(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140886
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】粒状物の粒度測定装置及び粒状物の粒度測定方法
(51)【国際特許分類】
G01N 15/0227 20240101AFI20241003BHJP
【FI】
G01N15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052246
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】本多 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】本多 楓
(72)【発明者】
【氏名】大沢 直人
(72)【発明者】
【氏名】橋本 高男
(72)【発明者】
【氏名】園部 治
(57)【要約】
【課題】コンベア上に積載された粒状物の内部に存在する粒状物を考慮しつつ、粒状物の粒度分布をオンラインで測定できる粒状物の粒度測定装置及び粒度測定方法を提供する。
【解決手段】コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布を測定する粒状物の粒度測定装置であって、搬送方向に異なる複数の位置における粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサと、画像処理装置と、を備え、画像処理装置は、ラインセンサによって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部と、3次元形状データを用いて、粒状物の粒径と数を測定するとともに粒状物の面積比率が粒状物の重量比率であるとして、粒状物の粒度分布を算出する粒度算出部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布を測定する粒状物の粒度測定装置であって、
搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサと、
画像処理装置と、を備え、
前記画像処理装置は、前記ラインセンサによって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部と、
前記3次元形状データを用いて、前記粒状物の粒径と数を測定するとともに前記粒状物の面積比率が前記粒状物の重量比率であるとして、前記粒状物の粒度分布を算出する粒度算出部と、を有する、粒状物の粒度測定装置。
【請求項2】
前記粒度算出部は、前記粒径と前記数と下記(1)、(2)式とを用いて前記粒状物の粒度分布を算出する、請求項1に記載の粒状物の粒度測定装置。
【数1】
【数2】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの粒状物の数(個)であり、n
siは前記数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは前記粒状物の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの粒状物の重量度数である。
【請求項3】
前記粒度算出部は、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足する場合に、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出し、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足しない場合には、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出しない、請求項1又は請求項2に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項4】
前記粒度算出部は、前記3次元形状データの高さの平均値を前記粒状物の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であり、高さの標準偏差を前記粒状物の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合に、前記条件を満足すると判断し、前記正規化平均高さ及び前記正規化標準偏差の少なくとも1つが上記範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項3に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項5】
前記粒度算出部は、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が、予め定められた閾値よりも大きい場合に前記条件を満足すると判断し、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に、前記条件を満足しないと判断する、請求項3に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項6】
前記粒度算出部は、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が、予め定められた閾値よりも大きい場合に前記条件を満足すると判断し、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に、前記条件を満足しないと判断する、請求項4に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項7】
前記粒度算出部は、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足すると判断し、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項3に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項8】
前記粒度算出部は、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足すると判断し、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項4に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項9】
前記粒度算出部は、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足すると判断し、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項5に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項10】
前記粒度算出部は、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足すると判断し、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項6に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項11】
前記粒度算出部は、入力が3次元形状データであり、出力が前記条件を満足するか否かを示すデータである学習済みの機械学習モデルに、前記3次元形状作成部によって作成された3次元形状データを入力し、
前記学習済の機械学習モデルから前記条件を満足することを示すデータが出力された場合に前記条件を満足すると判断し、前記学習済の機械学習モデルから前記条件を満足しないことを示すデータが出力された場合に前記条件を満足しないと判断する、請求項3に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項12】
前記機械学習モデルは、3次元形状データと、前記3次元形状データが前記条件を満足するか否かを示すデータとを1組とする複数のデータセットを教師データとして機械学習されるディープラーニングネットワークである、請求項11に記載の粒状物の粒度測定装置。
【請求項13】
コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布を測定する粒状物の粒度測定方法であって、
ラインセンサを用いて、搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインプロファイルデータ作成ステップと、
複数のラインプロファイルデータを用いて前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状データ作成ステップと、
前記3次元形状データを用いて、前記粒状物の粒径と数を測定するとともに、前記粒状物の面積比率が前記粒状物の重量比率であるとして、前記粒状物の粒度分布を算出する、粒度算出ステップと、
を有する、粒状物の粒度測定方法。
【請求項14】
前記粒度算出ステップでは、前記粒径と前記数と下記(1)、(2)式とを用いて前記粒状物の粒度分布を算出する、請求項13に記載の粒状物の粒度測定方法。
【数3】
【数4】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの粒状物の数(個)であり、n
siは前記数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは前記粒状物の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの粒状物の重量度数である。
【請求項15】
前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足する場合に、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出し、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足していない場合には、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出しない、請求項13又は請求項14に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項16】
前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データの高さの平均値を前記粒状物の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であり、高さの標準偏差を前記粒状物の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合に、前記条件を満足するとし、前記正規化平均高さ及び前記正規化標準偏差の少なくとも1つが上記範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、請求項15に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項17】
前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が予め定められた閾値より大きい場合に前記条件を満足するとし、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に前記条件を満足しないとする、請求項15に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項18】
前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が予め定められた閾値より大きい場合に前記条件を満足するとし、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に前記条件を満足しないとする、請求項16に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項19】
前記粒度算出ステップでは、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足するとし、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、請求項15に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項20】
前記粒度算出ステップでは、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足するとし、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、請求項16に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項21】
前記粒度算出ステップでは、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足するとし、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、請求項17に記載の粒状物の粒度測定方法。
【請求項22】
前記粒度算出ステップでは、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足するとし、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、請求項18に記載の粒状物の粒度測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布をオンラインで測定できる粒状物の粒度測定装置及び粒状物の粒度測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鋼製品を製造する原料として、石炭は重要な役割を果たす。石炭はコークス炉におけるコークス製造の原料として用いられる。コークスは鉄鉱石の還元材として使用される。現在、コークスの製造に必要となる粘結炭は世界的に枯渇傾向にあり、良質な粘結炭をコークスの製造に用いることは大幅なコスト増につながる。低品質な石炭を用いて高強度のコークスを製造するには、コークス炉に装入する前に低品位な石炭を成型して成型炭にし、当該成型炭をコークス炉に装入して乾留する必要がある。
【0003】
成型炭に関しては粒度が重要な要素の1つとなる。その理由は、搬送中の振動や衝撃によってコークス炉に装入する前に成型炭が破壊されて粒径が小さくなると、高強度のコークスが製造できなくなるからである。また、成型炭を用いずに石炭をそのまま使用する場合においても、石炭の状態を把握するために石炭の粒度分布を測定することは、非常に重要となる。
【0004】
成型炭や石炭等の粒状物の粒度分布は、これらを目開きの異なる複数の篩で篩分けを実施し、各粒径の度数を算出することで求められる。このように、篩分けを用いた粒度の測定方法は、測定結果が得られるまでに相当の時間を必要とする。このため、粒状物の製造条件の変動により粒度分布が変化した場合に、その変化が検出されるまでに相当の時間が必要となる。成型炭の粒度分布の変化を迅速に検出するには、粒状物の粒度をオンラインで測定することが必要になる。粒状原料の粒径をオンラインで測定する技術として、特許文献1には、運搬経路上を移動する粒状原料を撮像した画像データにおける各粒子と撮像部との間の距離を測定し、当該距離に基づいて粒状原料の粒径を算出する粒径算出手段を有する粒径測定装置が開示されている。特許文献1によれば、当該粒径測定装置を用いることで、運搬経路上を移動する粒状原料の粒径がオンラインで測定できるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、粒状原料を撮像した画像データを用いて粒状原料の粒径を測定している。このため、特許文献1に開示の粒径測定装置で測定される粒径は、搬送経路に積載されている粒状原料のうち、表層に存在する粒状原料のみを考慮したものであって、その内部に存在する粒状原料が考慮されていない。このため、特許文献1に開示されている粒径測定装置は、搬送経路に積載されている粒状原料の内部の状態によっては、粒状原料の粒径測定精度が低くなる場合がある、という課題があった。本発明はこのような従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、コンベア上に積載された粒状物の内部に存在する粒状物を考慮しつつ、粒状物の粒度分布をオンラインで測定できる粒状物の粒度測定装置及び粒度測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布を測定する粒状物の粒度測定装置であって、搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインセンサと、画像処理装置と、を備え、前記画像処理装置は、前記ラインセンサによって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状作成部と、前記3次元形状データを用いて、前記粒状物の粒径と数を測定するとともに前記粒状物の面積比率が前記粒状物の重量比率であるとして、前記粒状物の粒度分布を算出する粒度算出部と、を有する、粒状物の粒度測定装置。
[2]前記粒度算出部は、前記粒径と前記数と下記(1)、(2)式とを用いて前記粒状物の粒度分布を算出する、[1]に記載の粒状物の粒度測定装置。
【数1】
【数2】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの粒状物の数(個)であり、n
siは前記数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは前記粒状物の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの粒状物の重量度数である。
[3]前記粒度算出部は、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足する場合に、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出し、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足しない場合には、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出しない、[1]又は[2]に記載の粒状物の粒度測定装置。
[4]前記粒度算出部は、前記3次元形状データの高さの平均値を前記粒状物の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であり、高さの標準偏差を前記粒状物の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合に、前記条件を満足すると判断し、前記正規化平均高さ及び前記正規化標準偏差の少なくとも1つが上記範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、[3]に記載の粒状物の粒度測定装置。
[5]前記粒度算出部は、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が、予め定められた閾値よりも大きい場合に前記条件を満足すると判断し、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に、前記条件を満足しないと判断する、[3]又は[4]に記載の粒状物の粒度測定装置。
[6]前記粒度算出部は、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足すると判断し、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないと判断する、[3]から[5]のいずれかに記載の粒状物の粒度測定装置。
[7]前記粒度算出部は、入力が3次元形状データであり、出力が前記条件を満足するか否かを示すデータである学習済みの機械学習モデルに、前記3次元形状作成部によって作成された3次元形状データを入力し、前記学習済の機械学習モデルから前記条件を満足することを示すデータが出力された場合に前記条件を満足すると判断し、前記学習済の機械学習モデルから前記条件を満足しないことを示すデータが出力された場合に前記条件を満足しないと判断する、[3]に記載の粒状物の粒度測定装置。
[8]前記機械学習モデルは、3次元形状データと、前記3次元形状データが前記条件を満足するか否かを示すデータとを1組とする複数のデータセットを教師データとして機械学習されるディープラーニングネットワークである、[7]に記載の粒状物の粒度測定装置。
[9]コンベア上に積載されて搬送される粒状物の粒度分布を測定する粒状物の粒度測定方法であって、ラインセンサを用いて、搬送方向に異なる複数の位置における前記粒状物のラインプロファイルデータを作成するラインプロファイルデータ作成ステップと、複数のラインプロファイルデータを用いて前記粒状物の3次元形状データを作成する3次元形状データ作成ステップと、前記3次元形状データを用いて、前記粒状物の粒径と数を測定するとともに、前記粒状物の面積比率が前記粒状物の重量比率であるとして、前記粒状物の粒度分布を算出する、粒度算出ステップと、を有する、粒状物の粒度測定方法。
[10]前記粒度算出ステップでは、前記粒径と前記数と下記(1)、(2)式とを用いて前記粒状物の粒度分布を算出する、[9]に記載の粒状物の粒度測定方法。
【数3】
【数4】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの粒状物の数(個)であり、n
siは前記数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは前記粒状物の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの粒状物の重量度数である。
[11]前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足する場合に、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出し、前記3次元形状データが予め定められた条件を満足していない場合には、前記3次元形状データを用いて前記粒状物の重量度数を算出しない、[9]又は[10]に記載の粒状物の粒度測定方法。
[12]前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データの高さの平均値を前記粒状物の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であり、高さの標準偏差を前記粒状物の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合に、前記条件を満足するとし、前記正規化平均高さ及び前記正規化標準偏差の少なくとも1つが上記範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、[11]に記載の粒状物の粒度測定方法。
[13]前記粒度算出ステップでは、前記3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が予め定められた閾値より大きい場合に前記条件を満足するとし、前記高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が前記閾値以下である場合に前記条件を満足しないとする、[11]又は[12]に記載の粒状物の粒度測定方法。
[14]前記粒度算出ステップでは、ラインプロファイルデータを作成している間の前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に前記条件を満足するとし、前記コンベアの速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に前記条件を満足しないとする、[11]から[13]のいずれかに記載の粒状物の粒度測定方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る粒状物の粒度測定装置及び粒度測定方法では、コンベア上に積載されている粒状物のうち表層の粒状物だけでなく、内部に存在する粒状原料を考慮して粒度分布をオンラインで測定する。このため、コンベア上に積載されている表層の粒状物を撮像した画像データを用いて粒径を測定する従来の粒径測定装置よりも高い精度で粒状物の粒度分布を測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、成型炭が製造されてコークス炉に装入されるまでの工程を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係る粒状物の粒度測定装置22を示す模式図である。
【
図3】
図3は、画像処理装置26の構成例を示す模式図である。
【
図4】
図4は、欠損データが発生する状況を説明する模式図である。
【
図5】
図5は、欠損データの補完処理方法の一例を示す説明図である。
【
図6】
図6は、補完処理前後の成型炭16の3次元形状画像である。
【
図7】
図7は、極小値探索法により成型炭の境界を特定する処理を説明するグラフである。
【
図8】
図8は、成型炭の境界を特定する処理による3次元形状データの変化を示す画像である。
【
図9】
図9は、積み重なった粒状物の領域内での存在確率を説明する図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る粒状物の粒度測定方法の一例を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、実施例1における成型炭16の落下試験を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態に係る粒状物の粒度測定装置及び粒状物の粒度測定方法を説明する。なお、以下の実施形態では、粒状物が成型炭である例を用いて説明するが、粒状物は成型炭に限らず、コンベア上に積載されて搬送される粒状物であれば本発明を適用できる。
【0011】
図1は、成型炭が製造されてコークス炉に装入されるまでの工程を示す模式図である。低品位の石炭である原料炭10は、混合機12によりバインダーを含む複数の材料と混合される。混合機12で混合された混合原料は、成型機14でブリケット形状の成型炭16に成型される。成型炭16は、コンベア18上に積載されてコークス炉20に向けて搬送される。成型炭16は、コークス炉20の装炭孔から装入されて乾留され、コークスが製造される。なお、
図1には、成型機14とコークス炉20との間に1つのコンベア18しか示していないが、実際には、複数のコンベア18を乗り継いで、成型炭16はコークス炉20に搬送される。
【0012】
図2は、本実施形態に係る粒状物の粒度測定装置22を示す模式図である。
図2に示すように、粒状物の粒度測定装置22は、コンベア18の近傍に設けられる。粒状物の粒度測定装置22は、ラインセンサ24と、画像処理装置26とを備える。ラインセンサ24は、例えば、レーザー距離計である。
【0013】
ラインセンサ24は、コンベア18の上方に設けられる。ラインセンサ24は、コンベア18によって一定の速度で搬送される成型炭16にコンベア18の幅方向に沿ったライン状のレーザー光を連続的に照射して、反射光をCMOS等の撮像素子に結像させる。ラインセンサ24は、撮像素子に結像された画像データを用いて、コンベア18の幅方向であって、搬送方向に異なる複数の位置の成型炭16の高さ情報を含むラインプロファイルデータを作成する。ラインセンサ24は、作成した複数のラインプロファイルデータを画像処理装置26に出力する。
【0014】
画像処理装置26は、ラインセンサ24によって作成された複数のラインプロファイルデータを用いて、成型炭16の3次元形状データを作成する。なお、3次元形状データに欠損データが含まれる場合には、画像処理装置26は、当該欠損データを補完することが好ましい。
【0015】
画像処理装置26は、成型炭16の3次元形状データを用いて、成型炭16の粒径と数を測定する。画像処理装置26は、粒状物の面積比率が粒状物の重量比率であるとして、成型炭16の粒径と数を用いて成型炭16の粒度分布を算出する。具体的に画像処理装置26は、成型炭16の粒径と下記(1)とを用いて成型炭16の数を算出し、粒状物の面積比率が粒状物の重量比率であるとして、成型炭16の粒径と数と下記(2)式とを用いて、成型炭16の粒度分布を算出する。
【0016】
【0017】
【数6】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの成型炭16の数(個)であり、n
siは数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは成型炭16の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの成型炭16の重量度数である。ここで、成型炭16の粒径とは、ヘイウッド径又は成型炭16の大きさを矩形形状で近似した場合の縦横平均値である。
【0018】
なお、成型炭16の数を測定するにあたり、画像処理装置26は、3次元形状データにおける成型炭16の境界を特定したり、3次元形状データを二値化処理したり、3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。このようにして、本実施形態に係る粒状物の粒度測定装置22は、コンベア18上に積載されて搬送される成型炭16の粒度を測定する。さらに、画像処理装置26は、3次元形状データが、成型炭16の数を測定するのに適しているか否かを判断した上で、成型炭16の数を測定することが好ましい。
【0019】
図3は、画像処理装置26の構成例を示す模式図である。画像処理装置26は、例えば、ワークステーションやパソコン等の汎用コンピュータである。画像処理装置26は、制御部28と、入力部30と、出力部32と、記憶部34とを有する。制御部28は、例えば、CPU等であって、記憶部34に格納されているプログラムを実行することにより、制御部28を3次元形状作成部36及び粒度算出部38として機能させる。
【0020】
入力部30は、例えば、キーボード、ディスプレイと一体的に設けられたタッチパネル等である。出力部32は、例えば、LCD又はCRTディスプレイ等である。記憶部34は、例えば、更新記録可能なフラッシュメモリ、内蔵あるいはデータ通信端子で接続されたハードディスク、メモリーカード等の情報記録媒体およびその読み書き装置である。記憶部34には、制御部28が各機能を実行するためのプログラムや当該プログラムが使用するデータ等が格納されている。
【0021】
次に、3次元形状作成部36、粒度算出部38が実行する処理について説明する。3次元形状作成部36は、ラインセンサ24から複数のラインプロファイルデータを取得する。3次元形状作成部36は、複数のラインプロファイルデータに含まれる高さ情報をグレイスケールにおける256階調の輝度値に換算するとともに、輝度値に換算した複数のラインプロファイルデータを搬送方向に並べることで成型炭16の3次元形状データを作成する。3次元形状作成部36は、搬送方向の長さが0.5m以上4.0m以下になる数のラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成することが好ましい。
【0022】
ラインセンサ24から取得されるラインプロファイルデータには欠損データが含まれる場合がある。
図4は、欠損データが発生する状況を説明する模式図である。ラインセンサ24は、成型炭16にライン状のレーザー光を照射し、成型炭16によって反射される反射光を撮像素子に結像させることでラインプロファイルデータを作成する。
図4(a)に示すように、成型炭16の表面の状態(例えば、表面の光沢の度合い)によっては成型炭16からの反射光が結像しない部位が生じ、当該部位が欠損データとなる。また、
図4(b)に示すように、ラインセンサ24ではレーザー光を照射する位置と、反射光を受光する位置が異なるので、反射光の一部が成型炭16に遮られて、反射光が結像しない部位が生じ、当該部位が欠損データとなる。
【0023】
ラインプロファイルデータに欠損データが含まれる場合、これらデータから作成される3次元形状データにも欠損データが含まれる。3次元形状データに欠損データが含まれると、当該3次元形状データを用いて、成型炭16の大きさ及び数を測定する際、その測定精度が低下する。このため、3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データに含まれる欠損データを補完することが好ましい。
【0024】
図5は、欠損データの補完処理の一例を示す説明図である。3次元形状作成部36は、例えば、左から右に、上から下に3次元形状データをラスタースキャンし、欠損データを検出したら、その周囲8個の画素の平均輝度値で補完する。
図5に示した例では、3次元形状作成部36は、欠損データである画素0を、画素0の周囲の8画素(
図5における画素1~8)のうち欠損データではない画素1~4の平均輝度値で補完する。なお、画素0の右側の画素5も欠損データであるが、画素5の欠損データの補完には、画素1~4の平均輝度値で補完された画素0の輝度値も用いる。3次元形状作成部36は、このような欠損データの補完処理を3次元画像データに対して実行する。
【0025】
図6は、補完処理前後の成型炭16の3次元形状画像である。
図6(a)は、欠損データ補完処理前の成型炭16の3次元形状画像である。
図6(b)は、欠損データ補完処理後の成型炭16の3次元形状画像である。上記補完処理により、
図6(a)の3次元形状画像において散見された欠損データが自然な形で補完でき、
図6(b)に示したような欠損データを含まない3次元形状データにすることができる。
【0026】
なお、
図5に示した例では、欠損データの周囲の画素の8画素のうち、欠損データではない画素の平均輝度値で補完する例を示したが、これに限らない。3次元形状作成部36は、欠損データの周囲8画素の中央輝度値、最小輝度値又は最大輝度値で補完してもよく、欠損データの周囲8画素の最大輝度値及び最小輝度値を除いた平均輝度値や中央輝度値で補完してもよい。また、異常値を排除する目的で、過去の実績から輝度値の範囲を予め設定し、設定された範囲内の画素の平均値や中央値を用いて欠損データを補完してもよい。さらに、ラスタースキャンの順序も左から右に、上から下に限らず、右左方向及び上下方向の4つの組み合わせの何れかの順でスキャンしてもよい。
【0027】
3次元形状作成部36は作成した成型炭16の3次元形状データを粒度算出部38に出力する。粒度算出部38は、3次元形状データを用いて成型炭16の粒径と数とを測定し、これらを用いて成型炭16の粒度分布を算出するが、その前に、3次元形状データに対し、成型炭16の境界を特定したり、3次元形状データを二値化処理したり、3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。これにより、3次元形状データを用いて成型炭16の数を測定する際に、その測定精度を向上させることができる。以下、これらの処理について説明する。
【0028】
まず、成型炭16の境界を特定する境界特定処理について説明する。
図7は、極小値探索法により成型炭の境界を特定する処理を説明するグラフである。
図7(a)は谷の検出方法を示すグラフであり、
図7(b)は段差の検出方法を示すグラフである。粒度算出部38は、
図7(a)に示すように、3次元形状データ中の注目画素の輝度値が「右傾き≧0、左傾き≦0」且つ「(右傾き-左傾き)≧閾値」を満たした場合に、当該注目画素が谷であると検出する。また、粒度算出部38は、注目画素の近傍の画素の輝度値の差が閾値よりも大きい場合に当該注目画素が段差であると検出する。粒度算出部38は、検出した谷及び段差の注目画素が成型炭16の境界画素であると特定し、当該画素の輝度値を「0」に変更する。以下、成型炭16の境界画素の輝度値を「0」に変更する処理を「ゼロ埋め」と記載する。
【0029】
図8は、成型炭の境界を特定する処理による3次元形状データの変化を示す画像である。粒度算出部38は、
図8(a)に示した処理前画像に対応した3次元形状データに対して縦方向に走査して成型炭16の境界画素を検出し、当該画素のゼロ埋めを実行する。この縦方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状画像が
図8(b)である。同様に、粒度算出部38は、
図8(a)に示す処理前画像に対応した3次元形状データに対して横方向に走査して成型炭16の境界画素を検出し、当該画素のゼロ埋めを実行する。この横方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状画像が
図8(c)である。
【0030】
粒度算出部38は、
図8(b)、(c)の画像を「OR演算」で合成して、縦方向及び横方向の境界画素をゼロ埋めした3次元形状データを作成する。この3次元形状データに対応する3次元形状画像が
図8(d)である。このように、成型炭16の境界を特定する境界特定処理を実施することで、成型炭16の境界が明確になり、その後に実行する成型炭16の数の測定精度が向上する。なお、本実施形態に係る粒状物の粒度測定装置22では、粒度算出部38が極小値探索法を用いて成型炭16の境界を特定する例を示したが、これに限らない。粒度算出部38は、極小値探索法、Cannyエッジ抽出法、ソーベルフィルタによるエッジ抽出法及びラプラシアンフィルタによるエッジ抽出法のうちの少なくとも1つを用いて成型炭16の境界を特定してもよい。
【0031】
例えば、Cannyエッジ抽出法で成型炭16の境界を検出する場合、3次元形状作成部36は、ガウシアンフィルタで平滑化した3次元形状データをソーベルフィルタなどで微分処理し、その後、ヒステリシスを用いた閾値処理により成型炭16の境界である否かを判断する。また、3次元形状作成部36は、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタで3次元形状データを処理し、その後、閾値処理により成型炭16の境界を特定してもよい。このように、成型炭16の境界を特定して当該境界画素をゼロ埋めすることで、その後に実施する成型炭16の数の測定精度が向上する。
【0032】
次に、二値化処理について説明する。粒度算出部38は、
図8(d)に示したゼロ埋め画像に対応した3次元形状データを二値化処理することが好ましい。二値化に用いる閾値は、予め定められて記憶部34に格納されている。このように、3次元形状データを二値化処理することで、その後に実施する成型炭16の数の測定精度が向上する。
【0033】
次に、ノイズ除去処理について説明する。粒度算出部38は、膨張処理、収縮処理、メディアンフィルター及び平均化処理のうちの少なくとも1つを1回以上実施して、二値化処理後の3次元形状データのノイズを除去することが好ましい。このようにノイズを除去することで、その後に実施する成型炭16の数の測定精度が向上する。
【0034】
粒度算出部38は、ノイズを除去した二値化処理後の3次元形状データに対してwatershedによる領域分割を実施する。これにより、成型炭16同士の重なりを排除でき、それぞれの成型炭16の数を測定できるようになる。粒度算出部38は、領域分割された3次元形状データを用いて、3次元形状データに含まれる成型炭16の数を測定する。その後、粒度算出部38は、測定された成型炭16の粒径と数と、下記(1)式とを用いて、粒径D
iの成型炭16の数を算出する。なお、粒径D
iは、3次元形状データに含まれる成型炭16のいずれかの粒径であって、粒度算出部38によって測定された粒径である。
【数7】
上記(1)式において、n
iは粒径D
iの成型炭16の数(個)であり、n
siは数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは成型炭16の粒径(mm)である。
【0035】
粒度算出部38は、粒径D
iの成型炭16の数を算出すると、粒状物の面積比率が粒状物の重量比率であるとして、当該数と下記(2)式とを用いて、粒径D
iの成型炭16の重量度数を算出する。ここで重量度数とは、成型炭16に含まれる粒径D
iの成型炭の重量比率である。
【数8】
上記(2)式において、n
iは粒径D
iの成型炭16の数(個)であり、n
siは数の測定値(個)であり、D
iは成型炭16の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの成型炭16の重量度数である
【0036】
粒度算出部38は、三次元形状データに含まれる全ての成型炭16の重量度数を算出する。これにより、粒度算出部38は、成型炭16の粒度分布を算出できる。なお、粒度算出部38は、測定された成型炭16の粒径を予め定められた範囲でまとめて計算してもよい。例えば、粒径が3.0mmより大きく6.0mm以下の範囲内の成型炭16を粒径4.5mmの成型炭16としてまとめて測定してもよく、粒径が6.0mmより大きく10.0mm以下の範囲内の成型炭16を粒径8.0mmの成型炭16としてまとめて測定してもよい。
【0037】
ここで、上記(1)、(2)式について説明する。
図9は、積み重なった粒状物の領域内での存在確率を説明する図である。
図9(a)は積み重なった粒状物の上視図であり、
図9(b)は側面視図である。
【0038】
図9に示すように、積み重なった粒状物の所定領域内の存在確率は粒径に反比例するという考えに基づくと、3次元形状データの領域内に存在する粒径D
iの成型炭16の数n
iは、成型炭16の数の測定値に(粒径D
iの逆数)/(全ての粒径の逆数の和)を乗じることで算出できる。この考えに基づいて任意の粒径D
iの成型炭16の個数を求める式が上記(1)式である。
【0039】
また、コンベア18上には成型炭16以外は存在しないので、粒径Diの重量度数は、成型炭16の体積比で算出できる。粒径Diの成型炭16の体積が(4/3)×π×(Di/2)3×niで算出され、これから上記(2)式が得られる。このようにして、粒度算出部38は、成型炭16の重量度数及び粒度分布を算出する。これら重量度数や粒度分布は成型炭16の一部の重量度数及び粒度分布なので、この処理を繰り返し実施して得られる多数の重量度数及び粒度分布を用いることでコンベア18上を搬送される成型炭16の粒度分布が求められる。
【0040】
成型炭16の粒度分布を算出すると、粒度算出部38は、算出した成型炭16の粒度や粒度分布を出力部32に表示させてもよい。これにより、オペレータは出力部32に表示された成型炭16の粒度や粒度分布を視認することで、成型炭16の粒度や粒度分布を把握できる。
【0041】
このように、粒度算出部38は、成型炭16の重量度数や粒度分布を算出するが、3次元形状作成部36から取得した3次元形状データが成型炭16の粒度の算出に適さない場合には、粒度算出部38は、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いないことが好ましい。例えば、コンベア18上に成型炭16が積載されていない部分が含まれる場合には、当該3次元形状データは重量度数の算出に適さないと判断して、粒度算出部38は、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いないことが好ましい。3次元形状データが重量度数の算出に適するか適しないかを判断するための条件を予め定めておき、粒度算出部38は、当該条件を満足するか否かを判断することで、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いるか否かを判断する。以下、3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを判断するための条件について説明する。
【0042】
3次元形状データに成型炭16が積載されていない部分が含まれるか否かは、3次元形状データの高さの平均値を成型炭16の平均粒径で除した正規化平均高さと、当該高さの標準偏差を成型炭16の平均粒径で除した正規化標準偏差とから判断できる。したがって、粒度算出部38は、3次元形状作成部36から取得した3次元形状データの高さの平均値と成型炭16の平均粒径とを用いて正規化平均高さを算出する。また、粒度算出部38は、3次元形状データの高さと成型炭16の平均粒径とを用いて正規化標準偏差を算出する。成型炭16の平均粒径は、データの選別を行う前に3次元形状データを用いて求められる粒径Diとその数から算出できる。なお、成型炭16の平均粒径は測定開始後、所定の期間測定された粒径Diとその数を用いて求めてもよい。
【0043】
そして、正規化平均高さが3~8の範囲内であって、且つ、正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合に、粒度算出部38は、3次元形状データが重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いる。一方、正規化平均高さが3~8の範囲外であるか、正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲外である場合に、粒度算出部38は、3次元形状データが重量度数の算出に適さないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いない。これにより、粒度算出部38によって算出される成型炭16の粒度の算出精度を向上させることができる。なお、上記例では、3次元形状データの高さの平均値を成型炭16の平均粒径で除した正規化平均高さと、3次元形状データの標準偏差を成型炭16の平均粒径で除した正規化標準偏差を用いたが、これに限らず、3次元形状データの高さの平均値と、3次元形状データの標準偏差を用いて判断してもよい。
【0044】
さらに、コンベア18が停止していたり、コンベア18上に成型炭16が全く積載されていない場合にも、上記(1)、(2)式を用いて各粒径の重量度数を正確に算出できない。コンベア18が停止しているか否か、及び、コンベア18上に成型炭16がまったく積載されていないか否かは、3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が予め定められた閾値よりも大きいか否かで判断できる。したがって、粒度算出部38は、3次元形状作成部36から取得した3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値を算出する。そして、当該値が予め定められた閾値よりも大きい場合に、粒度算出部38は、3次元形状データが重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いる。一方、粒度算出部38は、3次元形状データの高さの搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が予め定められた閾値以下の場合には、3次元形状データが重量度数の算出に適しないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出した成型炭16の重量度数や粒度分布を用いない。これにより、さらに、粒度算出部38によって算出される成型炭16の重量度数や粒度分布の算出精度を向上させることができる。
【0045】
また、粒度算出部38は、入力が3次元形状データであり、出力が当該3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを示すデータである学習済みの機械学習モデルに、3次元形状作成部36によって作成された3次元形状データを入力することで、3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを判断してもよい。このような学習済の機械学習モデルには、3次元形状データと当該3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを示すデータとを1セットとする多数のデータセットを教師データとして機械学習されたディープラーニングネットワークを用いることが好ましい。これにより、3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを容易に判断できる。この学習済の機械学習モデルは、予め作成されて記憶部34に格納される。
【0046】
また、成型炭16は、コンベア18によって一定速度で搬送されることが好ましい。一定速度で成型炭16が搬送されれば、ラインセンサ24によって、搬送方向に規則的な間隔でラインプロファイルデータが作成されるようになり、当該ラインプロファイルデータを用いることで、成型炭16の積載状態がより正確に反映された3次元形状データが作成される。一方、ラインプロファイルデータを作成している間にコンベア18の速度が変化すると、規則的な間隔でラインプロファイルデータを作成されず、当該ラインプロファイルデータを用いて作成された3次元形状データも不正確なデータとなる。
【0047】
このため、粒度算出部38は、直接的又は間接的にコンベア18から速度情報を取得し、ラインプロファイルデータを作成している間にコンベア18の速度が変化したか否かを判断する。粒度算出部38は、ラインプロファイルデータを作成している間のコンベア18の速度の変化量が予め定められた範囲内である場合に、コンベア18の速度が変化しておらず、3次元形状データが重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出された成型炭16の重量度数や粒度分布を用いる。一方、粒度算出部38は、ラインプロファイルデータを作成している間のコンベア18の速度の変化量が予め定められた範囲外である場合に、コンベア18の速度が変化し、3次元形状データが重量度数の算出に適さないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出された成型炭16の重量度数や粒度分布を用いない。これにより、さらに、粒度算出部38によって算出される成型炭16の重量度数や粒度分布の算出精度を向上させることができる。
【0048】
図10は、本実施形態に係る粒状物の粒度測定方法の一例を示すフロー図である。次に、
図10を用いて、本実施形態に係る粒状物の粒度測定方法を説明する。
図10に示すフローは、例えば、粒状物の粒度測定装置22が立ち上げられ、画像処理装置26の入力部30から成型炭16の粒度分布の測定開始を指示する入力を受け付けることで開始される。
【0049】
ラインセンサ24は、ラインプロファイルデータ作成ステップを実行して、成型炭16にコンベア18の幅方向に沿ったライン状のレーザー光を照射し、搬送方向に異なる複数の位置における成型炭16の高さ情報を含むラインプロファイルデータを作成する(ステップS101)。ラインセンサ24は作成したラインプロファイルデータを画像処理装置26の3次元形状作成部36に出力する。
【0050】
3次元形状作成部36は、3次元形状データ作成ステップを実行して、搬送方向に異なる複数の位置のラインプロファイルデータを用いて成型炭16の3次元形状データを作成する(ステップS102)。なお、3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データに含まれる欠損データを補完することが好ましい。3次元形状作成部36は、作成した3次元形状データを粒度算出部38に出力する。
【0051】
粒度算出部38は、3次元形状データを用いて成型炭16の粒径と数を測定する(ステップS103)。なお、粒度算出部38は、成型炭16の粒径と数を測定するにあたり、成型炭16の境界を特定する境界特定処理、二値化処理及びノイズ除去処理を実行することが好ましい。
【0052】
粒度算出部38は、3次元形状データを用いて成型炭16の粒径と数を測定すると、当該数と、下記(1)、(2)式を用いて、粒径D
iの成型炭の重量度数及び粒度分布を算出する(ステップS104)。このステップS103及びステップS104の処理が、粒状物の粒度測定方法における粒度算出ステップに相当する。
【数9】
【数10】
上記(1)、(2)式において、n
iは粒径D
iの成型炭16の数(個)であり、n
siは数の測定値(個)であり、αは定数であり、D
iは成型炭16の粒径(mm)であり、W
iは粒径D
iの成型炭16の重量度数である。粒度算出部38は、取得した3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを判断し、重量度数の算出に適さないと判断した場合には、当該3次元形状データを用いて算出した重量度数や粒度分布を用いないことが好ましい。
【0053】
粒度算出部38は、測定した成型炭16の粒度分布を出力部32に表示する(ステップS15)。これにより、オペレータは、コンベア上に積載されて搬送される成型炭16の粒度分布を視認できる。その後、粒度算出部38は、入力部30を介して成型炭16の粒度分布の算出処理を終了させる指示する入力が受け付けられているか否かを判断する(ステップS106)。粒度算出部38は、当該入力が受け付けられている場合に、終了指示有りと判断し(ステップS106:Yes)、
図10に示したフローを終了させる。一方、成型炭16の強度推定の終了を示す入力がされていない場合に、終了指示無しと判断し(ステップS106:No)、処理をステップS101に戻して、再び、ステップS101からの処理を繰り返し実行する。
【0054】
このように、本実施形形態に係る粒状物の粒度測定装置22及び粒状物の粒度測定方法では、コンベア18上に積載されている成型炭16のうち表層の粒状物だけでなく、内部に存在する成型炭16を考慮して成型炭16の粒度分布をオンラインで測定する。このため、コンベア18上に積載されている表層の粒状物を撮像した画像データから粒径を測定している従来の粒径測定装置よりも高い精度で粒状物の粒度分布を測定できる。
【実施例0055】
<実施例1>
次に、
図2に示した粒状物の粒度測定装置22を用いて、落下試験後の成型炭16の数を測定した実施例1を説明する。
図11は、実施例1における成型炭16の落下試験を説明する模式図である。
図11(a)、(b)に示すように、高さ2mの位置から1~3回の落下試験を実施した。その後、成型炭を篩(目開き径15×15mm)で篩分けし、篩上に篩分けられた成型炭を、コンベアを模擬した移動ステージ上に載せ、粒状物の粒度測定装置22を用いて成型炭の数を測定した。使用したラインセンサの幅方向の撮像分解能は0.3mm/pixelであり、搬送方向の撮像分解能は0.4mm/pixelであり、移動ステージの移動速度は200mm/secである。また、作成した3次元画像データに対し、欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した。下記表1に成型炭の数の測定結果を示す。
【0056】
【0057】
上記表1において、1-1~1-5、2-1~2-5、3-1~3-5の行は、移動ステージ上のサンプルを並び替えて5回測定したそれぞれの結果を示す。「成型炭個数」の列は、粒状物の粒度測定装置22によって測定された成型炭の数を示す。また、「実測個数」の列は、目視により計測した成型炭の数を示す。表1に示すように、成型炭個数と実測個数とがほぼ同数になっており、本実施形態に係る粒状物の粒度測定装置22によって高い精度で成型炭の個数が測定できることが確認された。
【0058】
<実施例2>
次に、成型炭の製造ラインのコンベア上で、
図2に示した粒状物の粒度測定装置22を用いて、成型炭の重量度数を算出した実施例2を説明する。撮像分解能が縦横ともに0.3mm/pixelのラインセンサを用いて、240m/minの速度で搬送するコンベアの上に3段程度に積載された成型炭のラインプロファイルデータを作成した。なお、測定前に成型炭を積載させていないコンベアのプロファイルデータを作成することで、高さのゼロレベルを設定した。
【0059】
発明例1では、作成したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した上で成型炭の粒径と数を測定し、これらの測定結果と上記(1)、(2)式を用いて、各粒径の重量度数を算出した。そして、算出した各粒径の重量度数を用いて成型炭の度数分布曲線を算出した。
【0060】
発明例2では、発明例1と同じ条件で作成したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した。この3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であって、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内である場合には3次元形状データは重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いた。なお、成型炭の平均粒径は10mmである。そして、これら各粒径の重量度数を用いて成型炭の度数分布曲線を算出した。
【0061】
一方、3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲外であるか、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲外である場合には3次元形状データは重量度数の算出に適さないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いずに破棄した。
【0062】
発明例3では、発明例1と同じ条件で作成したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した。この3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であって、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内であって、搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が10より大きい場合には3次元形状データは重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いた。そして、これら各粒径の重量度数を用いて成型炭の度数分布曲線を算出した。
【0063】
一方、3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲外であるか、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲外であるか、搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が10以下である場合には3次元形状データは重量度数の算出に適さないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いずに破棄した。
【0064】
発明例4では、発明例1と同じ条件で作成したラインプロファイルデータを用いて3次元形状データを作成した。作成した3次元形状データに欠損データ補完処理、境界特定処理、二値化処理、ノイズ除去処理を実施した。この3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲内であって、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲内であって、搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が10より大きく、且つ、ラインプロファイルデータを作成している間のコンベアの速度の変化量が±10%以内である場合には、3次元形状データは重量度数の算出に適すると判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いた。そして、これら各粒径の重量度数を用いて成型炭の度数分布曲線を算出した。
【0065】
一方、3次元形状データの高さの平均値を成型炭の平均粒径で除した正規化平均高さが3~8の範囲外であるか、3次元形状データの標準偏差を成型炭の平均粒径で除した正規化標準偏差が0.5~1.8の範囲外であるか、搬送方向の標準偏差の幅方向の平均値が10以下であるか、ラインプロファイルデータを作成している間のコンベアの速度の変化量が±10%を超える場合には、3次元形状データは重量度数の算出に適さないと判断し、当該3次元形状データを用いて算出した各粒径の重量度数を用いずに破棄した。なお、上記例ではコンベア18の速度の変化量を±10%以内で判断する例を示したが、コンベアの速度の変化量を±3%以内で判断することがより好ましい。
【0066】
比較例1では、ラインセンサに代えて撮像分解能が縦横ともに0.25mm/pixelのエリアカメラで撮像された画像データを解析して成型炭の表層の粒径と数を測定し、これらの測定結果から算出される成型炭の体積比を用いて、成型炭の重量度数を算出した。そして、算出した各粒径の重量度数を用いて成型炭の度数分布曲線を算出した。
【0067】
これら発明例1~4、比較例1の粒径の度数分布曲線と、同じ成型炭を篩分けして実測した粒径の度数分布曲線(以下、「実測度数分布曲線」と記載する。)との相関関係を確認した。その結果を下記表2に示す。
【0068】
【0069】
表2に示す通り、発明例1~4で算出された重量度数から求められた成型炭の度数分布曲線と実測度数分布曲線との決定係数(R2)は0.80以上となり、高い精度で成型炭の重量度数が算出できることが確認された。また、3次元形状データが重量度数の算出に適するか否かを判断し、3次元形状データが重量度数の算出に適さないと判断された場合には、当該データから算出された重量度数データを用いないとすることで、成型炭の粒度測定精度が向上することも確認された。
【0070】
一方、比較例1で測定された重量度数から求められた成型炭の度数分布曲線と、実測度数分布曲線との決定係数(R2)は0.43となり、高い精度で成型炭の重量度数を算出することができなかった。エリアカメラで撮像された画像データでは成型炭の境界が特定しづらく、このため、成型炭の粒径と数の測定精度が低下し、重量度数の測定精度が低下したものと考えられる。さらに、比較例1では、コンベア上に積載されている成型炭の内部の状態が考慮されていないので、これにより、成型炭の重量度数の測定精度がさらに低下したものと考えられる。