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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140811
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】土砂搬送車および土砂搬送システム
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E21D9/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052152
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】592069137
【氏名又は名称】植村技研工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000151416
【氏名又は名称】株式会社東京機械製作所
(71)【出願人】
【識別番号】390033743
【氏名又は名称】株式会社KKS
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】二井 俊次
(72)【発明者】
【氏名】平賀 優司
(72)【発明者】
【氏名】原田 祐作
(72)【発明者】
【氏名】有川 健
(72)【発明者】
【氏名】松田 顕伍
(72)【発明者】
【氏名】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英介
(72)【発明者】
【氏名】金子 大貴
(72)【発明者】
【氏名】坂本 剛
(72)【発明者】
【氏名】海原 昭
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054DA17
(57)【要約】
【課題】鋼管内で土砂を効率的に搬送する。
【解決手段】非開削推進工法で箱型ルーフを形成するために地山に圧入される矩形断面の鋼管1内の坑口側と切羽側との間を走行する土砂搬送車SVであって、土砂を積載可能な箱型の荷台Cを載置する荷台載置部11aを備えた車台11と、車台11に装着され、少なくとも一方が2つの車輪で構成された駆動輪12aおよび従動輪12bと、駆動輪12aを回転駆動するモータ16と、先端間の距離が鋼管1の内壁面の距離よりも短く設定されて車台11の両側部に設置されたガイドローラ14とを有する土砂搬送車SVである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非開削推進工法で箱型ルーフを形成するために地山に圧入される矩形断面の鋼管内の坑口側と切羽側との間を走行する土砂搬送車であって、
土砂を積載可能な箱型の荷台が載置される荷台載置部を備えた車台と、
前記車台に装着され、少なくとも一方が2つの車輪で構成された駆動輪および従動輪と、
前記駆動輪を回転駆動するモータと、
先端間の距離が前記鋼管の内壁面の距離よりも短く設定され、前記車台の両側部に設置されたガイドローラと、
を有することを特徴とする土砂搬送車。
【請求項2】
前記駆動輪は前記車台の前記坑口側に装着され、前記従動輪は前記車台の前記切羽側に装着されている、
ことを特徴とする請求項1記載の土砂搬送車。
【請求項3】
前記ガイドローラは、水平方向に離間して2対取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の土砂搬送車。
【請求項4】
前記車台の走行方向両側には、前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を開始させる走行開始手段、および前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を停止させる走行停止手段が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の土砂搬送車。
【請求項5】
前記走行停止手段は、作業者により操作される走行停止スイッチ、および前記鋼管の坑口側端部と切羽側端部とに設置されたリフレクタからの反射光を検出する回帰反射型光電センサである、
ことを特徴とする請求項4記載の土砂搬送車。
【請求項6】
前記車台の走行方向両側には、異常時に前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を停止させる異常時停止手段がさらに設けられている、
ことを特徴とする請求項4記載の土砂搬送車。
【請求項7】
前記異常時停止手段は、検出物体からの反射光を検出する拡散反射型光電センサ、またはテープ状の感圧スイッチであるテープスイッチの少なくとも一つである、
ことを特徴とする請求項6記載の土砂搬送車。
【請求項8】
前記テープスイッチは坑口側および切羽側の最前方位置に設置されている、
ことを特徴とする請求項7記載の土砂搬送車。
【請求項9】
前記車台の両側部に立設された側壁、前記車台の前記坑口側に立設された坑口側壁、および前記車台の前記切羽側に立設された切羽側壁を備え、
前記坑口側壁は、上方に開口した形状とされ、
前記切羽側壁は、横方向に離隔した形状とされている、
ことを特徴とする請求項1記載の土砂搬送車。
【請求項10】
前記坑口側壁の外側には、取っ手が取り付けられている、
ことを特徴とする請求項9記載の土砂搬送車。
【請求項11】
前記荷台は、前記荷台載置部に載置されており、
前記荷台載置部には、前記荷台の水平方向の載置位置を規制する規制部材が設けられている、
ことを特徴とする請求項1記載の土砂搬送車。
【請求項12】
前記規制部材は、前記車台の走行方向両側に設けられたアングル材、および前記車台に立設された前記側壁の内側において当該側壁と直角をなして上下方向に延びる長尺状のプレートである、
ことを特徴とする請求項11記載の土砂搬送車。
【請求項13】
前記プレートは、前記側壁における前記ガイドローラの取付箇所の裏側に設置されている、
ことを特徴とする請求項12記載の土砂搬送車。
【請求項14】
四隅にフランジが相互に間隔を空けて設けられた矩形断面の鋼管と、
請求項1~13の何れか一項に記載の土砂搬送車とを有し、
前記土砂搬送車の前記駆動輪および前記従動輪は、前記鋼管の底面で隣り合った前記フランジの間を走行する位置に装着され、前記ガイドローラは、前記鋼管の側面で隣り合った前記フランジの間を通過する位置に取り付けられている、
ことを特徴とする土砂搬送システム。
【請求項15】
前記鋼管の坑口側端部および切羽側端部には、前記駆動輪または前記従動輪が接触して前記土砂搬送車が停止するストッパが設置されている、
ことを特徴とする請求項14記載の土砂搬送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土砂搬送車および土砂搬送システムに関し、特に、矩形断面の鋼管内で土砂の搬送をする土砂搬送車および土砂搬送システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道や道路など供用中の施設の下の地山に、本体構造物である函体(トンネル本体)を非開削で設置する施工法として、非開削推進工法が知られている。非開削推進工法は、地上の施設を使用したまま、その直下にトンネルを形成する技術であることから、地上面とトンネル上面の間隔が狭く、シールド工法等を使用できない場合に用いられる。
【0003】
非開削推進工法に分類される技術の中に、例えば、R&C工法(Roof & Culverts Method)やSFT工法(Simple and Face-Less Method of Construction of Tunnel)がある。両工法は、地山の発進側から到達側までの函体設置予定領域の外周に沿って矩形断面の鋼管を複数本隣接するように設置して箱形ルーフ(パイプルーフ)を形成した後、箱形ルーフを地山から押し出しながら函体を進入させて函体設置予定領域に設置する工法である。
【0004】
非開削推進工事においては、工期やコストを大きく左右する箱型ルーフ推進の合理的・効率的な施工が求められている。そのため、箱型ルーフを構築するために複数本の鋼管を地山に打設する際において、鋼管の閉塞端である切羽を掘削して発生する土砂を鋼管の開口端である坑口へ搬送して外部へ排出する坑内搬送を効率よく且つ低コストで行うことが重要となる。そして、土砂の坑内搬送では、土砂搬送車にワイヤを付けて人力で牽引したり、土砂搬送車そのものを人力で押すという作業が行われている。
【0005】
なお、搬送車については、例えば特許文献1に開示がある。この特許文献1では、車体の前部左右および後部左右の4か所に旋回可能な自在車輪を配設し、車体の前部および後部側に前進用駆動ユニットおよび後退用駆動ユニットを別個に設け、前進時には前進用駆動ユニットの作動に応じて後部側自在車輪の旋回を不能にし、後退時には後退用駆動ユニットの作動に応じて前部側自在車輪の旋回を不能にする旋回禁止手段を取り付けた無人運搬車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-171010公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、鋼管内での土砂搬送において土砂搬送車にワイヤを付けて人力で牽引したり、土砂搬送車を人力で押す作業では、土砂搬送車を牽引したり押すための人手が必要になる。特に、土砂搬送車を人力で押す作業では、切羽側に複数人の作業者を配置して切羽を掘削し且つ土砂搬送車を押すという作業を行わなければならず、作業効率が悪くなる。
【0008】
ウィンチを使って土砂搬送車を引っ張って走行させることも考えられるが、鋼管の切羽部と坑口部の両方の限られたスペースにウィンチを設置しなければならないという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、鋼管内で土砂を効率的に搬送することのできる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1記載の本発明の土砂搬送車は、非開削推進工法で箱型ルーフを形成するために地山に圧入される矩形断面の鋼管内の坑口側と切羽側との間を走行する土砂搬送車であって、土砂を積載可能な箱型の荷台が載置される荷台載置部を備えた車台と、前記車台に装着され、少なくとも一方が2つの車輪で構成された駆動輪および従動輪と、前記駆動輪を回転駆動するモータと、先端間の距離が前記鋼管の内壁面の距離よりも短く設定され、前記車台の両側部に設置されたガイドローラと、を有することを特徴とする。
【0011】
請求項2記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項1記載の発明において、前記駆動輪は前記車台の前記坑口側に装着され、前記従動輪は前記車台の前記切羽側に装着されている、ことを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項1に記載の発明において、前記ガイドローラは、水平方向に離間して2対取り付けられている、ことを特徴とする。
【0013】
請求項4記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項1記載の発明において、前記車台の走行方向両側には、前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を開始させる走行開始手段、および前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を停止させる走行停止手段が設けられている、ことを特徴とする。
【0014】
請求項5記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項4記載の発明において、前記走行停止手段は、作業者により操作される走行停止スイッチ、および前記鋼管の坑口側端部と切羽側端部とに設置されたリフレクタからの反射光を検出する回帰反射型光電センサである、ことを特徴とする。
【0015】
請求項6記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項4記載の発明において、前記車台の走行方向両側には、異常時に前記モータによる前記駆動輪の回転駆動を停止させる異常時停止手段がさらに設けられている、ことを特徴とする。
【0016】
請求項7記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項6記載の発明において、前記異常時停止手段は、検出物体からの反射光を検出する拡散反射型光電センサ、またはテープ状の感圧スイッチであるテープスイッチの少なくとも一つである、ことを特徴とする。
【0017】
請求項8記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項7記載の発明において、前記テープスイッチは坑口側および切羽側の最前方位置に設置されている、ことを特徴とする。
【0018】
請求項9記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項1記載の発明において、前記車台の両側部に立設された側壁、前記車台の前記坑口側に立設された坑口側壁、および前記車台の前記切羽側に立設された切羽側壁を備え、前記坑口側壁は、上方に開口した形状とされ、前記切羽側壁は、横方向に離隔した形状とされている、ことを特徴とする。
【0019】
請求項10記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項9記載の発明において、前記坑口側壁の外側には、取っ手が取り付けられている、ことを特徴とする。
【0020】
請求項11記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項1記載の発明において、前記荷台は、前記荷台載置部に載置されており、前記荷台載置部には、前記荷台の水平方向の載置位置を規制する規制部材が設けられている、ことを特徴とする。
【0021】
請求項12記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項11記載の発明において、前記規制部材は、前記車台の走行方向両側に設けられたアングル材、および前記車台に立設された前記側壁の内側において当該側壁と直角をなして上下方向に延びる長尺状のプレートである、ことを特徴とする。
【0022】
請求項13記載の本発明の土砂搬送車は、上記請求項12記載の発明において、前記プレートは、前記側壁における前記ガイドローラの取付箇所の裏側に設置されている、ことを特徴とする。
【0023】
上記課題を解決するため、請求項14記載の本発明の土砂搬送システムは、四隅にフランジが相互に間隔を空けて設けられた矩形断面の鋼管と、請求項1~13の何れか一項に記載の土砂搬送車とを有し、前記土砂搬送車の前記駆動輪および前記従動輪は、前記鋼管の底面で隣り合った前記フランジの間を走行する位置に装着され、前記ガイドローラは、前記鋼管の側面で隣り合った前記フランジの間を通過する位置に取り付けられている、ことを特徴とする。
【0024】
請求項15記載の本発明の土砂搬送システムは、上記請求項14記載の発明において、前記鋼管の坑口側端部および切羽側端部には、前記駆動輪または前記従動輪が接触して前記土砂搬送車が停止するストッパが設置されている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、切羽で掘削した土砂を荷台に積載した土砂搬送車が鋼管内を坑口まで自走するので、切羽から坑口まで土砂を搬送するための作業者が不要になる。これにより、鋼管内で土砂を効率的に搬送することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車が使用される箱型ルーフ用の鋼管を側面から示す説明図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を箱型ルーフ用の鋼管とともに示す側面図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を箱型ルーフ用の鋼管とともに示す平面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を箱型ルーフ用の鋼管の坑口側から見た正面図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を箱型ルーフ用の鋼管の切羽側から見た正面図である。
図6図3のA-A線に沿った断面図である。
図7】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を構成する搬送部を示す側面図である。
図8】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を構成する搬送部を示す平面図である。
図9】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を構成する搬送部を箱型ルーフ用の鋼管の坑口側から見た正面図である。
図10】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車を構成する搬送部を箱型ルーフ用の鋼管の切羽側から見た正面図である。
図11】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車に載置される荷台を示す側面図である。
図12】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車に載置される荷台を示す平面図である。
図13】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車に載置される荷台を箱型ルーフ用の鋼管の坑口側から見た正面図である。
図14】本発明の一実施の形態に係る土砂搬送車に載置される荷台を箱型ルーフ用の鋼管の切羽側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0028】
本実施の形態の土砂搬送車SVは、R&C工法やSFT工法などの非開削推進工法において、本体構造物である函体(トンネル本体)の設置予定領域の外周に沿って地山に箱型ルーフを構築するための箱型ルーフ用の鋼管内における掘削土砂の搬送のために使用される。
【0029】
図1に示すように、箱型ルーフ用の鋼管(以下、単に「鋼管」という。)1は断面が矩形形状を呈しており(図4および図5参照)、その圧入方向先端に刃口2が取り付けられている。刃口2は、側面視で上側が先行するように傾斜して形成されて地山を掘削するフード型の刃先部2aと、刃先部2aが取り付けられて鋼管1と同形状の矩形断面となった筒状の刃口取付部2bとからなる。そして、圧入時には刃口取付部2b内に作業者Hが入り鋼管1の圧入面である切羽を掘削する作業を行う。このとき、鋼管1内を往復する土砂搬送車SVに掘削土砂を積載し、切羽側から坑口側へと搬送して外部に排出している。
【0030】
鋼管1の両端の四隅および刃口2の鋼管1側の四隅には、鋼管1の軸方向に延びたリブFaを備えるとともにボルト貫通用の締結孔Fbが形成されて内周が円弧状になった補強用のフランジFが相互に間隔を空けて設けられている(図4および図5参照)。そして、ボルトとナットとで構成される締結具(図示せず)によって、鋼管1と刃口2とが締結され、鋼管1と鋼管1が締結されている。
【0031】
次に、このような鋼管1内を走行する土砂搬送車SVについて説明する。
【0032】
図2図6に示すように、本実施の形態の土砂搬送車SVは、走行機能を担う車両部Vと、車両部Vの上面に載置された土砂積載用の荷台Cとで構成されている。
【0033】
車両部Vは、図2図10に示すように、掘削土砂を積載する荷台Cを載置する荷台載置部11a(図8)を備えた車台11と、車台11の走行方向両側(つまり、車台11における鋼管1の坑口側および切羽側)に装着された駆動輪12aおよび従動輪12bと、車台11の両側部に立設された側壁13の外側に取り付けられて水平面内で回転するガイドローラ14とを備えており、鋼管1内を自走して坑口と切羽との間を往復する。
【0034】
図2図4および図5に示すように、本実施の形態では、駆動輪12aは車台11の坑口側に設置されており、従動輪12bは車台11の切羽側に設置されている。駆動輪12aは、車台11の下部に設けられた電装品ボックス15内のバッテリ15aから給電を受けて動作するモータ16の同軸上に配置されており、モータ16によって回転駆動される。なお、本実施の形態の土砂搬送車SVは時速2.5km程度で走行し、バッテリ15aでの稼働時間は約5時間となっている。また、バッテリ15aの充電時間は20Aで2時間、30Aで1時間となっている。但し、土砂搬送車SVのスペックはこれらの数値に限定されるものではないのはもちろんである。
【0035】
ここで、駆動輪12aが車台11の坑口側に設置されているのは、車台11の切羽側に設置されていると、切羽において掘削した土砂を荷台Cに積み込むときに駆動輪12aや電装部品であるモータ16に土砂が被りやすくなってしまうからである。但し、駆動輪12aが切羽側に装着され、従動輪12bが坑口側に設置されていてもよい。
【0036】
また、図4図5図9図10に示すように、車台11を静的に安定化させるために、駆動輪12aは1つの車輪で構成されているが、従動輪12bは2つの車輪で構成されている。但し、駆動輪12aが2つの車輪で、従動輪12bが1つの車輪で構成されていてもよく、駆動輪12aおよび従動輪12bがともに2つの車輪で構成されていてもよい。つまり、車台11を安定化させればよいことから、駆動輪12aおよび従動輪12bの少なくとも一方が2つの車輪で構成されていればよい。
【0037】
図3図5に示すように、ガイドローラ14は、先端間の距離が鋼管1の内壁面の距離よりも短く設定されて、鋼管1の内壁面と僅かに間隔が空くように設けられている。また、その取り付け高さは、鋼管1の高さの略半分程度になっている。これにより、土砂搬送車SVが走行して左右に揺れるとガイドローラ14が内壁面と接触して回転することから、土砂搬送車SVは鋼管1の内壁面にガイドされながら当該鋼管1内を自走する。
【0038】
また、図2図3図7図8に示すように、本実施の形態では、ガイドローラ14は水平方向に離間して2対取り付けられている。これにより、水平方向における両側部各2点が鋼管1の内壁面によって規制されることになり、走行中の土砂搬送車SVの水平方向の姿勢が安定する。但し、ガイドローラ14は1対であってもよい。
【0039】
なお、ガイドローラ14の取り付け高さは自由に設定でき、本実施の形態に示す鋼管1の高さの略半分程度の高さに限定されるものではない。また、ガイドローラ14は車台11の両側部から外方に突出して設置されていればよく、側壁13以外の場所に取り付けられていてもよい。
【0040】
ここで、図4および図5に示すように、前述した駆動輪12aおよび従動輪12bは、鋼管1の底面で隣り合ったフランジFの間を走行する位置に装着されている。また、ガイドローラ14は、鋼管1の側面で隣り合ったフランジFの間を通過する位置に取り付けられている。これにより、土砂搬送車SVはフランジFに衝突することなく鋼管1内を走行することができる。
【0041】
車台11の走行方向両側にはスイッチボックス17が設けられている。このスイッチボックス17は側壁13に取り付けられており、電源のオン/オフをするための電源スイッチ、鋼管1の坑口側や切羽側でモータ16による駆動輪12aの回転駆動を開始して土砂搬送車SVの走行を開始させるための走行開始スイッチ(走行開始手段)、鋼管1の坑口側や切羽側でモータ16による駆動輪12aの回転駆動を停止して土砂搬送車SVの走行を停止させるための走行停止スイッチ(走行停止手段)、走行中の土砂搬送車SVを非常停止させるための非常停止スイッチ(走行停止手段)が走行方向を向けて配列されている。また、これらのスイッチは作業者Hにより操作される。
【0042】
図4図5図9図10に示すように、車台11の走行方向両側には、モータ16による駆動輪12aの回転駆動を停止して走行を停止させる機構が設けられている。本実施の形態では、回帰反射型(ミラー型)光電センサ(走行停止手段)18a、拡散反射型光電センサ(異常時停止手段)18bおよびテープスイッチ(異常時停止手段)18cが用いられている。回帰反射型光電センサ18aは鋼管1の坑口側端部1aと切羽側端部1bとに設置されたリフレクタ30(図2図3)からの反射光を検出するセンサであり、停車位置において当該反射光が検出されるとモータ16による駆動輪12aの駆動が自動的に停止される。拡散反射型光電センサ18bは検出物体からの反射光を検出するセンサであり、検出物体からの反射光を受光することで検出物体の存在が検出されると(つまり、異常時に)モータ16による駆動輪12aの駆動が自動的に停止される。テープスイッチ18cはスナップアクション接点のテープ状の感圧スイッチであり、異常時に作業者Hが当該テープスイッチ18cに触れるとモータ16による駆動輪12aの駆動が自動的に停止される。なお、走行停止手段や異常時停止手段としては、回帰反射型光電センサ18a、拡散反射型光電センサ18bおよびテープスイッチ18cの何れか1つあるいは2つでもよく、これら以外であってもよい。
【0043】
そして、前述したスイッチボックス17に設けられた非常停止スイッチと相俟って、走行中の土砂搬送車SVを停止させる必要が生じた場合、モータ16による駆動輪12aの駆動が停止されるようになっている。
【0044】
図示するように、回帰反射型光電センサ18aは車台11の下部に、拡散反射型光電センサ18bはスイッチボックス17が設置された側壁13と反対側の側壁13に、テープスイッチ18cは車台11の坑口側および切羽側にそれぞれ立設された坑口側壁19aおよび切羽側壁19bの両側2カ所に縦方向に長く設置されている。また、テープスイッチ18cは、作業者が触れやすいように、図2図3に示すように、土砂搬送車SVにおける坑口側および切羽側の最前方となる位置に設置されている。そして、拡散反射型光電センサ18bは、LEDライトからなる前照灯20とともに側壁13のサイドボックス21内に設置されている。
【0045】
なお、図2図3に示すように、本実施の形態では、鋼管1の坑口側端部1aおよび切羽側端部1bに、駆動輪12aまたは従動輪12bが接触して土砂搬送車SVを停止させるためのストッパ31が設置されている。これにより、鋼管1の坑口側や切羽側に到達した土砂搬送車SVが何らかの理由により自動的に停止しなかった場合であっても、ストッパ31により強制的に停止させられるので、坑口から外に出たり、刃口2(図1)まで進入したりすることはない。
【0046】
ここで、図8に示すように、荷台載置部11aには、荷台Cの水平方向の載置位置を規制するための規制部材22が設けられている。この規制部材22は、車台11の走行方向両側に設けられたアングル材22a、および車台11の側壁13に取り付けられた長尺状のプレート22bである。アングル材22aは車台11の走行方向両側にそれぞれ間隔を開けて2カ所ずつボルト止めされており、荷台Cの走行方向に対するずれを規制している。また、プレート22bは側壁13と直角をなして上下方向に延びるように取り付けられており、荷台Cの走行方向と直交する方向のずれを規制している。
【0047】
これらアングル材22aおよびプレート22bで囲まれる領域は荷台Cの底面よりも幾分広くなっており(図3参照)、荷台Cを荷台載置部11aに載置しやすくなっている。
【0048】
なお、図2図3図7図8に示すように、プレート22bは側壁13のガイドローラ14の取付箇所の裏側に設置されている。これにより、ガイドローラ14が鋼管1の内壁面と接触して側壁13を内側に押す力が作用したとき、この力に対抗して側壁13を補強する機能をプレート22bが果たすことになる。
【0049】
さて、土砂搬送車SVの車両部Vを鋼管1の坑口側から見た図9に示すように、坑口側壁19aは、U字型に切り欠かれて上方に開口した形状になっている。そして、中央部の外側には、坑口側の作業者が土砂搬送車SVを手前に引っ張るときに把持される取っ手23が取り付けられている。一方、土砂搬送車SVの車両部Vを鋼管1の切羽側から見た図10に示すように、切羽側壁19bは、荷台Cからこぼれた土砂を切羽側に掃き出せるように、横方向に離隔した形状(つまり、左側の切羽側壁19bと右側の切羽側壁19bとに分かれた形状)になっている。但し、この横方向に離隔した形状とした場合、この部材の変形が懸念されるようなときには、坑口側壁と同様の開口した形状とすればよい。
【0050】
次に、荷台載置部11aに載置される荷台Cは、図11図14に示すように、四角形の底板40および底板40を取り囲むように立設された4枚の側板41~44で形成された箱型になっている。また、荷台Cの切羽側の側板44には、上方が開口した切り欠き部44aが形成されており、切羽での土砂の積み込み作業が行いやすくなっている。なお、この切り欠き部44aは、幅方向中央から所定の幅をもって形成されており、本実施の形態では、横方向が切羽側の側板44の幅のほぼ全体で、縦方向が切羽側の側板44の高さの半分よりも低い範囲となっている。但し、切り欠き部44aの形状は本実施の形態に限定されるものではないことはもちろんである。なお、荷台Cは掘削した土砂を積載するためのものであるが、土砂以外のもの(例えば、掘削に際して使用される様々な工具、治具など)を積載するために用いてもよい。
【0051】
これらの図面において、荷台Cの坑口側の側板43および切羽側の側板44には、荷台Cを吊り上げるときにクレーンのワイヤの先端に取り付けられたフック(図示せず)を引っ掛けるための吊り具45が取り付けられている。吊り具45は側板43,44の幅方向の中央にそれぞれ1箇所ずつ取り付けられており、荷台Cはこれらの吊り具45により2点で吊り上げられる。
【0052】
ここで、吊り具45を2箇所ずつ合計4箇所に取り付けて荷台Cを4点で吊り上げた場合、吊り上げ時には荷台Cが安定するものの、荷台Cを反転させにくくなって土砂を降ろす作業が行いにくくなる。これに対して、本実施の形態では、吊り具45を坑口側の側板43と切羽側の側板44とに1箇所ずつ取り付けて荷台Cを2点で吊り上げるようにしており、しかもこれらの吊り具45を側板43,44の幅方向の中央に取り付けているので、荷台Cを反転させやすくなり、土砂を降ろす作業を効率的に行うことが可能になる。なお、荷台Cを2点で吊り上げるようにした場合、吊り上げ時には作業者が荷台Cを支えて安定させておく。
【0053】
図示するように、切羽側の側板44の吊り具45は、当該側板44に切り欠き部44aが形成されていることから、当該切り欠き部44aの下であって荷台Cの高さの半分よりも低い取付位置になっている。これに対して、坑口側の側板43の吊り具45は、荷台Cの高さの半分よりもやや高い取付位置になっている。坑口側の側板43の吊り具45の取付位置を切羽側の側板44の吊り具45と同じ取付位置(荷台Cの高さの半分よりも低い取付位置)にした場合には、吊り上げ時における荷台Cの重心が高くなって不安定になるが、本実施の形態のように坑口側の側板43の吊り具45の取付位置を荷台Cの高さの半分よりもやや高くすれば、不安定になることはない。なお、坑口側の側板43の吊り具45は本実施の形態に示す取付位置に限定されるものではなく、荷台Cの高さの半分よりも低い位置であってもよい。但し、坑口側の側板43の吊り具45の取付位置を荷台Cの高さの半分以上の位置にすれば、吊り上げ時に荷台Cが不安定になることがないので望ましい。
【0054】
このように、本実施の形態では、切り欠き部44aの縦方向が切羽側の側板44の高さの半分よりも低い範囲となっていることから切羽側の側板44の吊り具45は荷台Cの高さの半分よりも低い取付位置になっているが、切り欠き部44aの縦方向が切羽側の側板44の高さの半分よりも高い範囲であれば、吊り具45は荷台Cの高さの半分以上の取付位置にしてもよい。
【0055】
なお、荷台Cを車台11の荷台載置部11aに載置した状態では、坑口側の側板43に取り付けられた吊り具45および切羽側の側板44に取り付けられた吊り具45は、それぞれ坑口側壁19aおよび切羽側壁19bに形成された開口に位置しており、坑口側壁19aおよび切羽側壁19b自体との干渉が回避されている。
【0056】
次に、このような構成を有する土砂搬送車SVの動作について説明する。
【0057】
切羽側にいる作業者が土砂搬送車SVの荷台Cに掘削土砂を積み込み、スイッチボックス17に設けられた走行開始ボタンを押すと、土砂搬送車SVは鋼管1内を坑口へと向けて走行を開始する。そして、ガイドローラ14により鋼管1の内壁面にガイドされながら鋼管1内を自走して坑口へ到達し、坑口側の作業者が走行停止ボタンを押すと停止する。
【0058】
坑口側では、作業者が吊り具45にフックを掛け、クレーンを操作して荷台Cを吊り上げ、所定位置で反転して土砂を降ろし、空になった荷台Cを再び荷台載置部11aに載置する。その後、坑口側の作業者が走行開始ボタンを押すと土砂搬送車SVが鋼管1内を自走して切羽へ戻り、切羽側の作業者が走行停止ボタンを押すと停止する。この作業を繰り返すことにより、切羽で掘削された土砂が自走式の土砂搬送車SVに積載されて坑口へ搬送され、外部へ排出される。
【0059】
このように、本実施の形態によれば、切羽で掘削した土砂を荷台に積載した土砂搬送車SVが鋼管1内を坑口まで自走する。したがって、人力で搬送する場合のように、切羽から坑口まで土砂を搬送するための作業者が不要になる。これにより、鋼管内で土砂を効率的に搬送することが可能になる。
【0060】
また、土砂の搬送が自走する土砂搬送車SVで行われることから、搬送に際して作業者は土砂搬送車SVの操作をするだけで足り特別な技能は要求は必要なく、熟練者でなくても作業を行うことができる。
【0061】
さらに、ウィンチを使って土砂搬送車を引っ張って走行させる場合のように、鋼管の切羽部と坑口部の両方の限られたスペースにウィンチを設置する必要もなくなる。
【0062】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、R&C工法やSFT工法などの非開削推進工法において地山に箱形ルーフを形成する際における掘削土砂の搬送に広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1 鋼管
1a 坑口側端部
1b 切羽側端部
11 車台
11a 荷台載置部
12a 駆動輪
12b 従動輪
13 側壁
14 ガイドローラ
15 電装品ボックス
15a バッテリ
16 モータ
17 スイッチボックス
18a 回帰反射型光電センサ(走行停止手段)
18b 拡散反射型光電センサ(異常時停止手段)
18c テープスイッチ(異常時停止手段)
19a 坑口側壁
19b 切羽側壁
22 規制部材
22a アングル材
22b プレート
23 取っ手
30 リフレクタ
31 ストッパ
40 底板
41~44 側板
44a 切り欠き部
45 吊り具
C 荷台
F フランジ
Fa リブ
Fb 締結孔
H 作業者
SV 土砂搬送車
V 車両部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14