(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140876
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】液体フィルター用基材及び液体フィルター
(51)【国際特許分類】
B01D 71/26 20060101AFI20241003BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20241003BHJP
B01D 69/02 20060101ALI20241003BHJP
C08J 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D71/26
B01D69/00
B01D69/02
C08J9/26 102
C08J9/26 CES
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052235
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長尾 優
【テーマコード(参考)】
4D006
4F074
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006HA71
4D006HA91
4D006JA02B
4D006JA02C
4D006JA02Z
4D006MA21
4D006MA22
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4D006MB02
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4D006NA01
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4D006PA01
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4F074AA17
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4F074DA02
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4F074DA23
4F074DA43
(57)【要約】
【課題】孔径が比較的小さいながら洗浄によって残留金属の除去が容易な液体フィルター用基材を提供する。
【解決手段】液体フィルター用基材は、孔径が1nm~35nmであり且つ長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個であるポリオレフィン微多孔膜を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔径が1nm~35nmであり且つ長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個であるポリオレフィン微多孔膜、を有する、
液体フィルター用基材。
【請求項2】
前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚が3μm~20μmである、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項3】
前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が35%~70%である、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項4】
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量が0.003L/min/ft2/psi~0.180L/min/ft2/psiである、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項5】
前記ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン全体の重量平均分子量が80万以上である、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項6】
前記ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン微多孔膜である、請求項1に記載の液体フィルター用基材。
【請求項7】
請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の液体フィルター用基材を備える、液体フィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体フィルター用基材及び液体フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体のリソグラフィ工程に使用される液状組成物は、その使用前に、液状組成物から微小な異物を除去する目的で、液体フィルターで濾過される。その液体フィルター内部には、緻密な多孔質膜をプリーツ加工した濾材、中空糸を束ねた濾材などが収納されている。
従来、液体フィルターの濾材に使用する多孔質膜として、ポリオレフィン微多孔膜が知られている。特許文献1~7には、小孔径のポリオレフィン微多孔膜からなる液体フィルター用基材が開示されている。
ポリオレフィンはハロゲン元素を含まず、したがって、濾材がポリオレフィン微多孔膜である液体フィルターは、使用後の廃棄処理に制限が少ない点および環境負荷が小さい点で有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/181760号
【特許文献2】国際公開第2014/181761号
【特許文献3】国際公開第2014/181762号
【特許文献4】特開2014-217800号公報
【特許文献5】特開2014-218563号公報
【特許文献6】特開2018-167198号公報
【特許文献7】国際公開第2020/022321号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
液体フィルターは一般的に、製造後かつ使用前に濾材が洗浄される。濾材を洗浄することによって、液体フィルターの製造中に発生した微粉及び空気中のちり等を濾材から除去し、液体フィルターの被処理液にこれらの異物が混入することを防ぐ。
また、濾材の洗浄の際に、濾材自体に含まれていた微量な金属が溶出して除去される。ポリオレフィン微多孔膜には、製造原料であるポリオレフィンが持ち込んだ金属(カルシウム、亜鉛など。ポリオレフィンの重合触媒又は重合後の添加剤(例えば金属石鹸)に由来する。)が含まれていることがあり、濾材の洗浄の際にこれら金属がポリオレフィン微多孔膜から溶出して除去される。
濾材に含まれている金属は、リソグラフィ工程に使用される液状組成物を濾過する際に液状組成物へ溶出し、半導体の製造歩留まりを低下させる懸念があることから、使用前に濾材から除去されることが望ましい。
【0005】
ところで、半導体の配線パターンが微細化かつ高密度化するにしたがい、リソグラフィ工程に使用される液状組成物から極微小な異物(例えば粒径が数nmの微小粒子)さえも除去する必要性が高まっている。そのため、より緻密な濾材を備える液体フィルターが要求されている。
ただし、濾材が緻密化するほど、濾材の洗浄効率は下がる傾向がある。ポリオレフィン微多孔膜について言えば、その孔径が小さいほど、濾材の洗浄の際に、ポリオレフィン微多孔膜に含まれていた金属が溶出して除去される効率は下がる。
【0006】
さらに、ポリオレフィン微多孔膜の緻密化は、下記の機序によっても金属の溶出及び除去を難しくする。
一般的にポリオレフィン微多孔膜の緻密化は、超高分子量ポリオレフィンを原料とすることによって実現される。したがって、ポリオレフィン微多孔膜をより緻密化する方策として、超高分子量ポリオレフィンの分子量を増大することが考えられる。しかし、分子量がより大きい超高分子量ポリオレフィンは、溶融混練の際に融けきらず、ポリオレフィン微多孔膜にポリオレフィンからなる粒状物を発生させることがある。この粒状物には原料ポリオレフィンに含まれていた金属が残留しており、しかも、粒状物内部の金属は濾材の洗浄の際に溶出しにくい。
【0007】
以上の理由によって、ポリオレフィン微多孔膜の緻密化と残留金属の除去とを共に実現することは難しかった。
【0008】
本開示は、上記状況のもとになされた。
本開示は、孔径が比較的小さいながら洗浄によって残留金属の除去が容易な液体フィルター用基材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1>
孔径が1nm~35nmであり且つ長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個であるポリオレフィン微多孔膜、を有する、
液体フィルター用基材。
<2>
前記ポリオレフィン微多孔膜の膜厚が3μm~20μmである、<1>に記載の液体フィルター用基材。
<3>
前記ポリオレフィン微多孔膜の空孔率が35%~70%である、<1>又は<2>に記載の液体フィルター用基材。
<4>
前記ポリオレフィン微多孔膜の水流量が0.003L/min/ft2/psi~0.180L/min/ft2/psiである、<1>~<3>のいずれか1つに記載の液体フィルター用基材。
<5>
前記ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン全体の重量平均分子量が80万以上である、<1>~<4>のいずれか1つに記載の液体フィルター用基材。
<6>
前記ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン微多孔膜である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の液体フィルター用基材。
<7>
<1>~<6>のいずれか1つに記載の液体フィルター用基材を備える、液体フィルター。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、孔径が比較的小さいながら洗浄によって残留金属の除去が容易な液体フィルター用基材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
本開示において各成分に該当する粒子は複数種含んでいてもよい。組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、各成分の粒径は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
【0015】
本開示において、MD(Machine Direction)とは、長尺状に製造されるポリオレフィン微多孔膜において長尺方向を意味し、TD(Transverse Direction)とは、ポリオレフィン微多孔膜の面方向においてMDに直交する方向を意味する。本開示において、TDを「幅方向」ともいう。
【0016】
本開示において、液体フィルター又は液体フィルター用基材を構成する各層の積層関係について「上」及び「下」で表現する場合、ポリオレフィン微多孔膜に対してより近い層について「下」といい、ポリオレフィン微多孔膜に対してより遠い層について「上」という。
【0017】
本開示において、微多孔膜又は多孔質層の空孔を除いた体積を「固形分体積」という。
【0018】
<液体フィルター用基材>
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜を有する。
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜のみからなる基材であってもよく、ポリオレフィン微多孔膜と他の多孔膜又は多孔質層とが積層した基材であってもよい。本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜を1枚有していてもよく、2枚以上有していてもよい(すなわち、2枚以上のポリオレフィン微多孔膜が重なっていてもよい)。
【0019】
本開示の液体フィルター用基材の実施形態の一例は、ポリオレフィン微多孔膜のみからなる基材である。
本開示の液体フィルター用基材の実施形態の一例は、1枚のポリオレフィン微多孔膜のみからなる単層構造の基材である。
【0020】
本開示の液体フィルター用基材が有するポリオレフィン微多孔膜は、孔径が1nm~35nmであり、且つ、長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個である。
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜の孔径が1nm~35nmであることによって、被処理液に含まれる微小粒子(例えば粒径5nmの粒子)を濾別することができる。
本開示の液体フィルター用基材は、ポリオレフィン微多孔膜に存在する長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個であることによって、残留金属が含まれていた場合でも洗浄によって残留金属の除去が容易である。
【0021】
ポリオレフィン微多孔膜に存在する長径1mm以上の粒状物は、原料ポリオレフィンの溶融混練の際に融けきらなかったポリオレフィンであると推測される。この粒状物には原料ポリオレフィンに含まれていた金属が残留しており、しかも、粒状物内部の金属は濾材の洗浄の際に溶出しにくい。
ポリオレフィン微多孔膜に存在する長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり0個~2個であれば、ポリオレフィン微多孔膜に金属が含まれていても洗浄によって除去することが容易である。
【0022】
以下、本開示の液体フィルター用基材が有するポリオレフィン微多孔膜について詳しく説明する。
【0023】
[ポリオレフィン微多孔膜]
ポリオレフィン微多孔膜とは、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった膜を意味する。
【0024】
ポリオレフィン微多孔膜においてポリオレフィンは、ポリオレフィン微多孔膜の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることが更に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜には、本開示の効果に影響を与えない範囲で、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0025】
ポリオレフィン微多孔膜は、疎水性でもよく、親水性でもよい。ポリオレフィンは疎水性の樹脂であるので、ポリオレフィン微多孔膜そのものは疎水性である。ポリオレフィン微多孔膜は、親水化処理を施さない疎水性ポリオレフィン微多孔膜でもよく、親水化処理により親水性を付与されたポリオレフィン微多孔膜でもよい。
【0026】
ポリオレフィン微多孔膜を親水化する処理方法として、例えば、物理的な親水化処理(プラズマ処理、コロナ放電処理、紫外線照射、電子線照射など)、界面活性剤又は親水性材料(セルロース、ポリビニルアルコールなど)のコーティング処理、親水性モノマーのグラフト重合が挙げられる。
【0027】
[孔径]
ポリオレフィン微多孔膜の孔径は、1nm~35nmである。
ポリオレフィン微多孔膜の孔径が1nm以上であることにより、十分な液体通過性を得ることできる。この観点から、ポリオレフィン微多孔膜の孔径は、5nm以上が好ましく、10nm以上がより好ましく、11nm以上が更に好ましく、13nm以上が特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の孔径が35nm以下であることにより、被処理液に含まれる微小粒子(例えば粒径5nmの粒子)を濾別することができる。この観点から、ポリオレフィン微多孔膜の孔径は、34nm以下が好ましく、32nm以下がより好ましく、25nm以下が更に好ましく、22nm以下が特に好ましい。
【0028】
ポリオレフィン微多孔膜の孔径は、ASTM E1294-89に規定するハーフドライ法によって測定する流量孔径である。当該流量孔径は、パームポロメータ(PMI社、Capillary Flow Porometer、型式:CFP-1500A)と、浸液にフッ素系不活性液体(商品名:フロリナート、表面張力16.0dyn/cm)を用いて測定する。測定温度は25℃であり、測定圧力は0psi~500psiの範囲で変化させる。
ポリオレフィン微多孔膜のTDに沿って、中心と、中心から両端部に向かって50mm離れた2点と、中心から両端部に向かって100mm離れた2点との合計5点において流量孔径を測定し、その平均値をポリオレフィン微多孔膜の孔径とする。
【0029】
[長径1mm以上の粒状物の個数]
ポリオレフィン微多孔膜は、洗浄によって残留金属の除去が容易である観点から、長径1mm以上の粒状物の個数が1m2あたり2個以下であり、1m2あたり1個以下が好ましく、1m2あたり0個がより好ましい。
【0030】
ポリオレフィン微多孔膜に存在する長径1mm以上の粒状物の個数は、下記の測定方法によって求める。
ポリオレフィン微多孔膜を、面積1m2分、切り出す。両面から付着物(ポリオレフィン微多孔膜の製造中に発生した微粉及び空気中のちり等であって、ポリオレフィン微多孔膜と一体化していない物)を取り除く。
ポリオレフィン微多孔膜の一方の面からフラッシュライトを照射し、フラッシュライトを照射している面を真上から目視で平面視する。ポリオレフィン微多孔膜を平面視したときの長軸長さが1mm以上の粒状物を見出し、その個数を目視で数える。ポリオレフィン微多孔膜を構成する繊維は太さがナノメートルオーダーであるので、平面視したときの長軸長さが1mm以上の粒状物は、存在していれば容易に見出される。
面積1m2分の計測を5回繰り返し、5回の計測値を平均する。
【0031】
[膜厚]
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、力学的強度及び耐久性を得る観点から、3μm以上が好ましく、4μm以上がより好ましく、5μm以上が更に好ましく、6μm以上が特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、十分な液体通過性を得る観点、濾過圧力が比較的小さい観点、プリーツ加工等をして濾過面積を増大できる観点、濾過面積を大きくする加工が容易である観点などから、20μm以下が好ましく、18μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましく、15μm以下がより更に好ましく、14μm以下が特に好ましい。
【0032】
ポリオレフィン微多孔膜の膜厚は、接触式膜厚計にて10点を測定し、これを平均することで求める。測定箇所は、TDに沿って、一方の端部近傍から他方の端部近傍まで等間隔に10点設定する。
【0033】
[空孔率]
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、十分な液体通過性を得る観点、濾過圧力が比較的小さい観点などから、35%以上が好ましく、38%以上がより好ましく、40%以上が更に好ましく、42%以上が特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率は、力学的強度及び耐久性を得る観点から、70%以下が好ましく、66%以下がより好ましく、60%以下が更に好ましく、57%以下がより更に好ましく、55%以下が特に好ましい。
【0034】
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε(%)={1-Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m2):ポリオレフィン微多孔膜をTDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、MD10cm×TD10cmの大きさに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で除算する。さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出し、これをWsとする。
ds:ポリオレフィン微多孔膜の真密度(g/cm3):0.96とする。
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm):先述のとおり求める。
【0035】
[水流量]
ポリオレフィン微多孔膜の水流量は、長期にわたって十分な液体通過性を得る観点から、0.003L/min/ft2/psi以上が好ましく、0.004L/min/ft2/psi以上がより好ましく、0.005L/min/ft2/psi以上が更に好ましく、0.013L/min/ft2/psi以上が特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の水流量は、微小粒子(例えば粒径5nmの粒子)の捕集性能を得る観点から、0.180L/min/ft2/psi以下が好ましく、0.150L/min/ft2/psi以下がより好ましく、0.100L/min/ft2/psi以下が更に好ましく、0.090L/min/ft2/psi以下が特に好ましい。
【0036】
ポリオレフィン微多孔膜の水流量は、下記の測定方法によって求める。
ポリオレフィン微多孔膜を、TDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、40mm×40mmの正方形に切り出し、エタノールに浸漬し、室温下で乾燥させる。ポリオレフィン微多孔膜を直径37mmの透液セル(透液面積10.75cm2)に設置し、室温24℃の温度雰囲気下、差圧90kPaで純水100mlを通過させ、純水全量が通過に要した時間Tl(min)を計測する。純水の液量V(100ml)と時間Tl(min)と透液面積S(10.75cm2)とから、以下の式によって、水流量Vs(1psi差圧下における単位時間(min)・単位面積(ft2)あたりの水流量であり、単位:L/min/ft2/psi)を計算する。さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出する。
Vs=(V/1000)/Tl/(S/929.03)/(90/6.895)
【0037】
[熱収縮率]
ポリオレフィン微多孔膜の温度105℃における熱収縮率は、耐熱性の観点から、MDにおいて、45%以下が好ましく、40%以下がより好ましく、30%以下が更に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜の温度105℃における熱収縮率は、耐熱性の観点から、TDにおいて、20%以下が好ましく、15%以下がより好ましく、10%以下が更に好ましい。
【0038】
ポリオレフィン微多孔膜の熱収縮率は、下記の測定方法によって求める。
ポリオレフィン微多孔膜を、TDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、MD10cm×TD10cmの大きさに切り出し、試料とする。試料を、庫内温度を105℃に保ったオーブンの中に30分間置く。オーブンから試料を取り出し、試料のMD長さ及びTD長さを測定する。MD及びTDそれぞれの熱収縮率(%)={(熱処理前の長さ-熱処理後の長さ)÷熱処理前の長さ×100}を算出する。さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出する。
【0039】
[ポリオレフィン]
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンとして、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン、メチルペンテン等の単独重合体(すなわち、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン等)又は共重合体、これらの混合物が挙げられる。
【0040】
ポリオレフィン微多孔膜は、単量体の種類、重合度、分岐度、結晶性、延伸性及び分子配向性の少なくとも1つが互いに異なる2種以上のポリオレフィンを用いて形成された微多孔膜であることが好ましい。2種以上のポリオレフィンを用いることにより、延伸時のフィブリル化によってポリオレフィン微多孔膜にネットワーク構造を形成しやすい。
【0041】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン全体の重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜を緻密化する観点から、80万以上が好ましく、85万以上がより好ましく、90万以上が更に好ましく、95万以上がより更に好ましく、97万以上が特に好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン全体の重量平均分子量は、溶融混練の際に均一に溶融しやすい観点から、350万以下が好ましく、320万以下がより好ましく、310万以下が更に好ましく、300万以下が特に好ましい。
【0042】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィン全体の重量平均分子量は、ポリオレフィン微多孔膜をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(システム:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6-HT及びGMH6-HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて測定して求める。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー株式会社)を用いる。
【0043】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンは、ポリエチレンであることが好ましい。すなわち、ポリオレフィン微多孔膜は、ポリエチレン微多孔膜であることが好ましい。本開示においてポリエチレン微多孔膜とは、樹脂全体に占める質量割合が最も多い樹脂がポリエチレンである微多孔膜を意味する。
【0044】
ポリエチレン微多孔膜においてポリエチレンは、ポリエチレン微多孔膜の90質量%以上を占めることが好ましく、95質量%以上を占めることがより好ましく、99質量%以上を占めることが更に好ましい。
ポリエチレン微多孔膜には、本開示の効果に影響を与えない範囲で、界面活性剤などが含まれていてもよい。
【0045】
ポリエチレン微多孔膜は、重合度、分岐度、結晶性、延伸性及び分子配向性の少なくとも1つが互いに異なる2種以上のポリエチレンを用いて形成された微多孔膜であることが好ましい。2種以上のポリエチレンを用いることにより、延伸時のフィブリル化によってポリエチレン微多孔膜にネットワーク構造を形成しやすい。
【0046】
ポリエチレン微多孔膜を構成するポリエチレンとして、例えば、超高分子量ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレンと高密度ポリエチレンの混合物が挙げられる。
【0047】
ポリエチレン微多孔膜は、ポリエチレン微多孔膜を緻密化する観点から、重量平均分子量300万~600万の超高分子量ポリエチレンを含むことが好ましい。ポリエチレン微多孔膜は、重量平均分子量300万~600万の超高分子量ポリエチレンを、50質量%~95質量%含むことが好ましく、60質量%~90質量%含むことがより好ましく、70質量%~85質量%含むことが更に好ましい。
【0048】
ポリエチレン微多孔膜は、重量平均分子量300万~600万の超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量20万~80万且つ密度0.92g/cm3~0.98g/cm3の高密度ポリエチレンとを含むことが好ましい。ポリエチレン微多孔膜に含まれる上記の両ポリエチレンの質量比(超高分子量ポリエチレン:高密度ポリエチレン)は、ポリエチレン微多孔膜に含まれる長径1mm以上の粒状物を少なくする観点と、小孔径の微多孔膜を製造する観点とから、50:50~95:5が好ましく、60:40~90:10がより好ましく、70:30~85:15が更に好ましい。
【0049】
ポリエチレン微多孔膜を構成するポリエチレン全体の重量平均分子量は、ポリエチレン微多孔膜を緻密化する観点から、80万以上が好ましく、85万以上がより好ましく、90万以上が更に好ましく、95万以上がより更に好ましく、97万以上が特に好ましい。
ポリエチレン微多孔膜を構成するポリエチレン全体の重量平均分子量は、溶融混練の際に均一に溶融しやすい観点から、350万以下が好ましく、320万以下がより好ましく、310万以下が更に好ましく、300万以下が特に好ましい。
【0050】
ポリオレフィン微多孔膜を構成するポリオレフィンに含まれるカルシウム含有量は、原料ポリオレフィンによるが、例えば下記の範囲が好ましい。
実施形態の一例においてポリオレフィンに含まれるカルシウム含有量は、50ppm以下が好ましく、38ppm以下がより好ましく、35ppm以下が更に好ましく、34ppm以下が特に好ましい。
実施形態の一例においてポリオレフィンに含まれるカルシウム含有量は、1000ppb以下が好ましく、500ppb以下がより好ましく、400ppb以下が更に好ましく、300ppb以下が特に好ましい。
ポリオレフィンに含まれるカルシウム含有量は、例えば、0ppb以上、10ppb以上、20ppb以上、50ppb以上、又は100ppb以上である。
ポリオレフィンに含まれるカルシウム含有量を調整する方法として、重合後のポリオレフィンに添加する金属石鹸(ステアリン酸カルシウム等)の量を調整すること、ポリオレフィンを酸洗浄すること、ポリオレフィンに残存する重合触媒を脱灰工程により除去することが挙げられる。
【0051】
ポリオレフィンのカルシウム含有量は、ポリオレフィンに超高純度硝酸を添加してマイクロウェーブ分解し、これを試料にして、ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析、装置名:Aglient7500cs、アジレント・テクノロジー株式会社)を用いて定量する。
【0052】
[ポリオレフィン微多孔膜の製造方法]
ポリオレフィン微多孔膜は、例えば、下記の工程(1)~工程(6)を含む製造方法で製造することができる。
【0053】
工程(1):ポリオレフィンと溶剤とを含むポリオレフィン溶液を調製する工程。
工程(2):ポリオレフィン溶液を溶融混練し、溶融混練物をダイから押し出し、押出物を冷却し固化して、ゲル状成形物を得る工程。
工程(3):ゲル状成形物から溶剤を絞り出す工程。
工程(4):ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸してポリオレフィン微多孔膜を得る工程。
工程(5):ポリオレフィン微多孔膜を洗浄して溶剤を除去する工程。
工程(6):ポリオレフィン微多孔膜にアニール処理をする工程。
【0054】
工程(1)、工程(2)及び工程(4)の各条件を制御することにより、長径1mm以上の粒状物(原料ポリオレフィンの未溶融物と推測される。)の発生を抑制することが可能である。また、工程(1)~工程(6)の各条件を制御することにより、ポリオレフィン微多孔膜の膜厚、孔径、空孔率、水流量などを調整することができる。
【0055】
-工程(1)-
工程(1)は、ポリオレフィンと溶剤とを含むポリオレフィン溶液を調製する工程である。
【0056】
工程(1)に使用するポリオレフィンは、1種でもよく、2種以上でもよい。ポリオレフィンは、ポリエチレンを含むことが好ましく、重量平均分子量300万~600万の超高分子量ポリエチレンと、重量平均分子量20万~80万且つ密度0.92g/cm3~0.98g/cm3の高密度ポリエチレンとを含むことがより好ましい。
【0057】
ポリオレフィンは一般的に、粒状ペレット又は粉体の形態で取引される。工程(1)にポリオレフィンの粉体を使用する場合、粉体の粒径は、工程(2)においてポリオレフィンをまんべんなく溶融混練する観点から、1μm~1000μmが好ましく、5μm~500μmがより好ましく、10μm~300μmが更に好ましい。
上記の粒径は、体積基準の粒度分布のメディアン径(d50)である。体積基準の粒度分布は、レーザー回析式粒度分布測定装置(装置名:マスターサイザー2000、マルバーン社)を用いて乾式測定により求める。
【0058】
工程(1)に使用する溶剤は、ポリオレフィンを膨潤又は溶解できる溶剤であれば制限されない。溶剤は、大気圧における沸点が210℃以上の不揮発性溶剤と、大気圧における沸点が210℃未満の揮発性溶剤とに大別される。
【0059】
不揮発性溶剤として、例えば、流動パラフィン、パラフィン油、鉱油、ひまし油などが挙げられる。不揮発性溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不揮発性溶剤として、流動パラフィンが好ましい。
【0060】
揮発性溶剤として、例えば、テトラリン、エチレングリコール、デカリン(別名デカヒドロナフタレン)、トルエン、キシレン、ジエチルトリアミン、エチレンジアミン、ジメチルスルホキシド、ヘキサン等が挙げられる。揮発性溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。揮発性溶剤として、デカリン又はキシレンが好ましい。
【0061】
工程(1)に使用する溶剤は、不揮発性溶剤と揮発性溶剤の混合溶剤であることが好ましく、流動パラフィンとデカリン又はキシレンの混合溶剤であることがより好ましく、流動パラフィンとデカリンの混合溶剤であることが更に好ましい。
不揮発性溶剤と揮発性溶剤の混合比(質量比、不揮発性溶剤:揮発性溶剤)は、99:1~60:40が好ましい。
【0062】
2種以上のポリオレフィンを用いる場合、ポリオレフィンと溶剤を混合する際の材料の混合順は制限されない。例えば、下記の形態(a)及び形態(b)のいずれでもよい。
【0063】
形態(a):2種以上のポリオレフィンを1種ずつ溶剤に混合する。予め2種以上の溶剤を混合して混合溶剤を調製し、混合溶剤にポリオレフィンを1種ずつ混合してもよい。
本形態において各ポリオレフィンは、全量を1回で溶剤に添加してもよく、複数回に分けて溶剤に添加してもよい。比較的分子量の大きいポリオレフィンは、複数回に分けて溶剤に添加することが好ましい。2種以上のポリオレフィンを交互に溶剤に添加してもよい。
【0064】
形態(b):2種以上のポリオレフィンを混合してポリオレフィン組成物を調製し、ポリオレフィン組成物と溶剤とを混合する。予め2種以上の溶剤を混合して混合溶剤を調製し、混合溶剤とポリオレフィン組成物とを混合してもよい。
本形態においてポリオレフィン組成物は、全量を1回で溶剤に添加してもよく、複数回に分けて溶剤に添加してもよい。
【0065】
ポリオレフィン溶液のポリオレフィン濃度は、ポリオレフィン微多孔膜に力学的強度と液体通過性と微小粒子の捕集性能とをバランスよく付与する観点から、10質量%~40質量%であることが好ましく、15質量%~35質量%であることがより好ましく、20質量%~30質量%であることが更に好ましい。
ポリオレフィン溶液のポリオレフィン濃度が10質量%以上であると、ポリオレフィン微多孔膜の力学的強度が担保される。
ポリオレフィン溶液のポリオレフィン濃度が40質量%以下であると、ポリオレフィン微多孔膜に空孔が形成されやすい。
【0066】
-工程(2)-
工程(2)は、ポリオレフィン溶液を溶融混練し、溶融混練物をダイから押し出し、押出物を冷却し固化して、ゲル状成形物を得る工程である。ゲル状成形物は、シート状に形成することが好ましい。
【0067】
ポリオレフィン溶液の溶融混練は、混練押出機を用いて行うことが好ましい。混練押出機は、被処理物を連続的に搬送しながら、被処理物に圧力及び熱を印加する装置である。混練押出機の構造は一般的に、上流から下流に向かって順に、材料投入口、バレル、ダイに大別される。バレル内部にはスクリューが備えられている。バレル周囲にはバレル内部を加熱するヒーターが設けられている。スクリューは、一軸型でもよく二軸型でよく、二軸型が好ましい。
【0068】
バレル内部の最下流域におけるポリオレフィン溶液の温度は、ポリオレフィンを十分に溶融する観点から、ポリオレフィンの融点をMP℃としたとき(ポリオレフィンを2種以上用いる場合、それらポリオレフィンの融点のなかで最も高い融点をMP℃とする。)、MP+30℃~MP+150℃であることが好ましく、MP+40℃~MP+140℃であることがより好ましく、MP+50℃~MP+130℃であることが更に好ましい。
【0069】
被処理物がバレル内部の通過に要する時間は、1分間~10分間が好ましく、1分30秒間~8分間がより好ましく、2分間~7分間が更に好ましい。被処理物の通過時間は、スクリューの回転数によって制御することができる。
【0070】
ダイにおける溶融混練物の温度は、ポリオレフィン微多孔膜のフィルム成形性を上げる観点から、ポリオレフィンの融点をMP℃としたとき(ポリオレフィンを2種以上用いる場合、それらポリオレフィンの融点のなかで最も高い融点をMP℃とする。)、MP+30℃~MP+120℃であることが好ましく、MP+40℃~MP+110℃であることがより好ましく、MP+50℃~MP+100℃であることが更に好ましい。
【0071】
押出物を冷却する方法として、例えば、押出物を水又は有機溶剤に浸漬すること、押出物を冷却された金属ロールに接触させることが挙げられる。冷却温度は10℃~40℃が好ましい。押出物を水に浸漬する場合、水浴の表層に水流を作り、押出物から放出された溶剤が押出物に付着することを抑制することが好ましい。
【0072】
-工程(3)-
工程(3)は、ゲル状成形物から溶剤を絞り出す工程である。
工程(3)は、ゲル状成形物に圧力を印加することによって実現することが好ましい。ゲル状成形物に圧力を印加する方法として、例えば、ローラー又はベルトにゲル状成形物を押し付けながら搬送すること、1対のローラー間にゲル状成形物を通過させることが挙げられる。ゲル状成形物が受ける圧力は、0.01MPa~0.5MPaが好ましく、0.05MPa~0.2MPaがより好ましい。ローラー又はベルトの表面温度は40℃~100℃であることが好ましい。
【0073】
工程(2)と工程(3)の間に、ゲル状成形物から溶剤の一部を揮発させる目的で、ゲル状成形物の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理の温度は50℃~100℃が好ましい。加熱処理は、1回でもよく、温度を変えた2回以上でもよい。加熱処理の時間は、1回あたり5分間~10分間が好ましい。
上記の加熱処理を予め行うことによって、工程(3)の搬送路を短くしたり、工程(3)の条件(圧力及び/又は温度)を穏やかにしたりできる。
【0074】
-工程(4)-
工程(4)は、ゲル状成形物を少なくとも一方向に延伸してポリオレフィン微多孔膜を得る工程である。
【0075】
工程(4)における延伸は、二軸延伸が好ましい。二軸延伸は、縦延伸と横延伸とを別々に実施する逐次二軸延伸、縦延伸と横延伸とを同時に実施する同時二軸延伸のいずれでもよい。二軸延伸は、縦方向に複数回延伸した後に横方向に延伸すること、縦方向に延伸し横方向に複数回延伸すること、逐次二軸延伸した後にさらに縦方向及び/又は横方向に1回又は複数回延伸すること等でもよい。
【0076】
延伸倍率(縦延伸倍率と横延伸倍率の積)は、ポリオレフィン微多孔膜に液体通過性と微小粒子の捕集性能とをバランスよく付与する観点から、40倍~240倍が好ましく、45倍~150倍がより好ましく、50倍~120倍が更に好ましい。
【0077】
延伸温度は、ポリオレフィンからなる粒状物の発生を抑制する観点から、80℃~130℃が好ましく、90℃~125℃がより好ましく、100℃~120℃が更に好ましい。
【0078】
延伸に次いで熱固定処理を行うことが好ましい。熱固定温度は、100℃~140℃が好ましく、105℃~130℃がより好ましく、110℃~120℃が更に好ましい。
【0079】
-工程(5)-
工程(5)は、ポリオレフィン微多孔膜を洗浄して溶剤を除去する工程である。工程(5)は、塩化メチレン等のハロゲン化炭化水素、ヘキサン等の炭化水素などの溶剤でポリオレフィン微多孔膜を洗浄することが好ましい。
【0080】
ポリオレフィン微多孔膜の洗浄は、洗浄用溶剤を入れた浴槽内にポリオレフィン微多孔膜を浸漬させることによって行うことが好ましい。この場合、洗浄効果を高める目的で、浴槽を2槽以上に分け、洗浄用溶剤の純度を下流側の浴槽ほど高くすることが好ましい。このことは、最下流の浴槽に洗浄用溶剤を注ぎ入れ、上流に向かって洗浄用溶剤を流すことによって実現できる。浴槽を2槽以上に分ける場合、2槽でもよく3槽以上でもよい。各槽における洗浄用溶剤の純度勾配をより緩やかにする観点から、3槽以上が好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜が浴槽全部の通過に要する時間は、60秒~150秒が好ましく、70秒~120秒がより好ましく、80秒~100秒が更に好ましい。
【0081】
洗浄用溶剤を入れた浴槽からポリオレフィン微多孔膜を引き揚げた後、洗浄用溶剤を乾燥によって除去することが好ましい。乾燥温度は、洗浄用溶剤の沸点を少し上回る温度であればよい。
【0082】
-工程(6)-
工程(6)は、ポリオレフィン微多孔膜にアニール処理をする工程である。アニール処理は、例えば、表面温度100℃~130℃のローラー上を、又は、温度100℃~130℃の恒温槽を、ポリオレフィン微多孔膜を搬送することで行う。アニール処理の間、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向の収縮を抑制する目的で、ポリオレフィン微多孔膜の幅方向を固定する操作を行うことが好ましい。
【0083】
さらに、ポリオレフィン微多孔膜に、液体フィルターの被処理液に対する親和性付与加工を施してもよい。
【0084】
<液体フィルター>
本開示の液体フィルターは、微小粒子を含む又は含んでいる可能性がある被処理液から、当該粒子を除去するための器具である。当該粒子は、固体状又はゲル状の形態で被処理液に含まれる。
【0085】
本開示の液体フィルターは、濾材として、本開示の液体フィルター用基材を備える。
液体フィルターは一般的に、その製造後かつ使用前に濾材が洗浄されるところ、本開示の液体フィルター用基材は、残留金属が含まれていた場合でも、洗浄によって残留金属の除去が容易である。したがって、本開示の液体フィルターは、使用前に濾材を洗浄しておけば、被処理液を濾過する際に被処理液に金属を溶出する懸念が少ない。
【0086】
本開示の液体フィルターは、例えば、プリーツ加工された液体フィルター用基材と、円筒形状のハウジングとを備え、ハウジング内部にプリーツ加工された液体フィルター用基材が収納されている。本開示の液体フィルターは、例えば、濾過装置に着脱可能なカートリッジである。
【0087】
本開示の液体フィルターは、粒径が数nm程度の微小粒子を被処理液から除去する目的に好適である。本開示の液体フィルターは、例えば、半導体の製造工程、ディスプレイの製造工程などに用いることができる。
【実施例0088】
以下に実施例を挙げて、本開示の液体フィルター用基材をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示の液体フィルター用基材の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0089】
以下の説明において、合成、処理、製造などは、特に断りのない限り、室温(25℃±3℃)で行った。
【0090】
<測定方法、評価方法>
実施例及び比較例はすべて、幅270mmのポリオレフィン微多孔膜を内径3インチの巻取コアに巻回しながら製造した。製造したポリオレフィン微多孔膜から適切な寸法に切り出した試料を、物性測定又は性能評価に供した。物性の測定方法及び性能の評価方法は以下のとおりである。
【0091】
[ポリオレフィンのカルシウム含有量]
ポリオレフィン0.1gをフッ素樹脂製容器に精秤し、超高純度硝酸を添加してマイクロウェーブ分解した。ICP-MS(誘導結合プラズマ質量分析、装置名:Aglient7500cs、アジレント・テクノロジー株式会社)により、カルシウム(Ca)含有量をppbまたはppmの桁で定量した。
【0092】
[ポリオレフィン粉体の粒径]
レーザー回析式粒度分布測定装置(装置名:マスターサイザー2000、マルバーン社)を用いた乾式測定により、ポリオレフィン粉体の体積基準の粒度分布を求め、メディアン径(d50)を粒径とした。
【0093】
[ポリオレフィン微多孔膜の膜厚]
接触式膜厚計(株式会社ミツトヨ)と底面直径0.5cmの円柱状接触端子を用い、ポリオレフィン微多孔膜のTDに26mm間隔で10点の膜厚(μm)を測定し、測定値を平均した。接触端子の測定圧は0.1Nとした。
【0094】
[ポリオレフィン微多孔膜の空孔率]
ポリオレフィン微多孔膜の空孔率(ε)を下記の式から求めた。
ε(%)={1-Ws/(ds・t)}×100
Ws:ポリオレフィン微多孔膜の目付け(g/m2):ポリオレフィン微多孔膜をTDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、MD10cm×TD10cmの大きさに切り出し、その質量を測定し、質量を面積で除算した。さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出し、これをWsとした。
ds:ポリオレフィン微多孔膜の真密度(g/cm3):0.96とした。
t:ポリオレフィン微多孔膜の膜厚(μm):先述のとおり測定し求めた。
【0095】
[ポリオレフィン微多孔膜の孔径]
ポリオレフィン微多孔膜のTDに沿って、中心と、中心から両端部に向かって50mm離れた2点と、中心から両端部に向かって100mm離れた2点との合計5点において、流量孔径を測定し、測定値を平均した。流量孔径は下記のとおり測定した。
パームポロメータ(PMI社、Capillary Flow Porometer、型式:CFP-1500A)と、浸液にフッ素系不活性液体(商品名:フロリナート、表面張力16.0dyn/cm)を用いて、ASTM E1294-89に規定するハーフドライ法によって流量孔径を測定した。測定温度は25℃であり、測定圧力は0psi~500psiの範囲で変化させ、以下の条件で測定を実施した。
・バブルポイントパラメータ:BUBLFLOW = 50, F/PT = 100, MINBPPRES = 0, ZEROTIME = 1, PULSEDELAY = 2
・ウェットパラメータ:V2INCR = 15, PREGINC = 0.9, MINEQTIME = 30, PRESSLEW = 30, FLOWSLEW = 30, EQITER = 50, AVEITER = 10, MAXPDIF = 1, MAXFDIF = 30
・ドライパラメータ:V2INCR = 40, PREGINC = 2.4, MINEQTIME = 30, PRESSLEW = 30, FLOWSLEW = 30, EQITER = 40, AVEITER = 10, MAXPDIF = 1, MAXFDIF = 30
【0096】
[ポリオレフィン微多孔膜の水流量]
ポリオレフィン微多孔膜を、TDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、40mm×40mmの正方形に切り出し、エタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。
ポリオレフィン微多孔膜を直径37mmのステンレス製透液セル(透液面積10.75cm2)に設置した。透液セル上のポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、室温24℃の温度雰囲気下、差圧90kPaで純水100mlを通過させ、純水全量が通過に要した時間Tl(min)を計測した。
純水の液量V(100ml)と時間Tl(min)と透液面積S(10.75cm2)とから、以下の式によって、水流量Vs(1psi差圧下における単位時間(min)・単位面積(ft2)あたりの水流量であり、単位:L/min/ft2/psi)を計算し、さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出した。
Vs=(V/1000)/Tl/(S/929.03)/(90/6.895)
【0097】
[ポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)]
ポリオレフィン微多孔膜をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解し、ゲル浸透クロマトグラフィー(システム:Waters社製 Alliance GPC 2000型、カラム:GMH6-HT及びGMH6-HTL)により、カラム温度135℃、流速1.0mL/分の条件にて分子量を測定した。分子量の校正には分子量単分散ポリスチレン(東ソー株式会社)を用いた。
【0098】
[粒状物の個数]
ポリオレフィン微多孔膜をTD25cm×MD4m(面積1m2)に切り出し、両面から付着物(ポリオレフィン微多孔膜の製造中に発生した微粉及び空気中のちり等であって、ポリオレフィン微多孔膜と一体化していない物)を取り除いた。
ポリオレフィン微多孔膜の一方の面からフラッシュライト(商品名:カドニカライト)を照射し、フラッシュライトを照射している面を真上から目視で平面視した。ポリオレフィン微多孔膜を平面視したときの長軸長さが1mm以上の粒状物を見出し、その個数を目視で数えた。面積1m2分の計測を5回繰り返し、5回の計測値を平均した。
【0099】
[捕集性能]
粒径5nmの金コロイド(フナコシ株式会社、粒径幅4.5~6.0nm)を水に分散させ、金コロイド濃度40ppbの分散液を調製した。
ポリオレフィン微多孔膜を、TDの中央部及び両端部近傍の合計3か所からそれぞれ、50mm×50mmの正方形に切り出し、エタノールに浸漬し、室温下で乾燥した。
ポリオレフィン微多孔膜を直径37mmのステンレス製透液セル(透液面積10.75cm2)に設置した。透液セル上のポリオレフィン微多孔膜を少量(0.5ml)のエタノールで湿潤させた後、差圧0.1MPaで金コロイド分散液200mlを通液させた。
ポリオレフィン微多孔膜を通過した後の金コロイド分散液の金属濃度を、ICP-OES法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、装置名:Agilent-ICP-OES-5100、アジレント・テクノロジー株式会社)にて測定し、定量した。定量のための検量線は、金コロイドの標準分散液(濃度範囲0ppb~100ppbにおいて5試料以上用意する。)によって作成した。
金コロイド分散液の初期金属濃度M1(すなわち40ppb)と、ポリオレフィン微多孔膜を通過した後の金コロイド分散液の金属濃度M2とから捕集率(%)={(M1-M2)÷M1×100}を算出し、さらに、TDの中央部及び両端部近傍の平均値を算出し、平均値を下記のとおり分類した。
A:捕集率の平均値が90%以上
B:捕集率の平均値が90%未満、80%以上
C:捕集率の平均値が80%未満
【0100】
[金属溶出]
ポリオレフィン微多孔膜の両面から付着物(ポリオレフィン微多孔膜の製造中に発生した微粉及び空気中のちり等であって、ポリオレフィン微多孔膜と一体化していない物)を取り除いた。ポリオレフィン微多孔膜を正方形の断片(10cm×10cm、40枚、合計面積4000cm2)に切り、これを試料とした。
試料をフッ素樹脂製容器に入れ、塩酸抽出液(水:イソプロピルアルコール=40:60(質量比)の混合溶液に塩酸を10質量%濃度で含む液体)を200g注ぎ、試料を塩酸抽出液に浸漬させた。24時間後、試料を取り出し乾燥させた。
乾燥後の試料を別のフッ素樹脂製容器に入れ、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)を200g注ぎ、試料をPGMEに浸漬させた。
24時間経過時と168時間経過時に、PGME中のCa濃度とZn濃度をICP-OES法(高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法、装置名:Agilent-ICP-OES-5100、アジレント・テクノロジー株式会社)にて0.1ppbの桁まで定量した。
定量したCa濃度及びZn濃度とPGMEの質量と試料面積とから、ポリオレフィン微多孔膜から溶出したCa及びZnの合計溶出量(μg/m2)を算出した。溶出量の増加率(%)={(168時間経過時の合計溶出量-24時間経過時の合計溶出量)÷24時間経過時の合計溶出量×100}を算出し、下記のとおり分類した。
A:溶出量の増加率が5%未満
B:溶出量の増加率が5%以上、10%未満
C:溶出量の増加率が10%以上
【0101】
[製品収率]
幅270mmのポリオレフィン微多孔膜を内径3インチの巻取コアに巻回しながら製造し、長さ200mのポリオレフィン微多孔膜のロールを得た。ロールの表面をフラッシュライト(商品名:カドニカライト)で照射し、表面から30cmの距離から目視で観察し、ロール1周に存在する長径2mm以上の粒状物の個数を数えた。粒状物が4個以下であるロールを合格品とし、ロール10本中の合格品の本数を下記のとおり分類した。
A:合格品が10本
B:合格品が9本又は8本
C:合格品が7本以下
【0102】
<液体フィルター用基材の製造>
以下、「UHMWPE」とは、重量平均分子量300万~600万の超高分子量ポリエチレンを意味し、「HDPE」とは、重量平均分子量20万~80万且つ密度0.92g/cm3~0.98g/cm3の高密度ポリエチレンを意味する。
【0103】
[実施例1]
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE:22質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE : 5質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :73質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンにUHMWPEを11質量部添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでUHMWPEを11質量部添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度27質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は157ppbであった。
【0104】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数300rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が200℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が210℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0105】
-工程(3)-
ベーステープを水浴から引き上げ、温度60℃の空間を10分間かけて搬送し、次いで温度95℃の空間を10分間かけて搬送した。(工程(1)においてデカリンを使用した場合、この搬送処理によってベーステープからデカリンが除去される。)
次いでベーステープを、表面温度90℃のローラー上を0.05MPaの押圧を掛けながら搬送し、ベーステープから流動パラフィンの一部を除去した。
【0106】
-工程(4)-
ベーステープを、温度110℃でMDに倍率7倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率21倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度120℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0107】
-工程(5)-
ポリオレフィン微多孔膜を、3槽に分かれた塩化メチレン浴(上流から順に第1槽、第2槽、第3槽という。)にそれぞれ30秒間ずつ連続して浸漬させ、ポリオレフィン微多孔膜から流動パラフィンを抽出した。第3槽に塩化メチレンを注ぎ入れ、第3槽から第1槽に向かって塩化メチレンを流すことによって、塩化メチレンの純度に勾配(第1槽<第2槽<第3槽)を形成した。
ポリオレフィン微多孔膜を塩化メチレン浴から引き上げ、温度40℃の空間を搬送し、ポリオレフィン微多孔膜から塩化メチレンを除去した。
【0108】
-工程(6)-
ポリオレフィン微多孔膜を、TD長さを一定に保ちながら、温度110℃の恒温槽を1分間かけて搬送することでアニール処理を行った。
次いでポリオレフィン微多孔膜を、温度60℃の空間を20秒間かけて搬送し、次いで室温の空間に搬送し、冷却した。
【0109】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0110】
[実施例2]
実施例1と同様にして、ただし、工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0111】
-工程(4)-
ベーステープを、温度115℃でMDに倍率9倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率26倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度120℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0112】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0113】
[実施例3]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(2)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0114】
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE:18質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE : 5質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :76質量部
・デカリン : 1質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを9質量部添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでUHMWPEを9質量部添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度23質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は160ppbであった。
【0115】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数450rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が180℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が170℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0116】
-工程(4)-
ベーステープを、温度115℃でMDに倍率5倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度105℃でTDに倍率15倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度115℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0117】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0118】
[実施例4]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(2)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0119】
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE:12質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE : 5質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :53質量部
・デカリン :30質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを6質量部添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでUHMWPEを6質量部添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度17質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は166ppbであった。
【0120】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数400rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が190℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が175℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0121】
-工程(4)-
ベーステープを、温度90℃でMDに倍率10倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度105℃でTDに倍率10倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度130℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0122】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0123】
[実施例5]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(2)、工程(4)及び工程(6)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0124】
-工程(1)-
・Mw420万且つCa含有量31ppmのUHMWPE: 6質量部
(UHMWPEの粉体の粒径30μm)
・Mw40万且つCa含有量34ppmのHDPE :24質量部
(HDPEの粉体の粒径20μm)
・流動パラフィン :67質量部
・デカリン : 3質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度30質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は33.4ppmであった。
【0125】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数200rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が180℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が170℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0126】
-工程(4)-
ベーステープを、温度90℃でMDに倍率5倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度110℃でTDに倍率15倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度120℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0127】
-工程(6)-
ポリオレフィン微多孔膜を、TD長さを一定に保ちながら、温度105℃の恒温槽を1分間かけて搬送することでアニール処理を行った。
次いでポリオレフィン微多孔膜を、温度60℃の空間を20秒間かけて搬送し、次いで室温の空間に搬送し、冷却した。
【0128】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0129】
[実施例6]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0130】
-工程(1)-
・Mw420万且つCa含有量31ppmのUHMWPE: 5質量部
(UHMWPEの粉体の粒径30μm)
・Mw40万且つCa含有量34ppmのHDPE :25質量部
(HDPEの粉体の粒径20μm)
・流動パラフィン :70質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンに12質量部のHDPEを添加し、攪拌混合した。次いでUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを13質量部添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度30質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は33.5ppmであった。
【0131】
-工程(4)-
ベーステープを、温度90℃でMDに倍率5倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率13倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度125℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0132】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0133】
[実施例7]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(4)及び工程(6)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0134】
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE: 4質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE :16質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :80質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンにUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度20質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は212ppbであった。
【0135】
-工程(4)-
ベーステープを、温度110℃でMDに倍率6倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率20倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度122℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0136】
-工程(6)-
ポリオレフィン微多孔膜を、TD長さを一定に保ちながら、温度115℃の恒温槽を1分間かけて搬送することでアニール処理を行った。
次いでポリオレフィン微多孔膜を、温度60℃の空間を20秒間かけて搬送し、次いで室温の空間に搬送し、冷却した。
【0137】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜(本開示の液体フィルター用基材)の特性を表1に示す。
【0138】
[比較例1]
実施例1と同様にして、ただし、工程(2)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0139】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数200rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が160℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が165℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0140】
-工程(4)-
ベーステープを、温度100℃でMDに倍率9倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度105℃でTDに倍率25倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度105℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0141】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜の特性を表1に示す。
【0142】
[比較例2]
実施例1と同様にして、ただし、工程(2)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0143】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数400rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が160℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が165℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0144】
-工程(4)-
ベーステープを、温度100℃でMDに倍率9倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率25倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度100℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0145】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜の特性を表1に示す。
【0146】
[比較例3]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0147】
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE:27質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE : 2質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :70質量部
・デカリン : 1質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度29質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は146.2ppbであった。
【0148】
-工程(4)-
ベーステープを、温度105℃でMDに倍率9倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度105℃でTDに倍率25倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度108℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0149】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜の特性を表1に示す。
【0150】
[比較例4]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(2)及び工程(4)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0151】
-工程(1)-
・Mw420万且つCa含有量31ppmのUHMWPE: 8質量部
(UHMWPEの粉体の粒径30μm)
・Mw40万且つCa含有量34ppmのHDPE :20質量部
(HDPEの粉体の粒径20μm)
・流動パラフィン :70質量部
・デカリン : 2質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度28質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は33.1ppmであった。
【0152】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数400rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が165℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が160℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0153】
-工程(4)-
ベーステープを、温度90℃でMDに倍率7倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率16倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度128℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0154】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜の特性を表1に示す。
【0155】
[比較例5]
実施例1と同様にして、ただし、工程(1)、工程(2)、工程(4)及び工程(6)を下記のとおりに変更して、ポリエチレン微多孔膜を製造した。
【0156】
-工程(1)-
・Mw460万且つCa含有量140ppbのUHMWPE: 3質量部
(UHMWPEの粉体の粒径60μm)
・Mw50万且つCa含有量230ppbのHDPE :14質量部
(HDPEの粉体の粒径250μm)
・流動パラフィン :51質量部
・デカリン :32質量部
上記の材料を用意した。流動パラフィンとデカリンを混合し、混合溶剤を調製した。混合溶剤にUHMWPEを全量添加し、攪拌混合した。次いでHDPEを全量添加し、攪拌混合した。こうして、ポリエチレン濃度17質量%のポリエチレン溶液を調製した。UHMWPEとHDPEの混合物中のCa含有量は214.1ppbであった。
【0157】
-工程(2)-
ポリエチレン溶液を二軸混練押出機に投入し、スクリュー回転数450rpmで運転してポリエチレン溶液に圧力及び熱を印加した。二軸混練押出機のバレル内部の温度を、最下流域におけるポリエチレン溶液温度が160℃になるように調整し、ダイにおけるポリエチレン溶液温度が155℃になるように調整した。
ポリエチレン溶液をダイからシート状に押し出し、押出物を水温20℃の水浴に搬送して冷却し、ゲル状シートであるベーステープを作製した。
【0158】
-工程(4)-
ベーステープを、温度100℃でMDに倍率4倍で延伸し(縦延伸)、続いて温度115℃でTDに倍率9倍で延伸し(横延伸)、続いて直ちに温度135℃で熱固定を行い、ポリオレフィン微多孔膜を得た。
【0159】
-工程(6)-
ポリオレフィン微多孔膜を、TD長さを一定に保ちながら、温度100℃の恒温槽を1分間かけて搬送することでアニール処理を行った。
次いでポリオレフィン微多孔膜を、温度60℃の空間を20秒間かけて搬送し、次いで室温の空間に搬送し、冷却した。
【0160】
得られたポリエチレン微多孔膜は、フィブリル状のポリオレフィンが三次元ネットワーク構造を形成し、内部に多数の微細孔を有し、微細孔が連結した構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能な膜であった。このポリエチレン微多孔膜の特性を表1に示す。
【0161】
【0162】
ポリオレフィン微多孔膜の孔径が57nmである比較例5は、評価項目「捕集性能」に劣る。
これに対して、ポリオレフィン微多孔膜の孔径が35nm以下である実施例1~7(本開示の液体フィルター用基材)は、評価項目「捕集性能」に優れる。すなわち、本開示の液体フィルター用基材は、被処理液に含まれる微小粒子(例えば粒径5nmの粒子)を濾別する性能に優れる。
【0163】
長径1mm以上の粒状物の個数が3個以上である比較例1~4は、評価項目「金属溶出」に劣る。
これに対して、長径1mm以上の粒状物の個数が2個以下である実施例1~7(本開示の液体フィルター用基材)は、評価項目「金属溶出」に優れる。すなわち、本開示の液体フィルター用基材は、孔径が比較的小さいながら洗浄によって残留金属の除去が容易である。
【0164】
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。