(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014088
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】金属樹脂複合体の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 43/18 20060101AFI20240125BHJP
【FI】
B29C43/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022116670
(22)【出願日】2022-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100218132
【弁理士】
【氏名又は名称】近田 暢朗
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 憲一
(72)【発明者】
【氏名】加嶋 寛子
(72)【発明者】
【氏名】関口 修
【テーマコード(参考)】
4F204
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AD03
4F204AD16
4F204AD21
4F204FA01
4F204FB01
4F204FB12
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ15
(57)【要約】 (修正有)
【課題】押出材に樹脂材をプレス成形で一体化することにより金属樹脂複合体を製造するにあたって、金型と押出材との隙間への樹脂材の流れ込みを抑制する。
【解決手段】金属製の押出材に樹脂材300をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法において、押出材の少なくとも一部を収容する収容部15を形成する第1金型10、および同金型に対して開閉方向に移動可能な第2金型20を準備し、押出材を収容した後に樹脂材を第1金型上に配置し、第2金型を型閉め方向に移動させ、押出材の表面と金型2とでキャビティ40を形成し、樹脂材を加圧して充填する。押出材が、表面から突出し、押出材が収容部に収容された状態において収容部と近接する突起231,232を有している。充填において、金型から押出材に付与される成形圧で突起を収容部またはその周縁に密着させ、キャビティを収容部の内面と押出材の表面との隙間51から遮断する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法であって、
前記押出材の少なくとも一部を収容する収容部を形成する第1金型、および前記第1金型に対して開閉方向に移動可能な第2金型を含む金型を準備することと、
前記押出材を前記収容部に収容し、前記樹脂材を前記第1金型上に配置することと、
前記第2金型を型閉め方向に移動させ、前記押出材の表面と前記金型とで画定されるキャビティを形成し、前記樹脂材を加圧して前記キャビティ内に充填することと、
を備え、
前記押出材が、前記表面から突出し、前記押出材が前記収容部に収容された収容状態において前記収容部と近接する突起を有し、
前記充填において、前記金型から前記押出材に付与される成形圧で前記突起を前記収容部またはその周縁に密着させ、前記キャビティを前記収容部の内面と前記押出材の前記表面との隙間から遮断する
金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項2】
前記充填において、前記成形圧が前記樹脂材を介して前記押出材に付与される、
請求項1に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項3】
前記押出材は、前記収容状態において前記収容部の前記内面に沿って延びる一対のフランジを有し、
前記突起が、前記一対のフランジそれぞれに対を成して設けられ、
前記一対のフランジが、その内面同士の間に内空間を形成し、前記内空間が、前記キャビティの一部を構成し、
前記充填において、前記成形圧が前記内空間に流入した前記樹脂材を介して前記一対のフランジに付与され、前記一対のフランジが前記収容部の前記内面に向けて撓み、前記突起が前記収容部またはその周縁部に密着する
請求項2に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項4】
前記突起が、前記フランジの外面に設けられ、
前記樹脂材の充填において、前記突起が前記収容部の前記内面に密着する、
請求項3に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項5】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方に設けられた内側傾斜面を有し、
前記内側傾斜面は、前記収容状態において前記一対のフランジの基端側に向かうに連れて前記収容部から離れるように傾斜する
請求項4に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項6】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方に設けられ、当該フランジの内面よりも前記内空間側に突出する凸部を有し、
前記内側傾斜面が、前記凸部に形成されている
請求項5に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項7】
前記押出材が、前記一対の突起の少なくとも一方の下面側に設けられ、前記収容状態において前記押出材の前記収容部への収容方向に向かうに連れて前記収容部から離れるように傾斜する一対の外側傾斜面を有し、
前記押出材の前記収容において、前記外側傾斜面の前記収容部との干渉により前記フランジが前記内空間側に撓み、前記フランジの弾発力で前記突起が前記収容部の前記内面に密着する
請求項4から6のいずれか1項に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項8】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方から前記フランジの外側へ突出し、前記収容状態において前記収容部から露出する突出片を有し、
前記突起が、前記突出片の先端部に設けられ、
前記樹脂材の充填において、前記突起が前記収容部の周縁部に密着する、
請求項3に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項9】
前記突出片が、前記収容状態において前記金型の開閉方向に対して垂直な受圧面を有し、
前記突起が、前記突出片の先端部に設けられて前記周縁部と前記開閉方向に対向する、
請求項8に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項10】
前記金型が、前記第1金型に対して前記金型の開閉方向に移動可能であって、前記第1金型とともに前記収容部を形成する第3金型を更に含み、
前記突起が、前記収容状態において前記開閉方向に突出し、前記第3金型が前記突起に接触して前記第3金型から前記成形圧が前記押出材に付与される
請求項1に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項11】
前記突起が、前記押出材の前記開閉方向の両側に対を成して設けられ、一方の前記突起が、前記隙間のうち前記押出材と前記第1金型とにより形成される部分を前記キャビティから遮断し、他方の前記突起が、前記隙間のうち前記押出材と前記第3金型とにより形成される部分を前記キャビティから遮断する、
請求項10に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項12】
前記一方の突起が、前記押出材の前記第1金型に設置される面に対して前記第1金型に近づく方向に突出する、
請求項11に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項13】
前記他方の突起が、前記押出材のステップ部に設けられて鉤形状を成し、前記第3金型が前記他方の突起に接触して前記第3金型から前記他方の突起に前記成形圧が付与される、
請求項11または12に記載の金属樹脂複合体の製造方法。
【請求項14】
金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造装置であって、
前記押出材を部分的に収容するための収容部を形成する第1金型、および前記第1金型に対して移動可能な第2金型を含む金型と、
前記第2金型を移動させる移動機構と、
を備え、
前記押出材は、その表面から突出し、前記押出材が前記収容部に収容された収容状態で前記収容部と近接する突起を有し、
前記樹脂材を前記第1金型上に配置した状態において前記移動機構で前記第2金型が移動すると、前記押出材の表面と前記金型とで画定されるキャビティが形成され、前記樹脂材が加圧されて前記キャビティ内に充填されるとともに、前記金型から前記押出材に付与される成形圧で前記突起が前記収容部またはその周縁に密着し、前記キャビティが前記収容部の内面と前記押出材の前記表面との隙間から遮断される
金属樹脂複合体の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属樹脂複合体を製造するための装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両フレームのような構造部品に適用される金属樹脂複合体について、様々な構造や製造方法が提案されてきた。例えば、特許文献1に開示される複合体では、熱硬化性を有する炭素繊維強化樹脂(CFRP)が、アルミ押出材の表面に接着剤で接着される。特許文献2に開示される複合体では、アルミ板にCFRPを熱プレスすることにより、アルミ板とCFRPとが一体化される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-119422号公報
【特許文献2】特開2020-104411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミ押出材を含む複合体の製造に、特許文献2に例示された熱プレスを適用する場合には、アルミ押出材の公差を考慮して、金型と、基準寸法を有すると仮想されたアルミ押出材との間に相応の隙間を形成するように、金型を準備する必要があると考えられる。これにより、複合体を1つ製造するたび、公差内で成形されているアルミ押出材を金型に適正に設置できる。他方、アルミ押出材は、特許文献1で教示されるように熱間で押し出される。そのため、押出中にねじれや曲がりが生じやすく、アルミ押出材の寸法精度を高くすることは難しい。
【0005】
アルミ押出材の寸法精度の低さに照らして、金型とアルミ押出材との隙間は、金型の合わせ面同士の隙間と比べ、相当大きくする必要があると考えられる。すると、熱プレス中に、樹脂材が金型とアルミ押出材との隙間へと意図せず流れ込み、それにより複合体の生産効率が低下する。例えば、樹脂材が隙間内で固化することで、離型抵抗が高くなる。離型後には、隙間内で固化した不要な樹脂材を剥離するという煩雑な作業が発生する。アルミ押出材上での樹脂材の不足を回避するためには、剥離される量を見越して余計に樹脂材を充填しておく必要がある。
【0006】
本発明は、押出材に樹脂材をプレス成形することにより金属樹脂複合体を製造するにあたり、金型と押出材との隙間への樹脂材の流れ込みを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造方法であって、前記押出材の少なくとも一部を収容する収容部を形成する第1金型、および前記第1金型に対して開閉方向に移動可能な第2金型を含む金型を準備することと、前記押出材を前記収容部に収容し、前記樹脂材を前記第1金型上に配置することと、前記第2金型を型閉め方向に移動させ、前記押出材の表面と前記金型とで画定されるキャビティを形成し、前記樹脂材を加圧して前記キャビティ内に充填することと、を備え、前記押出材が、前記表面から突出し、前記押出材が前記収容部に収容された収容状態において前記収容部と近接する突起を有し、前記充填において、前記金型から前記押出材に付与される成形圧で前記突起を前記収容部またはその周縁に密着させ、前記キャビティを前記収容部の内面と前記押出材の前記表面との隙間から遮断する、金属樹脂複合体の製造方法を提供する。
【0008】
上記構成によれば、キャビティ形成時に押出材に付与される成形圧を利用して、押出材に設けられた突起を金型に密着させ、それによりキャビティが押出材の表面と収容部の内面との間の隙間から遮断される。このため、樹脂材がキャビティから押出材と金型との隙間に意図せず流れ込むことを抑制できる。
【0009】
前記充填において、前記成形圧が前記樹脂材を介して前記押出材に付与されてもよい。
【0010】
上記構成によれば、樹脂材から押出材に付与される圧力を利用して、キャビティを隙間から遮断することができる。
【0011】
前記押出材は、前記収容状態において前記収容部の前記内面に沿って延びる一対のフランジを有し、前記突起が、前記一対のフランジそれぞれに対を成して設けられ、前記一対のフランジが、その内面同士の間に内空間を形成し、前記内空間が、前記キャビティの一部を構成し、前記充填において、前記成形圧が前記内空間に流入した前記樹脂材を介して前記一対のフランジに付与され、前記一対のフランジが前記収容部の前記内面に向けて撓み、前記突起が前記収容部またはその周縁部に密着してもよい。
【0012】
上記構成によれば、一対のフランジに樹脂材を流入させることで、樹脂材の圧力を利用して押出材を変形させる構造が実現される。内空間に充填された樹脂材が押出材と一体化されることで、樹脂材の押出材との接触面積が拡大され、樹脂材が押出材により強固に接合される。
【0013】
前記突起が、前記フランジの外面に設けられ、前記樹脂材の充填において、前記突起が前記収容部の前記内面に密着してもよい。
【0014】
上記構成によれば、樹脂材はフランジの板厚方向に圧力を作用させる。その圧力の方向に沿って突起が収容部に密着するので、隙間を解消しやすい。
【0015】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方に設けられた内側傾斜面を有し、前記内側傾斜面は、前記収容状態において前記一対のフランジの基端側に向かうに連れて前記収容部から離れるように傾斜してもよい。
【0016】
上記構成によれば、樹脂材が内空間に流入する際、型閉め方向に内側傾斜面に作用すると、内側傾斜面は楔の作用で収容部に近づく方向に押圧される。これにより、フランジが更に収容部に向けて撓みやすくなり、隙間を詰めやすくなる。
【0017】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方に設けられ、当該フランジの内面よりも前記内空間側に突出する凸部を有し、前記内側傾斜面が、前記凸部に形成されていてもよい。
【0018】
上記構成によれば、樹脂材が凸部でカシメられ、樹脂材の押出材への接合強度が向上する。
【0019】
前記押出材が、前記一対の突起の少なくとも一方の下面側に設けられ、前記収容状態において前記押出材の前記収容部への収容方向に向かうに連れて前記収容部から離れるように傾斜する一対の外側傾斜面を有し、前記押出材の前記収容において、前記外側傾斜面の前記収容部との干渉により前記フランジが前記内空間側に撓み、前記フランジの弾発力で前記突起が前記収容部の前記内面に密着してもよい。
【0020】
上記構成によれば、フランジを外側傾斜面の楔の作用で内側に撓ませながら押出材を収容させることが可能になる。突起をフランジの弾性変形による反力も利用して収容部に密着させることができ、隙間をより確実に詰めることができる。
【0021】
前記押出材が、前記一対のフランジの先端部の少なくとも一方から前記フランジの外側へ突出し、前記収容状態において前記収容部から露出する突出片を有し、前記突起が、前記突出片の先端部に設けられ、前記樹脂材の充填において、前記突起が前記収容部の周縁部に密着してもよい。
【0022】
上記構成によれば、収容部の外部で隙間を詰めるので、樹脂材の不所望な流入量を削減できる。
【0023】
前記突出片が、前記収容状態において前記金型の開閉方向に対して垂直な受圧面を有し、前記突起が、前記突出片の先端部に設けられて前記周縁部と前記開閉方向に対向してもよい。
【0024】
上記構成によれば、突出片が、フランジの撓みのみならず、自身に作用する成形圧によっても収容部の周縁部に押されることになる。そのため、突起の密着性が向上し、隙間をより確実に詰めることができる。
【0025】
前記金型が、前記第1金型に対して前記金型の開閉方向に移動可能であって、前記第1金型とともに前記収容部を形成する第3金型を更に含み、前記突起が、前記収容状態において前記開閉方向に突出し、前記第3金型が前記突起に接触して前記第3金型から前記成形圧が前記押出材に付与されてもよい。
【0026】
上記構成によれば、開閉方向に移動可能な第3金型も収容部を形成するため、押出材の断面形状が複雑でも、押出材の金型への設置および押出材の離型を簡単に行うことができる。この場合に、第3金型の成形圧を突起に直接的に作用させる。これにより、突起に局所的に面圧を生じさせ、突起を収容部に密着させる。このため、隙間を詰めやすくなる。
【0027】
前記突起が、前記押出材の前記開閉方向の両側に対を成して設けられ、一方の前記突起が、前記隙間のうち前記押出材と前記第1金型とにより形成される部分を前記キャビティから遮断し、他方の前記突起が、前記隙間のうち前記押出材と前記第3金型とにより形成される部分を前記キャビティから遮断してもよい。
【0028】
上記構成によれば、第3金型からの成形圧を利用して第1金型の隙間も第2金型の隙間どちらも詰めることができる。
【0029】
前記一方の突起が、前記押出材の前記第1金型に設置される面に対して前記第1金型に近づく方向に突出してもよい。
【0030】
上記構成によれば、第3金型からの成形圧を利用して一方の突起を第1金型に密着させやすくなり、隙間をより確実に詰めることができる。
【0031】
前記他方の突起が、前記押出材に鉤状に設けられたステップ部に設けられ、前記第3金型が前記他方の突起に接触して前記第3金型から前記他方の突起に前記成形圧が付与されてもよい。
【0032】
上記構成によれば、第3金型からの成形圧を利用して鉤状のステップ部を撓ませることで、他方の突起を第3金型に密着させることができる。したがって、隙間をより確実に詰めることができる。
【0033】
本発明の第2の態様は、金属製の押出材に樹脂材をプレス成形によって一体化する金属樹脂複合体の製造装置であって、前記押出材を部分的に収容するための収容部を形成する第1金型、および前記第1金型に対して移動可能な第2金型を含む金型と、前記第2金型を移動させる移動機構と、を備え、前記押出材は、その表面から突出し、前記押出材が前記収容部に収容された収容状態で前記収容部と近接する突起を有し、前記樹脂材を前記第1金型上に配置した状態において前記移動機構で前記第2金型が移動すると、前記押出材の表面と前記金型とで画定されるキャビティが形成され、前記樹脂材が加圧されて前記キャビティ内に充填されるとともに、前記金型から前記押出材に付与される成形圧で前記突起が前記収容部またはその周縁に密着し、前記キャビティが前記収容部の内面と前記押出材の前記表面との隙間から遮断される、金属樹脂複合体の製造装置を提供する。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、押出材に樹脂材をプレス成形することにより金属樹脂複合体を製造するにあたり、金型と押出材との隙間への樹脂材の流れ込みを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】本発明の第1実施形態に係る製造装置および方法により製造された金属樹脂複合体の平面図。
【
図4】第1実施形態に係る金属樹脂複合体の製造において準備される押出材の断面図。
【
図11】第3実施形態に係る製造装置および方法により製造された金属樹脂複合体の断面図。
【
図15A】第4実施形態に係る製造装置および方法により製造された金属樹脂複合体の平面図。
【
図16】第4実施形態に係る金属樹脂複合体の製造において準備される押出材の断面図。
【
図17】第4実施形態に係る製造装置および製造方法の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面を参照して本発明の実施形態について説明する。同一のまたは対応する要素には全図を通じて同一の符号を付し、説明の重複を省略する。
【0037】
金属樹脂複合体100の製造装置1および製造方法においては、金型2を用いたプレス成形により、樹脂材300が金属製の押出材200に一体化される(
図1Aおよび
図2Aを参照)。図面中のX方向は、押出材200の押出方向あるいは長手方向と対応する。単に「断面」という場合、X方向に直交する断面を指す。Y方向は、断面内の一方向であり、押出材200の幅方向と対応する。Z方向は、断面内においてY方向に直交し、押出材200の高さ方向と対応し、金型2の開閉方向とも対応する。Z方向は、幾つかの図面において紙面の上下に向けられていることから、以下では、説明の便宜上、Z方向を鉛直、XY方向を水平とする。上方(+Z方向)は型開き方向M1と対応し、下方(-Z方向)は型閉め方向M2と対応する。ただし、これは一例であり、金属樹脂複合体100およびその構成要素、並びに製造装置1およびその構成要素の姿勢は、適宜変更可能である。
【0038】
(第1実施形態)
図1Aおよび
図1Bを参照し、第1実施形態に係る金属樹脂複合体100は、金属製の押出材200と、押出材200に設けられた樹脂材300とを備える。金属樹脂複合体100は、例えば自動車の車体フレームのような、構造部品に好適に適用される。
【0039】
押出材200の金属素材は、特に限定されない。アルミニウム合金やマグネシウム合金のような軽合金は、金属素材の好適例であり、構造部品の軽量化と高剛性化との両立に資する。以下では、単なる一例として、押出材200がアルミニウム合金製である。
【0040】
詳細図示を省略するが、押出材200は、ビレット状の金属素材を押出成形機の本体内で加熱および圧縮し、本体に取り付けられたダイスから押し出すことによって得られる。ダイスからの押出し後には、冷却、引取、および切断等の所要の処理が実行される。押出材200の断面は、ダイスの形状により規定されるため、長手方向Xにおいて一様である。ただし、熱間での成形に起因してねじれや曲がりが生じる。押出材200の各要素は、長手方向Xに延び、また、継ぎ目なく互いに一体化されている。
【0041】
樹脂材300は、製造装置1(
図2Aおよび
図2Bを参照)においてコンパウンドをプレス成形することによって得られる。コンパウンドは、シート状に形成されたSMC(Sheet Molding Compound)でもよく、塊状に形成されたBMC(Bulk Molding Compound)でもよい。SMCあるいはBMCは、マトリクス樹脂に繊維を含浸させた繊維強化樹脂(FRP:Fiber Reinforced Plastic)により実現される。マトリクス樹脂は、不飽和ポリエステルのような熱硬化性樹脂を主成分として含み、添加物が主成分に混入される。添加物は、例えば離型剤を含む。繊維は、例えばガラス繊維あるいは炭素繊維であり、短く切断され、コンパウンド内でランダム方向に向けられる。ただし、樹脂材300は、熱硬化性樹脂に限定されず、熱可塑性樹脂であってもよい。以下では、単なる一例として、樹脂材300がSMC製である。
【0042】
本実施形態では、押出材200が、長方形状の断面を有する。矩形の長辺が高さ方向Zに延び、短辺が幅方向Yに延びる。樹脂材300は、押出材200の上部に設けられ、押出材200よりも大きい幅を有した板状に成形される。金属樹脂複合体100の断面は、T字状に形成され、幅方向の中心線を基準として線対称である。押出材200および樹脂材300の各断面も、同様に線対称である。
【0043】
なお、樹脂材300の平面視形状は、特に限定されない。ここでは、単なる一例として、平面視形状が、長辺が長手方向Xに延びて短辺が幅方向Yに延びる長方形状であり、樹脂材300の短辺が、押出材200の長手方向Xの両端と整合し、金属樹脂複合体100の断面が長手方向Xにおいて一様である。
【0044】
図2Aおよび
図2Bを参照して、製造装置1は、主として、金型2、駆動部3、および加熱部4を備える。金型2は、第1金型10および第2金型20を含む。第1金型10は、固定型、下型、あるいはダイとして構成される。第2金型20は、可動型、上型、あるいはパンチとして構成される。第2金型20は、第1金型10の上方(すなわち、型開き方向M1)に配置され、第1金型10に対して上下方向(すなわち、開閉方向)に移動可能である。
【0045】
第1金型10は、基部11および肩部12を有する。基部11の上面が、水平な下成形面41を形成する。肩部12は、基部11の周縁部から上方に突出し、肩部12の内面が、下成形面41から上方に延びる。肩部12の内面は、開閉方向に垂直な断面(詳細図示略)において、金属樹脂複合体100の樹脂材300の平面視形状と同等である。本例では、樹脂材300の平面視形状が長方形状であるから(
図1Aを参照)、肩部12は、
図2Aおよび
図2Bから看取されるとおり、平面視で矩形窓枠状である。肩部12の内面の下部は、鉛直な側成形面42を形成する。肩部12の内面の上部は、下合わせ面14を形成する。
【0046】
第1金型10は、押出材200を収容する収容部15を有する。収容部15は、下成形面41に凹設される。収容部15は、U字状の内面16を有し、下成形面41に開放された溝として構成されている。収容部15の内面16には、下成形面41と連続して下方に延びる一対の内側面16a,16bと、内側面16a,16b同士を水平に接続する内底面16cとが含まれる。
【0047】
第2金型20は、本体部21を有する。本体部21は、一例として直方体状である。本体部21の下面が、下成形面41と開閉方向に対向する上成形面43を形成する。本体部21の側面が、下成形面41の周縁から上方に延びる上合わせ面24を形成する。上合わせ面24は、開閉方向に垂直な断面(詳細図示略)において、肩部12の内面の断面と相似であり、これよりも僅かに小さい。便宜上、図面ではこの間隔が誇張されている。
【0048】
駆動部3は、第2金型20を退避位置(実線を参照)と下死点(二点鎖線を参照)との間で開閉方向に移動させる。加熱部4は、金型2を加熱する。
【0049】
以下、上記の製造装置1を用いて金属樹脂複合体100(
図1Aを参照)を製造するための方法について説明する。併せて、金型2、押出材200、樹脂材300、および金属樹脂複合体100の構造について更に説明する。
【0050】
図3を参照して、金型2は、上記および下記のように構成されて製造装置1内に準備される。また、金属樹脂複合体100を1つ製造するたび、押出材200および樹脂材300のコンパウンドが準備される。第2金型20は、退避位置に位置付けられる。第2金型20が退避位置に位置する状態では、押出材200やコンパウンドの設置や、金属樹脂複合体100の取出しを容易に行えるようにするため、上成形面43が、第1金型10の上端面に対して十分に大きく上方へ離れている。
【0051】
図4を参照して、準備される押出材200は、底壁201、一対の側壁202,203、および上壁204を有する。一対の側壁202,203が、矩形断面の長辺を成して高さ方向Zに延び、底壁201および上壁204が、矩形断面の短辺を成して幅方向Yに延びる。一対の側壁202,203は、底壁201の一対の側縁それぞれから上方へ立設される。上壁204は、側壁202,203の上部同士を接続する。
【0052】
押出材200は、壁201~204の内面により画定された中空210と、中空210を仕切る1以上の仕切り壁205とを有する。中空210は、長手方向Xの両端で開放される。本実施形態では、仕切り壁205が、単一であり、高さ方向Zにおいて底壁201と上壁204との間で側壁202,203の内面同士を接続し、中空210が、仕切り壁205により高さ方向Zにおいて第1室211と第2室212とに分割される。ただし、複数の仕切り壁が、高さ方向Zにおいて間隔をおいて配置されてもよいし、仕切り壁が省略されてもよい。
【0053】
押出材200は、一対のフランジ222,223を有する。一対のフランジ222,223は、一対の側壁202,203から上方へ延長された部分である。フランジ222の外面は、側壁202の外面と略面一であり、側壁202の外面とともに押出材200の全体の外側面を形成する。フランジ222の板厚は、側壁202の板厚と同じであり、あるいはこれよりも薄い又は厚い。フランジ223および側壁203の関係も、これと同様である。
【0054】
押出材200は、上壁204の外面(すなわち、上面)および一対のフランジ222,223の内面により画定された内空間220を有する。内空間220は、長手方向Xの両方および上方に開放される。一対のフランジ222,223の高さ方向Zにおける先端部(すなわち、上端部)は、内空間220の開口221を形成する。
【0055】
押出材200は、一対のフランジ222,223の先端部にそれぞれ設けられた一対の凸部224,225を有する。各凸部224,225は、対応するフランジ222,223の先端部から幅方向Yの内側へ突出する。換言すれば、凸部224,225は、内空間220側へ互いに近づくように突出する。これにより、上開口221は、凸部224,225が無い場合と比べて狭められる。また、凸部224,225の下面が、内空間220に臨む。
【0056】
押出材200は、一対のフランジ222,223の先端部(特に、本実施形態では一対の凸部224,225)に設けられた内側傾斜面226,227を有する。内側傾斜面226,227は、凸部224,225の上面と側面とを繋ぎ、下方に向かうに連れて幅方向Yの内側へと傾斜する。凸部224,225から見て下方は、フランジ222,223の基端側と対応し、型閉め方向M2とも対応する。内側は、内空間220側と対応し、収容部15から遠ざかる側とも対応する。
【0057】
押出材200は、その表面から突出する突起231,232を有する。本実施形態では、突起231,232が、幅方向Yにおいて対を成す。一対の突起231,232は、一対のフランジ222,223の外面にそれぞれ設けられ、一対のフランジ222,223から幅方向Yの外側へ突出する。
【0058】
特に、本実施形態では、一対の突起231,232が、一対のフランジ222,223の先端部にそれぞれ設けられる。突起231および凸部224は、フランジ222の先端部にて一体化され、先端部から幅方向Yにおいて両側へ突出し、フランジ222の板厚よりも幅広い共通の上面を形成する。突起232、凸部225、およびフランジ223の関係も、これと同様である。
【0059】
次に、
図3および
図4を参照して、準備された押出材200が、収容部15に収容される。その後、準備された樹脂材300のコンパウンドが、第1金型10上に配置される。押出材200およびコンパウンドは、人手で設置されてもよい。製造装置1は、押出材200およびコンパウンドの設置を行うためのマニピュレータを備えていてもよい。
【0060】
収容部15の幅は、幅方向Yにおける内側面16a,16b同士の間隔として定義される。収容部15の深さは、下成形面41から内底面16cまでの開閉方向の長さとして定義される。押出材200の幅は、幅方向Yにおける突起231,232の側端面同士の間隔として定義される。押出材200の高さは、底壁201の下面からフランジ221,222の上面(すなわち、突起231,232および凸部224,225の共通の上面)までの高さ方向Zの長さとして定義される。最大許容寸法と最小許容寸法との差が、寸法公差として定義される。押出材200の寸法公差は、例えば0.5~1.0mmの範囲内に設定される。押出材200は、寸法公差のほか、例えば、底壁201の下面や側壁202,203の外面の平面度のように、幾何公差も考慮に入れて成形されてもよい。準備された押出材200は、公差内に成形されている。
【0061】
押出材200の収容において、押出材200は、底壁201を下に向けた挿入姿勢で、収容部15に挿入される。収容部15の幅は、押出材200の幅の最大許容寸法と同じである。そのため、寸法公差内で成形された押出材200は、収容部15と干渉することなく収容部15内で下動できる。
【0062】
押出材200は、収容部15と干渉しない点や自重が作用する点に照らし、底壁201が内底面16cに着座するまで容易に挿入される。収容部15の深さは、押出材200の高さの最大許容寸法よりも大きい。このため、押出材200の収容状態において、押出材200の全部が収容部15に収容され、押出材200の上面が、下成形面41の僅かに下方に位置付けられる。突起231,232の側面は、ごく僅かなクリアランスをあけて、収容部15の内側面の上端部と対向する。突起231,232よりも下方では、収容部15の内面16と押出材200の表面(例えば、側壁202,203の外面や底壁201の下面など)との間に、隙間51が形成される。
【0063】
図3を参照して、次に、金型2が、加熱部4で予熱され、金型2を所定温度まで昇温させる。次に、樹脂材300のコンパウンド(例えば、SMC)が、下成形面41上に載置され、収容部15に収容された押出材200を上から覆う。
【0064】
次に、
図5を参照して、駆動部3が、第2金型20を退避位置から下死点へと型閉め方向M2(下方)に移動させる。第2金型20が下動する過程では、本体部21が肩部12に内嵌され、上合わせ面24が、僅かな金型隙間52をあけて下合わせ面14と対向する。第2金型20は、肩部12により案内されて下方へ摺動する。第2金型20は、樹脂材300のコンパウンドを下向きに押圧する。コンパウンドは、金型2の熱で軟化され、第2金型20から付与される成形圧で押圧されることにより流動する。
【0065】
図6を参照して、第2金型20が下死点に位置付けられた下死点状態では、上成形面43と下成形面41とが開閉方向に離れている。下合わせ面14は、肩部12の内面のうち、第2金型20の下死点状態において上成形面43よりも上方の部分である。側成形面42は、肩部12の内面のうち、第2金型20の下死点状態において上成形面43よりも下方の部分である。下成形面41、側成形面42、および上成形面43は、コンパウンドが充填されることを意図されたキャビティ40を画定する。
【0066】
キャビティ40は、下成形面41に形成された収容部15の内部と連通し、収容部15内の押出材200の上開口221を介して内空間220と連通する。内空間220は、樹脂材300の充填対象として意図されている。換言すれば、内空間220は、キャビティ40の一部を構成し、キャビティ40は、押出材200の表面によっても画定される。キャビティ40は、金型隙間52と連通する。隙間51は、金型隙間52と同様、樹脂材300の充填対象として意図されていない。
【0067】
この点、
図7を併せて参照して、第2金型20が下動する過程で、樹脂材300は、下向きに加圧されることで、収容部15に流入する(矢印1を参照)。樹脂材300が、開閉方向において押出材200の上面と同じレベルに達した後には、上開口221と、突起231,232と収容部15の内面16との間のクリアランスとが、樹脂材300の流動経路として想定される。しかし、このクリアランスは、上開口221と比べると非常に高い流入抵抗を有するため、樹脂材300は上開口221を通過しようとする。
【0068】
このとき、樹脂材300は、第2金型20から付与される成形圧(矢印1を参照)に基づき、内側傾斜面226,227に下向きの圧力を付与する(矢印2を参照)。これにより、凸部224,225が、楔の作用で、幅方向Yの外側へ押され、フランジ222,223が幅方向Yの外側へ撓む(矢印3を参照)。また、内空間220に流入した樹脂材300は、第2金型20から付与される成形圧に基づき、内空間220を画定する面を押圧し(矢印4を参照)、それにより、フランジ222,223を幅方向Yの外側へ撓ませる(矢印3を参照)。ただし、内側傾斜面226,227は省略されてもよく、凸部224,225の端面が上面に垂直に接続されていてもよい。この場合においても、この成形圧を端部の内面に垂直に作用させることが可能であり、フランジ222,223の矢印3方向への撓み変形を促すことができる。
【0069】
これにより、突起231,232が、収容部15の内側面16a,16bにそれぞれ密着する(矢印3を参照)。フランジ222,223の変形方向は、内側面16a,16bの法線方向に沿っている。そのため、フランジ222,223の撓みを利用して、突起231,232を内側面16a,16bに密着させやすい。
【0070】
このように、樹脂材300が隙間51に流れ込む前に、楔の作用で隙間51を詰めることができる。これにより、キャビティ40が隙間51から遮断され、樹脂材300が意図せずに隙間51に流れ込むことを抑止できる。なお、金型隙間52(
図6を参照)は狭く流入抵抗が高い。そのため、樹脂材300が金型隙間52に流れ込んだとしても、その量は少なくて済む。
【0071】
詳細図示を省略するが、第2金型20が下死点に位置付けられた状態で所定の期間が経過すると、樹脂材300が硬化する。樹脂材300の硬化後、駆動部3が第2金型20を退避位置まで型開き方向M1(上方)に移動させる。次に、金属樹脂複合体100が第1金型10から取り出される。
【0072】
樹脂材300の隙間51への流れ込みが抑止されているため、金属樹脂複合体100の生産効率が高くなる。すなわち、収容部15内で硬化される樹脂材300が少ないため、離型抵抗を低く抑えることができる。離型後に、押出材200の表面から不要な樹脂材300を剥離する作業も簡略化でき、必要最小限のバリ取りのみで済む。コンパウンドの漏出が抑制されるので、キャビティ40内に適正量の樹脂材300を確保しやすく、良品率および歩留まりが向上する。
【0073】
図1Aおよび
図1Bに戻り、硬化後の樹脂材300は、押出材200上で押出材200から幅方向Yにおいて両側に突出する板部301と、板部301の幅方向Yの中心部から下方に突出する突出部302とを有する。上成形面43、側成形面42、および下成形面41(
図6を参照)のプロファイルが、板部301の上面、側面、および下面にそれぞれ転写されている。
【0074】
突出部302は、外観上、隙間51(
図6を参照)を詰めることに貢献した突起231,232上に設けられる。突出部302は、内空間220に充填され、凸部224,225の下面と接触する。樹脂材300が押出材200にカシメ結合されるため、樹脂材300の押出材200に対する接合強度が向上する。
【0075】
一対のフランジ222,223の間の領域は、樹脂材300で中実となり高い強度を有する。そのため、フランジ222,223を薄くして可撓性を向上させることが許容される。これにより、隙間51(
図7を参照)を詰めやすくすることと、金属樹脂複合体100の強度を確保することとを両立できる。
【0076】
そのうえで、フランジ222,223の上面は、凸部223,224および突起231,232の一体化により、フランジ222,223の板厚よりも拡幅される。押出材200と樹脂材300との接触面積が極力大きく確保される。このため、収容部15の上端部で隙間51(
図7を参照)を詰めて不要な樹脂材300を少なくすることができるだけでなく、樹脂材300の押出材200に対する接合強度を高く維持できる。
【0077】
(第2実施形態)
以下、上記実施形態との相違を中心に、第2実施形態について説明する。
【0078】
図8を参照して、押出材200は、突起231,232の下面側に設けられた外側傾斜面233,234を更に有する。外側傾斜面233,234は、突起231,232の側面とフランジ222,223の外面とを繋ぎ、幅方向Yの内側に向かうに連れて下方へと傾斜する。
【0079】
収容部15の深さと押出材200の高さとの関係は、第1実施形態と同様である。収容部15の幅は、押出材200の幅の最大許容寸法よりも小さい。すなわち、収容部15は、寸法公差内で成形された押出材200と設計上干渉を生じ得る。
【0080】
収容部15の幅は、押出材200の幅の最小許容寸法よりも小さくてもよい。この場合、収容部15は、寸法公差内で成形されている押出材200のいずれとも、設計上干渉を生じる。収容部15の幅は、押出材200の幅の最大許容寸法と最小許容寸法との間に設定されてもよく、例えば、幅の基準寸法と等しくてもよい。押出材200の幅が基準寸法よりも小さい場合には、押出材200は、第1実施形態と同様に、収容部15と干渉することなく収容部15に挿入される。
【0081】
図9を参照して、押出材200の幅が収容部15の幅よりも大きい場合において、収容部15が挿入姿勢で上から収容部15に収容される際、押出材200の略全体が収容部15と干渉することなく、収容部15に挿入されていく。挿入完了の直前、外側傾斜面233が、収容部15の内側面16aと下成形面41との角部に当接し、外側傾斜面234が、収容部15の内側面16bと下成形面41との角部に当接する。押出材200に更に下向きの力が付与されると、突起222,223が、楔の作用で、幅方向Yの内側に移動し、フランジ222,223が、幅方向Yの内側へ撓み変形する。これにより、押出材200は、第1金型10に対して下動できる。押出材200は、底壁201が収容部15の内底面16cに着座するまで下動する。
【0082】
図10を参照して、フランジ222,223の変形は、弾性域内で留まっている。フランジ222,223は、原形状に復元しようと幅方向Yの外側(収容部15の内側面に近づく側)への弾性変形による反力を発揮する(矢印5を参照)。突起231,232の側面は、この反力で収容部15の内側面16a,16bに押し付けられ、内側面16a,16bに密着する(矢印3を参照)。
【0083】
その後は、
図5および
図6で示された第1実施形態と同様に、樹脂材300のコンパウンドが、第1金型10に配置され、高温高圧でプレスされる。本実施形態では、樹脂材300をプレス成形する前の段階で、隙間51が既に詰められている。そのため、樹脂材300の隙間51への流れ込みをより確実に抑止できる。しかも、第1実施形態と同様に、樹脂材300から内側傾斜面226,227およびフランジ222,223の内面に付与される成形圧に基づいて、フランジ222,223が幅方向Yの外側へ押される(
図10の矢印1~4を参照)。したがって、キャビティ40のシール性が一層高くなる。
【0084】
突起231,232が、フランジ222,223の弾性変形による反力で収容部15の内面16に密着しているため、第1実施形態と比べると離型抵抗は若干高くなる可能性があるものの、隙間51内での樹脂材300の硬化をより一層確実に抑止できる。そのため、第1実施形態と同等に、金属樹脂複合体100の生産効率が高い。
【0085】
(第3実施形態)
以下、上記実施形態との相違を中心に、第3実施形態について説明する。
【0086】
図11を参照して、押出材200は、一対のフランジ222,223の先端部それぞれから幅方向Yの外側へ突出する一対の突出片235,236を有する。一対の突出片235,236は、フランジ222,223から垂直に延びる平板状に形成されている。一対の突起231,232は、一対の突出片235,236の先端部それぞれに設けられる。各突起231,232は、対応する突出片235,236から下方に突出する。このように、突起231,232は、フランジ222,223の外面に突出片235,236を介して設けられる。
【0087】
各突出片235,236は、対応するフランジ222,223の先端部にて凸部224,225と一体化され、共通の上面を形成する。なお、本実施形態では、凸部224,225が内側傾斜面226,227(
図4を参照)を有さない場合を例示しているが、凸部224,225は、内側傾斜面226,227を第1実施形態と同様に有してもよい。
【0088】
図12を参照して、収容部15の幅は、側壁202,203の外面同士の間隔の最大許容寸法よりも大きい。収容部15の深さは、底壁201の下面から突出片235,236の下面までの長さの最小許容寸法よりも小さく、更には、底壁201の下面から突起の下面までの長さの最小許容寸法よりも小さい。これにより、押出材200は、第1実施形態と同様に、底壁201が収容部15の内底面16cに着座するまで、収容部15と干渉することなく収容部15内に下向きに挿入される。
【0089】
この押出材200の収容状態において、押出材200の上部は、収容部15あるいは下成形面41に対して上方へ突出する。特に、本実施形態では、上記した寸法関係に基づいて、突出片235,236のみならず突起231,232も、下成形面41と干渉しない。突出片235,236は、下成形面41の上方で幅方向Yに延び、突起231,232の下面は、開閉方向において僅かなクリアランスをあけて下成形面41と対向する。樹脂材300のコンパウンドは、突出片235,236上に載置されてもよい。
【0090】
図13および
図14を参照して、第2金型20が下動すると、成形圧が樹脂材300を介して突出片235,236の上面235a,236aに下向きに作用する(矢印6を参照)。上面235a,236aは、成形圧を受圧する受圧面として機能する。突出片235,236は、下向きに撓み変形し、突起231,232が、下成形面41のうち収容部15の周縁部に密着する(矢印3を参照)。
【0091】
なお、本実施形態でも、第1および第2実施形態と同様、成形圧が、内空間220に流入した樹脂材300を介し、フランジ222,223の内面に幅方向Yの外側に向けて作用する(矢印4を参照)。フランジ222,223は、その基端部(上壁204が設けられている部位の付近)を中心に、幅方向Yの外側に撓もうとし、それにより、突起231,232を下向きに移動させようとする(矢印7を参照)。この作用により、突起231,232の収容部15の周縁部との密着度が高くなる(矢印3を参照)。
【0092】
突起231,232が、収容部15の内面ではなく収容部15の外部に密着し、それによりキャビティ40は、隙間51から遮断される。そのため、樹脂材300が収容部15の内部かつ押出材200の外部で硬化することを防止でき、離型抵抗が一層低下する。
【0093】
詳細図示は省略するが、収容部15の深さは、底壁201の下面から突起231,232の下面までの長さの最小許容寸法よりも大きくてもよい。この場合、寸法公差内に成形されている押出材200であっても、底壁201の下面から突起231,232の下面までの長さが、収容部15の深さよりも小さくなり得る。このような場合に、底壁201が内底面16cに着座する前に、突起231,232の下面が下成形面41に当接する。押出材200が更に下動することで、突出片235,236が撓み変形する。押出材200の収容状態において、突起231,232が収容部15の周縁部に密着する。これにより、樹脂材300の加圧前にキャビティ40が隙間51から遮断され、樹脂材300の隙間51への流れ込みをより一層確実に抑止できる。
【0094】
(第4実施形態)
以下、上記実施形態との相違を中心に、第4実施形態について説明する。
【0095】
図15Aおよび
図15Bを参照して、金属樹脂複合体100が、構造上、矩形枠状のフレーム部101と、フレーム部101の下面側を閉塞する底板部102とを有し、全体として矩形箱状に形成される。樹脂材300は、底板部102を構成し、また、フレーム部101の内面を構成する。フレーム部101の骨格は、4本の押出材200を矩形枠状に接合することによって構成される。
【0096】
図16を併せて参照して、押出材200は、上記実施形態と同様、底壁201、一対の側壁202,203、上壁204、および仕切り壁205を有する。ただし、押出材200は、フランジ221,222を備えていない。押出材200は、全体としてL字状の断面を有する。底壁201および仕切り壁205が、幅方向Yの外側へ延長される。ここでの「外側」は、矩形箱状のフレーム部101の内側に対して反対側を指す。押出材200は、底壁201および仕切り壁205の延長部同士を高さ方向Zに接続する外壁206を有する。中空210は、底壁部201および仕切り壁205の延長部分、側壁203の下部、および外壁206で囲まれた第3室213を含む。樹脂材300は、側壁202の外面上に重ねられ、フレーム部101の内面を構成する。押出材200は、更に、突起231,232を有する。突起231は、押出材200の上部に設けられ、突起232は、押出材200の下部に設けられる。ただし、第3室213および外壁206は省略可能であり、底壁201および仕切り壁205は、側壁203から延長されていなくてもよい。
【0097】
本実施形態では、突起231が、側壁202と上壁204との角部に設けられ、当該角部から上方に突出する。突起232が、側壁202と底壁201との角部に設けられ、当該角部から下方に突出する。突起231,232は、楔形状の断面を有している。突起231は、一対の側面および上面を有し、幅方向外側の側面が傾斜している。突起232は、一対の側面および上面を有し、幅方向外側の側面が傾斜している。
【0098】
図17を参照して、金型2は、第1金型10および第2金型20の他、第3金型30を含む。肩部12が第1金型10から省略されている。基部11の上面は、下成形面41、押出材設置面16d、および底合わせ面17を形成する。下成形面41は、上面の中央部に形成される。押出材設置面16dは、下成形面41を外囲する矩形枠状に形成される。底合わせ面17は、押出材設置面16dを外囲する矩形枠状に形成される。
【0099】
第2金型20は、本体部21および成形部22を有する。成形部22は、本体部21よりもサイズが小さい直方体状であり、本体部21から下方に突出する。成形部22の底面が、第1上成形面44を形成する。成形部22の4つの側面が、内側成形面45を形成する。成形部22と本体部21との間の矩形枠状の段差面が、第2上成形面46を形成する。本体部21の4つの側面は、第1上合わせ面24を形成する。
【0100】
第3金型30は、可動型あるいは上型として構成される。第3金型30は、矩形枠状に形成され、第2金型20に対して摺動する。第3金型30の下面は、その外縁部が底合わせ面35を形成する。第3金型30は、下面に上方へ凹設されて第1金型10とともに収容部16を形成する凹部31を有する。凹部31は、擂鉢状またはL字状に形成され、外縁部から段階的に深くなっている。凹部31は、第1内側面31a、第1内底面31b、第2内側面31c、および第2内底面31dによって画定される。第1内側面31aは、底合わせ面35の内周縁から上方へ延びる。第1内底面31bは、第1内側面31aの上端から第3金型30の内側へ水平に延びる。第2内側面31cは、第1内底面31bの内周縁から上方へ延びる。第2内底面31dは、第2内側面31cの上端から第3金型30の内側へ水平に延び、第3金型30の内側面と連続する。第3金型30の内側面は、第2上合わせ面34を形成する。
【0101】
本実施形態では、
図17に示すように、第2金型20および第3金型30を上方に退避させた状態で、押出材200が第1金型10の押出材設置面16d上に設置される。次に、
図18に示すように、樹脂材300のコンパウンドが下成形面41上に載置されるとともに、第3金型30を下動させる。これにより、押出材200が、凹部31および押出材設置面16dで囲まれた収容部15に収容される。この収容状態において、押出材200には、第3金型30から成形圧が付与される(白抜き矢印参照)。これにより、突起231が第3金型30の第2内底面31d密着し、突起232が第1金型10の押出材設置面16dに密着する(白抜き矢印参照)。なお、押出材200に曲がりやねじれが生じていても、成形圧で押出材200が弾性変形して矯正され、突起231,232は長手方向Xの全体にわたって金型10,30に押し付けられる。
【0102】
押出材200が第1金型10および第3金型30によって保持されると、
図19および
図20に示すように、第2金型20を下死点まで下動させる。第2金型20は、第3金型30に案内されて下方に摺動する。キャビティ40は、下成形面41、第1上成形面43、内側成形面、第2上成形面、および押出材200の側壁202の外面により画定される。突起231,232の密着により、キャビティ40は、押出材200の表面と収容部15の内面(押出材設置面16d、第1内側面31a、第1内底面31b、第2内側面31c、および第2内底面31d)との間の隙間51から遮断される。
【0103】
このため、本実施形態においても、樹脂材300がキャビティ40内に充填されるときに、樹脂材300が隙間51に意図せず流れ込むことを抑止できる。成形後は、
図21に示すように、第2金型20および第3金型30を上方へ退避させる。押出材200が外壁を有し、それにより複雑な断面形状を有していても、容易に離型できる。
【0104】
(第5実施形態)
次に、上記実施形態との相違を中心に、第5実施形態について説明する。
【0105】
図21を参照して、金属樹脂複合体100が、構造上、第4実施形態と同様に、フレーム部101および底板部102を有し、フレーム部101の骨格が、4本の押出材200を矩形枠状に接合することによって構成される。樹脂材300は、底板部102およびフレーム部101の内面のみならず、フレーム部101の上面も構成する。これに伴い、第2金型20、第3金型30、キャビティ40の形状が第4実施形態とは異なっている。
【0106】
図22を併せて参照して、押出材200は、第4実施形態と同様にしてL字状に形成されるとともに、突起231,232を有する。突起231は、上壁204と側壁203との角部から上方に突出する。突起232は、底壁201と側壁202との角部から幅方向内方に突出する。突起232の下面は、底壁201の下面(第1金型10に設置されるべき面)よりも若干下方に位置付けられる。
【0107】
図24を参照して、第3金型30の第2内底面31dは、第4実施形態では上壁204の幅と同等の幅を有していたのに対し、本実施形態では側壁203の板厚分の幅を有する。押出材200は、第2金型20および第3金型30が上方へ退避している状態で、第1金型10の押出材設置面16dに設置される。
【0108】
次に、
図25を参照して、第3金型30を下動させる。これにより、押出材200が、押出材設置面16dおよび凹部31で囲まれた収容部15に部分的に収容される。上壁204および側壁202は、収容部15から露出された状態となる。このとき、第3金型30の成形圧により、突起231は、第2内底面に密着する。突起232は、成形圧で弾性変形して下成形面41あるいは押出材設置面16dに密着する。次に、樹脂材300のコンパウンドが下成形面41上に載置される。
【0109】
その後、
図26および
図27に示すように、第2金型20を下死点まで移動させる。キャビティ40は、下成形面41、第1上成形面43、内側成形面45、第2上成形面46、押出材200の側壁202の外面、および押出材200の上壁204の外面により画定される。突起231,232の密着により、キャビティ40は、押出材200の表面と収容部15の内面(押出材設置面16d、第1内側面31a、第1内底面31b、および第2内側面31c)との間の隙間51から遮断される。
【0110】
このため、本実施形態においても、樹脂材300がキャビティ40内に充填されるときに、樹脂材300が隙間51に意図せず流れ込むことを抑止できる。また、
図28を参照して、金属樹脂複合体100を容易に離型できる。
【0111】
(第6実施形態)
次に、上記実施形態との相違を中心に、第6実施形態について説明する。
【0112】
図29を参照して、金属樹脂複合体100が、構造上、第4および第5実施形態と同様、フレーム部101および底板部102を有し、フレーム部101の骨格が、4本の押出材200を矩形枠状に接合することによって構成される。樹脂材300は、底板部102およびフレーム部101の内面を構成するとともに、フレーム部101の上面の一部を構成する。これに伴い、第2金型20、第3金型30、およびキャビティ40の形状が、第4実施形態とは異なっている。
【0113】
図30を参照して、押出材200の上壁204においては、幅方向の外側が内側よりも高い。上壁204は、側壁202の上端部から幅方向Yの内側に延びる低部204aと、側壁203の上端部から幅方向Yの外側に延びる高部204bとを有し、押出材200は、低部204aと高部204bとを高さ方向に接続するステップ部204cを有する。突起232は、第5実施形態と同様である。突起231は、ステップ部204cに設けられ、高部204bとステップ部204cとの角部から幅方向Yの外側へ突出する。これにより、突起231およびステップ部204cが、鉤形状に形成される。
【0114】
図31を参照して、第3金型30の第2内底面31dは、第4実施形態では上壁204の幅と同等の幅を有していたのに対し、本実施形態では高部204bと突起231との幅の和に相当する幅を有する。押出材200は、第2金型20および第3金型30が上方へ退避している状態で、第1金型10の押出材設置面16dに設置される。
【0115】
次に、
図32に示すように、第3金型30を下動させる。これにより、押出材200が、押出材設置面16dおよび凹部31で囲まれた収容部15に部分的に収容される。上壁204の低部204aおよび側壁202は、収容部15から露出された状態となる。このとき、第3金型30の成形圧により、突起231が、第2内底面に密着する。突起231は鉤形状に形成されているため、成形圧で弾性変形してその反力で第3金型30に密着する。突起232も、第5実施形態と同様にして下成形面41あるいは押出材設置面16dに密着する。次に、樹脂材300のコンパウンドが下成形面41上に載置される。
【0116】
その後、
図33および
図34に示すように、第2金型20を下死点まで移動させる。キャビティ40は、下成形面41、第1上成形面43、内側成形面45、第2上成形面46、押出材200の側壁202の外面、および押出材200の上壁204の低部204aの外面により画定される。突起231,232の密着により、キャビティ40は、押出材200の表面と収容部15の内面(押出材設置面16d、第1内側面31a、第1内底面、および第2内側面)との間の隙間51から遮断される。
【0117】
このため、本実施形態においても、樹脂材300がキャビティ40内に充填されるときに、樹脂材300が隙間51に意図せず流れ込むことを抑止できる。また、
図35を参照して、金属樹脂複合体100を容易に離型できる。
【0118】
これまで本発明の実施形態について説明したが、上記構成は本発明の趣旨の範囲内で適宜変更、追加、および削除可能である。
【符号の説明】
【0119】
1 製造装置
2 金型
3 駆動部
4 加熱部
10 第1金型
20 第2金型
30 第3金型
200 押出材
201 底壁
202,203 側壁
204 上壁
205 仕切り壁
210 中空
211 第1室
212 第2室
220 内空間
221 上開口
222,223 フランジ
224,225 凸部
226,227 内側傾斜面
231,232 突起
233,234 外側傾斜面