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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140904
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】内燃機関
(51)【国際特許分類】
   F02B 23/08 20060101AFI20241003BHJP
   F02F 1/24 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F02B23/08 U
F02B23/08 C
F02F1/24 H
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052269
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169111
【弁理士】
【氏名又は名称】神澤 淳子
(74)【代理人】
【識別番号】100098176
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 訓
(72)【発明者】
【氏名】野上 直人
(72)【発明者】
【氏名】角田 秀一郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 洋平
【テーマコード(参考)】
3G023
3G024
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AB01
3G023AD03
3G023AG02
3G024AA02
3G024DA01
3G024DA04
(57)【要約】
【課題】吸気弁口中心と排気弁口中心とを結んだ吸気流れ方向に対して側方に位置する点火プラグが配置されている2バルブ式の内燃機関において、タンブル流の乱れを抑制して、リーン燃焼を安定することのできる内燃機関を提供する。
【解決手段】
シリンダヘッド14とピストン15の頂面15aとで構成される燃焼室20を開閉する単一の吸気弁46、単一の排気弁50、吸気弁口、排気弁口30、吸気ポート32、タンブル通路64、および燃焼室20の側方に配置される点火プラグ21を備え、タンブル流は、吸気弁口28の中心点C1と排気弁口30の中心点C2を結ぶ仮想線Lに対して斜めに流入し、シリンダヘッド14側の燃焼室天井面100にタンブル流の流入方向に対して点火プラグ21よりも上流側に配置される凹部102を有し、タンブル流の乱れを抑制してリーン燃焼を安定させる内燃機関を提供する。
【選択図】図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッド(14)と、ピストン(15)の頂面(15a)とで構成される燃焼室(20)と、
前記燃焼室(20)を開閉する単一の吸気弁(46)および単一の排気弁(50)と、
前記吸気弁(46)により開閉される吸気弁口(28)と、前記排気弁(50)により開閉される排気弁口(30)と、
前記吸気弁口(28)に連通する吸気ポート(32)と、
前記吸気ポート(32)の手前に配置されたタンブル通路(64)と、
前記燃焼室(20)の側方に配置される点火プラグ(21)を備え、
前記タンブル通路(64)によって発生したタンブル流は、前記吸気弁口(28)の中心点(C1)と前記排気弁口(30)の中心点(C2)を結ぶ仮想線(L)に対して斜めに流入し、
前記燃焼室(20)のシリンダヘッド(14)側の燃焼室天井面(100)は、凹部(102)を有し、
前記凹部(102)は、タンブル流の流入方向に対して、前記点火プラグ(21)よりも上流側に配置されることを特徴とする内燃機関。
【請求項2】
前記ピストン(15)の頂面(15a)は、凹形状をなすことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項3】
前記凹部(102)は、前記点火プラグ(21)が挿入される点火プラグ孔(101)に連続することを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項4】
前記凹部(102)は、前記燃焼室天井面(100)の外周部(100b)から前記点火プラグ孔(101)に向かって連続して設けられていることを特徴とする請求項3に記載の内燃機関。
【請求項5】
前記凹部(102)は、タンブル流の上流側から、前記点火プラグ孔(101)と略同じ幅になるように、前記燃焼室天井面(100)の前記外周部(100b)から広がって、前記点火プラグ孔(101)に連なっていることを特徴とする請求項4に記載の内燃機関。
【請求項6】
前記凹部(102)は、前記燃焼室天井面(100)を流れるタンブル流の流れ方向に直角な断面積が均一であることを特徴とする請求項2に記載の内燃機関。
【請求項7】
前記燃焼室(20)の体積重心(CG)は、前記仮想線(L)に対して、前記吸気弁口(28)側かつ前記点火プラグ(21)が挿入される点火プラグ孔(101)寄りに位置することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関。
【請求項8】
シリンダヘッド(14)と、ピストン(15)の頂面(15a)とで構成される燃焼室(20)と、
前記燃焼室(20)を開閉する単一の吸気弁(46)および単一の排気弁(50)と、
前記吸気弁(46)により開閉される吸気弁口(28)と、前記排気弁(50)により開閉される排気弁口(30)と、
前記吸気弁口(28)に連通する吸気ポート(32)と、
前記吸気ポート(32)の手前に配置されたタンブル通路(64)と、
前記燃焼室(20)の側方に配置される点火プラグ(21)を備え、
シリンダ軸線(C)の方向において、前記燃焼室(20)に連なる吸気通路(38)に、前記燃焼室(20)でタンブル流を生じさせるための第1吸気通路(64)と、第2吸気通路(66)とが重なるように設けられ、
前記第1吸気通路(64)は、前記シリンダ軸線(C)の方向において前記第2吸気通路(66)から離れるように湾曲するとともに、前記シリンダ軸線(C)に直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成され、
前記燃焼室のシリンダヘッド(14)側の燃焼室天井面(100)は、凹部(102)を有し、
前記凹部(102)は、タンブル流の流入方向に対して、前記点火プラグ(21)よりも上流側に配置されることを特徴とする内燃機関。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2バルブ式の内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、より多くの人々が手ごろで信頼でき、持続可能かつ先進的なエネルギーへのアクセスを確保できるようにするため、エネルギーの効率化に貢献する燃費向上の研究開発が行われている。
【0003】
ところで、燃費向上に関する本技術においては、内燃機関として、4バルブ式であってペントルーフ型の燃焼室を備え、シリンダヘッドのペントルーフ面に凹部を有するものが開示されている(特許文献1参照)。
【0004】
このペントルーフ型の4バルブ式の内燃機関では、燃焼室の天井面の頂部近傍に点火プラグ配置されており、この天井面の点火プラグ周辺を流れるタンブル流の上流側に、凹部を形成することで、このペントルーフ面に沿って流れるタンブル流が、凹部に集約して整流され、タンブル流の流動のばらつきを抑制し、その結果リーン燃焼に対しての安定性が保たれるものである。
【0005】
このように、ペントルーフ型の4バルブ式の内燃機関では、燃焼室の天井面の点火プラグ周辺を流れるタンブル流の上流側に凹部を形成することで、吸気から排気方向に、強力なタンブル流を発生させて、タンブル流のばらつきを抑制することができる。
【0006】
一方、廉価な2バルブ内燃機関では、シリンダ中心の吸気から排気流れ方向に、吸気弁および排気弁が配置され、点火プラグは、吸気弁口中心と排気弁口中心とを結んだ吸気流れ方向に対して側方に位置する燃焼室側方に配置されるため、燃焼室吸気弁口中心と排気弁口中心を結んだ吸気流れ方向に向かって発生させるタンブル流では、点火プラグ周辺を流れる吸気流れの乱れを抑制して、リーン燃焼に対しての安定性を発揮するのに充分な効果を発揮することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO2019/197860公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明はこの点に着目してなされたものであり、2バルブ式の内燃機関であって、吸気弁口中心と排気弁口中心とを結んだ吸気流れ方向に対して側方に位置する点火プラグが配置されていても、タンブル流の乱れを抑制して、リーン燃焼を安定することのできる内燃機関を提供することを目的とする。そして延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、シリンダヘッドと、ピストンの頂面とで構成される燃焼室と、
前記燃焼室を開閉する単一の吸気弁および単一の排気弁と、
前記吸気弁により開閉される吸気弁口と、前記排気弁により開閉される排気弁口と、
前記吸気弁口に連通する吸気ポートと、
前記吸気ポートの手前に配置されたタンブル通路と、
前記燃焼室の側方に配置される点火プラグを備え、
前記タンブル通路によって発生したタンブル流は、前記吸気弁口の中心点と前記排気弁口の中心点を結ぶ仮想線に対して斜めに流入し、
前記燃焼室のシリンダヘッド側の燃焼室天井面は、凹部を有し、
前記凹部は、タンブル流の流入方向に対して、前記点火プラグよりも上流側に配置されることを特徴とする内燃機関である。
【0010】
前記構成によれば、タンブル流の点火プラグ周辺を流れる吸気流れの乱れを抑制して、リーン燃焼に対しての安定性を向上させることができる。
【0011】
前記構成において、好適には前記ピストンの頂面を凹形状となすことができる。
【0012】
前記構成によれば、ピストンの頂面を凹形状にすることにより、タンブル流の流れをより長時間維持することが可能となる。
【0013】
前記構成において、好適には前記凹部を、前記点火プラグが挿入される点火プラグ孔に連続させてもよい。
【0014】
前記構成によれば、点火プラグ周辺においてエッジ形状が発生することがなく、タンブル流の流れを良好にすることができる。
【0015】
前記構成において、好適には、前記凹部は、前記燃焼室天井面の外周部から前記点火プラグ孔に向かって連続して設けてもよい。
【0016】
前記構成によれば、燃焼室の形状が複雑になることがなく製造が容易となり、製造工程を簡素化して製造コストを抑制することが可能となる。
【0017】
前記構成において、好適には、前記凹部を、タンブル流の上流側から、前記点火プラグ孔の幅と略同じ幅にし、前記点火プラグ孔に連なって設けてもよい。
【0018】
前記構成によれば、凹部のタンブル流の流れ方向に対して直角な断面積に変化がなく、タンブル流を安定して流すことが可能となる。
【0019】
前記構成において、好適には、前記凹部は、前記燃焼室天井面を流れるタンブル流の流れ方向に直角な断面積が均一である。
【0020】
前記構成によれば、凹部の燃焼室天井面を流れるタンブル流の流れ方向に直角な断面積が均一なので、断面積の変化が少ないことで点火プラブ周辺を流れる吸気流れの乱れをより抑制することができる。
【0021】
前記構成において、好適には、前記燃焼室の体積重心を、前記仮想線の方向に対して、前記吸気弁口側かつ前記点火プラグが挿入される点火プラグ孔寄りに位置するようにしてもよい。
【0022】
前記構成によれば、燃焼室の体積重心を前記仮想線の方向に対して、吸気弁口側かつ点火プラグが挿入される点火プラグ孔寄りに位置させることにより、燃焼室内の吸気の平均乱れ強度を上げることなく、初期火炎近傍に高乱流強度領域を近づけることができ、リーン状態でも安定した火炎成長を促すことができる。
【0023】
本発明は、シリンダヘッドと、ピストンの頂面とで構成される燃焼室と、
前記燃焼室を開閉する単一の吸気弁および単一の排気弁と、
前記吸気弁により開閉される吸気弁口と、前記排気弁により開閉される排気弁口と、
前記吸気弁口に連通する吸気ポートと、
前記吸気ポートの手前に配置されたタンブル通路と、
前記燃焼室の側方に配置される点火プラグを備え、
シリンダ軸線の方向において、前記燃焼室に連なる吸気通路に、前記燃焼室でタンブル流を生じさせるための第1吸気通路と、第2吸気通路とが重なるように設けられ、
前記第1吸気通路は、前記シリンダ軸線の方向において前記第2吸気通路から離れるように湾曲するとともに、前記シリンダ軸線に直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成され、
前記燃焼室のシリンダヘッド側の燃焼室天井面は、凹部を有し、
前記凹部は、タンブル流の流入方向に対して、前記点火プラグよりも上流側に配置されることを特徴とする内燃機関ことを特徴とする内燃機関である。
【0024】
前記構成によれば、燃焼室でタンブル流を生じさせるための第1吸気通路は、シリンダ軸線の方向において第2吸気通路から離れるように湾曲するとともに、シリンダ軸線に直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成される。第1吸気通路をシリンダ軸線の方向において第2吸気通路から離れるように形成することで、第1吸気通路からの吸気を、タンブル流を形成するように滑らかに燃焼室に流入させることができ、第1吸気通路からの吸気の流れの流速を高めることが可能である場合もある。また、第1吸気通路をシリンダ軸線に直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成することで、第1吸気通路からの吸気が第2吸気通路からの吸気に干渉される度合いを下げることができる。
よって、燃焼室でより強いタンブル流を生じさせ、タンブル流を、吸気弁口の中心点と排気弁口の中心点を結ぶ仮想線に対して斜めに流入させることが可能となり、タンブル流の点火プラグ周辺を流れる吸気流れの乱れを抑制して、リーン燃焼に対しての安定性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、タンブル流の点火プラグ周辺を流れる吸気流れの乱れを抑制して、リーン燃焼に対しての安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の内燃機関の吸気構造が適用された一例の内燃機関の概略構成図である。
図2図1の内燃機関の吸気通路の下流側の立体モデルの平面図である。
図3図2の立体モデルの正面図である。
図4図2の立体モデルの底面図である。
図5図2の立体モデルの背面図である。
図6図2の立体モデルの右側面図である。
図7図2の立体モデルの左側面図である。
図8図2の立体モデルの左側からの斜視図である。
図9図2の立体モデルの右側からの斜視図である。
図10図5に示す立体モデルの透視図であり、燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す図である。
図11図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す、図2に示す立体モデルの透視図である。
図12図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料を模式的に示す、図2の立体モデルの吸気流れ方向に沿った断面図である。
図13A図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射した噴霧燃料を有する図2の立体モデルの断面図であり、図2のSA-SA線に沿った位置での断面図である。
図13B図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射した噴霧燃料を有する図2の立体モデルの断面図であり、図2のSB-SB線に沿った位置での断面図である。
図13C図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射した噴霧燃料を有する図2の立体モデルの断面図であり、図2のSC-SC線に沿った位置での断面図である。
図14A図13に示す立体モデルの部分の斜視図であり、図13Aの立体モデルに対応する図である。
図14B図13に示す立体モデルの部分の斜視図であり、図13Bの立体モデルに対応する図である。
図14C図13に示す立体モデルの部分の斜視図であり、図13Cの立体モデルに対応する図である。
図15】燃焼室の立体モデルおよび点火プラグを示した斜視図である。
図16】燃焼室の立体モデルおよび点火プラグの上面図である。
図17】燃焼室の立体モデルおよび点火プラグを、図15のXVII方向から視た図である。
図18】燃焼室天井面を流れるタンブル流の流れを示した図である。
図19A】本発明の内燃機関をCFDにより解析した結果における燃焼室内の初期火炎と高乱流強度領域の位置を示した平面図である。
図19B】従来の内燃機関をCFDにより解析した結果における燃焼室内の初期火炎と高乱流強度領域の位置を示した平面図である。
図20A図19Aの側面図である。
図20B図19Bの側面図である。
図21】第1実施形態に係る内燃機関の概略構成図である。
図22図21の内燃機関の燃焼室から吸気系の部分を中心とした立体モデルの平面図である。
図23図22の立体モデルの底面図である。
図24図22の立体モデルの側面図である。
図25】タンブル通路からの吸気の流れを模式的に示す図24に相当する側面図である。
図26】参考例の図1の内燃機関に関する図5の立体モデルを組み込んだ立体モデルの側面図である。
図27】第2実施形態に係る内燃機関の吸気構造を有する立体モデルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る実施形態を添付図に基づいて説明する。同一の部品(又は構成)には同一の符号を付してあり、それらの名称及び機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0028】
(参考例)
まず、本発明に係る実施形態を説明する前に、参考例に係る内燃機関10について説明する。内燃機関10の概略構成を図1に示す。図1は、内燃機関10のシリンダブロック12のシリンダボア12bの軸線(シリンダ軸線)Cに沿った、内燃機関10の断面図である。なお、内燃機関10は、単気筒エンジンである。
【0029】
シリンダブロック12のシリンダボア12b内を往復動するピストン15は、クランクケース部16のクランク軸17のクランクピンと、コネクティングロッド18により連結されている。シリンダブロック12のシリンダボア12b内に摺動自在に嵌合されるピストン15の頂面15aが対向するシリンダヘッド14の燃焼室天井面100との間には燃焼室20が構成される。ピストン15の頂面15aは、シリンダブロック12に対して窪んだ凹形状とされている。
【0030】
内燃機関10は、SOHC型式の2バルブシステムを採用しており、シリンダヘッド14に動弁機構22が設けられている。動弁機構22を覆うように、シリンダヘッド14にはシリンダヘッドカバー24が重ねられて被せられる。シリンダヘッドカバー24内の動弁機構22に動力伝達を行うため、図示しない無端状のカムチェーンが、クランクケース部16、シリンダブロック12、シリンダヘッド14のクランク軸方向の一方側に設けられた図示しないカムチェーン室を通って、カム軸26とクランク軸17との間に架設され、カム軸26はクランク軸17に同期して1/2の回転速度で回転する。なお、シリンダヘッド14においてカムチェーン室と反対側(クランク軸方向の他方側)から燃焼室20内に向かって点火プラグが嵌挿されている。なお、図1において、燃焼室20に臨む点火プラグ21は紙面手前側に位置し、カムチェーン室は紙面奥側に位置する。
【0031】
シリンダヘッド14において、燃焼室天井面100に開口した吸気弁口28と排気弁口30からは、各々吸気ポート32と排気ポート34が互いに上下に離れる方向に湾曲しながら延出して形成される。なお、上記のように2バルブシステムを採用していて、シリンダヘッド14には、単一の吸気ポート32及び単一の排気ポート34が区画形成されている。
【0032】
吸気ポート32の上流端は、シリンダヘッド14の上方に向けて開口し、インレットパイプ36と接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。排気ポート34の下流端は、シリンダヘッド14の下方に向けて開口し、排気管42に連結される。排気管42の下流側には、排気浄化装置及び消音装置が設けられ得る。
【0033】
シリンダヘッド14における吸気ポート32の湾曲外壁部32aに一体に円筒状の吸気弁ガイド44が嵌着されている。吸気弁ガイド44に摺動可能に支持された吸気弁46が、吸気ポート32の燃焼室20に臨む吸気弁口28を開閉する。
【0034】
また、シリンダヘッド14における排気ポート34の湾曲外壁部34aに一体に嵌着された排気弁ガイド48に摺動可能に支持された排気弁50が、排気ポート34の燃焼室20に臨む排気弁口30を開閉する。
【0035】
吸気弁46および排気弁50はその傘部46a、50aが、いずれも燃焼室20に臨む吸気弁口28、排気弁口30を閉じるように、弁ばねにより上方に付勢されている。カム軸26の吸気カム、排気カムに当接揺動する吸気ロッカアーム56、排気ロッカアーム58によって、吸気弁46、排気弁50のステムエンド46b、50bが押し下げられて、所定のタイミングで吸気弁46、排気弁50が開弁し、吸気ポート32と燃焼室20、また、排気ポート34と燃焼室20が連通し、所定のタイミングの吸気、排気がなされる。
【0036】
内燃機関10の吸気ポート32の上流端には、インシュレ-タ60を介してインレットパイプ36が接続して、連続した吸気通路38が構成され、インレットパイプ36の上流側に、スロットルボディ40が接続される。スロットルボディ40は、内燃機関10の燃焼室20に連なる吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路40aを有し、その上流側は、図示しないエアクリーナ装置に接続している。
【0037】
スロットルボディ40は、その吸気路40aの吸気の流れ方向と垂直、すなわち吸気路40aの中心軸線と直角に交差するスロットル弁軸40bによってスロットルボディ40内に回転自在に軸支されて、吸気路40aの流路面積を可変制御し、吸気路40aを開閉し得るスロットル弁40cを備えている。スロットル弁40cはバタフライ式のもので、スロットル弁軸40bと、スロットル弁軸40bに固定される共に一体的に回転する円盤状の弁体40dとを有している。
【0038】
スロットル弁40cは運転者の操作等により、図1において時計回りに開弁方向に回動可能となっているとともに、図示しない復帰ばねにより、弁体40dはそれの縁部が吸気路40aの内壁面に当接する全閉位置に位置するように、閉弁方向に反時計回りに付勢されている。スロットル弁40cは、例えば低負荷運転状態において吸気路40aを所定の微小開度にし、高負荷運転状態において吸気路40aを全開にするように制御される。
【0039】
次に、燃焼室20の形状について図15ないし図17を参照して説明する。図15ないし図17には、シリンダヘッド14側の燃焼室20の立体モデルMC、および点火プラグ21を示す。燃焼室は、ピストン15の頂面15aと、これに対向するシリンダヘッド14の燃焼室天井面100とで構成されている。ピストンの頂面15aは凹形状にされており、後述するタンブル流の流れを、より長時間持続させることが可能である。
【0040】
燃焼室天井面100は、図1および図15に示されるように、ピストン15の頂面15aに対向して窪むよう形成されている。燃焼室天井面100の基本となる形状の一般面100aは、燃焼室20の外周部20aすなわち燃焼室天井面100の外周部100bに連なる概ね三角錐形状のドーム状に形成されている。
【0041】
内燃機関10は、SOHC型式の2バルブシステムを採用している。図16に示されるように、燃焼室天井面100には、燃焼室天井面100の中心近傍を挟んで、吸気弁口28と排気弁口30が、それぞれ1つずつ開口している。
【0042】
吸気弁口28の中心点C1と、排気弁口30の中心点C2とを結んだ仮想線Lに対して一方の側に、点火プラグ孔101が開口している。点火プラグ21は、点火プラグ孔101に、その先端が燃焼室20の中心に向かって指向するように挿入される。点火プラグ21は、仮想線Lに対して斜めに傾斜して挿入されるとともに、図17に示されるように、シリンダ軸線Cに対して斜めに挿入される。点火プラグ21の着火点21aは、燃焼室天井面100の中心部分近傍に配置するのが好ましいものの、2バルブ式の吸気弁28および排気弁30の配置の都合上、燃焼室20に対して斜めに挿入される。
内燃機関10では、点火プラグ21は、仮想線Lに対して斜めに傾斜して挿入されているが、必ずしも仮想線Lに対して斜めに傾斜する必要はなく、仮想線Lに対して直角に挿入してもよい。また、内燃機関20では、点火プラグ21は、シリンダ軸線Cに対して斜めに挿入されているが、必ずしもシリンダ軸線Cに対して斜めに挿入する必要はなく、シリンダ軸線Cに対して直交するように、あるいはシリンダ軸線に沿うように挿入してもよい。
【0043】
燃焼室天井面100には、図16および図17に示されるように、燃焼室天井面100の一般面100aから窪むように凹部102が形成されている。
【0044】
以上の内燃機関10において、燃焼室20でのより好ましい燃料つまり混合気の燃焼を得るために燃焼室20において燃料・空気混合気のタンブル渦流つまりタンブル流、すなわち縦回転を与えるための吸気構造S0が構成されている。吸気構造S0は、シリンダ軸線Cの方向において吸気通路38を複数に分けるように、吸気通路38に設けられた仕切部62を備える。すなわち、吸気通路38は、インレットパイプ36から吸気ポート32へと続く仕切部62によって、吸気流れ方向に沿って分割され、通った吸気が燃焼室20内でタンブル流を発生するように構成されたタンブル通路64と、タンブル通路64を除く主通路66とに仕切られている。タンブル通路64が第1吸気通路に相当し、主通路66が第2吸気通路に相当する。なお、タンブル通路64は副通路と称されてもよい。
【0045】
なお、吸気流れ方向に板状に延在する仕切部62は、吸気通路38の下流側を実質的に上下方向において二分するように、ここでは流れ方向に延びる軸線に略平行に実質的に延びるように設けられている。本参考例では、タンブル通路64の流路断面積は主通路66の流路断面積よりも小さい。しかし、タンブル通路64の流路断面積が主通路66の流路断面積よりも大きくなるように仕切部62は設けられてもよく、それらを略同じにすることも可能である。
【0046】
吸気通路38の仕切部62によって仕切られた下側部分がタンブル通路64、上側部分が主通路66となるが、本明細書において、それらはその上下配置に限定されない。なお、本明細書において、吸気通路38などについての「上」、「下」とは、シリンダ軸線C方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14ないしシリンダヘッドカバー24側の方向を「上」又は「上」方向、この「上」方向とは逆向きの方向つまりシリンダヘッド14側からクランク軸17側の方向を「下」又は「下」方向といい、空間上の絶対的な「上」、「下」の意味ではない。この「上」又は「上」方向は第1方向に相当し、「下」又は「下」方向は第2方向に相当する。
【0047】
なお、仕切部62の上流側かつスロットル弁40cの下流側に吸気制御弁が更に設けられてもよい。この吸気制御弁は、例えば主通路66の流路面積を可変制御するように設けられ得る。当該吸気制御弁は、タンブル弁、タンブル制御弁又はTCVなどとも称され得、例えば低負荷運転状態において主通路66を全閉にし、高負荷運転状態において主通路66を全開にするように制御される。なお、スロットル弁40cは、以下に説明するように電子制御されるが、電子制御されることに限定されず、例えばスロットルケーブルで機械的にコントロールされる弁であってもよく、これは吸気制御弁を設ける場合も同様である。
【0048】
内燃機関10では、燃料噴射弁68、70が設けられている。一方の燃料噴射弁(以下、第1燃料噴射弁)68は、仕切部62の上流側端部62uよりも上流側に設けられて、該上流側端部62uよりも上流側の吸気通路38の部分に燃料を噴射するように設けられている。他方の燃料噴射弁(以下、第2燃料噴射弁)70は、吸気ポート32に燃料を噴射するように設けられている。第2燃料噴射弁70は、主通路66に臨むように設けられ、ここではインレットパイプ36に設けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、主通路66側から燃料を噴射し、吸気ポート32を介して燃焼室20に燃料を供給するように設けられている。なお、図1から明らかなように、第2燃料噴射弁70は、吸気通路38を区画形成する部材の上側の壁部に取り付けられている。なお、本開示は、燃料噴射弁の数を2つに限定するものではなく、例えば1つであってもよい。この場合、例えば、第2燃料噴射弁70のみを設けることができる。
【0049】
内燃機関10を制御するECU(電子制御ユニット)72は、所謂コンピュータとしての構成を備え、吸気制御部74及び燃料噴射制御部76を備えている。つまり、ECU72は、プロセッサ(例えばCPU)、メモリ(例えばROM及びRAM)を備える。ECU72は、エンジン回転速度センサ、エンジン負荷センサなどの各種センサからの出力に基づいて内燃機関10の運転状態を解析して、吸気制御部74により、スロットル弁40cの作動を制御する。また、ECU72は、解析した内燃機関10の運転状態に基づいて、燃料噴射制御部76により、燃料噴射弁68、70の各作動を制御する。なお、ECU72には、これらの制御のためのプログラム及び各種データが記憶されている。
【0050】
ここで、図2から図9に、吸気通路38の下流側の立体モデルMを示す。立体モデルMは、インレットパイプ36の下流側端部から吸気ポート32を含み、その下流側においては吸気弁口28で終端する。なお、立体モデルMは吸気通路38の下流側端部のモデルであるので、立体モデルMの外表面80は、吸気通路38の下流側を区画形成する部材であるインレットパイプ36の内面36s、インシュレータ60の内面60s及びシリンダヘッド14の内壁面14sに対応する部分を有し、一部は仕切部62の表面62sに対応し、部分的に後述する偏位部90の表面90sに対応する。そこで、理解を容易にするように、インレットパイプ36の内面36s、インシュレータ60の内面60s、シリンダヘッド14の内壁面14s、仕切部62の表面62s、偏位部90の表面90sに対応する立体モデルMの個所に、それらの符号を付す。また、第2燃料噴射弁70が取り付けられてその噴射口が吸気通路38に臨む部分(以下、取付部)に符号「70s」を付す。更に、シリンダ軸線Cの方向において上側に符号「U」を用い、下側に符号「D」を用い、吸気流れ方向で上流側から下流側をみたときの右側に付号「R」を用い、そして左側に付号「L」を用いる。
【0051】
図1及び図2から図9より理解できるように、仕切部62は、その下流側において、シリンダ軸線Cに交差する左右方向(L-R方向)つまり幅方向の幅が仕切部62の上流側端部(上流端)62uよりも狭い偏位部90を有する。偏位部90は、吸気通路38を吸気が上流側から下流側に流れる方向つまり吸気流れ方向において吸気弁46に対して向かったときに吸気弁46のバルブ軸線の一方側からもう一方側に延びる方向として定められ得る幅方向において、仕切部62の幅狭の部分である。図4に示すように、タンブル通路64において、シリンダヘッド14により区画形成された部分のうちの仕切部62の上流側端部62u側に位置する上流端側部分の幅方向の幅W1よりも、下流端側部分64dの幅方向の幅W2は明らかに狭い。仕切部62は吸気通路38にタンブル通路64を区画形成するように設けられて形成されているので、この幅W2の部分に関する偏位部90は相対的に幅狭である。
【0052】
更に、偏位部90は、左右方向つまり幅方向において一方向に偏っている。ここでは、タンブル通路64の下流端側部分64dは右R側に偏るように区画形成されている。したがって、このタンブル通路64の偏っている下流端側部分64dを少なくとも部分的に区画形成する仕切部62の下流側の偏位部90は、ここでは右R側に偏っている。したがって、ここでは、図1において、シリンダ軸線Cは紙面に平行に延び、幅方向は同紙面に略直交するように延びる方向であるので、仕切部62の下流側に延びる偏位部90はあらわれず、よって実線ではなく二点破線で示している。よって、主通路66とタンブル通路64との合流部65は、右R側に偏っている。
【0053】
そして、第2燃料噴射弁70の取付部70sは、図6及び図7から明らかなように、吸気通路38の左L側に位置付けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向に偏った位置に設けられている。このように、第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは異なる方向に、より好ましくは反対側の方向に燃料を噴射することができるように設けられている。なお、第2燃料噴射弁70は、上側につまり主通路66側に設けられていて、主通路66側から燃料を噴射する。
【0054】
ここで、図5に示す立体モデルMの透視図である図10において、左L側に偏った位置に設けた第2燃料噴射弁70から噴射された噴霧燃料Fを模式的に表す。また、図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料Fを模式的に示す、立体モデルMの透視図を図11に示す。更に、図10に示すのと同様に燃料噴射弁から噴射された噴霧燃料Fを模式的に示す、立体モデルMの吸気流れ方向に沿った断面図を図12に示す。図10から図12より、第2燃料噴射弁70から噴射された燃料Fは仕切部62に阻まれることなく、その少なくとも一部が、ここでは特にその少なくとも過半が、より好ましくはその全てが、まず主通路66を流れ、次に主通路66とタンブル通路64との合流部65に流れ、そして直接的に吸気弁口28に到達し、燃焼室20に導入されることが理解できる。このような燃料噴射を可能にするように、第2燃料噴射弁70の配置、及び、偏位部90を含む仕切部62の形状等は設計されている。特に、仕切部62の仕切本体部92はその下流側で終端して主通路66とタンブル通路64との合流を可能にし、また、偏位部90の表面90sに沿って偏位部90に好ましくは触れることなく、第2燃料噴射弁70から噴射された燃料Fが吸気弁口28に達するように、仕切部62の仕切本体部92及び偏位部90は設計されている(例えば図11参照)。
【0055】
ここで、図10の噴射燃料Fを含む立体モデルMにおける断面図を図13Aから図14Cに示す。ただし、図13A図2のSA-SA線に沿った位置での立体モデルMの断面図であり、図13B図2のSB-SB線に沿った位置での立体モデルMの断面図であり、図13C図2のSC-SC線に沿った位置での立体モデルMの断面図である。図14Aから図14C図13Aから図13Cの立体モデルMの部分の斜視図であり、図14Aの立体モデルは図13Aの立体モデルに対応し、図14Bの立体モデルは図13Bの立体モデルに対応し、図14Cの立体モデルは図13Cの立体モデルに対応する。
【0056】
図13A及び図14Aの切断箇所では、タンブル通路64と主通路66とが完全に分かれている。この図2のSA-SA線の位置では、仕切部62は、タンブル通路64と主通路66との間において幅方向の両端でインレットパイプ36の内面36sにまで延びていて、偏位部90の上流側につながる仕切本体部92が延在する。なお、図13A及び図14Aでは、仕切部62の表面62s及びそのうちの仕切本体部92の表面92sに対応する個所にそれらの符号を付している。
【0057】
図13B及び図14Bの切断箇所では、タンブル通路64と主通路66とは部分的につながっている。また、図13B及び図14Bの切断面では、仕切部62の表面62sが幅方向に延びるとともに上下方向にも延びていて、右側に偏っている。これより、図2のSB-SB線の位置では、仕切部62は仕切本体部92から偏位部90に移行していて、その偏位部90がタンブル通路64と主通路66とを完全に隔てない程度に、吸気ポート32にシリンダヘッド14の内壁面14sの右側の箇所から左方向に延在していることがわかる。つまり、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主通路66とタンブル通路64とが連通するように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。換言すると、仕切部62の仕切本体部92よりも下流側において該仕切本体部92の一部を流れ方向に延長するように、仕切本体部92につながる偏位部90は仕切本体部92の下流側に延出して形成されている。なお、図13B及び図14Bでは、仕切部62の表面62s及びそのうちの偏位部90の表面90sに対応する個所にそれらの符号を付していて、これは図13C及び図14Cでも同様である。
【0058】
図13C及び図14Cの切断箇所では、図13B及び図14Bの切断箇所と比べて、偏位部90のシリンダヘッド14の内壁面からの左方向の突き出し量が減少している。このように、偏位部90は、吸気流れ方向の下流側ほど狭くなるように、形成されている。これにより、図13B及び図14Bの切断箇所よりも、図13C及び図14Cの切断箇所で、主通路66とタンブル通路64との連通の程度が増している。つまり、図13C及び図14Cの切断位置でのタンブル通路64と主通路66とのつながる量は、図13B及び図14Bの切断位置でのそれらのつながる量よりも大きくなっている。より具体的には、吸気流れ方向において偏位部90が延在する領域において主通路66が偏位部90の脇つまり側方にまで下方に延びるように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。この主通路66の下方への拡張は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向で実施され、ここでは偏位部90の左L側で行われている。なお、この主通路66の下方への拡張及びそれによる主通路66とタンブル通路64との融合は、偏位部90の下流側ほど顕著である。
【0059】
更に、図13Aから図14Cに示すように、主通路66側から燃焼室20に向けて燃料Fを噴射するように設けられている第2燃料噴射弁70は、偏位部90が偏った方向とは反対側の方向に燃料を噴射するように設けられている。したがって、仕切部62を、特にその偏位部90を吸気流れ方向でより下流側にまで延ばすことができる。そして、タンブル通路64は偏位部90が偏った方向に下流側で偏るように区画形成されている。したがって、吸気流れ方向でより下流側にまで延長された仕切部62の偏位部90で、タンブル通路64からの吸気により強い指向性を与えることができる。
【0060】
このように、仕切部62は、その上流側の仕切本体部92で主通路66とタンブル通路64とを完全に仕切り、その下流側において、偏位部90を有して、主通路66とタンブル通路64とのつながりを実現しつつもタンブル通路64からの流れをより下流側まで特徴づけるように設計されている。また、第2燃料噴射弁70は偏位部90が偏った方向とは逆側に偏って配置され、ここでは幅方向において反対側に配置され、偏位部90とは異なる方向に燃料を噴射でき、吸気弁口28を介して概ね直接的に燃焼室20に燃料を導入することができる。つまり、燃焼室への燃料の供給を良好に確保することができる。したがって、仕切部62の下流側部分である偏位部90をより下流側にまで延ばすことができる。よって、タンブル通路64からの流れにより強い指向性を与えることができる。この指向性は燃焼室20でより強いタンブル流を形成するように吸気弁口28と開弁時の吸気弁46の傘部46aとの間に向けられているので、タンブル通路64からの吸気で燃焼室20により好適にタンブル流を形成することができる。
【0061】
なお、タンブル通路64が仕切部62の下流側縁部つまり偏位部90の下流側縁部90dよりも下流側で主通路66と連通し、燃焼室20に連なる単一の吸気通路となるように、タンブル通路64及び主通路66は区画形成されている。これにより、タンブル通路64からの吸気は主通路66からの吸気とともに燃焼室20に導入され得、単一の吸気通路である単一の吸気ポート32からの吸気で、燃焼室20への燃料の供給とタンブル流の形成とを生じさせることが可能になる。なお、この構成は、部品点数の増加を抑制でき、コスト面でも優れる。
【0062】
前述したようにタンブル通路64と主通路66が構成されているので、燃焼室20に吸気口から流入する吸気は、タンブル通路64からの流れにより強い指向性を与えられて、図18に示すように、タンブル流は、吸気弁口28の中心点C1と排気弁口30の中心点C2を結ぶ仮想線Lに対して斜めに、燃焼室天井面100に沿って流入する。燃焼室20に流入したタンブル流は、図17に示されるように、ピストン15の頂面15aのピストン凹部15bと、燃焼室天井面100によって形成される略卵状の燃焼室内を楕円を描くように流動する。
【0063】
一般的に内燃機関はリーン燃焼において燃焼が不安定になりやすく、それにより燃費やエミッションの悪化を招く。燃焼安定性向上には、燃焼の初期の燃焼期間短縮が有効であるが、それには点火プラグ21の放電形態が大きな影響を与え、点火プラグ21周辺の吸気の流れがある程度の速さであること、吸気流れのばらつきを少なくすることが重要となる。
【0064】
図18に示されるように、燃焼室天井面100に設けられた凹部102は、吸気弁口28の中心点C1と排気弁口30の中心点C2を結ぶ仮想線Lに対して斜めに、燃焼室天井面100に沿って流入するタンブル流の流入方向に対して、点火プラグ21よりも上流側に配設されている。
【0065】
図15ないし図17に示されるように、凹部102が、点火プラグ21が挿入される点火プラグ孔101に連続するように形成されており、燃焼室天井面100の外周部100bから点火プラグ孔101に向かって連続して形成されている。凹部102は、均一の深さとなっているが、外周部100bより点火プラグ孔101に向かって徐々に深くなる形状であっても良い。凹部102の断面形状は、矩形、U字状、V字状などの形状にしてもよいが、極端な断面積の変化がない方が好ましい。凹部102は、燃焼室天井面100の一般面100aに対して、一段深くなることで、燃焼室20の壁面を流れるタンブル流の点火プラグ孔101周辺の乱れを減少させることで、着火した火炎を安定させることができる。
【0066】
図18に示されるように、燃焼室天井面100に形成された凹部102は、タンブル流の上流側から、すなわち燃焼室天井面100の外周部100bから広がって、点火プラグ孔101に連なるように形成されると好ましい。
【0067】
内燃機関の燃焼室の体積重心CGの位置を、図19および図20に示した。図19Aおよび図20Aは、燃焼室天井面100に凹部102を有していない従来の内燃機関の燃焼室の体積重心CGを示した。従来の内燃機関は、凹部を有することがない点以外は、本発明の内燃機関10と同じに構成されている。図19Bおよび図20Bは、燃焼室天井面100に凹部102を設けた本発明の内燃機関10の燃焼室20の体積重心CGを示した。図20Aは、図19におけるXXA矢視図である。図20Bは、図19におけるXXB矢視図である。
【0068】
図19Aに示されるように、凹部102を有していない従来の内燃機関の燃焼室の体積重心CGは、吸気弁口28の中心点C1と排気弁口30の中心点C2を結ぶ仮想線L上に位置している。本発明の内燃機関10は、凹部102を有しているので、図19Bに示されるように、燃焼室20の体積重心CGは、仮想線Lに対して、吸気弁口28側かつ点火プラグ21が挿入される点火プラグ孔101寄りに存しており、燃焼室天井面100を流れるタンブル流の流れ方向に対して、点火プラグ孔101よりも上流側に位置している。本内燃機関20では、体積重心CGは、燃焼室天井面100を流れるタンブル流の流れ方向に対して、点火プラグ孔101よりも上流側に位置しているが、必ずしも点火プラグ孔101よりも上流側に位置していなくともよい。
【0069】
このように、燃焼室天井面100に、タンブル流の流入方向に対して点火プラグ21よりも上流側に、凹部102が設けられているので、点火プラグ21に向かうタンブル流の流れのばらつきを抑制してタンブル流の流れの一様性が高まる。このことにより、点火プラグ21周辺での吸気流れのばらつきが低減されて、リーン燃焼時における燃焼が安定する。
【0070】
また、凹部102は、燃焼室天井面100の外周部100bから連続して形成されているので、点火プラグ周辺においてエッジ形状が発生することがなく、エッジ形状によるタンブル流の流れの阻害が発生せずに、タンブル流の流れを良好にすることができる。
【0071】
さらに、凹部102は、燃焼室天井面100の外周部100bから点火プラグ孔101に向かって連続して形成されているので、燃焼室の形状が複雑にならずに、製造コストを低減することが可能となる。
【0072】
さらにまた、凹部102は、燃焼室天井面100を流れるタンブル流の流れ方向に直角な断面積が均一であるので、タンブル流の流れ方向における断面積の変化が少ないことで点火プラグ21周辺を流れる吸気流れの乱れをより抑制することができ、タンブル流を安定して流すことができ、よりリーン燃焼に対する安定性を向上させる。
【0073】
また、燃焼室20の体積重心CGを仮想線Lに対して、吸気弁口28側かつ点火プラグ21が挿入される点火プラグ孔101寄りに位置させることにより、燃焼室内の吸気の平均乱れ強度を上げることなく、初期火炎近傍に高乱流強度領域を近づけることができ、リーン状態でも安定した火炎成長を促すことができる。
【0074】
凹部102が設けられた内燃機関と、凹部が設けられていない従来の内燃機関について、それぞれCFD(Computational Fluid Dynamics)を用いて解析を行った。従来の内燃機関と、本発明の内燃機関とは凹部の有無以外は同じ構成にされている。
図19および図20に、その解析結果を示した。点火直後の状態を、火炎の領域を黒色で示し、高乱流強度領域をグレー色で示した。
【0075】
図19Aおよび図20Aを参照して、タンブル流を利用してリーン燃焼を行う2バルブ式の従来の内燃機関では、点火プラグ21は、吸気弁口28の中心点C1と排気弁口30の中心点C2を結ぶ仮想線Lの側方に位置し、さらに体積重心CGは仮想線L上に位置している。このため偏りのある火炎成長が生じて、燃焼期間の増加によりトルクのばらつきが生じる。
【0076】
本発明の内燃機関10の燃焼室20では、上記したように燃焼室天井面に凹部102が設けられており、燃焼室20の体積重心CGは、仮想線Lに対して、吸気弁口28側かつ点火プラグ孔101寄りに存する。このように構成されているので、図19Bおよび図20Bに示されるように、初期火炎近傍に、乱れ強度の高い領域を生じさせて、リーン状態でも安定した火炎成長を促すことができる。
(第1実施形態)
以上述べたように、上記構成を有する内燃機関10の吸気構造S0は優れた作用及び効果を奏するが、その構成を備えた上で、タンブル流を更に強化することに向けられた構成を備える本発明の第1実施形態に係る内燃機関110、特にその吸気構造Sについて以下説明する。内燃機関110の吸気構造Sは、内燃機関10の吸気構造S0の前述の構成を概ね備え、更なる構成つまり特徴を有するので、以下では、上記内燃機関10との相違点について内燃機関110を主として説明し、内燃機関110において既に説明した構成要素に相当する又は対応する構成要素には既に用いた符号を同様に用いて更なる重複説明を省略する。なお、内燃機関110は、単気筒エンジンであるが、本発明が適用される内燃機関は単気筒エンジンに限定されず、多気筒エンジンであってもよい。
【0077】
図21に示すように、内燃機関110は、内燃機関10と比して、上記第1燃料噴射弁68を備えず、上記第2燃料噴射弁に相当する燃料噴射弁70aを備える。なお、内燃機関110は、内燃機関10と同じく、第1燃料噴射弁68を備えてもよい。そして、内燃機関110は、仕切部62により仕切られた主通路66を開閉可能なように前述のタンブル弁94cを備えている。インレットパイプ36の上流端には、インシュレ-タ95を介してタンブル弁ボディ94が接続されている。このタンブル弁ボディ94は、吸気通路38の一部を構成する断面略円形の吸気路94aを有し、その上流端に前述のスロットルボディ40が接続されている。
【0078】
タンブル弁ボディ94は、その吸気路94aの吸気流れ方向と垂直、すなわち吸気路94aの中心軸線と直角に交差する弁軸94bによってタンブル弁ボディ94内に回転自在に軸支されて、吸気路94aの流路面積を可変制御し、吸気路94aの上側領域を仕切部62と協働して開閉し得るタンブル弁94cを備えている。タンブル弁94cの作動は、内燃機関110の運転状態に応じてここでは電子制御されるが、これに限定されない。タンブル弁94cは、例えば低負荷運転状態において主通路66を全閉にし、高負荷運転状態において主通路66を全開にするように制御される。タンブル弁94cはバタフライ式のもので、弁軸94bと、この弁軸94bに固定される共に一体的に回転する略円盤状の弁体94dとを有している。このように、タンブル弁94cは弁軸94bと一体的に回転する単一の弁部材である弁体94dを備えて構成されている。ただし、タンブル弁94cの弁軸94bはスロットル弁軸40bと平行である。
【0079】
そして、内燃機関110は、タンブル通路64に関して特徴を有する。タンブル通路64について、図22から図24に基づいて説明する。
【0080】
図22から図24に内燃機関110の燃焼室20の上部から吸気系の下流側、例えば吸気ポート32を中心とした立体モデルM1を示す。図22は、立体モデルM1の平面図又は上面図であり、内燃機関10の平面図(図2)に対応し、図23は、立体モデルM1の底面図であり、内燃機関10の底面図(図4)に対応し、図24は、立体モデルM1の側面図であり、内燃機関10の背面図(図5)に対応する。内燃機関110でも、内燃機関10と同じく、燃焼室20に連なる吸気通路38は、シリンダ軸線Cの方向において、仕切部62により、第1吸気通路であるタンブル通路64と、第2吸気通路である主通路66とに分けられている。主通路66は、シリンダ軸線Cの方向においてタンブル通路64の上側に設けられている。そして、シリンダ軸線Cの方向からみた上面視(図22)において、タンブル通路64は主通路66に概ね重なり、タンブル通路64の主通路66への合流部65は、吸気ポート32の開口部つまり吸気弁口28に対して偏っていて、ここでは既に説明したように右R側に偏っている。その上で、内燃機関110では、燃焼室20でタンブル流を生じさせるように設けられたタンブル通路64は、シリンダ軸線Cの方向において主通路66から離れるように湾曲するとともに、シリンダ軸線Cに直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成されている。
【0081】
図22及び図23に、シリンダ軸線Cを含むとともに吸排気方向に延びる仮想面ISを引く。この仮想面ISは、吸排気方向に延びるとともに吸気弁口28及び排気弁口30の中心を通りかつシリンダ軸線Cを含む仮想面であり、図22及び図23では線(中心線)Lxとして表されている。この中心線Lxと対比することで、主通路66は、上流側から下流側に向けて、つまり、燃焼室20に向けて、下流側ほど左右方向の幅が単に狭まるように形成されていることがわかる。一方、本実施形態の内燃機関110の立体モデルM1では、タンブル通路64の右側の輪郭64rは中心線Lxに平行ではなく、右外側に凸に湾曲する。輪郭64rは、吸気流れ方向で上流側から下流側に至るにしたがって、まず右外側に突出するように広がり、最大右突出部64sを経て、中心線Lx側に近づくように延びる。つまり、図22の上面視において、タンブル通路64は、合流部65が偏っている側と同じ側に凸に湾曲するように形成されている。このように、内燃機関110では、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cに直交するとともに吸排気方向つまり線Lxに直交する幅方向つまり左右方向において湾曲するように形成されている。
【0082】
更に、図24に示すように、立体モデルM1では、タンブル通路64は、主通路66から離れるように湾曲している。仕切部62は、吸気通路38の途中に設けられ、主通路66からタンブル通路64が分岐し、その下流側でタンブル通路64が主通路66に合流するように設けられていて、タンブル通路64が主通路66から離れるように湾曲することで、タンブル通路64は主通路66とは反対側に凸湾曲する。より具体的には、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側に凸に湾曲するように形成されていて、つまり、下側に凸に湾曲している。図24において、シリンダ軸線Cに直交するとともにタンブル通路64の下側の輪郭64tに接する面つまり線Lyを引く。輪郭64tは、吸気流れ方向で上流側から下流側に向けて、まず下側に突出するように向かい、最大下突出部64uを経て、上側に向くように延びる。輪郭64tは、その両端でなく、最大突出部64uで線Lyに接する。タンブル通路64の上下方向の幅は吸気流れ方向において上流側から下流側に向けて大きく変化しない。したがって、内燃機関110では、シリンダ軸線Cに直交する方向からみた側面視(図24)において、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cの方向において湾曲し、より具体的には、最大下突出部64uのあたりで、シリンダ軸線Cの方向において最も下側に凸になるように湾曲するように、略U字状に湾曲する。したがって、図24において、タンブル通路64の下流側部分64Lは、吸気流れ方向で下流側に至るほど、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14側に近づくように形成されている。特に、タンブル通路64の下流側部分64Lは、タンブル通路64において最大突出部64uよりも下流側の部分を含む。タンブル通路64の上下方向の幅は吸気流れ方向において上流側から下流側に向けて大きく変化しないので、この輪郭64tの湾曲形状は、シリンダ軸線Cに直交する方向からみた側面視つまり図24において、タンブル通路64を区画形成する仕切部62の壁面dsにおいても同様である。すなわち、図24において、タンブル通路64を区画形成する仕切部62の壁面dsは、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側に凸になるように湾曲している。
【0083】
図22に示すように、つまり、シリンダ軸線Cの方向からみた上面視において、シリンダ軸線Cを含むとともに吸排気方向に延びる仮想面ISの一方側に、ここでは右R側に、合流部65と、燃焼室20に臨む点火プラグが配置されている。図22では、点火プラグの点火部pが示されている。
【0084】
上記構成を有する内燃機関110の吸気構造Sによれば、以下の作用効果が奏される。
【0085】
例えば、タンブル弁94cが閉じられる運転状態のとき、吸気行程でタンブル通路64からの吸気を燃焼室20に流入させることで、燃焼室20でタンブル流を生じさせようとする。しかし、ある吸気行程から次の吸気行程の間に、合流部65を介して主通路66には吸気が滞留するようになる。図26に、参考例の内燃機関10の吸気構造S0の立体モデルMを組み込んだ立体モデルM2を示す。図26の立体モデルM2では、タンブル通路64及び主通路66の上流側において、既に説明したように図示しないがスロットル弁40c及びその下流側のタンブル弁94cが設けられている。スロットル弁40cが開かれ、タンブル弁94cが全閉にされている場合、図26に示すように、吸気行程において吸気弁が開かれたとき、スロットル弁40c周囲を通過した吸気はタンブル通路64に流れ、燃焼室20に流入する(矢印A1参照)。このとき、主通路66に滞留する吸気も燃焼室20に吸入されるが、タンブル通路64からの吸気と交差するように流れる(矢印A2参照)。そのため、主通路66からの吸気の流れにより、タンブル通路64からの吸気の流れが影響を受ける可能性があった。これに対して、上記構成の内燃機関110の吸気構造S1は上記構成を有するので、この影響を改善することができる。
【0086】
内燃機関110の吸気構造Sでは、仕切部62により吸気通路38が分けられて、タンブル通路64の上側に主通路66が形成されている。つまり、シリンダ軸線Cの方向において、燃焼室20に連なる吸気通路38に、燃焼室20でタンブル流を生じさせるためのタンブル通路64と、主通路66とが重なるように設けられている。そして、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cに直交するとともに吸排気方向に直交する幅方向において湾曲するように形成されている。したがって、例えばスロットル弁40cを開いてタンブル弁94cを閉じていて(例えば軽負荷運転時)、吸気弁46を開いたとき、タンブル通路64からの吸気は、主通路66からの吸気に対して右側方から合流部65を介して燃焼室20に流入するようになる。これにより、タンブル通路64からの吸気は、主通路66からの吸気に干渉される度合いが下がり、燃焼室においてタンブル流を好適に形成することが可能になる。更に、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cの方向において主通路66から離れるように湾曲している。したがって、タンブル通路64からの吸気をタンブル流を形成するように滑らかに燃焼室20に流入させることができる。したがって、燃焼室でより強いタンブル流を生じさせることができる。
【0087】
特に、吸気構造Sでは、図22の上面視において、合流部65は、吸気ポート32の開口部28に対して偏っている。したがって、吸入行程時に吸気弁46が開いて燃焼室に流入する吸気の流れに、その偏りに応じた角度をつけることが可能になる。更に、タンブル通路64は、合流部65が偏っている側と同じ側に凸に湾曲するように形成されている。よって、タンブル通路64からの吸気が主通路66からの吸気に干渉される度合いを更に下げることができ、燃焼室においてタンブル流を好適に形成することが可能になる。
【0088】
更に、図24において、タンブル通路64は、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側に凸に湾曲するように形成されている。したがって、タンブル通路64からの吸気が合流部65でタンブル通路64を形成する壁部、特にタンブル通路64の下側の輪郭64tを定める壁部64wから剥離することを積極的に促すことができる。このときのタンブル通路64からの吸気の流れを図25において矢印A3で示す。これにより、タンブル通路64からの吸気の流速を高めて、より強いタンブル流を生成することが可能になる。そして、タンブル通路64をシリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側に凸に湾曲するように形成しているので、合流部65の位置は、図25に示すように、吸気弁46の傘部46aが当たる部分46sよりも上側の位置になる。この合流部65の位置を実験等に基づいてより調整することで、タンブル通路64からの吸気の向きを適正化することができ、タンブル流の生成を更に促すことができる。
【0089】
加えて、図24において、タンブル通路64の下流側部分64Lは、吸気流れ方向で下流側に至るほど、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14側に近づくように形成されている。したがって、タンブル通路64からの吸気がタンブル通路64の下側の輪郭64tを定める壁部64wから剥離することをより積極的に促すことができる。
【0090】
更に、図24において、タンブル通路64を区画形成する仕切部62の壁面dsは、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側に凸になるように湾曲している。したがって、タンブル通路の上下方向の幅を概ね同じにして、タンブル通路64からの吸気をよりタンブル流を生成するように指向させることができる。なお、壁面dsは、タンブル通路64を区画形成する主通路66側の壁面である。
【0091】
更に、図22の上面視において、シリンダ軸線Cを含むとともに吸排気方向に延びる仮想面ISの一方側に、ここでは右R側に、合流部65と、燃焼室20に臨む点火プラグが配置されている。したがって、タンブル通路64からの吸気により、点火プラグによる火花をより迅速に燃焼室中央側に運ぶことが可能になり、これにより火炎伝播速度をより高めることが可能になる。
【0092】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態を説明する。以下では、第2実施形態における、第1実施形態との相違点つまり特徴を主として説明する。ただし、以下では、既に説明した構成要素に相当する又は対応する構成要素には既に用いた符号を同様に用いて更なる重複説明を省略する。
【0093】
第2実施形態の内燃機関は、第1実施形態の内燃機関110における特徴、例えばタンブル通路64の上記構成を有するが、内燃機関110に対して主通路66の構成について更なる特徴を有する。その特徴について図27に基づいて説明する。図27に、第2実施形態に係る内燃機関の吸気構造S1を有する立体モデルM3を示す。なお、図27では、タンブル通路64及び主通路66の上流側において、図示しないスロットル弁40c及びタンブル弁94cが設けられていて、スロットル弁40cが全開にされ、タンブル弁94cが全閉にされている。
【0094】
第2実施形態に係る内燃機関の吸気構造S1では、シリンダ軸線Cに直交する方向からみた側面視である図27において、主通路66を区画形成する仕切部62の下流側壁面usは、主通路66のタンブル通路64側を区画形成する下流側壁面であり、タンブル通路64の下流側部分64Lの湾曲形状に対応する湾曲形状を有している。これは、下流側壁面usの湾曲形状が、下流側部分64Lの湾曲形状に似ている又は近い、好ましくは同じことを意味する。先に図24に基づいて説明したように、タンブル通路64の下流側部分64Lは、吸気流れ方向で下流側に至るほど、シリンダ軸線Cの方向においてクランク軸17側からシリンダヘッド14側に近づくように形成されている。特に、この上側に向けるような湾曲形状を、主通路66を区画形成する仕切部62の下流側壁面usは有する。下流側壁面usがこの湾曲形状を有することで、下流側壁面usは下に凸のような又はそれに近い湾曲形状を有するようになる。
【0095】
主通路66を区画形成する仕切部62の下流側壁面usが上記構成を有することで、例えばタンブル弁94cが閉じられる運転状態のとき、主通路66の吸気(矢印A4参照)は、下流側壁面usで燃焼室20に向けてジャンプするように流れることができ、タンブル通路64からの吸気(矢印A5参照)に滑らかに合流するように指向される。これにより、より強いタンブル流の生成を促すことが可能になる。
【0096】
以上、本発明に係る実施形態及びその変形例等について説明したが、本発明はそれらに限定されない。本願の請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱しない限り、種々の置換、変更が可能である。
【0097】
上記第1及び第2実施形態の内燃機関の吸気構造S,S1では、タンブル通路64を右側に偏らせて湾曲させたが、左側に偏らせて湾曲させてもよい。この場合、合流部65及び点火プラグは、仮想面ISの左側に設けられるとよい。なお、上記第1及び第2実施形態の内燃機関の吸気構造S,S1は、参考例の吸気構造S0の特徴、例えば偏位部90を有したが、この偏位部を有さないことも可能である。例えば、吸気構造S,S1のタンブル通路64は主通路66との合流部65まで完全に主通路66から独立するように形成されてもよい。
また、本発明の第1実施形態及び第2実施形態の内燃機関110では、タンブル弁64cを具備しているが、本発明は、図1に示されるようなタンブル弁を具備しない内燃機関にも適用することができる。
【符号の説明】
【0098】
14…シリンダヘッド、15…ピストン、15a…頂面、20…燃焼室、21…点火プラグ、28…吸気弁口、30…排気弁口、32…吸気ポート、38…吸気通路、46…吸気弁、50…排気弁、64…タンブル通路、66…主通路、
100…燃焼室天井面、100a…一般面、100b…外周部、101…点火プラグ孔、102…凹部、
C…シリンダ軸線、C1…中心点、C2…中心点、CG…体積重心、L…仮想線。
図1
図2
図3
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図13A
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図20B
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