(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140892
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】スケールの洗浄剤組成物、スケールの洗浄剤製品、スケールの洗浄方法及びスケールの洗浄装置
(51)【国際特許分類】
C11D 3/33 20060101AFI20241003BHJP
C11D 17/04 20060101ALI20241003BHJP
C11D 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C11D3/33
C11D17/04
C11D1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052257
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】591030651
【氏名又は名称】水ing株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上條 太治
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】安永 利幸
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AC08
4H003BA12
4H003BA21
4H003DA05
4H003DA13
4H003DB01
4H003DC02
4H003EA21
4H003EB13
4H003EB15
4H003EB16
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA07
4H003FA28
(57)【要約】
【課題】被洗浄物上に付着するカルシウムスケールを含む付着物を少ない使用量で容易に洗浄除去することが可能なスケールの洗浄剤組成物、スケールの洗浄剤製品、スケールの洗浄方法及びスケールの洗浄装置を提供する。
【解決手段】(A)ポリアミノカルボン酸またはその塩5~30wt%、(B)界面活性剤1~15wt%、(C)強塩基1~12wt%、及び(D)残部水を含むスケールの洗浄剤組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミノカルボン酸またはその塩5~30wt%、(B)界面活性剤1~15wt%、(C)強塩基1~12wt%、及び(D)残部水を含むことを特徴とするスケールの洗浄剤組成物。
【請求項2】
pHが5以上であることを特徴とする請求項1に記載のスケールの洗浄剤組成物。
【請求項3】
(B)成分を3~12wt%含有することを特徴とする請求項1に記載のスケールの洗浄剤組成物。
【請求項4】
(A)成分として、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムからなる群の中から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1に記載のスケールの洗浄剤組成物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスケールの洗浄剤組成物と、
前記洗浄剤組成物を収容し、前記洗浄剤組成物を泡状に吐出可能な泡吐出機構を備える吐出容器と
を備えることを特徴とするスケールの洗浄剤製品。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載のスケールの洗浄剤組成物を泡状にし、前記泡状の前記洗浄剤組成物を被洗浄物上に付着させる工程を含むことを特徴とするスケールの洗浄方法。
【請求項7】
前記被洗浄物に対して、前記洗浄剤組成物を50~1000g/m2の割合で付着させることを特徴とする請求項6に記載のスケールの洗浄方法。
【請求項8】
前記泡状の前記洗浄剤組成物を前記被洗浄物上に3分~1時間付着させた後、前記被洗浄物を水洗することを特徴とする請求項6に記載のスケールの洗浄方法。
【請求項9】
前記被洗浄物が、汚泥処理設備の脱水装置に生成するカルシウムスケールを含むことを特徴とする請求項6に記載のスケールの洗浄方法。
【請求項10】
汚泥処理設備の脱水装置に接続されるスケールの洗浄装置であって、
請求項1~4のいずれか1項に記載のスケールの洗浄剤組成物を前記脱水装置へ向けて泡状に吐出させる泡吐出機構を備えることを特徴とするスケールの洗浄装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケールの洗浄剤組成物、スケールの洗浄剤製品、スケールの洗浄方法及びスケールの洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、下水処理設備等で発生した汚泥を汚泥処理施設等に輸送する汚泥管内では、汚泥中のマグネシウムイオン(Mg2+)やリン酸イオン(PO4
3-)及びアンモニウムイオン(NH4
+)等が化合した、いわゆるMAP粒子(Magnesium-Ammonium-Phosphate:Mg(NH4)PO4)と称される析出物がしばしば発生することがある。
【0003】
このMAP粒子は水に対する溶解度があまり大きくないため、汚泥処理設備に付着し、脱水効率の低下を招くことがある。特に、スクリュープレス型脱水機のスクリーンドラム表面に付着した場合には、分離液の排出を妨げる他、汚泥処理量の低下や脱水ケーキ含水率の上昇を引き起こすおそれがある。このような現象が発生した場合には、一般に、人海戦術によって汚泥処理設備を清掃して付着したMAP粒子を除去する、あるいは設備自体を新たなものに取り替える等の作業を行うことになる。このような清掃作業や交換作業には、多大な労力とコストを要する上にこれら作業中には下水処理設備等の運転を一時的に休止しなければならないといった問題がある。
【0004】
薬品によるMAPの洗浄方法としては、ジョウロなどを使用して酸性水溶液を散布する方法がある。しかしながら、例えばスクリュープレス型脱水機のスクリーンドラムは円筒型の金属であるため、洗浄液を散布して洗浄する際に、洗浄液が汚れを除去したい場所に留まらず直ぐに流れ落ちてしまうので、洗浄液の大部分が無駄になってしまう。
【0005】
脱水ケーキ含水率の更なる低減を目的として、凝集汚泥を一旦、濃縮機により汚泥濃度を高くした後に、ポリ硫酸第二鉄等の無機凝集剤を添加してから脱水機に搬送する方法が採用されることがある。この際汚泥中にカルシウム分が多く含まれていると、ポリ硫酸第二鉄中に含まれる硫酸イオンとカルシウムとが反応して硫酸カルシウム(石膏)が生成し、スクリーンドラム表面で濃縮され、石膏スケールと呼ばれるカルシウムスケールが付着する。
【0006】
しかしながら、石膏スケールは従来の酸性洗浄剤では溶解しない。塩酸等の強酸を用いて加熱することで溶解はするが、作業の安全性や設備の腐食を考慮すると現実的ではない。また石膏スケールは、MAPスケール等のスケールと比較して非常に強固であり、機械的に除去しようとしても容易に除去できない。
【0007】
例えば、特開昭60-55099号公報(特許文献1)には、石コウの付着しているものからこれを取除くために優れた性能を有する組成物として、ポリアミノカルボン酸またはその塩体と炭酸塩とを主成分として含有する石コウ洗浄用組成物の例が記載されている。
【0008】
特開2002-35789号公報(特許文献2)には、スケール抑制組成物として、(a)ポリリン酸、ジカルボン酸、ポリアミノカルボン酸、アルドン酸、ヒドロキシカルボン酸、ポリオールリン酸エステル、及びこれらの塩から選ばれる少なくとも1つ、(b)アミノ基を有する酸及び/又はその塩、(c)水を含むことを特徴とするスケール抑制組成物の例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開昭60-55099号公報
【特許文献2】特開2002-35789号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載された組成物は、汚れを除去したい部分に散布して洗浄する際には汚れを除去したい場所に組成物が適切に留まらず直ぐに流れ落ちてしまうため洗浄効果が十分に得られないことがある。洗浄効果を十分に得るためには汚れを除去したい部分を組成物に浸漬させる必要があり、使用量が増える。
【0011】
特許文献2に記載された発明は、インクジェット記録ヘッドにおけるインクとの熱作用面へのスケール発生の抑制効果と金属の浸食防止を両立させるような組成物の記載に留まっており、汚泥処理設備等で発生するような強固な石膏スケールを含む付着物への洗浄手法については検討されていない。
【0012】
上記課題に鑑み、本発明は、被洗浄物上に付着するカルシウムスケールを含む付着物を少ない使用量で容易に洗浄除去することが可能なスケールの洗浄剤組成物、スケールの洗浄剤製品、スケールの洗浄方法及びスケールの洗浄装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために本発明は一側面において、(A)ポリアミノカルボン酸またはその塩5~30wt%、(B)界面活性剤1~15wt%、(C)強塩基1~12wt%、及び(D)残部水を含むことを特徴とするスケールの洗浄剤組成物である。
【0014】
本発明に係るスケールの洗浄剤組成物は一実施態様において、pHが5以上である。
【0015】
本発明に係るスケールの洗浄剤組成物は別の一実施態様において、(B)成分を3~12wt%含有する。
【0016】
本発明に係るスケールの洗浄剤組成物は別の一実施態様において、(A)成分として、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムからなる群の中から選択される1種以上を含む。
【0017】
本発明は別の一側面において、上記スケールの洗浄剤組成物と、洗浄剤組成物を収容し、洗浄剤組成物を泡状に吐出可能な泡吐出機構を備える吐出容器とを備えるスケールの洗浄剤製品である。
【0018】
本発明は更に別の一側面において、上記スケールの洗浄剤組成物を泡状にし、泡状の洗浄剤組成物を被洗浄物上に付着させる工程を含むスケールの洗浄方法である。
【0019】
本発明に係るスケールの洗浄方法は一実施態様において、被洗浄物に対して、洗浄剤組成物を50~1000g/m2の割合で付着させる。
【0020】
本発明に係るスケールの洗浄方法は別の一実施態様において、泡状の洗浄剤組成物を被洗浄物上に3分~1時間付着させた後、被洗浄物を水洗する。
【0021】
本発明に係るスケールの洗浄方法は別の一実施態様において、被洗浄物が、汚泥処理設備の脱水装置に生成するカルシウムスケールを含む。
【0022】
本発明は更に別の一側面において、汚泥処理設備の脱水装置に接続されるスケールの洗浄装置であって、上記スケールの洗浄剤組成物を脱水装置へ向けて泡状に吐出させる泡吐出機構を備えるスケールの洗浄装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、被洗浄物上に付着するカルシウムスケールを含む付着物を少ない使用量で容易に洗浄除去することが可能なスケールの洗浄剤組成物、スケールの洗浄剤製品、スケールの洗浄方法及びスケールの洗浄装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄剤組成物を汚泥処理設備の脱水装置へ供給する態様の例を示す説明図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係るスクリュープレス型脱水機の例を示す概略図である
【
図3】本発明の実施の形態に係る脱水装置に接続されるスケール洗浄装置を示す概略図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る脱水装置に接続されるスケール洗浄装置の変形例を示す概略図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る脱水装置に接続されるスケール洗浄装置の別の変形例を示す概略図である。
【
図6】実施例で使用したスクリュープレス型脱水機の例を示す写真である。
【
図7】
図7(a)はドラムスクリーンに対して実施例1の洗浄剤を泡状に塗布し、15分間静置した後に洗浄水で洗浄し、洗浄終了後にスクリーン上へ付着物の付着状況を確認した写真の例であり、
図7(b)は、比較例6の洗浄組成物を用いた場合において洗浄終了後にスクリーン上へ付着物の付着状況を確認した写真の例である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図面を参照しながら本発明の実施の形態を以下に説明する。以下の図面の記載においては、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものではない。
【0026】
(洗浄剤組成物)
本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄剤組成物は、(A)ポリアミノカルボン酸またはその塩5~30wt%、(B)界面活性剤1~15wt%、(C)強塩基1~12
wt%、及び(D)残部水を含む。
【0027】
(A)成分を含むことにより、石膏スケール等のような被洗浄物上に強固に付着するカルシウムスケールを効率良く除去できる。(B)成分を含むことにより、被洗浄物に対する濡れ性を高め、複雑な形状を有する部材や、垂直面、斜面、メッシュなどを多く含む被洗浄物に対しても、短時間で流れ落ちることなく一定期間、被線状物上に均一に付着した状態で留まることができるような泡を形成でき、これにより洗浄効率を高めることができる。(C)成分を含むことにより、(A)~(C)成分の溶解性を高めながら硫酸カルシウム等のような強固なカルシウムスケールを効率良く軟質化させて除去できる。
【0028】
(A)ポリアミノカルボン酸
ポリアミノカルボン酸としては、エチレンジアミン四酢酸、プロペンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、エチレングリコールビス(β-アミノエチルエーテル)-N,N,N,N-四酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸からなる群の中から選択される1種以上が用いられる。中でも、入手容易性や経済性等の観点から、ニトリロ三酢酸、エチレンジアミン-N,N’-ジコハク酸、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウムからなる群の中から選択される1種以上を用いることが好ましい。
【0029】
(A)成分の配合量は、洗浄剤組成物の全質量を基準として5~30wt%、好ましくは8~20wt%である。5wt%未満では十分なスケールの除去効果が得られない。また、30wt%超では過剰配合となって不溶解となり、使用量の無駄が生じる上、泡形状の安定性も損なうことがある。
【0030】
(B)界面活性剤
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤からなる群の中から選択される1種以上を用いることが可能である。例えば、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルケニルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルアミド、ポリオキシアルキレンアルケニルアミド、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、アルキルアミンオキシドやアルキルジメチルベタインなどの両性界面活性剤からなる群の中から選択される1種以上を好ましく用いることができる。中でも、本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物の被洗浄物に対する良好な泡の付着性と持続性を考慮すると、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやアルキルアミンオキシドが好ましい。
【0031】
ポリオキシエチレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレン-2-エチルヘキシルエーテルを好適に挙げることができ、特に好ましいのはポリオキシエチレンイソデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテルである。
【0032】
アルキルアミンオキシドとしては、特に下記式(1)で表されるアルキルアミンオキシドが好ましい。
【化1】
(式中、R
1は、炭素数1~30のアルキル基又はアルケニル基であり、R
2及びR
3は各々独立して炭素数1~4のアルキル基である。)
【0033】
上記置換基のうち、R1は炭素原子1~30、好ましくは1~20、更に、好ましくは8~14の炭素原子を含む飽和あるいは不飽和、置換あるいは非置換、直鎖あるいは分岐鎖アルキル基である。R2およびR3は炭素原子を含む飽和あるいは不飽和、置換あるいは非置換、直鎖あるいは分岐鎖アルキル基である。より好ましくは、R2およびR3は炭素数1~2の同一アルキル基であり、最も好ましくはR2およびR3の両方が炭素数1のアルキル基(メチル基)である。
【0034】
具体例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、カプロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ラウロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ミリスチロイルアミノプロピルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ミリスチル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド、ヤシアルキル-ビス(2-ヒドロキシエチル)アミンオキシド等を挙げることができる。
【0035】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、アルキルアミンオキシドは一種を単独で用いても良いし、二種以上を混合して使用してもよい。これらの中でも特に洗浄性能、発泡性能の点から、ラウリルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ミリスチルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシドが好ましく、最も好ましくはデシルジメチルアミンオキシドである。
【0036】
界面活性剤の配合量は、洗浄剤組成物の全質量を基準として1~15wt%、好ましくは3~12wt%、更には5~11wt%である。1wt%未満では泡立ちが不十分となり、被洗浄面への広がりも均一ではなくなることがある。15wt%を超えると洗浄剤組成物全体の溶解性が均一ではなくなり、洗浄後の水洗性が低下するので好ましくない。
【0037】
(C)強塩基
強塩基としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウムからなる群の中から選択される1種以上が用いられる。これらの強塩基の配合量は、1~12wt%が好ましく、2~10wt%が更に好ましく、2.5~5wt%がより更に好ましい。1wt%より低いとアミノカルボン酸が水に溶解せず、12wt%より多いと洗浄剤のpHが高くなり、石膏スケールの軟質化能力が低下する。
【0038】
本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄剤組成物は、泡の安定性や付着性を増加させるために泡安定剤を含んでいてもよい。泡安定剤としては、ポリアルキレングリコール、多糖類ポリマーあるいはこれらの混合物を好適に挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、400~100万分子量を有するポリエチレングリコールが好適である。多糖類ポリマーとしては、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、サクシノグリカン、キサンタンガム、グアーガム、ロクストビーンガム、トラガントガム、カラギーナン、アルギン酸ナトリウム、カゼイネート、あるいはこれらの誘導体からなる群の中から選択される1種以上を好適に挙げることができる。
【0039】
洗浄剤組成物中の泡安定剤の配合量は、洗浄剤組成物の全質量を基準として0.01~3wt%が好ましく、0.05~2wt%がより好ましい。0.01wt%以上配合することにより、脱水設備の垂直面や傾斜面、スクリーンドラムの円筒面での石膏スケールに対する付着滞留性を向上させ、石膏スケールの洗浄性能を向上させることができる。配合量が3wt%を超えると洗浄剤組成物の粘度が高くなり過ぎ、容器からの吐出が困難になりあるいは被洗浄物の表面での均一広がり性が悪化するなどの問題を生じることがある。
【0040】
洗浄剤組成物のpHは5以上、好ましくは6.5以上、更には8以上に調整しておくことが好ましい。pHが5未満では石膏スケールの溶解力が低下し、組成物が全く溶解しないことがあるからである。pHの調整は水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような任意のアルカリ剤を使用できる。
【0041】
本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄剤組成物によれば、石膏スケール等の強固なスケールに作用する成分を被洗浄物に対して泡状に付着させることができ、泡状に付着した洗浄剤組成物は被洗浄物上から流れ落ちることなく安定して留まることができる。よって、少ない洗浄剤量で石膏スケールを容易に洗浄除去することが可能となる。
【0042】
(洗浄剤製品)
本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄剤製品は、上記のスケールの洗浄剤組成物と、洗浄剤組成物を収容し、洗浄剤組成物を泡状に吐出可能な泡吐出機構を備える吐出容器とを備える。
【0043】
吐出容器の構成は特に限定されない。例えば、スプレー式容器、トリガースプレーヤー式容器等が吐出容器として好適に用いられる。トリガースプレーヤー式容器としては、実公平6-34858号公報、特開平8-332422号公報に開示されている容器などを制限なく用いることができ、吐出方式も手動式又は蓄圧式のいずれでもよい。
【0044】
被洗浄物が脱水機などの複雑で入り組んだ構造物上に形成されている石膏スケールである場合には、被洗浄物に直接、洗浄剤組成物を泡状に吐出することができるように先端にノズル等の泡吐出機構を具備する容器が特に好適である。また、ノズルの口径、ラウンド長さ、吐出圧を変えることによって所望の径又は厚みの泡として吐出することができる。
【0045】
(洗浄方法)
本発明の実施の形態に係るスケールの洗浄方法は、上記のスケールの洗浄剤組成物を泡状にし、泡状の洗浄剤組成物を被洗浄物上に付着させる工程を含む。本実施形態では、洗浄剤組成物を泡状に吐出可能な吐出容器の吐出部から被洗浄物上に3分~1時間付着させた後、被洗浄物を水洗することが好ましい。
【0046】
本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物を被洗浄物上に好ましくは3分~1時間、より好ましくは5分~30分程度付着させることにより、被洗浄物が膨潤し剥離しやすい状態になる。その後、被洗浄物を水洗、好ましくは高圧洗浄することにより、洗浄剤組成物によって溶解したスケールを洗い流すことができる。本実施形態に係る洗浄剤組成物は石膏スケールの洗浄により効果的である。
【0047】
被洗浄物上に付着させる洗浄剤組成物の量は被洗浄物に対して洗浄剤組成物を50~1000g/m2の割合で付着させることが好ましい。また、洗浄効率及び経済性の観点から約2~約10mmの厚さの泡状として、洗浄剤組成物を被洗浄物に付着させることが好ましい。洗浄組成物は10倍程度まで水希釈して使用してもよい。
【0048】
(洗浄対象物)
次に、本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物を用いた洗浄処理に利用可能な洗浄対象物について説明する。
【0049】
本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物は、特に被洗浄物上に強固に付着する石膏スケールのようなカルシウムスケールの洗浄除去に適しているため、汚泥処理設備の一部又は全部の洗浄に好適に使用される。特に、ポリ硫酸第二鉄や硫酸バンドのような硫酸イオンを含有する無機凝集剤を使用する脱水工程以降に石膏スケールが発生しやすいため、汚泥処理設備における濃縮機やスクリーンドラムでの洗浄に特に好適である。
【0050】
図1は、汚泥処理設備を模式的に示す図である。本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物は、混合生汚泥、余剰汚泥、消化汚泥など多様な種類の汚泥用の汚泥処理設備1を洗浄可能である。汚泥処理設備に供給される汚泥の処理方法や汚泥処理設備が備える処理装置の構造も特に限定されないが、例えば、汚泥を脱水する脱水装置10を洗浄対象物として好適に適用できる。
【0051】
汚泥処理設備1は、脱水装置10の前段に1以上の前処理槽5を備えることもある。汚泥は必要に応じて前処理槽5で、濃縮、貯留、撹拌等の1以上の前処理が施された後、脱水装置10で脱水処理される。脱水処理された汚泥は脱水ケーキとして汚泥処理設備1から排出される。
【0052】
洗浄対象物は汚泥処理設備1の任意の装置又は部品とすることができる。具体的には前処理槽5の一部又は全部、脱水装置10の一部又は全部、配管、バルブ等の多様な装置(部品)が洗浄対象となる。これらの装置又は部品のうち、貫通孔、切欠き、スリットなど無底の開口部や、段差、溝、窪みなどの有底の開口部が形成された部分には汚泥が入り込んで蓄積しやすいが、本発明の洗浄剤は開口部の汚泥の除去にも効果を発揮する。以下に、洗浄対象物の一例として脱水装置10について説明する。
【0053】
(脱水装置)
脱水装置10の種類は特に限定されず、加圧脱水機、真空脱水機など多様なものを利用可能である。中でも、スクリュープレス型脱水機、ベルトプレス形脱水機などの絞り加圧脱水機が好ましく、特に、洗浄困難な微細な開口部(貫通孔)を多数有する点で、スプレープレス型脱水機での洗浄効果が高い。
【0054】
図2は、脱水装置10としてスクリュ―プレス型脱水機を用いた場合の模式的断面図である。脱水装置10は、中空筒状のスクリーン15と、スクリーン15に挿入されたシャフト11とを有している。シャフト11とスクリーン15のいずれか一方又は両方は駆動手段(不図示)に接続されており、シャフト11とスクリーン15のいずれか一方又は両方が、シャフト11の長手方向と平行な中心軸線を中心に回転する。すなわち、シャフト11は、スクリーン15内部に挿入された状態で、スクリーン15に対し相対的に回転する。
【0055】
汚泥はシャフト11の一端側からスクリーン15の内部に供給され、シャフト11の相対的な回転により、シャフト11の他端側に向かってスクリーン15とシャフト11の間の空間を移動する。シャフト11の軸本体は、一端が他端よりも小径であって(例:円錐台)、スクリーン15とシャフト11との間の容積は汚泥が供給される側が大きく、その反対側(排出側)程小さくなっているので、容積変化による内部圧力の上昇により汚泥は圧搾される。
【0056】
スクリーン15には貫通孔(開口部)が複数形成されており、圧搾により汚泥から分離した液体(水分)は貫通孔から排出され、汚泥は脱水される。汚泥が移動する先の排出側には背圧板(プレッサー)19が設置されている。脱水された汚泥は最後に背圧板19で圧搾され、ケーキ状になった汚泥(脱水ケーキ)がスクリーン15の外部へ排出される。
【0057】
(洗浄装置)
次に、このような微細な開口部を持つ洗浄対象の洗浄に用いる装置と、それを用いた洗浄方法について説明する。
【0058】
洗浄装置は本実施形態に係る洗浄剤組成物を用いた洗浄液を洗浄対象に付着可能な構成を有していれば特に限定されないが、好ましくは、洗浄剤組成物を泡状にして吐出する泡吐出機構を有する。
図3~5は、洗浄装置30、40、50を示す模式図である。洗浄装置30、40、50は、タンク31、41、51と、ノズル35、45、55とを有している。タンク31、41、51の台数は特に限定されず、洗浄剤の希釈が必要な場合には希釈剤(水)用のタンク42(
図4参照)を別途設置する。
【0059】
洗浄液を吐出するノズル35、45、55はタンク31、41、51と直接又は他の装置、例えば混合器43を有するタンク42及び配管等を介して接続されている。タンク31、41、51の内部空間からノズル35、45、55先端迄の間の流路には、いずれか一カ所以上にポンプのような送液手段39、49、59が接続されている。
【0060】
送液手段39、49、59は、手動又は自動(機械式)で加圧又は減圧(吸引)し、圧力差で洗浄剤をタンク31、41、51から押し出す。送液手段39、49、59が接続された配管にはバルブ38、48、58aが接続されている。
図3に示すように、押し出された洗浄剤は必要に応じて混合器43で希釈剤(水)と混合した後に、ノズル45へ送液してもよい。
【0061】
より具体的には、蓄圧式の場合、バルブ38でノズル35をタンク31から遮断した状態で、送液手段39でタンク31内の気体(空気、窒素ガス等)を圧縮して加圧しておき、バルブ38を開放してノズル35をタンク31に接続し、圧力差で洗浄剤を送液する。
【0062】
また、使用時に送液手段49、59を稼働させて加圧又は減圧し、例えば高圧フォーミング洗浄機等で洗浄液を送液することも可能である(高圧フォーミング洗浄機等)。いずれの洗浄装置30、40、50も、タンク31、41、51からノズル35、45、55先端迄の流路の一カ所以上に泡形成手段37、47、57が設置されており、この泡形成手段37、47、57とノズル35、45、55とで泡吐出機構が構成され、脱水装置10へ向けて洗浄剤を泡状に吐出させる。
【0063】
泡形成手段37、47、57は特に限定されず、発泡剤を用いた化学的発泡法を用いることもできるが、本発明の洗浄剤組成物は発泡性が高いため、洗浄剤組成物を気体(空気、窒素等)と混合して泡状とする機械的発泡法を採用することが好ましい。
【0064】
機械的発泡法を採用する具体例として第1には、泡形成手段37、47、57が、ノズル35、45、55の先端又は内部に設置した多孔体(スポンジ、ネット)であって、洗浄剤が多孔体を通過する間に気体と攪拌混合されて泡状になるような構成が採用できる
【0065】
第2には、泡形成手段37、47、57が、ノズル35、45、55の内壁、配管内壁、混合器43内壁などの硬質部品の表面に洗浄剤組成物を用いた洗浄液を衝突させて気体と混合し、泡状とするような構成が採用できる。
【0066】
第3には、泡形成手段37、47、57が、洗浄剤の流路(ノズル35、45、55、配管、混合器43)を外部空間へ接続する空気注入孔を設け、洗浄液が流れるときのエダクター効果により空気を引き込み、洗浄液と空気を混合して泡状とするような構成が採用できる。
【0067】
第4には、泡形成手段37、47、57が、圧縮空気や窒素ガスなどの気体を洗浄剤に送り込んで混合し、発泡させるような構成が採用できる。
【0068】
これら泡形成手段37、47、57とその他の泡形成手段は単独で用いてもよいし、1以上組合せて使用してもよいが、いずれの場合も、洗浄剤組成物は泡状となってノズル35、45、55から放出される。
【0069】
図5に示すように、脱水装置10内のシャフト11及びスクリーン15の汚染状態を撮像するカメラ等の撮像手段21と、シャフト11及びスクリーン15の汚染状態を確認しやすくするためにシャフト11及びスクリーン15に光を照射する照射手段22とを更に備えていても良い。撮像手段21及び照射手段22は、汎用の計算機等で構成される制御手段20に接続されている。制御手段20は、撮像手段21の撮像結果を、画像解析ツール等を用いて画像解析し、画像解析結果に応じて、シャフト11及びスクリーン15の洗浄処理が必要と解析された場合に、制御手段20が洗浄装置50の洗浄開始及び終了のタイミングを制御するように構成されてもよい。
【0070】
制御手段20は、所定の目的変数の入力に応じて所定の説明変数を出力するように構築された学習済モデルを用いた機械学習により洗浄装置50の洗浄液及び洗浄液を洗い流すすすぎ液の供給時間、供給量、供給頻度の少なくともいずれかを推測することが可能なAI手段23を備えていても良い。機械学習アルゴリズムとしては、サポートベクター回帰法(SVR法)、部分最小二乗法(PLS法)、ランダムフォレスト法、決定木法等の任意のアルゴリズムが利用できる。機械学習により構築された学習済モデルは定期的に更新されてもよいし、任意のタイミングで更新されてもよい。
【0071】
AI手段23により、撮像手段21によって撮像された脱水装置10内の汚染状態、即ち、シャフト11及びスクリーン15に付着する汚泥や石膏スケールの付着状況を示す撮像データに基づいて、洗浄装置50の洗浄液及び洗浄液を洗い流すすすぎ液の供給時間、供給量、供給頻度の少なくともいずれかを推測し、推測結果に基づいて、洗浄装置50の洗浄作業が自動的に行われることで、タイマ等による一定時間毎の一定処理条件での洗浄処理よりも更に最適なタイミングで適切な洗浄処理を行うことができるため、少ない洗浄液量でより効率の良い洗浄処理が行える。
【0072】
脱水装置10内部に汚泥及び石膏カルシウム等のスケール成分が付着するにつれてスクリーン15の貫通孔が詰まり、脱水装置10から排出される脱水汚泥の含水率が上がることがある。制御手段20は、脱水装置10から排出される脱水汚泥の含水率に基づいて、含水率が予め設定された設定値よりも上回る売に、洗浄装置50の洗浄装置を制御するようにしてもよい。
【0073】
(洗浄装置を用いた洗浄方法)
次に、洗浄装置30、40、50を用いた洗浄方法について説明する。先ず、本実施形態に係る洗浄剤組成物を用いた希釈型洗浄剤又は濃縮型洗浄剤のいずれかをタンク31、41、51に収容する。濃縮型洗浄剤を用いる場合、あるいは希釈型であっても更なる希釈が必要な場合は、別途タンク42に水を主成分とする希釈剤を充填しておく。
【0074】
使用時(希釈後)の洗浄剤濃度は特に限定されないが、例えば、蓄圧式洗浄装置30のように比較的泡径が大きい場合、高圧フォーミング洗浄機としての洗浄装置40のように比較的泡径が小さい場合などの状況に応じてそれぞれ希釈してからタンク31、41、51に収容するか、ノズル35、45、55に到達する迄に適切な濃度になるようにタンク42の希釈剤で希釈する。
【0075】
脱水装置10としてスクリュープレス型脱水機を洗浄する場合、所定時間、所定量の汚泥の処理が終了した時、汚泥の処理能力が設定基準よりも低下した時、或いは、スクリーン15のスケール付着量が多いと判断された時、洗浄を開始する。洗浄を開始する際には、脱水装置10の運転中であってもよいが、好ましくは脱水装置10の運転を停止し、シャフト11とスクリーン15を静止した状態で洗浄を開始する。
【0076】
洗浄処理では上記のような洗浄装置30、40、50を用い、泡状の洗浄剤をスクリーン15の外周側面に付着させる。洗浄剤の付着量も特に限定されないが、洗浄対象の面積1m2当たり、所望濃度に希釈した洗浄剤を50~1000g付着させることが好ましい。50g/m2未満では石膏スケールの洗浄効果が低く、1000g/m2を超えると洗浄剤が無駄になり、経済的に好ましくない。
【0077】
スクリーン15は金属材料(ステンレスなど)で形成された硬質表面を有し、従来の洗浄剤は硬質表面への付着力が弱いが、本発明の洗浄剤は界面活性剤の使用により硬質表面への付着力が高く、かつ、石膏スケールを溶解、軟化させる能力が高い。しかも、洗浄剤は最小径20mm以下の微細な開口部(貫通孔)にも入り込む。従って、平坦な表面のみならず、開口部の内部に付着した石膏スケールをも溶解又は軟化させ、石膏スケールが洗浄対象から除去できる。
【0078】
噴霧直後に洗浄剤を他の洗浄液(洗浄水、水)で洗い流してもよいが、より好ましくは洗浄剤が付着(噴霧)してから3分以上、好ましくは5分以上放置して洗浄剤を石膏スケールと十分に接触、含浸させる。
【0079】
本発明の実施の形態に係る洗浄剤組成物は気泡を隔てる洗浄剤の薄膜を維持し、泡状態が安定して維持されるので、放置している間も洗浄剤は泡状態が維持される。従って、単に洗浄剤を霧状に噴霧した場合とは異なり、スクリーン15のように曲面を有する洗浄対象であっても、洗浄剤が垂れずに曲面上に留まる。
【0080】
所定時間放置後、洗浄剤が乾燥せず、石膏スケールが洗浄剤に含浸又は溶解している状態で、(好ましくは洗浄剤の付着終了から1時間以内、好ましくは30分以内、より好ましくは15分以内)、洗浄対象の表面に洗浄水を吹き付けると、汚泥と共に洗浄剤を洗い流すことができる。
【0081】
なお、洗浄剤をすすぐためのすすぎ液は、上記洗浄装置30、40とは別の洗浄装置60(
図4参照)を使用してもよいが、
図5に示すように、洗浄水のタンク56を洗浄装置50に組み込み、バルブ58a、58bの切り替えによりノズル55から放出する液体(洗浄剤、洗浄水)を切替えてもよいし、別途洗浄水用のノズルを設置してもよい。
【0082】
洗浄装置30、40は汚泥処理設備からは分離した別装置としてもよいし、洗浄装置50を汚泥処理設備(スクリュープレス型脱水機など)に組み込んでもよい。例えば、スクリュープレス型脱水機に洗浄装置50を組み込む場合、ノズル55をスクリーン15の内部に設置してもよいが、より簡易な方法としては、スクリーン15の外部にノズル55を設置する。本発明の洗浄剤は硬質表面の付着力、汚泥の洗浄能力が高いので、スクリーン15の外側から泡状洗浄剤を付着させても開口部内の汚泥を十分に除去可能である。
【0083】
洗浄方法は特に限定されず、洗浄剤を吹き付ける工程と、水等のすすぎ液で洗い流す工程のいずれか一方又は両方を、複数回連続して繰り返してもよいし、これら工程を交互に繰り返してもよい。洗浄工程終了後は、必要に応じて洗浄対象を乾燥させる。
【0084】
本発明は上記の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本開示は、上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を相互に組み合わせ、変形して具体化できることは勿論である。
【実施例0085】
以下に本発明の実施例を比較例と共に示すが、これらの実施例は本発明及びその利点をよりよく理解するために提供するものであり、発明が限定されることを意図するものではない。
【0086】
(洗浄組成物の調製)
表1に示す洗浄成分、界面活性剤(ポリオキシエチレンイソデシルエーテル)、水酸化ナトリウム、残部として水道水を混合し、実施例1~6及び比較例1~6に示す洗浄組成物を調製した。実施例1~6、比較例1、4~6は、洗浄組成物を調製することができたが、比較例2は洗浄組成物のpHが酸性域となり、中性域にしないと溶解せず洗浄組成物が調製できなかった。比較例3はスルファミン酸の濃度が高すぎて溶解せず、洗浄組成物が調製できなかった。
【0087】
(浸漬試験)
石膏を主成分としたスケールをシャーレに1gほどとり、実施例1~6、比較例1、4~6の洗浄組成物をスケールが浸漬する程度に投入し、10分後のスケールの硬さを確認した。
【0088】
(噴霧試験)
し尿処理場で石膏スケールが付着しているスクリュープレス型脱水機のドラムスクリーンを洗浄対象物として処理を行った。実施例1及び比較例5、6の洗浄組成物を
図6に示すような石膏を主成分とするスケールが付着しているスクリュープレス型脱水機の表面に噴霧装置を使用して塗布した。塗布後15分静置した後に、スケールの硬さ(スケール軟質化能力)を評価した。更に、塗布後に薬剤の残留性を評価した。静置後はすすぎ液として水を用いて洗浄した。結果を表1に示す。
【0089】
【0090】
表1中、スケール軟質化能力と薬剤残留効果の評価は、以下を基準とした。
<スケール軟質化能力>
◎・・・スケールが十分柔らかくなり、砕けている。
〇・・・スケールが柔らかくなっている。
△・・・スケールが少しだけ柔らかくなっている
×・・・スケールの状態がほとんど変わっていない
-・・・測定不能
<薬剤残留>
◎・・・薬剤が10分以上残り続けている。
×・・・薬剤が1分以内にほとんど壁面に残っていない。
-・・・未評価
【0091】
実施例1~6のいずれも浸漬試験において石膏を主成分としたスケールを十分に柔らかくすることができた。実施例1では噴霧試験におけるスケール軟質化能力及び薬剤残留性も良好であった。比較例1は水酸化ナトリウムが添加されておらず洗浄組成物のpHが酸性域にあり、石膏スケールを少ししか軟化させることができなかった。比較例5は界面活性剤が添加されていないため薬剤がクリュープレス脱水機の表面上に殆ど残らず、噴霧試験においては石膏スケールを十分に軟化させることができなかった。比較例6は、洗浄組成物のpHが酸性域にあり、薬剤残留性は良好であったが石膏スケールを十分に軟化させることはできなかった。
【0092】
(スクリーンの洗浄結果)
図7(a)は、スクリュープレス型脱水機のドラムスクリーンに対して噴霧装置を使用して実施例1の洗浄剤を泡状に塗布し、15分間静置した後に洗浄水で洗浄し、洗浄終了後にスクリーンの付着状況を確認した写真の例である。石膏スケールが軟化除去されてスクリーンの孔周辺には異物が無い状況が確認できる。一方、
図7(b)は、比較例6の洗浄組成物を用いた以外は
図7(a)と同様に洗浄試験を行った結果を示す。
図7(b)に示すように、比較例6の洗浄剤組成物を用いた場合は、スクリーンの孔が閉塞したままの状況であった。