(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014084
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】ネブライザシステム
(51)【国際特許分類】
B06B 1/04 20060101AFI20240125BHJP
A61M 11/00 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
B06B1/04
A61M11/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116661
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】503246015
【氏名又は名称】オムロンヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100122286
【弁理士】
【氏名又は名称】仲倉 幸典
(72)【発明者】
【氏名】東郷 秀孝
(72)【発明者】
【氏名】吉野 寛子
【テーマコード(参考)】
5D107
【Fターム(参考)】
5D107AA13
5D107BB02
5D107BB07
5D107CC09
5D107CD03
5D107FF03
(57)【要約】
【課題】少ない部品点数でコンパクトに構成可能なネブライザシステムを提供すること。
【解決手段】この発明のネブライザシステムは、コンピュータ装置400と、コンピュータ装置400にUSBケーブル200によって直接接続された噴霧器ヘッド1とを備える。コンピュータ装置400は、USBケーブル200のVbusラインとGNDラインとを介して直流電圧Vbusを供給し、かつ、USBケーブル200のD+ラインとD-ラインとを介して方形波形を有する制御信号D+,D-を供給する。噴霧器ヘッド1は、第1のコイルと第1のキャパシタとを含む第1の共振回路と、第1の共振回路に直流電圧Vbusを制御信号D+,D-に応じて断続的に又は交互に極性反転させて印加して、正弦波形を有する交流電圧を発生させる変換回路と、この正弦波形を有する交流電圧によって駆動され、液体を霧化して噴出する霧化部とを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を霧化して噴出するネブライザシステムであって、
USBケーブルを介してUSB規格に従う信号を供給可能なコンピュータ装置を備え、
上記コンピュータ装置は、USBケーブルのVbusラインとGNDラインとを介して直流電圧を供給し、かつ、上記USBケーブルのD+ラインとD-ラインとを介して方形波形を有する制御信号を供給し、
上記コンピュータ装置に上記USBケーブルによって直接接続された噴霧器ヘッドを備え、
上記噴霧器ヘッドは、
第1のコイルと第1のキャパシタとを含む第1の共振回路と、
上記第1の共振回路に上記直流電圧を上記制御信号に応じて断続的に又は交互に極性反転させて印加して、正弦波形を有する交流電圧を発生させる変換回路と、
上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動され、液体を霧化して噴出する霧化部とを含む
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のネブライザシステムにおいて、
上記噴霧器ヘッドは、さらに、上記第1のコイルに電磁的に結合された第2のコイルと第2のキャパシタとを含む第2の共振回路を含み、
上記第1の共振回路から上記第2の共振回路へ、上記霧化部を駆動するための電力がワイヤレス電力伝送方式で伝送される
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項3】
請求項2に記載のネブライザシステムにおいて、
上記噴霧器ヘッドは、
上記第1の共振回路と上記変換回路とを搭載した第1の筐体と、
上記第2の共振回路と上記霧化部とを搭載した第2の筐体と
を、互いに着脱可能に備え、
上記第2の筐体が有する外壁によって、上記第2の筐体から上記第1の筐体への上記液体の移動が禁止される
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項4】
請求項2または3に記載のネブライザシステムにおいて、
上記第1のコイルの巻数に比して上記第2のコイルの巻数が多くなっており、
上記第2の共振回路は、上記第1の共振回路が発生した上記正弦波形を有する交流電圧の振幅を、上記第1のコイルの巻数と上記第2のコイルの巻数との比に応じて増大させ、
上記霧化部は、上記第2の共振回路による振幅増大後の上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動される
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項5】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のネブライザシステムにおいて、
上記霧化部は、
上記正弦波形を有する交流電圧を用いて動作する、振動面を有するホーン振動子と、
上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、
動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっている
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項6】
請求項1から3までのいずれか一つに記載のネブライザシステムにおいて、
上記制御信号をなすD+信号とD-信号が、上記USB規格が定める伝送速度に応じてレベル変化し得る最小の期間を1ビット期間とし、mを自然数としたとき、
上記制御信号は、上記D+信号がmビット期間だけ高レベルになったのに続いて上記D-信号がmビット期間だけ高レベルになり、2mビット期間を単位として繰り返す信号である
ことを特徴とするネブライザシステム。
【請求項7】
請求項6に記載のネブライザシステムにおいて、
上記コンピュータ装置は、上記制御信号の上記mの値を変化させることによって、上記交流電圧の周期を変化させるようになっている
ことを特徴とするネブライザシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はネブライザシステムに関し、より詳しくは、USB信号を供給可能なコンピュータ装置と、上記コンピュータ装置にUSBケーブルによって接続された噴霧器ヘッドとを備えたネブライザシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のネブライザシステムとしては、例えば特許文献1(実用新案登録第3199314号公報)に開示されているように、USB信号を供給可能なコンピュータ装置と、上記コンピュータ装置にUSBケーブルによって接続された制御器と、上記制御器に専売ケーブルによって接続されたメッシュ式噴霧器ヘッドとを備えたものが知られている。制御器は、ハウジングを有し、このハウジングに、DC-DCコンバータからなる昇圧回路と、マイクロコントローラ(プロセッサ)と、高速MOSFETドライバが組み込まれた駆動回路とを搭載している。上記昇圧回路は、上記コンピュータ装置からのUSB信号に含まれたDC5V(正確には、4.75V~5.25V)から公称12VのDC電圧を生成する。マイクロコントローラは、上記昇圧回路の出力を用いて、120から150KHzの正方形波形(パルス幅変調された信号)を生成して、上記駆動回路へ送る。上記駆動回路は、上記120から150KHzの正方形波形から、直列インダクタを使用して交流AC電圧(約100Vの正弦波形)を生成する。上記噴霧器ヘッドは、圧電セラミック素子を有し、供給容器から液体を受け、上記駆動回路からの上記120から150KHzの正弦波形によって駆動されて、エアロゾルを発生させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のようなネブライザシステムは、携帯可能とする観点から、少ない部品点数でコンパクトに構成されるのが望ましい。しかしながら、上記特許文献1のシステムでは、USB信号を供給可能なコンピュータ装置と噴霧器ヘッドとの間に、制御器(プロセッサを含む)が介在している。このため、ネブライザシステムとして、部品点数が増えて嵩張るという問題がある。
【0005】
そこで、この発明の課題は、少ない部品点数でコンパクトに構成可能なネブライザシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この開示のネブライザシステムは、
液体を霧化して噴出するネブライザシステムであって、
USBケーブルを介してUSB規格に従う信号を供給可能なコンピュータ装置を備え、
上記コンピュータ装置は、USBケーブルのVbusラインとGNDラインとを介して直流電圧を供給し、かつ、上記USBケーブルのD+ラインとD-ラインとを介して方形波形を有する制御信号を供給し、
上記コンピュータ装置に上記USBケーブルによって直接接続された噴霧器ヘッドを備え、
上記噴霧器ヘッドは、
第1のコイルと第1のキャパシタとを含む第1の共振回路と、
上記第1の共振回路に上記直流電圧を上記制御信号に応じて断続的に又は交互に極性反転させて印加して、正弦波形を有する交流電圧を発生させる変換回路と、
上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動され、液体を霧化して噴出する霧化部とを含む
ことを特徴とする。
【0007】
本明細書で「USBケーブル」とは、USB規格に従う信号を伝送可能なケーブルと、上記ケーブルの端部に設けられたコネクタ(これを「USBコネクタ」と呼ぶ。)とを含む意味に用いるものとする。
【0008】
「制御信号」は、差動信号であるD+信号とD-信号とを指す。
【0009】
上記USBケーブルによって「直接接続された」とは、上記コンピュータ装置と上記噴霧器ヘッドとの間に、従来例における制御器(プロセッサを含む)が介在することなく、接続されていることを意味する。なお、上記USBケーブルの端部のUSBコネクタが接続され得るように、上記コンピュータ装置および/または上記噴霧器ヘッドにUSBコネクタが設けられることは、排除されない。
【0010】
この開示のネブライザシステムでは、上記コンピュータ装置から上記噴霧器ヘッドへ直接、上記USBケーブルのVbusラインとGNDラインとを介して直流電圧が供給され、かつ、上記USBケーブルのD+ラインとD-ラインとを介して方形波形を有する制御信号が供給される。上記噴霧器ヘッドでは、上記変換回路が、上記第1の共振回路(第1のコイルと第1のキャパシタとを含む)に上記直流電圧を上記制御信号に応じて断続的に又は交互に極性反転させて印加して、正弦波形を有する交流電圧を発生させる。上記霧化部は、上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動され、液体を霧化して噴出する。したがって、このネブライザシステムは、上記コンピュータ装置と上記噴霧器ヘッドとの間に、制御器(プロセッサを含む)が介在することなく、液体を霧化して噴出することができる。また、上記噴霧器ヘッドもプロセッサを含む必要がない。したがって、このネブライザシステムは、少ない部品点数でコンパクトに構成され得る。
【0011】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記噴霧器ヘッドは、さらに、上記第1のコイルに電磁的に結合された第2のコイルと第2のキャパシタとを含む第2の共振回路を含み、
上記第1の共振回路から上記第2の共振回路へ、上記霧化部を駆動するための電力がワイヤレス電力伝送方式で伝送される
ことを特徴とする。
【0012】
この一実施形態のネブライザシステムでは、上記第1の共振回路から上記第2の共振回路へ、上記霧化部を駆動するための電力がワイヤレス電力伝送方式で伝送されるので、上記第1のコイルと上記第2のコイルとの間で上記噴霧器ヘッドの筐体を、例えば着脱可能に分離した構成が可能となる。
【0013】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記噴霧器ヘッドは、
上記第1の共振回路と上記変換回路とを搭載した第1の筐体と、
上記第2の共振回路と上記霧化部とを搭載した第2の筐体と
を、互いに着脱可能に備え、
上記第2の筐体が有する外壁によって、上記第2の筐体から上記第1の筐体への上記液体の移動が禁止される
ことを特徴とする。
【0014】
この一実施形態のネブライザシステムでは、上記噴霧器ヘッドにおいて、上記第1の筐体と上記第2の筐体とは互いに着脱可能になっている。上記第1の筐体と上記第2の筐体とが分離された状態では、上記第1の筐体とは別に、上記第2の筐体を水洗いすることができる。上記第1の筐体と上記第2の筐体とが一体に組み立てられた状態では、実質的に部品点数が増えて嵩張るような不利は生じない。また、上記噴霧器ヘッドにおいて、上記第2の筐体が有する外壁によって、上記第2の筐体から上記第1の筐体への上記液体の移動が禁止される。したがって、上記液体が、上記第1の筐体へ移動して上記変換回路が故障する、というような事態が防止される。さらには、上記液体が、上記第1の筐体から上記USBケーブルを介して上記コンピュータ装置へ移動して、上記コンピュータ装置が故障する、というような事態が防止される。
【0015】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記第1のコイルの巻数に比して上記第2のコイルの巻数が多くなっており、
上記第2の共振回路は、上記第1の共振回路が発生した上記正弦波形を有する交流電圧の振幅を、上記第1のコイルの巻数と上記第2のコイルの巻数との比に応じて増大させ、
上記霧化部は、上記第2の共振回路による振幅増大後の上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動される
ことを特徴とする。
【0016】
この一実施形態のネブライザシステムでは、上記第2の共振回路は、上記第1の共振回路が発生した上記正弦波形を有する交流電圧の振幅を、上記第1のコイルの巻数と上記第2のコイルの巻数との比に応じて増大させる。上記霧化部は、上記第2の共振回路による振幅増大の上記正弦波形を有する交流電圧によって駆動され、上記液体を霧化して噴出する。したがって、上記第2の共振回路による振幅増大(昇圧)後の上記正弦波形を有する交流電圧の振幅が上記霧化部に適合するように、上記第1のコイルの巻数と上記第2のコイルの巻数との比を予め設定しておくことによって、上記液体を効率良く霧化して噴出することができる。
【0017】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記霧化部は、
上記正弦波形を有する交流電圧を用いて動作する、振動面を有するホーン振動子と、
上記振動面に対向して配置されたメッシュ部を有するメッシュ部材とを含み、
動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された液体を、上記メッシュ部を通して霧化するようになっている
ことを特徴とする。
【0018】
この一実施形態のネブライザシステムでは、上記霧化部は、動作時に、上記振動面と上記メッシュ部との間に供給された液体を、上記メッシュ部を通して霧化する。このようなメッシュ式の霧化部は、比較的小型に構成され、比較的小電力で駆動され得る。したがって、噴霧器ヘッドを小型化し、ネブライザシステムをコンパクトに構成するのに適する。
【0019】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記制御信号をなすD+信号とD-信号が、上記USB規格が定める伝送速度に応じてレベル変化し得る最小の期間を1ビット期間とし、mを自然数としたとき、
上記制御信号は、上記D+信号がmビット期間だけ高レベルになったのに続いて上記D-信号がmビット期間だけ高レベルになり、2mビット期間を単位として繰り返す信号である
ことを特徴とする。
【0020】
USB規格が定める伝送速度としては、1.5Mbps(USB1.0規格)、12Mbps(USB1.1規格)、480Mbps(USB2.0規格)などがある。
【0021】
既述のように、上記変換回路は、上記第1の共振回路(第1のコイルと第1のキャパシタとを含む)に上記直流電圧を上記制御信号に応じて断続的に又は交互に極性反転させて印加して、正弦波形を有する交流電圧を発生させる。ここで、この一実施形態のネブライザシステムでは、上記制御信号は、上記D+信号がmビット期間だけ高レベルになったのに続いて上記D-信号がmビット期間だけ高レベルになり、2mビット期間を単位として繰り返す。したがって、上記変換回路が上記第1の共振回路に発生させる上記正弦波形を有する交流電圧の周期は、上記2mビット期間になる。したがって、上記コンピュータ装置は、上記2mビット期間を設定することによって、上記正弦波形を有する交流電圧の周期(言い換えれば、その逆数である周波数)を設定することができる。
【0022】
一実施形態のネブライザシステムでは、
上記コンピュータ装置は、上記制御信号の上記mの値を変化させることによって、上記交流電圧の周期を変化させるようになっている
ことを特徴とする。
【0023】
この一実施形態のネブライザシステムでは、上記コンピュータ装置は、上記mの値を変化させることによって、簡単に、上記正弦波形を有する交流電圧の周期(言い換えれば、その逆数である周波数)を変化させることができる。
【発明の効果】
【0024】
以上より明らかなように、この開示のネブライザシステムは、少ない部品点数でコンパクトに構成され得る。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】この発明の一実施形態のネブライザシステムの概略構成を示す図である。
【
図2】上記ネブライザシステムをなすスマートフォンの制御系のブロック図である。
【
図3】上記ネブライザシステムをなす噴霧器ヘッドを分解状態で斜めから見たところを示す図である。
【
図4】組み立てられた上記噴霧器ヘッドの内部構造を側方から見たところを模式的に示す図である。
【
図5】上記噴霧器ヘッドに含まれる電気回路全体を例示する図である。
【
図7】
図7(A)、
図7(B)、
図7(C)は、上記スマートフォンに含まれた制御部による制御フローを示す図である。
【
図8】上記スマートフォンが上記噴霧器ヘッドへ出力する方形波形を有する制御信号と、上記噴霧器ヘッド内で上記制御信号を用いて作成される正弦波形を有する交流電圧との関係を示す図である。
【
図9】
図8における上記正弦波形を有する交流電圧の周波数が変更された態様を示す図である。
【
図10】上記ネブライザシステムをユーザが使用する使用態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、この発明の実施の形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0027】
(ネブライザシステムの概略構成)
図1は、この発明の一実施形態のネブライザシステム800の概略構成を示している。このネブライザシステム800は、液体を霧化して噴出するネブライザシステムであって、コンピュータ装置としてのスマートフォン400と、このスマートフォン400にUSBケーブル200によって直接接続された噴霧器ヘッド1とを備えている。この例では、USBケーブル200は、両端にそれぞれ雄タイプのUSBコネクタ208,209を有している。USBコネクタ208は、スマートフォン400に設けられた雌タイプのUSBコネクタ491に着脱自在に接続され、また、USBコネクタ209は、噴霧器ヘッド1に設けられた雌タイプのUSBコネクタ19に着脱自在に接続されるようになっている。
【0028】
(スマートフォンの構成)
スマートフォン400は、一般的な市販のスマートフォンにネブライザ用アプリケーションソフトウェア(コンピュータプログラム)をインストールすることによって、噴霧器ヘッド1に対して後述の噴霧動作を行わせるようにしたものである。
【0029】
具体的には、
図2に示すように、スマートフォン400は、本体400Mと、この本体400Mに搭載された、制御部410と、メモリ411と、表示器420と、操作部430と、ネットワーク通信部480と、USBインタフェース490と、電源部499とを含んでいる。
【0030】
制御部410は、CPU(Central Processing Unit; 中央演算処理装置)およびその補助回路を含み、スマートフォン400の各部を制御し、メモリ411に記憶されたプログラムおよびデータに従って後述の処理を実行する。
【0031】
メモリ411は、制御部410でプログラムを実行するために必要な作業領域として用いられるRAM(Random Access Memory)と、制御部410で実行するための基本的なプログラムを記憶するためのROM(Read Only Memory)とを含む。また、メモリ411の記憶領域を補助するための補助記憶装置の記憶媒体として、半導体メモリ(メモリカードなど)が用いられてもよい。
【0032】
表示器420は、この例ではLCD(Liquid Crystal Display)からなり、制御部410によって制御されて、所定の映像を表示画面に表示させる。
【0033】
操作部430は、この例では、表示器420の表示画面上に重ねられたタッチパッド(図示せず)を含み、ユーザによる操作を示す操作信号を制御部410に入力する。この例では、表示器420と上記タッチパッドとは、公知のタッチパネルを構成している。
【0034】
ネットワーク通信部480は、制御部410からの情報をネットワーク900を介して他の装置(例えば、図示しないサーバ)へ送信する。また、他の装置からの情報をネットワーク900を介して受信して制御部410に受け渡す。
【0035】
USBインタフェース490は、制御部410からの情報をUSB規格に従う信号として、本体400Mの端壁400Me(
図1参照)に設けられた雌タイプのUSBコネクタ491、および、それに接続されたUSBコネクタ208を有するUSBケーブル200を通して、外部へ、この例では噴霧器ヘッド1へ出力する。この例では、上記USB規格に従う信号は、USBケーブル200のVbusライン201とGNDライン204とを介して出力される直流電圧(DC5V)と、USBケーブル200のD+ライン202とD-ライン203とを介して出力される方形波形を有する制御信号(D+信号とD-信号)とを含んでいる。D+信号とD-信号とは差動信号である。Vbusライン201は、DC5Vで、最大500mAの電流を供給可能になっている。
【0036】
電源部499は、この例では充電可能な2次電池(例えば、リチウムイオン電池)を含んでいる。電源部499は、本体400Mに搭載された、制御部410、メモリ411、表示器420、操作部430、ネットワーク通信部480、およびUSBインタフェース490を含む各部へ電力を供給する。
【0037】
(噴霧器ヘッドの構成)
図3は、噴霧器ヘッド1を分解状態で斜めから見たところを示している。この噴霧器ヘッド1は、大別して、本体11と、この本体11に取り付られる噴霧ユニット12とを備えている。
【0038】
本体11をなす第1の筐体としての本体筐体11Mは、この例では長円状(
図3において左手前から右奥へ延在する長軸11Aを有する)の平面形状で、縦軸11Cの方向(この例では、上下方向)に延在する柱状の外形を有している。本体筐体11Mの上壁11Mtの中央部(縦軸11Cが通る)には、本体11と噴霧ユニット12を着脱可能に取り付けるための要素として、略短円筒状の外形をもつ凹部11K1が設けられている。この例では、凹部11K1は、縦軸11Cの周りの特定の方位(この例では、120°間隔の3方位)に相当する部位に、径方向外向きに拡張された方位溝11K1e,11K1e,11K1eを有している。
【0039】
噴霧ユニット12は、本体筐体11Mにおけるのと同じ長円状の平面形状を有するベース筐体30Mと、このベース筐体30Mを覆うカバー部材31とを含んでいる。カバー部材31は、ベース筐体30Mに対して縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)着脱可能に嵌合して取り付けられる。ベース筐体30Mとカバー部材31とは、第2の筐体としての装着用筐体30を構成している。
【0040】
この例では、ベース筐体30Mは、縦軸11Cから左手前側へ偏心した部位に、上方へ円柱状に突起した上段収容部30Maを有している。上段収容部30Maは、噴霧すべき液体(薬液など)を霧化するのに適合した振動部としてのホーン振動子40を収容している。この例では、上段収容部30Maの頂面30Mtに、メッシュ部材20が、ホーン振動子40に対向する状態で載置されている。この例では、メッシュ部材20は、上記液体を霧化するのに適合したメッシュ部を含むシート21と、シート21の周縁を支持するフランジ部22とを含んでいる。「メッシュ部」とは、シート(または板材)に複数の微細な貫通孔を有し、これらの貫通孔を通過させて液体を霧化するための要素を意味する。この例では、メッシュ部材20は、1回の使用が終わると、使い捨てされるようになっている。この例では、ホーン振動子40とメッシュ部材20とが霧化部39を構成している。
【0041】
噴霧ユニット12の底壁30Mbの中央部(縦軸11Cが通る)には、本体11と噴霧ユニット12を着脱可能に取り付けるための要素として、略短円柱状の外形をもつ凸部30K1が設けられている。この例では、凸部30K1は、本体筐体11Mの凹部11K1と対応する形状を有している。すなわち、凸部30K1は、略円筒状で、縦軸11Cの周りの特定の方位(この例では、120°間隔の3方位)に相当する部位に、径方向外向きに突出した拡径部(図示せず)を有している。したがって、本体11(本体筐体11M)に対して噴霧ユニット12(ベース筐体30M)を縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)接近させれば、凹部11K1に対して凸部30K1が嵌合して、本体11と噴霧ユニット12とが簡単に一体に組み立てられる。本体11と噴霧ユニット12とが一旦組み立てられると、凹部11K1と凸部30K1との間の摩擦力によって組立状態が維持される。なお、ユーザがその摩擦力を超える力を加えて、本体11から噴霧ユニット12を縦軸11Cの方向に離間させれば、本体11から噴霧ユニット12が簡単に取り外される。
【0042】
カバー部材31は、ベース筐体30Mにおけるのと同じ長円状の平面形状で、縦軸11Cの方向に延在する筒状の外形を有している。カバー部材31の頂壁31tのうち縦軸11Cから左手前側へ偏心した部位に、円形の開口31oが設けられている。ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態では、開口31oの縁部が、縦軸11Cの方向に(この例では、上方から)、メッシュ部材20のフランジ部22を押圧する。これにより、メッシュ部を含むシート21がホーン振動子40に対して位置決めされるようになっている。また、開口31oには、例えば
図10中に示すように、パイプ部材としてのマウスピース80が、カバー部材31の外側から着脱可能に装着されるようになっている。
【0043】
また、
図3中に示すように、カバー部材31は、頂壁31tのうち、開口31oよりも右奥側に相当する部位に、ヒンジによって開閉可能な蓋部31aと、この蓋部31aの直下の位置に設けられた給液部としての液溜め17とを有している。ユーザは、ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態で、蓋部31aを一時的に開いて、液溜め17に上記液体を入れることができる。
【0044】
図4は、一体に組み立てられた噴霧器ヘッド1の内部構造を側方から見たところを模式的に示している。噴霧器ヘッド1の本体11は、本体筐体11Mに、送電コイルユニット61と、この送電コイルユニット61に配線63a,63bによって接続された回路基板60とを搭載し収容している。
【0045】
送電コイルユニット61は、略円柱状の磁性体からなるポールピース64と、このポールピース64を巻回してその周りに配置された第1のコイルとしての送電コイルL1とを含んでいる。この例では、送電コイルユニット61は、本体筐体11Mの上壁11Mtに沿って、噴霧ユニット12に対向する側に配置されている。これにより、送電コイルL1は、本体筐体11Mをなす上壁11Mtの内側に沿って、縦軸11Cを中心とした凹部11K1を取り囲む領域に配置されている。送電コイルL1に対して並列に、
図5中に示す第1のキャパシタC1が接続されている。送電コイルL1と第1のキャパシタC1とは、第1の共振回路51を構成している。この例では、第1のキャパシタC1は、送電コイルユニット61に取り付けられているが、回路基板60に搭載されていてもよい。
【0046】
図4中に示す回路基板60は、この例では、雌タイプのUSBコネクタ19と、後述する変換回路50とを搭載し、本体筐体11Mをなす底壁11Mbの内側に沿って配置されている。USBコネクタ19は、本体筐体11Mの側壁11Msを貫通して、外部に向かって開いている。このUSBコネクタ19には、USBケーブル200の雄タイプのUSBコネクタ209が、
図4中に矢印Xで示す向きに挿入して接続され得る。
【0047】
噴霧ユニット12は、装着用筐体30(特に、ベース筐体30M)に、ホーン振動子40と、このホーン振動子40に配線73a,73bによって接続された受電コイルユニット71とを搭載し収容している。
【0048】
ホーン振動子40は、上方へ向かって水平に配された振動面43と、この振動面43から下方に離間した位置に配された超音波振動子41と、超音波振動子41と振動面43との間に配され、超音波振動子41の振動を増幅するとともに振動面43へ伝達するホーン42とが、一体に組み合わされて構成されている。ベース筐体30Mに対してカバー部材31が取り付けられた状態では、メッシュ部を含むシート21とホーン振動子40の振動面43との間に隙間43gが存在する状態になっている。後述するように、この隙間43gに対して、液溜め17に入っている液体が供給される。
【0049】
受電コイルユニット71は、略円柱状の磁性体からなるポールピース74と、ポールピース74を巻回してその周りに配置された第2のコイルとしての受電コイルL2とを含んでいる。この例では、受電コイルユニット71は、ベース筐体30Mの底壁30Mbの内側に沿って、本体11に対向する側に配置されている。この組み立て状態では、受電コイルL2は、送電コイルL1と電磁的に結合されている。受電コイルL2に対して並列に、
図5中に示す第2のキャパシタC2が接続されている。受電コイルL2と第2のキャパシタC2とは、第2の共振回路52を構成している。この例では、第2のキャパシタC2は、受電コイルユニット71に取り付けられているが、ホーン振動子40に取り付けられていてもよい。
【0050】
これにより、本体11と噴霧ユニット12とが組み立てられた状態では、本体筐体11Mをなす上壁11Mtと装着用筐体30をなす底壁30Mbとを挟んで、送電コイルL1と受電コイルL2とが互いに対応した領域に配置される。したがって、動作時に、第1の共振回路51の送電コイルL1から第2の共振回路52の受電コイルL2へ、言い換えれば本体11から噴霧ユニット12へ、ホーン振動子40を駆動するための電力が、この例では磁気結合を用いたワイヤレス電力伝送方式で効率良く伝送される。
【0051】
このように、本体11から噴霧ユニット12へ、ホーン振動子40を駆動するための電力がワイヤレス電力伝送方式で伝送されるので、本体11(本体筐体11M)と噴霧ユニット12(装着用筐体30)とを、この例のように着脱可能に分離した構成が可能となる。本体11と噴霧ユニット12とが分離された状態では、例えば、本体11とは別に、噴霧ユニット12のベース筐体30Mとカバー部材31を水洗いすることができる。
【0052】
また、本体11と噴霧ユニット12とが一体に組み立てられた状態では、実質的に部品点数が増えて嵩張るような不利は生じない。また、この噴霧器ヘッド1では、噴霧ユニット12が有する外壁(特にベース筐体30Mの底壁30Mb)によって、噴霧ユニット12(装着用筐体30)から本体11(本体筐体11M)への上記液体の移動が禁止される。したがって、上記液体が、本体11へ移動して回路基板60(例えば、後述の変換回路50)が故障する、というような事態が防止される。さらには、上記液体が、本体11からUSBケーブル200を介してスマートフォン400へ移動して、スマートフォン400が故障する、というような事態が防止される。
【0053】
図5は、噴霧器ヘッド1に含まれる電気回路全体を例示している。噴霧器ヘッド1の電気回路は、大別して、USBコネクタ19と、変換回路50と、第1の共振回路51と、第2の共振回路52と、霧化部39をなすホーン振動子40とからなっている。噴霧器ヘッド1の電気回路は、
図5(または後述の
図6)中に示す要素以外の、プロセッサ、表示器、操作部、電池などの要素を含んでいない。
【0054】
USBコネクタ19は、USBケーブル200に対応して、Vbusライン201と、D+ライン202と、D-ライン203と、GNDライン204とを含んでいる(簡単のため、それらのラインの符号を、USBケーブル200におけるラインの符号と同じにしている。)。
【0055】
変換回路50は、Vbusライン201と第1の共振回路51の一端51aとの間に介挿されたPチャネル型電界効果(PMOS)トランジスタM1と、D-ライン203とGNDライン204との間に介挿された電流制限用の抵抗R1(=470kΩ)とからなっている。PMOSトランジスタM1のゲートには、D+ライン202が接続されており、動作時にD+信号が印加される。第1の共振回路51は、送電コイルL1(=74μH)と、それに対して並列に接続された第1のキャパシタC1(=0.01μF)とからなっている。動作時には、PMOSトランジスタM1がD+信号に応じて断続的にオンして、第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に直流電圧(Vbus=5V)が断続的に印加される。これにより、第1の共振回路51は、この第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に正弦波形を有する交流電圧V1を発生させる。
【0056】
第2の共振回路52は、受電コイルL2(=300μH)と、それに対して並列に接続された第2のキャパシタC2(=2700pF)とからなっている。受電コイルL2と第2のキャパシタC2とは、第2の共振回路52を構成している。受電コイルL2は、送電コイルL1と電磁的に結合しており、この例では送電コイルL1と受電コイルL2との間の結合係数は、k=0.8になっている。また、送電コイルL1の巻数に比して受電コイルL2の巻数が多くなっており、この例では、送電コイルL1の巻数と受電コイルL2の巻数との比は約1:3に設定されている。これにより、動作時に、第2の共振回路52は、第1の共振回路51が発生した正弦波形を有する交流電圧V1の振幅を、送電コイルL1の巻数と受電コイルL2コイルの巻数との比に応じて増大させる。したがって、第2の共振回路52は、この第2の共振回路52の一端52aと他端52bとの間に正弦波形を有する交流電圧V2(≒3×V1)を発生させる。ここで、上述の送電コイルL1の巻数と受電コイルL2の巻数との比は、第2の共振回路52による振幅増大(昇圧)後の上記正弦波形を有する交流電圧V2の振幅が、霧化部39をなすホーン振動子40に適合するように、予め設定されている。この例では、ホーン振動子40に印加されるべき交流電圧V2の振幅は、十数ボルトから数十ボルトまでの範囲内であることが予定されている。
【0057】
霧化部39をなすホーン振動子40は、この例では、等価回路として、直列に接続された抵抗成分RS1(=22Ω)と、誘導リアクタンス成分XL1(=36mH)と、キャパシタ成分XC1(=22pF)とを含み、さらに、これらの直列接続成分の全体に対してそれぞれ並列に接続されたキャパシタ成分C3(=700pF)と、抵抗成分R2(=100Ω)とで表される。動作時には、この等価回路で表されるホーン振動子40に対して、第2の共振回路52の一端52aと他端52bとの間に発生した交流電圧V2が印加される。これにより、ホーン振動子40の超音波振動子41が駆動されて、
図4中に示した振動面43が振動する。すると、メッシュ部を含むシート21とホーン振動子40の振動面43との間の隙間43gに供給された液体がメッシュ部を含むシート21を通して霧化される。この例では、昇圧された正弦波形を有する交流電圧V2によってホーン振動子40(の超音波振動子41)が駆動されるので、液体を効率良く霧化して噴出することができる。
【0058】
(正弦波形を有する交流電圧の周波数を設定する仕方)
図8は、スマートフォン400が噴霧器ヘッド1へ出力する方形波形を有する制御信号(D+信号とD-信号)と、噴霧器ヘッド1内でそれらの制御信号(D+信号とD-信号)を用いて作成される正弦波形を有する交流電圧V1との関係を示している。
図8において、縦軸は電圧を表し、横軸は時間を表している。縦軸では、制御信号の振幅と交流電圧V1の振幅が1に正規化して表されている。横軸では、USB規格が定める伝送速度に応じてレベル変化し得る最小の期間が、1ビット期間tuとして表されている。この例では、mを自然数としたとき、制御信号は、D+信号(
図8中に実線で示す)がmビット期間だけ高レベル(+1)になったのに続いてD-信号(
図8中に破線で示す)がmビット期間だけ高レベル(+1)になり、2mビット期間を単位として繰り返す信号になっている。なお、作図の便宜上、
図8ではm=5として描かれているが、これに限られるものではない。D+信号とD-信号とは差動信号であるから、互いに正負が逆になる変化をしている。このような制御信号(D+信号とD-信号)が
図5中に示した変換回路50に印加されると、第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間には、
図8中に2点鎖線で示すような正弦波形を有する交流電圧V1が発生する。すなわち、交流電圧V1は、D+信号が高レベル(+1)になっているmビット期間については正の半波となり、D-信号が高レベル(+1)になっているmビット期間については負の半波となり、2mビット期間(すなわち、2m×tuの期間)を1周期Tとして繰り返す正弦波形となる。したがって、スマートフォン400の制御部410は、2mビット期間を設定することによって、正弦波形を有する交流電圧V1の周期T(言い換えれば、その逆数である周波数f)を設定することができる。また、スマートフォン400の制御部410は、mの値を変化させることによって、正弦波形を有する交流電圧V1の周期Tを変化させることができる。例えば、スマートフォン400の制御部410は、
図9に例示するように、mの値を1だけ減じてm′にすれば、正弦波形を有する交流電圧V1の周期Tを2m′ビット期間(
図9中にT′で表す)に短くすることができる。このように、mの値を減じることによって、正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fを高くすることができる。逆に、mの値を増やすことによって、正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fを低くすることができる。
【0059】
ここで、USB規格が定める伝送速度としては、1.5Mbps(USB1.0規格)、12Mbps(USB1.1規格)、480Mbps(USB2.0規格)などがある。高い伝送速度であれば1ビット期間tuを短くできるので、mの値を1ずつ変化させるのに伴う周波数fの変化量を小さくすることができる。したがって、ホーン振動子40(の超音波振動子41)のための周波数(例えば、180kHz程度)であれば、実用上、略連続的な周波数の変化(スイープ)も可能となる。
【0060】
(ネブライザシステムの動作)
噴霧器ヘッド1は、予め
図4に示したように組み立てられ、噴霧ユニット12の液溜め17に、噴霧すべき液体(典型的には、薬液)が入れられているものとする。また、
図10中に示すように、その噴霧ユニット12の開口31oに、マウスピース80が装着されているものとする。噴霧器ヘッド1を使用しようとするユーザ99は、
図10中に示すように、噴霧器ヘッド1と、予めネブライザ用アプリケーションソフトウェアがインストールされたスマートフォン400とを、USBケーブル200によって接続する。これにより、ネブライザシステム800が構成される。
【0061】
ユーザ99は、スマートフォン400の操作部430(この例では、表示器420に表示されたアイコン)を操作して、ネブライザ用アプリケーションソフトウェアを起動する。続いて、ユーザは、そのアプリケーションソフトウェアにおいて、噴霧器ヘッド1の動作開始を指示する。
【0062】
すると、スマートフォン400の制御部410は、
図7(A)のステップS1に示すように、まず初回探索の処理を行う。この初回探索の処理では、
図7(B)に示すように、制御部410は、USBインタフェース490を介して、Vbusライン201とGNDライン204との間に流れる電流を監視しながら、D+ライン202とD-ライン203を通して出力する制御信号(D+信号とD-信号)の周波数を変化させて、共振周波数を探索する(ステップS11)。そして、制御部410は、Vbusライン201とGNDライン204との間に最も電流が多く流れる周波数fを共振周波数frとして決定する(ステップS12)。
【0063】
続いて、
図7(A)のステップS2に示すように、制御部410は、噴霧器ヘッド1がその共振周波数fr(または安定した制御のためにfr近傍)で噴霧動作を開始するように、USBインタフェース490を介して、USB規格に従う信号を供給する。具体的には、制御部410は、USBインタフェース490を介して、USBケーブル200のVbusライン201とGNDライン204とを介してDC5Vを供給し、かつ、USBケーブル200のD+ライン202とD-ライン203とを介して方形波形を有する制御信号(D+信号とD-信号)を、噴霧器ヘッド1へ供給する。ここで、制御信号は、D+信号(
図8中に実線で示す)がmビット期間だけ高レベル(+1)になったのに続いてD-信号(
図8中に破線で示す)がmビット期間だけ高レベル(+1)になり、2mビット期間を単位として繰り返す信号である。制御部410は、噴霧器ヘッド1内の第1の共振回路51が共振周波数fr(またはfr近傍)で正弦波形を有する交流電圧V1を発生するように、2mビット期間を設定する。具体的には、2m×tu≒1/frとなるように、mの値を設定する。このようにして、制御部410は、このmの値が設定されているUSB規格に従う信号を、USBインタフェース490を介して、噴霧器ヘッド1へ供給する。
【0064】
すると、噴霧器ヘッド1では、
図5中に示した変換回路50が、第1の共振回路51(送電コイルL1と第1のキャパシタC1とを含む)にDC5Vを制御信号(D+信号とD-信号)に応じて断続的に印加して、共振周波数fr(またはfr近傍)で正弦波形を有する交流電圧V1を発生させる。第1の共振回路51が発生した正弦波形を有する交流電圧V1は、第2の共振回路52(受電コイルL2と第2のキャパシタC2とを含む)によって昇圧されて正弦波形を有する交流電圧V2となる。
図4中に示した霧化部39のホーン振動子40は、この正弦波形を有する交流電圧V2によって駆動されて、振動面43が振動する。これにより、メッシュ部を含むシート21とホーン振動子40の振動面43との間の隙間43gに供給された液体がメッシュ部を含むシート21を通して霧化され、
図10中に示すように、マウスピース80を通してエアロゾル90として噴出される。
【0065】
噴霧動作を継続すると、温度変化等の様々な原因により、ホーン振動子40の現在の共振周波数frが初期の共振周波数(これをfr0とする。)からズレることがある。そこで、スマートフォン400の制御部410は、
図7(C)に示す周波数フィードバックの処理を実行する。この周波数フィードバックの処理では、ステップS21に示すように、制御部410は、USBインタフェース490を介して、Vbusライン201とGNDライン204との間に流れる電流を監視することによって、噴霧器ヘッド1内の第1の共振回路51が発生する正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fが、初期の共振周波数fr0からズレたか否かを判定する。そして、周波数のズレが生じた場合(ステップS21でYES)は、制御部410は、Vbusライン201とGNDライン204との間に流れる電流に基づいて、噴霧器ヘッド1内の第1の共振回路51が発生する正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fがホーン振動子40の現在の共振周波数frに一致するように、周波数fを修正する(ステップS22)。この周波数フィードバックの処理は、噴霧動作中に随時繰り返して実行される。すなわち、制御部410は、噴霧器ヘッド1内の第1の共振回路51が発生する正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fが、直前の共振周波数fr0からズレたか否かを判定する。そして、周波数のズレが生じた場合(ステップS21でYES)は、制御部410は、噴霧器ヘッド1内の第1の共振回路51が発生する正弦波形を有する交流電圧V1の周波数fがホーン振動子40の現在の共振周波数frに一致するように、周波数fを修正する(ステップS22)。
【0066】
この例では、噴霧器ヘッド1の動作終了が指示されない限り(
図7(A)のステップS3でNO)、噴霧動作を継続する。ユーザ99がスマートフォン400の操作部430(この例では、表示器420に表示されたアイコン)を操作して、噴霧器ヘッド1の動作終了を指示すると(
図7(A)のステップS3でYES)、制御部410は、噴霧器ヘッド1への上記USB規格に従う信号の供給を停止する。これにより、噴霧器ヘッド1は噴霧動作を終了する。
【0067】
なお、スマートフォン400の上記ネブライザ用アプリケーションソフトウェア上でタイマ設定を可能にしておき、予め定められた噴霧動作時間が完了すると、自動的に噴霧動作を終了するようにしてもよい。
【0068】
このようにして、このネブライザシステム800によれば、ユーザ99は、噴霧器ヘッド1を使用して噴霧動作を行わせることができる。このネブライザシステム800は、スマートフォン400と噴霧器ヘッド1との間に、制御器(プロセッサを含む)が介在しないし、また、噴霧器ヘッド1もプロセッサを含まない。したがって、このネブライザシステム800は、少ない部品点数でコンパクトに構成され得る。
【0069】
また、噴霧器ヘッド1では、霧化部39がメッシュ式になっているので、比較的小型に構成され、比較的小電力で駆動され得る。したがって、噴霧器ヘッド1を小型化し、ネブライザシステム800をコンパクトに構成するのに適する。
【0070】
(変形例)
上の例では、
図5に示した電気回路では、動作時に、変換回路50をなすPMOSトランジスタM1がD+信号に応じて断続的にオンして、第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に直流電圧(Vbus=5V)が断続的に印加されるものとした。しかしながら、これに限られるものではなく、
図6に示す電気回路のように、動作時に、第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に直流電圧(Vbus=5V)が交互に極性反転させて印加されるものとしてもよい。
【0071】
図6の例では、変換回路50に代えて、Hブリッジ型の変換回路50Aを備えている。この変換回路50Aでは、Vbusライン201とGNDライン204との間に、PMOSトランジスタM4とNチャネル型電界効果(NMOS)トランジスタM2とが、この順に直列に接続されており、また、PMOSトランジスタM5とNMOSトランジスタM3とが、この順に直列に接続されている。PMOSトランジスタM4とNMOSトランジスタM2との間の接続点58は、電流制限用の抵抗R3(=12Ω)を介して、第1の共振回路51の一端51aに接続されている。PMOSトランジスタM5とNMOSトランジスタM3との間の接続点59は、電流制限用の抵抗R4(=12Ω)を介して、第1の共振回路51の他端51bに接続されている。PMOSトランジスタM4のゲートとNMOSトランジスタM2のゲートには、それぞれD+ライン202が接続されており、動作時にD+信号が印加される。また、PMOSトランジスタM5のゲートとNMOSトランジスタM3のゲートには、それぞれD-ライン203が接続されており、動作時にD-信号が印加される。
【0072】
この構成により、動作時には、
図6において対角位置(左上と右下)にあるPMOSトランジスタM4とNMOSトランジスタM3とが、それぞれD+信号、D-信号に応じて、互いに同じ位相で交互にオン、オフを繰り返す。また、その位相に対して逆の位相で、
図6において別の対角位置(左下と右上)にあるNMOSトランジスタM2とPMOSトランジスタM5とが、それぞれD+信号、D-信号に応じて、互いに同じ位相で交互にオン、オフを繰り返す。この結果、第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に直流電圧(Vbus=5V)が交互に極性反転させて印加される。これにより、第1の共振回路51は、この第1の共振回路51の一端51aと他端51bとの間に正弦波形を有する交流電圧V1Aを発生させる。この交流電圧V1Aの振幅は、
図5中に示した交流電圧V1の振幅の約2倍になる。これに伴って、第2の共振回路52が発生する正弦波形を有する交流電圧V2Aの振幅も、
図5中に示した交流電圧V2の振幅の約2倍になる。したがって、霧化部39をなすホーン振動子40が比較的高電圧で駆動されるべきタイプ(仕様)である場合に、好ましく適応することができる。
【0073】
上述の実施形態では、噴霧器ヘッド1において本体11から噴霧ユニット12へ、ホーン振動子40を駆動するための電力を伝送する方式は、ワイヤレス電力伝送方式であるものとした。しかしながら、これに限られるものではない。本体11から噴霧ユニット12へ、ホーン振動子40を駆動するための電力を伝送する方式は、有線電力伝送方式であってもよい。有線電力伝送方式の場合、例えば、噴霧器ヘッド1において本体11の本体筐体11Mと噴霧ユニット12のベース筐体30Mとを一体の筐体にするとともに、
図5中に示す変換回路50が発生した正弦波形を有する交流電圧V1、または、
図6中に示す変換回路50Aが発生した正弦波形を有する交流電圧V1Aを、配線によって、ホーン振動子40に印加する構成にしてもよい。そのようにした場合、噴霧器ヘッド1の筐体を簡素化でき、また、噴霧器ヘッド1の電気回路の構成を簡素化できる。したがって、噴霧器ヘッド1をより少ない部品点数でコンパクトに構成できる。
【0074】
また、上述の実施形態では、噴霧器ヘッド1の電気回路は、
図5または
図6中に示す要素以外の要素を含んでいないものとした。しかしながら、これに限られるものではない。例えば、噴霧器ヘッド1の回路基板60は、スマートフォン400と噴霧器ヘッド1との間のUSB通信が成立したことをスマートフォン400へ返信する機能を有するIC(集積回路)を搭載していてもよい。また、噴霧器ヘッド1の本体筐体11Mの側面11Ms(特に、
図10中に示すユーザ99から見える部分)に、スマートフォン400から噴霧器ヘッド1への信号供給状態を表示するLED(発光ダイオード)などの表示器を備えていてもよい。例えば、この表示器は、スマートフォン400から噴霧器ヘッド1へUSB規格に従う信号(特に、制御信号)が供給されている期間は点灯して信号供給中であることを示し、それ以外の期間は消灯して信号供給が停止していることを示すのが望ましい。
【0075】
また、上述の実施形態では、本体11(の回路基板60)が雌タイプのUSBコネクタ19を搭載し、このUSBコネクタ19に、USBケーブル200の雄タイプのUSBコネクタ209が接続される構成とした。しかしながら、これに限られるものではない。USBコネクタ19,209を介在させることなく、USBケーブル200の一端が回路基板60(の変換回路50または50A)に半田付けなどにより直付けされ、USBケーブル200が本体11(本体筐体11M)から直に出ている構成としてもよい(USBケーブル直出し構造)。
【0076】
また、上述の実施形態では、噴霧器ヘッド1(本体11および噴霧ユニット12)は、長円状の平面形状を有するとしたが、これに限られるものではない。噴霧器ヘッド1の平面形状は、楕円、円、丸角四角形(角が丸くされた四角形)などであってもよい。
【0077】
また、上述の実施形態では、ネブライザシステム800は、USBケーブルを介してUSB規格に従う信号を供給可能なコンピュータ装置としてスマートフォン400を備えたが、これに限られるものではない。スマートフォン400に代えて、例えばPDA(Personal Digital Assistant)、タブレット端末、パーソナルコンピュータなどを備えてもよい。
【0078】
以上の実施形態は例示であり、この発明の範囲から離れることなく様々な変形が可能である。上述した複数の実施の形態は、それぞれ単独で成立し得るものであるが、実施の形態同士の組みあわせも可能である。また、異なる実施の形態の中の種々の特徴も、それぞれ単独で成立し得るものであるが、異なる実施の形態の中の特徴同士の組みあわせも可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 噴霧器ヘッド
11,400M 本体
11M 本体筐体
12 噴霧ユニット
20 メッシュ部材
21 シート
30 装着用筐体
30M ベース筐体
31 カバー部材
40 ホーン振動子
50,50A 変換回路
51 第1の共振回路
52 第2の共振回路
200 USBケーブル
400 スマートフォン
410 制御部
800 ネブライザシステム