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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140884
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】機械保守支援システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/20 20230101AFI20241003BHJP
【FI】
G06Q10/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052244
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有馬 世一
(72)【発明者】
【氏名】高見 弘樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC15
(57)【要約】
【課題】修理に必要な部品の事前調達を促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を抑制することを目的とする。
【解決手段】機械保守支援システム1の演算処理装置100aは、機械10の故障確率を推定して故障予測を行う故障予測部101と、修理に必要な対策部品を特定する対策部品特定部102と、対策部品の受注確率を故障確率に基づいて算出する受注確率算出部103と、部品倉庫において在庫が不足した対策部品の事前調達の期待損益を受注確率に基づいて算出して事前調達を行う在庫管理部104と、対策部品の調達に要する時間に基づいて顧客の経済的影響度を算出する影響度算出部105と、経済的影響度に基づいて販促プランを作成する販促プラン作成部106と、通信装置100bに販促プランを出力する出力部107と、を有する。通信装置100bは、販促プランを端末装置50に送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械の保守を支援するサーバ装置を備える機械保守支援システムであって、
前記サーバ装置は、前記機械の顧客が使用する端末装置との通信を行う通信装置と、演算処理装置と、を含み、
前記演算処理装置は、
前記機械の故障が発生する前に前記機械の故障確率を推定して前記機械の故障予測を行う故障予測部と、
前記故障を修理するために必要な対策部品を特定する対策部品特定部と、
前記機械の顧客から前記対策部品を受注する確率を示す受注確率を前記故障確率に基づいて算出する受注確率算出部と、
部品倉庫において在庫が不足した前記対策部品を前記故障が発生する前に調達する事前調達を行うことによって期待される期待損益を前記受注確率に基づいて算出し、算出された前記期待損益に基づいて前記事前調達に関する情報を前記部品倉庫に送信する在庫管理部と、
前記対策部品の調達に要する時間に基づいて、前記故障が前記顧客に与える経済的影響度を算出する影響度算出部と、
前記故障予測の内容、前記対策部品のリスト及び前記経済的影響度に基づいて、前記対策部品の販促プランを作成する販促プラン作成部と、
前記販促プランを前記通信装置に出力する出力部と、を有し、
前記通信装置は、前記販促プランを前記端末装置に送信する
ことを特徴とする機械保守支援システム。
【請求項2】
前記影響度算出部は、
前記対策部品の調達先から前記部品倉庫までの前記対策部品の輸送に要する時間、前記部品倉庫から前記機械の所在地までの前記対策部品の輸送に要する時間、及び、前記対策部品を用いた前記故障の修理に要する時間の少なくとも1つを含む前記機械の稼働停止時間に基づいて、前記故障によって前記顧客が負担するコストを算出し、
前記事前調達が行われた前記対策部品を購入して前記故障が発生する前に修理する事前修理が行われる場合に前記顧客が負担する前記コストと、前記故障が発生した後に前記対策部品を購入して修理する事後修理が行われる場合に前記顧客が負担する前記コストとに基づいて、前記事前修理が行われる場合の前記顧客のコストメリットを算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械保守支援システム。
【請求項3】
前記在庫管理部は、
前記事前調達が行われた後に前記対策部品が前記顧客に購入される確率である第1購入確率、及び、前記事前調達が行われた後に前記対策部品が前記顧客に購入さない確率である第1非購入確率を、前記受注確率に基づいて算出すると共に、
前記事前調達が行われずに前記対策部品が前記顧客に購入される確率である第2購入確率を算出し、
前記事前調達を行う場合の期待損益である第1期待損益を、前記第1購入確率及び前記第1非購入確率に基づいて算出し、前記事前調達を行わない場合の期待損益である第2期待損益を、前記第2購入確率に基づいて算出し、
算出された前記第1期待損益と前記第2期待損益との差分から、トータルの前記期待損益を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械保守支援システム。
【請求項4】
前記在庫管理部は、
前記第1期待損益を、
前記事前調達が行われた後に前記対策部品が購入される場合の前記対策部品の売却益、輸送費及び倉庫保管費の合計に対して前記第1購入確率が乗算された値と、前記事前調達が行われた後に前記対策部品が購入されない場合の前記対策部品の輸送費、倉庫保管費及び滅却費の合計に対して前記第1非購入確率が乗算された値と、の差分によって算出し、
前記第2期待損益を、
前記事前調達が行われずに前記対策部品が購入される場合の前記対策部品の売却益、輸送費及び緊急処理費の合計に対して前記第2購入確率が乗算された値によって算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の機械保守支援システム。
【請求項5】
前記受注確率算出部は、
前記対策部品を用いた前記機械の修理履歴、及び、前記対策部品の販売履歴に基づいて、前記故障が発生した後に前記対策部品が前記顧客に購入される確率である部品購入確率を算出し、
算出された前記部品購入確率を、予め学習された前記対策部品の価格と前記部品購入確率との関係に基づいて調整し、
調整された前記部品購入確率に基づいて、前記受注確率を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械保守支援システム。
【請求項6】
前記販促プラン作成部は、
前記事前調達が行われる場合の前記対策部品の価格を通常価格よりも安い販促価格に設定すると共に、前記販促価格での前記対策部品の販売期間である販促期間を設定し、
設定された前記販促価格及び前記販促期間を含む前記販促プランを作成する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械保守支援システム。
【請求項7】
前記販促プラン作成部は、
前記販促期間として、第1販促期間を設定すると共に、前記第1販促期間よりも後に第2販促期間を設定し、
前記故障確率に基づいて予測される前記故障の発生日までの期間が前記対策部品の調達に要する時間よりも長い場合、予測される前記故障の発生日までに前記第2販促期間を設定し、
前記第1販促期間での前記販促価格である第1販促価格を、前記第2販促期間での前記販促価格である第2販促価格よりも安い価格に設定する
ことを特徴とする請求項6に記載の機械保守支援システム。
【請求項8】
前記出力部は、前記対策部品を購入する意思決定を前記顧客に要求する情報を、前記通信装置に出力し、
前記通信装置は、前記意思決定を要求する情報を前記販促プランと併せて前記端末装置に送信する
ことを特徴とする請求項1に記載の機械保守支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械保守支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械又は風車等の長時間に亘って稼働し続ける機械においては、顧客(機械のオーナ又はユーザ、以下「顧客」とも称する)の収益が最大になるように稼働率の向上が重要である。機械の稼働率向上のため、機械に故障が発生しても、適切且つ迅速に修理(部品交換を含む)を行って、機械を再稼働できることが望まれる。適切且つ迅速に修理を行うためには、機械の保守に必要な部品の在庫が不足することなく、可及的速やかに機械の近くに配備されることが望まれる。例えば、特許文献1には、半導体製造装置において部品の故障確率を計算し、故障確率に応じた保守部品の在庫準備量を管理する技術が提案されている。
【0003】
一方、建設機械又は風車等の機械は、遠隔地で複数の類似機械が同時に稼働することが多く、地域毎に部品倉庫が設置されることが多い。当該機械は部品の品目数が多いので、各地域の部品倉庫に全ての部品を保管することは困難であり、注文を受けてから部品を調達先(部品サプライヤ)から調達する場合、調達時の部品の輸送に時間を費やし、機械の稼働率に悪影響を及ぼすことがある。したがって、修理に必要な部品を事前に調達して機械の近くに配備することが望ましい。例えば、特許文献2には、装置の故障診断情報に基づいて保守部品の交換によって装置が復旧する確率と、部品が使われない時の戻入れコストの期待値を算出することによって、保守部品の先行手配の要否を判断する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-257808号公報
【特許文献2】特開2013-105221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された技術では、在庫不足の部品を調達先から調達するのに要する時間については何ら考慮されていない。したがって、特許文献1に開示された技術では、当該部品の調達に長い時間を要する場合には、機械の稼働停止時間が長期化することが懸念される。
【0006】
一方、機械を保守する側が修理に必要な部品を事前に調達したとしても、顧客に修理のメリットが理解されないことや顧客の経済的事情が原因で、顧客側が修理を先送りすることがある。この場合、機械に故障が発生して、大きな損失を顧客側にもたらす可能性がある。機械を保守する側は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによって部品在庫確保のリスクが増大するので、修理に必要な部品を事前調達することが難しくなる。
【0007】
特許文献2に開示された技術では、保守部品の先行手配の要否を判断するために、保守部品の交換によって装置が復旧する確率と、部品が使われない時の保守側の戻入れコストの期待値のみを考慮しているに過ぎない。したがって、特許文献2に開示された技術では、修理に必要な部品の事前調達を行って修理するメリットが顧客に理解されずに、当該部品の事前調達が促進されないことが懸念される。結果的に、特許文献2に開示された技術では、故障が発生した後に修理する事態になり、機械の稼働停止時間が長期化することが懸念される。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、修理に必要な部品の事前調達を促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の機械保守支援システムは、機械の保守を支援するサーバ装置を備える機械保守支援システムであって、前記サーバ装置は、前記機械の顧客が使用する端末装置との通信を行う通信装置と、演算処理装置と、を含み、前記演算処理装置は、前記機械の故障が発生する前に前記機械の故障確率を推定して前記機械の故障予測を行う故障予測部と、前記故障を修理するために必要な対策部品を特定する対策部品特定部と、前記機械の顧客から前記対策部品を受注する確率を示す受注確率を前記故障確率に基づいて算出する受注確率算出部と、部品倉庫において在庫が不足した前記対策部品を前記故障が発生する前に調達する事前調達を行うことによって期待される期待損益を前記受注確率に基づいて算出し、算出された前記期待損益に基づいて前記事前調達に関する情報を前記部品倉庫に送信する在庫管理部と、前記対策部品の調達に要する時間に基づいて、前記故障が前記顧客に与える経済的影響度を算出する影響度算出部と、前記故障予測の内容、前記対策部品のリスト及び前記経済的影響度に基づいて、前記対策部品の販促プランを作成する販促プラン作成部と、前記販促プランを前記通信装置に出力する出力部と、を有し、前記通信装置は、前記販促プランを前記端末装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、修理に必要な部品の事前調達を促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を抑制することができる。
上記以外の課題、構成および効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態1の機械保守支援システムの構成を示す図。
図2図1に示す演算処理装置の機能的構成を示す図。
図3図1に示すデータベース装置に記憶されたデータベースの構成を示す図。
図4図3に示す機械情報DBの一例を示す図。
図5図3に示す故障・修理履歴DBの一例を示す図。
図6図3に示す対策部品DBの一例を示す図。
図7図3に示す販売履歴DBの一例を示す図。
図8図3に示す倉庫DBの一例を示す図。
図9図3に示す現場情報DBの一例を示す図。
図10図2に示す演算処理装置の事前調達に関する処理を示すフローチャート。
図11図2に示す受注確率算出部から出力される情報の一例を示す図。
図12図2に示す在庫管理部が期待損益を算出するアルゴリズムの一例を示す図。
図13図2に示す在庫管理部による期待損益の算出結果の一例を示す図。
図14図2に示す影響度算出部が故障影響度を算出するアルゴリズムの一例を示す図。
図15】機械の稼働停止時間を説明する図。
図16図2に示す影響度算出部から出力される情報の一例を示す図。
図17図2に示す販促プラン作成部によって設定される販促期間及び販促価格の一例を示す図。
図18図2に示す出力部によって出力される情報の一例を示す図。
図19】実施形態2の演算処理装置の事前調達に関する処理を示すフローチャート。
図20】実施形態2の販促プラン作成部によって設定される販促期間及び販促価格の一例を示す図。
図21】実施形態3の受注確率算出部によって用いられる対策部品の部品価格と部品購入確率との関係の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、各実施形態において同一の符号を付された構成については、特に言及しない限り、各実施形態において同様の機能を有し、その説明を省略する。
【0013】
[実施形態1]
図1図18を用いて、実施形態1の機械保守支援システム1について説明する。
【0014】
図1は、実施形態1の機械保守支援システム1の構成を示す図である。
【0015】
機械保守支援システム1は、例えば建設機械である油圧ショベル等の機械群10a~10xの保守作業を支援するシステムである。機械保守支援システム1は、機械群10a~10xとネットワーク20を介して接続されたサーバ装置30と、サーバ装置30とネットワーク20を介して接続された部品倉庫40と、サーバ装置30とネットワーク20を介して接続された端末装置50と、を備える。以下では、機械群10a~10xに含まれる個々の機械10a,10b,…,10xを総称して、「機械10」と称する。機械保守支援システム1は、機械10のメーカの管理事務所、又は、機械10のサービス事務所に設置されている。
【0016】
サーバ装置30は、機械10の状態を監視して機械10の保守作業を支援する。サーバ装置30は、サーバ本体100と、データベース装置200と、備える。サーバ本体100は、演算処理を行う演算処理装置100aと、ネットワーク20を介してサーバ装置30の外部との通信を行う通信装置100bと、を含む。データベース装置200には、演算処理装置100aの演算処理に必要なデータが記憶されている。
【0017】
演算処理装置100aは、電源、CPU(Central Processing Unit)、メモリ及び入出力装置等を備える、1又は複数のコンピュータによって構成されている。演算処理装置100aは、通信装置100bを介して、LAN(Local Area Network)やインターネット等によって構成されたネットワーク20に接続されている。
【0018】
データベース装置200は、例えば1又は複数のハードディスク等によって構成されている。データベース装置200は、サーバ本体100内に設置されていてもよいし、ネットワーク20を介してサーバ本体100と接続されていてもよい。データベース装置200は、演算処理装置100aの処理に関するデータを、電子ファイル形式、又は、リレーショナルデータベース等のデータベース形式で記憶している。
【0019】
機械群10a~10xは、同じ稼働現場に配置された複数台の機械10である。機械10は、複数のサブユニット又は部品から構成されている。機械10は、圧力又は温度等を計測する各種のセンサ11と、機械10の動作を制御する制御装置12と、ネットワーク20を介して外部との通信を行う通信装置13と、を含む。制御装置12は、センサ11によって計測された圧力又は温度等の情報(以下「稼働情報」とも称する)を、通信装置13を介して、サーバ装置30に送信することができる。機械10は、稼働計画と保守計画とを有しており、これらの計画に基づいて稼働、停止又は保守が行われる。
【0020】
なお、図1では、機械10として、建設機械の代表例である油圧ショベルを例示しているが、機械10は、建設機械に限定されず、風車等の他の機械であってもよい。
【0021】
部品倉庫40は、機械10に使用される部品を保管し、保管された部品の在庫管理や、部品の入荷及び出荷を管理する。部品倉庫40は、図示しない制御装置及び通信装置を含む。部品倉庫40は、通信装置を介してネットワーク20に接続され、更にサーバ装置30に接続されている。
【0022】
端末装置50は、パソコン又はスマートフォン等によって構成され、電子ファイルの入出力機能及びディスプレイへの表示機能を有している。更に、端末装置50は、プリンタ若しくはファックス等を用いた紙媒体への出力機能を有している。端末装置50は、ネットワーク20を介してサーバ装置30に接続され、サーバ装置30から送信された部品調達に関する情報を含む各種情報を表示して、顧客に提示する。
【0023】
図2は、図1に示す演算処理装置100aの機能的構成を示す図である。図2の矢印は、演算処理装置100aの処理手順を示している。
【0024】
演算処理装置100aは、故障予測部101と、対策部品特定部102と、受注確率算出部103と、在庫管理部104と、影響度算出部105と、販促プラン作成部106と、出力部107と、を有している。
【0025】
故障予測部101は、機械10の故障が発生する前に機械10の故障確率を推定して機械10の故障予測を行う。対策部品特定部102は、機械10の故障を修理するために必要な部品(以下「対策部品」とも称する)を特定する。受注確率算出部103は、機械10の顧客から対策部品を受注する確率を示す受注確率を、故障予測部101により推定された故障確率に基づいて算出する。
【0026】
在庫管理部104は、部品倉庫40において在庫が不足した対策部品を故障が発生する前に調達する事前調達を行うことによって期待される期待損益を、受注確率算出部103により算出された受注確率に基づいて算出する。そして、在庫管理部104は、算出された期待損益に基づいて、対策部品の事前調達を行う。具体的には、在庫管理部104は、算出された期待損益に基づいて、対策部品の事前調達に関する情報を部品倉庫40に送信する。
【0027】
影響度算出部105は、対策部品の調達に要する時間に基づいて、機械10の故障が顧客に与える経済的影響度(以下「故障影響度」とも称する)を算出する。販促プラン作成部106は、故障予測部101により行われた故障予測の内容、対策部品特定部102により特定された対策部品を含む部品リスト、及び、影響度算出部105により算出された故障影響度に基づいて、対策部品の販促プランを作成する。出力部107は、販促プラン作成部106により作成された販促プランを通信装置100bに出力して、当該販促プランを端末装置50に送信させる。なお、演算処理装置100aの詳細については、図10図18を用いて後述する。
【0028】
図3は、図1に示すデータベース装置200に記憶されたデータベース(以下「DB」とも称する)の構成を示す図である。
【0029】
データベース装置200は、機械10から送信された稼働情報を記憶する稼働情報DB201と、機械10の機械情報を記憶する機械情報DB202と、を有している。更に、データベース装置200は、機械10の故障履歴及び修理履歴を記憶する故障・修理履歴DB203と、対策部品のリストを記憶する対策部品DB204と、部品の販売履歴を記憶する販売履歴DB205と、を有している。更に、データベース装置200は、部品倉庫40に関する情報を記憶する倉庫DB206と、機械10の稼働現場に関する情報を記憶する現場情報DB207と、を有している。
【0030】
図4は、図3に示す機械情報DB202の一例を示す図である。
【0031】
機械情報DB202は、機械群10a~10xの全ての機械10について、少なくとも、各機械10の機種情報、稼働計画、修理履歴、部品リスト、及び、単位時間当たりの平均掘削量を記憶している。機種情報は、機械10の機種、モデル名称、型式、製造番号及び製造年月日等の基本情報を含む。稼働計画は、対象の稼働現場において機械10の稼働予定時間及び操作モードといった稼働予定に関する情報を含む。修理履歴は、機械10の過去に行われた修理(部品交換を含む)に関する情報を含む。修理履歴は、故障・修理履歴DB203から取得された情報であってもよい。部品リストは、機械10に使用される全ての部品の情報を含む。単位時間当たりの平均掘削量は、油圧ショベルである機械10が過去に掘削した土砂重量における単位時間当たりの平均値である。
【0032】
図5は、図3に示す故障・修理履歴DB203の一例を示す図である。
【0033】
故障・修理履歴DB203は、機械10の故障又は修理が発生したケース毎に、故障予測時に用いられた健全性指標の値、故障までの日数、故障モードの種類、修理時に交換される部品のリスト、修理時間、及び、修理費用等を記憶している。
【0034】
故障モードは、故障が発生する部位と故障の内容とによって決定される故障の分類である。故障・修理履歴DB203には、機械10の故障履歴及び機械10の過去の知見に基づいて、機械10に発生し得る故障モードが予め記憶されている。故障モードの例としては、バッテリの劣化又はバケットツースの損傷が挙げられる。バッテリの劣化は、バッテリの充電状態の悪化によって生じる故障である。健全性指標は、機械10の部品又は部位の健全性を表すための指標であり、故障モードに応じて異なる。バッテリの劣化に対応する健全性指標は、例えば、バッテリの充電率(SOC)であってもよい。バケットツースの損傷は、ツースの摩耗によって生じる故障である。バケットツースの損傷に対応する健全性指標は、機械10の累積稼働時間であってもよい。
【0035】
図6は、図3に示す対策部品DB204の一例を示す図である。
【0036】
対策部品DB204は、故障モードの種類毎に、故障を修理するために必要な部品である対策部品のリストを記憶している。対策部品DB204は、対策部品のリストとして、部品ID、部品名称、及び、数量を記憶している。なお、図6には、故障モードに対して1つの対策部品が示されているが、対策部品の数は1つに限定されず、複数であってもよい。
【0037】
図7は、図3に示す販売履歴DB205の一例を示す図である。
【0038】
販売履歴DB205は、対象の顧客向けに販売した全ての部品の情報を記憶している。販売履歴DB205は、少なくとも、部品販売日、部品ID、部品名称、部品単価(売価)、部品原価、部品重量、販売先の顧客ID、部品倉庫40から顧客(機械10の所在地)までの輸送時間、及び、部品倉庫40から顧客(機械10の所在地)までの輸送費等を記憶している。
【0039】
図8は、図3に示す倉庫DB206の一例を示す図である。
【0040】
倉庫DB206は、部品倉庫40に関する情報を記憶している。倉庫DB206は、倉庫基本情報として、倉庫ID、部品倉庫40の名称、部品倉庫40の住所、部品倉庫40の連絡先、部品保管費の単価、及び、部品倉庫40に保管されている全ての部品の在庫テーブル等を記憶している。この在庫テーブルは、部品ID、部品名称、部品重量、部品寸法、部品単価、部品の在庫数量、部品の調達先、及び、部品の輸送手段等を記憶している。部品保管費の単価とは、部品倉庫40における単位体積当たり及び単位時間当たりの部品保管費のことである。
【0041】
図9は、図3に示す現場情報DB207の一例を示す図である。
【0042】
現場情報DB207は、機械10の稼働現場に関する情報を記憶している。現場情報DB207は、稼働現場の名称、稼働現場の住所、稼働現場の工事プロジェクト全体の期間、工事プロジェクト全体によって期待される期待収益、工事プロジェクト全体の掘削計画、工事プロジェクト全体の掘削量、及び、工事プロジェクト全体に投入される機械10のリスト等を記憶している。
【0043】
図10図18を用いて、演算処理装置100aの詳細について説明する。
【0044】
図10は、図2に示す演算処理装置100aの事前調達に関する処理を示すフローチャートである。図11は、図2に示す受注確率算出部103から出力される情報の一例を示す図である。図12は、図2に示す在庫管理部104が期待損益を算出するアルゴリズムの一例を示す図である。図13は、図2に示す在庫管理部104による期待損益の算出結果の一例を示す図である。図14は、図2に示す影響度算出部105が故障影響度を算出するアルゴリズムの一例を示す図である。図15は、機械10の稼働停止時間を説明する図である。図16は、図2に示す影響度算出部105から出力される情報の一例を示す図である。図17は、図2に示す販促プラン作成部106によって設定される販促期間及び販促価格の一例を示す図である。図18は、図2に示す出力部107によって出力される情報の一例を示す図である。
【0045】
ステップS1において、故障予測部101は、機械10の故障確率を推定し、機械10の故障予測を行う。故障予測部101は、機械10の故障が発生する前に、故障確率を推定して故障予測を行う。具体的には、故障予測部101は、一定の時間間隔(例えば1日毎)において、稼働情報DB201に記憶された機械10の稼働情報と、機械情報DB202に記憶された機械10の機械情報とを用いて、予め定められた各故障モードに対応する健全性指標の値を算出すると共に故障確率を推定する。
【0046】
故障予測部101は、故障確率に応じて故障予測を行うことができる。例えば、故障予測部101は、故障確率が予め定められた閾値を超えた時に故障が発生すると予測することができる。また、故障予測部101は、各故障モードに対応する健全性指標の値が予め定められた閾値を超えた時に故障が発生すると予測することができる。
【0047】
故障予測部101は、例えば、ワイブル分析法又はMTBF(Mean Time Between Failures)法等の公知の手法を用いて、故障確率の推定及び故障予測を行うことができる。また、故障予測部101は、機械10の稼働情報と故障・修理履歴とを機械学習することによって、故障確率の推定及び故障予測を行うことができる。例えば、予測される故障発生日及びその前日の各稼働情報を異常データとしてラベル付けを行う。更に、一定の期間(例えば、予測される故障発生日の前後1ヶ月間)に故障が発生していない稼働情報を正常データとしてラベル付けを行う。そして、ランダムフォレスト等の公知の機械学習モデルを用いて故障発生の予測モデルを構築し、故障予測部101に導入する。そして、故障予測部101に導入された予測モデルから出力される予測確率を、故障確率とする。
【0048】
ステップS2において、対策部品特定部102は、発生が予測された故障を修理するために必要な対策部品を特定する。具体的には、対策部品特定部102は、故障・修理履歴DB203に記憶された複数種類の故障モードのうち、故障予測部101において故障発生が予測された健全性指標に対応する故障モードを特定する。そして、対策部品特定部102は、特定された故障モードを、発生が予測された故障における故障モードであると推定する。そして、対策部品特定部102は、対策部品DB204を参照して、推定された故障モードに応じた対策部品のリストを特定する。
【0049】
ステップS3において、受注確率算出部103は、特定された対策部品を機械10の顧客から受注する確率を示す受注確率を、故障予測部101により推定された故障確率に基づいて算出する。
【0050】
具体的には、受注確率算出部103は、一定の時間間隔(例えば1日毎)において、受注確率を算出する。或る部品kの受注確率pは、数式1によって算出される。数式1において、iは部品kに発生し得る故障の故障モードの番号を示す。pfiは、故障モードiの故障確率を示す。pbiは、故障モードiで故障が発生した後に部品kが顧客に購入される確率である部品購入確率を示す。
【0051】
【数1】
【0052】
受注確率算出部103は、特定された対策部品を用いた機械10の修理履歴、及び、対策部品の販売履歴に基づいて、部品購入確率pbiを算出する。例えば、受注確率算出部103は、故障・修理履歴DB203から対策部品に関する故障が発生した日付を全て抽出する。そして、受注確率算出部103は、抽出された日付の1週間以内の対策部品の販売履歴を販売履歴DB205において検索する。そして、受注確率算出部103は、当該検索でのヒット率を対策部品の受注確率として算出することができる。
【0053】
受注確率算出部103は、受注確率の値だけでなく、受注確率を算出した対策部品の情報を合わせて出力することができる。例えば、受注確率算出部103は、図11に示すように、受注確率がゼロより大きい部品を出力対象として、部品ID、部品名称、必要数量、対応する故障モード、及び、受注確率等の情報をマトリックス形式で出力することができる。
【0054】
ステップS4において、在庫管理部104は、倉庫DB206を参照して、特定された対策部品の部品倉庫40の在庫数量を確認する。
【0055】
ステップS5において、在庫管理部104は、特定された対策部品の在庫が部品倉庫40において不足しているか否かを判定する。対策部品の部品倉庫40の在庫数量が必要数量に対して十分に足りている場合、在庫管理部104は、対策部品の在庫が不足していないと判定する(ステップS5:No)。この場合、在庫管理部104は、対策部品の事前調達を行わないとして、図10に示す処理を終了する。一方、対策部品の部品倉庫40の在庫数量が必要数量に足りていない場合、在庫管理部104は、対策部品の在庫が不足していると判定し(ステップS5:Yes)、ステップS6に進む。
【0056】
ステップS6において、在庫管理部104は、部品倉庫40において在庫が不足した対策部品の事前調達を行うことによって期待される期待損益を、受注確率算出部103により算出された受注確率に基づいて算出する。
【0057】
具体的には、在庫管理部104は、在庫が不足した対策部品の事前調達を行うことによって期待されるトータルの期待損益SECを、図12に示すようなアルゴリズムを用いて算出する。期待損益SECは、対策部品の事前調達の有無を考慮して総合的に算出される期待損益である。期待損益SECは、数式2によって算出される。数式2において、Sは、対策部品の事前調達を行う場合の期待損益である第1期待損益を示す。SNFは、対策部品の事前調達を行わない場合の期待損益である第2期待損益を示す。在庫管理部104は、第1期待損益Sと第2期待損益SNFとの差分から、トータルの期待損益SECを算出する。
【0058】
【数2】
【0059】
第1期待損益Sは、数式3によって算出される。数式3において、STotal_1は、対策部品の事前調達が行われた後に当該部品が顧客に購入される場合の損益を示す。STotal_2は、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない場合の損益を示す。pfpは、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入される確率である第1購入確率を示す。(1-pfp)は、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない確率である第1非購入確率を示す。在庫管理部104は、第1期待損益Sを、第1購入確率pfp及び第1非購入確率(1-pfp)に基づいて算出する。
【0060】
【数3】
【0061】
第1購入確率pfpは、数式4によって算出される。数式4において、dは対策部品が購入される日付である。第1購入確率pfpは、日付dの関数であるので、pfp(d)と表記される。pは、受注確率算出部103によって算出された受注確率を示す。pop(d)は、対象の機械10以外の機械用に対策部品が購入される確率を示す。在庫管理部104は、第1購入確率pfp及び第1非購入確率(1-pfp)を、受注確率pに基づいて算出する。
【0062】
【数4】
【0063】
対象の機械10以外の機械用に対策部品が購入される確率pop(d)は、数式5によって算出される。数式5において、D0は、対策部品が現地デポ(物流拠点)に到着する日付を示す。pは、1日当たりに対策部品が購入される確率を示す。在庫管理部104は、1日当たりに対策部品が購入される確率pを、販売履歴DB205に記憶された情報から算出することができる。在庫管理部104は、算出された確率pから数式5を用いて確率pop(d)を算出し、算出された確率pop(d)から数式4を用いて第1購入確率pfpを算出する。在庫管理部104は、図10に示す処理を実行する毎に、第1購入確率pfpを逐次更新する。
【0064】
【数5】
【0065】
対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入される場合の損益STotal_1は、数式6によって算出される。数式6において、Sは、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入される場合における当該対策部品の売却益を示す。在庫管理部104は、販売履歴DB205に記憶された対策部品の部品価格(売価)から原価を差し引くことによって、売却益Sを算出することができる。Sは、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入される場合における当該対策部品の輸送費を示す。輸送費Sは、送料の他、関税及び事務手数料等の諸費用を含む。在庫管理部104は、倉庫DB206に記憶された、対策部品の調達先の住所、部品倉庫40の住所、及び、輸送手段等の情報から、輸送業者の公知の情報に基づいて、輸送費Sを算出することができる。S(d)は、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入される場合における当該対策部品の倉庫保管費を示す。倉庫保管費S(d)は、対策部品が顧客に引き渡されるまでに掛かる部品倉庫40での保管費である。在庫管理部104は、倉庫DB206に記憶された保管費単価に対策部品の保管日数を乗算することによって、倉庫保管費S(d)を算出することができる。
【0066】
【数6】
【0067】
対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない場合の損益STotal_2は、数式7によって算出される。数式7において、Sは、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない場合における当該対策部品の輸送費を示す。数式7の輸送費Sは、数式6の輸送費Sと同じものである。SNS(d)は、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない場合における当該対策部品の倉庫保管費を示す。倉庫保管費SNS(d)は、対策部品が滅却されるまでに掛かる部品倉庫40での保管費である。在庫管理部104は、倉庫DB206に記憶された保管費単価に対策部品の保管日数を乗算することによって、倉庫保管費SNS(d)を算出することができる。SNDは、対策部品の事前調達が行われた後に当該対策部品が顧客に購入されない場合における当該対策部品の滅却費を示す。対策部品が顧客に購入されない場合、当該対策部品を滅却したり、部品倉庫40に戻入れしたりする必要があるので、在庫管理部104は、対策部品の滅却又は戻入れに掛かる費用を、滅却費SNDとして計上する。
【0068】
【数7】
【0069】
第2期待損益SNFは、数式8によって算出される。数式8において、Sは、対策部品の事前調達が行われずに当該対策部品が顧客に購入される場合における当該対策部品の売却益を示す。数式8の売却益Sは、数式6の売却益Sと同じものである。Sは、対策部品の事前調達が行われずに当該対策部品が顧客に購入される場合における当該対策部品の輸送費を示す。数式8の輸送費Sは、数式6の輸送費Sと同じものである。Sは、対策部品を緊急で調達するために通常よりも上乗せされる緊急処理費を示す。ps2は、対策部品の事前調達が行われずに当該対策部品が顧客に購入される確率である第2購入確率を示す。第2購入確率ps2は、対策部品の在庫が不足しているにも関わらず、次回の部品入荷日に対策部品が顧客に購入される確率である。第2購入確率ps2は、日数dの経過につれて対策部品の購入確率が下がるので日数dの関数である。在庫管理部104は、第2期待損益SNFを第2購入確率ps2に基づいて算出する。
【0070】
【数8】
【0071】
第2購入確率ps2は、数式9によって算出される。数式9において、qは、部品倉庫40において在庫が不足した対策部品の次回の部品入荷日を顧客が待ってくれる確率を示す。
【0072】
【数9】
【0073】
対策部品の事前調達を行うことによって期待される期待損益SECは、図13に示すように、対策部品が部品倉庫40に到着した後、倉庫保管費Sの増加又は第1購入確率pfpの変動によって、日数dの経過につれて下がっていく傾向にある。期待損益SECがゼロになる日を滅却基準日と称し、対策部品を滅却する時期の目安となる。滅却基準日を過ぎると、期待損益SECがマイナスになり、機械10を保守する側にとって損失となる可能性が高い。したがって、在庫管理部104は、滅却基準日を過ぎると、対策部品を滅却又は調達先へ返却する。
【0074】
ステップS7において、在庫管理部104は、算出された期待損益SECがゼロより大きいか否かを判定する。算出された期待損益SECがゼロより大きい場合(ステップS7:Yes)、在庫管理部104は、ステップS8に進む。算出された期待損益SECがゼロ以下の場合(ステップS7:No)、在庫管理部104は、対策部品の事前調達を行わないとして、図10に示す処理を終了する。
【0075】
ステップS8において、在庫管理部104は、対策部品の部品ID及び必要数量等のような事前調達に関する情報を部品倉庫40に送信して、対策部品の事前調達を行う。
【0076】
ステップS9において、影響度算出部105は、故障予測部101によって発生すると予測された故障における故障影響度を算出する。影響度算出部105は、故障影響度として、故障によって顧客が負担するコストを算出する。具体的には、影響度算出部105は、図14に示すように、事前調達が行われた対策部品を購入して故障が発生する前に修理する事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_1と、故障が発生した後に対策部品を購入して修理する事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_2と、を算出する。そして、影響度算出部105は、事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_1と、事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_2とに基づいて、事前修理が行われる場合の顧客のコストメリットCECを算出する。
【0077】
影響度算出部105は、故障によって顧客が負担するコストを、故障による機械10の稼働停止時間に基づいて算出する。機械10の稼働停止時間は、対策部品の調達先から部品倉庫40までの対策部品の輸送に要する時間である部品調達時間Twと、部品倉庫40から機械10の所在地までの対策部品の輸送に要する時間である部品輸送時間Ttと、対策部品を用いた故障の修理に要する時間である修理時間Trと、の少なくとも1つを含む。影響度算出部105は、故障・修理履歴DB203に記憶された対策部品を用いた過去の修理時間を抽出し、抽出された修理時間の平均値を算出することによって、修理時間Trを算出することができる。
【0078】
事前修理が行われる場合、機械10の稼働停止時間は、図15に示すように、修理時間Trだけを含む。事後修理が行われる場合、機械10の稼働停止時間は、修理時間Trの他、部品調達時間Tw及び部品輸送時間Ttを含む。
【0079】
事前修理が行われる場合、機械10の稼働停止時間に伴う損失である稼働停止損失Cは、数式10によって算出される。数式10において、Prは、工事プロジェクト全体の期待収益を示す。Aは、工事プロジェクト全体の掘削量を示す。Wは、対象の機械10の単位時間当たりの平均掘削量を示す。影響度算出部105は、現場情報DB207から、全体の期待収益Pr及び全体の掘削量Aを取得することができる。影響度算出部105は、機械情報DB202から、単位時間当たりの平均掘削量Wを取得することができる。
【0080】
【数10】
【0081】
事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_1は、数式11によって算出される。数式11において、Cは、対策部品の部品価格を示す。Cは、対策部品を用いて故障を修理する際の修理費を示す。影響度算出部105は、故障・修理履歴DB203から修理費Cを取得することができる。
【0082】
【数11】
【0083】
事後修理が行われる場合、機械10の稼働停止時間に伴う損失である稼働停止損失CNDは、数式12によって算出される。この場合、機械10の稼働停止時間は、部品調達時間Twと、部品輸送時間Ttと、修理時間Trとの合計になる。
【0084】
【数12】
【0085】
事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_2は、数式13によって算出される。
【0086】
【数13】
【0087】
事前修理が行われる場合の顧客のコストメリットCECは、数式14によって算出される。数式14において、pは、機械10の故障確率を示す。故障確率pは、故障予測部101によって推定される。
【0088】
【数14】
【0089】
影響度算出部105は、図16に示すように、事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_1と、事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_2とが日数の経過に伴って変動することを、グラフ形式等で出力することができる。図16には、販促プラン作成部106により設定される後述の販促期間及び販促価格も併せて記載されている。影響度算出部105が図16に示すグラフを出力することにより、顧客は、事前修理が行われる場合のコストメリットCECを把握し易くなる。
【0090】
ステップS10において、販促プラン作成部106は、販促プランを作成する。販促プラン作成部106は、故障予測部101により行われた故障予測の内容、対策部品特定部102により特定された対策部品の部品リスト、及び、影響度算出部105により算出された故障影響度を参照し、これらの情報に基づいて販促プランを自動的に作成する。販促プランは、故障予測部101により行われた故障予測の内容、対策部品特定部102により特定された対策部品の部品リスト、及び、影響度算出部105により算出された故障影響度を含む。更に、販促プランは、販促プラン作成部106により設定された対策部品の販促価格及び販促期間並びに注意事項を含む。
【0091】
販促プランの詳細について説明する。販促プランに含まれる故障予測の内容は、故障モード及び故障確率を含む。販促プランに含まれる部品リストは、対策部品の部品ID、部品名称、及び、数量を含む。販促プランに含まれる故障影響度は、事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_1、及び、事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストCTotal_2を含む。販促プランに含まれる注意事項は、販促価格で販売される対策部品が取り寄せ品であるので直ぐに納品できない場合があること、及び、販促期間後又は事故発生後に当該対策部品を購入すると速達コストが別途発生する場合があること、を含む。
【0092】
販促プランに含まれる対策部品の販促価格は、事前調達が行われる場合の対策部品の部品価格であり、通常価格よりも安い価格である。販促プランに含まれる当該部品の販促期間は、販促価格での当該部品の販売期間である。
【0093】
販促価格は、数式15によって算出される。数式15において、PSaleは、販促価格を示す。PNormalは、通常価格を示す。rdiscountは、通常価格に対する販促価格の値引き率を示す。値引き率rdiscountは、機械10を保守する側の部品調達の都合や、経営判断等を考慮して総合的に決定される。
【0094】
【数15】
【0095】
販促期間は、図17に示すように、顧客への販促プランの提示日d1から、予測される故障発生日d2までの期間において設定される。顧客への販促プランの提示日d1は、販促プランが端末装置50に送信された日であってもよい。予測される故障発生日d2は、故障予測部101によって推定された、当該部品に対応する故障モードの故障確率が最も高い日であってもよい。部品返送日d3は、部品倉庫40に到着した対策部品が購入されずに調達先に返送される日であってもよい。販促期間は、顧客への販促プランの提示日d1から、調達先から部品倉庫40への対策部品の到着予定日までの期間に設定されてもよい。通常価格での販売期間は、当該到着予定日から、部品返送日d3までの期間に設定されてもよい。部品返送日d3以降の部品価格は、対策部品の緊急処理費を含む速達コストを通常価格に上乗せした価格に設定されてもよい。また、販促期間の終了日は、機械10の保守作業員の作業計画に合わせて前後してもよい。
【0096】
ステップS11において、出力部107は、販促プラン作成部106により作成された販促プランを顧客に提示して、対策部品を購入する意思決定を顧客に要求する。具体的には、出力部107は、販促プランと、対策部品を購入する意思決定を顧客に要求する情報とを通信装置100bに出力する。通信装置100bは、当該意思決定を要求する情報を販促プランと併せて端末装置50に送信する。ステップS11の後、出力部107は、図10に示す処理を終了する。
【0097】
出力部107は、図18に示すように、販促プラン作成部106により作成された販促プランを、見積書のフォーマットに落とし込んで、電子ファイルの形式で通信装置100bに出力してもよい。なお、出力部107は、見積書のフォーマットに落とし込まれた販促プランを、通信装置100bを介して端末装置50に送信するのではなく、紙媒体の書類として顧客に郵送してもよい。また、出力部107は、販促プランを見積書以外のフォーマットに落とし込んでもよい。
【0098】
以上のように、実施形態1の機械保守支援システム1は、機械10の保守を支援するサーバ装置30を備えるシステムである。サーバ装置30は、機械10の顧客が使用する端末装置50との通信を行う通信装置100bと、演算処理装置100aと、を含む。演算処理装置100aは、機械10の故障が発生する前に機械10の故障確率を推定して機械10の故障予測を行う故障予測部101と、故障を修理するために必要な対策部品を特定する対策部品特定部102と、機械10の顧客から対策部品を受注する確率を示す受注確率を故障確率に基づいて算出する受注確率算出部103と、部品倉庫40において在庫が不足した対策部品を故障が発生する前に調達する事前調達を行うことによって期待される期待損益を受注確率に基づいて算出し、算出された期待損益に基づいて事前調達に関する情報を部品倉庫40に送信する在庫管理部104と、対策部品の調達に要する時間に基づいて、故障が顧客に与える経済的影響度を算出する影響度算出部105と、故障予測の内容、対策部品のリスト及び経済的影響度に基づき、対策部品の販促プランを作成する販促プラン作成部106と、販促プランを通信装置100bに出力する出力部107と、を有する。通信装置100bは、販促プランを端末装置50に送信する。
【0099】
すなわち、実施形態1の機械保守支援システム1は、機械10の故障を事前に予測し、対策部品が在庫不足の場合には、対策部品の事前調達を行うことによって期待される機械10を保守する側の期待損益を算出した上で、対策部品の事前調達を行うことができる。これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達を行うことによって機械10を保守する側に損失が発生することを抑制することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を行わせ易くすることができる。
【0100】
加えて、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達が行われないことに伴って機械10の稼働停止時間が長期化することを考慮して、故障が顧客に与える経済的影響度を算出することができる。これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、当該経済的影響度を過小評価することなく正確に算出することができる。したがって、実施形態1の機械保守支援システム1は、正確に算出された経済的影響度を含む販促プランを顧客に提示することができるので、故障発生前に修理することのメリットを顧客に理解させ易くすることができる。結果的に、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによる部品在庫確保のリスクを低減することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を行わせ易くすることができる。
【0101】
このように、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を促進することができるので、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を抑制することができる。
【0102】
更に、実施形態1の機械保守支援システム1において、影響度算出部105は、対策部品の調達先から部品倉庫までの対策部品の輸送に要する時間、部品倉庫40から機械10の所在地までの対策部品の輸送に要する時間、及び、対策部品を用いた故障の修理に要する時間の少なくとも1つを含む機械10の稼働停止時間に基づいて、故障によって顧客が負担するコストを算出する。影響度算出部105は、事前調達が行われた対策部品を購入して故障が発生する前に修理する事前修理が行われる場合に顧客が負担するコストと、故障が発生した後に対策部品を購入して修理する事後修理が行われる場合に顧客が負担するコストとに基づいて、事前修理が行われる場合の顧客のコストメリットを算出する。
【0103】
これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、故障が顧客に与える経済的影響度を更に正確に算出することができると共に、故障発生前に修理することのメリットを顧客に更に理解させ易くすることができる。したがって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによる部品在庫確保のリスクを更に低減することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0104】
更に、実施形態1の機械保守支援システム1において、在庫管理部104は、事前調達が行われた後に対策部品が顧客に購入される確率である第1購入確率、及び、事前調達が行われた後に対策部品が顧客に購入さない確率である第1非購入確率を、受注確率に基づいて算出すると共に、事前調達が行われずに当該部品が顧客に購入される確率である第2購入確率を算出する。在庫管理部104は、事前調達を行う場合の期待損益である第1期待損益を、第1購入確率及び第1非購入確率に基づいて算出し、事前調達を行わない場合の期待損益である第2期待損益を、第2購入確率に基づいて算出する。在庫管理部104は、算出された第1期待損益と第2期待損益との差分から、トータルの期待損益を算出する。
【0105】
これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達を行うことによって期待される機械10を保守する側の期待損益を更に正確に算出することができる。したがって、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達を行うことによって機械10を保守する側に損失が発生することを更に抑制することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0106】
更に、実施形態1の機械保守支援システム1において、在庫管理部104は、第1期待損益を、事前調達が行われた後に対策部品が購入される場合の対策部品の売却益、輸送費及び倉庫保管費の合計に対して第1購入確率が乗算された値と、事前調達が行われた後に対策部品が購入されない場合の対策部品の輸送費、倉庫保管費及び滅却費の合計に対して第1非購入確率が乗算された値と、の差分によって算出する。在庫管理部104は、第2期待損益を、事前調達が行われずに対策部品が購入される場合の対策部品の売却益、輸送費及び緊急処理費の合計に対して第2購入確率が乗算された値によって算出する。
【0107】
これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達を行うことによって期待される機械10を保守する側の期待損益を更に正確に算出することができる。したがって、実施形態1の機械保守支援システム1は、対策部品の事前調達を行うことによって機械10を保守する側に損失が発生することを更に抑制することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0108】
更に、実施形態1の機械保守支援システム1において、販促プラン作成部106は、事前調達が行われる場合の対策部品の価格を通常価格よりも安い販促価格に設定すると共に、販促価格での対策部品の販売期間である販促期間を設定する。販促プラン作成部106は、設定された販促価格及び販促期間を含む販促プランを作成する。
【0109】
これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、故障発生前に修理することのメリットを顧客に更に理解させ易くすることができる。したがって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによる部品在庫確保のリスクを更に低減することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0110】
更に、実施形態1の機械保守支援システム1において、出力部107は、対策部品を購入する意思決定を顧客に要求する情報を、通信装置100bに出力する。通信装置100bは、意思決定を要求する情報を販促プランと併せて端末装置50に送信する。
【0111】
これにより、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによる部品在庫確保のリスクを更に低減することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態1の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0112】
[実施形態2]
図19及び図20を用いて、実施形態2の機械保守支援システム1について説明する。実施形態2の機械保守支援システム1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0113】
実施形態2の演算処理装置100aは、故障予測部101により推定された故障確率に基づいて予測される故障の発生日までの期間が、対策部品の調達に要する時間よりも長い場合に、実施形態1の演算処理装置100aとは異なる処理を行う。
【0114】
図19は、実施形態2の演算処理装置100aの事前調達に関する処理を示すフローチャートである。図20は、実施形態2の販促プラン作成部106によって設定される販促期間及び販促価格の一例を示す図である。
【0115】
実施形態2の演算処理装置100aは、事前調達に関する処理として、図10に示すステップS1~ステップS7と同様の処理を行う。実施形態2の演算処理装置100aは、図10に示すステップS7がYesの場合には、図10に示すステップS8の処理を行わずに、図10に示すステップS9の処理を行う。その後、実施形態2の演算処理装置100aは、図10に示すステップS10及びステップS11の代わりに、図19に示すステップS21及びステップS22を行う。したがって、図19では、図10に示すステップS1~ステップS7及びステップS9の図示が省略されている。
【0116】
ステップS21において、実施形態2の販促プラン作成部106は、販促プランに含まれる対策部品の販促期間として、図20に示すように、第1販促期間を設定すると共に、第1販促期間よりも後に第2販促期間を設定する。実施形態2の販促プラン作成部106は、予測される故障発生日までに第2販促期間を設定する。そして、実施形態2の販促プラン作成部106は、第1販促期間での販促価格である第1販促価格を、第2販促期間での販促価格である第2販促価格よりも安い価格に設定する。第1販促期間は、例えば、顧客への販促プランの提示日d1から、部品確保限界日ddまでの期間に設定されてもよい。第2販促期間は、例えば、部品確保限界日ddから、予測される故障発生日d2までの期間に設定されてもよい。
【0117】
部品確保限界日ddは、数式16によって算出される。数式16において、Twは、部品調達時間である。
【0118】
【数16】
【0119】
実施形態2の販促プラン作成部106は、実施形態1の販促プランに含まれる情報の他、第1販促価格及び第1販促期間並びに第2販促価格及び第2販促期間を含めて、販促プランを作成する。更に、実施形態2の販促プラン作成部106は、第2販促期間で対策部品を購入する場合には、対策部品が機械10の所在地に到着する前に故障が発生するリスクがあることを示す注意事項を含めて、販促プランを作成する。
【0120】
ステップS22において、実施形態2の出力部107は、実施形態2の販促プラン作成部106により作成された販促プランを顧客に提示して、対策部品を購入する意思決定を顧客に要求する。具体的には、実施形態2の出力部107は、実施形態2の販促プラン作成部106により作成された販促プランと、対策部品を購入する意思決定を顧客に要求する情報とを通信装置100bに出力する。
【0121】
ステップS23において、実施形態2の在庫管理部104は、第1販促期間中に顧客から対策部品の発注があるか否かを判定する。第1販促期間中に顧客から対策部品の発注がある場合(ステップS23:Yes)、実施形態2の在庫管理部104は、ステップS24に進む。第1販促期間中に顧客から対策部品の発注がない場合(ステップS23:No)、実施形態2の在庫管理部104は、ステップS25に進む。
【0122】
ステップS24において、実施形態2の在庫管理部104は、対策部品の部品ID及び必要数量等のような事前調達に関する情報を部品倉庫40に送信して、対策部品の事前調達を行う。その後、在庫管理部104は、図19に示す処理を終了する。
【0123】
ステップS25において、実施形態2の在庫管理部104は、第2販促期間中に顧客から対策部品の発注があるか否かを判定する。第2販促期間中に顧客から対策部品の発注がある場合(ステップS25:Yes)、実施形態2の在庫管理部104は、ステップS24に進む。第2販促期間中に顧客から対策部品の発注がない場合(ステップS25:No)、実施形態2の在庫管理部104は、図19に示す処理を終了する。
【0124】
以上のように、実施形態2の機械保守支援システム1において、販促プラン作成部106は、第1販促期間を設定すると共に、第1販促期間よりも後に第2販促期間を設定する。販促プラン作成部106は、故障確率に基づいて予測される故障発生日までの期間が対策部品の調達に要する時間よりも長い場合、予測される故障発生日までに第2販促期間を設定する。販促プラン作成部106は、第1販促期間での販促価格である第1販促価格を、第2販促期間での販促価格である第2販促価格よりも安い価格に設定する。
【0125】
これにより、実施形態2の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定を確認してから事前調達を行い易くすることができると共に、故障発生前に修理することのメリットを顧客に更に理解させ易くすることができる。したがって、実施形態2の機械保守支援システム1は、修理に関する顧客の意思決定の不確かさによる部品在庫確保のリスクを更に低減することができるので、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態2の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0126】
[実施形態3]
図21を用いて、実施形態3の機械保守支援システム1について説明する。実施形態3の機械保守支援システム1において、実施形態1と同様の構成及び動作については、説明を省略する。
【0127】
実施形態1の受注確率算出部103は、或る故障モードで故障が発生した後に対策部品が顧客に購入される確率である部品購入確率pbiを、対策部品を用いた機械10の修理履歴、及び、対策部品の販売履歴に基づいて、算出していた。実施形態3の受注確率算出部103は、算出された部品購入確率pbiを、予め学習された対策部品の部品価格と部品購入確率pbiとの関係に基づいて調整する。そして、実施形態3の受注確率算出部103は、調整された部品購入確率pbiに基づいて、数式1から対策部品の受注確率を算出する。
【0128】
図21は、実施形態3の受注確率算出部103によって用いられる対策部品の部品価格と部品購入確率pbiとの関係の一例を示す図である。
【0129】
図21に示すように、通常、部品価格が安ければ安い程、部品購入確率pbiが高くなる。対策部品の部品価格と部品購入確率pbiとの関係は、販売履歴DB205に記憶された対策部品の部品価格と、販売履歴DB205に記憶された対策部品の部品販売日から集計される対策部品の購入回数とを用いて機械学習することができる。実施形態3の受注確率算出部103は、実施形態1と同様に算出された部品購入確率pbiを、図21に示すような対策部品の部品価格と部品購入確率pbiとの関係に基づいて調整することができる。
【0130】
これにより、実施形態3の機械保守支援システム1は、部品価格の変動による部品購入確率の変動を考慮して受注確率を算出することができるので、対策部品の事前調達を行うことによって期待される機械10を保守する側の期待損益を更に正確に算出することができる。したがって、実施形態3の機械保守支援システム1は、機械10を保守する側に対策部品の事前調達を更に行わせ易くすることができる。よって、実施形態3の機械保守支援システム1は、修理に必要な部品の事前調達を更に促進して、当該部品の在庫不足による機械の稼働停止時間の長期化を更に抑制することができる。
【0131】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記の実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、或る実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、或る実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0132】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路にて設計する等によりハードウェアによって実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアによって実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テープ、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(solid state drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0133】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0134】
1…機械保守支援システム、10…機械、30…サーバ装置、50…端末装置、100a…演算処理装置、101…故障予測部、102…対策部品特定部、103…受注確率算出部、104…在庫管理部、105…影響度算出部、106…販促プラン作成部、107…出力部、100b…通信装置
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