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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140907
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】柱状ハニカムフィルタの検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/954 20060101AFI20241003BHJP
   G01N 15/08 20060101ALI20241003BHJP
   B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G01N21/954 Z
G01N15/08 A
B01D46/00 302
B01D39/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052274
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】寺拝 貴史
(72)【発明者】
【氏名】戎谷 健司
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 祥弘
【テーマコード(参考)】
2G051
4D019
4D058
【Fターム(参考)】
2G051AA82
2G051AB20
2G051BA01
2G051BA20
2G051BB02
2G051BB07
2G051CA04
2G051CB01
2G051EC02
4D019AA01
4D019BA05
4D019BB06
4D019BC07
4D019BD01
4D019CA01
4D019CB03
4D019CB04
4D019CB10
4D058JA37
4D058SA08
4D058UA30
(57)【要約】
【課題】セル表面に多孔質膜が形成されている柱状ハニカムフィルタの品質の検査方法であって、多孔質膜の厚みの面内方向の分布を評価可能な検査方法を提供する。
【解決手段】柱状ハニカムフィルタの検査方法であって、柱状ハニカムフィルタの底面に光を照射することで得られる反射光のパターンの画像及び透過光のパターンの画像データから、多孔質膜が形成されているセルの輝度のばらつきに関する統計量を求め、前記統計量を、予め定めた前記統計量に関する第一基準と比較することを含む検査方法。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状ハニカムフィルタの検査方法であって、
柱状ハニカムフィルタは、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に開口部を有し、出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面に開口部を有する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されており、
それぞれの第1セルの表面には多孔質膜が形成されており、
入口側底面に対して第一の光を照射し、第1セル及び第2セルの配置に応じた入口側底面からの反射光のパターンをカメラで撮像し、反射光のパターンの画像データを生成する工程1と、
生成された反射光のパターンの画像データに基づいて特定された複数の第1セルの開口部の位置情報を記憶装置に格納する工程2と、
出口側底面に対して第二の光を照射することで得られる、第1セル及び第2セルの配置に応じた入口側底面からの透過光のパターンを、入口側底面と平行に配置される光拡散フィルムを介して、カメラで撮像し、透過光のパターンの画像データを生成する工程3と、
生成された透過光のパターンの画像データ及び記憶装置に格納されている前記位置情報に基づいて、複数の第1セルの開口部内に位置する複数の画素の輝度を測定する工程4と、
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量を求める工程5と、
前記統計量を、予め定めた前記統計量に関する第一基準と比較する工程6と、
を含む検査方法。
【請求項2】
第1セルの入口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの前記多孔質膜の合計質量よりも、第1セルの出口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの前記多孔質膜の合計質量の方が多い請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
前記統計量が輝度の標準偏差である請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項4】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
前記第一基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる、
請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項5】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量から捕集効率を推定する工程7を更に含む請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項6】
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8と、
前記平均値を、予め定めた輝度の平均値に関する第二基準と比較する工程9と、
を更に含む請求項1又は2に記載の検査方法。
【請求項7】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
前記第二基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と前記多孔質膜の質量に関する情報との相関関係、又は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる、
請求項6に記載の検査方法。
【請求項8】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と前記多孔質膜の質量に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から前記多孔質膜の質量を推定する工程10を更に含む請求項6に記載の検査方法。
【請求項9】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から捕集効率を推定する工程11を更に含む請求項6に記載の検査方法。
【請求項10】
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8と、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係、及び、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量及び前記平均値から捕集効率を推定する工程12を更に含む請求項1又は2に記載の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は柱状ハニカムフィルタの検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン及びガソリンエンジン等の内燃機関から排出される排ガス中にはスス等の粒子状物質(以下、PM:Particulate Matterと記す。)が含まれる。ススは人体に対し有害であり排出が規制されている。現在、排ガス規制に対応するために、通気性のある小細孔隔壁に排ガスを通過させ、スス等のPMを濾過するDPF及びGPFに代表されるフィルタが幅広く用いられている。
【0003】
PMを捕集するためのフィルタとしては、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面が開口して第二底面に目封止部を有する複数の第1セルと、第1セルに隔壁を挟んで隣接配置されており、第一底面から第二底面まで高さ方向に延び、第一底面に目封止部を有し第二底面が開口する複数の第2セルとを備えたウォールフロー式の柱状ハニカムフィルタが知られている。
【0004】
このようなフィルタを工業的に生産する場合、フィルタが出荷される前にPN捕集効率を検査し、要求スペックを満たさないフィルタが市場に流通するのを防止することが望ましい。しかしながら、実際の排ガスをフィルタに通して品質検査をすることは時間及びコストの観点から必ずしも現実的ではないため、光照射されたフィルタ底面を観察することで目封止部の欠陥の有無を判定する代替的な簡易検査方法が開発されてきた。
【0005】
特許文献1には目封止部を有する柱状ハニカム構造体のための検査方法が提案されている。当該文献には、目封止部を有する柱状ハニカム構造体の第一底面に光を照射し、柱状ハニカム構造体の第二底面に接触させた透光性の投影媒体で前記光を受光して、前記光が投影媒体上の光点として可視化されることを含む柱状ハニカム構造体の目封止部の欠陥を検出する方法が開示されている。
【0006】
特許文献2には、第一底面に対して光を照射することで得られる、第1セル及び第2セルの各目封止部の配置に応じた第二底面からの透過光のパターンを、第二底面と非接触の状態で、第二底面と平行に配置される光拡散フィルムを介して、カメラで撮像する工程と、カメラによって撮像された透過光のパターンの画像に基づいて第2セルが有する目封止部の欠陥を検出する工程と、を含む検査方法が記載されている。
【0007】
特許文献3には、第二底面からの反射光のパターンをカメラで撮像し、反射光のパターンの画像データを生成する工程と、反射光のパターンの画像データに基づいて外周側壁に隣接するセル及び外周側壁に隣接しないセルのそれぞれの位置情報を区別して記憶装置に格納する工程と、第二底面からの透過光のパターンをカメラで撮像し、透過光のパターンの画像データを生成する工程と、透過光のパターンの画像データ及び前記位置情報に基づいて、外周側壁に隣接するセルからのそれぞれの透過光の強度を測定し、異常な目封止部を有する外周側壁に隣接するセルを検出する工程と、透過光のパターンの画像データ及び前記位置情報に基づいて、外周側壁に隣接しないセルからのそれぞれの透過光の強度を測定し、異常な目封止部を有する外周側壁に隣接しないセルを検出する工程とを含む検査方法が記載されている。
【0008】
一方、近年、排ガス規制強化に伴い、より厳しいPMの排出基準(PN規制:Particle Matterの個数規制)が導入されており、フィルタにはPMの高捕集性能(PN高捕集効率)が要求されている。そこで、セル表面にPMの捕集効率を高めるための多孔質膜(「捕集層」ともいう。)を別途形成することが提案されている(特許文献4)。多孔質膜を形成することにより、圧力損失を低減させつつPMの捕集を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第7,701,570号明細書
【特許文献2】特開2021-156774号公報
【特許文献3】特開2021-156775号公報
【特許文献4】特開2022-158915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の簡易検査法においては、特許文献1~3で教示されているように、目封止部の欠陥の発見に重きを置いていた。目封止部の欠陥を検出すること自体は柱状ハニカムフィルタの性能検査を実施する際に有用である。しかしながら、従来の簡易検査方法は特許文献4で提案されているような多孔質膜を有する柱状ハニカムフィルタに対する検査方法としては十分とは言えず、改善の余地が残されている。
【0011】
具体的には、柱状ハニカムフィルタに形成された多孔質膜の厚みに面内方向(セルの延びる方向に垂直な方向)の有意な分布が生じていると、柱状ハニカムフィルタによるPMの捕集効率に有意に影響を与える。このため、多孔質膜が形成された柱状ハニカムフィルタの品質を検査する上では、多孔質膜の厚みの面内方向の分布を評価することが望ましいが、従来の検査方法ではそれを評価することができなかった。
【0012】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一実施形態において、セル表面に多孔質膜が形成されている柱状ハニカムフィルタの品質の検査方法であって、多孔質膜の厚みの面内方向の分布を評価可能な検査方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、柱状ハニカムフィルタの底面に光を照射することで得られる透過光のパターンの画像データにおいて、多孔質膜が形成されているセルの輝度のばらつきに関する統計量が、多孔質膜の厚みの面内方向の分布と相関があることを見出した。本発明は当該知見に基づき完成したものであり、以下に例示される。
【0014】
[態様1]
柱状ハニカムフィルタの検査方法であって、
柱状ハニカムフィルタは、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に開口部を有し、出口側底面に目封止部を有する複数の第1セルと、入口側底面から出口側底面まで延び、入口側底面に目封止部を有し、出口側底面に開口部を有する複数の第2セルとを備え、複数の第1セルと複数の第2セルは多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されており、
それぞれの第1セルの表面には多孔質膜が形成されており、
入口側底面に対して第一の光を照射し、第1セル及び第2セルの配置に応じた入口側底面からの反射光のパターンをカメラで撮像し、反射光のパターンの画像データを生成する工程1と、
生成された反射光のパターンの画像データに基づいて特定された複数の第1セルの開口部の位置情報を記憶装置に格納する工程2と、
出口側底面に対して第二の光を照射することで得られる、第1セル及び第2セルの配置に応じた入口側底面からの透過光のパターンを、入口側底面と平行に配置される光拡散フィルムを介して、カメラで撮像し、透過光のパターンの画像データを生成する工程3と、
生成された透過光のパターンの画像データ及び記憶装置に格納されている前記位置情報に基づいて、複数の第1セルの開口部内に位置する複数の画素の輝度を測定する工程4と、
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量を求める工程5と、
前記統計量を、予め定めた前記統計量に関する第一基準と比較する工程6と、
を含む検査方法。
[態様2]
第1セルの入口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの前記多孔質膜の合計質量よりも、第1セルの出口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの前記多孔質膜の合計質量の方が多い態様1に記載の検査方法。
[態様3]
前記統計量が輝度の標準偏差である態様1又は2に記載の検査方法。
[態様4]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
前記第一基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる、
態様1~3の何れかに記載の検査方法。
[態様5]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量から捕集効率を推定する工程7を更に含む態様1~4の何れかに記載の検査方法。
[態様6]
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8と、
前記平均値を、予め定めた輝度の平均値に関する第二基準と比較する工程9と、
を更に含む態様1~5の何れかに記載の検査方法。
[態様7]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
前記第二基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と前記多孔質膜の質量に関する情報との相関関係、又は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる、
態様6に記載の検査方法。
[態様8]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と前記多孔質膜の質量に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から前記多孔質膜の質量を推定する工程10を更に含む態様6又は7に記載の検査方法。
[態様9]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から捕集効率を推定する工程11を更に含む態様6~8の何れかに記載の検査方法。
[態様10]
検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、
工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8と、
当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係、及び、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量及び前記平均値から捕集効率を推定する工程12を更に含む態様1~9の何れかに記載の検査方法。
【発明の効果】
【0015】
多孔質膜の厚みの面内方向の分布は柱状ハニカムフィルタの性能に有意な影響を与えることから、多孔質膜の厚みの面内方向の分布を評価できることは、安定して高品質な柱状ハニカムフィルタを市場に提供する上で重要である。この点、本発明の一実施形態に係る柱状ハニカムフィルタの検査方法によれば、PMの高捕集性能(PN高捕集効率)が要求される場合に採用されることが期待される、セル表面に多孔質膜が形成されている柱状ハニカムフィルタに対して、多孔質膜の厚みの面内方向の分布を簡便に評価することが可能となる。従って、当該検査方法は工業的価値が極めて高いと言える。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】柱状ハニカムフィルタの一例を模式的に示す斜視図である。
図2】柱状ハニカムフィルタの一例をセルの延びる方向に平行な断面で観察したときの模式的な断面図である。
図3】柱状ハニカムフィルタをセルの延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図である。
図4】第1セルの構造例を示す模式的な断面図である。
図5-1】本発明の一実施形態に係る検査方法において、反射光のパターンを撮像するのに好適な検査装置の構成を説明するための模式的な側面図である。
図5-2】本発明の一実施形態に係る検査方法において、透過光のパターンを撮像するのに好適な検査装置の構成を説明するための模式的な側面図である。
図6】透過光のパターンの画像に、複数の第1セルの開口部の輪郭(点線で示す。)が重ねられた画像の例を示す。
図7】試験1で得られた捕集効率と輝度の標準偏差の間の相関関係を示すグラフである。
図8】試験2で得られた多孔質膜の質量と平均輝度の間の相関関係、及び、捕集効率と平均輝度の間の相関関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明の実施形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0018】
<1.柱状ハニカムフィルタ>
本発明の一実施形態に係る柱状ハニカムフィルタについて説明する。柱状ハニカムフィルタは、燃焼装置、典型的には車両に搭載されるエンジンからの排ガスラインに装着されるススを捕集するDPF(Diesel Particulate Filter)及びGPF(Gasoline Particulate Filter)として使用可能である。柱状ハニカムフィルタは、例えば、排気管内に設置することができる。
【0019】
図1及び図2には、柱状ハニカムフィルタ100の模式的な斜視図及び断面図がそれぞれ例示されている。この柱状ハニカムフィルタ100は、外周側壁102と、外周側壁102の内周側に配置され、入口側底面104から出口側底面106まで平行に延び、入口側底面104に開口部107を有し、出口側底面106に目封止部109を有する複数の第1セル108と、外周側壁102の内周側に配置され、入口側底面104から出口側底面106まで平行に延び、入口側底面104に目封止部109を有し、出口側底面106に開口部107を有する複数の第2セル110とを備える。この柱状ハニカムフィルタ100においては、第1セル108及び第2セル110が多孔質隔壁112を挟んで交互に隣接配置されていることにより、入口側底面104及び出口側底面106はそれぞれハニカム状を呈している。
【0020】
柱状ハニカムフィルタ100の上流側の入口側底面104にスス等の粒子状物質(PM)を含む排ガスが供給されると、排ガスは第1セル108に導入されて第1セル108内を下流に向かって進む。第1セル108は下流側の出口側底面106に目封止部109を有するため、排ガスは第1セル108と第2セル110を区画する多孔質隔壁112を透過して第2セル110に流入する。粒子状物質は多孔質隔壁112を通過できないため、第1セル108内に捕集され、堆積する。粒子状物質が除去された後、第2セル110に流入した清浄な排ガスは第2セル110内を下流に向かって進み、下流側の出口側底面106から流出する。
【0021】
図3には、柱状ハニカムフィルタ100をセル108、110の延びる方向に直交する断面で観察したときの模式的な部分拡大図が示されている。柱状ハニカムフィルタ100のそれぞれの第1セル108の表面(第1セル108を区画形成する多孔質隔壁112の表面に同じ。)には、多孔質膜114が形成されている。第1セル108の表面に多孔質膜114が形成されていることで、PMに対する捕集性能が向上することが期待できる。
【0022】
柱状ハニカムフィルタ100をセル108、110の延びる方向に直交する断面で観察したとき、多孔質膜114の厚みの面内分布は均一であることが通常求められる。
【0023】
排ガスの流速が大きくなるにつれて、柱状ハニカムフィルタの隔壁を透過する際の排ガスの流速は、出口側底面に近づくほど大きくなりやすいことが知られている。排ガスの流速が大きい箇所には単位時間当たりに通過する排ガス量が増える。このため、多孔質膜の厚みを大きくして多孔質膜との接触機会を多くするほうが、PMの捕集性能を高めることができる。そこで、排ガスの流速が大きくなる出口側底面に近づくにつれて、多孔質膜の厚みを大きくすることで、必要以上に圧力損失を上昇させることなく、PM捕集性能を高めることができる。このため、柱状ハニカムフィルタ100の好ましい一実施形態においては、それぞれの第1セル108の表面(第1セルを区画形成する隔壁の表面に同じ。)に形成されている多孔質膜114は、入口側底面104から出口側底面106に向かって厚みが大きくなる。従って、柱状ハニカムフィルタは一実施形態において、第1セル108の入口側底面104から第1セル108の延びる方向における柱状ハニカムフィルタ100の中点までの多孔質膜114の合計質量よりも、第1セル108の出口側底面106から第1セル108の延びる方向における柱状ハニカムフィルタ100の中点までの多孔質膜114の合計質量の方が多い。図4には、そのような柱状ハニカムフィルタ100の第1セル108の構造例を示す模式的な断面図が示されている。
【0024】
柱状ハニカムフィルタにおける多孔質膜全体の平均厚みは、例えば4~50μmとすることができ、典型的には10~40μmとすることができる。多孔質膜全体の平均厚みは特開2022-158915号公報に記載の測定方法により求めることができる。
【0025】
一実施形態において、多孔質膜の気孔率は隔壁の気孔率より高い。多孔質膜の気孔率が隔壁の気孔率より高いことで、圧力損失の上昇を抑制できるという利点が得られる。この場合、多孔質膜の気孔率と隔壁の気孔率(%)の差は、10%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0026】
多孔質膜の気孔率の下限は、圧力損失の上昇抑制という観点からは、70%以上であることが好ましい。また、多孔質膜の気孔率の上限は、捕集効率の低下抑制という観点から、85%以下であることが好ましい。従って、多孔質膜の気孔率は例えば70~85%とすることができる。多孔質膜の気孔率は、特開2022-158915号公報に記載の測定方法により求めることができる。
【0027】
隔壁の気孔率の下限は、排ガスの圧力損失を低く抑えるという観点からは、40%以上であることが好ましく、45%以上であることがより好ましく、50%以上であることが更により好ましい。また、隔壁の気孔率の上限は、柱状ハニカムフィルタの強度を確保するという観点から、80%以下であることが好ましく、75%以下であることがより好ましく、70%以下であることが更により好ましい。従って、隔壁の気孔率は例えば40~80%とすることができる。隔壁の気孔率は、JIS-R1655:2003に準拠して水銀圧入式ポロシメーターで測定したときの値を指す。
【0028】
多孔質膜はセラミックスで構成することができる。多孔質膜は例えば、コージェライト、炭化珪素(SiC)、タルク、マイカ、ムライト、セルベン、チタン酸アルミニウム、アルミナ、窒化珪素、サイアロン、リン酸ジルコニウム、ジルコニア、チタニア及びシリカから選択される1種又は2種以上のセラミックスを含有することができる。多孔質膜の主成分は炭化珪素、アルミナ、シリカ、コージェライト又はムライトとすることが好ましい。中でも、表面酸化膜(Si2O)の存在により互いに強固に結合して剥離し難い多孔質膜が得られることから、多孔質膜の主成分は炭化珪素であることが好ましい。多孔質膜の主成分とは、多孔質膜の50質量%以上を占める成分を指す。多孔質膜はSiCが50質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、90質量%以上を占めることが更により好ましい。多孔質膜を構成するセラミックスの形状には特に制限はないが、例えば粒状が挙げられる。
【0029】
柱状ハニカムフィルタの隔壁及び外周側壁を構成する材料としては、限定的ではないが、多孔質セラミックスを挙げることができる。セラミックスとしては、コージェライト、ムライト、リン酸ジルコニウム、チタン酸アルミニウム、炭化珪素(SiC)、珪素-炭化珪素複合材(例:Si結合SiC)、コージェライト-炭化珪素複合材、ジルコニア、スピネル、インディアライト、サフィリン、コランダム、チタニア、窒化珪素等が挙げられる。そして、これらのセラミックスは、1種を単独で含有するものでもよいし、2種以上を含有するものであってもよい。
【0030】
柱状ハニカムフィルタは、スス等のPMの燃焼を補助するPM燃焼触媒、酸化触媒(DOC)、窒素酸化物(NOx)を除去するためのSCR触媒及びNSR触媒、並びに、炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)及び窒素酸化物(NOx)を同時に除去可能な三元触媒を担持する場合がある。
【0031】
柱状ハニカムフィルタの底面形状に制限はないが、例えば円形、楕円形、レーストラック形及び長円形等のラウンド形状の他、三角形及び四角形等の多角形とすることができる。図1の柱状ハニカムフィルタ100は、底面形状が円形状であり、全体として円柱状である。
【0032】
柱状ハニカムフィルタの高さ(入口側底面から出口側底面までの長さ)は特に制限はなく、用途や要求性能に応じて適宜設定すればよい。柱状ハニカムフィルタの高さと各底面の最大径(柱状ハニカムフィルタの各底面の重心を通る径のうち、最大長さを指す)の関係についても特に制限はない。従って、柱状ハニカムフィルタの高さが各底面の最大径よりも長くてもよいし、柱状ハニカムフィルタの高さが各底面の最大径よりも短くてもよい。
【0033】
セルの延びる方向に垂直な断面におけるセルの形状に制限はないが、四角形、六角形、八角形、又はこれらの組み合わせであることが好ましい。これらのなかでも、正方形及び六角形が好ましい。セル形状をこのようにすることにより、柱状ハニカムフィルタに流体を流したときの圧力損失を小さくすることができる。
【0034】
柱状ハニカムフィルタにおける隔壁の平均厚みの上限は、圧力損失を抑制するという観点から、0.305mm以下であることが好ましく、0.254mm以下であることがより好ましく、0.241mm以下であることが更により好ましい。但し、柱状ハニカムフィルタの強度を確保するという観点からは、隔壁の平均厚みの下限は、0.152mm以上であることが好ましく、0.178mm以上であることがより好ましく、0.203mm以上であることが更により好ましい。従って、隔壁の平均厚みは例えば0.152mm~0.305mmとすることができる。本明細書において、隔壁の厚みは、セルの延びる方向に直交する断面において、隣接するセルの重心同士を線分で結んだときに当該線分が隔壁を横切る長さを指す。隔壁の平均厚みは、すべての隔壁の厚みの平均値を指す。
【0035】
セル密度(セルの延びる方向に垂直な単位断面積当たりのセルの数)は、特に制限はないが、例えば6~2000セル/平方インチ(0.9~311セル/cm2)、更に好ましくは50~1000セル/平方インチ(7.8~155セル/cm2)、特に好ましくは100~400セル/平方インチ(15.5~62.0セル/cm2)とすることができる。セル密度は、一方の底面におけるセルの数(目封止されたセルも算入する。)を、外周側壁を除く当該底面の面積で割ることにより算出される。
【0036】
柱状ハニカムフィルタは、一体成形品として提供することも可能である。また、柱状ハニカムフィルタは、それぞれが外周側壁を有する複数の柱状ハニカムフィルタのセグメントを、側面同士で接合して一体化し、セグメント接合体として提供することも可能である。柱状ハニカムフィルタをセグメント接合体として提供することにより、耐熱衝撃性を高めることができる。
【0037】
<2.柱状ハニカムフィルタの製造方法>
目封止部及び多孔質膜を有する柱状ハニカムフィルタは、公知の製造方法によって作製可能であるが以下に例示的に説明する。まず、セラミックス原料、分散媒、造孔剤及びバインダーを含有する原料組成物を混練して坏土を形成した後、坏土を押出成形することにより複数の第1セル及び第2セルを有する所望の柱状ハニカム構造体に成形する。柱状ハニカム構造体を乾燥した後、柱状ハニカム構造体の両底面に目封止部を形成した上で目封止部を乾燥し、目封止部を有する柱状ハニカム構造体を得る。柱状ハニカム構造体はこの後、脱脂及び焼成を実施することでセラミックス焼成体として提供されるのが通常である。
【0038】
次いで、焼成工程を経た柱状ハニカム構造体の複数の第1セルの表面に多孔質膜を形成する。まず、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射しながら、出口側底面に吸引力を与えて、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施する。セラミックス粒子としては、多孔質膜を構成する先述したセラミックスの粒子が使用される。
【0039】
エアロゾル中のセラミックス粒子は、レーザー回折・散乱法により測定される体積基準の累積粒度分布におけるメジアン径(D50)が0.5~5.0μmであることが好ましく、1.0~3.0μmであることがより好ましい。極めて微細なセラミックス粒子を噴射することで、得られる多孔質膜の気孔率を高めることが可能になる。
【0040】
第1セルの表面にセラミックス粒子を付着させる工程を実施する際、柱状ハニカム構造フィルタの入口側底面から出口側底面に向かって多孔質膜の厚みを大きくするには、出口側底面の吸引力を大きくし、柱状ハニカム構造体内を流れるエアロゾルの流速を大きくすることが好ましい。具体的には、柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速(=エアロゾル流量/入口側底面の面積)の下限を2m/s以上とすることが好ましく、4m/s以上とすることがより好ましい。また、多孔質膜の高気孔率を維持するために、柱状ハニカム構造体に流入するエアロゾルの平均流速の上限を80m/s以下とすることが好ましく、60m/s以下とすることが好ましい。
【0041】
その後、第1セルの表面にセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体を最高温度1000℃以上で1時間以上キープする条件、典型的には、最高温度1100℃~1400℃で1時間~6時間キープする条件で加熱処理することで柱状ハニカムフィルタが完成する。加熱処理は、例えば電気炉又はガス炉内に柱状ハニカム構造体を載置することで実施することができる。加熱処理により、セラミックス粒子同士が結合すると共に、セラミックス粒子が第1セル内の隔壁に焼き付き、第1セルの表面に多孔質膜が形成される。加熱処理を空気等の酸素含有条件下で実施すると、表面酸化膜がセラミックス粒子表面に生成されセラミックス粒子同士の結合が促進される。これにより、剥離し難い多孔質膜が得られる。
【0042】
<3.柱状ハニカムフィルタの検査方法>
本発明に係る柱状ハニカムフィルタの検査方法は、上述した柱状ハニカムフィルタを検査対象とすることができる。本発明に係る柱状ハニカムフィルタ100の検査方法は一実施形態において、以下の工程1~工程6を実施する。また、付加的に工程7~12の一つ以上を実施してもよい。
【0043】
(工程1)
工程1では、入口側底面104に対して第一の光を照射し、第1セル108及び第2セル110の配置に応じた入口側底面104からの反射光のパターンをカメラで撮像し、反射光のパターンの画像データを生成する。工程1を実施することで得られる反射光のパターンの画像データに基づき、入口側底面104が有する複数の第1セル108の開口部107の位置を特定することが可能である。
【0044】
(工程2)
工程2では、生成された反射光のパターンの画像データに基づいて特定された複数の第1セル108の開口部107の位置情報を記憶装置302に格納する。多孔質膜114が形成されているのは、複数の第1セル108の表面であるため、複数の第1セル108の開口部107の位置情報を記憶しておことが重要である。位置情報としては、複数の第1セル108のそれぞれの開口部107の位置を特定することのできる情報であれば特に制限はないが、例えば、それぞれの開口部107の輪郭を構成する画素の二次元座標の情報を含むことができ、これにより、それぞれの開口部107の位置、形状及び大きさを特定することが可能である。開口部107の輪郭は、多孔質膜114を除いた多孔質隔壁112(すなわち、多孔質膜114が存在しない状態の多孔質隔壁112)によって画定され、例えば二値化処理により特定することが可能である。複数の第1セル108の開口部107の位置情報は後述する工程4で使用される。
【0045】
(工程3)
工程2を実施することで、多孔質膜114が形成されている複数の第1セル108の開口部107の位置情報を得ることはできるが、工程2を実施しても、複数の第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の厚み情報は得られない。そこで、工程3では、出口側底面106に対して第二の光を照射することで得られる、第1セル108及び第2セル110の配置に応じた入口側底面104からの透過光のパターンを、入口側底面104と平行に配置される光拡散フィルムを介して、カメラで撮像し、透過光のパターンの画像データを生成する。
【0046】
工程3で得られる透過光のパターンの画像データは、第1セル108の多孔質膜114の厚みの面内方向の分布が反映されている。すなわち、出口側底面106から光が照射されると、多孔質膜114の厚みの大きな第1セル108については光の透過率が低下する一方で、多孔質膜114の厚みの小さな第1セル108については光の透過率が上昇する。このため、例えば、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の厚みが面内方向に均一であれば、それぞれの第1セル108の入口側底面104からの透過光の強さは均一となる。逆に、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の厚みが面内方向に不均一であれば、それぞれの第1セル108の入口側底面104からの透過光の強さは不均一となる。
【0047】
(工程4)
よって、工程4では、工程3で生成された透過光のパターンの画像データ及び記憶装置302に格納されている前記位置情報に基づいて、複数の第1セル108の開口部107内に位置する複数の画素の輝度を測定する。評価精度を高める上では、工程4では、柱状ハニカムフィルタが有する90%以上の数の第1セル108について、それぞれの第1セル108の開口部107内に位置する90%以上の数の画素の輝度を測定することが好ましく、柱状ハニカムフィルタが有する99%以上の数の第1セル108について、それぞれの第1セル108の開口部107内に位置する99%以上の数の画素の輝度を測定することがより好ましく、柱状ハニカムフィルタが有するすべての数の第1セル108について、それぞれの第1セル108の開口部107内に位置するすべての数の画素の輝度を測定することが更により好ましい。
【0048】
工程3により得られる透過光のパターンの画像データのみでは、第1セル108のそれぞれの開口部107の境界は不明瞭になりやすい。しかしながら、工程2を実施することで、多孔質膜114が形成されている複数の第1セル108の正確な位置情報が得られるので、工程3で生成された透過光のパターンの画像データに、工程2で得られた複数の第1セル108の開口部107の位置情報を重ねることで、複数の第1セル108の開口部107内に位置する複数の画素の輝度を正確に測定することが可能となる。図6に、透過光のパターンの画像に、複数の第1セル108の開口部107の輪郭(点線で示す。)が重ねられた画像の例を示す。
【0049】
(工程5)
工程5では、工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量を求める。輝度のばらつきに関する統計量としては、標準偏差、変動係数、分散が挙げられる。中でも後述する輝度の平均値と同じ単位で評価できるという理由から標準偏差が好ましい。工程5ではそれぞれの第1セル108について輝度のばらつきに関する統計量を求めるのではなく、工程4で輝度を測定したすべての画素の輝度を母集団として、輝度のばらつきに関する統計量を求める。この際、輝度を一方の座標軸、画素数を他方の座標軸にして輝度の分布を示すヒストグラムを生成してもよい。第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の厚みが面内方向に均一であれば、輝度のばらつきは小さくなる。逆に、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の厚みが面内方向に不均一であれば、輝度のばらつきは大きくなる。このため、輝度のばらつきを求めることで、柱状ハニカムフィルタの多孔質膜114の厚みの面内方向における分布を評価可能である。
【0050】
また、柱状ハニカムフィルタの多孔質膜114の厚みの面内方向における分布は、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率と相関関係があることが分かっている。例えば、多孔質膜114の厚みの面内方向における不均一の度合いが大きくなると、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率は低下する傾向にある。このことは、輝度のばらつきに関する統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との間に有意な相関関係があることを意味している。従って、輝度のばらつきを求めることで、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率を推定することも可能となる。
【0051】
(工程6)
工程6では、工程5で求めた輝度のばらつきに関する統計量を、予め定めた前記統計量に関する第一基準と比較する。第一基準は柱状ハニカムフィルタに要求される仕様によって適宜設定すればよい。例えば、第一基準を満たすか否かで多孔質膜114の厚みの面内分布に関する検査の合否判定、ひいては粒子状物質の捕集効率に関する検査の合否判定を行うことができる。従って、一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、第一基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる。
【0052】
製品としての柱状ハニカムフィルタは、仕様に応じた品番が付与されることが通例である。従って、輝度のばらつきに関する統計量の評価は、検査対象の柱状ハニカムフィルタと同じ品番の柱状ハニカムフィルタのデータに基づいて実施すると、検査精度を高めることができる。本明細書において、同じ品番の柱状ハニカムフィルタというのは、多孔質膜に関する設計上の仕様以外の設計上の仕様が同じ柱状ハニカムフィルタのことを指す。例えば、全体形状、隔壁の材質、セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状、セル密度(単位断面積当たりのセルの数)、隔壁厚み(口金の仕様に基づく公称値)、隔壁の気孔率、目封止部の材質及び構造が設計上同じである柱状ハニカムフィルタは同じ品番である。多孔質膜に関する設計上の仕様については同じでも同じでなくてもよい。
【0053】
特定の品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係は高いことが望ましい。具体的には決定係数が0.7以上の相関関係を有することが好ましく、決定係数が0.8以上の相関関係を有することがより好ましい。このような高い相関関係を得るために、捕集効率を測定する際の条件を適切に設定し、輝度のばらつきに関する統計量と捕集効率に関する情報の組み合わせについての十分な数のデータを取得することが望ましい。また、後述するように、輝度の平均値も捕集効率に影響を与える。このため、データを取得する際は、輝度の平均値が同程度の柱状ハニカムフィルタ同士でデータを集めると、高い相関関係を得ることができる。
【0054】
第一基準の具体的な設定方法の例について説明する。検査対象である柱状ハニカムフィルタに付与されるべき品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタであって多孔質膜の厚みの面内方向の分布が異なる柱状ハニカムフィルタを多数用意し、これらについて前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率を測定する。次いで、一方の座標軸が前記統計量を示し、他方の座標軸が捕集効率を示す二次元座標系上に、その結果をプロットして回帰式を得る。回帰式としては、例えば、線形回帰式、指数回帰式、対数回帰式、又は多項式回帰式などを利用可能である。これにより、輝度のばらつきに関する統計量と捕集効率の間の回帰式が得られると、この回帰式に基づき所定の捕集効率を満たすことのできる前記統計量を定めることができ、これを第一基準とすることができる。前記統計量を第一基準と比較する工程は人間が行ってもよいし、コンピュータを用いて自動で行ってもよい。
【0055】
(工程7)
先述した通り、輝度のばらつきを求めることで、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率を推定することも可能となる。従って、例えば、本発明に係る検査方法の一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量から捕集効率を推定する工程7を更に含む。
【0056】
(工程8)
工程4を実施することで、複数の第1セル108の開口部107内に位置する複数の画素の輝度情報を取得することができる。従って、工程4の結果に基づき、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8を実施してもよい。
【0057】
第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の質量(付着量)は、当該輝度の平均値と相関関係がある。例えば、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の質量が大きくなれば、透過光が減少するので輝度の平均値は小さくなる。逆に、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の質量が小さくなれば、輝度の平均値は大きくなる。このため、輝度の平均値を求めることで、第1セル108の表面に形成されている多孔質膜114の質量が適切か否かを評価可能である。更には、輝度の平均値を求めることで、多孔質膜114の質量を推定することも可能となる。
【0058】
また、柱状ハニカムフィルタの多孔質膜114の質量は、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率と相関関係があることが分かっている。例えば、多孔質膜114の質量が小さくなると、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率は低下する傾向にある。このことは、輝度の平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との間に有意な相関関係があることを意味している。従って、輝度の平均値を求めることで、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率を推定することも可能となる。
【0059】
(工程9)
工程9では、工程8で求めた輝度の平均値を、予め定めた輝度の平均値に関する第二基準と比較する。第二基準は柱状ハニカムフィルタに要求される仕様によって適宜設定すればよい。例えば、第二基準を満たすか否かで多孔質膜114の質量に関する検査の合否判定、ひいては粒子状物質の捕集効率に関する検査の合否判定を行うことができる。従って、一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、第二基準は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と多孔質膜の質量に関する情報との相関関係、又は、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき定められる。
【0060】
特定の品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と多孔質膜の質量に関する情報との相関関係は高いことが望ましい。具体的には決定係数が0.7以上の相関関係を有することが好ましく、決定係数が0.8以上の相関関係を有することがより好ましい。このような高い相関関係を得るために、輝度の平均値と多孔質膜の質量に関する情報の組み合わせについての十分な数のデータを取得することが望ましい。
【0061】
また、特定の品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係は高いことが望ましい。具体的には決定係数が0.7以上の相関関係を有することが好ましく、決定係数が0.8以上の相関関係を有することがより好ましい。このような高い相関関係を得るために、捕集効率を測定する際の条件を適切に設定し、輝度の平均値と捕集効率に関する情報の組み合わせについての十分な数のデータを取得することが望ましい。また、先述したように、輝度のばらつきに関する統計量も捕集効率に影響を与える。このため、データを取得する際は、輝度のばらつきに関する統計量が同程度の柱状ハニカムフィルタ同士でデータを集めると、高い相関関係を得ることができる。
【0062】
(工程10)
先述した通り、輝度の平均値を求めることで、多孔質膜の質量を推定することも可能となる。従って、例えば、本発明に係る検査方法の一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と多孔質膜の質量に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から多孔質膜の質量を推定する工程10を更に含む。
【0063】
(工程11)
先述した通り、輝度の平均値を求めることで、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率を推定することも可能となる。従って、例えば、本発明に係る検査方法の一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記平均値から捕集効率を推定する工程11を更に含む。
【0064】
(工程12)
先述したように、輝度のばらつきに関する統計量及び輝度の平均値は共に、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率に関する情報との間に有意な相関関係がある。このため、柱状ハニカムフィルタの粒子状物質に対する捕集効率の推定精度は、両者を考慮することで高くできる。従って、本発明に係る検査方法の一実施形態においては、検査対象となる柱状ハニカムフィルタは、特定の品番を付与すべき柱状ハニカムフィルタであり、工程4の結果に基づき輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量を求める工程5と、工程4の結果に基づき輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値を求める工程8と、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記統計量と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係、及び、当該品番と同じ品番の柱状ハニカムフィルタについて予め求めた、前記平均値と所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報との相関関係に少なくとも基づき、前記統計量及び前記平均値から捕集効率を推定する工程12を更に含む。
【0065】
捕集効率を推定するためのモデルは、輝度のばらつきに関する統計量及び輝度の平均値の一方又は両方と、所定条件における排ガス中の粒子状物質の捕集効率に関する情報とを関連付けたデータに基づき統計解析により構築することができ、例えば当該データに基づいて先述したような回帰式を輝度の平均値が同程度のグループ毎に求めたり、当該データを教師データとして機械学習させたりすることで構築してもよい。機械学習には、ニューラルネットワーク、サポートベクタマシン等の公知の学習モデルを利用することができる。ニューラルネットワークに学習させる際、ディープラーニングを用いてもよい。
【0066】
<4.柱状ハニカムフィルタの検査装置>
図5-1及び図5-2には、上述した本発明の一実施形態に係る検査方法を実施するのに好適な検査装置10、20の構成を説明するための模式的な側面図が示されている。図5-1に示す検査装置10と、図5-2に示す検査装置20は、光拡散フィルム14の有無に違いがあるが、その他の構成は同じである。図5-1に示す検査装置の構成は、工程1における反射光のパターンをカメラ16で撮像する際に好適に使用可能である。図5-2に示す検査装置の構成は、工程3における透過光のパターンをカメラ16で撮像する際に好適に使用可能である。
【0067】
本発明に係る検査方法を実施する際は、例えば、図5-1に示す検査装置10を用いて工程1を実施し、その後、柱状ハニカムフィルタを検査装置にセットしたまま光拡散フィルム14を配置して図5-2に示す検査装置20の構成に変更し、工程3を実施することができる。代替的には、図5-2に示す検査装置20を用いて工程3を実施し、その後、柱状ハニカムフィルタを検査装置にセットしたまま光拡散フィルム14を除去して図5-1に示す検査装置20の構成に変更し、工程1を実施することができる。
【0068】
一実施形態において、検査装置10、20は、
入口側底面104に対して第一の光を照射するための光照射器12aと、
出口側底面106に対して第二の光を照射するための光照射器12bと、
入口側底面104からの反射光のパターン及び透過光のパターンを撮像するためのカメラ16と、
を備える。
【0069】
また、一実施形態において検査装置10、20は、画像処理部301、記憶装置302、演算部303、及び表示部304を有するコンピュータ300を備える。
【0070】
画像処理部301は、カメラ16によって撮像された反射光のパターンの画像データ及び透過光のパターンの画像データを生成することができる。また、画像処理部301は、生成された反射光のパターンの画像データに基づいて、複数の第1セル108のそれぞれの開口部107の位置を特定することができる。
【0071】
記憶装置302は、生成された反射光のパターンの画像データに基づいて特定された複数の第1セル108の開口部の位置情報を格納することができる。記憶装置302は、生成された透過光のパターンの画像データを格納することができる。記憶装置302は、予め定めた輝度のばらつきに関する統計量に関する第一基準を格納することができる。記憶装置302は、予め定めた輝度の平均値に関する第二基準を格納することができる。また、記憶装置302は、前記統計量及び前記平均値の一方又は両方に少なくとも基づいて捕集効率を推定するためのモデル(プログラム)を格納することができる。
【0072】
演算部303は、生成された透過光のパターンの画像データ及び記憶装置302に格納されている前記位置情報に基づいて、複数の第1セル108の開口部107内に位置する複数の画素の輝度を測定することができる。演算部303は、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量、及び、輝度の平均値、その他の統計量を算出することができる。演算部303は、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量が、前記第一基準を満たすか否かを判断することができる。また、演算部303は、輝度を測定した複数の画素における輝度の平均値が、前記第二基準を満たすか否かを判断することができる。また、演算部303は、捕集効率を推定するためのモデルを利用し、前記統計量及び前記平均値の一方又は両方に少なくとも基づいて、予測される捕集効率を算出することができる。
【0073】
表示部304は、画像処理部301によって生成された反射光のパターンの画像データ及び透過光のパターンの画像データに基づき、反射光のパターンの画像及び透過光のパターンの画像を表示することができる。表示部304は、輝度を測定した複数の画素における輝度のばらつきに関する統計量、及び、輝度の平均値を表示することができる。表示部304は、輝度のヒストグラムのような種々のグラフを表示することができる。表示部304は、演算部303によって判断された前記第一基準を満たすか否かの結果を表示することができる。表示部304は、演算部303によって判断された前記第二基準を満たすか否かの結果を表示することができる。表示部304は、演算部303によって算出された予測される捕集効率を表示することができる。表示部はLCDや有機EL等のディスプレイで構成することができる。
【0074】
一実施形態において、検査装置10、20は、光照射器12a、12b、カメラ16、及び柱状ハニカムフィルタ100を収容するための筐体13を備えることができる。筐体13は外部からの光を遮断できるように構成することができる。これにより、暗い環境下で検査を行うことができ、検査精度を高めることができる。
【0075】
光照射器12aは、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104に対して第一の光を照射することができる位置に設置されている。図5-1及び図5-2に示す検査装置10においては、光照射器12aは、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104よりも上方に設置されており、下向きに第一の光を照射することができるように構成されている。光照射器12aからの光は、入口側底面104に対して等方的に照射されることが好ましい。このため、例えば、光照射器12aとしてリング照明又は同軸照明等を用いて、入口側底面104の直上から光を照射する方法、及び、図示するように一対以上の光照射器12aを用いて、柱状ハニカムフィルタ100の中心軸を対称中心として入口側底面104に対称的に光を照射する方法が好ましい。
【0076】
光照射器12bは、柱状ハニカムフィルタ100の出口側底面106に対して第二の光を照射することができる位置に設置されている。図5-1及び図5-2に示す検査装置20においては、光照射器12bは上向きに第二の光を照射することができるように構成されている。そして、柱状ハニカムフィルタ100は、出口側底面106が下側に位置するようにして、光照射器12bの光源の直上に配置することができるように構成されている。光源については、光源からの光の拡散角度と出口側底面106からの距離にも依存するが、出口側底面106に対して均一に光を照射するという観点から、出口側底面106に対向する光源が、出口側底面106よりも大きな面積範囲で広がっていることが好ましい。例えば、出口側底面106の照度が10,000lx以上となるような出力で光を照射することができる。
【0077】
光照射器12a、12bの光源としては、特に制限はないが、LED、白熱電球、ハロゲンランプ等が挙げられる。これらの光源は一般的に拡散光を照射可能である。照射する光の波長についても、カメラが受光感度を有する波長であれば特に制限はない。従って、白色光を照射することも可能である。照射する光の出力についても特に制限はないが、柱状ハニカムフィルタ100の高さが大きい場合、及び、目封止部が深い場合でも短い露光時間で透過光強度を確保できたり、外乱の影響を緩和できたりするため、強い方が好ましい。
【0078】
一実施形態において、柱状ハニカムフィルタ100は光照射器12bに接触するように載置してもよい。柱状ハニカムフィルタ100を光源に接触させることは、透過光の強度及び光の均一性の観点で有利である。また、別の一実施形態において、柱状ハニカムフィルタ100は光照射器12bに接触させないように例えば、両者の間に透光性基板を挟んで配置してもよい。透光性基板としては、透明基板及び半透明基板が挙げられるが、光源からの光の不均一性を解消するため、すりガラス等の半透明基板が好ましい。
【0079】
カメラ16は、反射光のパターンを撮像することができる位置に配置されている。カメラ16は、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104に対して光照射器12aから第一の光が照射されているときに、第1セル108及び第2セル110の配置に応じた入口側底面104からの反射光のパターンを撮像することができる。図5-1及び図5-2に示す検査装置10においては、カメラ16は、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104の上方に、好ましくは直上に配置されており、レンズ17を入口側底面104に、すなわち下方に向けている。反射光のパターンを撮像するためのカメラ16は、エリアカメラ及びラインカメラの何れでもよいが、撮像タクトが速い、照明幅が広い、及び設備サイズを小さくできる等の理由により、エリアカメラが好ましい。検査精度を高めるという観点から、反射光のパターンを撮像するためのカメラは、40μm/pix以下の画素分解能(一画素の水平方向及び垂直方向の長さが40μmであるか又はそれよりも細かい)を有することが好ましく、典型的には5~40μm/pix、より典型的には20~40μm/pixの画素分解能を有することができる。
【0080】
カメラ16による撮像結果に基づき、コンピュータ300は、反射光のパターンの画像データを生成することができる。次いで、コンピュータ300は、生成された反射光のパターンの画像データに基づいて複数の第1セル108の開口部107の位置情報を特定し、特定された位置情報を記憶装置302に格納する。
【0081】
また、カメラ16は、透過光のパターンを撮像することができる位置に配置されている。カメラ16は、柱状ハニカムフィルタ100の出口側底面106に対して光照射器12bから第二の光が照射されているときに、第1セル108及び第2セル110の配置に応じた入口側底面104からの透過光のパターンを撮像することができる。図5-1及び図5-2に示す検査装置20においては、カメラ16は、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104の上方に、好ましくは直上に配置されており、レンズ17を入口側底面104に、すなわち下方に向けている。透過光のパターンを撮像するためのカメラは、エリアカメラ及びラインカメラの何れでもよいが、撮像タクトが速い、照明幅が広い、及び設備サイズを小さくできる等の理由により、エリアカメラが好ましい。検査精度を高めるという観点から、透過光のパターンを撮像するためのカメラは、40μm/pix以下の画素分解能(一画素の水平方向及び垂直方向の長さが40μmであるか又はそれよりも細かい)を有することが好ましく、典型的には5~40μm/pix、より典型的には20~40μm/pixの画素分解能を有することができる。
【0082】
透過光のパターンを撮像するカメラは、反射光のパターンを撮像するカメラと同一でもよいし、異なっていてもよい。但し、透過光のパターンを撮像するカメラと反射光のパターンを撮像するカメラを切り替える場合において、両カメラのアングルが異なる場合は、両カメラによって認識されたセル位置が一致するように画像処理によって位置補正する必要がある。図5-1及び図5-2に示す検査装置においては、透過光のパターンを撮像するカメラは、反射光のパターンを撮像するカメラと同一である。
【0083】
透過光のパターンをカメラ16で撮像する際、光拡散フィルム14が利用される。光拡散フィルム14を介して入口側底面104からの透過光のパターンを撮像することで、光の拡散作用により広範囲の透過光画像を得ることができるようになり、一度で端面全域の透過光画像を得ることも可能である。
【0084】
光拡散フィルム14を介して、入口側底面104からの反射光のパターンをカメラ16で撮像することは困難である。このため、反射光のパターンを撮像する際は、撮像の邪魔にならないように、光拡散フィルム14を入口側底面104から避けておくことが望ましい。
【0085】
図5-2に示す検査装置の構成において、光拡散フィルム14は、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104と非接触の状態で、入口側底面104に平行に配置されている。光拡散フィルム14は入口側底面104と接触させてもよいが、非接触の状態で配置されると、入口側底面104との接触により光拡散フィルム14が傷つかないので好ましい。光拡散フィルム14が入口側底面104に“平行”に配置されるというのは、数学的な厳密な平行のみならず、検査精度に実質的な影響のない範囲での略平行も含まれる概念である。例示的には、光拡散フィルム14と入口側底面104のなす平均角度が0°~5°の場合はここでいう平行の概念に含まれる。
【0086】
光拡散フィルム14は、入口側底面104全体を被覆するように配置することが検査効率を高めるという観点から好ましい。このため、一実施形態において、光拡散フィルム14の主表面の面積は、柱状ハニカムフィルタ100の入口側底面104の面積よりも大きい。
【0087】
光拡散フィルム14と入口側底面104の間の距離には特に制限はないが、近すぎると振動などによって接触するおそれがあるので、当該距離の下限は1mm以上であることが好ましく、2mm以上であることがより好ましく、3mm以上であることが更により好ましい。また、光拡散フィルム14と入口側底面104の間の距離が遠すぎると、隣り合うセルの透過光が重なって検査精度が低下するため、当該距離の上限は100mm以下であることが好ましく、30mm以下であることがより好ましく、15mm以下であることが更により好ましい。本明細書において、光拡散フィルム14と入口側底面104の間の距離は、入口側底面104の重心から法線方向に延ばした直線が光拡散フィルム14に接触するまでの長さを指す。
【0088】
光拡散フィルム14の拡散角度は、検査を容易化するという観点から、10°~90°であることが好ましく、20°~60°であることがより好ましく、20°~30°であることが更により好ましい。光拡散フィルム14の拡散角度は、例えば、フィルム内部に光散乱媒質を添加する方法、表面粗さを調整する方法などにより調整可能である。本明細書において、光拡散フィルム14の拡散角度は、白色光をフィルム表面に垂直に照射した際に、最大の明るさ(照度)を示す方向(フィルム表面の法線方向)に対して、明るさ(照度)が半減する角度として定義される。明るさ(照度)が半減する角度は、白色光の照射範囲よりも十分に小さいピンホールを前方に備えた照度計を用いて、光拡散フィルム(14)への白色光の照射位置及び測定距離を同じにして明るさが半減する角度を探すことで特定可能である。
【0089】
光拡散フィルム14の厚みには特に制限はないが、厚過ぎると隣り合うセルの透過光が重なって検査精度が低下するため、50mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることが更により好ましい。光拡散フィルム14の厚みは、薄過ぎると強度が不足してシワや撓みが生じたり破損したりし易いため、0.2mm以上であることが好ましく、0.5mm以上であることがより好ましい。
【0090】
光拡散フィルム14の材質は、特に制限はないが、シワや撓みが生じないように硬質材料であることが安定した検査を実施する観点から好ましい。例えば、ガラス、プラスチック(ポリカーボネート等)等が挙げられる。
【0091】
光拡散フィルム14を安定して装置内に固定するため、検査装置は一実施形態において以下の(a)~(c)の少なくとも一つの器具を備えることができる。
(a)光拡散フィルムに引張応力を加えるための、少なくとも一対の把持部を有する引張装置。
(b)光拡散フィルムを挟むための二枚の透明板。
(c)光拡散フィルムを貼り付けるための透明板。
【0092】
図5-2に示す検査装置20の構成においては、一対の把持部18aを有する引張装置18を備える。例えば、引張装置18は、一対の把持部18aが光拡散フィルム14の対向する端部を挟み、互いに反対方向に引っ張ることができるように構成することができる。光拡散フィルム14に引張応力を与えることで光拡散フィルム14が薄い又は軟質の場合でもシワや撓みが発生するのを防止することができるので安定した検査を実施することができるようになる。また、引張装置18は、一対の把持部18aによる引っ張り方向に直交する面内方向にも同時に引っ張ることができるように、更に一対の把持部18aを備えることもできる。これにより、光拡散フィルム14は四方向に引っ張られるので、光拡散フィルム14をより安定して保持することができるようになる。
【0093】
図5-2に示す検査装置の構成においては、各把持部18aは、互いに対向する一対の把持板を上下に備えたクランプ機構を有する。一実施形態において、引張装置18は、光拡散フィルム14を把持するための押圧力及び光拡散フィルム14を外方側に引張るための引張応力を把持部18aに伝達する駆動手段を備えることができる。駆動手段としては、公知の任意の手段を採用すればよいが、例えば押圧力を伝達する駆動手段としてはスプリング又は電動シリンダ等を使用することができ、引張応力を伝達する駆動手段としてはターンバックル又は電動シリンダ等を使用することができる。
【0094】
入口側底面104からの透過光のパターンをカメラ16で撮像するとき、光照射器12bからの光によって、又は、検査装置外部からの光によって、柱状ハニカムフィルタ100の外周側壁102の外表面が照らされると、外周側壁102近傍の第1セル108の開口部107の輝度が明るくなりやすく、検査精度が低下するおそれがある。そこで、入口側底面104からの透過光のパターンをカメラ16で撮像する際に、柱状ハニカムフィルタ100の外周側壁102を遮光性環状部材15で周回被覆することが好ましい。遮光性環状部材15は柱状ハニカムフィルタ100の大きさに柔軟に対応できるようにゴム及びエラストマー等の弾性材料で構成されていることが好ましい。
【0095】
遮光性環状部材15としては、バルーンチャックが好適に使用可能である。バルーンチャックを用いると、バルーンからの押圧力が柱状ハニカムフィルタ100との接触面全体に分散しやく、局所的に大きな圧力がかかりにくいので、固定時に柱状ハニカムフィルタ100が破損しにくくなる。なお、柱状ハニカムフィルタ100の外周側壁102を遮光性環状部材15で周回被覆した状態で、入口側底面104からの反射光のパターンをカメラ16で撮像してもよいが、特に必要はない。バルーンチャックの好適な実施形態については、特開2021-156775号公報に記載の通りである。
【実施例0096】
以下、本発明及びその利点をより良く理解するための実施例を例示するが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0097】
<試験1:輝度の標準偏差とPM捕集効率の相関関係の検証>
(1-1.柱状ハニカムフィルタの製造)
慣用の方法に従い、坏土の押出成形、乾燥、脱脂及び焼成を実施し、目封止部を有するコージェライト製の柱状ハニカム構造体を多数製造した。これらの柱状ハニカム構造体において、目封止部は、第1セル及び第2セルが多孔質隔壁を挟んで交互に隣接配置されるように形成した。これらの柱状ハニカム構造体の仕様は以下のとおり共通であり、同じ品番が付与される予定のものである。
全体形状:直径132mm×高さ120mmの円柱状
セルの流路方向に垂直な断面におけるセル形状:正方形
セル密度(単位断面積当たりのセルの数):200セル/inch2
隔壁の平均厚み:8mil(0.203mm)(口金の仕様に基づく公称値)
多孔質隔壁の気孔率:55%
多孔質膜の気孔率:80%
【0098】
次いで、それぞれの柱状ハニカム構造体の複数の第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカムフィルタを得た。多孔質膜の形成方法は以下の通りである。まず、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射しながら、出口側底面に吸引力を与えて、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にSiC製のセラミックス粒子を付着させる工程を実施した。その後、第1セルの表面にセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体を加熱処理することで多孔質膜を形成した。
【0099】
上記の製造工程において、セラミックス粒子を付着させる工程を実施する際は、エアロゾルの吸引流量及び吸引時間を種々変更した。これにより、柱状ハニカムフィルタが有する多孔質膜の質量を一定にしながら、付着した多孔質膜の厚みの面内方向の分布が異なる多数の柱状ハニカムフィルタを得た。なお、何れの柱状ハニカムフィルタについても、第1セルの入口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの多孔質膜の合計質量よりも、第1セルの出口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの多孔質膜の合計質量の方が多かった。
【0100】
(1-2.輝度の測定試験)
上記で製造した多数の柱状ハニカムフィルタについて、それぞれ以下の手順で輝度の測定を行った。まず、柱状ハニカムフィルタ100の外周側壁102を遮光性環状部材15(バルーンチャック)によって周回被覆した上で、図5-1に示す構成の検査装置10にセットした。次いで、一対の光照射器12aを用いて、柱状ハニカムフィルタ100の中心軸を対称中心として入口側底面104に対称的に第一の光を照射した。光照射器12aの光源としては、リング形状のLED照明を使用した。第一の光を照射しながら第1セル108及び第2セル110の配置に応じた入口側底面104からの反射光のパターンを、水平方向及び垂直方向の画素分解能が何れも30μm/pixであるカメラ16で撮像し、反射光のパターンの画像データを生成した。生成された反射光のパターンの画像データに基づいて、柱状ハニカムフィルタ100が有するすべての第1セル108の開口部107の位置情報、具体的には開口部107の輪郭(多孔質膜114を除いた多孔質隔壁112によって画定される。)を構成する画素の二次元座標の情報を二値化処理によって特定し、特定された複数の第1セル108の開口部107の位置情報をコンピュータ300の記憶装置302に格納した。
【0101】
次いで、柱状ハニカムフィルタ100は検査装置10にセットしたままで、光拡散フィルム14を入口側底面104の上に配置して図5-2に示す検査装置20の構成に変更した。このとき、光拡散フィルム14と入口側底面104の間の距離は5mmとした。光拡散フィルム14としては、厚みが0.75mm、拡散角度が20°、材質がポリカーボネートのものを使用した。
【0102】
次いで、光照射器12bを用いて、柱状ハニカムフィルタ100の出口側底面106に対して第二の光を照射した。光照射器12bは、出口側底面106に対向する光源が、出口側底面106よりも大きな面積範囲で広がっており、出口側底面106の照度が70,000[lx]となるような出力で光を照射した。光照射器12bの光源としては、LED面照明を使用した。第二の光を照射しながら第1セル及び第2セルの配置に応じた入口側底面104からの透過光のパターンを、光拡散フィルム14を介して、反射光のパターンを撮像したカメラ16と同じカメラ16で撮像し、透過光のパターンの画像データを生成した。
【0103】
生成された透過光のパターンの画像データ及び記憶装置302に格納されている前記位置情報に基づいて、複数の第1セル108の開口部107内に位置する複数の画素の輝度を測定した。ここでは、柱状ハニカムフィルタ100が有するすべての数の第1セル108について、それぞれの第1セル108の開口部107内に位置するすべての数の画素の輝度を測定輝度の測定対象とした。その後、輝度を測定したすべての画素における輝度の標準偏差を求めた。
【0104】
(1-3.PM捕集試験)
上記で製造した多数の柱状ハニカムフィルタについて、それぞれ以下のPM捕集試験を実施した。エアロゾルジェネレータから噴射された粒径100~1000nm程度のDEHS(セバシン酸ビス(2-エチルヘキシン))粒子のようなオイル粒子を含有するエアロゾルを、500~10000L/分の流量で、30秒間、柱状ハニカムフィルタに供給し、柱状ハニカムフィルタにPMを捕集させ、柱状ハニカムフィルタの入口側(ガス流れ方向の上流側)及び出口側(ガス流れ方向下流側)にて排ガス中のPN(排出粒子数)を、PNカウンターによって測定した。捕集効率を、(入口側の粒子個数-出口側の粒子個数)/入口側の粒子個数×100(%)の式により計算した。
【0105】
(1-4.相関関係の評価)
横軸を捕集効率(%)、縦軸を輝度の標準偏差として、輝度の測定試験及びPM捕集試験によって得られたデータを二次元座標系上にプロットした。結果を図7に示す。図7には最小二乗法に基づいて作成した近似直線が示されている。図7から、輝度の標準偏差と捕集効率の間には高い相関(決定係数R2=0.8769)があることが分かる。従って、例えば輝度の標準偏差が15以下であることを第一基準として設定して検査を行うと、捕集効率が不十分である可能性の高い柱状ハニカムフィルタを排除することができる。
【0106】
<試験2:輝度の平均値とPM捕集効率の相関関係の検証>
(2-1.柱状ハニカムフィルタの製造)
試験1と同じ仕様を有する柱状ハニカム構造体を多数製造した。
【0107】
次いで、それぞれの柱状ハニカム構造体の複数の第1セルの表面に多孔質膜を形成し、柱状ハニカムフィルタを得た。多孔質膜の形成方法は以下の通りである。まず、柱状ハニカム構造体の入口側底面の中心部に向かって入口側底面に対して垂直な方向に、セラミックス粒子を含有するエアロゾルを噴射しながら、出口側底面に吸引力を与えて、噴射されたエアロゾルを入口側底面から吸引し、第1セルの表面にSiC製のセラミックス粒子を付着させる工程を実施した。その後、第1セルの表面にセラミックス粒子が付着している柱状ハニカム構造体を加熱処理することで多孔質膜を形成した。
【0108】
上記の製造工程において、セラミックス粒子を付着させる工程を実施する際は、エアロゾルの吸引時間を種々変更した。これにより、付着した多孔質膜の質量が異なる多数の柱状ハニカムフィルタを得た。なお、何れの柱状ハニカムフィルタについても、第1セルの入口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの多孔質膜の合計質量よりも、第1セルの出口側底面から第1セルの延びる方向における柱状ハニカムフィルタの中点までの多孔質膜の合計質量の方が多かった。
【0109】
(2-2.輝度の測定試験)
上記で製造した多数の柱状ハニカムフィルタについて、それぞれ試験1と同じ手順で、柱状ハニカムフィルタが有するすべての数の第1セルについて、それぞれの第1セルの開口部内に位置するすべての数の画素の輝度を測定し、輝度を測定したすべての画素における輝度の平均値を求めた。
【0110】
(2-3.多孔質膜の質量測定)
上記で製造した多数の柱状ハニカムフィルタについて、多孔質膜の形成前の柱状ハニカム構造体と、多孔質膜形成後の柱状ハニカムフィルタの質量差から、付着した多孔質膜の質量を測定した。
【0111】
(2-4.PM捕集試験)
上記で製造した多数の柱状ハニカムフィルタのうち一部について、PM捕集試験を試験1と同じ手順で実施し、捕集効率を算出した。
【0112】
(2-5.相関関係の評価)
横軸を多孔質膜の質量、縦軸を平均輝度として、輝度の測定試験、多孔質膜の質量測定及びPM捕集試験によって得られたデータを二次元座標系上にプロットした。結果を図8に示す。図8から、多孔質膜の質量と平均輝度の間には高い相関(決定係数R2=0.9479)があることが分かる。また、平均輝度が約70~80(多孔質膜の質量が3.3g程度)であった柱状ハニカムフィルタについては捕集効率が約67%であったのに対し、平均輝度が約35(多孔質膜の質量が6.6g程度)であった柱状ハニカムフィルタについては捕集効率が約97%であった。このことから、平均輝度と捕集効率の間にも有意な相関があることが分かる。従って、例えば平均輝度が40以下であることを第二基準として設定して検査を行うと、捕集効率が不十分である可能性の高い柱状ハニカムフィルタを排除することができる。試験1で設定した第一基準と組み合わせて、第一基準と第二基準の両方を満たしたときのみに合格品と判定してもよい。
【符号の説明】
【0113】
10 :検査装置
12a :光照射器
12b :光照射器
13 :筐体
14 :光拡散フィルム
15 :遮光性環状部材
16 :カメラ
17 :レンズ
18 :引張装置
18a :把持部
20 :検査装置
100 :柱状ハニカムフィルタ
102 :外周側壁
104 :入口側底面
106 :出口側底面
107 :開口部
108 :第1セル
109 :目封止部
110 :第2セル
112 :多孔質隔壁
114 :多孔質膜
300 :コンピュータ
301 :画像処理部
302 :記憶装置
303 :演算部
304 :表示部
図1
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
図7
図8