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  • 特開-セラミック体及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140909
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】セラミック体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/577 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C04B35/577
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052276
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】酒井 翔史
(72)【発明者】
【氏名】赤埴 達也
(72)【発明者】
【氏名】久野 修平
(57)【要約】
【課題】Si含浸SiCから構成される熱伝導率が高いセラミック体の製造方法を提供する。
【解決手段】平均粒径D50が15~50μmのSiC粉末と平均粒径D50が2~8μmのSiC粉末とを3:7~7:3の質量比で含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程と、前記成形体の焼成及び金属Siの含浸を行う焼成・含浸工程とを有するセラミック体の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径D50が15~50μmのSiC粉末と平均粒径D50が2~8μmのSiC粉末とを3:7~7:3の質量比で含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の焼成及び金属Siの含浸を行う焼成・含浸工程と
を有するセラミック体の製造方法。
【請求項2】
焼成・含浸工程は、前記成形体を金属Siと接触させた状態で焼成することによって行われる、請求項1に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項3】
前記焼成が、不活性ガス雰囲気下又は真空下、1400~1600℃の温度で行われる、請求項2に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項4】
前記成形材料に含まれるセラミック原料が前記SiC粉末のみである、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項5】
前記成形工程と前記焼成・含浸工程との間に、前記成形体に対して乾燥処理及び脱脂処理の少なくとも1つの処理が行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項6】
前記成形体が、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する複数の隔壁とを有するハニカム形状、又は内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型ハニカム形状を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミック体の製造方法。
【請求項7】
粒径が15~50μmのSiC粒子と粒径が2~8μmのSiC粒子とを3:7~7:3の体積比で含むSiC骨格部と、
前記SiC骨格部の少なくとも一部の空隙に形成された金属Si含浸部と
を備えるセラミック体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック体及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の燃費改善が求められている。特に、エンジン始動時などのエンジンが冷えている時の燃費悪化を防ぐため、冷却水、エンジンオイル、オートマチックトランスミッションフルード(ATF:Automatic Transmission Fluid)などを早期に暖めて、フリクション(摩擦)損失を低減するシステムが期待されている。また、排ガス浄化用触媒を早期に活性化するために触媒を加熱するシステムが期待されている。
【0003】
上記のようなシステムには、ハニカム形状を有し、Si含浸SiCから構成されるセラミック体(ハニカム構造体)を備える熱交換器が用いられている(特許文献1)。セラミック体は、炭化珪素(以下、「SiC」という)を含むセラミック成形体を脱脂した後、金属珪素(以下、「Si」という)を含浸させることによって製造されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6763699号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、熱交換器の性能向上(例えば、熱回収性の向上など)のために、Si含浸SiCから構成されるセラミック体の熱伝導率を高めることが要求されている。
SiCはセラミック体における骨格部を構成し、Siよりも熱伝導率が高いため、セラミック体中のSiCの割合を高めることにより、セラミック体の熱伝導率を向上させることができると考えられる。
しかしながら、従来の方法では、セラミック体(骨格部)中のSiCの割合を安定して高めることが難しく、セラミック体の熱伝導率が十分に向上しないという課題があった。
なお、上記では、熱交換器に用いられるセラミック体を例に挙げて説明したが、熱交換器以外に用いられるセラミック体に対しても熱伝導率の向上に対するニーズがある。
【0006】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、Si含浸SiCから構成される熱伝導率が高いセラミック体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、Si含浸SiCから構成されるセラミック体について鋭意研究を行った結果、所定の平均粒径D50を有する2種類のSiC粉末を所定の割合で含む成形材料を用いることにより、上記の課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下のように例示される。
【0008】
[1]平均粒径D50が15~50μmのSiC粉末と平均粒径D50が2~8μmのSiC粉末とを3:7~7:3の質量比で含む成形材料を成形して成形体を得る成形工程と、
前記成形体の焼成及び金属Siの含浸を行う焼成・含浸工程と
を有するセラミック体の製造方法。
【0009】
[2]焼成・含浸工程は、前記成形体を金属Siと接触させた状態で焼成することによって行われる、[1]に記載のセラミック体の製造方法。
【0010】
[3]前記焼成が、不活性ガス雰囲気下又は真空下、1400~1600℃の温度で行われる、[2]に記載のセラミック体の製造方法。
【0011】
[4]前記成形材料に含まれるセラミック原料が前記SiC粉末のみである、[1]~[3]のいずれか一つに記載のセラミック体の製造方法。
【0012】
[5]前記成形工程と前記焼成・含浸工程との間に、前記成形体に対して乾燥処理及び脱脂処理の少なくとも1つの処理が行われる、[1]~[4]のいずれか一つに記載のセラミック体の製造方法。
【0013】
[6]前記成形体が、外周壁と、前記外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する複数の隔壁とを有するハニカム形状、又は内周壁、外周壁、及び前記内周壁と前記外周壁との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型ハニカム形状を有する、[1]~[5]のいずれか一つに記載のセラミック体の製造方法。
【0014】
[7]粒径が15~50μmのSiC粒子と粒径が2~8μmのSiC粒子とを3:7~7:3の体積比で含むSiC骨格部と、
前記SiC骨格部の少なくとも一部の周囲に形成された金属Si含浸部と
を備えるセラミック体。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Si含浸SiCから構成される熱伝導率が高いセラミック体及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態に係るセラミック体の製造方法にしたがって作製される成形体の部分拡大断面図である。
図2】ハニカム形状を有する成形体のセルが延びる方向に直交する断面図である。
図3】中空型ハニカム形状を有する成形体のセルが延びる方向に直交する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施形態に対し変更、改良などが適宜加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
(1)セラミック体の製造方法
本発明の実施形態に係るセラミック体の製造方法は、成形工程と焼成・含浸工程とを有する。これらの工程について詳細に説明する。
【0019】
<成形工程>
成形工程は、平均粒径D50が15~50μmのSiC粉末(以下、「SiC粉末A」と略す)と平均粒径D50が2~8μmのSiC粉末(以下、「SiC粉末B」と略す)とを3:7~7:3の質量比で含む成形材料を成形して成形体を得る工程である。
ここで、上記の条件で作製される成形体の部分拡大断面図を図1に示す。図1に示されるように、平均粒径D50を有する2種類のSiC粉末A及びBを上記の質量比で用いることにより、成形体10において、平均粒径D50が大きいSiC粉末Aの間に平均粒径D50が小さいSiC粉末Bが充填され易くなるため、成形体10を構成するSiC粉末(SiC粉末A及びB)の充填密度を高めることができる。その結果、成形体10に対して焼成・含浸工程を行って得られるセラミック体の熱伝導率が向上する。一方、上記の条件以外であると、成形体を構成するSiC粒子の充填密度を十分に高めることができないため、セラミック体の熱伝導率が十分に向上しない。
ここで、成形工程に用いられるSiC粉末A及びBの「平均粒径D50」とは、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%(D50)の粒径を意味する。
【0020】
SiC粉末Aは、単一種であってもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、平均粒径D50が15~50μmの範囲内にある2種以上のSiC粉末Aを用いてもよい。
同様に、SiC粉末Bは、単一種であってもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、平均粒径D50が2~8μmの範囲内にある2種以上のSiC粉末Bを用いてもよい。
【0021】
SiC粉末Aの平均粒径D50は、上記の効果を安定して確保する観点から、20~45μmであることが好ましく、25~40μmであることがより好ましい。
また、SiC粉末Bの平均粒径D50は、上記の効果を安定して確保する観点から、3~7μmであることが好ましく、4~6μmであることがより好ましい。
さらに、SiC粉末AとSiC粉末Bとの質量比は、上記の効果を安定して確保する観点から、4:6~6:4であることが好ましい。
【0022】
成形材料は、セラミック原料としてSiC粉末A及びBのみを含むことが好ましい。SiC粉末A及びBは、熱伝導率が高く、後述する工程で含浸させる金属Siとの熱膨張係数も近いため、熱応力による耐性に優れるセラミック体を得ることができる。
ここで、セラミック原料とは、焼成・含浸工程後に、セラミック体の骨格部を構成する原料のことを意味する。
【0023】
成形材料は、当該技術分野において公知の成分を必要に応じて含むことができる。公知の成分としては、分散媒、バインダー、可塑剤及び分散剤などが挙げられる。これらの成分の含有量は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば特に限定されない。
【0024】
分散媒としては、水、又は水とアルコールなどの有機溶媒との混合溶媒などを挙げることができるが、特に水を好適に用いることができる。
【0025】
バインダーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコールなどの有機バインダーを例示することができる。特に、メチルセルロース及びヒドロキシプロポキシルセルロースを併用することが好適である。バインダーは、単一種であってもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
可塑剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリカルボン酸系高分子、アルキルリン酸エステルなどを例示することができる。
【0027】
分散剤には、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコールなどの界面活性剤を用いることができる。分散剤は、単一種であってもよいが、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
成形方法としては、特に限定されず、押出成形などの公知の方法を用いることができる。押出成形では、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、所望の形状の成形体を得ることができる。例えば、ハニカム形状の成形体を得る場合、適切な形態の口金及び治具を選択することにより、セルの形状及び密度、隔壁の数、長さ及び厚さ、外周壁及び内周壁の形状及び厚さなどを制御することができる。
【0029】
成形工程によって得られる成形体の形状としては、特に限定されないが、外周壁と、外周壁の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する複数の隔壁とを有するハニカム形状、又は内周壁、外周壁、及び内周壁と外周壁との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセルを区画形成する隔壁を有する中空型ハニカム形状を有することが好ましい。このような形状とすることにより、例えば、熱交換器に用いた場合に、その性能(例えば、熱回収性)を向上させることができる。
【0030】
ここで、ハニカム形状を有する成形体(ハニカム成形体)のセルが延びる方向に直交する断面図を図2、中空型ハニカム形状を有する成形体(中空型ハニカム成形体)のセルが延びる方向に直交する断面図を図3に示す。
図2に示されるように、ハニカム成形体100は、外周壁110と、外周壁110の内側に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセル120を区画形成する複数の隔壁130とを有する。また、図3に示されるように、中空型ハニカム成形体200は、内周壁140、外周壁110、及び内周壁140と外周壁110との間に配設され、第1端面から第2端面まで延びる複数のセル120を区画形成する隔壁130を有する。
【0031】
ハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200の形状(外形)としては、特に限定されず、例えば、円柱、楕円柱、四角柱又はその他の多角柱などとすることができる。すなわち、セル120が延びる方向に直交する断面におけるハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200の外形は、円形、楕円形、四角形又はその他の多角形などとすることができる。また、中空型ハニカム成形体200の中空部は、中空型ハニカム成形体200の外形と同じであっても異なっていてもよく、上記の各種形状とすることができる。
セル120が延びる方向に直交する断面におけるセル120の形状は、図示した形状に限定されず、円形、楕円形、三角形などの多角形などとしてもよい。
【0032】
ハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200は、焼成・含浸工程後に、次のような特徴を満たす構造となることが好ましい。なお、焼成・含浸工程後のハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200をハニカム構造体という。
【0033】
ハニカム構造体のセル120が延びる方向に直交する断面におけるセル密度(即ち、単位面積当たりのセル120の数)は、用途などに応じて適宜調整すればよいが、4~320セル/cm2の範囲であることが好ましい。セル120が延びる方向に直交する断面において、セル密度を4セル/cm2以上とすることにより、隔壁130の強度、ひいてはハニカム構造体自体の強度及び有効GSA(幾何学的表面積)を十分に確保することができる。また、セル密度を320セル/cm2以下とすることにより、流体が流れる際の圧力損失の増大を防止することができる。
【0034】
ハニカム構造体の隔壁130の厚みは、目的に応じて適宜設計すればよいが、50μm~2mmとすることが好ましく、60μm~600μmとすることがより好ましい。隔壁130の厚みを50μm以上とすると、機械的強度が向上して衝撃や熱応力による破損を抑制できる。一方、隔壁130の厚みを2mm以下とすると、ハニカム構造体に占めるセル容積の割合が大きくなることによって流体の圧力損失が小さくなり、熱交換率を向上させることができる。
【0035】
ハニカム構造体の外周壁110及び内周壁140(存在する場合)の厚みも、目的に応じて適宜設計すればよいが、熱交換用途に用いられる場合は、0.3mm超過10mm以下であることが好ましく、0.5mm~5mmであることがより好ましく、1mm~3mmであることが更に好ましい。また、蓄熱用途に用いられる場合は、外周壁110の厚みを10mm以上として外周壁110の熱容量を増大させてもよい。
【0036】
<焼成・含浸工程>
焼成・含浸工程は、成形体の焼成及び金属Siの含浸を行う工程である。
焼成・含浸工程の条件は、特に限定されず、公知の方法に準じて行うことができる。また、焼成・含浸工程は、焼成及び含浸を1つの工程で行うことができるが、焼成及び含浸を別の工程で行ってもよい。具体的には、焼成工程と含浸工程とを別々の工程として行ってもよい。
【0037】
焼成・含浸工程は、成形体を金属Siと接触させた状態で焼成することによって行うことが好ましい。このような状態で焼成を行うことにより、溶融した金属Siが毛細管現象によって成形体を構成するセラミック粒子間の隙間に入り込むことにより、金属Siを含浸させることができる。また、このような方法であれば、焼成及び含浸を1つの工程で行うことができるため、製造コストを低減することができる。
【0038】
成形体において金属Siを接触させる位置は、特に限定されないが、成形体の上面に金属Siを配置して接触させることが好ましい。例えば、成形体としてハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200を用いる場合、金属Siを接触させる位置は、端面(第1端面又は第2端面)、外周壁110、内周壁140(存在する場合)のいずれでもよい。また、セル120が延びる方向を鉛直方向とする場合、ハニカム成形体100及び中空型ハニカム成形体200の上方に位置する端面(第1端面又は第2端面)上に金属Siを配置して接触させることが好ましい。このようにして接触させることにより、重力により、金属Siを含浸させ易くなる。
【0039】
焼成は、不活性ガス雰囲気下又は真空下、1400~1600℃の温度で行うことが好ましい。このような条件で焼成を行うことにより、金属Siを含浸させ易くなる。また、酸化による焼結不足を抑制し、成形材料に含まれる酸化物を還元することができる。
不活性ガス雰囲気としては、窒素ガス雰囲気、アルゴン等の希ガス雰囲気、又はこれらの混合ガス雰囲気が挙げられる。
焼成温度は、上記の効果を安定して確保する観点から、1450~1550℃であることが好ましい。なお、焼成時間は、特に限定されないが、典型的に0.25~5時間である。
なお、焼成に用いられる焼成炉としては、特に限定されないが、電気炉、ガス炉などを用いることができる。
【0040】
<その他の工程>
成形工程と焼成・含浸工程との間には、成形体に対して乾燥処理及び脱脂処理の少なくとも1つの処理を行ってもよい。また、焼成・含浸工程後には、研磨などの表面加工を行ってもよい。
乾燥処理としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機、凍結乾燥機などを用いて乾燥処理を行えばよい。
【0041】
脱脂処理としては、バインダーなどの成分を燃焼させて除去するための工程である。脱脂処理の条件は、バインダーなどを燃焼させることが可能な範囲であれば特に限定されず、バインダーなどの種類に応じて適宜設定すればよい。例えば、成形体を300~600℃で1~10時間加熱することによって脱脂処理を行うことができる。
【0042】
(2)セラミック体
本発明の実施形態に係るセラミック体は、上記のセラミック体の製造方法によって得られるものである。このセラミック体は、SiC骨格部と金属Si含浸部とを備える。
SiC骨格部は、粒径が15~50μmのSiC粒子と粒径が2~8μmのSiC粒子とを3:7~7:3の体積比で含む。所定の粒径を有する2種類のSiC粒子を上記の体積比で含むSiC骨格部とすることにより、セラミック体中のSiC粒子の割合を高めることができるため、セラミック体の熱伝導率が向上する。
【0043】
ここで、セラミック体における粒径が15~50μmのSiC粒子と粒径が2~8μmのSiC粒子との体積比は、セラミック体の断面をSEM観察することによって求めることができる。具体的には、セラミック体の断面のSEM像において、粒径が15~50μmのSiC粒子と、粒径が2~8μmのSiC粒子とを区別する。このとき、SiC粒子の粒径は円相当径とする。そして、粒径が15~50μmのSiC粒子の合計面積と、粒径が2~8μmのSiC粒子の合計面積との比を、セラミック体における粒径が15~50μmのSiC粒子と粒径が2~8μmのSiC粒子との体積比とする。
【0044】
金属Si含浸部は、SiC骨格部の少なくとも一部の空隙に形成されている。金属Si含浸部を形成することにより、セラミック体を緻密質とし、熱伝導率及び強度を高めることができる。
【0045】
セラミック体の熱伝導率は、特に限定されないが、25℃において、好ましくは140W/mK以上、より好ましくは150W/mK以上である。セラミック体を熱交換器に用いる場合、セラミック体の熱伝導率を上記の範囲とすることにより、熱交換器の熱回収性を向上させることができる。なお、熱伝導率の値は、レーザーフラッシュ法(JIS R1611:1997)により測定した値を意味する。
【0046】
セラミック体を構成する材料やその形状などに関するその他の特徴については、上記のセラミック体の製造方法において説明した通りであり、説明を省略する。
【実施例0047】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0048】
(実施例1~4)
平均粒径D50が35μm、25μm及び5μmである3種類のSiC粉末を準備した。
次に、これらのSiC粉末の2種類又は3種類を表1に示す質量割合で混合し、SiC粉末の合計量100質量部に対して、28質量部の水、7質量部のメチルセルロースを更に加えて混合し、成形材料を得た。この成形材料を押出成形してハニカム形状の成形体を得た。ハニカム成形体は、焼成・含浸工程後に以下の形状のハニカム構造体となるようにサイズを調整した。
セルが延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の形状:円形
セルが延びる方向に直交する断面におけるセルの形状:四角形
セルが延びる方向の長さ:100mm
セルが延びる方向に直交する断面におけるハニカム構造体の外径:100mm
セル密度:14セル/cm2
隔壁の厚み:0.3mm
外周壁の厚み:1.5mm
【0049】
次に、ハニカム成形体のセルが延びる方向を鉛直方向として配置し、上部の端面に金属Siを配置した後、真空下、1500℃の温度で焼成することによってハニカム構造体(セラミック体)を得た。
【0050】
(比較例1及び2)
平均粒径D50が35μmのSiC粉末、又は平均粒径D50が5μmのSiC粉末を単独で用いたこと以外は、上記の実施例と同様にしてハニカム構造体(セラミック体)を得た。
【0051】
上記で得られたハニカム構造体について、25℃において、レーザーフラッシュ法(JIS R1611:1997)を用いて熱伝導率を測定した。熱伝導率の評価において、熱伝導率が150W/mK以上であったものを◎、熱伝導率が140W/mK以上150W/mK未満であったものを〇、熱伝導率が140W/mK未満であったものを×と表す。その結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、平均粒径D50が15~50μmのSiC粉末と平均粒径D50が2~8μmのSiC粉末とを3:7~7:3の質量比で用いて作製した実施例1~4のハニカム構造体(セラミック体)は、単一種のSiC粉末を用いて作製した比較例1及び2のハニカム構造体(セラミック体)に比べて熱伝導率が高かった。
【0054】
以上の結果からわかるように、本発明によれば、Si含浸SiCから構成される熱伝導率が高いセラミック体及びその製造方法を提供することができる。
【符号の説明】
【0055】
10 成形体
100 ハニカム成形体
110 外周壁
120 セル
130 隔壁
140 内周壁
200 中空型ハニカム成形体
図1
図2
図3