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特開2024-140815セラミック電子部品、実装基板、及びセラミック電子部品の製造方法
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  • 特開-セラミック電子部品、実装基板、及びセラミック電子部品の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140815
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セラミック電子部品、実装基板、及びセラミック電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H01G4/30 516
H01G4/30 201G
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052159
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100206829
【弁理士】
【氏名又は名称】相田 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127513
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100140198
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 保子
(74)【代理人】
【氏名又は名称】奥井 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199691
【弁理士】
【氏名又は名称】吉水 純子
(72)【発明者】
【氏名】後藤 哲広
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AF06
5E082AA01
5E082AB03
5E082EE01
5E082FF05
5E082FG26
5E082GG10
5E082GG11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】素体に形成される外部電極の形状や位置、回路基板のパッド形状などの構成を変更することなく、音鳴きを抑制する積層セラミック電子部品を提供する。
【解決手段】実装基板1において、積層セラミック電子部品100は、セラミックを主成分とする複数の誘電体層11と、複数の内部電極層12と、が交互に積層された容量部を含む略直方体の素体10と、素体に設けられた外部電極20a、20bと、を備える。外部電極は、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層201と、中間上層202、中間下層203及び最内層204ののうち互いに隣接する2層である層(I)と層(II)とを含む積層体であり、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層の夫々の固有音響インピーダンスとの差が、29.0×10N・s/m以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックを主成分とする複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が交互に積層された容量部を含む略直方体形状の素体と、前記素体に設けられた外部電極と、を備え、
前記外部電極は、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体であり、
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上である、
セラミック電子部品。
【請求項2】
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスは、大きい値が小さい値の1.25倍以上である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項3】
前記層(I)は、W、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Cr、Cu、Zn、Ti、Sn、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含む、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項4】
前記層(I)は、Wを主成分元素として含む、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項5】
前記層(I)は、WとNiとの合金を含む、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項6】
前記合金におけるWの含有量は、WとNiの合計に対して0.1at%から49.9at%である、請求項5に記載のセラミック電子部品。
【請求項7】
前記層(I)は、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Alを主成分元素として含む、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項8】
前記層(I)は、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Snを主成分元素として含む、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記層(I)は、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Zn、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含む、請求項3に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記層(I)及び前記層(II)の少なくとも一方は、ヤング率が80GPa以下である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記層(I)及び前記層(II)はいずれも、ヤング率が80GPa以下である、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記外部電極は、前記素体の対向する端面に少なくとも1対備えられる、請求項1に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のセラミック電子部品が、基板に実装された実装基板。
【請求項14】
前記セラミック電子部品の前記外部電極は、前記素体において少なくとも、前記基板に垂直な2つの側面と、前記基板に面する下面と、に延在している、請求項13に記載の実装基板。
【請求項15】
誘電体グリーンシート上に、内部電極パターンを形成することによって積層単位を形成することと、
複数の前記積層単位を積層することによって焼成前の容量部を形成することと、
前記焼成前の容量部を含む焼成前の素体を焼成して素体とすることと、
前記素体に外部電極を形成することと、
を含み、
前記外部電極を、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体とし、
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差を、29.0×10N・s/m以上とする、
セラミック電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック電子部品及び当該セラミック電子部品が基板に実装された実装基板、並びにセラミック電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯端末、パーソナルコンピュータ、車載電子機器等の電子機器には、コンデンサ、インダクタなどの部品が実装された回路基板が備えられている。コンデンサとしては、例えば、積層セラミックコンデンサが挙げられ、積層セラミックコンデンサは、高周波回路及び電力回路において、ノイズバイパスや電圧安定化等を目的として用いられている。
【0003】
積層セラミックコンデンサは、セラミックを主成分とする複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が交互に積層された容量部を含む素体を備えるセラミック電子部品である。素体には、少なくとも2つの外部電極が備えられ、各外部電極はそれぞれ、複数の内部電極層の一部の端縁に電気的に接続されている。
【0004】
この積層セラミックコンデンサの回路基板への実装は、はんだを用いてなされ、具体的には、積層セラミックコンデンサの各外部電極を、回路基板に設けられたパッドの表面に、はんだを用いて接合することで実装される。
【0005】
このような実装構造において、回路基板の各パッドを通じて外部電極間に電圧、特に交流電圧を印加すると、容量部を構成している誘電体層の圧電効果により、誘電体層に歪み(主として容量部の積層方向に縮むような収縮とその復元、及び伸びるような伸延とその復元)が発生する。この歪み(伸縮)に伴う応力による弾性波が、外部電極及びはんだを通じて回路基板に伝わって振動を招来し、この振動によって可聴域の振動音(音鳴き)を発生することがある。
【0006】
上記の音鳴きを抑制するために、特許文献1においては、外部電極の形成方法と実装方法とを変更することが提案されている。具体的には、基板に垂直な4面のうち1面のみに外部電極を形成して回路基板に実装することで、回路基板の振動を低減し、音鳴きを抑制するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2012-227491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般的な積層セラミックコンデンサは、回路基板に垂直な4面のうち面積が小さい2面に外部電極が形成され、回路基板に実装される。このため、特許文献1に記載の方法では、回路基板のパッド形状などの構成を変更する必要がある。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑みてなされたものであり、素体に形成される外部電極の形状や位置、回路基板のパッド形状などの構成を変更することなく、音鳴きを抑制することのできる、積層セラミック電子部品、及び実装基板、並びにセラミック電子部品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた。そして、セラミック電子部品が備える外部電極を、固有音響インピーダンスが特定の関係を満たす材料からなる層構成の積層体とすれば、外部電極の形状や位置、回路基板のパッド形状などの構成を変更することなく、音鳴きを抑制することのできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
[1]
セラミックを主成分とする複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が交互に積層された容量部を含む略直方体形状の素体と、前記素体に設けられた外部電極と、を備え、
前記外部電極は、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体であり、
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上である、
セラミック電子部品。
[2]
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスは、大きい値が小さい値の1.25倍以上である、態様[1]に記載のセラミック電子部品。
[3]
前記層(I)は、W、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Cr、Cu、Zn、Ti、Sn、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含む、態様[1]に記載のセラミック電子部品。
[4]
前記層(I)は、Wを主成分元素として含む、態様[3]に記載のセラミック電子部品。
[5]
前記層(I)は、WとNiとの合金を含む、態様[3]に記載のセラミック電子部品。
[6]
前記合金におけるWの含有量は、WとNiの合計に対して0.1at%から49.9at%である、態様[5]に記載のセラミック電子部品。
[7]
前記層(I)は、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Alを主成分元素として含む、態様[3]に記載のセラミック電子部品。
[8]
前記層(I)は、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Snを主成分元素として含む、態様[3]に記載のセラミック電子部品。
[9]
前記層(I)は、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、
前記層(II)は、Zn、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含む、態様[3]に記載のセラミック電子部品。
[10]
前記層(I)及び前記層(II)の少なくとも一方は、ヤング率が80GPa以下である、態様[1]~[9]のいずれか一態様に記載のセラミック電子部品。
[10]
前記層(I)及び前記層(II)はいずれも、ヤング率が80GPa以下である、態様[1]~[10]のいずれか一態様に記載のセラミック電子部品。
[12]
前記外部電極は、前記素体の対向する端面に少なくとも1対備えられる、態様[1]~[10]のいずれか一態様に記載のセラミック電子部品。
[13]
態様[1]~[12]のいずれか一態様に記載のセラミック電子部品が、基板に実装された実装基板。
[14]
前記セラミック電子部品の前記外部電極は、前記素体において少なくとも、前記基板に垂直な2つの側面と、前記基板に面する下面と、に延在している、態様[13]に記載の実装基板。
[15]
誘電体グリーンシート上に、内部電極パターンを形成することによって積層単位を形成することと、
複数の前記積層単位を積層することによって焼成前の容量部を形成することと、
前記焼成前の容量部を含む焼成前の素体を焼成して素体とすることと、
前記素体に外部電極を形成することと、
を含み、
前記外部電極を、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体とし、
前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差を、29.0×10N・s/m以上とする、
セラミック電子部品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明のセラミック電子部品によれば、セラミック電子部品が実装された回路基板の振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制することができる。本発明のセラミック電子部品によれば、外部電極の形状や位置、回路基板のパッド形状などの構成を変更することなく、音鳴きを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】積層セラミックコンデンサが実装された実装基板の断面図である。
図2】実施例4で作製した実装基板の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、実施形態について説明する。
【0015】
<積層セラミックコンデンサ>
積層セラミックコンデンサは、セラミックを主成分とする複数の誘電体層と複数の内部電極層とが交互に積層された容量部を含む素体と、素体の表面に各々が離間するように形成された少なくとも2つの外部電極と、を備え、各外部電極はそれぞれ、容量部から引き出された一部の内部電極層に接続している。
【0016】
積層セラミックコンデンサの素体は、略直方体形状の外形を有し、素体は、高さ方向に対向する上面と下面、上面と下面に接し素体の長さ方向に対向する2つの端面、及び上面と下面に接し素体の幅方向に対向する2つの側面を有する。
【0017】
積層セラミックコンデンサにおける複数の誘電体層と複数の内部電極層の積層方向は、素体の高さ方向であっても、素体の長さ方向であっても、素体の幅方向であっても、それ以外の方向であってもよい。
【0018】
外部電極は、互いに離間していれば、素体において、内部電極層が引き出された面から、隣接する素体の他の面へと延在していてもよい。
【0019】
以下、図1を用いて、本発明のセラミック電子部品について更に詳細に説明する。なお、図1は、セラミック電子部品である積層セラミックコンデンサの一例であり、本発明は本態様に限定されるものではない。
【0020】
図1は、積層セラミックコンデンサ100が実装された実装基板1の断面図である。図1に例示された積層セラミックコンデンサ100は、略直方体形状を有する素体10と、素体10の2端面に設けられた互いに離間した、2つの外部電極20a及び20bを備える。なお、素体10の外部電極20a及び20bを備えない4面のうち、素体10の上下方向の面はそれぞれ上面及び下面、素体10の上面及び下面以外の2面は側面である。
【0021】
図1に示される積層セラミックコンデンサ100においては、端面に設けられた外部電極20a及び20bは、素体10の積層方向の上面、下面、及び2つの側面に延在している。ただし、外部電極20a及び20bは、互いに離間している。なお、図1において、X軸方向(第1方向)は、素体10の長さ方向であって、外部電極20aと外部電極20bとが対向する方向である。Y軸方向(第2方向)は、内部電極層の幅方向である。Z軸方向(第3方向)は、積層方向である。X軸方向と、Y軸方向と、Z軸方向とは、互いに直交している。
【0022】
積層セラミックコンデンサ100の大きさは、特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜変更することができる。積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ0.25mm、幅0.125mm、高さ0.125mmであり、又は長さ0.4mm、幅0.2mm、高さ0.2mm、又は長さ0.6mm、幅0.3mm、高さ0.3mmであり、又は長さ1.0mm、幅0.5mm、高さ0.5mmであり、又は長さ3.2mm、幅1.6mm、高さ1.6mmであり、又は長さ4.5mm、幅3.2mm、高さ2.5mmである。積層セラミックコンデンサ100のサイズは、例えば、長さ>幅≧高さであってもよく、幅>長さ≧高さであってもよく、高さ>長さ≧幅であってもよく、高さ>幅≧長さであってもよい。
【0023】
以下、本開示のセラミック電子部品構成する各部分の材料等について詳述する。
【0024】
[誘電体層]
本開示のセラミック電子部品における誘電体層は、セラミックを主成分とするものであれば特に限定されず、セラミック電子部品に要求される特性に応じて適宜選択すればよい。誘電体層としては、例えば、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料を主成分とするものが挙げられる。なお、当該ペロブスカイト構造は、化学量論組成から外れたABO3-αを含む。ここで、式中のαは、化学量論からのずれを意味する。以下、αは省略して表記される。
【0025】
誘電体層となる、一般式ABOで表されるペロブスカイト構造を有するセラミック材料としては、例えば、BaTiO(チタン酸バリウム)、CaZrO(ジルコン酸カルシウム)、CaTiO(チタン酸カルシウム)、SrTiO(チタン酸ストロンチウム)、ペロブスカイト構造を形成するBa1-xyCaSrTi1-zZr(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1)等を挙げることができる。中では、チタン酸バリウム(BaTiO)を主成分とするものが好ましい。
【0026】
1層あたりの誘電体層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.05μm以上5μm以下であり、又は0.1μm以上3μm以下であり、又はは0.2μm以上1μm以下である。
【0027】
[内部電極層]
本開示のセラミック電子部品における内部電極層は、例えば、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Sn(スズ)等の卑金属を主成分元素として含む。Pt(白金)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Au(金)等の貴金属や、これらを含む合金が含まれていてもよい。ここで、本明細書における「主成分元素」とは、原子百分率(at%)で表した含有量が最も多い元素を意味する。
【0028】
例えば、内部電極層を、ニッケルを主成分元素として含むものすると、貴金属等の高価な材料の使用量を抑制できるため、積層セラミックコンデンサの製造コストを低減できる。
【0029】
1層あたりの内部電極層の厚みは、特に限定されるものではないが、例えば、0.01μm以上5μm以下であり、又は0.05μm以上3μm以下であり、又は0.1μm以上1μm以下である。
【0030】
内部電極層の積層数は、例えば、10から5000であり、50から4000であり、100から3000である。
【0031】
[カバー層及びサイドマージン部]
カバー層及びサイドマージン部は、容量部の上面、下面、及び側面にそれぞれ設けられ、誘電体層及び内部電極層を保護する保護部として機能する。
【0032】
カバー層及びサイドマージン部は、電気的絶縁性が高く、水分等の劣化因子の透過性が低いものであれば、その材料は限定されない。セラミック電子部品の素体を製造する際に焼成中の収縮を均一にすることや、セラミック電子部品内における内部応力を緩和すること等の観点からは、カバー層及びサイドマージン部の材料は、誘電体層を形成する材料と同じものとすることが好ましい。
【0033】
[外部電極]
本開示のセラミック電子部品は、素体の表面に設けられた外部電極を備える。本開示のセラミック電子部品における外部電極は、例えば、素体の表面に少なくとも2つ、各々が離間するように備えられていればよい。外部電極の形状、及び素体における位置は、特に限定されるものではなく、回路パターン等に応じて適宜設定することができる。
【0034】
図1に示される積層セラミックコンデンサ100においては、外部電極20a及び20bの2つが、素体10の端面に互いに離間して設けられており、外部電極20a及び20bはそれぞれ、素体10の積層方向の上面、下面、及び2つの側面に延在している。
【0035】
本開示のセラミック電子部品における外部電極は、最外層と、それに加えて少なくとも2層を備える積層体の構造となっている。更に具体的には、最外層と、少なくとも、後述する隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体である。
【0036】
本開示のセラミック電子部品においては、外部電極は、例えば、素体の端面と、当該端面に連結している下面と2つの側面と、に延在するように備えられていてもよい。そのようなセラミック電子部品を基板に実装する場合には、実装基板の状態で、基板に垂直な2つの側面と、基板に面する素体の下面と、に外部電極が延在しているように配置する。すなわち、基板に面さない素体の積層方向の上面には、外部電極となる積層体の少なくとも一部の層又は全部の層が延在していなくてもよい。上面に外部電極となる積層体の少なくとも一部の層又は全部の層を有さないことにより、実装基板の厚みをより薄くすることが可能となるとともに、製造コスト及び製品コストを低減することができる。
【0037】
本開示のセラミック電子部品の外部電極は、上記の通り、最外層と、それに加えて隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体である。したがって、外部電極は、少なくとも、最外層と、層(I)と、層(II)と、を含む3層以上の積層体となっている。
【0038】
本開示のセラミック電子部品の外部電極の最外層は、回路基板に実装されるときのはんだ濡れ性を確保するための層である。はんだ濡れ性を確保するために、最外層は、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなっている。
【0039】
本開示のセラミック電子部品の外部電極の最外層は、回路基板に実装される際にはんだ側に溶融することで、はんだ濡れ性を確保する。一般的に、実装の際に使用されるはんだは、Snを主成分としている。そして、実装の際に外部電極の最外層がはんだ側に溶解する量は、はんだの全体量に比べて非常に小さいことから、外部電極の最外層の固有音響インピーダンスは、ほぼSn単体材料の固有音響インピーダンストとみなしてもよい。
【0040】
したがって、本開示において、外部電極の最外層の材料という場合は、実際に外部電極の最外層を構成する材料そのものを意味し、外部電極の最外層の固有音響インピーダンスという場合は、外部電極の最外層を構成する材料が融解して形成されるSn合金の固有音響インピーダンスを意味する。外部電極の最外層の材料そのものの固有音響インピーダンスは、本発明の効果を左右しない。
【0041】
そして、本開示のセラミック電子部品の外部電極は、前記最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンス差が、29.0×10N・s/m以上である。ここで、本開示のセラミック電子部品の外部電極においては、層(I)と層(II)の固有音響インピーダンスの大小はいずれであってもよく、すなわち、外部電極における層(I)と層(II)は、隣り合った積層配置であれば、どちらが素体に近い配置となっていてもよい。
【0042】
更には、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスは、大きい値が小さい値の1.25倍以上であることが好ましく、1.4倍以上であることが更に好ましい。
【0043】
本開示において、外部電極である積層体がいかなる元素を含む層で形成されているかの確認は、以下の手順で実施することができる。まず、セラミック電子部品の外部電極から、収束イオンビーム装置(FIB)を用いて、外部電極の積層体の積層方向に平行な面を主面とする、厚さ50nmから100nmの薄片試料を取り出す。次いで、薄片状試料中央部付近を、エネルギー分散型エックス線分光(EDS)検出器を搭載した走査型透過電子顕微鏡(STEM)を用いて観察し、外部電極を構成する層の積層界面を確認する。次いで、EDSを用いて、積層方向にわたる、すなわち積層界面に垂直な方向に線分析を行い、各測定箇所における各金属元素の特性エックス線強度を測定する。測定は、加速電圧を200kV、電子ビーム径を1.0nmとし、1測定点あたりの測定時間は20分とする。また、測定は、1測定点について5回以上繰り返して実施し、得られた各元素の特定エックス線強度の平均値を、該測定点における各元素の特性エックス線強度とする。次いで、各測定点について、得られた各元素の特性エックス線強度から、原子番号効果、吸収効果、及び蛍光励起効果を勘案した補正(ZAF補正)を行って、各測定点での各元素の原子百分率を算出し、これを測定位置に対してプロットしてグラフを作図する。得られたグラフより、どのような元素が存在しているのかを確認することができる。
【0044】
確認の結果、単体金属で形成されていると判定された層など、構成材料の固有音響インピーダンスが既知の層については、当該既知の固有音響インピーダンスを有するものとする。固有音響インピーダンスが報告されていない合金や、主成分元素に対して異種元素を固溶させたものなどについては、同じ組成の材料からなる試験片を作製し、密度と音速をそれぞれ個々に測って、固有音響インピーダンスを算出してもよく、音響インピーダンス計測装置によって得られた値を、当該層の固有音響インピーダンスとすることもできる。
【0045】
外部電極の積層体について、セラミック電子部品の一例である積層セラミックコンデンサ100が示された図1を用いて説明する。図1に示される積層セラミックコンデンサ100においては、外部電極20a及び20bは、最外層201、中間上層202、中間下層203、最内層204の4層からなる積層体であり、最内層204が素体10に接している。
【0046】
図1に示される積層セラミックコンデンサ100における外部電極20a及び20bにおいては、最外層201、中間上層202、中間下層203、最内層204の4層のうち、最外層201を除く隣接する2層が、層(I)と層(II)となりうる。すなわち、図1に示される外部電極20a及び20bにおいては、層(I)と層(II)として、中間上層202と中間下層203、その逆の組み合わせ、中間下層203と最内層204、及びその逆の組み合わせ、が挙げられる。
【0047】
図1に示される積層セラミックコンデンサ100における外部電極20a及び20bにおいては、上記の組み合わせのいずれかで、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上となっている。なお、上記の通り、最外層の固有音響インピーダンスとは、最外層を構成する材料が融解して形成されるSn合金の固有音響インピーダンスを意味する。
【0048】
材料の固有音響インピーダンスとは、材料に固有の値であり、材料の密度と音速(伝搬速度)との積で表される。表1に、各種金属の密度、伝搬速度、及び固有音響インピーダンスを示す。一般に、二つの材料の固有音響インピーダンスの差が大きいほど、二つの材料の界面における波の反射率は大きくなる。
【0049】
セラミック電子部品の外部電極となる積層体において、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上であれば、層界面での波の反射が大きくなって振動が伝わりにくくなるため、回路基板の振動、及びこれに起因する音鳴きを抑制することができる。なお、最外層の固有音響インピーダンスと、層(I)の固有音響インピーダンスと、層(II)の固有音響インピーダンスは、いずれの値が大きくてもよく、隣接するいずれか2層の差の絶対値が29.0×10N・s/m以上であればよい。
【0050】
【表1】
出典:弾性波素子技術ハンドブック、株式会社 オーム社、日本学術振興会弾性波素子技術第150委員会 編、平成3年11月30日初版
【0051】
本開示のセラミック電子部品の外部電極においては、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上であり、層(I)が、W、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、層(II)が、Cr、Cu、Zn、Ti、Sn、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含むことが好ましい。上記の主成分元素は、当該元素の金属そのもので層を形成していてもよいし、当該元素の金属を含む合金であってもよい。
【0052】
中では、層(I)が、Wを主成分元素として含み、層(II)が、Cr、Cu、Zn、Ti、Sn、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含むことが好ましい。Wは、材料固有の音響インピーダンスは飛びぬけて非常に大きいため、層(II)を構成する材料の固有音響インピーダンスとの差を大きくすることができ、その結果、音鳴きの抑制効果が大きくなる。
【0053】
更には、層(I)が、WとNiとの合金を含み、層(II)が、Cr、Cu、Zn、Ti、Sn、及びAlからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含むことが好ましい。上記の通り、Wは、材料固有の音響インピーダンスは飛びぬけて非常に大きいため、音鳴きの抑制効果を大きく発現させることができるが、更に、WとNiとの合金であれば、外部電極を製造する際にめっき処理を用いて層(I)を形成することが可能となる。特に、Wの含有量がWとNiの合計に対して0.1at%から49.9at%の範囲のWとNiとの合金であれば、常温で液化状態となっているため、容易にめっき処理することができ、外部電極の製造に際して既存の設備を用いることができるため、有益である。加えて、Wの含有量がWとNiの合計に対して0.1at%から49.9at%の範囲のWとNiとの合金は、純Niからなる層よりも固有音響インピーダンスが大きくなるため、固有音響インピーダンスの小さい材料からなる層に隣接させることにより、容易に本発明の効果を発現させることができる。
【0054】
層(I)が、W、Pt、Auからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、かつ最外層に層(I)が隣接していてもよい。この組み合わせであれば、層(I)を構成する材料の固有音響インピーダンスと、最外層の固有音響インピーダンス(最外層を構成する材料が融解して形成されるSn合金の固有音響インピーダンス)との差が、29.0×10N・s/m以上となる。
【0055】
層(I)が、Pt、Au、Ni、及びFeからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、層(II)が、Alを主成分元素として含んでいてもよい。上記の通り、Alは、通常電極に用いられる良電導材料において材料固有の音響インピーダンスが最も低いため、音鳴きの抑制効果を大きく発現させることができる。また、この組み合わせであれば、層(I)を構成する材料の固有音響インピーダンスと、層(II)を構成する材料の固有音響インピーダンスとの差が、29.0×10N・s/m以上となる。
【0056】
層(I)が、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、層(II)が、Snを主成分元素として含んでいてもよい。この組み合わせであれば、層(I)を構成する材料の固有音響インピーダンスと、層(II)を構成する材料の固有音響インピーダンスとの差が、29.0×10N・s/m以上となる。
【0057】
層(I)が、Pt、及びAuからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含み、層(II)が、Zn、及びTiからなる群より選ばれる少なくとも一種を主成分元素として含んでいてもよい。この組み合わせであれば、層(I)を構成する材料の固有音響インピーダンスと、層(II)を構成する材料の固有音響インピーダンスとの差が、29.0×10N・s/m以上となる。
【0058】
なお、本開示において、層(I)及び層(II)を構成する材料は、それぞれ、所定の固有音響インピーダンス差が得られる範囲内で、上記各元素に対して異種元素を固溶させたものであってもよい。例えば、Cuに固有音響インピーダンスが小さいZnを固溶させて、70%Cu、30%Znの組成の黄銅として使用してもよい。
【0059】
更に、層(I)及び層(II)は、少なくとも一方が、ヤング率が80GPa以下であることが好ましく、層(I)及び層(II)のいずれもが、ヤング率が80GPa以下であることが更に好ましい。
【0060】
セラミック電子部品が回路基板に実装された実装基板は、外部からの振動により、外部電極を介して該基板のパッド部と接続された素体の下地部分に、クラックが発生し、構造欠陥を生じることがある。更に、素体を構成している誘電体層の圧電効果により、誘電体層に歪み(主として容量部の積層方向に縮むような収縮とその復元、及び伸びるような伸延とその復元)が発生し、この歪み(伸縮)に伴う弾性波が、外部電極及びはんだを通じて該基板に伝播して作用することで振動を招来し、この振動によって音鳴きを発生することがある。
【0061】
本開示のセラミック電子部品において、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差が、29.0×10N・s/m以上であり、かつ、層(I)及び層(II)のヤング率がいずれも、80GPa以下であれば、外部からの振動が素体の下地部分に伝わりにくくなり、素体下地の応力集中が緩和されることで、音鳴きとともにクラックの発生を抑制することができる。
【0062】
表2に、各種金属の固有音響インピーダンスと、ヤング率を示す。層(I)又は層(II)を構成する材料の少なくとも一種として、表2に基づいて適宜選択することが可能である。
【0063】
【表2】
【0064】
<実装基板>
本開示の実装基板は、上記の本開示のセラミック電子部品が、基板に実装された実装基板である。具体的には、本開示のセラミック電子部品が、基板の表面に、はんだにて接合されたものである。更に具体的には、セラミック電子部品の外部電極部分が、はんだにて基板に接合される。
【0065】
図1に示される実装基板1においては、積層セラミックコンデンサ100の外部電極20a及び20bが、基板5の表面に、はんだ4にて接合されている。
【0066】
<セラミック電子部品の製造方法>
本開示のセラミック電子部品の製造方法は、外部電極を、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の金属合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体とし、最外層と、層(I)と、層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差を、29.0×10N・s/m以上となるようにする以外は、特に限定されるものではない。
【0067】
例えば、複数の誘電体層と複数の内部電極層とを含む容量部を含む素体を形成することと、得られた素体に、上記の外部電極を形成することと、を含むものであってよい。
【0068】
素体を形成する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を用いることができる。例えば、誘電体グリーンシートを用いて積層を実施した後に焼成してもよいし、薄膜プロセスを用いて積層した後に熱処理を実施してもよい。
【0069】
本開示のセラミック電子部品の製造方法は、例えば、誘電体グリーンシート上に、内部電極パターンを形成することによって積層単位を形成することと、複数の前記積層単位を積層することによって焼成前の容量部を形成することと、前記焼成前の容量部を含む焼成前の素体を焼成して素体とすることと、前記素体に外部電極を形成することと、を含み、前記外部電極を、Sn、Au、Ag、Cu、はんだより低融点の単体金属、及びはんだより低融点の合金からなる群より選ばれる少なくとも一種からなる最外層と、互いに隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体とし、前記最外層と、前記層(I)と、前記層(II)のうち、隣接するいずれか2層のそれぞれの固有音響インピーダンスの差を、29.0×10N・s/m以上とするものであってよい。
【0070】
[外部電極の形成]
本開示のセラミック電子部品の外部電極は、最外層と、それに加えて隣接する層(I)と層(II)とを含む積層体である。したがって、外部電極は、少なくとも、最外層と、層(I)と、層(II)と、を含む3層以上の積層体となっている。
【0071】
公知の方法を用いて形成した素体に、外部電極を形成する場合には、まず、素体の引出面に導体ペーストを付着させた後に焼き付け、これにより、素体に外部電極の最内層を形成する。導体ペーストを付着させる方法としては、印刷やディップ等が挙げられる。なお、形成された外部電極の最内層が、本開示の層(I)又は層(II)であってもよく、その場合には、当該層最内層の直上に形成される層が、層(II)又は層(I)となる。
【0072】
外部電極の最内層を形成した後は、当該最内層の上に外部電極のその他の層を順次積層形成し、最終的な外部電極の積層体を得る。
【0073】
また、例えば、素体を得る焼成の工程にて外部電極の最内層を作製した場合には、作製された最内層の上に外部電極のその他の層を順次積層形成して、最終的な外部電極の積層体を得る。
【0074】
最内層の上に形成される外部電極のその他の層は、公知の方法で形成することができ、例えば、めっきやスパッタリングによって形成することができる。
【0075】
<実装基板の製造方法>
本開示の実装基板は、本開示のセラミック電子部品を、基板の表面に、はんだにて接合することにより製造することができる。更に具体的には、セラミック電子部品の外部電極部分を、はんだ付けによって基板に接合する。
【0076】
セラミック電子部品の外部電極の積層体の全部の層又は一部の層が、素体の端面と、当該端面に連結している下面と2つの側面のみに延在している場合には、外部電極を有さない面が上面となるように配置して、はんだにより基板に接合する。
【0077】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々に改変することができる。
【0078】
例えば、上述した実施形態では、本発明に係るセラミック電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明にセラミック係る電子部品としては積層セラミックコンデンサに限らず、複数の誘電体層と、複数の内部電極層と、が積層された容量部を含む素体を備える電子部品であれば、何でもよい。
【実施例0079】
以下、実施例等により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0080】
<実施例1>
[内部電極用ペーストの準備]
Niを用いた内部電極用ペーストを準備した。内部電極用ペーストは、Ni粉末と、ビヒクルとを、三本ロールミルで混合することで作製した。
【0081】
[内部電極パターン及び引き出しパターンの形成]
誘電体グリーンシートを準備し、その表面に、上記で作製した内部電極用ペーストを印刷し、内部電極パターンを形成した。引き出しパターンについても、内部電極用ペーストを用いて、内部電極パターンの印刷時に合わせて印刷した。
【0082】
[焼成前の素体の作製]
内部電極パターン及び引き出しパターンが形成された誘電体グリーンシートを、あらかじめ準備したカバー層の上に13層積層し、更にその上にカバー層を積層した。続いて、加熱しながら190MPa程度の圧力で加圧して圧着させることで、焼成前の容量部を含む焼成前の素体の集合体である圧着体を得た。
【0083】
[素体の作製(焼成前の素体の焼成)]
得られた圧着体をカットして個片化することで焼成前の素体を得た後、窒素雰囲気中で300℃まで加熱して脱バインダ処理を行った。焼成途上の素体において引き出しパターンが引き出された素体の引出面を、ニッケルを含む導電性ペースト中に浸し、外部電極の最内層となる前駆体を形成した。続いて、外部電極の最内層の前駆体が形成された焼成途上の素体を、窒素中に水素を含む還元ガスに水蒸気を導入した、いわゆる還元-水蒸気雰囲気中にて、800℃で30分保持した後に、1200℃で2時間焼成した後、降温途中で、窒素雰囲気中700℃で1時間保持し、室温付近まで降温して、焼成した。
【0084】
得られた積層セラミックコンデンサは、素体の積層方向に垂直な面が1.0mm×0.5mmの略直方体形状を有し、誘電体層の厚みが0.6μmであった。
【0085】
[外部電極の作製]
続いて、形成した外部電極の最内層となるNi層上に、めっきによりCu層を形成した。更に、Cu層上に、スパッタリングによりW層を形成し、最後に、W層上に、めっきによりSn層を形成することで、4層積層体の外部電極を作製した。実施例1で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極の層構成と、固有音響インピーダンス及びヤング率を、表3に示す。
【0086】
【表3】
【0087】
実施例1で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、隣接する2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、最外層Snと中間上層Wとの差である78.4×10N・s/mであり、29.0×10N・s/mよりもはるかに大きい値となっている。したがって、実施例1で作製した積層セラミックコンデンサにおいて、層(I)と層(II)としては、最外層Snと中間上層Wとが相当し、実施例1で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、積振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制する効果が得られる。
【0088】
<実施例2>
外部電極の作製を以下の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0089】
[外部電極の作製]
形成した外部電極の最内層となるNi層上に、めっきによりCu層を形成した。更に、Cu層上に、スパッタリングによりW層を形成し、W層上にめっきにより、Ni層、続いてSn層を形成することで、5層積層体の外部電極を作製した。実施例2で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極の層構成と、固有音響インピーダンス及びヤング率を、表4に示す。
【0090】
【表4】
【0091】
実施例2で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、隣接する2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、中間層Wと中間下層Cuとの差である58.4×10N・s/mであり、29.0×10N・s/mよりもはるかに大きい値となっている。したがって、実施例2で作製した積層セラミックコンデンサにおいて、層(I)と層(II)としては、中間層Wと中間下層Cuとが相当し、実施例2で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制する効果が得られる。
【0092】
<実施例3>
外部電極の作製を以下の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。実施例3は、固有音響インピーダンスの小さい材料であるAlを用いた例である。
【0093】
[外部電極の作製]
形成した外部電極の最内層となるNi層上に、めっきによりAl層を形成した。更に、Al層上にめっきにより、Ni層、続いてSn層を形成することで、4層積層体の外部電極を作製した。なお、Al層に酸化膜が形成された場合には、ブラスト処理にて酸化膜を除去した後に、上部層であるNi層を形成してもよい。実施例4で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極の層構成と、固有音響インピーダンス及びヤング率を、表5に示す。
【0094】
【表5】
【0095】
実施例3で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、隣接する2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、中間上層Niと中間下層Alとの差、又は中間下層Alと最内層Niとの差である36.2×10N・s/mであり、29.0×10N・s/mよりも大きい値となっている。したがって、実施例3で作製した積層セラミックコンデンサにおいて、層(I)と層(II)としては、中間上層Niと中間下層Al、又は中間下層Alと最内層Niとが相当し、実施例3で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制する効果が得られる。
【0096】
<実施例4>
外部電極の形状を図2に示す通りとした以外は、実施例2と同様の層構成にて、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。すなわち、実施例4は、中間層Wに隣接している中間上層Ni、及び中間上層Niに隣接している最外層Snが、基板に面さない上面に延在していない例である。なお、中間層Wに隣接している中間上層Niの形成は、スパッタリングで実施した。
【0097】
実施例2と同様の構成である実施例4で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、中間層Wと中間下層Cuとの差である58.4×10N・s/mである。したがって、実施例4で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制する効果が得られるとともに、実装基板の厚みを薄くすることが可能となり、更に、製造コスト及び製品コストを低減することができる。
【0098】
<実施例5>
外部電極の作製を以下の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。実施例5は、ヤング率の低い材料であるAu及びAlを用いた例である。実施例5では、焼成後の素体を得た後に、外部電極の最内層となるAu層を形成した。
【0099】
[外部電極の作製]
形成した外部電極の最内層となるAu層上に、スパッタリングによりAl層を形成した。更に、Al層上にめっきにより、Ni層、続いてSn層を形成することで、4層積層体の外部電極を作製した。実施例5で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極の層構成と、固有音響インピーダンス及びヤング率を、表6に示す。
【0100】
【表6】
【0101】
実施例5で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、隣接する2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、中間下層Alと最内層Auとの差である45.2×10N・s/mであり、29.0×10N・s/mよりも大きい値となっている。したがって、実施例5で作製した積層セラミックコンデンサにおいて、層(I)と層(II)としては、最内層Auと中間下層Alとが相当し、実施例5で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制する効果が得られる。また、実施例5で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極は、層(I)及び前記層(II)はいずれも、ヤング率が80GPa以下であるため、外部からの振動によってクラックが発生することを抑制し、構造欠陥の発生を抑制することができる。
【0102】
<比較例1>
外部電極の作製を以下の通りとした以外は、実施例1と同様にして、積層セラミックコンデンサを作製した。
【0103】
[外部電極の作製]
形成した外部電極の最内層となるNi層上に、めっきによりCu層を形成した。更に、Cu層上にめっきにより、Ni層、続いてSn層を形成することで、4層積層体の外部電極を作製した。実施例4で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極の層構成と、固有音響インピーダンス及びヤング率を、表7に示す。
【0104】
【表7】
【0105】
比較例1で作製した積層セラミックコンデンサの外部電極において、隣接する2層の間の固有音響インピーダンスの差が最大となるのは、最外層Snと中間上層Niとの差である28.9×10N・s/mであり、29.0×10N・s/mよりも小さい値となっている。したがって、比較例1で作製した積層セラミックコンデンサが実装された実装基板は、振動を低減することが困難であり、実装基板の音鳴きを抑制することが困難な状況となっている。
【産業上の利用可能性】
【0106】
本発明のセラミック電子部品によれば、セラミック電子部品が実装された回路基板に伝わる応力を低減し、それにより回路基板の振動を抑制することができ、その結果、実装基板の音鳴きを抑制することができる。本発明のセラミック電子部品によれば、外部電極の位置や回路基板の構成を変更することなく、音鳴きを抑制することができるため、産業上、大変有益である。
【符号の説明】
【0107】
1 実装基板
4 はんだ
5 基板
100 積層セラミックコンデンサ
10 素体
11 誘電体層
12 内部電極層
13 カバー層
16a、16b エンドマージン部
20a、20b 外部電極
201 最外層
202 中間上層
203 中間下層
204 最内層
図1
図2