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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140901
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】電力ケーブルの接続部
(51)【国際特許分類】
   H02G 15/02 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02G15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052266
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000213884
【氏名又は名称】住電機器システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】大森 正規
【テーマコード(参考)】
5G375
【Fターム(参考)】
5G375AA01
5G375CD02
5G375DA33
5G375DB32
5G375EA17
(57)【要約】
【課題】遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる電力ケーブルの接続部を提供する。
【解決手段】遮蔽層と前記遮蔽層の外周を覆うシースとを有する電力ケーブルと、前記シースの外周面を覆っている介在層と、前記介在層を締め付けるように前記介在層の外周面を把持しているブラケットと、前記ブラケットよりも前記電力ケーブルの先端に近い位置において前記シースの外周面を覆っている常温収縮チューブと、を備え、前記電力ケーブルの数は1本であり、前記常温収縮チューブは多重構造であり、前記常温収縮チューブは、前記ブラケットの端面に接触している端面を有する、電力ケーブルの接続部。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遮蔽層と前記遮蔽層の外周を覆うシースとを有する電力ケーブルと、
前記シースの外周面を覆っている介在層と、
前記介在層を締め付けるように前記介在層の外周面を把持しているブラケットと、
前記ブラケットよりも前記電力ケーブルの先端に近い位置において前記シースの外周面を覆っている常温収縮チューブと、を備え、
前記電力ケーブルの数は1本であり、
前記常温収縮チューブは多重構造であり、
前記常温収縮チューブは、前記ブラケットの端面に接触している第一端面を有する、
電力ケーブルの接続部。
【請求項2】
前記常温収縮チューブは内周から外周に向かって順に第一常温収縮チューブおよび第二常温収縮チューブを含む、請求項1に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項3】
前記第一常温収縮チューブの第一端面は、前記介在層の端面に接触している、請求項2に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項4】
前記第二常温収縮チューブの第一端面は、前記ブラケットの端面に接触している、請求項2または請求項3に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項5】
前記第一常温収縮チューブの第二端面は、前記第二常温収縮チューブの第二端面よりも、前記電力ケーブルの先端に近い位置にある、請求項4に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項6】
前記第一常温収縮チューブの長さは、5cm以上12cm以下である、請求項5に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項7】
前記第二常温収縮チューブの長さは、5cm以上12cm以下である、請求項6に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項8】
前記常温収縮チューブは、前記第一常温収縮チューブおよび前記第二常温収縮チューブの二重構造である、請求項4に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項9】
前記第二常温収縮チューブの外周面は、前記ブラケットの外周面からはみ出る部分を有する、請求項8に記載の電力ケーブルの接続部。
【請求項10】
前記第一常温収縮チューブの前記第一端面と前記第二常温収縮チューブの前記第一端面とが面一である、請求項9に記載の電力ケーブルの接続部。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力ケーブルの接続部に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、遮蔽層とシースとを有する電力ケーブルと、スプリングリングと、収縮チューブと、介在テープと、固定ブラケットとを備える電力ケーブル端末部を開示している。スプリングリングは、シースの外周面に食い込むように巻き付けられている。収縮チューブは、スプリングリングとシースの外周面とをまとめて覆っている。スプリングリングによって収縮チューブには膨らみ部が形成されている。介在テープは、膨らみ部よりも電力ケーブルの先端から遠い位置において収縮チューブの外周面に巻きつけられている。固定ブラケットは、介在テープの外周面を挟んでいる二つの分割片を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-210642号公報
【特許文献2】特開平8-340627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
シースは、製造過程上、電力ケーブルの長さに沿った方向に対して引張の歪みが残留している。この残留歪みは、例えば外気温度の変化や通電といったヒートサイクルの熱影響によって開放される。残留歪みが開放されると、シースの長さに沿った方向にシースが収縮する。このシースの収縮はシュリンクバックと言われる。シースが収縮すると、遮蔽層に対してシースがずれる。遮蔽層は、シースの収縮により負荷がかかることによって損傷するおそれがある。
【0005】
特許文献1では、シースに食い込ませたスプリングリングと、スプリングリングによって形成された収縮チューブの膨らみ部とによって、遮蔽層に対するシースのずれを抑制している。
【0006】
本開示は、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる電力ケーブルの接続部を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電力ケーブルの接続部は、
遮蔽層と前記遮蔽層の外周を覆うシースとを有する電力ケーブルと、
前記シースの外周面を覆っている介在層と、
前記介在層を締め付けるように前記介在層の外周面を把持しているブラケットと、
前記ブラケットよりも前記電力ケーブルの先端に近い位置において前記シースの外周面を覆っている常温収縮チューブと、を備え、
前記電力ケーブルの数は1本であり、
前記常温収縮チューブは多重構造であり、
前記常温収縮チューブは、前記ブラケットの端面に接触している第一端面を有する。
【発明の効果】
【0008】
本開示の電力ケーブルの接続部は、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態の電力ケーブルを示す概略正面図である。
図2図2は、図1のII-II断面図である。
図3図3は、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、図1のIV-IV断面図の一例を説明する図である。
図5図5は、図1のIV-IV断面図の他の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
《本開示の実施形態の説明》
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
(1)本開示の一態様の電力ケーブルの接続部は、
遮蔽層と前記遮蔽層の外周を覆うシースとを有する電力ケーブルと、
前記シースの外周面を覆っている介在層と、
前記介在層を締め付けるように前記介在層の外周面を把持しているブラケットと、
前記ブラケットよりも前記電力ケーブルの先端に近い位置において前記シースの外周面を覆っている常温収縮チューブと、を備え、
前記電力ケーブルの数は1本であり、
前記常温収縮チューブは多重構造であり、
前記常温収縮チューブは、前記ブラケットの端面に接触している第一端面を有する。
【0012】
一重構造の常温収縮チューブは、収縮力が過度に大きくならない厚みには限界がある。一方で、常温収縮チューブの端面をブラケットの端面に接触させるには、常温収縮チューブの厚さは介在層の厚さよりも厚いことが求められる。そのため、一重構造の常温収縮チューブは、その端面をブラケットの端面に十分に接触させることができない。常温収縮チューブが多重構造であることで、常温収縮チューブがブラケットの端面に確実に接触する端面を有することができる。上記(1)の電力ケーブルの接続部は、常温収縮チューブの端面がブラケットの端面に接触していることで、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。多重構造の常温収縮チューブとすることで、各層を構成する常温収縮チューブの収縮力が過度に大きくならない。そのため、各層の常温収縮チューブは、拡径に過度の力を要することがなく、拡径した状態に保持するための拡径筒の強度も大きく高める必要がない。
【0013】
(2)上記(1)の電力ケーブルの接続部において、
前記常温収縮チューブは内周から外周に向かって順に第一常温収縮チューブおよび第二常温収縮チューブを含んでいてもよい。
【0014】
上記(2)の電力ケーブルの接続部は、第一常温収縮チューブと第二常温収縮チューブとによって、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。
【0015】
(3)上記(2)の電力ケーブルの接続部において、
前記第一常温収縮チューブの第一端面は、前記介在層の端面に接触していてもよい。
【0016】
上記(3)の電力ケーブルの接続部は、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。
【0017】
(4)上記(2)または上記(3)の電力ケーブルの接続部において、
前記第二常温収縮チューブの第一端面は、前記ブラケットの端面に接触していてもよい。
【0018】
上記(4)の電力ケーブルの接続部は、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。
【0019】
(5)上記(2)から上記(4)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記第一常温収縮チューブの第二端面は、前記第二常温収縮チューブの第二端面よりも、前記電力ケーブルの先端に近い位置にあってもよい。
【0020】
上記(5)の電力ケーブルの接続部は、第二常温収縮チューブとシースとの間に水または雪などが溜まることを抑制できる。
【0021】
(6)上記(2)から上記(5)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記第一常温収縮チューブの長さが5cm以上12cm以下であってもよい。
【0022】
第一常温収縮チューブの長さが5cm以上であれば、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。第一常温収縮チューブの長さが12cm以下であれば、施工性に優れる。
【0023】
(7)上記(2)から上記(6)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記第二常温収縮チューブの長さは、5cm以上12cm以下であってもよい。
【0024】
第二常温収縮チューブの長さが5cm以上であれば、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。第二常温収縮チューブの長さが12cm以下であれば、施工性に優れる。
【0025】
(8)上記(2)から上記(7)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記常温収縮チューブは、前記第一常温収縮チューブおよび前記第二常温収縮チューブの二重構造であってもよい。
【0026】
上記(8)の電力ケーブルの接続部は、遮蔽層に対してシースがずれることを効果的に抑制できる。
【0027】
(9)上記(2)から上記(8)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記第二常温収縮チューブの外周面は、前記ブラケットの外周面からはみ出る部分を有していてもよい。
【0028】
第二常温収縮チューブの外周面がブラケットの外周面からはみ出る部分を有しているということは、第二常温収縮チューブの端面とブラケットの端面との接触面積が大きい。そのため、上記(9)の電力ケーブルの接続部は、遮蔽層に対してシースがずれることをより効果的に抑制できる。
【0029】
(10)上記(2)から上記(9)のいずれかの電力ケーブルの接続部において、
前記第一常温収縮チューブの前記第一端面と前記第二常温収縮チューブの前記第一端面とが面一であってもよい。
【0030】
上記(10)の電力ケーブルの接続部は、第一常温収縮チューブの第一端面および第二常温収縮チューブの第一端面と、ブラケットの端面との間のデッドスペースを低減し易く、実質的に無くし易い。
【0031】
《本開示の実施形態の詳細》
本開示の電力ケーブルの接続部の詳細を、以下に説明する。図中の同一符号は同一または相当部分を示す。各図面が示す部材の大きさは、説明を明確にする目的で表現されており、必ずしも実際の寸法を表すものではない。
【0032】
《実施形態》
〔電力ケーブルの接続部〕
図1から図5を参照して、実施形態の電力ケーブルの接続部1を説明する。電力ケーブルの接続部1は、図1に示されるように、1本の電力ケーブル2と、介在層3と、ブラケット4と、常温収縮チューブ5とを備える。電力ケーブル2は、遮蔽層25と遮蔽層25の外周を覆うシース26とを備える。介在層3は、シース26の外周を覆っている。ブラケット4は、介在層3を締め付けるように介在層3の外周面を把持している。常温収縮チューブ5は、特定の位置においてシース26の外周面を覆っている。電力ケーブルの接続部1の特徴の一つは、常温収縮チューブ5が多重構造である点と常温収縮チューブ5がブラケット4の端面に接触している端面を有する点とにある。以下、電力ケーブルの接続部1が電力ケーブルの端末接続部である場合を例に説明する。以下の説明では、介在層3、ブラケット4、および常温収縮チューブ5において、電力ケーブル2の先端から遠い位置を第一の位置といい、電力ケーブル2の先端に近い位置を第二の位置という。
【0033】
[電力ケーブル]
電力ケーブル2は、内周から順に、導体、内部半導電層、絶縁体、外部半導電層、遮蔽層25、およびシース26を備える。導体、内部半導電層、絶縁体、および外部半導電層の図示は省略されている。電力ケーブル2は、内部半導電層と外部半導電層とを必要に応じて備えていなくてもよい。電力ケーブル2の先端は段剥ぎされている。段剥ぎされていることで、導体および絶縁体がシース26から露出している。露出している導体からシース26の端部にわたって図示が省略されたゴムモールド部品によって覆われている。シース26の材質は、例えばポリエチレン樹脂またはポリ塩化ビニル樹脂である。ポリエチレン樹脂のシース26はシュリンクバックが生じ易い。しかし、後述する介在層3、ブラケット4、および常温収縮チューブ5によって、シュリンクバックが生じ易いシース26であっても遮蔽層25に対してシース26がずれることが効果的に抑制され易い。本例の電力ケーブル2およびゴムモールド部品は、公知の電力ケーブルおよびゴムモールド部品で構成できる。図2図3では、説明の便宜上、遮蔽層25の内部の図示が省略されている。
【0034】
[介在層]
介在層3は、図3に示されるように、シース26の外周面を覆っている。介在層3は、上述のゴムモールド部品よりも電力ケーブル2の先端から遠い位置に設けられている。介在層3は、例えばアスファルトを含浸した含浸黄麻布をシース26の外周面に巻き付けて構成してもよいし、エチレンプロピレンゴムのシートを巻き付けて構成してもよい。介在層3は、公知の介在層で構成できる。介在層3は、後述するブラケット4によって締め付けられている。そのため、介在層3は各シース26の外周面に所定の面圧を付加する。よって、シース26に対して介在層3がずれることが効果的に抑制される。
【0035】
介在層3は、図4図5に示されるように、第一の位置にある第一端面31と、第二の位置にある第二端面32とを有する。本例の介在層3の長さは、後述する両湾曲部411,421の長さよりも長い。介在層3の長さと両湾曲部411,421の長さとは、電力ケーブル2の軸に沿った長さである。本例の介在層3の第一端面31は、後述する第一端面411a、421aよりも第一の位置にある。図4に示される例では、介在層3の第二端面32は、後述する第二端面411b、421bと面一である。図5に示される例では、介在層3の第二端面32は、上記第二端面411b、421bよりも第二の位置にある。
【0036】
[ブラケット]
ブラケット4は、図1に示される電力ケーブル2を取付対象に取り付ける。ブラケット4は、図3に示されるように、介在層3の外周面を把持している。ブラケット4は、介在層3を締め付けている。ブラケット4の材質は、例えば鋼、鋳鉄、アルミニウム、またはアルミニウム合金である。ブラケット4は、公知のブラケットで構成できる。本例のブラケット4は、本体41と押え部材42と2つの締付部材43とを備える。
【0037】
(本体)
本体41は、ブラケット4自体を取付対象に固定するためのものである。本体41は、半円状の湾曲部411と、湾曲部411の両側に形成されるフランジ部412と、湾曲部411の外側面に形成される固定台413とを備える。湾曲部411は、後述する押え部材42の湾曲部421との間に介在層3を配置する。湾曲部411は、介在層3の外周面の一部を囲む。湾曲部411は、図4図5に示されるように第一の位置にある第一端面411aと、第二の位置にある第二端面411bとを有する。第二端面411bは、後述する常温収縮チューブ5によって覆われている。両フランジ部412は、図3に示されるように、押え部材42を本体41に固定するためのものである。各フランジ部412には、後述する締付部材43が挿通される貫通孔412hが形成されている。両フランジ部412は、図4図5に示されるように、第一の位置にある第一端面412aと、第二の位置にある第二端面412bとを有する。第二端面412bは、第二端面411bと面一である。固定台413は、本体41を取付対象に固定する。取付対象は、例えば腕金である。固定台413には、本体41を取付対象に固定するための締付部材が挿通される貫通孔が形成されている。締付部材および貫通孔の図示は省略されている。締付部材はボルトが利用できる。
【0038】
(押え部材)
押え部材42は、本体41と共に介在層3を挟む。押え部材42は、本体41の湾曲部411およびフランジ部412の内側面と向かい合っている。押え部材42と本体41との間に介在層3が配置されている。押え部材42は、半円状の湾曲部421と、湾曲部421の両側に形成されるフランジ部422とを備える。湾曲部421は、介在層3の外周面の一部を囲む。湾曲部421は、図4図5に示されるように、第一の位置にある第一端面421aと、第二の位置にある第二端面421bとを有する。第二端面421bは、後述する常温収縮チューブ5によって覆われている。第二端面421bは、第二端面411bと面一である。各フランジ部422は、図3に示されるように、本体41の各フランジ部412に締付部材43で固定される。各フランジ部422には、締付部材43を挿通させる貫通孔422hが形成されている。両フランジ部422は、図4図5に示されるように、第一の位置にある第一端面422aと、第二の位置にある第二端面422bとを有する。第二端面422bは、第二端面421bと面一である。
【0039】
(締付部材)
締付部材43は、本体41のフランジ部412と押え部材42のフランジ部422とを一体に締め付けて本体41と押え部材42とを固定する。締付部材43によって、本体41の湾曲部411と押え部材42の湾曲部421とは、両湾曲部411、421の間に配置された介在層3を締め付けるように挟む。締付部材43は、ボルトが利用できる。
【0040】
[常温収縮チューブ]
多重構造である常温収縮チューブ5は、図1図4図5に示されるように、ブラケット4よりも電力ケーブル2の先端に近い位置においてシース26の外周面を覆っている。図4図5は、説明の便宜上、常温収縮チューブ5のみ断面で示されている。多重構造とは、2つ以上の互いに独立した常温収縮チューブが互いに重なるように構成されていることをいう。
【0041】
本例の常温収縮チューブ5は、図2に示されるように二重構造である。本例とは異なり、常温収縮チューブ5は三重構造以上でもよい。本例の常温収縮チューブ5は、内周から外周にむかって順に設けられる第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52によって構成されている。第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の材質は、互いに異なっていてもよいし互いに同じであってもよい。第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の材質は、例えば、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、ブチレンゴム、シリコンゴム、天然ゴム、フッ素ゴム、またはシリコーン変性エチレンプロピレンゴムである。第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52は、公知の常温収縮チューブで構成できる。公知の常温収縮チューブは、例えば、特開平11-98674号公報の外層構造体が利用できる。
【0042】
第一常温収縮チューブ51は、シース26の外周面を覆っている。第一常温収縮チューブ51は、シース26の外周面を十分に締め付けているため、摩擦によりシース26に対してずれない。本例では、シース26の外周面に装着された状態の第一常温収縮チューブ51の厚さは、介在層3の厚さに等しい。即ち、第一常温収縮チューブ51の外径が介在層3の外径に等しい。第二常温収縮チューブ52は、第一常温収縮チューブ51の外周面を覆っている。図4に示される例では、第二常温収縮チューブ52は、介在層3の外周面を覆うことなく第一常温収縮チューブ51の外周面のみを覆っている。図5に示される例では、第二常温収縮チューブ52は、介在層3のうちブラケット4の第二端面411b、421bから露出している部分の外周面も覆っている。第二常温収縮チューブ52は、第一常温収縮チューブ51の外周面を十分に締め付けているため、摩擦により第一常温収縮チューブ51に対してずれない。第二常温収縮チューブ52の内径は、第一常温収縮チューブ51の外径および介在層3の外径に等しい。第二常温収縮チューブ52の外径は、湾曲部411および湾曲部421の外接円の直径よりも大きい。
【0043】
第一常温収縮チューブ51の軸に沿った長さは、例えば5cm以上12cm以下、更に6cm以上11cm以下、特に7cm以上10cm以下である。第二常温収縮チューブ52の軸に沿った長さは、例えば5cm以上12cm以下、更に6cm以上11cm以下、特に7cm以上10cm以下である。第一常温収縮チューブ51の上記長さおよび第二常温収縮チューブ52の上記長さが5cm以上であれば、遮蔽層25に対してシース26がずれることを効果的に抑制できる。第一常温収縮チューブ51の上記長さおよび第二常温収縮チューブ52の上記長さが12cm以下であれば、施工性に優れる。第一常温収縮チューブ51の上記長さおよび第二常温収縮チューブ52の上記長さは、互いに同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。図4図5に示される例では、第二常温収縮チューブ52の軸に沿った長さは、第一常温収縮チューブ51の軸に沿った長さよりも短い。第二常温収縮チューブ52の厚さは、第一常温収縮チューブ51の厚さよりも厚くてもよいし、薄くてもよい。第二常温収縮チューブ52の厚さは、第一常温収縮チューブ51の厚さと同じであってもよい。
【0044】
第一常温収縮チューブ51は、第一の位置にある第一端面51aと、第二の位置にある第二端面51bとを有する。第一端面51aは、第二端面32に接触している。第二常温収縮チューブ52は、第一の位置にある第一端面52aと、第二の位置にある第二端面52bとを有する。第一端面52aは、第二端面411b、421bに接触している。第一端面51aが第二端面32に接触し、第一端面52aが第二端面411b、421bに接触していることによって、遮蔽層25に対してシース26がずれることが効果的に抑制される。
【0045】
図4に示される例では、第一端面51aと第一端面52aとは面一である。第一端面51aと第一端面52aとが面一であることで、第一端面51aおよび第一端面52aと、第二端面411b、421bの端面との間のデッドスペースを少なくし易く、更に実質的に無くし易い。
【0046】
図5に示される例では、第一端面52aは、第一端面51aよりも第一の位置にある。第一端面52aが第一端面51aよりも第一の位置にあることで、第二常温収縮チューブ52は、介在層3のうちブラケット4の第二端面411b、421bから露出している部分の外周面も覆うことができる。その上、第一端面52aを第二端面411b、421bに接触させることができる。
【0047】
図4図5に示される第二端面51bは、第二端面52bよりも第二の位置に近い位置にある。第二端面51bが第二端面52bよりも第二の位置に近い位置にあることで、第二常温収縮チューブ52とシース26との間に水または雪などが溜まることを抑制できる。
【0048】
第二常温収縮チューブ52の外周面は、図4図5に示されるように、ブラケット4の外周面、具体的には両湾曲部411,421の外周面からはみ出る部分を有していてもよい。第二常温収縮チューブ52の外周面が両湾曲部411,421の外周面からはみ出る部分を有しているということは、第二常温収縮チューブ52の第一端面52aと第二端面411b、421bとの接触面積が大きい。そのため、遮蔽層25に対してシース26がずれることがより効果的に抑制される。第一端面52aは、両フランジ部412,422の第二端面412b、422bにも接触していてもよい。
【0049】
本例の二重構造の常温収縮チューブ5は、次のようにして作製できる。拡径状態の第一常温収縮チューブ51をシース26の外周に配置する。第一常温収縮チューブ51の拡径は、公知の拡径筒によって行える。公知の拡径筒は、例えば、特開平11-98674号公報のコア部材が利用できる。上記コア部材は、紐状にほつれることで解体される。拡径状態の第一常温収縮チューブ51の内部に配置された拡径筒を漸次分解して引き抜くことで、第一常温収縮チューブ51を縮径させてシース26の外周面に装着させることができる。次に、拡径状態の第二常温収縮チューブ52をシース26の外周面に装着された第一常温収縮チューブ51の外周に配置する。第一常温収縮チューブ51と同様にして、拡径状態の第二常温収縮チューブ52の内部に配置された拡径筒を漸次分解して引き抜くことで、第二常温収縮チューブ52を縮径させて第一常温収縮チューブ51の外周面に装着させることができる。
【0050】
拡径状態の第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の厚さは、互いに同じでもよいし互いに異なっていてもよい。拡径状態の第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の内径は、互いに同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。後者の場合、拡径状態の第一常温収縮チューブ51の内径が第二常温収縮チューブ52の内径よりも小さい。拡径状態の第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の長さは、互いに同じであってもよいし互いに異なっていてもよい。本例では、拡径状態の第一常温収縮チューブ51および第二常温収縮チューブ52の厚さ、内径、および長さは互いに同じである。
【0051】
本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0052】
1 電力ケーブルの接続部
2 電力ケーブル
25 遮蔽層
26 シース
3 介在層
31 第一端面
32 第二端面
4 ブラケット
41 本体
411 湾曲部
411a 第一端面
411b 第二端面
412 フランジ部
412a 第一端面
412b 第二端面
412h 貫通孔
413 固定台
42 押え部材
421 湾曲部
421a 第一端面
421b 第二端面
422 フランジ部
422a 第一端面
422b 第二端面
422h 貫通孔
43 締付部材
5 常温収縮チューブ
51 第一常温収縮チューブ
51a 第一端面
51b 第二端面
52 第二常温収縮チューブ
52a 第一端面
52b 第二端面
図1
図2
図3
図4
図5