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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024140911
(43)【公開日】2024-10-10
(54)【発明の名称】生体音聴診装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 7/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B7/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023052278
(22)【出願日】2023-03-28
(71)【出願人】
【識別番号】000126115
【氏名又は名称】エア・ウォーター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】水野 智啓
(72)【発明者】
【氏名】里見 俊一
(57)【要約】
【課題】聴診者の指等と筐体の外表面との接触音及び摩擦音によるノイズを低減する。
【解決手段】筐体(12)の開口部(12a)側に環状のダイヤフラムダンパ(20)が設けられ、ダイヤフラムダンパ(20)の中央部にセンサホルダ(28)が筐体(12)の外方向に突出して設けられ、センサホルダ(28)内に振動センサ(32)が設けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、
被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、
前記筐体の前記開口部側に設けられた環状のダイヤフラムダンパと、
前記ダイヤフラムダンパの中央部に前記筐体の外方向に突出して設けられ、前記ダイヤフラムダンパを介してのみ前記筐体に連結され、被聴診者の皮膚に接触する筒状のセンサホルダと、
前記センサホルダ内に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備えることを特徴とする生体音聴診装置。
【請求項2】
前記ダイヤフラムダンパは、その周縁側に被聴診者の皮膚に接触する環状の突起部を有していることを特徴とする請求項1に記載の生体音聴診装置。
【請求項3】
前記ダイヤフラムダンパの前記突起部に、被聴診者の皮膚と前記ダイヤフラムダンパとの間の空気を逃がすための逃げ溝が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の生体音聴診装置。
【請求項4】
前記ダイヤフラムダンパの前記突起部の内周縁から前記センサホルダの中心までの最小距離は、20mm以上に設定されていることを特徴とする請求項2に記載の生体音聴診装置。
【請求項5】
前記ダイヤフラムダンパは、前記突起部の外周縁から立ち上がる環状の周壁部を有し、
更に、前記筐体の前記開口部側に設けられ、前記ダイヤフラムダンパの前記周壁部を内側から保持するダンパホルダを備えることを特徴とする請求項2に記載の生体音聴診装置。
【請求項6】
前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の生体音聴診装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被聴診者の生体音を聴診するための電子聴診装置等の生体音聴診装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、生体音聴診装置について種々の開発がなされており、生体音聴診装置の先行技術として特許文献1に示すものがある。先行技術に係る生体音聴診装置(特許文献1では振動電気変換装置と称される)は、筐体(特許文献1では振動減衰容器と称される)を備えており、筐体は、被聴診者の皮膚に接触する側に開口部を有している。筐体の開口部側には、筒状のセンサホルダ(特許文献1では振動収集部と称される)が第1振動吸収材を介して設けられている。センサホルダ内には、被聴診者の生体音を検出するセンサ(特許文献1では振動電気変換素子と称される)が第2振動吸収材を介して設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-166241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、先行技術に係る生体音聴診装置は、大気を媒体とするノイズ、及び被聴診者の皮膚を媒体とするノイズを低減できるものの、聴診者が筐体を摘まむ際に、ノイズの原因になる、聴診者の指等と筐体の外表面との接触音及び摩擦音が生じる。すると、聴診者の指等と筐体の外表面との接触音及び摩擦音が筐体から第1振動吸収材を介してセンサホルダに伝達され、センサホルダから第2振動吸収材を介してセンサに伝達される。第1振動吸収材及び第2振動吸収材が十分な減衰機能を有していないと、センサに検出される被聴診者の生体音にノイズが含まれ、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができなくなる。
【0005】
そこで、本発明の一態様は、聴診者の指等と筐体の外表面との接触音及び摩擦音によるノイズを低減して、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の課題を解決するため、本発明の一態様に係る生体音聴診装置は、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、前記筐体の前記開口部側に設けられた環状のダイヤフラムダンパと、前記ダイヤフラムダンパの中央部に外方向に突出して設けられ、前記ダイヤフラムダンパを介してのみ前記筐体に連結され、被聴診者の皮膚に接触する筒状のセンサホルダと、前記センサホルダ内に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一態様によれば、聴診者の指等と筐体の外表面との接触音及び摩擦音によるノイズを低減して、被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の模式的な縦断面図である。
図2】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の模試的な図である。
図3図2におけるIII部から見た模式的な図である。
図4】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の高さ方向の一方側から見た模式的な斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る電子聴診装置の高さ方向の他方側から見た模式的な斜視図である。
図6】本発明の実施形態に係る電子聴診装置を用いて被聴診者の生体音を聴診する様子を示す模式図である。
図7】実施例に係る振動音の減衰試験を示す概念図である。
図8】振動入力点から距離と振動音の伝達率との関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本願の明細書及び特許請求の範囲の記載において、高さ方向とは、電子聴診装置(生体音聴診装置)の高さ方向のことである。図面中、「HD」は高さ方向、「HDa」は高さ方向の一方側、「HDb」は高さ方向の他方側をそれぞれ指している。
【0010】
図1から図6を参照して、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の模式的な縦断面図である。図2は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の模試的な図である。図3は、図2におけるIII部から見た模式的な図である。図4は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の高さ方向の一方側から見た模式的な斜視図である。図5は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10の高さ方向の他方側から見た模式的な斜視図である。図6は、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10を用いて被聴診者Mの生体音を聴診する様子を示す模式図である。図6のXVIAは、センサホルダ28を被聴診者Mの皮膚Mfに接触させる前の様子を示す模式図である。図6のVIBは、センサホルダ28を被聴診者Mの皮膚Mfに接触させた状態を示す模式図である。
【0011】
(電子聴診装置10の概要)
図1から図6に示すように、本発明の実施形態に係る電子聴診装置10は、被聴診者Mの例えば心音、肺音等の生体音を聴診するための生体音聴診装置の1つである。そして、実施形態1に係る電子聴診装置10の具体的な構成は、次の通りである。
【0012】
(筐体12)
図1図2図4、及び図5に示すように、電子聴診装置10は、筐体12を備えており、筐体12は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。筐体12は、外筒14と、外筒14の内側に配置された内筒16と、外筒14と内筒16との間に連結するように設けられた複数の連結リブ18とを有している。筐体12は、被聴診者Mの皮膚Mfに対向する側に、円形の第1開口部12aを有している。筐体12は、被聴診者Mの皮膚Mfに対向する側の反対側に、円形の第2開口部12bを有している。筐体12の外表面である外筒14の外表面14eには、鏡面処理が施されている。
【0013】
(ダイヤフラムダンパ20、突起部22、逃がし溝22g)
図1から図4に示すように、電子聴診装置10は、筐体12の第1開口部12a側に設けられた筒状のダイヤフラムダンパ20を備えている。ダイヤフラムダンパ20は、例えばシリコーンゴム等の軟質樹脂により構成されている。ダイヤフラムダンパ20は、その周縁側に被聴診者Mの皮膚Mfに接触する環状の突起部22を有しており、突起部22は、高さ方向の一方側に突出している。突起部22には、被聴診者Mの皮膚Mfとダイヤフラムダンパ20との間の空気を逃がすための複数の逃げ溝22gが形成されており、複数の逃げ溝22gは、放射状に配置されている。
【0014】
(防振ダンパ部24、周壁部26)
図1図3、及び図4に示すように、ダイヤフラムダンパ20は、突起部22の内側に形成された環状の防振ダンパ部24を有しており、防振ダンパ部24は、筐体12側からの振動(振動音)を減衰させる減衰機能を有している。防振ダンパ部24は、突起部22を被聴診者Mの皮膚Mdに接触させた状態において、被聴診者Mの皮膚Mdに非接触になっている。また、ダイヤフラムダンパ20は、突起部22の外周縁から立ち上がる環状の周壁部26を有しており、周壁部26の周縁部には、内フランジ26fが径方向内側に突出して形成されている。
【0015】
(センサホルダ28)
図1図3、及び図4に示すように、電子聴診装置10は、ダイヤフラムダンパ20の中央部に筐体12の外方向(高さ方向の一方側)に突出して設けられた筒状のセンサホルダ28を備えており、センサホルダ28は、被聴診者Mの皮膚Mfに接触する。センサホルダ28は、ダイヤフラムダンパ20の防振ダンパ部24の内周面に接合されている。センサホルダ28は、例えばシリコーンゴム等の軟質樹脂により構成されている。センサホルダ28は、被聴診者Mの皮膚Mfに接触した状態で、筐体12に対して押し込み可能になっている。センサホルダ28は、ダイヤフラムダンパ20のみに支持されており、ダイヤフラムダンパ20を介してのみ筐体12に連結(接続)されている。
【0016】
(ダイヤフラムダンパ20の突起部22の内周縁の半径R等)
図1及び図3に示すダイヤフラムダンパ20の内周縁の半径Rは、20mm以上50mm以下に設定されていることが好ましい。ダイヤフラムダンパ20の内周縁の半径Rは、ダイヤフラムダンパ20の突起部22の内周縁からセンサホルダ28の中心までの最小距離に相当する。ダイヤフラムダンパ20の内周縁の半径Rを20mm以上に設定することにより、突起部22からセンサホルダ28まで被聴診者Mの皮膚Mfを介して伝達する振動音、特に100Hz以上1000Hz以下の振動音を、より十分に減衰させることができる(後述の実施例参照)。また、ダイヤフラムダンパ20の内周縁の半径Rを50mm以下に設定することにより、ダイヤフラムダンパ20を取付ける筐体12が大きくなりすぎて、聴診者Sの指Sfで筐体12が摘まみ難くなることを避けることができる。
【0017】
ここで、一般的には、防振ダンパ部24のバネ定数が小さいほど、筐体12から防振ダンパ部24を介してセンサホルダ28に伝わる振動をより減衰させることができる。一方、防振ダンパ部24のバネ定数が過度に小さいと、センサホルダ28が被聴診者Mの皮膚Mfに接触する前において、筐体12に対するセンサホルダ28の位置を保持できなくなる等の不都合が生じる。そのため、一例として、センサホルダ28の最大変位量(突起部22の突出量)を2mm、センサホルダ28に働く質量を1.5g、電子聴診装置10の取扱に伴う加速度を5Gと設定した場合に、センサホルダ28のへ変位量が最大変位量の30%を超えないように、防振ダンパ部24のバネ定数は120N/m以上に設定されることが望ましい。
【0018】
(ダンパホルダ30)
図1に示すように、電子聴診装置10は、筐体12の第1開口部12a側に設けられかつダイヤフラムダンパ20の周壁部26を内側から保持するダンパホルダ30を備えている。ダンパホルダ30は、筐体12の外筒14と協働してダイヤフラムダンパ20の周壁部26を挟持する。ダンパホルダ30は、例えばポリカーボネート樹脂又はアクリル樹脂等の硬質樹脂により構成されている。ダンパホルダ30の外周面には、ダイヤフラムダンパ20の周壁部26の内フランジ26fを嵌入させるための周溝30gが形成されている。
【0019】
(振動センサ32)
図1に示すように、電子聴診装置10は、センサホルダ28内に設けられかつ被聴診者Mの例えば心音、肺音等の生体音に対応する振動を検出する振動センサ32を備えている。振動センサ32は、被聴診者Mの生体音に対応する電気信号を出力する。振動センサ32は、被聴診者Mの生体音を検出するセンサであり、被聴診者Mの生体音に対応する振動を検出する加速度センサである。振動センサ32は、被聴診者Mの生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、電子聴診装置10を用いて被聴診者Mの生体音の聴診を良好に行うことができる。振動センサ32は、センサホルダ28及びダイヤフラムダンパ20を介してのみ筐体12に連結(接続)されている。振動センサ32は、センサホルダ28と一体的に筐体12に対して押し込み可能になっている。
【0020】
(回路基板等)
電子聴診装置10は、筐体12の内側に設けられた回路基板(不図示)を備えている。回路基板には、振動センサ32から出力された電気信号の増幅処理を行ったり、AD変換処理を行ったりする処理回路(不図示)が実装されている。回路基板には、AD変換処理された生体音データをイヤフォン(不図示)又は解析装置(不図示)に有線又は無線によって送信するための送信回路(不図示)が実装されている。回路基板には、処理回路及び送信回路に電力を供給するバッテリー(不図示)が実装されている。イヤフォンは、生体音データに対応する音声を出力する。解析装置は、送信された生体音データを解析したり、生体音データを波形として表示したりする。
【0021】
(作用効果)
続いて、本発明の実施形態の作用効果について説明する。
【0022】
電子聴診装置10においては、前述のように、筐体12の第1開口部12a側に筒状のダイヤフラムダンパ20が設けられ、ダイヤフラムダンパ20の中央部に筒状のセンサホルダ28が筐体12の外方向に突出して設けられている。センサホルダ28は、ダイヤフラムダンパ20のみに支持されており、ダイヤフラムダンパ20を介してのみ筐体12に連結されている。そのため、聴診者Sが筐体12を摘まむ際に、聴診者Sの指Sf等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を低減することができる。
【0023】
また、電子聴診装置10においては、前述のように、ダイヤフラムダンパ20がその周縁側に被聴診者Mの皮膚Mfに接触する環状の突起部22を有している。そのため、聴診者Sの熟練度に依存することなく、被聴診者Mの聴診時における筐体12に対するセンサホルダ28の変位量を一定に保つことができる。その結果、聴診者Sの聴診動作が安定して、聴診者Sの指Sf等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を低減することができる。
【0024】
特に、ダイヤフラムダンパ20の突起部22に複数の逃げ溝22gが形成されている場合には、被聴診者Mの皮膚Mdとダイヤフラムダンパ20との間に空気溜まりが生じ難くなり、ダイヤフラムダンパ20の防振ダンパ部24による減衰機能を十分に発揮させることができる。これにより、聴診者Sが筐体12を摘まむ際に、聴診者Sの指Sf等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を十分に低減することができる。
【0025】
ダイヤフラムダンパ20の内周縁の半径Rが20mm以上50mm以下に設定されている場合には、聴診者Sの指Sfによる筐体12の摘まみ易さを確保しつつ、聴診者Sが筐体12を摘まむ際における、筐体12からの振動音、特に100Hz以上1000Hz以下の振動音を十分に低減することができる。また、筐体12の外筒14の外表面14eに鏡面処理が施されている場合には、聴診者Sの指Sf等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音を十分に抑制することができる。
【0026】
従って、本発明の実施形態によれば、聴診者Sの指Sf等と筐体12の外筒14の外表面14eとの接触音及び摩擦音によるノイズを低減して、電子聴診装置10を用いて被聴診者Mの例えば心音、肺音等の生体音の聴診を良好に行うことができる。これにより、持続可能な開発目標(SDGs)の目標3「すべての人に健康と福祉を」を達成することができる。
【0027】
また、電子聴診装置10においては、前述のように、筐体12の第1開口部12a側には、ダイヤフラムダンパ20の周壁部26を内側から保持する環状のダンパホルダ30が設けられている。そのため、ダイヤフラムダンパ20の周壁部26がダンパホルダ30と筐体12の外筒14との協働によって挟持される。
【0028】
従って、本発明の実施形態によれば、筐体12に対するダイヤフラムダンパ20の取付状態を安定させて、電子聴診装置10の取扱性を高めることができる。
【0029】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る生体音聴診装置は、被聴診者の生体音を聴診するための生体音聴診装置であって、被聴診者の皮膚に対向する側に開口部を有した筐体と、前記筐体の前記開口部側に設けられ、周縁側に被聴診者の皮膚に接触する環状の突起部を有した環状のダイヤフラムダンパと、前記ダイヤフラムダンパの中央部に前記筐体の外方向に突出して設けられ、前記ダイヤフラムダンパを介してのみ前記筐体に連結され、被聴診者の皮膚に接触する筒状のセンサホルダと、前記センサホルダ内に設けられ、被聴診者の生体音を検出するセンサと、を備える。
【0030】
前記の構成によれば、前述のように、前記筐体の前記開口部側に環状の前記ダイヤフラムダンパが設けられ、前記ダイヤフラムダンパの中央部に筒状の前記センサホルダが設けられている。前記センサホルダは、前記ダイヤフラムダンパを介してのみ前記筐体に連結されている。そのため、前記ダイヤフラムダンパの前記突起部の内周縁から前記センサホルダの中心までの距離を十分な長さにすることで、聴診者が前記筐体を摘まむ際に、聴診者の指等と前記筐体の外表面との接触音及び摩擦音を低減することができる。その結果、聴診者の指等と前記筐体の外表面との接触音及び摩擦音によるノイズを低減して、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の生体音の聴診を良好に行うことができる。
【0031】
本発明の態様2に係る生体音聴診装置は、前記態様1において、前記ダイヤフラムダンパがその周縁側に被聴診者の皮膚に接触する環状の突起部を有してもよい。
【0032】
前記の構成によれば、聴診者の熟練度に依存することなく、被聴診者の聴診時における前記筐体に対する前記センサホルダの変位量を一定に保つことができる。その結果、聴診者の聴診動作が安定して、聴診者の指等と前記筐体の外表面との接触音及び摩擦音を低減することができる。
【0033】
本発明の態様3に係る生体音聴診装置は、前記態様2において、前記ダイヤフラムダンパの前記突起部に、被聴診者の皮膚と前記ダイヤフラムダンパとの間の空気を逃がすための逃げ溝が形成されてもよい。
【0034】
前記の構成によれば、被聴診者の皮膚と前記ダイヤフラムダンパとの間に空気溜まりが生じ難くなり、前記ダイヤフラムダンパによる減衰機能を十分に発揮させることができる。れにより、聴診者が前記筐体を摘まむ際に、聴診者の指等と前記筐体の外表面との接触音及び摩擦音を十分に低減することができる。
【0035】
本発明の態様4に係る生体音聴診装置は、前記態様2又は3において、前記ダイヤフラムダンパの前記突起部の内周縁から前記センサホルダの中心までの最小距離は、20mm以上に設定されていてもよい。
【0036】
前記の構成によれば、聴診者が前記筐体を摘まむ際における、前記筐体からの振動音を十分に低減することができる。
【0037】
本発明の態様5に係る生体音聴診装置は、前記態様2から4のいずれかにおいて、前記ダイヤフラムダンパは、前記突起部の外周縁から立ち上がる環状の周壁部を有し、更に、前記筐体の前記開口部側に設けられ、前記ダイヤフラムダンパの前記周壁部を内側から保持するダンパホルダを備えてもよい。
【0038】
前記の構成によれば、前記ダイヤフラムダンパの前記周壁部が前記ダンパホルダと前記筐体との協働により挟持される。これにより、前記筐体に対する前記ダイヤフラムダンパの取付状態を安定させて、前記生体音聴診装置の取扱性を高めることができる。
【0039】
本発明の態様5に係る生体音聴診装置は、前記態様1から4のいずれかにおいて、前記センサは、被聴診者の生体音に対応する振動を検出する振動センサであってもよい。
【0040】
前記の構成によれば、前記振動センサは、被聴診者の生体音の周波数帯である例えば50Hz~2000Hzの振動を検出することができ、前記生体音聴診装置を用いて被聴診者の聴診を良好に行うことができる。
【0041】
〔付記事項〕
本発明は前述した実施形態の説明に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例0042】
図7及び図8を参照して実施例について説明する。図7は、実施例に係る振動音の減衰試験を示す概念図である。図8は、振動入力点から距離と振動音の伝達率との関係を示すグラフ図である。
【0043】
図7に示すように、実施例に係る振動音の減衰試験においては、被聴診者Mの皮膚Mdにおける所定の箇所を振動入力点PIとし、その振動入力点PIから20mm離れた箇所を計測点PA、振動入力点PIから40mm離れた箇所を計測点PB、振動入力点PIから60mm離れた箇所を計測点PCとする。そして、振動音入力点PIに周波数の異なる複数の振動音(100Hzの振動音、200Hzの振動音、400Hzの振動音、500Hzの振動音、800Hzの振動音、1000Hzの振動音)を入力する。また、振動音入力点PIに各振動音を入力したときに、3つの計測点PA,PB,PCにおいて振動音を計測する。
【0044】
実施例に係る振動音の減衰試験の結果として、振動入力点PAから距離と振動音の伝達率との関係をまとめると、図8に示すようになる。なお、図8において、振動音の減衰効果を判断するための基準の振動音の伝達率を-50dBとし、図8において破線で示している。
【0045】
即ち、振動入力点P1から20mm以上離れると、振動入力点PIに入力された100Hz以上1000Hz以下の振動音を十分に減衰させることが分かった。換言すれば、図1に示すように、ダイヤフラムダンパ20の突起部22の内周縁の半径Rが20mm以上になると、筐体12からの振動音、特に100Hz以上1000Hz以下の振動音を十分に減衰させることが分かった。
【符号の説明】
【0046】
10 電子聴診装置(生体音聴診装置)
12 筐体
12a 第1開口部(開口部)
12b 第2開口部
14 外筒
14e 外表面
16 内筒
18 連結リブ
20 ダイヤフラムダンパ
22 突起部
24 防振ダンパ部
26 周壁部
26f 内フランジ
28 センサホルダ
30 ダンパホルダ
30g 周溝
32 振動センサ(センサ)
M 被聴診者
Md 被聴診者の皮膚
S 聴診者
Sf 聴診者の指
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8