装置12は、X軸移動装置2のX軸リニアモータ3(図1参照)及びY軸移動装置6のY軸リニアモータ7(図1参照)に電気的に接続されている。制御装置12は、X軸リニアモータ3に対して、位置制御信号SにおけるX軸位置制御信号Sxを送信する。また、制御装置12は、Y軸リニアモータ7に対して、位置制御信号SにおけるY軸位置制御信号Syを送信する。
【0056】
制御装置12は、撮像装置10に電気的に接続されている。制御装置12は、撮像装置10に対して、Y軸テーブル8上の位置決め対象物または計測用基板11の計測位置Pmを算出する制御信号を出力する。計測位置Pmは、X軸計測座標Pmx及びY軸計測座標Pmyを含む。制御装置12は、撮像装置10が算出した位置決め対象物または計測用基板11が搭載されたY軸テーブル8の計測位置PmにおけるX軸計測座標Pmx及びY軸計測座標Pmyを取得する。
【0057】
図4に示すように、制御装置12は、目標位置Ptと計測位置Pmとに基づいて計測位置Pmを目標位置Ptに近づけるための位置制御信号Sの校正値である基準校正値Cを算出する第1校正制御S1を実施可能である。基準校正値Cは、X軸位置制御信号Sxを校正するX軸基準校正値CxとY軸位置制御信号Syを校正するY軸基準校正値Cyとを含む。
【0058】
図5に示すように、制御装置12は、計測位置Pmを目標位置Ptに更に近づけるための位置制御信号Sの校正値である加算側仮校正値Ca及び減算側仮校正値Csを算出する第2校正制御S2を実施可能である。加算側仮校正値Caは、基準校正値C(図5参照)を所定値分増加させた仮校正値である。減算側仮校正値Csは、基準校正値Cを所定値分減少させた仮校正値である。加算側仮校正値Caは、X軸位置制御信号Sxを校正するX軸加算側仮校正値CaxとY軸位置制御信号Syを校正するY軸加算側仮校正値Cayとを含む。減算側仮校正値Csは、X軸位置制御信号Sxを校正するX軸減算側仮校正値CsxとY軸位置制御信号Syを校正するY軸減算側仮校正値Csyとを含む。
【0059】
このように構成される位置決め装置1は、位置決め対象物をX軸目標座標Ptx及びY軸目標座標Ptyに位置決めするために、制御装置12からX軸移動装置2に対して、X軸位置制御信号Sxを出力し、Y軸移動装置6に対して、Y軸位置制御信号Syを出力する。位置決め装置1は、X軸位置制御信号Sxに基づいたX軸移動装置2による移動及びY軸位置制御信号Syに基づいたY軸移動装置6の移動によって、位置決め対象物をX軸目標座標Ptxに向かって移動させる。また、位置決め装置1は、第1校正制御S1において基準校正値Cを算出し、第2校正制御S2において加算側仮校正値Ca及び減算側仮校正値Csによって基準校正値Cを更新する。
【0060】
<位置決め装置1における校正方法>
次に、図3から図10を用いて、Y軸テーブル8に搭載された計測用基板11を移動可能なX軸移動装置2及びY軸移動装置6によって構成される対象物移動部の校正方法である第1校正制御S1及び第2校正制御S2について説明する。図6は、位置決め装置1、1A、1Bの第1校正制御S1及び第2校正制御S2における各工程を示すフローチャートである。図7は、位置決め装置1、1A、1Bでの目標位置Ptと位置決め後の計測位置Pmとの誤差を示す模式図である。図8は、位置決め装置1での基準校正値Cの更新の流れを示す模式図である。図9は、位置決め装置1、1A、1Bでの第1校正制御S1のフローチャートである。図10は、位置決め装置1での第2校正制御S2のフローチャートである。
【0061】
以下の各実施形態の説明について、Y軸移動装置6におけるY軸計測座標PmyをY軸目標座標Ptyに近づけるための第1校正制御S1及び第2校正制御S2、またはX軸移動装置2及びY軸移動装置6における計測位置Pmを目標位置Ptに近づける第1校正制御S1及び第2校正制御S2は、同様の制御であるため説明を省略する。また、位置決め装置1のY軸テーブル8には、計測用基板11が搭載されている。
【0062】
図6に示すように、第1校正制御S1は、第1校正工程S11を有する。第2校正制御S2は、加算側校正計測工程S21と、減算側校正計測工程S22と、第2校正工程S23とを有する。
【0063】
図3図4図6及び図7に示すように、第1校正制御S1の第1校正工程S11は、目標位置Ptと計測位置Pmとの誤差(図7参照)に基づいてX軸位置制御信号SxのX軸基準校正値Cxを算出する工程である。本実施形態において、位置決め装置1の制御装置12は、X軸移動装置2によって移動されたX軸テーブル4(図1参照)及びY軸テーブル8(図1参照)(以下、単に「Y軸テーブル8」と記す)のX軸目標座標Ptxと、撮像装置10によって撮像された計測用基板11(図1参照)の目盛から算出されたY軸テーブル8のX軸計測座標Pmxとに基づいて、X軸移動装置2に対して出力されたX軸位置制御信号Sxを校正するX軸基準校正値Cxを算出する。X軸基準校正値Cxは、X軸移動装置2によって移動されたY軸テーブル8のX軸計測座標PmxがX軸目標座標Ptxに近づくように、X軸位置制御信号Sxを校正するための校正値である。
【0064】
本実施形態において、位置決め装置1の制御装置12は、撮像装置10によって撮像された画像に基づいて、計測位置Pmに含まれるX軸計測座標Pmxを算出する。前記画像上の座標は、撮像装置10が有するCCDイメージセンサ等の画素数によって定まる。よって、X軸計測座標Pmxは、前記画像上の座標を計測用基板11における座標に変換して算出される。
【0065】
一方、前記画像は、撮像装置10のレンズを通過した光を受光したCCDイメージセンサに基づいて作成されるので撮像装置10のレンズ、レンズの位置、CCDイメージセンサ等の固体差が含まれている。更に、X軸計測座標Pmxは、撮像装置10の固体差に加えて、X軸移動装置2及びY軸移動装置6の構造上の誤差及び制御上の誤差を含んでいる。制御装置12は、X軸移動装置2、Y軸移動装置6及び撮像装置10による誤差を校正するために、X軸目標座標PtxとX軸計測座標Pmxとに基づいて前記画像の1画素当りの分解能(1画素当りのX方向の移動量)であるX軸基準校正値Cxを算出する。
【0066】
図5及び図6に示すように、第2校正制御S2の加算側校正計測工程S21は、X軸基準校正値Cxよりも所定値分増加させたX軸加算側仮校正値Caxを算出する工程と、X軸加算側仮校正値Caxによって校正されたX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、Y軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けて移動させる工程と、移動されたY軸テーブル8(図1参照)の移動位置におけるX軸加算側校正計測座標Pmaxを計測する工程を含む。
【0067】
本実施形態において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸位置制御信号SxをX軸加算側仮校正値Caxによって校正したX軸校正位置制御信号Sxcを出力する。X軸校正位置制御信号Sxcは、校正位置制御信号Scに含まれる。X軸移動装置2は、X軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸目標座標Ptxに向かってY軸テーブル8を移動させる。制御装置12は、X軸移動装置2によって移動されたY軸テーブル8の移動位置におけるX軸加算側校正計測座標Pmaxを撮像装置10によって計測する。
【0068】
なお、校正位置制御信号Scには、Y軸移動装置6に対して、Y軸位置制御信号SyをY軸加算側仮校正値CayまたはY軸減算側仮校正値Csyによって校正したY軸校正位置制御信号Sycが含まれる。
【0069】
第2校正制御S2の減算側校正計測工程S22は、X軸基準校正値Cxよりも所定値分減少させたX軸減算側仮校正値CsxによってX軸位置制御信号Sxを校正したX軸校正位置制御信号Sxcを算出する工程と、X軸減算側仮校正値Csxによって校正されたX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、Y軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けて移動させる工程と、移動されたY軸テーブル8の移動位置におけるX軸減算側校正計測座標Pmsxを計測する工程とを含む。
【0070】
本実施形態において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸位置制御信号SxをX軸減算側仮校正値Csxによって校正したX軸校正位置制御信号Sxcを出力する。X軸校正位置制御信号Sxcは、校正位置制御信号Scに含まれる。X軸移動装置2は、X軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸目標座標Ptxに向かってY軸テーブル8を移動させる。制御装置12は、X軸移動装置2によって移動されたY軸テーブル8の移動位置におけるX軸減算側校正計測座標Pmsxを撮像装置10によって計測する。
【0071】
第2校正制御S2の第2校正工程S23は、X軸計測座標PmxとX軸目標座標Ptxの差よりも小さく、且つX軸加算側校正計測座標PmaxとX軸減算側校正計測座標Pmsxとのうち、X軸目標座標Ptxとの差が小さい校正計測座標を選択する工程と、Y軸テーブル8を前記選択した校正計測座標に移動させたX軸校正位置制御信号Sxcの算出に用いた仮校正値を新たなX軸基準校正値Cxとする工程とを含む。
【0072】
図8に示すように、本実施形態において、制御装置12は、例えば、X軸計測座標PmxとX軸目標座標Ptxの差Dよりも小さく、且つX軸目標座標PtxとX軸減算側校正計測座標Pmsxとの差DsよりもX軸目標座標PtxとX軸加算側校正計測座標Pmaxとの差Daが小さい場合、X軸加算側仮校正値CaxとX軸減算側仮校正値CsxのうちX軸加算側仮校正値Caxを選択する。制御装置12は、選択したX軸加算側仮校正値Caxを新たなX軸基準校正値Cxに設定する。
【0073】
次に、図9及び図10を用いて、本発明に係る位置決め装置1の実施形態1による第1校正制御S1及び第2校正制御S2について具体的に説明する。なお、本実施形態において、X軸目標座標PtxとX軸減算側校正計測座標Pmsxとの差Ds及びX軸目標座標PtxとX軸加算側校正計測座標Pmaxとの差Daは、X軸計測座標PmxとX軸目標座標Ptxの差D(図8参照)よりも小さいものとする。
【0074】
図9に示すように、第1校正制御S1に含まれる第1校正工程S11のステップS111において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸テーブル4に搭載されたY軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに移動させるX軸位置制御信号Sxを出力する。X軸移動装置2は、X軸スケール5の出力に基づいてX軸テーブル4をX軸目標座標Ptxに向けて移動させる。制御装置12は、ステップをステップS112に移行させる。
【0075】
ステップS112において、制御装置12は、撮像装置10に対して、移動したY軸テーブル8の移動位置である計測位置Pmを算出する制御信号を出力する。撮像装置10は、前記制御信号に従ってY軸テーブル8の計測用基板11を撮像する。更に、制御装置12は、撮像した計測用基板11の目盛からY軸テーブル8の移動位置である計測位置Pmを算出する。制御装置12は、撮像装置10からX軸計測座標Pmxを取得する。制御装置12は、ステップをステップS113に移行させる。
【0076】
ステップS113において、制御装置12は、X軸目標座標Ptxと撮像装置10から取得したX軸計測座標Pmxとに基づいて、X軸位置制御信号Sxを校正するX軸基準校正値Cxを算出する。制御装置12は、第1校正工程S11を含む第1校正制御S1を終了し、第2校正制御S2の加算側校正計測工程S21に移行させる(図10参照)。
【0077】
図10に示すように、第2校正制御S2における加算側校正計測工程S21のステップS211において、制御装置12は、第1校正制御S1(図9参照)において算出したX軸基準校正値Cxを所定値分増加させたX軸加算側仮校正値Caxを算出する。制御装置12は、ステップをステップS212に移行させる。
【0078】
ステップS212において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸位置制御信号SxをX軸加算側仮校正値Caxによって校正したX軸校正位置制御信号Sxcを出力する。X軸移動装置2は、Y軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けて移動させる。制御装置12は、ステップをステップS213に移行させる。
【0079】
ステップS213において、制御装置12は、撮像装置10に対して、移動したY軸テーブル8の移動位置であるX軸計測座標Pmxを算出する制御信号を出力する。撮像装置10は、前記制御信号に従って計測用基板11を撮像する。更に、撮像装置10は、撮像した計測用基板11の目盛からY軸テーブル8の移動位置である加算側校正計測位置(校正計測位置)Pmaに含まれるX軸加算側校正計測座標Pmaxを算出する。制御装置12は、撮像装置10からX軸加算側校正計測座標Pmaxを取得する。制御装置12は、ステップを減算側校正計測工程S22のステップS221に移行させる。
【0080】
減算側校正計測工程S22のステップS221において、制御装置12は、第1校正制御S1(図9参照)において算出したX軸基準校正値Cxを所定値分減少させたX軸減算側仮校正値Csxを算出する。制御装置12は、ステップをステップS222に移行させる。
【0081】
ステップS222において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸位置制御信号SxをX軸減算側仮校正値Csxによって校正したX軸校正位置制御信号Sxcを出力する。X軸移動装置2は、Y軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けて移動させる。制御装置12は、ステップをステップS223に移行させる。
【0082】
ステップS223において、制御装置12は、撮像装置10に対して、移動したY軸テーブル8のX軸計測座標Pmxを算出する制御信号を出力する。撮像装置10は、前記制御信号に従って計測用基板11を撮像する。更に、撮像装置10は、撮像した計測用基板11の目盛からY軸テーブル8の移動位置である減算側校正計測位置(校正計測位置)Pmsに含まれるX軸減算側校正計測座標Pmsxを算出する。撮像装置10は、制御装置12に対して、算出したX軸減算側校正計測座標Pmsxを出力する。制御装置12は、ステップを第2校正工程S23のステップS231に移行させる。
【0083】
第2校正工程S23のステップS231において、制御装置12は、X軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxとの差Da及びX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxとの差Dsを算出する。制御装置12は、ステップをステップS232に移行させる。
【0084】
ステップS232において、制御装置12は、差Daが差Ds以下であるか否かを判定する。
その結果、差Daが差Ds以下であると判定した場合、制御装置12は、ステップをステップS233に移行させる。
一方、差Dsが差Da未満であると判定した場合、制御装置12は、ステップをステップS234に移行させる。
【0085】
ステップS233において、制御装置12は、X軸加算側仮校正値Caxを新たなX軸基準校正値Cxに設定する。制御装置12は、ステップをステップS235に移行させる。
【0086】
ステップS234において、制御装置12は、X軸減算側仮校正値Csxを新たなX軸基準校正値Cxに設定する。制御装置12は、ステップをステップS235に移行させる。
【0087】
ステップS235において、制御装置12は、差Daまたは差Dsが所定範囲内であるか否かを判定する。
その結果、差Daまたは差Dsが所定範囲内であると判定した場合、制御装置12は、第2校正制御S2を終了させる。
一方、差Daまたは差Dsが所定範囲外であると判定した場合、制御装置12は、ステップをステップS211に移行させる。すなわち、制御装置12は、再び加算側校正計測工程S21、減算側校正計測工程S22及び第2校正工程S23を実施する。
【0088】
このように構成される位置決め装置1は、基準校正値Cを算出する第1校正制御S1と新たな基準校正値Cを算出する第2校正制御とを実施する。制御装置12は、第2校正制御S2において、基準校正値Cから所定値分増加させた加算側仮校正値Caに基づく加算側校正計測位置Pmaと、基準校正値Cから所定値分減少させた減算側仮校正値Csに基づく減算側校正計測位置Pmsとの比較によって、計測位置Pmを目標位置Ptに一致させる真の校正値Ctに対する基準校正値Cの関係が明確になる。よって、制御装置12は、基準校正値Cよりも計測位置Pmを目標位置Ptに近づける校正位置制御信号Scを算出する加算側仮校正値Caまたは減算側仮校正値Csを新たな基準校正値Cとして選択することで校正の誤差を小さくすることができる。
【0089】
また、制御装置12は、第2校正制御S2において算出した加算側仮校正値Caに基づく加算側校正計測位置Pmaと目標位置Ptの差及び減算側仮校正値Csに基づく減算側校正計測位置Pmsと目標位置Ptの差のうち少なくとも一方の差が所定範囲に含まれるまで第2校正制御S2を行う。よって、第2校正制御S2において設定される新たな基準校正値Cによる位置決め精度が所定の精度以上に維持される。これにより、より高精度なX軸移動装置2とY軸移動装置6及び撮像装置10を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0090】
また、加算側校正計測工程S21において取得した加算側校正計測位置Pmaと、減算側校正計測工程S22において取得した減算側校正計測位置Pmsとに基づいて、第2校正工程S23において計測位置Pmを目標位置Ptに一致させる真の校正値Ctに対する基準校正値Cの関係が明確になる。よって、加算側仮校正値Caまたは減算側仮校正値Csは、基準校正値Cに基づいて算出された校正位置制御信号Scよりも計測位置Pmを目標位置Ptに近づける校正位置制御信号Scを算出することができる。これにより、より高精度なX軸移動装置2、Y軸移動装置6及び撮像装置10を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0091】
[実施形態2]
以下に、図11を用いて、本発明に係る位置決め装置の実施形態2に係る位置決め装置1Aついて説明する。図11は、本発明の実施形態2における位置決め装置1Aでの第2校正制御S3のフローチャートである。以下の各実施形態において、実施形態1と同様の構成には同一の符号を付して説明を省略し、実施形態1と異なる部分についてのみ説明する。
【0092】
<位置決め装置1Aにおける校正方法>
X軸移動装置2(図1参照)及びY軸移動装置6(図1参照)の校正方法である第1校正制御S1及び第2校正制御S3について説明する。実施形態2に係る校正方法は、予め定めた複数の異なる値の仮校正値による校正を行う点が実施形態1の校正方法と異なる。なお、第1校正制御S1において、X軸基準校正値Cxが算出されているものとする(図9参照)。
【0093】
図11に示すように、第2校正制御S3の加算側校正計測工程S31は、X軸基準校正値Cxよりもそれぞれ異なる所定値分増加させた複数のX軸加算側仮校正値CaxによってX軸位置制御信号Sxを校正した複数のX軸校正位置制御信号Sxcを算出する工程と、算出した複数のX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸移動装置2によってY軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けてそれぞれ移動させる工程と、移動されたY軸テーブル8の移動位置におけるX軸加算側校正計測座標Pmaxをそれぞれ計測する工程とを含む(ステップS311からステップS313参照)。
【0094】
本実施形態において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸基準校正値Cxよりも第1の所定量分増加させた第1X軸加算側仮校正値Cax1によってX軸位置制御信号Sxを校正した第1X軸校正位置制御信号Sxc1を出力する。同様に、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、第1X軸加算側仮校正値Cax1と異なる値の第2X軸加算側仮校正値Cax2によってX軸位置制御信号Sxを校正した第2X軸校正位置制御信号Sxc2を出力する(ステップS311、S312参照)。
【0095】
制御装置12は、第1X軸校正位置制御信号Sxc1に基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8の移動位置を撮像装置10によって計測する。制御装置12は、撮像装置10から第1X軸加算側校正計測座標Pmax1を取得する。同様に、制御装置12は、第2X軸校正位置制御信号Sxc2に基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8の移動位置を撮像装置10によって計測する。制御装置12は、撮像装置10から第2X軸加算側校正計測座標Pmax2を取得する(ステップS313参照)。
【0096】
第2校正制御S3の減算側校正計測工程S32は、X軸基準校正値Cxよりもそれぞれ異なる所定値分減少させた複数のX軸加減算側仮校正値CsxによってX軸位置制御信号Sxを校正した複数のX軸校正位置制御信号Sxcを算出する工程と、算出した複数のX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸移動装置2によってY軸テーブル8をX軸目標座標Ptxに向けてそれぞれ移動させる工程と、移動されたY軸テーブル8の移動位置におけるX軸減算側校正計測座標Pmsxをそれぞれ計測する工程とを含む(ステップS321からステップS323参照)。
【0097】
本実施形態において、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、X軸基準校正値Cxよりも第1の所定量分減少させた第1X軸減算側仮校正値Csx1によってX軸位置制御信号Sxを校正した第1X軸校正位置制御信号Sxc1を出力する。同様に、制御装置12は、X軸移動装置2に対して、第1X軸減算側仮校正値Csx1と異なる値の第2X軸減算側仮校正値Csx2によってX軸位置制御信号Sxを校正した第2X軸校正位置制御信号Sxc2を出力する(ステップS321、S322参照)。
【0098】
制御装置12は、第1X軸校正位置制御信号Sxc1に基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8の移動位置を撮像装置10によって計測する。制御装置12は、撮像装置10から第1X軸減算側校正計測座標Pmsx1を取得する。同様に、制御装置12は、第2X軸校正位置制御信号Sxc2に基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8の移動位置を撮像装置10によって計測する。制御装置12は、撮像装置10から第2X軸減算側校正計測座標Pmsx2を取得する(ステップS323参照)。
【0099】
第2校正制御S3の第2校正工程S33は、第1X軸加算側校正計測座標Pmax1とX軸目標座標Ptxとの差Da1及び第2X軸加算側校正計測座標Pmax2とX軸目標座標Ptxとの差Da2、第1X軸減算側校正計測座標Pmsx1とX軸目標座標Ptxとの差Ds1及び第2X軸減算側校正計測座標Pmsx2とX軸目標座標Ptxとの差Ds2を算出する工程と、算出した差Da1、Da2、Ds1、Ds2のうち最も小さい校正計測座標にY軸テーブル8を移動させたX軸校正位置制御信号Sxcの仮校正値を新たなX軸基準校正値Cxとする工程とを含む。
【0100】
本実施形態において、制御装置12は、例えば、X軸目標座標Ptxと第1X軸加算側校正計測座標Pmax1との差Da1が最も小さい場合、第1X軸加算側仮校正値Cax1を選択する。制御装置12は、選択した第1X軸加算側仮校正値Cax1を新たなX軸基準校正値Cxに設定する(ステップS331からステップS333参照)。
【0101】
このように構成することで、位置決め装置1Aの制御装置12は、予め設定した複数の異なる値のX軸加算側仮校正値Cax及び複数の異なる値のX軸減算側仮校正値Csxによって校正した複数の校正位置制御信号Scに基づいて移動されたY軸テーブル8の計測位置PmとX軸目標座標Ptxとの差を算出するので、真の校正値Ctが複数ある場合でも適切な校正値を基準校正値に設定することができる。これにより、より高精度なX軸移動装置2とY軸移動装置6及び撮像装置10を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0102】
[実施形態3]
以下に、図12を用いて、本発明に係る位置決め装置の実施形態3に係る位置決め装置1Bついて説明する。図12は、本発明の実施形態3における位置決め装置1Bでの第2校正制御のフローチャートである。
【0103】
<位置決め装置1Bにおける校正方法>
X軸移動装置2(図1参照)及びY軸移動装置6(図1参照)の校正方法である第1校正制御S1及び第2校正制御S4について説明する。実施形態3に係る校正方法は、目標位置Ptと計測位置Pmとの差に基づいて仮校正値を算出する点が実施形態1の校正方法と異なる。なお、第1校正制御S1において、X軸基準校正値Cxが算出されているものとする(図9参照)。また、第2校正制御S4において、実施形態1に記載の工程によってX軸加算側仮校正値CaxまたはX軸減算側仮校正値Csxに基づいた新たなX軸基準校正値Cxが算出されているものとする。
【0104】
図12に示すように、第2校正制御S4において、新たなX軸基準校正値Cxを設定された後の加算側校正計測工程S41は、新たなX軸基準校正値Cxに設定されたX軸加算側仮校正値CaxまたはX軸減算側仮校正値Csxによって校正されたX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸移動装置2によってY軸テーブル8を移動する工程と、移動されたY軸テーブル8のX軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxの差DaまたはX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxの差Dsを算出する工程と、差Da及び差Dsに基づいて新たなX軸加算側仮校正値Caxを算出する工程とを含む(ステップS411からステップS414参照)。
【0105】
つまり、加算側校正計測工程S41は、X軸校正位置制御信号Sxcによって移動されたY軸テーブル8のX軸計測座標PmxとX軸目標座標Ptxの差に基づいて新たなX軸加算側仮校正値Caxを算出する。新たな加算側仮校正値Caxは、例えば、X軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxの差に比例した値に設定する。
【0106】
本実施形態において、新たなX軸基準校正値Cxを設定した加算側校正計測工程S41における制御装置12は、新たなX軸基準校正値Cxを設定する際に算出したY軸テーブル8のX軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxの差DaまたはX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxの差Dsに比例する新たなX軸加算側仮校正値Caxを算出する。制御装置12は、X軸移動装置2に対して、新たなX軸加算側仮校正値CaxによってX軸位置制御信号Sxを校正した新たなX軸校正位置制御信号Sxcを出力する(ステップS411からステップS413参照)。
【0107】
制御装置12は、新たなX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8のX軸加算側校正計測座標Pmaxを撮像装置10によって計測し、取得する(ステップS414参照)。
【0108】
第2校正制御S4において、新たなX軸基準校正値Cxを設定した後の減算側校正計測工程S42は、加算側校正計測工程S41と同様にして新たなX軸減算側仮校正値Csxを算出する工程を含む(ステップS421からステップS423参照)。
【0109】
本実施形態において、新たなX軸基準校正値Cxを設定した減算側校正計測工程S42における制御装置12は、新たなX軸基準校正値Cxを設定する際に算出したY軸テーブル8のX軸加算側校正計測座標PmaxまたはX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxの差に比例する新たなX軸減算側仮校正値Csxを算出する。制御装置12は、X軸移動装置2に対して、新たなX軸減算側仮校正値CsxによってX軸位置制御信号Sxを校正した新たなX軸校正位置制御信号Sxcを出力する(ステップS421からステップS422参照)。
【0110】
制御装置12は、新たなX軸校正位置制御信号Sxcに基づいて、X軸移動装置2によってX軸目標座標Ptxに向かって移動されたY軸テーブル8のX軸減算側校正計測座標Pmsxを撮像装置10によって計測する(ステップS423参照)。
【0111】
第2校正制御S4の第2校正工程S43は、X軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxとの差Da、及びX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxとの差Dsを算出する工程と、算出した差Da及び差DsのうちX軸目標座標Ptxとの差が小さい校正計測座標にY軸テーブル8を移動させたX軸校正位置制御信号Sxcの算出に用いた仮校正値を次の新たなX軸基準校正値Cxとする工程とを含む(ステップS431からステップS433参照)。
【0112】
このように構成することで、制御装置12は、目標位置Ptと計測位置Pmと基づいて、仮校正値を算出するための基準校正値Cに加減する所定値を設定する。制御装置12は、例えば、目標位置Ptと計測位置Pmとの差が比較的離れている場合(例えば、閾値よりも離れている場合等)、前記所定値を増加させる。つまり、制御装置12は、基準校正値Cと真の校正値Ctとの誤差が大きい場合(例えば、閾値よりも大きい場合等)、基準校正値Cに対する加算側仮校正値Ca及び減算側仮校正値Csを大きくする。よって、制御装置12は、基準校正値Cを前記真の校正値Ctに素早く近づけることができる。また、制御装置12は、例えば、目標位置Ptと計測位置Pmとの差が比較的小さい場合(例えば、閾値よりも近い場合等)、前記所定値を減少させる。つまり、制御装置12は、基準校正値Cと真の校正値Ctとの誤差が小さい場合(例えば、閾値よりも小さい場合等)、基準校正値Cに対する加算側仮校正値Ca及び減算側仮校正値Csの設定値を小さくする。よって、基準校正値Cを前記真の校正値Ctに緻密に近づけることができる。
【0113】
位置決め装置1は、例えば、基板に対してチップを位置決めする際、基準校正値Cを真の校正値Ctに近づけることで、前記基板に対する前記チップの搭載位置と目標位置との誤差を抑制し、より高精度なアライメントを行うことができる。これにより、より高精度な電動アクチュエータ及び撮像部14を用いることなく、位置決め精度に対する校正の誤差の影響を抑制することができる。
【0114】
(その他の実施形態)
なお、上述の実施形態1において、位置決め装置1は、X軸加算側校正計測座標PmaxとX軸目標座標Ptxとの差Da及びX軸減算側校正計測座標PmsxとX軸目標座標Ptxとの差Dsを算出する。更に、位置決め装置1は、差Daまたは差Dsが所定範囲内である場合、新たなX軸基準校正値Cxに設定し、第2校正制御S2を終了する。しかしながら、位置決め装置は、第1校正制御において、目標座標と計測座標との差が所定範囲内である場合、目標座標と計測座標とに基づいて前記基準校正値を算出し、前記第2校正制御を行わなくてもよい。
【0115】
また、上述の全ての実施形態において、位置決め装置1は、差Daまたは差Dsが所定範囲に含まれるまで第2校正制御S2を繰り返す。しかしながら、位置決め装置は、差Daまたは差Dsが所定範囲に含まれていなくても第2校正制御S2を終了してもよい。位置決め装置は、例えば任意の回数分、第2校正制御S2を繰り返したことを条件として第2校正制御S2を終了してもよい。
【0116】
また、上述の全ての実施形態において、位置決め装置1、1A、1Bは、X軸移動装置2とY軸移動装置6とによって位置決め対象物を移動可能に構成されている。しかしながら、位置決め装置は、少なくとも1つの駆動装置を有していればよい。前記位置決め装置は、1つの駆動装置によって位置決め対象物を移動させる構成でも、3つ以上の前記駆動装置によって前記位置決め対象物を移動させる構成でもよい。
【0117】
また、上述の全ての実施形態において、位置決め装置1、1A、1Bは、基準校正値Cに対する加算側仮校正値Ca及び減算側仮校正値Csによって校正した校正位置制御信号Scを用いることでX軸基準校正値Cx及びY軸基準校正値Cyを真の校正値Ctに近づけることができる。加えて、位置決め装置は、Z軸方向、X軸まわり、Y軸まわり及びZ軸まわりの回転について、既知の方法で算出した回転基準校正値を加算側仮校正値及び減算側仮校正値によって校正可能である。前記位置決め装置は、前記加算側仮校正値及び前記減算側仮校正値によって校正した位置制御信号を用いることでZ軸基準校正値及び各軸の回転基準校正値及び各軸の回転中心基準校正値を真の校正値Ctに近づけることができる。
【0118】
また、上述の全ての実施形態において、位置決め装置1、1A、1Bは、一定の環境温度において位置決めを行う。しかしながら、位置決め装置は、位置決め対象物が移動される様々な環境温度に応じた補正式または補正テーブルを有していてもよい。前記位置決め装置は、環境温度の影響を考慮して基準校正値をより高精度に更新することができる。
【0119】
また、上述の全ての実施形態において、位置決め装置1のX軸移動装置2は、電動アクチュエータであるX軸リニアモータ3によって位置決め対象物を移動させている。また、Y軸移動装置6は、電動アクチュエータであるY軸リニアモータ7によって位置決め対象物を移動させている。しかしながら、X軸移動装置及びY軸移動装置は、電動アクチュエータであるサーボモータ等とボールねじ等の直動装置とから構成されていてもよい。
【0120】
また、上述の全ての実施形態において、X軸移動装置2及びY軸移動装置6は、光学式リニアスケールであるX軸スケール5及びY軸スケール9を有している。しかしながら、X軸移動装置及びY軸移動装置は、可動子の位置を計測できるものであれば、磁気式リニアスケール、光学式または磁気式のロータリエンコーダでもよい。
【0121】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上述した実施の形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変形して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0122】
1、1A、1B 位置決め装置
2 X軸移動装置
3 X軸リニアモータ
3a X軸レール
3b X軸ブロック
4 X軸テーブル
5 X軸スケール
6 Y軸移動装置
7 Y軸リニアモータ
7a Y軸レール
7b Y軸ブロック
8 Y軸テーブル
9 Y軸スケール
10 撮像装置
11 計測用基板
12 制御装置
Pt 目標位置
Ptx X軸目標座標
Pty Y軸目標座標
Pmx X軸計測座標
Pmy Y軸計測座標
Pmax X軸加算側校正計測座標
Pmsx X軸減算側校正計測座標
C 基準校正値
Ct 真の校正値
Ca 加算側仮校正値
Cs 減算側仮校正値
Cx X軸基準校正値
Cax X軸加算側仮校正値
Csx X軸減算側仮校正値
Cy Y軸基準校正値
Cay Y軸加算側仮校正値
Csy Y軸減算側仮校正値
Cax1 第1X軸加算側仮校正値
Cax2 第2X軸加算側仮校正値
Csx1 第1X軸減算側仮校正値
Csx2 第2X軸減算側仮校正値
S 位置制御信号
Sc 校正位置制御信号
Sx X軸位置制御信号
Sy Y軸位置制御信号
Sxc X軸校正位置制御信号
Syc Y軸校正位置制御信号
S1 第1校正制御
S2 第2校正制御
Sxc1 第1X軸校正位置制御信号
Sxc2 第2X軸校正位置制御信
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12