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  • 特開-光学ガラス及び光学素子 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140808
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】光学ガラス及び光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/064 20060101AFI20241003BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C03C3/064
C03C3/089
G02B1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052148
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000128784
【氏名又は名称】株式会社オハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100137589
【弁理士】
【氏名又は名称】右田 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100160864
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 政治
(74)【代理人】
【識別番号】100158698
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 基樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 実紗
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA04
4G062BB01
4G062DA04
4G062DA05
4G062DB01
4G062DB02
4G062DB03
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4G062HH17
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4G062KK06
4G062KK07
4G062KK08
4G062MM02
4G062NN02
4G062NN03
(57)【要約】
【課題】
屈折率(n)が1.64000以下であり、アッベ数(ν)が43.00以下でありながら、部分分散比が小さく、品質の高い光学ガラス及び光学素子を提供する。
【解決手段】
屈折率(n)が1.64000以下であり、アッベ数(ν)が43.00以下であり、酸化物基準の質量%でSiO成分が20.00~50.00%、B成分が0%超25.0%、質量比ZrO/Nbが0.200~0.900、である光学ガラス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率(n)が1.64000以下であり
アッベ数(ν)が43.00以下であり、
酸化物基準の質量%で
SiO成分が20.00~50.00%、
成分が0%超25.0%、
質量比ZrO/Nbが0.200~0.900、
である光学ガラス。
【請求項2】
請求項1に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラス、光学素子に関する。
【背景技術】
【0002】
光学ガラス、光学素子は、異なる光学領域のレンズを組み合わせてカメラや映像装置などの光学特性を向上させる用途や、光学機器中に搭載し様々な光学設計を実現する用途などに用いることができる。
【0003】
光学系は、その大小はあるが、収差と呼ばれるにじみを含んでいる。この収差は単色収差と色収差に分類されるが、特に色収差は、光学系に使用されるレンズの材料特性に強く依存している。
色収差は高分散のレンズと低分散のレンズ及び部分分散比の大きいレンズと小さいレンズを組み合わせることで解消されるが、材料特性上、低分散かつ部分分散比の小さい光学ガラスを得ることは困難である。
【0004】
また、Nb成分を含む光学ガラスでは、ガラスの安定性を促すためにSiO成分、B成分を所定量含有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-297198号公報
【特許文献2】特開2016-222511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1で開示された光学ガラスは、屈折率(n)が1.64000以下であり、かつアッベ数(ν)が43.00以下であるガラスについての開示はない。
【0007】
特許文献2で開示された光学ガラスは、屈折率(n)が1.64000以下であり、アッベ数(ν)が43.00以下であるガラスについての開示はあるものの、B成分を多量に含有している。
成分の含有量が多いガラスは、B成分由来の揮発による脈理の発生や、揮発に伴う品質の悪化を招く可能性が高まる。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、屈折率(n)が1.64000以下であり、アッベ数(ν)が43.00以下でありながら、部分分散比が小さく、品質の高い光学ガラスを得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意試験研究を重ねた結果、SiO成分、B成分を含有しつつ、質量比ZrO/Nbを0.200~0.900の範囲にすることで、屈折率及びアッベ数が所望の範囲でありながら、部分分散比が小さく、品質の高い光学ガラスを得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0010】
(1) 屈折率(n)が1.64000以下であり
アッベ数(ν)が43.00以下であり、
酸化物基準の質量%で
SiO成分が20.00~50.00%、
成分が0%超25.0%、
質量比ZrO/Nbが0.200~0.900、
である光学ガラス。
【0011】
(2)(1)に記載の光学ガラスからなる光学素子。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、屈屈折率(n)が1.64000以下であり、アッベ数(ν)が43.00以下でありながら、部分分散比が小さく、品質の高い光学ガラスと、光学素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施例のガラスについての部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の光学ガラスの実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。なお、説明が重複する箇所について、適宜説明を省略する場合があるが、発明の趣旨を限定するものではない。
【0015】
[ガラス成分]
本発明の光学ガラスを構成する各成分の組成範囲を以下に述べる。本明細書中で特に断りがない場合、各成分の含有量は、全て酸化物換算組成のガラス全物質量に対する質量%で表示されるものとする。ここで、「酸化物換算組成」とは、本発明のガラス構成成分の原料として使用される酸化物、複合塩、金属弗化物等が熔融時に全て分解され酸化物へ変化すると仮定した場合に、当該生成酸化物の総質量を100質量%として、ガラス中に含有される各成分を表記した組成である。
【0016】
SiO成分は、安定なガラス形成を促す成分である。
特に、SiO成分の含有量を20.0%以上にすることで、部分分散比を大幅に高めることなく、失透を低減でき、成形性も高められる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは20.0%以上、より好ましくは23.00%以上、さらに好ましくは25.0%以上、さらに好ましくは27.0%以上、さらに好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは32.0%以上、さらに好ましくは35.0%以上を下限とする。
他方で、SiO成分の含有量を50.0%以下にすることで、部分分散比の上昇を抑えられる。また、これによりガラス原料の熔解性の低下を抑えられる。従って、SiO成分の含有量は、好ましくは50.0%以下、より好ましくは48.0%以下、さらに好ましくは47.0%以下、さらに好ましくは46.0%以下、さらに好ましくは45.0%以下を上限とする。
【0017】
成分は、安定なガラス形成を促して失透を低減でき、且つガラス原料の熔解性を高められる成分である。従って、B成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは8.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上を下限とする。
他方で、B成分の含有量を25.0%以下にすることで、ガラスの品質の悪化を抑制し、部分分散比の上昇を抑えられる。B成分は揮発しやすい成分であり、揮発を抑制することで脈理の発生やガラスの品質の悪化を抑制することができる。B成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは18.0%以下、さらに好ましくは15.0%
以下、さらに好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは11.0%以下を上限とする。
【0018】
Nb成分は、アッベ数及び部分分散比を低くできる成分である。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは8.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは12.0%以上、さらに好ましくは15.0%以上を下限とする。
他方で、Nb成分の含有量を40.0%以下にすることで、屈折率を低減することができる。従って、Nb成分の含有量は、好ましくは40.0%以下、より好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは30.0%以下、さらに好ましくは28.0%以下、さらに好ましくは25.0%以下を上限とする。
【0019】
LiO成分の含有量は、10.0%以下にすることで、屈折率の上昇を抑えられ、リヒートプレス性の悪化、及び過剰な含有による失透を低減できる。従って、LiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0020】
O成分の含有量は、10.0%以下にすることで、リヒートプレス性の悪化、及び過剰な含有による失透を低減できる。従って、KO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下を上限とする。
【0021】
NaO成分は、ガラスの部分分散比を低くでき、ガラス原料の熔解性を高められる成分である。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは3.0%以上、より好ましくは4.0%以上、さらに好ましくは5.0%以上、さらに好ましくは7.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは11.0%以上、さらに好ましくは12.0%以上を下限とする。
他方で、NaO成分の含有量は、25.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減できる。従って、NaO成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは18.0%以下を上限とする。
【0022】
MgO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の上昇を抑制しつつ、失透を低減できる。従って、MgO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0023】
CaO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の上昇を抑制しつつ、失透を低減できる。従って、CaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0024】
BaO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の上昇やアッベ数の上昇を抑制しつつ、失透を低減できる。従って、BaO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0025】
SrO成分の含有量を10.0%以下にすることで、屈折率の低下やアッベ数の上昇を抑制しつつ、失透を低減できる。従って、SrO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0026】
ZrO成分は、ガラスの屈折率を高め、アッベ数を低くし、部分分散比を低くでき、且つ失透を低減できる成分である。また、これにより再加熱時における失透や着色を低減できる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは2.0%以上、さらに好ましくは3.0%以上、さらに好ましくは4.0%以上を下限とする。
他方で、ZrO成分の含有量は25.0%以下にすることで、過剰な含有による失透を低減でき、且つ、より均質なガラスを得易くできる。従って、ZrO成分の含有量は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは20.0%未満、さらに好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは13.0%未満を上限とする。
【0027】
TiO成分の含有量を10.0%以下にすることで、過剰な含有による屈折率及び分散の上昇を抑制することができる。従って、TiO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とする。
【0028】
WO成分、Bi成分は、ガラスの屈折率を高める成分であるが、含有量が多いとガラスの着色を招き、比重が大きくなってしまう。WO成分、Bi成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0029】
WO成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0030】
Bi成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0031】
La成分、Y成分、Gd成分、Yb成分は、含有量が多いと屈折率を高め、安定性を損ない比重が大きくなってしまう。La成分、Y成分、Gd成分、Yb成分の好ましい範囲は以下の通りである。
【0032】
La成分の含有量は、好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0033】
成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0034】
Gd成分の含有量は、好ましくは8.0%未満、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0035】
Yb成分の含有量は、好ましくは8.0%以下、より好ましくは5.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下、最も好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0036】
Al成分は、屈折率及び分散を低減することができる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、さらに好ましくは1.5%としてもよい。特に、Al成分の含有量を10.0%以下にすることで、ガラスの熔融性を高めつつ、ガラスの失透傾向を弱めることができる。従って、Al成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%%以下、さらに好ましくは6.0%以下を上限とする。
【0037】
ZnO成分は、ガラスの耐失透性を高める成分である。特に、ZnO成分の含有量を5.0%以下にすることで、比重を小さくし低屈折率のガラスを得易くすることができる。従って、ZnO成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、最も好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0038】
Ta成分は、ガラスの耐失透性を高める成分である。一方で、Ta成分の含有量を5.0%以下にすることで、希少鉱物資源であるTa成分の使用量が減り、かつガラスがより低温で熔解し易くなるため、ガラスの生産コストを低減できる。また、これによりTa成分の過剰な含有によるガラスの失透及び比重を低減できる。従って、Ta成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、さらに好ましくは1.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0039】
成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0040】
F成分の含有量は、好ましくは5.0%以下、より好ましくは3.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは0.3%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0041】
TeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0042】
GeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0043】
CeO成分の含有量は、好ましくは3.0%以下、より好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0044】
Er成分、Pr成分の含有量は、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下、最も好ましくは実質的に含有しない。
【0045】
SnO成分の含有量は、好ましくは2.0%以下、より好ましくは1.0%以下、さらに好ましくは0.5%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0046】
Sb成分は、ガラスを熔融する際に清澄や脱泡を促す成分であり、任意成分である。ここで、Sb成分の含有量を0.20%以下にすることで、特に高屈折率ガラスにおける着色を抑えることが可能となる。また、0.20%以下とすることにより、ガラス熔融時における過度の発泡が生じ難くなるため、Sb成分を熔解設備(特にPt等の貴金属)と合金化し難くすることができる。従って、Sb成分の含有量は、好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.10%以下、さらに好ましくは0.08%以下を上限とするが、0%としてもよい。
【0047】
なお、ガラスを清澄し脱泡する成分は、上記のSb成分に限定されるものではなく、ガラス製造の分野における公知の清澄剤、脱泡剤或いはそれらの組み合わせを用いることができる。
【0048】
C成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、C成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、C成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0049】
S成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、S成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、S成分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0050】
スクロース等の有機物成分は、白金坩堝内を還元雰囲気に保ち、酸化によるガラス中への白金の混入を抑制し、透過率を向上させることができる成分であるが、含有量が多いとガラス中のカチオン成分が還元し、ガラスに着色が生じる。従って、スクロース等の有機物成分の含有量は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8.0%以下、より好ましくは6.0%以下、最も好ましくは5.0%以下を上限とする。他方で、スクロース等の有機物分の含有量は、好ましくは0%超、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上、最も好ましくは2.0%以上を下限とするが、0%でもよい。
【0051】
Ln成分(式中、LnはLa、Y、Gd、Ybからなる群より選択される1種以上)は、含有量の和(質量和)を12.0%以下とすることで、過剰な含有による失透を抑え屈折率を維持することができる。従って、好ましくは12.0%以下、より好ましくは10.0%以下、さらに好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは6.0%以下、さらに好ましくは4.0%以下、さらに好ましくは2.0%以下を上限とするが、0%であってもよい。
【0052】
RnO成分(式中、RnはLi、Na、Kからなる群より選択される1種以上)の含有量の和は、5.0%以上とすることで、ガラス原料の溶解性を高め、低い転移点を維持しつつ部分分散比を低減することができる。従って、RnO成分の含有量の和は、好ましくは5.0%以上、より好ましくは8.0%以上、さらに好ましくは10.0%以上、さらに好ましくは12.0%以上、さらに好ましくは13.0%以上を下限とする。一方で、RnO成分の含有量の和は、25.0%以下にすることでアッベ数の上昇を抑制できる。RnO成分の含有量の和は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは23.0%以下、さらに好ましくは20.0%以下、さらに好ましくは18.0%以下を上限とする。
【0053】
RO成分(式中、RはMg、Ca、Sr、Baからなる群より選択される1種以上)の含有量の和は、10.0%以下とすることで、アッベ数の上昇を抑えられ、且つこれら成分の過剰な含有によるガラスの失透を低減できる。従って、RO成分の質量和は、好ましくは25.0%以下、より好ましくは15.0%未満、さらに好ましくは10.0%未満、さらに好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満を上限とする。
【0054】
Nb成分に対するZrOの比率である質量比ZrO/Nbは、0.900以下とすることで耐失透性を高めることができる。質量比ZrO/Nbは、好ましくは0.900以下、より好ましくは0.870以下、さらに好ましくは0.850以下、さらに好ましくは0.830以下、さらに好ましくは0.800以下、さらに好ましくは0.780以下、さらに好ましくは0.750以下を上限とする。他方で、質量比ZrO/Nbは、0.200以上とすることで部分分散比を下げ、且つ、アッベ数を低減することができる。従って、質量比Nb/ZrOは、好ましくは0.200以上、より好ましくは0.230以上、さらに好ましくは0.250以上を下限とする。
【0055】
SiO成分及びB成分の合計量である質量和SiO+Bは、27.0%以上とする場合に、ガラスの耐失透性及び化学的耐久性を向上させることができる。質量和SiO+Bは、好ましくは27.0%以上、より好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは33.0%以上、さらに好ましくは35.0%以上を下限とする。一方、質量和SiO+Bは50.0%以下とする場合に、過剰な含有による安定性の悪化を抑制することができる。従って、質量和SiO+Bは、好ましくは50.0%以下、より好ましくは53.0%以下、さらに好ましくは50.0%以下、さらに好ましくは48.0%以下を上限とする。
【0056】
Nb成分及びZrO成分の合計量である質量和Nb+ZrOは、20.0%以上とする場合に、部分分散比を下げ、高分散化するとともに、化学的耐久性を高めることができる。質量和Nb+ZrOは、好ましくは20.0%以上、より好ましくは23.0%以上、さらに好ましくは25.0%以上、さらに好ましくは27.0%以上を下限とする。一方、質量和Nb+ZrOは40.0%以下とする場合に、過剰な含有による安定性の悪化を抑制することができる。従って、質量和Nb+ZrOは、好ましくは40.0%以下、より好ましくは38.0%以下、さらに好ましくは35.0%以下、さらに好ましくは33.0%以下を上限とする。
【0057】
RnO成分の含有量の和に対するSiO成分及びB成分の合計量の和である質量比(SiO+B)/RnOは、0超10.0以下の範囲にすることで、ガラスの耐失透性及び化学的耐久性を向上させつつ、リヒートプレス成形性を良好にし、屈折率の低下を抑制できる。質量比(SiO+B)/RnOは、好ましくは0超、より好ましくは1.00以上、さらに好ましくは2.00以上、さらに好ましくは3.00以上を下限とする。一方、質量比(SiO+B)/RnOは、好ましくは10.0以下、より好ましくは8.00以下、さらに好ましくは7.00以下、さらに好ましくは6.00以下を上限とする。
【0058】
<含有すべきでない成分について>
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない
成分について説明する。
【0059】
他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加することができる。ただし、Ti、Zr、Nb、W、La、Gd、Y、Yb、Luを除く、Nd、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag及びMo等の各遷移金属成分は、それぞれを単独又は複合して少量含有した場合でもガラスが着色し、可視域の特定の波長に吸収を生じる性質があるため、特に可視領域の波長を使用する光学ガラスにおいては、実質的に含まないことが好ましい。
【0060】
また、PbO等の鉛化合物及びAs等の砒素化合物は、環境負荷が高い成分であるため、実質的に含有しないこと、すなわち、不可避な混入を除いて一切含有しないことが望ましい。
【0061】
さらに、Th、Cd、Tl、Os、Be、及びSeの各成分は、近年有害な化学物質として使用を控える傾向にあり、ガラスの製造工程のみならず、加工工程、及び製品化後の処分に至るまで環境対策上の措置が必要とされる。従って、環境上の影響を重視する場合には、これらを実質的に含有しないことが好ましい。
【0062】
[物性]
本発明の光学ガラスの屈折率(n)は、好ましくは1.64000以下、より好ましくは1.63500以下、さらに好ましくは1.63000以下を上限とする。他方で、この屈折率(n)は、好ましくは1.58000以上、より好ましくは1.59000以上、さらに好ましくは1.60000以上を下限としてもよい。他方で、本発明のアッベ数(ν)このアッベ数(ν)は、好ましくは43.00以下、より好ましくは42.50以下、さらに好ましくは42.00以下、を上限とする。他方で、このアッベ数(ν)は、好ましくは35.00以上、より好ましくは36.00以上、さらに好ましくは38.00以上を下限としてもよい。
【0063】
本発明の光学ガラスは、低い部分分散比(θg,F)を有する。
より具体的には、本発明の光学ガラスの部分分散比(θg,F)は、好ましくは0.586以下、より好ましくは0.585以下、さらに好ましくは0.584以下を上限とする。
これにより、低い部分分散比(θg,F)を有する光学ガラスが得られるため、この光学ガラスから形成される光学素子を、光学系の色収差の低減に役立てられる。
【0064】
他方で、本発明の光学ガラスでは、部分分散比(θg,F)及びアッベ数(ν)が、θg,F≦(-0.00187×ν+0.651)の関係を満たすことが好ましく、θg,F≦(-0.00187×ν+0.650)の関係を満たすことがより好ましく、θg,F≦(-0.00187×ν+0.649)の関係を満たすことがさらに好ましく、θg,F≦(-0.00187×ν+0.648)の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0065】
また、本発明の光学ガラスは、異常分散性(Δθg,F)が小さいため、色収差を高精度に補正できるレンズを得易い。
異常分散性(Δθg,F)は、好ましくは-0.0020以下、より好ましくは-0.0030以下、さらに好ましくは-0.0040以下、さらに好ましくは-0.0050以下を上限とする。
【0066】
一般に色収差は、低分散の凸レンズと高分散の凹レンズとを組み合わせて補正されるが、この組み合わせでは赤色領域と緑色領域の収差の補正しかできず、青色領域の収差が残る。この除去しきれない青色領域の収差を二次スペクトルと呼ぶ。二次スペクトルを補正するには、青色領域のg線(435.835nm)の動向を加味した光学設計を行う必要がある。このとき、光学設計で着目される光学特性の指標として、部分分散比(θg,F)が用いられている。上述の低分散のレンズと高分散のレンズとを組み合わせた光学系では、低分散側のレンズに部分分散比(θg,F)の大きい光学材料を用い、高分散側のレンズに部分分散比(θg,F)の小さい光学材料を用いることで、二次スペクトルが良好に補正される。
【0067】
部分分散比(θg,F)は、下式(1)により示される。
θg,F=(ng-nF)/(nF-nC)・・・・・・(1)
【0068】
光学ガラスには、短波長域の部分分散性を表す部分分散比(θg,F)とアッベ数(ν)との間に、およそ直線的な関係がある。この関係を表す直線は、部分分散比(θg,F)を縦軸に、アッベ数(ν)を横軸に採用した直交座標上で、NSL7とPBM2の部分分散比及びアッベ数をプロットした2点を結ぶ直線で表され、ノーマルラインと呼ばれている。ノーマルラインの基準となるノーマルガラスは光学ガラスメーカー毎によっても異なるが、各社ともほぼ同等の傾きと切片で定義している。(NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比(θg,F)は0.5828、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比(θg,F)は0.5436である。)
【0069】
[製造方法]
本発明の光学ガラスは、例えば以下のように作製される。すなわち、上記原料を各成分が所定の含有量の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1400℃の温度範囲で1.5~5時間熔解させて攪拌均質化した後、適当な温度に下げてから金型に鋳込み、徐冷することにより作製される。熔解は、石英坩堝を用いて熔解したあとに白金坩堝による熔解を行ってもよい。
【0070】
[ガラスの成形]
本発明のガラスは、公知の方法によって、熔解成形することが可能である。なお、ガラス熔融体を成形する手段は限定されない。
【0071】
[光学素子]
作製された光学ガラスから、例えば研磨加工の手段、又は、リヒートプレス成形や精密プレス成形等のモールドプレス成形の手段を用いて、ガラス成形体を作製することができる。すなわち、光学ガラスに対して研削及び研磨等の機械加工を行ってガラス成形体を作製することができる。なお、ガラス成形体を作製する手段は、これらの手段に限定されない。
【0072】
このように、本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用である。その中でも特に、レンズやプリズム等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、光学素子の軽量化に加え、カメラやプロジェクタ等の光学機器に用いたときに高精細で高精度な結像特性及び投影特性を実現できる。
【実施例0073】
本発明のガラスの実施例及び比較例の組成、並びに、これらのガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、部分分散比(θg,F)、異常分散性(Δθg,F)を表1~4に示す。比較例のガラスは特開2008-297198の実施例1のガラスである。
【0074】
本発明の実施例のガラスは、いずれも各成分の原料として各々相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、弗化物、メタ燐酸化合物等の通常の光学ガラスに使用される高純度原料を選定し、表に示した各実施例の組成の割合になるように秤量して、均一に混合した後、白金坩堝に投入し、ガラス原料の熔解難易度に応じて電気炉で1100~1400℃の温度範囲で1.5~5時間熔解させた後、攪拌均質化してから金型等に鋳込み、徐冷して作製した。
【0075】
実施例のガラスの屈折率(n)、アッベ数(ν)、部分分散比(θg,F)、異常分散性(Δθg,F)の値は、JIS B 7071-2:2018に規定されるVブロック法に準じて測定した。ここで、屈折率(n)は、ヘリウムランプのd線(587.56nm)に対する測定値で示した。また、アッベ数(ν)は、ヘリウムランプのd線に対する屈折率(n)と、水素ランプのF線(486.13nm)に対する屈折率(n)、C線(656.27nm)に対する屈折率(n)の値を用いて、アッベ数(ν)=[(n-1)/(n-n)]の式から算出した。これらの屈折率(n)、アッベ数(ν)は、徐冷降温速度を-25℃/hrにして得られたガラスについて測定を行うことで求めた。
そして、得られるアッベ数(ν)及び部分分散比(θg,F)の値から、関係式(θg,F=-a×ν+b)
における、傾きaが0.00187のときの切片bを求めた。
さらに、ノーマルライン(NSL7とPBM2の部分分散比及びアッベ数をプロットした2点を結ぶ直線。NSL7とPBM2は株式会社オハラ社製の光学ガラスであり、PBM2のアッベ数(ν)は36.3,部分分散比(θg,F)は0.5828、NSL7のアッベ数(ν)は60.5、部分分散比(θg,F)は0.5436である。)上にある部分分散比(θg,F)の値と測定された部分分散比(θg,F)の値との差から、異常分散性(Δθg,F)を求めた。
【0076】
【表1】
【0077】
【表2】
【0078】
【表3】
【0079】
【表4】
【0080】
表に表されるように、本発明の実施例のガラスは、いずれも屈折率(n)が1.64000以下であるとともに、アッベ数(ν)は43.00以下であり、所望の範囲内であった。
【0081】
実施例の光学ガラスは、アッベ数(ν)が所望の範囲内にあり、且つ部分分散比(θ
g,F)の小さい光学ガラスであることが明らかになった。
【0082】
以上、本発明を例示の目的で詳細に説明したが、本実施例はあくまで例示の目的のみであって、本発明の思想及び範囲を逸脱することなく多くの改変を当業者により成し得ることが理解されよう。
図1