(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140885
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粒状物の強度推定装置、粒状物の強度推定方法、粒状物の製造方法及びコークスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/85 20060101AFI20241003BHJP
C10B 57/04 20060101ALI20241003BHJP
G01N 15/0227 20240101ALI20241003BHJP
G01N 15/00 20240101ALI20241003BHJP
G01N 33/22 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/85 Z
C10B57/04
G01N15/02 C
G01N15/00 Z
G01N33/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052245
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】本多 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 楓
(72)【発明者】
【氏名】大沢 直人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高男
(72)【発明者】
【氏名】園部 治
【テーマコード(参考)】
2G051
4H012
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB03
2G051BA10
2G051CA03
2G051CB01
2G051DA06
2G051EA08
2G051EA12
2G051EA16
2G051EB01
2G051EC03
2G051ED21
4H012MA01
(57)【要約】
【課題】オンラインで粒状物の強度を推定できる粒状物の強度推定装置及び強度推定方法を提供する。
【解決手段】コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度を推定する粒状物の強度推装置であって、搬送方向に異なる複数の位置における粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサ24と、画像処理装置26と、を備え、画像処理装置26は、ラインセンサ24によって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部36と、3次元形状データを用いて粒状物の大きさの指標を求めるとともに当該指標を用いて粒状物の強度を推定する強度推定部38と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度を推定する粒状物の強度推定装置であって、
搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサと、
画像処理装置と、を備え、
前記画像処理装置は、前記ラインセンサによって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部と、
前記3次元形状データを用いて前記粒状物の大きさの指標を求めるとともに、前記指標を用いて前記粒状物の強度を推定する強度推定部と、
を有する、粒状物の強度推定装置。
【請求項2】
前記指標は、前記粒状物の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である、請求項1に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項3】
前記3次元形状作成部は、前記3次元形状データにおける欠損データを補完する、請求項1に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項4】
前記3次元形状作成部は、前記3次元形状データにおける欠損データを補完する、請求項2に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項5】
前記強度推定部は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて、前記3次元形状データにおける粒状物の境界を特定する、請求項1に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項6】
前記強度推定部は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて、前記3次元形状データにおける粒状物の境界を特定する、請求項2に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項7】
前記強度推定部は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて、前記3次元形状データにおける粒状物の境界を特定する、請求項3に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項8】
前記強度推定部は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて、前記3次元形状データにおける粒状物の境界を特定する、請求項4に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項9】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項1に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項10】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項2に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項11】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項3に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項12】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項4に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項13】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項5に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項14】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項6に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項15】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項7に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項16】
前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、請求項8に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項17】
前記粒状物は成型炭である、請求項1から請求項16のいずれか一項に記載の粒状物の強度推定装置。
【請求項18】
コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度を推定する粒状物の強度推定方法であって、
搬送方向に異なる複数の位置における粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインプロファイルデータ作成ステップと、
複数の前記ラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成する3次元形状作成ステップと、
前記3次元形状データを用いて前記粒状物の大きさの指標を求めるとともに前記指標を用いて粒状物の強度を推定する強度推定ステップと、
を有する、粒状物の強度推定方法。
【請求項19】
前記指標は、前記粒状物の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である、請求項18に記載の粒状物の強度推定方法。
【請求項20】
前記コンベアによって前記粒状物は一定の速度で搬送される、請求項18又は請求項19に記載の粒状物の強度推定方法。
【請求項21】
請求項18又は請求項19に記載の粒状物の強度推定方法で前記粒状物の強度を推定し、推定された前記粒状物の強度が予め定められた目標値以上になるように前記粒状物の製造条件を調整する、粒状物の製造方法。
【請求項22】
請求項20に記載の粒状物の強度推定方法で前記粒状物の強度を推定し、推定された前記粒状物の強度が予め定められた目標値以上になるように前記粒状物の製造条件を調整する、粒状物の製造方法。
【請求項23】
請求項21に記載の粒状物の製造方法で成型炭を製造し、前記成型炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【請求項24】
請求項22に記載の粒状物の製造方法で成型炭を製造し、前記成型炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度をオンラインで推定できる粒状物の強度推定装置、粒状物の強度推定方法、当該粒状物の強度推定方法を用いる粒状物の製造方法及びコークスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品を製造する原料として、石炭は重要な役割を果たす。石炭はコークス炉におけるコークス製造の原料として用いられる。コークスは鉄鉱石の還元材として使用される。現在、コークスの製造に必要となる粘結炭は世界的に枯渇傾向にあり、良質な粘結炭をコークスの製造に用いることは大幅なコスト増につながる。低品位な石炭を用いて高強度のコークスを製造するには、コークス炉に装入する前に低品位な石炭を成型して成型炭にし、当該成型炭をコークス炉に装入して乾留する必要がある。
【0003】
成型炭に関してはその強度が重要な要素の1つとなる。その理由は、強度の低い成型炭を用いると、搬送中の振動や衝撃によってコークス炉に装入する前に成型炭が容易に破壊されてしまい、高強度のコークスが製造できなくなるからである。このため、コークスの製造では高強度のコークスが製造されるように、コークス炉への搬送ラインから定期的に成型炭を抜き取って成型炭の強度を測定している。成型炭の強度としては、成型炭を所定の高さから落下させる落下試験を実施し、落下後の成型炭を篩にかけて、篩上に残った成型炭の質量割合(質量%)であるシャッター強度が用いられる。
【0004】
落下試験を用いる強度の測定方法は、測定結果が得られるまでに相当の時間を必要とする。このため、成型炭の製造条件の変動により成型炭の強度が低下した場合に、その強度低下が検出されるまでに多量の強度の低い成型炭が製造されてしまう。成型炭の強度低下を迅速に検出するには、成型炭の強度をオンラインで測定することが必要になる。オンラインで粒状原料を測定する技術として、特許文献1には、運搬経路上を移動する粒状原料を撮像した画像データにおける各粒子と撮像部との間の距離を測定し、当該距離に基づいて粒状原料の粒径を算出する粒径算出手段とを有する粒径測定装置が開示されている。特許文献1によれば、当該粒径測定装置を用いることで、運搬経路上を移動する粒状原料の粒径がオンラインで測定できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されているのは、粒状原料の粒径をオンラインで測定する粒径測定装置であって、粒状原料の強度を測定する装置ではない。成型炭の強度変化を迅速に検出するには、オンラインで成型炭の強度を検出できる装置が求められるところ、特許文献1にはそのような装置が開示されていないという課題があった。本発明はこのような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、オンラインで粒状物の強度を推定できる粒状物の強度推定装置、強度推定方法、当該粒状物の強度推定方法を用いる粒状物の製造方法及びコークスの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度を推定する粒状物の強度推定装置であって、搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサと、画像処理装置と、を備え、前記画像処理装置は、前記ラインセンサによって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部と、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の大きさの指標を求めるとともに、前記指標を用いて前記粒状物の強度を推定する強度推定部と、を有する、粒状物の強度推定装置。
[2] 前記指標は、前記粒状物の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である、[1]に記載の粒状物の強度推定装置。
[3] 前記3次元形状作成部は、前記3次元形状データにおける欠損データを補完する、[1]又は[2]に記載の粒状物の強度推定装置。
[4] 前記強度推定部は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて、前記3次元形状データにおける粒状物の境界を特定する、[1]から[3]のいずれかに記載の粒状物の強度推定装置。
[5] 前記強度推定部は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを用いて前記3次元形状データにおけるノイズを除去する、[1]から[4]のいずれかに記載の粒状物の強度推定装置。
[6] 前記粒状物は成型炭である、[1]から[5]のいずれかに記載の粒状物の強度推定装置。
[7] コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度を推定する粒状物の強度推定方法であって、搬送方向に異なる複数の位置における粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインプロファイルデータ作成ステップと、複数の前記ラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成する3次元形状作成ステップと、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の大きさの指標を求めるとともに前記指標を用いて粒状物の強度を推定する強度推定ステップと、を有する、粒状物の強度推定方法。
[8] 前記指標は、前記粒状物の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である、[7]に記載の粒状物の強度推定方法。
[9] 前記コンベアによって前記粒状物は一定の速度で搬送される、[7]又は[8]に記載の粒状物の強度推定方法。
[10] [7]から[9]のいずれかに記載の粒状物の強度推定方法で前記粒状物の強度を推定し、推定された前記粒状物の強度が予め定められる強度以上になるように前記粒状物の製造条件を調整する、粒状物の製造方法
[11] [10]に記載の粒状物の製造方法で成型炭を製造し、前記成型炭を乾留してコークスを製造する、コークスの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る粒状物の強度推定装置及び強度推定方法の実施により、コンベア上に積載されて搬送される粒状物の強度をオンラインで推定できる。これにより、製造条件の変動による粒状物の強度変化を迅速に検出できる。粒状物が成型炭である場合には、成型炭の製造条件の変動により成型炭の強度が低下した場合であっても、成型炭の強度の低下を迅速に検出でき、当該強度低下に迅速に対応できる。これにより、成型炭の強度低下が抑制され、当該成型炭を用いてコークスを製造することで、高強度のコークスの製造が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、成型炭が製造されてコークス炉に装入されるまでの工程を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置22を示す模式図である。
【
図3】
図3は、画像処理装置26の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、欠損データが発生する状況を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、欠損データの補完処理方法の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、補完処理前後の成型炭16の3次元形状画像である。
【
図7】
図7は、極小値探索法により成型炭の境界を特定する処理を説明するグラフである。
【
図8】
図8は、成型炭の境界を特定する処理による3次元形状データの変化を示す画像である。
【
図9】
図9は、本実施形態に係る粒状物の強度推定方法の一例を示すフロー図である。
【
図10】
図10は、実施例1における成型炭の落下試験を説明する模式図である。
【
図11】
図11は、成型炭の大きさを示す指標と成型炭の強度を示す指標との相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る粒状物の強度推定装置及び粒状物の強度推定方法を説明する。なお、以下の実施形態では、粒状物が成型炭である例を用いて説明するが、粒状物は成型炭に限らず、粒状物を搬送するコンベア等の搬送手段の振動や衝撃によって形状が変わる粒状物であれば本発明を適用できる。
【0011】
図1は、成型炭が製造されてコークス炉に装入されるまでの工程を示す模式図である。低品位の石炭である原料炭10は、混合機12によりバインダーを含む複数の材料と混合される。混合機12で混合された混合原料は、成型機14でブリケット形状の成型炭16に成型される。成型炭16は、コンベア18上に積載されてコークス炉20に向けて搬送される。成型炭16は、コークス炉20の装炭孔から装入されて乾留され、コークスが製造される。なお、
図1には、成型機14とコークス炉20との間に1つのコンベア18しか示していないが、実際には、複数のコンベア18を乗り継いで、成型炭16はコークス炉20に搬送される。
【0012】
図2は、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置22を示す模式図である。
図2に示すように、粒状物の強度推定装置22は、コンベア18の近傍に設けられる。粒状物の強度推定装置22は、ラインセンサ24と、画像処理装置26とを備える。ラインセンサ24は、例えば、レーザー距離計である。
【0013】
ラインセンサ24は、コンベア18の上方に設けられる。ラインセンサ24は、コンベア18によって一定の速度で搬送される成型炭16にコンベア18の幅方向に沿ったライン状のレーザー光を連続的に照射して、反射光をCMOS等の撮像素子に結像させる。ラインセンサ24は、撮像素子に結像された画像データを用いて、コンベア18の幅方向であって、搬送方向に異なる複数の位置の成型炭16の高さ情報を含むラインプロファイルデータを作成する。ラインセンサ24は、作成した複数のラインプロファイルデータを画像処理装置26に出力する。
【0014】
画像処理装置26は、ラインセンサ24によって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、成型炭16の3次元形状データを作成する。なお、3次元形状データに欠損データが含まれる場合には、画像処理装置26は、当該欠損データを補完することが好ましい。
【0015】
画像処理装置26は、成型炭16の3次元形状データを用いて、成型炭16の大きさの指標を算出する。成型炭16の大きさの指標とは、成型炭16の体積、投影面積、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である。ここで、成型炭16の粒径とは、ヘイウッド径又は成型炭16の大きさを矩形形状で近似した場合の縦横平均値である。成型炭16の大きさの指標を求めるにあたり、画像処理装置26は、3次元形状データにおける成型炭16の境界を特定したり、3次元形状データを二値化処理したり、3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。
【0016】
画像処理装置26は、算出した成型炭16の大きさの指標と、予め実験等により求めておいた成型炭16の大きさの指標と成型炭16の強度との対応関係を示す相関式とを用いて、成型炭16の強度を推定する。このようにして、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置22は、コンベア18上に積載されて搬送される成型炭16の強度をオンラインで推定する。
【0017】
図3は、画像処理装置26の構成例を示す模式図である。画像処理装置26は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。画像処理装置26は、制御部28と、入力部30と、出力部32と、記憶部34とを有する。制御部28は、例えば、CPU等であって、記憶部34から読み込んだプログラムを実行することにより、制御部28を3次元形状作成部36及び強度推定部38として機能させる。
【0018】
入力部30は、例えば、キーボード、ディスプレイと一体的に設けられたタッチパネル等である。出力部32は、例えば、LCDまたはCRTディスプレイ等である。記憶部34は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。記憶部34には、制御部28が各機能を実行するためのプログラムや当該プログラムが使用するデータ等が格納されている。
【0019】
次に、3次元形状作成部36、強度推定部38が実行する処理について説明する。3次元形状作成部36は、ラインセンサ24から複数のラインプロファイルデータを取得する。3次元形状作成部36は、複数のラインプロファイルデータに含まれる高さ情報をグレイスケールにおける256階調の輝度値に換算するとともに、輝度値に換算した複数のラインプロファイルデータを搬送方向に並べることで成型炭16の3次元形状データを作成する。3次元形状作成部36は、搬送方向の長さが0.5m以上4.0m以下になる数のラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成することが好ましい。
【0020】
ラインセンサ24から取得されるラインプロファイルデータには欠損データが含まれる場合がある。
図4は、欠損データが発生する状況を説明する模式図である。ラインセンサ24は、成型炭16にライン状のレーザー光を照射し、成型炭16によって反射される反射光を撮像素子に結像させることでラインプロファイルデータを作成する。
図4(a)に示すように、成型炭16の表面の状態(例えば、表面の光沢の度合い)によっては成型炭16からの反射光が結像しない部位が生じ、当該部位が欠損データとなる。また、
図4(b)に示すように、ラインセンサ24ではレーザー光を照射する位置と、反射光を受光する位置が異なるので、反射光の一部が成型炭16に遮られて、反射光が結像しない部位が生じ、当該部位が欠損データとなる。
【0021】
ラインプロファイルデータに欠損データが含まれる場合、これらデータから作成される3次元形状データにも欠損データが含まれる。3次元形状データに欠損データが含まれると、当該3次元形状データを用いて、成型炭16の大きさ及び数を測定する際、その測定精度が低下する。このため、3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データに含まれる欠損データを補完することが好ましい。
【0022】
図5は、欠損データの補完処理の一例を示す説明図である。3次元形状作成部36は、例えば、左から右に、上から下に3次元形状データをラスタースキャンし、欠損データを検出したら、その周囲8個の画素の平均輝度値で補完する。
図5に示した例では、3次元形状作成部36は、欠損データである画素0を、画素0の周囲の8画素(
図5における画素1~8)のうち欠損データではない画素1~4の平均輝度値で補完する。なお、画素0の右側の画素5も欠損データであるが、画素5の欠損データの補完には、画素1~4の平均輝度値で補完された画素0の輝度値も用いる。3次元形状作成部36は、このような欠損データの補完処理を3次元画像データに対して実行する。
【0023】
図6は、補完処理前後の成型炭16の3次元形状画像である。
図6(a)は、欠損データ補完処理前の成型炭16の3次元形状画像である。
図6(b)は、欠損データ補完処理後の成型炭16の3次元形状画像である。上記補完処理により、
図6(a)の3次元形状画像において散見された欠損データが自然な形で補完でき、
図6(b)に示したような欠損データを含まない3次元形状データにすることができる。
【0024】
なお、
図5に示した例では、欠損データの周囲の画素の8画素のうち欠損データではない画素の平均輝度値で補完する例を示したが、これに限らない。3次元形状作成部36は、欠損データの周囲8画素の中央輝度値、最小輝度値又は最大輝度値で補完してもよく、欠損データの周囲8画素の最大輝度値及び最小輝度値を除いた平均輝度値や中央輝度値で補完してもよい。また、異常値を排除する目的で、過去の実績から輝度値の範囲を予め設定し、設定された範囲内の画素の平均値や中央値を用いて欠損データを補完してもよい。さらに、ラスタースキャンの順序も左から右に、上から下に限らず、右左方向及び上下方向の4つの組み合わせの何れかの順でスキャンしてもよい。
【0025】
3次元形状作成部36は作成した成型炭16の3次元形状データを強度推定部38に出力する。強度推定部38は、3次元形状データを用いて成型炭16の大きさ及び数を測定し、これらを用いて成型炭16の大きさを示す指標を算出するが、その前に、3次元形状データに対し、成型炭16の境界を特定したり、3次元形状データを二値化処理したり、3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。これにより、3次元形状データを用いて成型炭16の大きさ及び数を測定する際に、その測定精度を向上させることができる。以下、これらの処理について説明する。
【0026】
まず、成型炭16の境界を特定する境界特定処理について説明する。
図7は、極小値探索法により成型炭の境界を特定する処理を説明するグラフである。
図7(a)は谷の検出方法を示すグラフであり、
図7(b)は段差の検出方法を示すグラフである。強度推定部38は、
図7(a)に示すように、3次元形状データ中の注目画素の輝度値が「右傾き≧0、左傾き≦0」且つ「(右傾き-左傾き)≧閾値」を満たした場合に、当該注目画素が谷であると検出する。また、強度推定部38は、注目画素の近傍の画素の輝度値の差が閾値よりも大きい場合に当該注目画素が段差であると検出する。強度推定部38は、検出した谷及び段差の注目画素が成型炭16の境界画素であると特定し、当該画素の輝度値を「0」に変更する。以下、成型炭16の境界画素の輝度値を「0」に変更する処理を「ゼロ埋め」と記載する。
【0027】
図8は、成型炭の境界を特定する処理による3次元形状データの変化を示す画像である。強度推定部38は、
図8(a)に示した処理前画像に対応した3次元形状データに対して縦方向に走査して成型炭16の境界画素を検出し、当該画素のゼロ埋めを実行する。この縦方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状画像が
図8(b)である。同様に、強度推定部38は、
図8(a)に示す処理前画像に対応した3次元形状データに対して横方向に走査して成型炭16の境界画素を検出し、当該画素のゼロ埋めを実行する。この横方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状画像が
図8(c)である。
【0028】
強度推定部38は、
図8(b)、(c)の画像を「OR演算」で合成して、縦方向及び横方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状データを作成する。この3次元形状データに対応する3次元形状画像が
図8(d)である。このように、成型炭16の境界を特定する境界特定処理を実施することで、成型炭16の境界が明確になり、その後に実行する成型炭16の大きさ及び個数の測定精度が向上する。なお、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置22では、強度推定部38が極小値探索法を用いて成型炭16の境界を特定する例を示したが、これに限らない。強度推定部38は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて成型炭16の境界を特定してもよい。
【0029】
例えば、Cannyエッジ抽出法で成型炭16の境界を検出する場合、3次元形状作成部36は、ガウシアンフィルタで平滑化した3次元形状データをソーベルフィルタなどで微分処理し、その後、ヒステリシスを用いた閾値処理により成型炭16の境界である否かを判断する。また、3次元形状作成部36は、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタで3次元形状データを処理し、その後、閾値処理により成型炭16の境界を特定してもよい。このように、成型炭16の境界を特定して当該境界画素をゼロ埋めすることで、その後に実施する成型炭16の大きさ及び個数の測定精度が向上する。
【0030】
次に、二値化処理について説明する。強度推定部38は、
図8(d)に示したゼロ埋め画像に対応した3次元形状データを二値化処理することが好ましい。二値化に用いる閾値は、予め定められて記憶部34に格納されている。このように、3次元形状データを二値化処理することで、その後に実施する成型炭16の大きさ及び個数の測定精度が向上する。
【0031】
次に、ノイズ除去処理について説明する。強度推定部38は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを1回以上実施して、二値化処理後の3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。このようにノイズを除去することで、その後に実施する成型炭16の大きさ及び個数の測定精度が向上する。
【0032】
強度推定部38は、ノイズを除去した二値化処理後の3次元形状データに対してwatershedによる領域分割を実施する。これにより、成型炭16同士の重なりを排除でき、それぞれの成型炭16の大きさを測定できるようになる。強度推定部38は、領域分割された3次元形状データを用いて、3次元形状データに含まれる成型炭16の大きさ及び数を測定する。その後、強度推定部38は、測定された成型炭16の大きさ及び数を用いて、成型炭16の大きさを示す指標を算出する。本実施形態において成型炭16の大きさを示す指標とは、成型炭16の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差である。
【0033】
強度推定部38は、成型炭16の大きさを示す指標を算出すると、当該指標と成型炭16の強度との対応関係を示す相関式を記憶部34から読み出す。なお、成型炭16の大きさを示す指標と成型炭16の強度との相関式は、予め実験等により求められて記憶部34に格納されている。
【0034】
強度推定部38は、算出した指標と、記憶部34から読み出した相関式とを用いて、成型炭16の強度を算出する。このようにして算出された成型炭16の強度が、成型炭16の強度の推定値となる。強度推定部38は、推定した成型炭16の強度を出力部32に表示させる。オペレータは出力部32に表示された成型炭16の強度を視認することで、成型炭16の強度の推定値を把握できる。
【0035】
なお、成型炭16の大きさを示す指標を2つ以上用いる場合には、以下に示す(1)式を用いて合算指標を算出してもよい。
【0036】
成型炭の大きさを示す指標=a1×T1+a2×T2+・・・+an×Tn・・・(1)
上記(1)式において、T1、T2、・・・、Tnは成型炭16の大きさを示す指標であり、a1、a2、・・・、anはパラメータである。これらのパラメータは、重回帰式のパラメータと同様に、成型炭16の大きさを示す指標の過去の実績データのデータセットを用いて求めることができる。
【0037】
さらに、成型炭16の大きさを示す指標を2つ用いる場合には、以下に示す(2)式を用いて指標を算出してもよい。
【0038】
成型炭の大きさを示す指標=(1-α)×T1+α×T2・・・(2)
上記(2)式において、T1、T2は成型炭16の大きさを示す指標であり、αは0<α<1の範囲内の値であって、過去の実績値を用いた確認で、より決定係数(R2)が高くなる値に定められる。
【0039】
上記(1)、(2)式で成型炭の大きさを示す指標を求める場合、T1、T2、・・・、Tnの寄与度を同じにするため、T1、T2、・・・、Tnは以下に示す(3)式を用いて正規化した値を用いる。
【0040】
Vnorm=(V-Vmin)/(Vmax-Vmin)・・・(3)
【0041】
上記(3)式において、Vnormは正規化した値であり、Vは成型炭16の大きさを示す指標の平均値であり、Vminは当該指標の最小値であり、Vmaxは当該指標の最大値である。
【0042】
また、上記(2)式において、αは固有値として最適値を求めてもよいが、例えば、T1が成型炭の体積の平均値であり、T2が成型炭の投影面積の平均値である場合には、予め測定された平均高さを、上記(3)式を用いて正規化した値hnormを用いて、以下に示す(4)式のような関数としてαを求めてもよい。
【0043】
α=β×hnorm・・・(4)
T1が成型炭の体積の平均値であり、T2が成型炭の投影面積の平均値である場合には、上記(2)式に代えて以下に示す(5)式を用いて成型炭の大きさを示す指標を算出してもよい。なお、βはαの決定係数(R2)が最も高くなる値に定められる。
【0044】
成型炭の大きさを示す指標=αT1+(1-α)×T2・・・(5)
(2)式と(5)式のうち、過去の実績値を用いた確認で、より決定係数(R2)が高くなる方の式を用いればよい。
【0045】
図9は、本実施形態に係る粒状物の強度推定方法の一例を示すフロー図である。次に、
図9を用いて、本実施形態に係る粒状物の強度推定方法を説明する。
図9に示すフローは、例えば、粒状物の強度推定装置22が立ち上げられ、画像処理装置26の入力部30から成型炭16の強度の推定開始を指示する入力を受け付けることで開始される。
【0046】
ラインセンサ24は、ラインプロファイルデータ作成ステップを実行して、成型炭16にコンベア18の幅方向に沿ったライン状のレーザー光を照射し、搬送方向に異なる複数の位置における成型炭16の高さ情報を含むラインプロファイルデータを作成する(ステップS101)。ラインセンサ24は作成したラインプロファイルデータを画像処理装置26の3次元形状作成部36に出力する。
【0047】
3次元形状作成部36は、3次元形状作成ステップを実行して、搬送方向に異なる複数の位置のラインプロファイルデータを用いて成型炭16の3次元形状データを作成する(ステップS102)。なお、3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データに含まれる欠損データを補完することが好ましい。3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データを強度推定部38に出力する。
【0048】
強度推定部38は、3次元形状データを用いて成型炭16の大きさの指標として、成型炭16の体積、投影面積、周長、縦横長さ及び粒径のうちの少なくとも1つの最大値、最小値、平均値、分散値又は標準偏差を算出する(ステップS103)。なお、強度推定部38は、成型炭16の大きさの指標を算出するにあたり、成型炭16の境界を特定する境界特定処理、二値化処理及びノイズ除去処理を実行することが好ましい。
【0049】
強度推定部38は、成型炭16の大きさの指標を算出すると、予め記憶部34に格納されている成型炭16の大きさの指標と成型炭16の強度との対応関係を示す相関式を読み出す。強度推定部38は、成型炭16の大きさの指標と、相関式とを用いて成型炭16の強度を推定する(ステップS104)。このステップS103及びステップS104の処理が、粒状物の強度推定方法における強度推定ステップに相当する。
【0050】
強度推定部38は、推定した成型炭16の強度を出力部32に表示する(ステップS15)。これにより、オペレータは、コンベア上に積載されて搬送される成型炭16の強度を視認できる。その後、強度推定部38は、入力部30を介して成型炭16の強度の推定終了を指示する入力が受け付けられているか否かを判断する(ステップS106)。強度推定部38は、当該入力が受け付けられている場合に、終了指示有りと判断し(ステップS106:Yes)、
図9に示したフローを終了させる。一方、成型炭16の強度推定の終了を示す入力がされていない場合に、終了指示無しと判断し(ステップS106:No)、処理をステップS101に戻して、再び、ステップS101からの処理を繰り返し実行する。
【0051】
このように、本実施形形態に係る粒状物の強度推定装置22及び粒状物の強度推定方法を用いることで、コンベア18上に積載されて搬送される成型炭16の強度をオンラインで推定できるようになる。これにより、何らかの製造条件の変動により成型炭の強度が低下した場合に、この強度低下を迅速に検出でき、成型炭の強度が予め定められた目標値以上になるように成型炭の製造条件を調整することができる。成型炭の製造条件の調整として、例えば、成型炭の材料に添加するバインダーを増量する。これにより、成型炭16の強度を予め定められた目標値以上に維持できる。そして、この成型炭16を用いてコークスを製造することで、高強度のコークスの製造が実現できる。
【0052】
本実施形態に係る粒状物の強度推定装置及び粒状物の強度推定方法は、コンベア18等の搬送手段による振動や衝撃による粒状物の大きさの変化と、当該粒状物の強度とに相関関係があることを見出し、当該相関関係を利用して粒状物の強度を推定するものである。従って、粒状物は成型炭16に限らず、粒状物を搬送する搬送手段の振動や衝撃によって形状が変わる粒状物であれば、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置及び粒状物の強度推定方法を適用できる。
【0053】
また、成型炭16は、搬送手段であるコンベア18によって一定速度で搬送されることが好ましい。一定速度で成型炭16が搬送されれば、一定の間隔でラインプロファイルデータを作成することで、搬送方向に規則的な間隔のラインプロファイルデータが作成できる。このように規則的な間隔でラインプロファイルデータが作成されれば、3次元形状作成部36により作成される成型炭16の3次元形状データの作成精度が向上する。
【実施例0054】
<実施例1>
図2に示した粒状物の強度推定装置22を用いて、落下試験後の成型炭の数を測定した実施例1を説明する。
図10は、実施例1における成型炭の落下試験を説明する模式図である。
図10(a)、(b)に示すように、高さ2mの位置から1~3回の落下試験を実施した。その後、成型炭を篩(目開き径15×15mm)で篩分けし、篩上に篩分けられた成型炭を、コンベアを模擬した移動ステージ上に載せ、粒状物の強度推定装置22を用いて成型炭の数を測定した。使用したラインセンサの幅方向の撮像分解能は0.3mm/pixelであり、搬送方向の撮像分解能は0.4mm/pixelであり、移動ステージの移動速度は200mm/secである。また、作成した3次元画像データに対し、欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した。下記表1に成型炭の数の測定結果を示す。
【0055】
【0056】
上記表1において、1-1~1-5、2-1~2-5、3-1~3-5の行は、移動ステージ上のサンプルを並び替えて5回測定したそれぞれの結果を示す。「成型炭個数」の列は、粒状物の強度推定装置22によって測定された成型炭の数を示す。また、「実測個数」の列は、目視により計測した成型炭の数を示す。表1に示すように、成型炭個数と実測個数とがほぼ同数になっており、本実施形態に係る粒状物の強度推定装置22によって高い精度で成型炭の個数が測定できることが確認された。
【0057】
<実施例2>
次に、成型炭の製造ラインのコンベア上で、
図2に示した粒状物の強度推定装置22を用いて、成型炭の強度を推定した実施例2を説明する。撮像分解能が縦横ともに0.3mm/pixelのラインセンサを用いて、50m/minの速度で搬送するコンベアの上に3段程度に積載された成型炭のラインプロファイルデータを作成した。なお、測定前に成型炭を積載させていないコンベアのプロファイルデータを作成することで、高さのゼロレベルを設定した。
【0058】
作成したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した上で成型炭の大きさ及び数を測定し、これらの測定結果を用いて、成型炭の大きさを示す指標として、成型炭の体積の平均値、径の平均値、投影面積の平均値、周長の平均値を算出した。また、上記指標を算出した成型炭に対して落下試験を実施し、落下試験後の成型炭を篩(目開き15mm×15mm)で篩分けし、篩上に篩分けられた成型炭の1個当たりの平均質量(残存した成型炭の総質量を成型炭の数で除した値)を成型炭の強度の指標とした。なお、この成型炭の強度指標は、従来から用いられているシャッター強度と同様に、落下試験後に篩上に篩分けられた成型炭の質量を用いる強度指標であってシャッター強度と同じ傾向を示す強度指標である。この成型炭の強度の指標と、成型炭の大きさを示す指標との相関関係を確認した。
【0059】
図11は、成型炭の大きさを示す指標と成型炭の強度を示す指標との相関関係を示すグラフである。
図11(a)は、成型炭の体積の平均値と、成型炭の強度との相関関係を示すグラフであり、
図11(b)は、成型炭の径の平均値と、成型炭の強度との相関関係を示すグラフである。また、
図11(c)は、成型炭の投影面積の平均値と、成型炭の強度との相関関係を示すグラフであり、
図11(d)は、成型炭の周長の平均値と、成型炭の強度との相関関係を示すグラフである。これらのグラフの横軸は、成型炭1個当たりの平均質量(g)であって、成型炭の強度を示す指標である。グラフの縦軸は最大値で規格化した成型炭の大きさを示す指標(-)である。なお、単位(-)は無次元であることを示す。
【0060】
図11(a)~(d)に示すように、成型炭の体積、径、投影面積、周長の平均値と、成型炭の強度の指標である成型炭1個当たりの平均質量との決定係数(R
2)はいずれも0.89以上になり、成型炭の強度との高い相関関係が確認された。これらの結果から、
図11(a)~(d)に示した相関式を予め求めて記憶部34に格納しておけば、上記成型炭の大きさを示す指標と当該相関式とを用いることで、高い精度で成型炭の強度を推定できることがわかる。
【0061】
一方、比較例1として、ラインセンサに代えて撮像分解能が縦横ともに0.25mm/pixelのエリアカメラで撮像された画像データを解析して成型炭の大きさ及び数を測定し、これらの測定結果を用いて、成型炭の投影面積の平均値を算出した。この投影面積の平均値と、上記成型炭の強度の指標である成型炭1個当たりの平均質量との決定係数(R2)を算出した所0.08であった。エリアカメラで撮像された画像データでは成型炭の境界が特定しづらく、このため、成型炭の大きさ及び数の測定精度が低くなり、この結果、成型炭の大きさを示す指標である成型炭の投影面積と、成型炭の強度との決定係数が著しく小さくなったものと考えられる。
【0062】
<実施例3>
次に、成型炭の製造ラインのコンベア上で、
図2に示した粒状物の強度推定装置22を用いて、成型炭の強度を推定した実施例3を説明する。撮像分解能が縦横ともに0.3mm/pixelのラインセンサを用いて、50m/minの速度で搬送するコンベアの上に4~5段程度に積載された成型炭のラインプロファイルデータを取得した。なお、測定前に成型炭を積載させていないコンベアのプロファイルデータを取得することで、高さのゼロレベルを設定した。
【0063】
取得したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した上で成型炭の大きさ及び数を測定し、これらの測定結果を用いて、成型炭の体積及び投影面積を算出した。実施例3では、上記(3)式を用いて正規化した成型炭の体積の平均値と、上記(3)式を用いて正規化した成型炭の投影面積の平均値を用い、上記(4)式においてβ=1とし、上記(5)式を用いてこれら2つを組み合わせた値を成型炭の大きさを示す指標として用いた。
【0064】
成型炭の体積の平均値と、成型炭1個当たりの平均質量との決定係数(R2)を算出した所0.75であった。また、成型炭の投影面積の平均値と、成型炭1個当たりの平均質量との決定係数(R2)を算出した所0.87であった。一方、上記(2)式を用いてこれら2つを組み合わせた値と、成型炭1個当たりの平均質量との決定係数(R2)を算出した所0.88となった。このように、2つの指標を適切な割合で組み合わせることで、個別の指標よりも成型炭の強度との相関を高められることが確認された。
【0065】
また、実施例3では、粒状物の強度推定装置22によって成型炭の強度低下が検出された場合には、原料炭に添加するバインダーを増加させて対応した。これにより、全体の85%以上の期間で目標以上の強度を有する成型炭を製造することができた。
【0066】
一方、比較例2では、抜き取りでの落下試験によって成型炭の強度を評価した。落下試験によって成型炭の強度を評価した場合には、成型炭の強度低下を検出するのが遅くなるので、同様に、成型炭の強度低下が検出された場合に原料炭に添加するバインダーを増加させるという対応をとったとしても、全体の65%以上の期間で目標以上の強度を有する成型炭を製造できるに留まった。