(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140809
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】インバート用打設設備
(51)【国際特許分類】
E21D 11/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052150
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】赤▲崎▼ 修一
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155BA05
2D155CA08
2D155CA10
(57)【要約】
【課題】インバートの打設作業の効率を向上させる。
【解決手段】インバート打設設備CEは、第1の打設用配管FCPと、その上方に設置された第2の打設用配管SCPと、第2の打設用配管SCPを支持する複数の支持部材Sと、第1の打設用配管FCPと第2の打設用配管SCPにコンクリートを供給する定置式ポンプPと、第1の打設用配管FCPおよび第2の打設用配管SCPと定置式ポンプPとの間に設けられ、コンクリートの供給先を切り換える供給先切換部SWとを備える。これにより、インバートの打設作業の効率を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバートの打設領域にコンクリートを供給するコンクリート供給手段と、
前記コンクリートの配給方向に沿って配置された複数個の第1の配管部を互いに着脱自在に接続された状態で備え、前記インバートの打設領域に設置されて前記インバートの1層目のコンクリートを配給する第1の打設用配管と、
前記コンクリートの配給方向に沿って配置された複数個の第2の配管部を互いに着脱自在に接続された状態で備え、前記第1の打設用配管より上方に設置されて前記1層目のコンクリートの打設上面上に2層目のコンクリートを配給する第2の打設用配管と、
前記インバートの打設領域に前記第2の打設用配管の長手方向に沿って複数並んだ状態で立設され、前記第2の打設用配管を支持する複数の支持部材と、
前記第1の打設用配管および前記第2の打設用配管と前記コンクリート供給手段との間に前記第1の打設用配管と前記第2の打設用配管と前記コンクリート供給手段とに接続された状態で設置され、前記コンクリート供給手段から供給されたコンクリートの供給先を前記第1の打設用配管または前記第2の打設用配管のいずれか一方に切り換えるコンクリート供給先切換手段と、
前記第1の打設用配管または前記第2の打設用配管の先端部に着脱自在の状態で設けられ、前記コンクリートの吐出先を導く可撓性配管と、
を備えることを特徴とするインバート打設設備。
【請求項2】
前記支持部材は、当該支持部材の最も高い部分が、前記2層目のコンクリートの打設上面より予め決められた厚さ分だけ下に位置する状態で設置されていることを特徴とする請求項1記載のインバート打設設備。
【請求項3】
前記支持部材は、支持脚部と、当該支持脚部の頂上部に着脱自在の状態で設けられた治具と、前記治具に接続された状態で前記2層目のコンクリートの打設上面より上方に設けられ、前記第2の打設用配管を保持する配管保持部と、を備え、
前記支持脚部は、前記頂上部が前記2層目のコンクリートの打設上面より下方に位置した状態で設けられていることを特徴とする請求項1記載のインバート打設設備。
【請求項4】
前記支持脚部は、当該支持脚部の頂上部が前記2層目のコンクリートの打設上面より予め決められた厚さ分だけ下に位置する状態で設置されていることを特徴とする請求項3記載のインバート打設設備。
【請求項5】
前記配管保持部は、前記第2の打設用配管に沿って延在した状態で設けられており、前記複数の支持部材の複数の前記支持脚部と複数の前記治具を介して支持されていることを特徴とする請求項3または4記載のインバート打設設備。
【請求項6】
前記支持部材は、支持脚部と、当該支持脚部のアーム部の頂上部に着脱自在の状態で設けられ、前記第2の打設用配管を保持する配管保持部と、を備え、
前記アーム部の頂上部および前記配管保持部は、前記2層目のコンクリートの打設上面より上方に位置していることを特徴とする請求項1記載のインバート打設設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバート用打設設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事においては、トンネル底部下側で発生する盤膨れ等によりトンネル底部下側から押し上げる圧力を受けるため、それに耐えられるように、トンネル底部(トンネル内の両側側壁基部間)にインバートと称する逆アーチ状のコンクリート構造体を設けている。
【0003】
インバートの打設作業においては、2車線トンネルを1車線ずつ車線規制しながら半断面ずつ打設作業を実施する場合がある。また、インバートを厚くする場合等は、1層目のコンクリート上に2層目のコンクリートを積み重ねて打設するというように、複数層に分けてコンクリートを打設する必要がある。
【0004】
なお、インバートの打設技術については、例えば、特許文献1に記載があり、インバートの打設用のコンクリートを供給する打設用配管と、当該打設用配管を載置可能な台車と、台車を移動可能なレールとを有する打設システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、1車線ずつ車線規制しながらインバートの打設作業をするときは、トンネル内の一方の片側1車線が供用中であるため、他方の片側1車線の範囲しか使用することができない。このため、打設用のコンクリートを供給するコンクリートポンプ車をUターンさせようとするときにそのスペースを確保することが難しい。
【0007】
そこで、コンクリートポンプ車を使わずに打設を実施する方法を検討する中で、定置式ポンプから供給されたコンクリートをディストリビュータと称するコンクリート配給装置を通じてインバート打設箇所に配給する方法を検討したが、トンネル規制内での狭小範囲内において、ディストリビュータの長いブームが供用中の片側車線に入らないように細心の注意を払いながら作業しなければならず、インバートの打設作業の効率が著しく低下する、という課題がある。
【0008】
また、特許文献1の技術の場合、レールの設置に時間がかかり作業効率が低下する上、上記のようにインバートを構築する際に複数層に分けてコンクリートを打設する場合に対応することができない、という課題がある。
【0009】
さらに、ディストリビュータを使用する場合も特許文献1の場合も専用の設備が必要となるため、インバートの打設作業にかかるコストが高くなる、という課題がある。
【0010】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、インバートの打設作業の効率を向上させることのできる技術を提供することを目的とする。
【0011】
また、本発明の他の目的は、2層コンクリート一体構成のインバートの打設作業にも対応することができる技術を提供することを目的とする。
【0012】
また、本発明のさらに他の目的は、インバート打設作業にかかるコストを低減することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のインバート用打設設備は、インバートの打設領域にコンクリートを供給するコンクリート供給手段と、前記コンクリートの配給方向に沿って配置された複数個の第1の配管部を互いに着脱自在に接続された状態で備え、前記インバートの打設領域に設置されて前記インバートの1層目のコンクリートを配給する第1の打設用配管と、前記コンクリートの配給方向に沿って配置された複数個の第2の配管部を互いに着脱自在に接続された状態で備え、前記第1の打設用配管より上方に設置されて前記1層目のコンクリートの打設上面上に2層目のコンクリートを配給する第2の打設用配管と、前記インバートの打設領域に前記第2の打設用配管の長手方向に沿って複数並んだ状態で立設され、前記第2の打設用配管を支持する複数の支持部材と、前記第1の打設用配管および前記第2の打設用配管と前記コンクリート供給手段との間に前記第1の打設用配管と前記第2の打設用配管と前記コンクリート供給手段とに接続された状態で設置され、前記コンクリート供給手段から供給されたコンクリートの供給先を前記第1の打設用配管または前記第2の打設用配管のいずれか一方に切り換えるコンクリート供給先切換手段と、前記第1の打設用配管または前記第2の打設用配管の先端部に着脱自在の状態で設けられ、前記コンクリートの吐出先を導く可撓性配管と、を備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の本発明のインバート用打設設備は、上記請求項1に記載の発明において、前記支持部材は、当該支持部材の最も高い部分が、前記2層目のコンクリートの打設上面より予め決められた厚さ分だけ下に位置する状態で設置されていることを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の本発明のインバート用打設設備は、上記請求項1に記載の発明において、前記支持部材は、支持脚部と、当該支持脚部の頂上部に着脱自在の状態で設けられた治具と、前記治具に接続された状態で前記2層目のコンクリートの打設上面より上方に設けられ、前記第2の打設用配管を保持する配管保持部と、を備え、前記支持脚部は、前記頂上部が前記2層目のコンクリートの打設上面より下方に位置した状態で設けられていることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の本発明のインバート用打設設備は、上記請求項3に記載の発明において、前記支持脚部は、当該支持脚部の頂上部が前記2層目のコンクリートの打設上面より予め決められた厚さ分だけ下に位置する状態で設置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の本発明のインバート用打設設備は、上記請求項3または4に記載の発明において、前記配管保持部は、前記第2の打設用配管に沿って延在した状態で設けられており、前記複数の支持部材の複数の前記支持脚部と複数の前記治具を介して支持されていることを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の本発明のインバート用打設設備は、上記請求項1に記載の発明において、前記支持部材は、支持脚部と、当該支持脚部のアーム部の頂上部に着脱自在の状態で設けられ、前記第2の打設用配管を保持する配管保持部と、を備え、前記アーム部の頂上部および前記配管保持部は、前記2層目のコンクリートの打設上面より上方に位置していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、インバートの打設作業の効率を向上させることが可能になる。
【0020】
また、本発明によれば、2層コンクリート一体構成のインバートの打設作業にも対応することが可能になる。
【0021】
また、本発明によれば、インバートの打設作業にかかるコストを低減することが可能になる。
【0022】
また、本発明によれば、第2の打設用配管を載せる支持部材上に予め決められた厚さのコンクリート層を確保したうえでインバート構築用のコンクリート層内に支持部材を残置するので、支持部材の撤去作業を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図2】(a)は
図1のインバート打設設備を構成する供給先切換部の概略横断面図、(b)は
図1のインバート打設設備を構成する打設用配管の配管部同士の接続部における概略要部縦断面図、(c)は
図1のインバート打設設備を構成する支持部材の一例の正面図である。
【
図3】インバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図4】
図3の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図5】
図4の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図6】
図5の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図7】
図6の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図8】
図7の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図9】
図8の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図10】(a)は
図9の過程後のインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図10(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【
図11】(a)は第2の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図11(a)の破線で囲んだ領域の要部拡大側面図である。
【
図12】インバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図13】(a)は
図12の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た要部説明図、(b)は
図13(a)の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図14】(a)は
図13(b)の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図14(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【
図15】第3の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図である。
【
図16】(a)は
図15の支持部材の正面図、(b)は
図16(a)の支持部材の側面図、(c)は
図16(a),(b)の支持部材を構成する配管保持部の斜視図である。
【
図17】(a)はインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図17(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【
図18】(a)は
図17の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図18(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【
図19】(a)は
図18の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、(b)は
図19(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。
【
図20】(a)はインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た要部説明図、(b)は
図20(a)の後のインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0025】
(第1の実施の形態)
【0026】
図1は第1の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、
図2(a)は
図1のインバート打設設備を構成する供給先切換部の概略横断面図、
図2(b)は
図1のインバート打設設備を構成する打設用配管の配管部同士の接続部における概略要部縦断面図、
図2(c)は
図1のインバート打設設備を構成する支持部材の一例の正面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態のインバート打設設備CEは、例えば山岳トンネルの底部に2層コンクリート一体構造のインバートを打設するための打設設備であり、定置式ポンプPと、供給先切換部SWと、第1の打設用配管FCPと、第2の打設用配管SCPと、複数の支持部材Sと、フレキシブルホースFHとを備えている。なお、特に限定されるものではないが、打設領域の長さLaは、例えば10.5~15m程度である。
【0028】
定置式ポンプPは、ホッパHに流入されたコンクリートを押し出して打設現場に圧送するコンクリート供給手段である。この定置式ポンプPの後段には、供給先切換部SWが設置されている。
【0029】
供給先切換部SWは、定置式ポンプPから送られたコンクリートの供給先を第1の打設用配管FCPと第2の打設用配管SCPとのいずれか一方に切り換えるコンクリート切換手段であり、分岐管BPと、切換バルブVとを備えている。
【0030】
分岐管BPは、例えばY字管によって構成されており、1本の流入管部BP1と、その流入管部BP1に接続された2本の流出管部BP2,BP3とを一体的に備えている。流入管部BP1の入口部は定置式ポンプPのコンクリート吐出口に接続され、流出管部BP2の出口部は第1の打設用配管FCPに接続され,流出管部BP3の出口部は第2の打設用配管SCPに接続されている。
【0031】
切換バルブVは、例えばピンバルブ等のような流体仕切弁によって構成されており、流出管部BP2,BP3の入口部に設置されている。
図2(a)に示すように、切換バルブVは、バルブの開閉を操作するバルブ操作部Vcと、バルブ操作部Vcの下面から下方に突出するように設けられた複数本の仕切ピンVpと、流出管部BP2,BP3の上部に穿孔された複数個の貫通孔Vhとを備えている。複数本の仕切ピンVsおよび複数個の貫通孔Vhは、流出管部BP2,BP3の長手方向(
図2の紙面に直交する方向)に対して交差する方向に沿って並設されている。
【0032】
切換バルブVによる流路の切り換えに際しては、コンクリートを流さない側の流出管部BP2,BP3の流路を閉じ、コンクリートを流す側の流出管部BP2,BP3の流路を開放する。流出管部BP2,BP3の流路を閉じるには、切換バルブVのバルブ操作部Vcを押し下げて複数本の仕切ピンVpを複数の貫通孔Vhを通じて流出管部BP2,BP3内に挿入する。一方、流出管部BP2,BP3の流路を開通するには、バルブ操作部Vcを引き上げて流出管部BP2,BP3内から仕切ピンVpを抜き出すようにする。
【0033】
ただし、切換バルブVはピンバルブに限定されるものではなく種々変更可能であり、例えばシャッターバルブを用いても良い。シャッターバルブの場合は、仕切ピンVpに代えて仕切板が設置されている。
【0034】
図1に示すように、供給先切換部SWの後段には、インバートの1層目のコンクリートを配給する第1の打設用配管FCPが打設領域の地山Gの掘削底面上に直置きされている。
【0035】
ただし、ここでは地山Gの掘削底面上に第1の打設用配管FCPを直置きする場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えばインバートコンクリートを鉄筋コンクリートとするときは、インバートを構成する鉄筋の上に第1の打設用配管FCPを直置きする。
【0036】
この第1の打設用配管FCPは、その長手方向(すなわち、コンクリートの配給方向)に沿って複数本の配管部(第1の配管部)CP1が互いに着脱自在の状態で接続されることで構成されている。配管部CP1は、コンクリートの圧送に耐えられるように鋼材で構成されている。
【0037】
図2(b)に示すように、配管部CP1,CP1同士は、例えばリング式のビクトリックジョイント部材Jvにより着脱自在の状態で接続されている。配管部CP1の長手方向両端部には、径方向に突出する係り止め部(フランジ部)CPkが一体形成されている。そして、配管部CP1,CP1同士は、その各々の係り止め部CPk,CPk同士を突き合わせた状態で、両方の係り止め部CPk,CPkの外周に封止部材SLを介してビクトリックジョイント部材Jvを取り付けることにより着脱自在の状態で接続されている。
【0038】
また、
図2(c)に示すように、第1の打設用配管FCPは、支持部材Sの外側に設置されている。これは、第1の打設用配管FCPを支持部材Sの下に置くと、後述するように配管を撤去する際に邪魔になって作業性が低下するので、第1の打設用配管FCPを支持部材Sの外側に設置し、第1の打設用配管FCPと第2の打設用配管SCPとの位置を互いに
図2(c)の横方向(配管の短方向)にずらしている。これにより、インバートの打設作業の効率を向上させることができる。
【0039】
一方、
図1に示すように、供給先切換部SWの後段には、インバートの2層目のコンクリートを配給する第2の打設用配管SCPが第1の打設用配管FCPに沿って第1の打設用配管FCPより上方に設置されている。この第2の打設用配管SCPは、その長手方向(すなわち、コンクリートの配給方向)に沿って複数本の配管部(第2の配管部)CP2が互いに着脱自在の状態で接続されることで構成されている。なお、配管部CP2は、上記した配管部CP1と同じものが使用されており、配管部CP2,CP2同士の接続部の構造も
図2(b)で説明したものと同じである。
【0040】
このような第2の打設用配管SCPは、複数個の支持部材Sによって支持されている。支持部材Sは、第2の打設用配管SCPの長手方向に沿って予め決められた間隔毎に複数個並んだ状態で設置されている。また、支持部材Sは、その下部が地山Gに突き刺さりしっかりと固定されている。
【0041】
なお、上記したようにインバートコンクリートを鉄筋コンクリートとしたときは、インバートを構成する鉄筋(最上段の鉄筋)の上に支持部材Sを設置するとともに、支持部材Sの下部を当該鉄筋(最上段の鉄筋)にしっかりと固定してもよい。この場合は、支持部材Sの下部が地山Gの上面より上方に位置し地山Gに接することはない。
【0042】
図2(c)に示ように、支持部材Sは、支持脚部Sk1と、その上方の配管保持部Sh1とを備えている。支持脚部Sk1は配管保持部Sh1を支える部分であり、配管保持部Sh1は第2の打設用配管SCPを保持し支える部分である。この支持脚部Sk1および配管保持部Sh1は、例えば鋼材からなり一体的に形成されている。
【0043】
本実施の形態においては、支持部材Sの最も高い部分(すなわち、配管保持部Sh1の最も高い部分)が、2層目のコンクリートの打設上面CSSより予め決められた厚さ(以下、被り厚さという)T分だけ下に位置する状態で設置されており、この被り厚さTを確保することにより、後述するように、インバートコンクリート内に支持部材Sを残置したとしても、鋼材の腐食に伴うインバートコンクリートの損傷を防止することができるようになっている。なお、
図2(c)の打設上面CSFは、1層目のコンクリートの打設上面を示している。
【0044】
図1に示すように、フレキシブルホースFHは、コンクリートの吐出先を導く可撓性配管である。このフレキシブルホースFHは、フレキ管、フレキシブル管またはフレキシブルチューブ等と呼ばれ、柔軟性および耐圧力に優れた金属製ホースによって構成されている。フレキシブルホースFHは、金属製のため硬いものの、チューブ仕様またはブレード仕様等のような波形形状を採用することで曲げ易く設計されている。
【0045】
図1においては、フレキシブルホースFHが第1の打設用配管FCPの先端部に着脱自在の状態で接続されている場合が示されているが、フレキシブルホースFHは、第1の打設用配管FCPの配管部CP1および第2の打設用配管SCPの配管部CP2のいずれの先端部にも着脱自在になっている。
【0046】
次に、本実施の形態のインバートの打設方法の一例について
図3~
図10を参照して説明する。
図3~
図10(a)はインバート打設過程におけるインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、
図10(b)は
図10(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。なお、
図3~
図10(a)において図面を見易くするためコンクリートにハッチングを付した。
【0047】
本実施の形態においては、例えば2車線トンネルを1車線ずつ車線規制しながら半断面ずつインバートの打設作業を実施する。すなわち、例えばトンネル内の2車線のうち、片側車線を供用とし、その隣りの片側車線を打設作業の範囲としてインバートを構築する。
【0048】
まず、
図3に示すように、インバートの打設領域に、定置式ポンプP、供給先切換部SW、第1の打設用配管FCP、支持部材Sおよび第2の打設用配管SCPを設置する。そして、第1の打設用配管FCPの先端部にフレキシブルホースFHを接続する。また、供給先切換部SWにおいて、流出管部BP2の流路を開けて、流出管部BP3の流路を閉じることにより、第1の打設用配管FCPのみにコンクリートが流れるように設定する。
【0049】
続いて、1層目のコンクリートCC1の打設を開始する。すなわち、ホッパHを通じて定置式ポンプPに流入されたコンクリートCC1を、定置式ポンプPにより第1の打設用配管FCPに圧送し、第1の打設用配管FCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所に吐出する。この際、フレキシブルホースFHを左右に振りながらインバートの打設箇所にコンクリートCC1を吐出する。
【0050】
その後、フレキシブルホースFHの取付位置周辺(予め決められた第1の範囲)のコンクリートCC1の打設が終了したら、
図4に示すように、第1の打設用配管FCPの先端の配管部CP1に接続されているフレキシブルホースFHを取り外した後、第1の打設用配管FCPの先端の配管部CP1を取り外す。そして、取り外したフレキシブルホースFHを、インバートの打設領域に残されている第1の打設用配管FCPの先端部に付け替える。
【0051】
次いで、上記と同様に、定置式ポンプPから第1の打設用配管FCPに圧送されたコンクリートCC1を第1の打設用配管FCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所に吐出する。
【0052】
続いて、フレキシブルホースFHの取付位置周辺(予め決められた第1の範囲)のコンクリートCC1の打設が終了したら、
図5に示すように、第1の打設用配管FCPの先端の配管部CP1に接続されているフレキシブルホースFHを取り外した後、第1の打設用配管FCPの先端の配管部CP1を取り外す。そして、取り外したフレキシブルホースFHを、インバートの打設領域に残されている第1の打設用配管FCPの先端部に付け替える。
【0053】
その後、上記と同様に、定置式ポンプPから第1の打設用配管FCPに圧送されたコンクリートCC1を第1の打設用配管FCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所に吐出する。
【0054】
このような作業を繰り返すことにより、
図6に示すように、1層目のコンクリートCC1の打設を完了したら、定置式ポンプPの可動を停止するとともに、定置式ポンプPへのコンクリートCC1の流入を停止する。そして、フレキシブルホースFHを第2の打設用配管SCPの先端部に接続する。
【0055】
次いで、供給先切換部SWにおいて、流出管部BP3の流路を開けて、流出管部BP2の流路を閉じることにより、第2の打設用配管SCPのみにコンクリートが流れるように設定する。
【0056】
続いて、2層目のコンクリートの打設を開始する。すなわち、
図7に示すように、ホッパHを通じて定置式ポンプPに流入されたコンクリートCC2を、定置式ポンプPにより第2の打設用配管SCPに圧送し、第2の打設用配管SCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所に吐出する。この際もフレキシブルホースFHを左右に振りながらインバートの打設箇所の1層目のコンクリートCC1の打設上面CSF上にコンクリートCC2を吐出する。
【0057】
その後、フレキシブルホースFHの取付位置周辺(予め決められた第2の範囲)のコンクリートCC2の打設が終了したら、
図8に示すように、第2の打設用配管SCPの先端の配管部CP2に接続されているフレキシブルホースFHを取り外した後、第2の打設用配管SCPの先端の配管部CP2を取り外す。そして、取り外したフレキシブルホースFHを、インバートの打設領域に残されている第2の打設用配管SCPの先端部に付け替える。このとき、支持部材Sをコンクリート中に残置する。
【0058】
次いで、上記と同様に、定置式ポンプPから第2の打設用配管FCPに圧送されたコンクリートCC2を第2の打設用配管SCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所の1層目のコンクリートCC1の打設上面CSF上に吐出する。
【0059】
続いて、フレキシブルホースFHの取付位置周辺(予め決められた第2の範囲)のコンクリートCC2の打設が終了したら、
図9に示すように、第2の打設用配管SCPの先端部の配管部CP2に接続されているフレキシブルホースFHを取り外した後、第2の打設用配管SCPの先端の配管部CP2を取り外す。そして、取り外したフレキシブルホースFHを、インバートの打設領域に残されている第2の打設用配管FCPの先端部に付け替える。このときも、支持部材Sをコンクリート中に残置する。
【0060】
その後、上記と同様に、定置式ポンプPから第2の打設用配管SCPに圧送されたコンクリートCC2を第2の打設用配管SCPの先端部に接続されたフレキシブルホースFHの吐出口からインバートの打設箇所の1層目のコンクリートCC1の打設上面CSF上に吐出する。
【0061】
このような作業を繰り返すことにより、
図10(a)に示すように、1層目のコンクリートCC1の打設上面CSF上に2層目のコンクリートCC2を積み重ね終えたら、定置式ポンプPの可動を停止し、定置式ポンプPへのコンクリートCC2の流入を停止する。
【0062】
このとき、本実施の形態においては、
図10(b)に示すように、支持部材Sの最も高い部分が2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSより被り厚さT分だけ下に位置しており、コンクリートCC2に被われ外気に晒されない。このため、インバートを構成するコンクリートC1,C2の層内に支持部材Sを残置したとしても支持部材Sが腐食することはない。これにより、インバートを構成するコンクリートCC1,CC2の層内に支持部材Sを残置しても、鋼材の腐食に起因するインバートの損傷を防止することができる。なお、地山Gに支持部材Sの下部を突き刺して固定した場合、支持部材Sの下部は地山Gに接しているが、地山G側は外部からの空気の侵入が無いことからコンクリートC1,C2の層内に支持部材Sを残置しても支持部材Sの下部が腐食することはない。また、インバートを構成する鉄筋(最上段の鉄筋)に支持部材Sの下部を固定した場合、コンクリートCC1,CC2の層内に支持部材Sの下部が内包され外気に晒されないことからコンクリートC1,C2の層内に支持部材Sを残置しても支持部材Sの下部が腐食することはない。
【0063】
このため、本実施の形態においては、第2の打設用配管SCPを支えていた支持部材Sを撤去せずコンクリートCC1,CC2の層内に残置する。これにより、支持部材Sの撤去作業を省略することができるので、インバートの打設作業時間を短縮することができる。また、支持部材Sを撤去している最中にコンクリートC1,C2の硬化が進行し、打ち重ね位置で一体化できなくなる不具合を防ぐことができる。
【0064】
ここで、ディストリビュータを使用する場合、供用中の片側車線の安全性を確保する観点からディストリビュータの長いブームが供用中の片側車線に入らないように細心の注意を払いながら打設作業をする必要があるので作業効率が低下する、という課題がある。
【0065】
これに対して本実施の形態においては、供用中の片側車線のことを考慮することなく、また、レールの設置等のような時間のかかる作業を必要とすることなく、インバートの打設作業を実施することができるので、インバートの打設作業の効率を向上させることができる。また、供用中の片側車線に何ら影響が無いのでインバートの打設作業の安全性を向上させることができる。
【0066】
また、ディストリビュータ等のような専用の重機や専用の設備を用いることなく、既存の装置や部材を用いてインバート打設設備CEを構築するので、インバート打設作業にかかるコストを低減することができる。
【0067】
また、第1の打設用配管FCPおよび第2の打設用配管SCPを順に用いて2層のコンクリートCC1,CC2を積層することができるので、インバートを厚くする等の理由により、1層目のコンクリートCC1上に2層目のコンクリートCC2を積み重ねて打設するというように、複数層に分けてコンクリートを打設する必要があるインバートの打設作業にも対応することができる。
【0068】
さらに、第2の打設用配管SCPを載せる支持部材S上に必要な被り厚さTのコンクリート層を確保したうえでインバート構築用のコンクリートCC1,CC2内に支持部材Sを残置するので、インバート構築用のコンクリートCC1,CC2内に支持部材Sを残置したとしても、鋼材の腐食に伴うコンクリートCC1,CC2の損傷を防止することができる。このため、インバート構築用のコンクリートCC1,CC2内から支持部材Sを撤去する作業を省略することができるので、インバートの打設作業の効率を向上させることができる。
【0069】
(第2の実施の形態)
【0070】
本実施の形態においては、インバート打設設備を構成する支持部材の構成が上記した第1の実施の形態と異なる。以下、本実施の形態のインバート打設設備の支持部材の構成例について
図11を参照して説明する。
図11(a)は第2の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、
図11(b)は
図11(a)の破線で囲んだ領域の要部拡大側面図である。
【0071】
図11(a),(b)に示すように、本実施の形態においては、支持部材Sが、支持脚部Sk2と、その上方にPコン(治具)PCを介して支持された配管保持部Sh2とを備えている。
【0072】
支持脚部Sk2は、例えば鉄筋で構成されており、その下部が地山Gに突き刺さりしっかりと固定された状態で立設されている。また、
図11(b)に示すように、支持脚部Sk2は、その頂上部が2層目のコンクリートの打設上面CSSより被り厚さT分だけ下に位置する状態で設置されている。この支持脚部Sk2の頂上部には雄ネジ部が形成されている。
【0073】
図11(a),(b)に示すように、配管保持部Sh2は、例えば断面L字状の鋼製のアングル部材からなり、複数の支持部材Sの複数の支持脚部Sh2を跨ぐように第2の打設用配管SCPに沿って延在した状態で設置されている。
図11(b)に示すように、この配管保持部Sh2には、第2の打設用配管SCP(配管部CP2)が番線W1によってしっかりと固定され保持されているとともに、複数のPコンPCを介して複数の支持脚部Sk2が接続されている。
【0074】
上記した第1の実施の形態においては配管保持部Sh1が2層目のコンクリートの打設上面CSSより下方に位置していたのに対して、
図11(b)に示すように、本実施の形態においては、配管保持部Sh2が2層目のコンクリートの打設上面CSSよりも上方に位置している。
【0075】
図11(a),(b)に示すように、PコンPCは、例えば円錐台形状に形成されたプラスチックからなり、その小径面を下に、かつ、その大径面を上に向けた状態で設置されている。このPコンPCの高さ(小径面と大径面との間の距離)は、支持脚部Sk2の頂上部と2層目のコンクリートの打設上面CSSとの間に被り厚さT(
図11(b)参照)が確保されるように設定されている。
【0076】
また、PコンPCは、その小径面中心に形成された雌ネジ部に、支持脚部Sk2の頂上部に形成された雄ネジを螺合することにより、支持脚部Sk2の頂上部と着脱自在の状態で接続されている。ただし、PコンPCと支持脚部Sk2の頂上部とを螺合することなく、例えばPコンPCの小径面中心に形成された凹部内に支持脚部Sk2の頂上部を差し込むことにより、PコンPCを支持脚部Sk2の頂上部と着脱自在の状態で接続しても良い。
【0077】
また、PコンPCは、その大径面中心に設けられた取付金具Axによって配管保持部Sh2に固定されている。ただし、PコンPCは、その中心軸を中心にして左右に回すことが可能な状態で配管保持部Sh2に固定されている。すなわち、PコンPCを右または左に回すことにより、PコンPCの雌ネジ部に支持脚部Sk2の頂上部の雄ネジ部を螺合してPコンPCを支持脚部Sk2の頂上部と接続したり、PコンPCを支持脚部Sk2の頂上部から取り外したりすることが可能になっている。なお、
図11(b)では構成を分かり易くするためにPコンPCの内部の支持脚部Sk2の頂上部と取付金具Axとを透かして見せている。
【0078】
このような本実施の形態においては、インバート打設設備CEを構成する支持部材Sを、特別な部材を用いて構築するのではなく既存の部材を用いて構築するので、使い勝手が良い上、支持部材Sを用いるからといってインバート打設作業にかかるコストが増大することもない。
【0079】
次に、本実施の形態のインバートの打設方法の一例を
図12~
図14を参照して説明する。
図12~
図14(a)はインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、
図14(b)は
図14(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。なお、
図12~
図14においては図面を見易くするためコンクリートにハッチングを付した。
【0080】
図12に示すように、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、1層目のコンクリートCC1を打設した後、
図12および
図13(a)に示すように、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、2層目のコンクリートCC2を打設する。ここで、本実施の形態においては、支持部材Sを構成する配管保持部Sh2が2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSより上方に設置されているので、上記した第1の実施の形態の場合よりも上方から2層目のコンクリートCC2を打設することができる。このため、上記した第1の実施の形態の場合よりも2層目のコンクリートCC2の打設作業を容易にすることができる。
【0081】
また、
図13(a)に示すように、2層目のコンクリートCC2の打設に際して、PコンPCの底面(小径面)および側面が埋まり、2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSからPコンPCの大径面(上面)が露出する程度までコンクリートCC2を堆積する。このように本実施の形態においては、PコンPCを設けたことにより、どの程度までコンクリートCC2を堆積したら良いかに関しての判断を容易にすることができる。また、2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSと複数の支持脚部Sk2の頂上部との間の被り厚さTを、過不足の無いように、しかも簡単に設定することができる。
【0082】
上記のようにして2層目のコンクリートCC2の打設を完了したら、定置式ポンプPの可動を停止し、定置式ポンプPへのコンクリートCC2の流入を停止する。なお、この段階では、配管保持部Sh2およびPコンPCを取り外すことなく設置したままとする。
【0083】
続いて、各PコンPCを回して各PコンPCと各支持脚部Sk2の頂上部との接続状態を解除した後、
図13(b)に示すように、支持部材Sを構成する配管保持部Sh2を上昇させることにより、複数のPコンPCを一括して2層目のコンクリートCC2から引き上げる。これにより、2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSにおいてPコンPCが抜けた跡地に凹部Raが形成される。この凹部Raは、2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSと支持脚部Sk2の頂上部との間に予め決められ被り厚さT(
図11(b)参照)分以上の深さで形成される。なお、この段階では複数の凹部Raの底面から支持脚部Sk2の頂上部の一部が露出されている。
【0084】
このように本実施の形態においては、複数個のPコンPCを一括して2層目のコンクリートCC2から引き抜くので、PコンPCを1つ1つ引き抜く場合に比べて、労力を軽減することができる上、作業時間を短縮することができる。
【0085】
その後、
図14(a),(b)に示すように、複数の凹部Ra内にコンクリートCC3を充填する。これにより、支持脚部Sk2の頂上部がコンクリートCC3によって覆われ完全に埋め込まれる。本実施の形態においては、
図14(b)に示すように、支持脚部Sk2の頂上部と2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSとの間に被り厚さTを確保することができる。したがって、インバートの品質を確保することができる。なお、上記した以外の効果は上記第1の実施の形態で説明した効果と同じである。
【0086】
(第3の実施の形態)
【0087】
本実施の形態においては、インバート打設設備を構成する支持部材の構成が上記した第1の実施の形態および第2の実施の形態と異なる。以下、本実施の形態のインバート打設設備の支持部材の構成例について
図15および
図16を参照して説明する。
図15は第3の実施の形態のインバート打設設備をトンネルの側面から見た説明図、
図16(a)は
図15の支持部材の正面図、
図16(b)は
図16(a)の支持部材の側面図、
図16(c)は
図16(a),(b)の支持部材を構成する配管保持部の斜視図である。
【0088】
図15および
図16に示すように、本実施の形態においては、支持部材Sが、支持脚部Sk3と、その上方に支持された配管保持部Sh3とを備えている。
【0089】
図16(a),(b)に示すように、支持脚部Sk3は、例えばベース部BSと、その上部に設けられたボディ部BDと、その上部に設けられたアーム部AMとを備えており、ベース部BSの下部が地山Gに突き刺さりしっかりと固定された状態で立設されている。なお、
図16(a),(b)の切断位置CUは、後述のアーム部AMの切断位置を示し、凹部Rbは、後述のアーム部AMの切断時に2層目のコンクリートの打設上面CSSに形成される窪みを示している。
【0090】
ベース部BSおよびアーム部AMは、例えば線状の鉄筋からなり、ボディ部BDとの交差部においてボディ部BDと溶接により接合されている。ボディ部BDは、例えばサイコロ状のアングル枠部材で構成されている。
【0091】
上記した第1の実施の形態および第2の実施の形態においては支持脚部Sk1,Sk2の頂上部が2層目のコンクリートの打設上面CSSより下方に位置していたのに対して、本実施の形態においては、支持脚部Sk3の上部(すなわち、アーム部AMの頂上部)が2層目のコンクリートの打設上面CSSよりも上方に位置している。
【0092】
図16(a)~(c)に示すように、配管保持部Sh3は、例えばコンクリート打設工事においてコンクリート圧送管を保持するために使用されているコンクリート馬または配管用馬と称する配管保持治具である。特に限定されるものではないが、配管保持部Sh3の正面長さLbは、例えば480mm程度、奥行長さLcは、例えば535mm程度、高さLdは、例えば580mm程度である。
【0093】
配管保持部Sh3は、一対の支持体US,USと、この一対の支持体US,US同士を連結する一対の連結部UC,UCと、第2の打設用配管SCPを保持する保持部UHと、一対の支持体US,USの上部間を橋渡すように設けられた踏台部UPとを備えている。
【0094】
支持体USは、例えば直径34mm程度の鋼製パイプをその長手方向の中央で折り曲げることで形成されている。このため、1つの支持体USで2つの脚部(支持体USの両端部)が形成されており、配管保持部Sh3の全体で4つの脚部が形成されている。この配管保持部Sh3の4つの脚部は番線W2によって支持脚部Sk3の4つのアーム部AMの頂上部としっかりと固定されている。
【0095】
連結部UCは、例えば直径34mm程度の鋼製パイプからなり、その両端部が一対の支持体US,USの高さ方向の途中位置に接合されている。なお、特に限定されるものではないが、
図16(c)に示す連結部UCまでの高さLeは、例えば200mm程度である。
【0096】
保持部UHは、一対の支持体US,USの上部間に撓んだ状態で橋渡すように設けられている。保持部UHは、第2の打設用配管SCPに接する配管当接部UH1と、一対のスプリング部UH2,UH2とを備えている。スプリング部UH2は、配管当接部UH1の長手方向の両端と、一対の支持体US,USとの間に設けられている。
【0097】
スプリング部UH2を設けたことにより、
図16(b)の矢印Arに示すように、第2の打設配管SCPを揺動可能な状態で保持することができるので、コンクリートの圧送に伴う第2の打設用配管SCPの揺れや振動を吸収することができる。これにより、配管保持部Sh3自体は動かないようにすることができるので、コンクリート圧送時に配管保持部Sh3を安定した状態で支持脚部Sk3上に支持することができる。
【0098】
踏台部UPは、一対の支持体US,USに対して着脱自在の状態で設置されている。踏台部UP上に道板を設置することにより通路を形成することができる。なお、
図16(b)に示す踏台部UPの幅Lfは、例えば130mm程度である。また、
図16(c)には図面を見易くするため踏台部UPを図示していない。
【0099】
このような本実施の形態においては、インバート打設設備CEを構成する支持部材Sを、特別な部材を用いて構築するのではなく既存の部材を用いて構築するので、使い勝手が良い上、支持部材Sを用いるからといってインバート打設作業にかかるコストが増大することもない。
【0100】
次に、本実施の形態のインバートの打設方法の一例について
図17~
図19を参照して説明する。
図17(a)、
図18(a)および
図19(a)はインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図、
図17(b)、
図18(b)および
図19(b)はそれぞれ
図17(a)、
図18(a)および
図19(a)の破線で囲んだ領域の拡大断面図である。なお、
図17~
図19においては図面を見易くするためコンクリートにハッチングを付した。
【0101】
図17に示すように、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、1層目のコンクリートCC1を打設した後、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、2層目のコンクリートCC2を打設する。ここで、本実施の形態においては、支持部材Sを構成する配管保持部Sh3が2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSより上方に設置されており、上記した第2の実施の形態の場合よりもさらに上方から2層目のコンクリートCC2を打設することができる。このため、上記した第2の実施の形態の場合よりも2層目のコンクリートCC2の打設作業をさらに容易にすることができる。
【0102】
上記のようにして2層目のコンクリートCC2の打設を完了したら、定置式ポンプPの可動を停止し、定置式ポンプPへのコンクリートCC2の流入を停止する。なお、この段階では、配管保持部Sh3を取り外すことなく設置したままとする。
【0103】
続いて、
図18に示すように、支持脚部Sk3のアーム部AMと配管保持部Sh3の脚部とを固定する番線W2(
図16(a),(b)参照)をほどいて配管保持部Sh3を取り外した後、残された支持脚部Sk3のアーム部AMの周囲のコンクリートCC2を部分的に下げて凹部Rbを形成する。この凹部Rbは、被り厚さTまたはそれ以上の深さを持つように形成する。なお、凹部Rbの形成後に、配管保持部Sh3を取り外しても良い。
【0104】
その後、コンクリート仕上げ後、
図19に示すように、支持脚部Sk3のアーム部AMを凹部Rbの底部辺りで溶断してその溶断箇所より上方のアーム部AMを撤去し、さらにコンクリートCC2の凹部Rbを埋める。これにより、支持脚部Sk3の頂上部がコンクリートCC2によって覆われ完全に埋め込まれる。これにより、本実施の形態においても支持脚部Sk3の頂上部と2層目のコンクリートCC2の打設上面CSSとの間に被り厚さTを確保することができる。したがって、インバートの品質を確保することができる。なお、上記した以外の効果は上記第1の実施の形態で説明した効果と同じである。
【0105】
(第4の実施の形態)
【0106】
本実施の形態においては、インバートの打設方法が上記した第3の実施の形態と異なる。以下、本実施の形態のインバートの打設方法の一例について
図20を参照して説明する。
図20(a),(b)はインバート打設過程におけるインバート打設設備の要部をトンネルの側面から見た説明図である。なお、
図20においては図面を見易くするためコンクリートにハッチングを付した。
【0107】
図20(a)に示すように、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、1層目のコンクリートCC1を打設した後、上記した第1の実施の形態で説明したのと同様に、2層目のコンクリートCC2を打設する。
【0108】
ただし、本実施の形態においては、フレキシブルホースFHの取付位置周辺(予め決められた第2の範囲)のコンクリートCC2の打設が終了するたびに、配管保持部Sh3を取り外し、2層目のコンクリートCC2の打設上面から被り厚さT分の深さ位置でアーム部AMを折り曲げ、アーム部AMの全体が2層目のコンクリートCC2に完全に埋め込まれるようにする。
【0109】
そして、
図20(b)に示すように、2層目のコンクリートCC2の打設が完了したら、定置式ポンプPの可動を停止し、定置式ポンプPへのコンクリートCC2の流入を停止する。
【0110】
このように本実施の形態においては、支持脚部Sk3のアーム部AMを折り曲げて完全に2層目のコンクリートCC2に埋め込んでしまうので、インバートの品質を確保することができる。これ以外の効果は上記した第3の実施の形態で説明した効果と同じである。
【0111】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0112】
例えば、上記した第2の実施の形態においては、説明を簡単にするため全てのPコンPCを一括して引き抜く場合を例示したが、これに限定されるものではなく、例えば配管保持部Sh2を複数に分割自在にし、その分割された配管保持部Sh2に固定された複数のPコンPC毎に一括して引き抜くようにしても良い。そして、打設が終了した順に先頭(奥)側の配管保持部Sh2に固定された複数のPコンPCを引き抜くことにより、2層目のコンクリートCC2が硬化してしまいPコンPCが引き抜けなくなる不具合が生じるのを防止することができる。
【0113】
例えば、上記した第3の実施の形態および第4の実施の形態においては、
図16に示したように、スプリング部UH2を有する配管保持部Sh3を用いたが、これに限定されるものではなく、例えばスプリング部UH2を設けておらず、配管当接部UH1の両端部が一対の支持体US,USの上部に直接接続されている構造の配管保持部を用いても良い。
【産業上の利用可能性】
【0114】
以上の説明では、本発明のインバート打設設備を山岳トンネルのインバートの打設に適用した場合が示されているが、これに限定されるものではなく、例えば都市部のトンネルのインバートの打設に適用することができる。
【符号の説明】
【0115】
CE インバート打設設備
P 定置式ポンプ(コンクリート供給手段)
SW 供給先切換部(コンクリート供給先切換手段)
FCP 第1の打設用配管
SCP 第2の打設用配管
CP1 配管部(第1の配管部)
CP2 配管部(第2の配管部)
CPk 係り止め部
SL 封止部材
Jv ビクトリックジョイント部材
S 支持部材
Sk1,Sk2,Sk3 支持脚部
BS ベース部
BD ボディ部
AM アーム部
Sh1,Sh2,Sh3 配管保持部
US 支持体
UC 連結部
UH 保持部
UP 踏台部
W1 番線
PC Pコン(治具)
Ax 取付金具
FH フレキシブルホース(可撓性配管)
H ホッパ
BP 分岐管
BP1 流入管部
BP2,BP3 流出管部
V 切換バルブ
Vc バルブ操作部
Vp 仕切ピン
Vh 貫通孔
CC1,CC2 コンクリート
CSF,CSS 打設上面
Ra,Rb 凹部
T 被り厚さ