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特開2024-140878燃料電池モジュール及び燃料電池装置
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  • 特開-燃料電池モジュール及び燃料電池装置 図1
  • 特開-燃料電池モジュール及び燃料電池装置 図2A
  • 特開-燃料電池モジュール及び燃料電池装置 図2B
  • 特開-燃料電池モジュール及び燃料電池装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140878
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】燃料電池モジュール及び燃料電池装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/2475 20160101AFI20241003BHJP
【FI】
H01M8/2475
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052237
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100132045
【弁理士】
【氏名又は名称】坪内 伸
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】河合 達也
(72)【発明者】
【氏名】佐野 欣秀
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA28
5H126FF10
5H126JJ02
(57)【要約】
【課題】変形を抑制できる燃料電池モジュール及び燃料電池装置が提供される。
【解決手段】燃料電池モジュールは、燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池セルスタック(12)と、燃料電池セルスタック(12)を収容する収容容器(30)と、を備え、収容容器(30)の少なくとも1つの面は、法線方向(x軸方向)と垂直な方向から見た場合に、外側に対して窪んでいる凹部又は外側に対して突出している凸部である異形部(31)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックを収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器の少なくとも1つの面は、法線方向と垂直な方向から見た場合に、外側に対して窪んでいる凹部又は外側に対して突出している凸部である異形部を有する、燃料電池モジュール。
【請求項2】
前記異形部は前記凸部である、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項3】
前記収容容器の前記異形部を有する面は、法線方向から見た場合に、中央部分に前記凸部が設けられていない、請求項2に記載の燃料電池モジュール。
【請求項4】
前記異形部は、前記収容容器の前記異形部を有する面を法線方向から見た場合に、中心に対して上下及び左右で対称になるように設けられる、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項5】
前記異形部は、前記収容容器の前記異形部を有する面を法線方向から見た場合に、上下左右方向及び対角線方向の少なくとも1つに十字状に形成されている、請求項4に記載の燃料電池モジュール。
【請求項6】
前記収容容器の側面の全体を覆う側面断熱材と、
前記側面断熱材を前記側面に対して押さえる側面板状部材と、を備え、
前記側面板状部材は、前記側面板状部材を法線方向から見た場合に、前記側面断熱材の外枠を覆う外枠部と、前記外枠部の内側に設けられ前記外枠部同士をつなぐ連結部とを有し、前記連結部が前記異形部と重なるように配置される、請求項1に記載の燃料電池モジュール。
【請求項7】
前記外枠部は、長辺及び短辺を有し、
前記連結部は、上下左右方向及び対角線方向に設けられており、
前記外枠部及び前記連結部で囲まれて形成される複数の開口部について、前記長辺に接する開口部の面積は、前記短辺に接する開口部の面積より大きい、請求項6に記載の燃料電池モジュール。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールを動作させる補助機能を備える補機と、を備える、燃料電池装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池モジュール及び燃料電池装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素含有ガスと酸素含有ガスとを導入して発電する燃料電池は、運転中に高温の状態を維持するため、外部への放熱を抑制すべく、断熱材で覆われるのが一般的である。例えば特許文献1は、セルスタックを収容する収容容器と、側面を覆う側面断熱材と、側面断熱材を押さえる側面板状部材と、を備え、断熱効果を高めることができる燃料電池を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6154252号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、収容容器及び側面板状部材は強度が不足している場合に、セルスタックからの熱の影響によって変形することがあり得る。収容容器又は側面板状部材が変形すると、側面断熱材との間に隙間が生じ、放熱による温度低下が起こって、発電効率が低下するおそれがある。
【0005】
本開示の目的は、本発明の構成を用いない場合と比べ変形を抑制できる燃料電池モジュール及び燃料電池装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の一実施形態に係る燃料電池モジュールは、
燃料ガスと酸化剤ガスの電気化学反応により発電する燃料電池セルスタックと、
前記燃料電池セルスタックを収容する収容容器と、を備え、
前記収容容器の少なくとも1つの面は、法線方向と垂直な方向から見た場合に、外側に対して窪んでいる凹部又は外側に対して突出している凸部である異形部を有する。
【0007】
(2)本開示の一実施形態として、(1)において、
前記異形部は前記凸部である。
【0008】
(3)本開示の一実施形態として、(2)において、
前記収容容器の前記異形部を有する面は、法線方向から見た場合に、中央部分に前記凸部が設けられていない。
【0009】
(4)本開示の一実施形態として、(1)から(3)のいずれかにおいて、
前記異形部は、前記収容容器の前記異形部を有する面を法線方向から見た場合に、中心に対して上下及び左右で対称になるように設けられる。
【0010】
(5)本開示の一実施形態として、(4)において、
前記異形部は、前記収容容器の前記異形部を有する面を法線方向から見た場合に、上下左右方向及び対角線方向の少なくとも1つに十字状に形成されている。
【0011】
(6)本開示の一実施形態として、(1)から(5)のいずれかにおいて、
前記収容容器の側面の全体を覆う側面断熱材と、
前記側面断熱材を前記側面に対して押さえる側面板状部材と、を備え、
前記側面板状部材は、前記側面板状部材を法線方向から見た場合に、前記側面断熱材の外枠を覆う外枠部と、前記外枠部の内側に設けられ前記外枠部同士をつなぐ連結部とを有し、前記連結部が前記異形部と重なるように配置される。
【0012】
(7)本開示の一実施形態として、(6)において、
前記外枠部は、長辺及び短辺を有し、
前記連結部は、上下左右方向及び対角線方向に設けられており、
前記外枠部及び前記連結部で囲まれて形成される複数の開口部について、前記長辺に接する開口部の面積は、前記短辺に接する開口部の面積より大きい。
【0013】
(8)本開示の一実施形態に係る燃料電池装置は、
(1)から(7)のいずれか一項に記載の燃料電池モジュールと、前記燃料電池モジュールを動作させる補助機能を備える補機と、を備える。
【発明の効果】
【0014】
本開示の実施形態によれば、変形を抑制できる燃料電池モジュール及び燃料電池装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る燃料電池モジュールの概略構成図である。
図2A図2Aは、異形部の別の構成例を示す図である。
図2B図2Bは、異形部の別の構成例を示す図である。
図3図3は、側面板状部材の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本開示の実施形態に係る燃料電池モジュール及び燃料電池装置が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。以下の実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。また、図は模式的なものである。
【0017】
図1は、本実施形態に係る燃料電池モジュール11の概略構成図である。燃料電池モジュール11は、少なくとも燃料電池セルスタック12と、燃料電池セルスタック12を収容する収容容器30(筐体)と、を備える。燃料電池セルスタック12は、燃料ガス(例えば水素含有ガス)と酸化剤ガス(例えば酸素含有ガス)の電気化学反応により発電する。また、例えば燃料電池モジュール11は、さらに改質器15及び気化器16を備えてよい。気化器16は水を気化させて、改質器15が原燃料ガスと水蒸気を改質して燃料ガスを生成する。図1の例では、収容容器30は燃料電池セルスタック12、改質器15及び気化器16を収容する。収容容器30は、例えばSUSなどの金属により形成されてよい。また、燃料電池セルスタック12は、改質器15から供給された燃料ガスを一時的に貯留するマニホールド37上に立設されていてよい。
【0018】
ここで、図1及び後述する図2A図3において共通の直交座標が設定されている。直交座標は、収容容器30の直方体形状の各辺に対応するように設定されている。z軸方向が高さ方向に対応する。本実施形態において、z軸負方向を下にして燃料電池モジュール11が設置される。そのため、z軸方向を上下方向と称することがある。x軸方向とy軸方向はそれぞれz軸に垂直な方向であって、x軸方向が幅方向に対応し、y軸方向が奥行方向に対応する。ここで、y軸方向が後述する左右方向に対応する。
【0019】
また、燃料電池モジュール11は、収容容器30の側面の外側において、側面の全体を覆う側面断熱材32を備える。ここで、収容容器30を構成する各面に対して、燃料電池セルスタック12を収容する側が内側であり、その反対側が外側である。本実施形態において、側面断熱材32は、グラスウール33及びブランケット34を含んで構成される。グラスウール33は、断熱性の高い高性能な断熱材である。ブランケット34は、グラスウール33より柔らかい断熱材であって、収容容器30の側面の形状に合わせることができる。ブランケット34は、生体溶解性繊維(AESウール)を用いることができる。ここで、本実施形態のように、収容容器30の面の内側にもグラスウール33が設けられてよい。
【0020】
また、燃料電池モジュール11は、側面断熱材32を収容容器30の側面に対して押さえる側面板状部材40を備える。本実施形態において、燃料電池モジュール11は両側(x軸正方向側及びx軸負方向側)に側面板状部材40を備えるが、どちらも同じ形状であるため、以下において1つの側面板状部材40が説明される。側面板状部材40は、例えばSUSなどの金属により形成されてよい。
【0021】
再び図1を参照すると、本実施形態に係る燃料電池モジュール11が備える収容容器30の少なくとも1つの面は、法線方向と垂直な方向から見た場合に、外側に対して窪んでいる凹部又は外側に対して突出している凸部である異形部31を有する。すなわち、収容容器30の少なくとも1つの面は、平板だけの構造でなく、凹部又は凸部である異形部31を有する。異形部31は、別の板を貼り合わせることで形成されてよいし、1枚の平板を加工して形成されてよい。ここで、図1の例において、収容容器30の側面の法線方向はx軸方向である。収容容器30の面の異形部31が突出している方の面は、ブランケット34と接してよい。つまり、表面に突出する部分があっても、柔らかい断熱材と接することによって、断熱材との間に隙間が生じないように構成してよい。
【0022】
ここで、直方体形状である収容容器30は、複数又は全ての面が異形部31を有していてよいし、本実施形態のように1つの側面が異形部31を有していてよい。図1の例において、収容容器30のx軸負方向側の側面が異形部31を有する。直方体形状である収容容器30において、最も面積の大きい面に異形部31が配置されてよい。収容容器30の発電時の熱による変形(膨らみ)は、熱伸び、内圧及び圧縮されて設けられている断熱材の膨張が原因であるため、異形部31を最も面積の大きい面に配置することで、効果的に変位を抑制することができる。収容容器30の面は、異形部31を有することによって剛性が増大し、発電時の熱によって変形する場合の変位を抑制することができる。
【0023】
上記のように、異形部31は凹部であってよいが、本実施形態において異形部31が凸部であるように構成されている。つまり、収容容器30の異形部31を有する面(図1の例でx軸負方向側の側面)は、異形部31が外側(図1の例でx軸負方向)に対して突出している。発電時の熱により膨らんだ場合に、収容容器30の面における曲げモーメントは外側の方が大きくなる。そのため、外側に対して突出するように異形部31が設けられることによって、変位を抑制できる効果が高まる。
【0024】
また、図1に示すように、異形部31が凸部である場合において、収容容器30の異形部31を有する面は、法線方向から見て、中央部分Cに凸部を設けなくてよい。発電時の熱により膨らんだ場合に、膨らみの頂点(最も変位が大きい部分)となる中央部分Cに凸部を設けないことで、収容容器30の寸法の増大を抑制することができる。
【0025】
異形部31は、収容容器30の異形部31を有する面を法線方向から見た場合に、中心に対して上下及び左右で対称になるように設けてよい。このような対称性によって、発電時の熱により膨らんだ場合に、収容容器30の面における曲げモーメントによる変位を均一に抑制することができる。
【0026】
異形部31は図1に示される形状に限定されないが、収容容器30の異形部31を有する面を法線方向から見た場合に、上下左右方向及び対角線方向の少なくとも1つに十字状に形成されていてよい。異形部31は、例えば図2Aに示すように、対角線方向に十字状に形成されていてよい。また、異形部31は、例えば図2Bに示すように、上下左右方向に十字状に形成されていてよい。十字状の異形部31が2方向を補強することによって、収容容器30の面の剛性が増大し、変位を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0027】
図1及び図3に示すように、側面板状部材40は、側面板状部材40を法線方向から見た場合に、側面断熱材32の外枠を覆う外枠部41と、外枠部41の内側に設けられ外枠部41同士をつなぐ連結部42とを有する。連結部42の形状は、異形部31の形状に合わせて形成される。連結部42の形状は、異形部31の形状と完全に同一であってよいが、異形部31を覆うことができれば同一でなくてよい。すなわち、連結部42は異形部31と類似する形状であればよい。そして、側面板状部材40は、側面板状部材40を法線方向(図1の例でx軸方向)から見た場合に、連結部42が異形部31と重なるように配置される。異形部31について説明したように、十字状の形状を含むことによって剛性を増大させることができる。したがって、異形部31に類似する形状を有する側面板状部材40は、剛性が増大した部材であって、発電時の熱によって膨らむ場合に変位を抑制することができる。
【0028】
本実施形態において、側面板状部材40は、外枠部41が長辺及び短辺を有し、連結部42が上下左右方向及び対角線方向に設けられている。この場合に、外枠部41及び連結部42で囲まれて複数の開口部が形成される。形成される複数の開口部について、長辺に接する開口部の面積は、短辺に接する開口部の面積より大きくてよい。発電時の熱によって膨らむ場合に、曲げモーメントによる変位は短辺側より長辺側が大きい。そのため、長辺に接する開口部の面積の方をより大きくすることで、応力を吸収しやすくすることができる。
【0029】
また、図3に示すように、側面板状部材40の幅が場所によって異なっていてよい。図3の例において、上下方向の連結部42の幅はWaである。左右方向の連結部42の幅はWbである。対角線方向の連結部42の幅はWcである。また、外枠部41の幅はWdである。この場合に、Wd<Wc<Wb<Waの関係が成り立つように、側面板状部材40が構成されてよい。連結部42の長さが短いほど、発電時の熱による変形(膨らみ)について曲率が大きく(曲率半径が小さく)なるため、応力が大きくなる。そのため、連結部42の長さが短いほど幅を大きくすることによって、変位を抑制することができる。ここで、外枠部41は連結部42に比べて発電時の熱による影響を受けにくい。そのため、側面板状部材40の重量を小さくするため、連結部42より幅が小さくてよい。側面板状部材40について説明したが、異形部31の幅についても同様であり、異形部31を構成する直線部分の長さが短いほど幅を大きくすることによって、さらに変位を抑制することができる。
【0030】
また、上記の燃料電池モジュール11は、燃料電池モジュール11を動作させる補助機能を備える補機と、を備えて、燃料電池装置を構成してよい。補機は、燃料電池モジュール11の動作の開始及び停止を指示するプロセッサを含んで構成されてよい。
【0031】
以上に説明したように、本実施形態に係る燃料電池モジュール11及び燃料電池装置は、上記の収容容器30及び側面板状部材40を備えることによって変形を抑制できる。そのため、側面断熱材32の間に隙間が生じることを抑制し、発電効率の低下も抑制することができる。
【0032】
本開示に係る実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は改変を行うことが可能であることに注意されたい。従って、これらの変形又は改変は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
11 燃料電池モジュール
12 燃料電池セルスタック
15 改質器
16 気化器
30 収容容器
31 異形部
32 側面断熱材
33 グラスウール
34 ブランケット
37 マニホールド
40 側面板状部材
41 外枠部
42 連結部
111 燃料電池モジュール
図1
図2A
図2B
図3